(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056738
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】カメラモジュール及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20220404BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220404BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H04N5/225 100
H04N5/232 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164653
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】松久 治可
【テーマコード(参考)】
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2K005AA20
2K005CA02
2K005CA14
2K005CA23
2K005CA40
2K005CA44
2K005CA45
2K005CA53
2K005CA57
5C122EA41
5C122GE11
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】画質の劣化や部材の破損を抑制しつつ、大きな手ぶれ量に対しても手ぶれ補正を行うことができるカメラモジュールを提供する。
【解決手段】カメラモジュール1は、固定部材2と、固定部材2に対してXY平面に沿って移動可能な可動部3と、可動部3を固定部材2に対してXY平面に沿って移動可能に支持する支持部4と、電磁相互作用により固定部材2に対して可動部3を移動させることが可能な電磁アクチュエータ6とを備える。1つの電磁アクチュエータ6は、Y方向に沿って異なる磁極を有するマグネット61と、マグネット61に対応して設けられるコイル63とを含み、別の電磁アクチュエータは、X方向に沿って異なる磁極を有するマグネット62と、マグネット62に対応して設けられるコイル65とを含む。可動部3は、ベース部材32と、撮像センサ34が実装されるセンサ基板33と、少なくとも1枚のレンズを含むレンズユニット31とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
前記固定部に対して可動平面に沿って移動可能な可動部と、
前記可動部を前記固定部に対して前記可動平面に沿って移動可能に支持する支持部と、
電磁相互作用により前記固定部に対して前記可動部を移動させることが可能な少なくとも1つの電磁アクチュエータと
を備え、
前記少なくとも1つの電磁アクチュエータは、
前記可動平面上の一方向に沿って異なる磁極を有するマグネットと、
前記マグネットに対応して設けられるコイルと
を含み、
前記可動部は、
ベース部材と、
撮像センサが実装され、前記ベース部材に固定されるセンサ基板と、
前記ベース部材に固定されるレンズユニットであって、少なくとも1枚のレンズを含むレンズユニットと
を含む、
カメラモジュール。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電磁アクチュエータは、電磁相互作用により前記固定部に対して前記可動部を前記可動平面に沿った第1の方向に沿って移動させるように構成される第1の電磁アクチュエータを含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電磁アクチュエータは、電磁相互作用により前記固定部に対して前記可動部を前記第1の方向に垂直でかつ前記可動平面に沿った第2の方向に沿って移動させるように構成される第2の電磁アクチュエータをさらに含む、請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記支持部は、
前記固定部に形成され、前記可動平面上で円弧状に延びる複数の第1の円弧状溝部と、
前記可動部に形成され、前記可動平面上で円弧状に延びる複数の第2の円弧状溝部であって、前記複数の第1の円弧状溝部に対向して配置される複数の第2の円弧状溝部と、
前記第1の円弧状溝部と前記第2の円弧状溝部との間に保持される複数のボールと
を含む、請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
前記支持部は、
前記固定部に形成された複数の第1の凹部と、
前記可動部に形成された複数の第2の凹部であって、前記複数の第1の凹部に対向して配置される複数の第2の凹部と、
前記第1の凹部と前記第2の凹部との間に保持される複数のボールと
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
前記可動部の前記レンズユニットは、前記少なくとも1枚のレンズを前記可動平面に沿って移動可能なレンズ移動機構を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のカメラモジュール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のカメラモジュールを備えた、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュール及び電子機器に係り、特に手ぶれ補正機能を有するカメラモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮影時に手ぶれが生じた場合に撮像面での被写体のぶれを防止するために、手ぶれの量に応じてカメラレンズ内の特定のレンズを移動させる手ぶれ補正機構(レンズシフト式手ぶれ補正機構)を有するカメラモジュールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなレンズシフト式の手ぶれ補正機構は、特定のレンズを移動させることで撮像面での像のぶれを抑制するものであるため、大きな手ぶれに対して補正を行うためには、レンズの直径を大きくする必要が生じる。しかしながら、レンズの直径を大きくすると、光軸から離れた周辺部における画質が低下してしまうという問題がある。また、大きな手ぶれに対して補正を行う場合には、レンズを保持しているサスペンションワイヤに大きな力が作用し、サスペンションワイヤが破損してしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、画質の劣化や部材の破損を抑制しつつ、大きな手ぶれ量に対しても手ぶれ補正を行うことができるカメラモジュール及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、画質の劣化や部材の破損を抑制しつつ、大きな手ぶれ量に対しても手ぶれ補正を行うことができるカメラモジュールが提供される。このカメラモジュールは、固定部と、上記固定部に対して可動平面に沿って移動可能な可動部と、上記可動部を上記固定部に対して上記可動平面に沿って移動可能に支持する支持部と、電磁相互作用により上記固定部に対して上記可動部を移動させることが可能な少なくとも1つの電磁アクチュエータとを備える。上記少なくとも1つの電磁アクチュエータは、上記可動平面上の一方向に沿って異なる磁極を有するマグネットと、上記マグネットに対応して設けられるコイルとを含む。上記可動部は、ベース部材と、撮像センサが実装され、上記ベース部材に固定されるセンサ基板と、上記ベース部材に固定されるレンズユニットであって、少なくとも1枚のレンズを含むレンズユニットとを含む。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、上述したカメラモジュールを備えた電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるカメラモジュールを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すカメラモジュールの主要部の正面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すカメラモジュールの主要部の平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すカメラモジュールの可動部の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すカメラモジュールの固定部材と固定部材上に配置される部材を示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すカメラモジュールの可動部と可動部に取り付けられる部材を示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1に示すカメラモジュールの可動部のレンズユニットを示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態におけるカメラモジュールの主要部を示す正面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施形態におけるカメラモジュールを示す斜視図である。
【
図14】
図14は、
図11に示すカメラモジュールの固定部材と固定部材上に配置される部材を示す分解斜視図である。
【
図15】
図15は、
図11に示すカメラモジュールの可動部と可動部に取り付けられる部材を示す分解斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明に係るカメラモジュールが組み込まれた電子機器の一例としてのスマートフォンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るカメラモジュールの実施形態について
図1から
図16を参照して詳細に説明する。
図1から
図16において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図16においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるカメラモジュール1を示す斜視図である。
図2は、カメラモジュール1のカバーを除く主要部を示す正面図であり、
図3は、その平面図である。
図1から
図3に示すように、本実施形態におけるカメラモジュール1は、矩形板状の固定部材2(固定部)と、固定部材2に対してXY平面(可動平面)に沿って移動可能な可動部3と、可動部3を固定部材2に対してXY平面に沿って移動可能に支持する支持部4と、可動部3及び支持部4を覆う箱状のカバー5とを含んでいる。なお、以下の実施形態では、便宜的に、+Z方向を「上」又は「上方」といい、-Z方向を「下」又は「下方」ということとする。
【0011】
図4は、可動部3の分解斜視図である。可動部3は、少なくとも1枚のレンズ(図示せず)を含むレンズユニット31と、矩形状板のベース部材32と、ベース部材32に固定されるセンサ基板33とを含んでいる。
図1に示すように、カバー5の上面の中央には、可動部3のレンズユニット31のレンズに対応して円形のレンズ開口5Aが形成されている。また、
図4に示すように、センサ基板33上には、CCDやCMOSセンサなどの撮像センサ34が実装されている。また、ベース部材32の中央には、センサ基板33上の撮像センサ34に対応する位置に開口32Aが形成されており、この開口32Aを塞ぐように例えばIRカットフィルタなどのようなフィルタ部材35がベース部材32の下方に配置されている。
【0012】
図4に示すように、レンズユニット31の下部には複数の接続端子31Aが形成されており、これらの接続端子31Aに対応してセンサ基板33上には接点33Aが形成されている。レンズユニット31の接続端子31Aとセンサ基板33の接点33Aとは例えば半田90(
図1参照)により電気的に接続される。
【0013】
図5は、
図3のA-A線断面図、
図6は、固定部材2と固定部材2上に配置される部材を示す分解斜視図である。
図5及び
図6に示すように、固定部材2の上面2Aの隅部には、4つの円形の凹部21(第1の凹部)が形成されており、それぞれの凹部21の内部にはボール41が配置されている。それぞれのボール41は凹部21の内部で移動可能となっている。これらのボール41及び凹部21は、XY平面において上述したセンサ基板33の外側に配置されている。
【0014】
図7は、可動部3と可動部3に取り付けられる部材を示す分解斜視図である。
図5及び
図7に示すように、可動部3のベース部材32の下面32Bには、下方(-Z方向)に延びる4つの円筒状のボール保持部36が形成されており、これらのボール保持部36の半径方向内側には凹部36A(第2の凹部)が形成されている。これらの凹部36Aは、固定部材2の凹部21に対向するように配置されている。したがって、それぞれのボール41は、固定部材2の凹部21とベース部材32のボール保持部36の凹部36Aとの間に位置し、上述した固定部材2の凹部21内に配置されたボール41の上部が、可動部3のベース部材32のボール保持部26の内側の凹部36Aに収容されるようになっている。これにより、それぞれのボール41は固定部材2の凹部21とベース部材32のボール保持部26の凹部36Aとの間でX方向及びY方向に移動可能となっている。なお、潤滑性及び耐久性を向上するため又は発振防止のために、凹部21,36Aの内面にはグリス又はゲルを塗布することが好ましい。
【0015】
このような構成により、可動部3は、固定部材2に対してX方向及びY方向に移動できるようになっている。すなわち、本実施形態においては、ベース部材32の凹部21と、ボール41と、可動部3のベース部材32のボール保持部36の凹部36Aとによって、可動部3を固定部材2に対してXY平面(可動平面)に沿って移動可能に支持する支持部4が構成されている。
【0016】
図5及び
図6に示すように、固定部材2の周縁部の上面2Aには、X方向に長い2つの矩形凹部22と、Y方向に長い1つの矩形凹部23とが形成されている。矩形凹部22の内部にはマグネット61が配置され、矩形凹部23の内部にはマグネット62が配置されている。本実施形態では、それぞれのマグネット61は、Y方向に沿って異なる磁極を有するように着磁されており、例えば、上面がN極、下面がS極に着磁される第1の部分61Aと、上面がS極、下面がN極に着磁される第2の部分61Bとを含んでいる。また、本実施形態では、マグネット62は、X方向に沿って異なる磁極を有するように着磁されており、例えば、上面がN極、下面がS極に着磁される第1の部分62Aと、上面がS極、下面がN極に着磁される第2の部分62Bとを含んでいる。
【0017】
マグネット61における第1の部分61A及び第2の部分61Bは、一体的に形成されていてもよく、別個の磁石片から構成されていてもよい。この場合において、第1の部分61Aと第2の部分61Bとの間に隙間が形成されていてもよい。同様に、マグネット62における第1の部分62A及び第2の部分62Bは、一体的に形成されていてもよく、別個の磁石片から構成されていてもよい。この場合において、第1の部分62Aと第2の部分62Bとの間に隙間が形成されていてもよい。
【0018】
また、
図5及び
図7に示すように、可動部3のベース部材32の下面32Bには、下方(-Z方向)に延びる3組の突出片37が形成されている。それぞれの組の突出片37の周囲には、固定部材2の矩形凹部22,23内に配置されたマグネット61,62に対向するようにコイル63,65が配置されている。それぞれのコイル63,65の内側には、マグネット61又は62が発する磁界を検出することによって可動部3の位置を検出する位置検出センサ64,66が例えば樹脂67(
図5参照)により固定されている。このような位置検出センサ64,66としては例えばホール効果を利用して磁界を検出するホールセンサを用いることができる。
【0019】
ここで、マグネット61及びコイル63は、電磁相互作用により固定部材2に対して可動部3をY方向に移動させる電磁アクチュエータ6を構成しており、コイル63に通電することで、マグネット61とコイル63との電磁相互作用により可動部3をY方向に移動させることができるようになっている。また、マグネット62及びコイル65は、電磁相互作用により固定部材2に対して可動部3をX方向に移動させる電磁アクチュエータ6を構成しており、コイル65に通電することで、マグネット62とコイル65との電磁相互作用により可動部3をX方向に移動させることができるようになっている。
【0020】
例えばジャイロセンサ(図示せず)などのセンサからの信号に基づいて手ぶれの量に応じてコイル63,65への通電を制御することにより、固定部材2に対して可動部3をX方向及びY方向に移動させて撮像面での被写体のぶれを抑制することができる。特に、本実施形態では、従来のレンズシフト式の手ぶれ補正機構とは異なり、レンズを含むレンズユニット31と撮像センサ34が実装されたセンサ基板33とを含む可動部3の全体を移動させて手ぶれ補正を行うため、レンズと撮像センサ34との間の位置関係が変化しない。したがって、大きな手ぶれ量に対してもレンズの直径を大きくする必要が生じず、光軸から離れた周縁部における画質の劣化が抑制される。また、手ぶれ補正のためにサスペンションワイヤのような部材を必要としないので、大きな手ぶれを補正する際にサスペンションワイヤなどの部材が破損してしまうことが抑制される。
【0021】
本実施形態では、コイル63,65を可動部3に設け、マグネット61,62を固定部材2に設けているが、マグネット61,62を可動部3に設け、コイル63,65を固定部材2に設けてもよい。また、位置検出センサ64,66を固定部材2に設けてもよい。
【0022】
また、図示はしていないが、可動部3と固定部材2との間には発振防止のためにゲルを充填しておくことが好ましい。
【0023】
図8は、可動部3のレンズユニット31を示す分解斜視図である。
図8に示すように、レンズユニット31は、レンズ(図示せず)が固定されるレンズ枠70と、レンズ枠70を内側に保持する可動枠71と、可動枠71を支持する基部72と、レンズ枠70及び可動枠71を覆うカバー体73と、可動枠71の内側に配置される複数のマグネット74と、レンズ枠70をZ方向に移動させるためのコイル75とを含んでいる。カバー体73の上面の中央には開口73Aが形成されている。
【0024】
レンズ枠70は、レンズバレル(図示せず)が取り付けられるねじ部70Aを有する円筒状の部材であり、可動枠71の内側に配置される。このレンズ枠70の外周にコイル75が巻回される。
【0025】
可動枠71は四角柱状の筒状部材であり、この可動枠71の隅部の内側にはマグネット保持部71Aが形成されている。このマグネット保持部71Aにマグネット74が保持される。可動枠71の内側に配置されるマグネット74とレンズ枠70の外周に配置されるコイル75との間には磁気ギャップが形成されている。
【0026】
レンズ枠70の上端部と可動枠71の上端部とは板バネ76Aによって接続され、レンズ枠70の下端部と可動枠71の下端部とは板バネ76Bによって接続されている。これらの板バネ76A、76Bにより、レンズ枠70はZ方向に沿って移動可能な状態で可動枠71内に弾性的に保持される。
【0027】
このように、本実施形態では、レンズ枠70が可動枠71に対してZ方向に移動可能に支持されており、コイル75に通電することで、マグネット74とコイル75との電磁相互作用によりレンズ枠70をZ方向に移動させることができる。このようにコイル75に通電することでレンズ枠70をZ方向に移動させて、例えばオートフォーカス機能を実現することができる。
【0028】
可動枠71は、Z方向に延びる支持ワイヤ77を介して基部72に対して移動可能に保持されている。この支持ワイヤ77の一端は基部72に設けられる配線部材(図示せず)に固定され、他端は可動枠71に取り付けられる板バネ76Aに固定されている。このように、可動枠71は、支持ワイヤ77によって吊り下げられた状態で支持されており、支持ワイヤ77の撓みによってX方向及びY方向に移動できるようになっている。なお、支持ワイヤ77の一部は、板バネ76Aを介してコイル75と電気的に接続されており、コイル75への通電はこの支持ワイヤ77を介して行われる。
【0029】
基部72の中央には、レンズを透過した光を通過させる開口72Aが形成されており、基部72の隅部には、+Z方向に延びるストッパ72Bが形成されている。このストッパ72Bによって可動枠71のX方向及びY方向の移動が規制される。また、基部72の下部には上述した接続端子31Aが形成されている。
【0030】
また、基部72にはコイル78が取り付けられている。このコイル78は接続端子31Aに電気的に接続されており、コイル78への通電は接続端子31Aを介して行われる。このコイル78に通電することで、マグネット74とコイル78との電磁相互作用により可動枠71をXY平面上でX方向及びY方向に移動させることができる。なお、本実施形態では、2つのコイル78が基部72に取り付けられているが、コイル78の位置や個数はこれに限られるものではない。
【0031】
このように、本実施形態では、マグネット74及びコイル78によって、電磁相互作用により可動枠71(及びその内部のレンズ)をXY平面に沿って移動可能なレンズ移動機構が構成されている。したがって、例えばジャイロセンサ(図示せず)などのセンサからの信号に基づいて手ぶれの量に応じてコイル78への通電を制御することにより、マグネット74とコイル78との電磁相互作用により可動枠71の内部のレンズをX方向及びY方向に移動させて撮像面での被写体のぶれを抑制することができる。なお、このようなレンズ移動機構は、VCM(Voice Coil Motor)の電磁相互作用を利用するものに限られるものではなく、SMA(Shape Memory Alloy)を駆動源として用いるものであってもよい。また、レンズ移動機構の支持方式としては、ワイヤに代えて、例えばガイドシャフトや回転体(ボール)などを用いるものであってもよい。
【0032】
ここで、上述したように、レンズユニット31の外部に設けられた電磁アクチュエータ6(コイル63とマグネット61及びコイル65とマグネット62)によって手ぶれを補正することができるが、レンズユニット31内にも上記のようなレンズ移動機構を追加することにより、このレンズ移動機構をレンズシフト式手ぶれ補正機構として利用することで、手ぶれ補正が可能な範囲をより大きくすることができる。また、例えば、レンズを高速で移動させる必要がある場合にはレンズユニット31内部のレンズ移動機構を用い、レンズを長い距離にわたって移動させる必要がある場合にレンズユニット31外部の電磁アクチュエータ6を用いるなどのように、要求される性能に応じてレンズユニット31内部のレンズ移動機構とレンズユニット31外部の電磁アクチュエータ6とを使い分けてより光学特性が改善されるように手ぶれを補正してもよい。
【0033】
なお、本実施形態におけるレンズユニット31は、手ぶれ補正及びオートフォーカスの両方の機能を有するものであったが、他の実施形態のレンズユニット31は、手ぶれ補正又はオートフォーカスのどちらか一方の機能のみを有するものであってもよいし、いずれの機能を有していないものであってもよい。
【0034】
本実施形態では、可動部3を固定部材2に対してXY平面に沿って移動可能に支持する支持部4が、固定部材2の凹部21と、可動部3のボール保持部36の凹部36Aと、凹部21と凹部36Aとの間に保持されるボール41とにより構成されている例を説明したが、支持部4はこのような構成のものに限られず、例えばサスペンションワイヤやガイドシャフトなどを用いて支持部4を実現することもできる。
【0035】
また、本実施形態では、コイル63,65が可動部3のベース部材32に固定されているが、これらのコイル63,65がセンサ基板33に固定されていてもよい。そのような構成の一例としての第2の実施形態が
図9及び
図10に示されている。
図9は、第2の実施形態におけるカメラモジュール101の主要部を示す正面図、
図10は分解斜視図である。
【0036】
本実施形態におけるベース部材132は、下面に突出片37を有していない点を除いて、第1の実施形態におけるベース部材32と同一である。また、本実施形態におけるセンサ基板133は、Y方向両側に広がって延びる延出部133Bと、+X方向側に広がって延びる延出部133Cとを有している点を除いて、第1の実施形態におけるセンサ基板33と同一である。
【0037】
センサ基板133の延出部133Bにはコイル63及び位置検出センサ64が実装又は配線接続されている。また、センサ基板133の延出部133Cにはコイル65及び位置検出センサ66が実装又は配線接続されている。これらのコイル63,65及び位置検出センサ64,66は、例えば図示しない樹脂によりセンサ基板133の延出部133B,133Cに固定されている。
【0038】
本実施形態においては、センサ基板133に設けられたコイル63にマグネット61が干渉しないように、
図9及び
図10に示すように、マグネット61の全体が固定部材2の矩形凹部22に埋め込まれている。同様に、センサ基板133に設けられたコイル65にマグネット62が干渉しないように、マグネット62の全体が固定部材2の矩形凹部23に埋め込まれている。
【0039】
本実施形態では、コイル63,65を可動部103のセンサ基板133に設け、マグネット61,62を固定部材2に設けているが、マグネット61,62を可動部103のセンサ基板133に設け、コイル63,65を固定部材2に設けてもよい。また、位置検出センサ64,66を固定部材2に設けてもよい。
【0040】
また、図示はしていないが、可動部103と固定部材2との間には発振防止のためにゲルを充填しておくことが好ましい。
【0041】
図11は、本発明の第3の実施形態におけるカメラモジュール201を示す斜視図、
図12は、カメラモジュール201の主要部の正面図である。
図11及び
図12に示すように、本実施形態におけるカメラモジュール201は、矩形板状の固定部材202(固定部)と、固定部材202に対してXY平面上で回転可能な可動部203と、可動部203を固定部材202に対してXY平面上で回転可能に支持する支持部204とを含んでいる。
【0042】
図13は、可動部203の分解斜視図である。
図13に示すように、可動部203は、上述したレンズユニット31と、矩形状板のベース部材232と、センサ基板33と、フィルタ部材35とを含んでいる。センサ基板33はベース部材232に固定されている。
【0043】
図14は、固定部材202と固定部材202上に配置される部材を示す分解斜視図である。
図14に示すように、固定部材202の上面202Aの4つの隅部には、XY平面上で円弧状に延びる円弧状溝部221A(第1の円弧状溝部)が形成されたボール保持部221がそれぞれ形成されている。それぞれのボール保持部221の円弧状溝部221A内にはボール41が配置されており、それぞれのボール41は円弧状溝部221Aの内部で移動可能となっている。この円弧状溝部221Aは、ボール41と2点で接触するように断面がV字状になっていることが好ましい。これらのボール41及びボール保持部221は、XY平面においてセンサ基板33の外側に配置されている。
【0044】
固定部材202のY方向の両縁部の上面202Aには、X方向に長い2つの矩形凹部222が形成されている。それぞれの矩形凹部222の内部にはマグネット261が配置されている。本実施形態では、それぞれのマグネット261は、互いに異なる磁極がX方向に隣接するように配置された2つの磁石片261A,261Bから構成されており、これによりマグネット261はX方向に沿って異なる磁極を有している。例えば、磁石片261Aの上面はN極、下面はS極に着磁され、磁石片261Bの上面はS極、下面はN極に着磁される。
【0045】
図15は、可動部203と可動部203に取り付けられる部材を示す分解斜視図である。
図15に示すように、可動部203のベース部材232の下面232Bには、下方(-Z方向)に延びる4つのボール保持部236が形成されており、これらのボール保持部236の内側にはXY平面上で円弧状に延びる円弧状溝部236A(第2の円弧状溝部)が形成されている。これらの円弧状溝部236Aは、固定部材202の円弧状溝部221Aに対向するように配置されている。したがって、それぞれのボール41は、固定部材202のボール保持部221とベース部材232のボール保持部236との間に位置し、上述した固定部材202のボール保持部221の円弧状溝部221A内に配置されたボール41の上部が、可動部203のベース部材232のボール保持部236の内側の円弧状溝部236Aに収容されるようになっている。これにより、それぞれのボール41は固定部材202の円弧状溝部221Aとベース部材232の円弧状溝部236Aとの間で円弧に沿って移動可能となっている。円弧状溝部236Aは、ボール41と2点で接触するように断面がV字状になっていることが好ましい。なお、潤滑性及び耐久性を向上するため又は発振防止のために、円弧状溝部221A,236Aの内面にはグリス又はゲルを塗布することが好ましい。
【0046】
このような構成により、可動部203は、固定部材202に対して回転できるようになっている。すなわち、本実施形態においては、ベース部材232のボール保持部221と、ボール41と、可動部203のベース部材232のボール保持部236とによって、可動部203を固定部材202に対してXY平面(可動平面)に沿って回転可能に支持する支持部204が構成されている。
【0047】
また、
図15に示すように、可動部203のベース部材232の下面232Bには、下方(-Z方向)に延びる2組の突出片237が形成されている。それぞれの組の突出片237の周囲には、固定部材202の矩形凹部222内に配置されたマグネット261に対向するようにコイル263が配置されている。それぞれのコイル263の内側には、マグネット261が発する磁界を検出することによって可動部203の位置(回転角度)を検出する位置検出センサ264が例えば樹脂により固定されている。このような位置検出センサ264としては例えばホール効果を利用して磁界を検出するホールセンサを用いることができる。
【0048】
ここで、マグネット261及びコイル263は、電磁相互作用により固定部材202に対して可動部203をXY平面に沿って移動させる電磁アクチュエータ6を構成しており、コイル263に通電することで、マグネット261とコイル263との電磁相互作用により可動部203にX方向に沿った力を作用させることができる。このX方向に沿った力は上述した支持部204によって回転力に変換されて可動部203に作用する。この結果、可動部203がXY平面に沿って回転する。
【0049】
例えばジャイロセンサ(図示せず)などのセンサからの信号に基づいて手ぶれの量に応じてコイル263への通電を制御することにより、固定部材202に対して可動部203をXY平面上で回転させて撮像面での被写体のぶれ(回転ぶれ)を抑制することができる。従来のレンズシフト式の手ぶれ補正機構は、原理上、回転ぶれを補正することはできないが、本実施形態では、回転ぶれの量に応じて固定部材202に対して可動部203をXY平面上で回転させることにより回転ぶれを補正することができる。特に、上述した手ぶれ補正機構を含むレンズユニット31と組み合わせることで、本実施形態におけるカメラモジュール201は、XY平面に沿った移動の手振れと回転ぶれの両方を補正することが可能となっている。
【0050】
本実施形態では、コイル263を可動部203に設け、マグネット261を固定部材202に設けているが、マグネット261を可動部203に設け、コイル263を固定部材202に設けてもよい。また、位置検出センサ264を固定部材202に設けてもよい。
【0051】
本実施形態では、可動部203を固定部材202に対してXY平面上で回転可能に支持する支持部204が、固定部材202のボール保持部221の円弧状溝部221Aと、可動部203のボール保持部236の円弧状溝部236Aと、円弧状溝部221Aと円弧状溝部236Aとの間に保持されるボール41とにより構成されている例を説明したが、支持部204はこのような構成のものに限られず、例えばサスペンションワイヤやガイドシャフトなどを用いて支持部204を実現することもできる。
【0052】
上述した実施形態では、位置検出センサ64,66,264としてホールセンサを用いる例を説明したが、位置検出センサ64,66,264は、ホールセンサに限られるものではなく、例えば磁気抵抗センサ、フォトインタラプタ、エンコーダなどのセンサを位置検出センサ64,66,264として用いることができる。
【0053】
図16は、上述した実施形態で述べたカメラモジュール1,101,201が組み込まれた電子機器の一例としてのスマートフォン300を示している。スマートフォン300の背面には、上述したレンズユニットのレンズに光を入射させるための窓303が形成されている。この場合において、上述したカメラモジュール1,101,201のカバー5がスマートフォン300の外装部品を兼ねていてもよい。
【0054】
本発明に係るカメラモジュールは、このようなスマートフォン300に限らず、例えばタブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ドローン、監視カメラ、車載カメラなど各種の電子機器にも適用できるものである。
【0055】
また、1つの電子機器に上述したカメラモジュールを複数個組み込んでもよい。この場合には、レンズユニット31の外部に設けられた電磁アクチュエータ6により手ぶれ補正を行うことで、複数のカメラモジュール間においてレンズと撮像センサとの間の位置関係を一定にすることが可能となるので、例えば、3Dカメラとしての撮影や視差による距離測定などにおける手ぶれの影響を低減することができる。
【0056】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0057】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、画質の劣化や部材の破損を抑制しつつ、大きな手ぶれ量に対しても手ぶれ補正を行うことができるカメラモジュールが提供される。このカメラモジュールは、固定部と、上記固定部に対して可動平面に沿って移動可能な可動部と、上記可動部を上記固定部に対して上記可動平面に沿って移動可能に支持する支持部と、電磁相互作用により上記固定部に対して上記可動部を移動させることが可能な少なくとも1つの電磁アクチュエータとを備える。上記少なくとも1つの電磁アクチュエータは、上記可動平面上の一方向に沿って異なる磁極を有するマグネットと、上記マグネットに対応して設けられるコイルとを含む。上記可動部は、ベース部材と、撮像センサが実装され、上記ベース部材に固定されるセンサ基板と、上記ベース部材に固定されるレンズユニットであって、少なくとも1枚のレンズを含むレンズユニットとを含む。
【0058】
このような構成によれば、手ぶれの量に応じて電磁アクチュエータのコイルに通電することで、固定部に対して可動部を可動平面に沿って移動させて手ぶれを補正することができる。このとき、従来のレンズシフト式の手ぶれ補正機構とは異なり、レンズを含むレンズユニットと撮像センサが実装されたセンサ基板とを含む可動部を一体的に移動させて手ぶれ補正を行うため、大きな手ぶれ量に対応するためにレンズの直径を大きくする必要がなく、光軸から離れた周縁部における画質の劣化が抑制される。また、手ぶれ補正のためにサスペンションワイヤのような部材を必要としないので、大きな手ぶれを補正する際にサスペンションワイヤなどの部材が破損してしまうことが抑制される。
【0059】
上記少なくとも1つの電磁アクチュエータは、電磁相互作用により上記固定部に対して上記可動部を上記可動平面に沿った第1の方向に沿って移動させるように構成される第1の電磁アクチュエータを含んでいてもよい。さらに、上記少なくとも1つの電磁アクチュエータは、電磁相互作用により上記固定部に対して上記可動部を上記第1の方向に垂直でかつ上記可動平面に沿った第2の方向に沿って移動させるように構成される第2の電磁アクチュエータをさらに含んでいてもよい。
【0060】
上記支持部は、上記固定部に形成され、上記可動平面上で円弧状に延びる複数の第1の円弧状溝部と、上記可動部に形成され、上記可動平面上で円弧状に延びる複数の第2の円弧状溝部とを含んでいてもよい。上記複数の第2の円弧状溝部は、上記複数の第1の円弧状溝部に対向して配置される。また、上記支持部は、上記第1の円弧状溝部と上記第2の円弧状溝部との間に保持される複数のボールをさらに含んでいてもよい。このような支持部によって、第1の電磁アクチュエータを駆動することによって可動部に作用する力が回転力に変換されるため、固定部に対して可動部を回転させることができる。
【0061】
上記支持部は、上記固定部に形成された複数の第1の凹部と、上記可動部に形成された複数の第2の凹部とを含んでいてもよい。上記複数の第2の凹部は、上記複数の第1の凹部に対向して配置される。また、上記支持部は、上記第1の凹部と上記第2の凹部との間に保持される複数のボールをさらに含んでいてもよい。
【0062】
上記可動部の上記レンズユニットは、上記少なくとも1枚のレンズを上記可動平面に沿って移動可能なレンズ移動機構を含んでいてもよい。このようなレンズ移動機構によって手ぶれ補正が可能な範囲をより大きくすることができる。
【0063】
本発明の第2の態様によれば、上述したカメラモジュールを備えた電子機器が提供される。
【符号の説明】
【0064】
1,101,201 カメラモジュール
2,202 固定部材(固定部)
3,103,203 可動部
4,204 支持部
5 カバー
6 電磁アクチュエータ
10 固定部材
21 (第1の)凹部
26 ボール保持部
31 レンズユニット
32,132,232 ベース部材
33,133 センサ基板
34 撮像センサ
36 ボール保持部
36A (第2の)凹部
37,237 突出片
41 ボール
61,62,261 マグネット
63,65,263 コイル
64,66,264 位置検出センサ
70 レンズ枠
71 可動枠
72 基部
73 カバー体
74 マグネット
75,78 コイル
77 支持ワイヤ
221 ボール保持部
221A (第1の)円弧状溝部
236 ボール保持部
236A (第2の)円弧状溝部