(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056765
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】目の疲れ改善用の眼科用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20220404BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220404BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220404BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220404BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220404BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20220404BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P27/02
A61K45/00
A61K9/08
A61K47/18
A61K31/045
A61K47/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164687
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】椛嶋 恭平
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB24
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC21
4C076CC22
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4C076DD23
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4C084AA19
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4C086AA01
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4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA78
4C206NA05
4C206ZA33
(57)【要約】
【課題】目の疲れを充分に改善できる眼科用組成物の提供。
【解決手段】浸透圧が220~260mOsmである、目の疲れ改善用の眼科用組成物。前記眼科用組成物は、テルペノイドを含むことが好ましい。前記眼科用組成物は、コンタクトレンズ用として好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透圧が220~260mOsmである、目の疲れ改善用の眼科用組成物。
【請求項2】
テルペノイドを含む、請求項1に記載の目の疲れ改善用の眼科用組成物。
【請求項3】
緩衝剤、エデト酸、エデト酸塩、充血除去剤、収斂剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、ビタミン類、アミノ酸類、水溶性高分子化合物、及び非イオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の成分をさらに含む、請求項1又は2に記載の目の疲れ改善用の眼科用組成物。
【請求項4】
コンタクトレンズ用である、請求項1~3のいずれか一項に記載の目の疲れ改善用の眼科用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目の疲れ改善用の眼科用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活様式の変化に伴って目の疲れを訴える人が増加している。目の疲れを引き起こす原因として、パーソナルコンピューターやスマートフォンの普及に伴い急激に増加してきたVDT(Visual Display Terminals)作業等が挙げられる。
また、コンタクトレンズの装用によって、目の疲れに加えて、目のかわき、かゆみ、充血などの様々なトラブルが助長される。特にソフトコンタクトレンズの長時間装用による眼の乾燥感(ドライアイ症状)や疲れを訴えることが多い。
【0003】
そこで、ソフトコンタクトレンズ装用によって生じる眼の乾燥感を改善する眼科用組成物が提案されている。
例えば特許文献1には、脂溶性ビタミン類を配合した、ソフトコンタクトレンズ用の眼科用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の眼科用組成物は、目の疲れを充分に改善できるものではない。
本発明は、目の疲れを充分に改善できる眼科用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 浸透圧が220~260mOsmである、目の疲れ改善用の眼科用組成物。
[2] テルペノイドを含む、前記[1]の目の疲れ改善用の眼科用組成物。
[3] 緩衝剤、エデト酸、エデト酸塩、充血除去剤、収斂剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、ビタミン類、アミノ酸類、水溶性高分子化合物、及び非イオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の成分をさらに含む、前記[1]又は[2]の目の疲れ改善用の眼科用組成物。
[4] 浸透圧調整剤をさらに含む、前記[1]~[3]のいずれかの目の疲れ改善用の眼科用組成物。
[5] コンタクトレンズ用である、前記[1]~[4]のいずれかの目の疲れ改善用の眼科用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、目の疲れを充分に改善できる眼科用組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「眼科用組成物」とは、点眼剤(点眼液又は点眼薬と同義)、コンタクトレンズ用点眼剤、人工涙液、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬と同義)、コンタクトレンズ装着剤、又はコンタクトレンズケア用品(消毒剤、保存剤、洗浄剤等を含む)、眼軟膏等の眼科関連のあらゆる組成物を示す。
また、本発明において、「水溶性」とは、25℃の水1Lへの溶解度が0.1g以上であることを示す。
また、本発明において、「高分子化合物」とは、質量平均分子量1000以上の化合物である。質量平均分子量は、THF(テトラヒドロフラン)等の溶離液を用いてGPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)により測定した値を、PEG(ポリエチレングリコール)等の標準サンプルにおける較正曲線に基づいて換算した値である。
また、本明細書において、各成分の含有量(濃度)の単位である「w/v%」は、「質量/体積%」のことであり、眼科用組成物100mLに含まれる配合成分の質量(g)を表わし、「g/100mL」と同義である。なお、以下に示す各成分の含有量は、眼科用組成物に配合する場合の好ましい範囲であり、眼科用組成物中の量である。
【0009】
[浸透圧]
本発明の目の疲れ改善用の眼科用組成物(以下、単に「眼科用組成物」ともいう。)の浸透圧は、220~260mOsmであり、240~260mOsmが好ましい。眼科用組成物の浸透圧が上記範囲内であれば、優れた目の疲れ改善効果が得られる。加えて、コンタクトレンズを装用する際又は装用中に眼科用組成物を使用すれば、優れた清涼感が得られる。特に、ソフトコンタクトレンズを装用する際又は装用中に眼科用組成物を使用すれば、清涼感がより感じられやすくなると共に、清涼感の持続性も高まる。眼科用組成物の浸透圧が上記下限値以上であれば、点眼時に違和感が生じにくくなる。眼科用組成物の浸透圧が上記上限値以下であれば、優れた目の疲れ改善効果や、清涼感の持続性が得られる。
なお、眼科用組成物の浸透圧は、第十七改正日本薬局方に記載の「一般試験法」の「2.47 浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)」に規定されている方法に従い、25℃で測定される値である。
【0010】
眼科用組成物の浸透圧は、眼科用組成物に含まれる配合成分の種類や含有量により調整でき、具体的には、無機塩(例えば後述する浸透圧調整剤や緩衝剤等)の種類や含有量により容易に調整できる。
【0011】
[配合成分]
本発明の眼科用組成物には、上述した浸透圧を充足させるために各種成分が含まれ得る。
以下、眼科用組成物の配合成分の一例について説明する。
【0012】
<浸透圧調整剤>
浸透圧調整剤は、眼科用組成物の浸透圧を調整する成分である。
浸透圧調整剤としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、多価アルコール、糖類などが挙げられる。
アルカリ金属塩としては、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物; 酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸アルカリ金属塩;ホウ砂、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の無機酸アルカリ金属塩などが挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、具体的には、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩化物などが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
糖類としては、具体的には、ソルビトール、グルコース、マンニトール、キシリトールなどが挙げられる。
これらの浸透圧調整剤は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。
これらの中でも、浸透圧調整剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。
これらの浸透圧調整剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
浸透圧調整剤の含有量は、浸透圧調整剤の種類、他に配合する成分の種類や含有量等に応じて、上述した浸透圧を充足するように適宜設定すればよいが、例えば、0.001~5w/v%が好ましく、0.005~3w/v%がより好ましい。
【0014】
<テルペノイド>
テルペノイドは、清涼感を付与する成分(清涼化剤)である。
テルペノイドとしては、例えばメントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロールなどが挙げられる。
これらのテルペノイドは、d体、l体、dl体のいずれでもよい。
これらの中でも、テルペノイドとしては、メントールが好ましく、l-メントールがより好ましい。
これらのテルペノイドは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
テルペノイドの含有量は、0.001~0.1w/v%が好ましく、0.002~0.05w/v%がより好ましく、0.003~0.03w/v%がさらに好ましい。
【0016】
<緩衝剤>
緩衝剤は、眼科用組成物の浸透圧を調整すると共に、緩衝作用を付与する成分である。
緩衝剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、例えばホウ酸緩衝剤、トリス緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、アミノ酸緩衝剤などが挙げられる。
ホウ酸緩衝剤としては、具体的には、ホウ酸又はその塩などが挙げられる。ホウ酸塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩などが挙げられる。ホウ酸塩としては、例えばホウ砂などが挙げられる。
トリス緩衝剤としては、具体的には、トロメタモール(別名;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)又はその塩などが挙げられる。トロメタモール塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、例えば酢酸塩等の有機酸塩;塩酸塩、スルホン酸塩等の無機酸塩などが挙げられる。トロメタモール塩としては、例えばトロメタモール塩酸塩などが挙げられる。
クエン酸緩衝剤としては、具体的には、クエン酸又はその塩などが挙げられる。クエン酸塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。クエン酸塩としては、例えばクエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
リン酸緩衝剤としては、具体的には、リン酸又はその塩などが挙げられる。リン酸塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。リン酸塩としては、例えばリン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどが挙げられる。
酒石酸緩衝剤としては、具体的には、酒石酸又はその塩、グルコン酸又はその塩などが挙げられる。酒石酸塩及びグルコン酸塩としては、それぞれ薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。酒石酸塩としては、例えば酒石酸ナトリウムなどが挙げられる。グルコン酸塩としては、例えばグルコン酸ナトリウムなどが挙げられる。
酢酸緩衝剤としては、具体的には、酢酸又はその塩、氷酢酸などが挙げられる。酢酸塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩などが挙げられる。酢酸塩としては、例えば酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
炭酸緩衝剤としては、具体的には、炭酸又はその塩などが挙げられる。炭酸塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
アミノ酸緩衝剤としては、具体的には、イプシロン-アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム等の各種アミノ酸又はそれらの塩などが挙げられる。アミノ酸塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
これらの緩衝剤は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。
これらの中でも、防腐力を高める観点から、緩衝剤としては、ホウ酸、ホウ酸塩、トロメタモール、トロメタモール塩が好ましく、ホウ酸とトロメタモールとの組み合わせがより好ましい。
これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
緩衝剤の含有量は、0.001~5w/v%が好ましく、0.003~3w/v%がより好ましく、0.005~2.5w/v%がさらに好ましい。
【0018】
<エデト酸及びその塩>
エデト酸(別名;エチレンジアミン四酢酸)及びその塩は、組成物中の成分に対する安定化効果の付与を目的として配合される成分である。また、防腐力を高めることができる。
エデト酸塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。エデト酸塩としては、例えばエデト酸ナトリウムなどが挙げられる。
エデト酸及びその塩は、それぞれ水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。
これらの中でも、エデト酸及びその塩としては、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物が好ましく、エデト酸ナトリウムがより好ましい。
これらのエデト酸及びその塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
エデト酸及びその塩の含有量は、0.001~0.2w/v%が好ましく、0.003~0.15w/v%がより好ましく、0.005~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0020】
<充血除去剤>
充血除去剤(血管収縮剤)としては、例えばエピネフリン、塩酸エピネフリン、メチルノルエピネフリン、ノルエピネフリン、エフェドリン、メチルエフェドリン、シュードエフェドリン、エフェドリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、オキシメタゾリン、メトキサミン、フェニルプロパノラミン、エチレフリン、ミドドリン、トラマゾリン、シネフリン、シラゾリン、キシロメタゾリン、及びこれらの薬学的に許容される塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等)などが挙げられる。
これらの充血除去剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
充血除去剤の含有量は、0.001~1w/v%が好ましく、0.003~0.5w/v%がより好ましく、0.005~0.2w/v%がさらに好ましい。
【0022】
<収斂剤>
収斂剤としては、例えばネオスチグミンメチル硫酸塩、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛などが挙げられる。ネオスチグミンメチル硫酸塩は、毛様体筋等に対する眼筋調節作用を有する。
これらの収斂剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
収斂剤の含有量は、0.0001~0.1w/v%が好ましく、0.0003~0.05w/v%がより好ましく、0.0005~0.01w/v%がさらに好ましい。
【0024】
<抗炎症剤>
抗炎症剤としては、例えばイプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、リゾチーム塩酸塩、プラノプロフェンなどが挙げられる。
これらの抗炎症剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
抗炎症剤の含有量は、0.001~10w/v%が好ましく、0.003~8w/v%がより好ましく、0.005~5w/v%がさらに好ましい。
【0026】
<抗ヒスタミン剤>
抗ヒスタミン剤としては、例えばジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、フマル酸ケトチフェン、塩酸オロパタジンなどが挙げられる。
これらの抗ヒスタミン剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
抗ヒスタミン剤の含有量は、0.001~0.1w/v%が好ましく、0.003~0.08w/v%がより好ましく、0.005~0.05w/v%がさらに好ましい。
【0028】
<ビタミン類>
ビタミン類としては、例えばビタミンB、ビタミンC等の水溶性ビタミン;ビタミンA、ビタミンE等の脂溶性ビタミンなどが挙げられる。
ビタミンBとしては、具体的には、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウムなどが挙げられる。
ビタミンCとしては、具体的には、アスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。
ビタミンAとしては、具体的には、パルミチン酸レチノール(レチノールパルミチン酸エステル)、酢酸レチノールなどが挙げられる。
ビタミンEとしては、具体的には、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールなどが挙げられる。
これらのビタミン類は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
ビタミン類の含有量は、0.001~1w/v%が好ましく、0.003~0.5w/v%がより好ましく、0.005~0.1w/v%がさらに好ましい。
ビタミン類がビタミンAの場合、ビタミンAの含有量は1000単位/100mL以上が好ましく、3000単位/100mL以上がより好ましく、5000~10万単位/100mLがさらに好ましく、1.0万~8.0万単位/100mLが特に好ましく、5万~6.5万単位/100mLが最も好ましい。なお、ビタミンAの含有量における1単位とは、第十七改正日本薬局方ビタミンA定量法に記載のビタミンA1単位を意味する。
【0030】
<アミノ酸>
アミノ酸としては、例えばL-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。
これらのアミノ酸は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
アミノ酸の含有量は、0.001~5w/v%が好ましく、0.003~3w/v%がより好ましく、0.005~1w/v%がさらに好ましい。
【0032】
<水溶性高分子化合物>
水溶性高分子化合物としては、例えばポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、デキストラン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガムなどが挙げられる。
これらの水溶性高分子化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
水溶性高分子化合物の含有量は、べたつき、ぼやけ等の使用感を損なわない程度の量であれば特に限定されないが、例えば0.001~5w/v%が好ましく、0.003~3w/v%がより好ましく、0.005~1w/v%がさらに好ましい。
【0034】
<非イオン界面活性剤>
非イオン界面活性剤は、油性成分(例えばテルペノイド、脂溶性ビタミン等)の可溶化剤として、油性成分の配合安定性を高めるために用いられる成分である。
非イオン界面活性剤としては特に限定されず、眼科用組成物に用いられる非イオン界面活性剤を用いることができ、具体的には、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び上記以外の非イオン界面活性剤(他の非イオン界面活性剤)などが挙げられる。
これらの非イオン界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)は、ヒマシ油に酸化エチレン(EO)を付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については特に限定はないが、3~60モルが好ましい。
ポリオキシエチレンヒマシ油としては、具体的には、ポリオキシエチレンヒマシ油3(EO平均付加モル数3)、ポリオキシエチレンヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンヒマシ油35(EO平均付加モル数35)、ポリオキシエチレンヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンヒマシ油60(EO平均付加モル数60)などが挙げられる。
これらの中でも、点眼時の刺激感を低減する観点から、ポリオキシエチレンヒマシ油としては、ポリオキシエチレンヒマシ油35が好ましく、医薬品添加物規格2003の規格に適合するものがより好ましい。
これらのポリオキシエチレンヒマシ油は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については特に限定はないが、5~100モルが好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)などが挙げられる。
これらの中でも、点眼時の刺激感を低減する観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が好ましく、医薬品添加物規格2003の規格に適合するものがより好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の市販品としては、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の市販品として日本サーファクタント工業株式会社製の商品名「HCO-60」などが挙げられる。
これらのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えばモノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)などが挙げられる。
これらの中でも、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの市販品としては、例えばポリソルベート80の市販品として花王株式会社製の商品名「レオドールTW-O120V」などが挙げられる。
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
他の非イオン界面活性剤としては、例えばポロクサマーに代表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(POEPOPグリコール)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40)に代表されるモノステアリン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
これらの他の非イオン界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
非イオン界面活性剤の含有量は、0.0001~10w/v%が好ましく、0.0001~5w/v%がより好ましい。
非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンヒマシ油を含有する場合、その含有量は0.003~10w/v%が好ましく、0.003~5w/v%がより好ましく、0.03~1w/v%がさらに好ましい。
非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する場合、その含有量は0.003~10w/v%が好ましく、0.003~5w/v%がより好ましく、0.03~1w/v%がさらに好ましい。
【0040】
<その他の成分>
本発明の眼科用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外のその他の成分を適量配合することができる。
その他の成分としては、例えば抗菌成分、局所麻酔剤又は無痛化剤、pH調整剤、安定化剤、その他の油性成分、防腐剤、その他の無機化合物などが挙げられる。
これらのその他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
(抗菌成分)
抗菌成分としては、例えばスルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム等のサルファ剤などが挙げられる。
これらの抗菌成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
抗菌成分の含有量は、0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0042】
(局所麻酔剤又は無痛化剤)
局所麻酔剤又は無痛化剤としては、例えばクロロブタノール、塩酸オキシブプロカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
これらの局所麻酔剤又は無痛化剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
局所麻酔剤又は無痛化剤の含有量は、0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0043】
(pH調整剤)
pH調整剤としては、例えば無機酸、無機アルカリ剤、有機アルカリ剤などが挙げられる。
無機酸としては、具体的には、(希)塩酸などが挙げられる。
無機アルカリ剤としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
有機アルカリ剤としては、具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。
これらのpH調整剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
(安定化剤)
安定化剤としては、例えば脂溶性の抗酸化剤、水溶性の抗酸化剤などが挙げられる。
脂溶性の抗酸化剤としては、具体的には、シクロデキストリン、モノエタノールアミン、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンE(例えば、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール等)、ビタミンA(例えばパルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等)などが挙げられる。
水溶性の抗酸化剤としては、具体的には、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩;アスコルビン酸;アスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。
なお、ビタミンE、ビタミンAは、先に説明したビタミン類として用いられてもよいし、安定化剤として用いられてもよい。
また、安定化剤をコンタクトレンズ装用者用の眼科組成物に配合する場合には、安定化剤としてはレンズ吸着性、蓄積性の低いものが好ましい。このような安定化剤としては、具体的には、シクロデキストリン、ビタミンE、ビタミンA、亜硫酸塩(例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。
これらの安定化剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
安定化剤の含有量は、0.001~5w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0045】
(その他の油性成分)
その他の油性成分としては、例えば大豆油、オリーブ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、流動パラフィン、白色ワセリン、精製ラノリン、コレステロールなどが挙げられる。
これらのその他の油性成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
その他の油性成分の含有量は、0.001~1w/v%が好ましく、0.001~0.5w/v%がより好ましく、0.001~0.25w/v%がさらに好ましい。
【0046】
(防腐剤)
防腐剤としては、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルポリアミノエチルグリシン、アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩(例えば塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等)、クロルヘキシジングルコン酸、パラオシキ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸エチルプロピル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、クロロブタノール、硫酸オキシキノリン、ベンジルアルコール、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩化ポリドロニウムなどが挙げられる。
これらの防腐剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
防腐剤の含有量は、0.0001~0.5w/v%とすることができるが、0.1w/v%以下が好ましく、0.01w/v%以下がより好ましく、0.001w/v%以下がさらに好ましく、0.0001w/v%以下が特に好ましい。
なお、かわき目やドライアイ症状を有する場合、またその予防のためには、眼科用組成物は、防腐剤を実質的に含まないことが好ましい。ここで、「実質的に含まない」とは、意図せずして含有するものを除き、防腐剤を積極的に配合しないことを意味する。
【0047】
(その他の無機化合物)
その他の無機化合物としては、例えばチオ硫酸ナトリウム、酸化チタン、塩化亜鉛などが挙げられる。
これらのその他の無機化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
その他の無機化合物の含有量は、0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0048】
[pH]
本発明の眼科用組成物の25℃におけるpHは、3.5~13.0が好ましい。特に、目の疲れをより改善する観点から、3.5~8.0がより好ましく、5.5~8.0がさらに好ましい。
なお、眼科用組成物のpHは、25℃でpHメーターを用いて測定した値である。
【0049】
[粘度]
本発明の眼科用組成物の25℃における粘度は、1.1~50mPa・sが好ましく、1.1~40がより好ましく、1.1~30がさらに好ましく、1.1~20がさらに好ましく、1.1~15がさらに好ましく、1.1~12がさらに好ましく、1.1~10が特に好ましく、1.1~8が最も好ましい。
なお、眼科用組成物の粘度は、第17改正日本薬局方に記載の「一般試験法」の「粘度測定法」の中の「第2法回転粘度計法」の「単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)」に規定されている方法に従い、B型回転粘度計を用いて25℃で測定される値である。測定に使用するローターや回転数などの条件は、その粘度範囲により選定する。B型回転粘度計としては、例えばコーンプレート型粘度計が挙げられる。
【0050】
[剤型]
本発明の眼科用組成物は、水性眼科用組成物であることが好ましい。
ここで、「水性眼科用組成物」とは、媒質が水である眼科用組成物をいう。すなわち、本発明の眼科用組成物は、液状であることが好ましい。
眼科用組成物に使用される水としては、医薬上、薬理学的又は生理学的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水などが挙げられる。
水の含有量は、90.0~99.5w/v%が好ましく、95.0~98.0w/v%がより好ましい。
【0051】
本発明の眼科用組成物の剤型としては特に限定されないが、例えば点眼剤(コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)、人工涙液、洗眼剤(コンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む)、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液、コンタクトレンズケア用品(消毒剤、保存剤、洗浄剤等を含む)等として好適に使用できる。特に点眼剤、コンタクトレンズ装着液として好適に使用でき、点眼剤が特に好ましい。
【0052】
コンタクトレンズとしては特に限定されないが、例えばハードコンタクトレンズ(O2ハードコンタクトレンズを含む)、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を含む)、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ、カラーコンタクトレンズなどが挙げられる。眼科用組成物が防腐剤を実質的に含まない場合は、ソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用として特に好適である。
なお、本発明において、コンタクトレンズを装用する際又は装用中に使用する眼科用組成物(例えばコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤、コンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤、コンタクトレンズ装着液等)や、コンタクトレンズ取り外し液、コンタクトレンズケア用品を総称して「コンタクトレンズ用の眼科用組成物」ともいう。その中でも特に、ソフトコンタクトレンズ装用者が使用する眼科用組成物を「ソフトコンタクトレンズ用の眼科用組成物」ともいう。
【0053】
[用量、用法]
本発明の眼科用組成物が点眼剤(コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)である場合、1回につき5~100μLを1~3滴、1日につき1~6回点眼することが好ましく、1回につき10~50μLを1~3滴、1日につき1~6回点眼することがより好ましく、1回につき10~30μLを1~3滴、1日につき1~6回点眼することがさらに好ましい。
本発明の眼科用組成物が洗眼剤(コンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む)である場合、1回につき1~20mL使用することが好ましく、より好ましくは1~10mLであり、さらに好ましくは3~6mLである。また、1日につき1~6回洗眼することが好ましく、より好ましくは3~6回である。
本発明の眼科用組成物がコンタクトレンズ装着液である場合、1回当たり1~3滴をコンタクトレンズに滴下して使用することが好ましく、より好ましくは1~2滴である。
【0054】
[製造方法]
本発明の眼科用組成物は、眼科用組成物に含まれる各成分を混合することで得られる。眼科用組成物が水性眼科用組成物である場合、水の一部にpH調整剤以外の成分を添加し、必要に応じてpH調整剤でpHを調整した後に、眼科用組成物の総体積を残りの水により調整することにより得られる。
脂溶性ビタミン等の油性成分(ただし、テルペノイドを除く)を含む眼科用組成物を製造する場合は、まず油性成分と可溶化剤とを混合し、混合物Aを調製する。可溶化剤としては、非イオン界面活性剤が好ましい。別途、水の一部にpH調整剤以外の水性成分を添加し、水溶液Bを調製する。次いで、混合物Aと水溶液Bとを混合して乳化し、必要に応じてpH調整剤でpHを調整した後に、眼科用組成物の総体積を残りの水により調整することにより、眼科用組成物を得る。
テルペノイドを含む眼科用組成物を製造する場合は、テルペノイドと可溶化剤とを混合し、混合物Cを調製する。可溶化剤としては、非イオン界面活性剤及びプロピレングリコールの少なくとも一方が好ましい。別途、水の一部にpH調整剤以外の水性成分を添加し、水溶液Bを調製する。次いで、混合物Cと水溶液Bとを混合し、必要に応じてpH調整剤でpHを調整した後に、眼科用組成物の総体積を残りの水により調整することにより、眼科用組成物を得る。
なお、プロピレングリコールは、先に説明した浸透圧調整剤として用いられてもよいし、可溶化剤として用いられてもよい。
【0055】
各成分の混合方法としては特に限定されず、一般的な方法を用いることができ、例えばパルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われる。回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。
各成分の混合温度は特に限定されないが、例えば油性成分と非イオン界面活性剤とを含む眼科用組成物を製造する場合は、油性成分と非イオン界面活性剤が共に融解温度以上であることが好ましく、具体的には40~95℃の範囲から適宜選定される。
【0056】
[容器、包装]
本発明の眼科用組成物は任意の容器に充填した製品として提供される。
眼科用組成物を充填する容器としては特に限定されないが、例えばプラスチック製容器、ガラス製容器などが挙げられる。これらの中でもプラスチック製容器が好ましく、具体的には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、塩化ビニル等の材質又はこれら材質の複合体からなる容器が挙げられる。これらの材質の中でも特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
製品中の眼科用組成物の量(内容積)は、製品及びその使用方法に応じて適宜選択することができ、例えば眼科用組成物が点眼剤の場合、2~20mLが好ましく、5~20mLがより好ましい。
眼科用組成物を充填する容器は、複数回分の使用量の眼科用組成物が充填されるマルチドーズ型(マルチユニット型)容器でもよく、1回使い切りのユニットドーズ型容器でもよい。これらの中でも、マルチドーズ型(マルチユニット型)容器が好ましい。
【0057】
眼科用組成物を充填する容器には、中栓やキャップが取り付けられていることがある。これら中栓やキャップは、公知の眼科用製品の容器に使用される材質の中栓やキャップを使用することができる。
中栓の材質としては、メルトフローレート2.0以下、好ましくは1.2~1.8のポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
キャップの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0058】
眼科用組成物をプラスチック製容器に充填する場合、保管中に容器から水分が蒸発したり、眼科用組成物中の成分が酸化したりすることがある。よって、眼科用組成物をプラスチック製容器に充填した後に、この容器を包装体で密封することが好ましい。このとき、容器を脱酸素剤と共に包装体で密封してもよい。さらに、容器と包装体との間に形成された空間に窒素等の不活性ガスを封入してもよい。
包装体としては、ピローフィルムなどが挙げられる。
【0059】
[効果]
以上説明した本発明の眼科用組成物は、浸透圧が220~260mOsmであることから目の疲れを充分に改善できる。
また、コンタクトレンズを装用する際又は装用中に本発明の眼科用組成物を使用すれば、優れた清涼感が得られる。加えて、涙液の補助(目のかわき)、ハードコンタクトレンズ又はソフトコンタクトレンズを装用しているときの不快感、目のかすみ(目やにの多いときなど)等の改善効果も得られる。特に、ソフトコンタクトレンズを装用する際又は装用中に本発明の眼科用組成物を使用すれば、清涼感がより感じられやすくなると共に、清涼感の持続性も高まる。
【0060】
また、眼科用組成物が充血除去剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、ビタミン類及びアミノ酸類等を含んでいれば、結膜充血改善効果、眼瞼炎(まぶたのただれ)、目のかゆみ、目のかすみ、眼病予防、コンタクトレンズを装着しているときの不快感)、紫外線その他の光線による眼炎(雪目など)等に対する改善効果も得られる。
【実施例0061】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。なお、各例で用いた成分の配合量は、特に断りのない限り純分換算値である。
【0062】
[実施例1~4、比較例1]
表1に示す配合組成となるように、精製水及びpH調整剤以外の水性成分を90mLの精製水に溶解し、室温(25℃)で15分間撹拌混合した。
次いで、眼科用組成物の25℃でのpHが7になるように、必要に応じてpH調整剤でpHを調整した後、全量が100mLになるように残りの精製水を加えて、眼科用組成物を得た。なお、pH調整剤としては、塩酸及び水酸化ナトリウムの少なくとも一方を用いた。また、pHの測定には、pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、商品名「HM-25R」)を用いた。
眼科用組成物の浸透圧を以下のようにして測定した。また、目の疲れ改善効果を以下のようにして評価した。これらの結果を表1に示す。
【0063】
[実施例5~8、比較例2]
表2に示す配合組成となるように、精製水及びpH調整剤以外の水性成分を90mLの精製水に溶解して水溶液B1とした。別途調製したl-メントールと可溶化剤(プロピレングリコール)との混合物を水溶液B1に所定量添加し、室温(25℃)で15分間撹拌混合した。
次いで、眼科用組成物の25℃でのpHが7になるように、必要に応じてpH調整剤でpHを調整した後、全量が100mLになるように残りの精製水を加えて、眼科用組成物を得た。なお、pH調整剤としては、塩酸及び水酸化ナトリウムの少なくとも一方を用いた。また、pHの測定には、pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、商品名「HM-25R」)を用いた。
眼科用組成物の浸透圧を以下のようにして測定した。また、目の疲れ改善効果及び清涼感を以下のようにして評価した。これらの結果を表2に示す。
【0064】
[測定・評価]
<浸透圧の測定>
眼科用組成物の浸透圧は、第十七改正日本薬局方に記載の「一般試験法」の「2.47 浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)」に規定されている方法に従い、自動浸透圧計(アドバンスインスツルメンツ株式会社製、商品名「A2O」)を用い、25℃で測定した。
【0065】
<目の疲れ改善効果の評価>
容量16mLのポリエチレンテレフタレート製の点眼容器に眼科用組成物16mLを充填した。充填後、点眼容器にポリエチレン製のノズル(中栓)を装着した。
被験者として、日常的にVDT作業を1日4時間以上行っており、目の疲れを感じているオフィスワーカーを3名選定した。被験者3名が、それぞれ両目に眼科用組成物を1滴ずつ点眼し、点眼直後及び点眼3分間後における目の疲れ度合いを以下の評価基準にて評価した。被験者3名の評価点の平均点を算出し、下記式(1)より目の疲れ改善度を求めた。
目の疲れ改善度=点眼3分後における目の疲れ度合いの平均点-点眼直後における目の疲れ度合いの平均点 ・・・(1)
≪評価基準≫
0点:目の疲れを全く感じない。
1点:目の疲れをあまり感じない。
2点:目の疲れをやや感じる。
3点:目の疲れを感じる。
4点:目の疲れを非常に感じる。
【0066】
実施例1~4については、下記式(2)より、比較例1における目の疲れ改善度に対する、各実施例における目の疲れ改善度の差を求め、以下の判断基準にて目の疲れ改善効果を評価した。
実施例5~8については、下記式(3)より、比較例2における目の疲れ改善度に対する、各実施例における目の疲れ改善度の差を求め、以下の判断基準にて目の疲れ改善効果を評価した。
改善度の差=比較例1における目の疲れ改善度-実施例における目の疲れ改善度 ・・・(2)
改善度の差=比較例2における目の疲れ改善度-実施例における目の疲れ改善度 ・・・(3)
≪判断基準≫
◎:改善度の差が1点以上。
〇:改善度の差が0点超、1点未満。
×:改善度の差が0点以下。
【0067】
<清涼感の評価>
容量16mLのポリエチレンテレフタレート製の点眼容器に眼科用組成物16mLを充填した。充填後、点眼容器にポリエチレン製のノズル(中栓)を装着した。
被験者として、日常的にVDT作業を1日4時間以上行っており、目の疲れを感じている、ソフトコンタクトレンズを装用しているオフィスワーカーを3名選定した。被験者3名が、ソフトコンタクトレンズを装用した状態で、それぞれ両目に眼科用組成物を1滴ずつ点眼し、点眼直後及び点眼3分間後における清涼感を以下の評価基準にて評価し、被験者3名の評価点の平均値を算出した。
点眼直後及び点眼3分間後のそれぞれについて、下記式(4)より、各実施例における清涼感の平均点に対する、比較例2における清涼感の平均点の差を求め、以下の判断基準にて清涼感を評価した。
清涼感の平均点の差=実施例における清涼感の平均点-比較例2における清涼感の平均点 ・・・(4)
≪評価基準≫
0点:清涼感を全く感じない。
1点:清涼感をあまり感じない。
2点:清涼感をやや感じる。
3点:清涼感を感じる。
4点:清涼感を非常に感じる。
≪判断基準≫
◎:清涼感の平均点の差が1点以上。
〇:清涼感の平均点の差が0点超、1点未満。
×:清涼感の平均点の差が0点以下。
【0068】
【0069】
【0070】
表1、2及び下記表3中、「適量」とは、眼科用組成物のpHを7とするのに要したpH調整剤の量である。「残量」とは、眼科用組成物の全量を100mLとするのに必要な精製の配合量(w/v%)である。
【0071】
表1、2から明らかなように、各実施例で得られた眼科用組成物は、目の疲れを充分に改善できた。
実施例5~8で得られた眼科用組成物は、ソフトコンタクトレンズを装用中に使用することで、優れた清涼感が得られると共に、清涼感の持続性にも優れていた。
【0072】
[処方例1~16]
表3~5に示す配合組成となるように、精製水及びpH調整剤以外の水性成分を90mLの精製水に溶解して水溶液B2とし、得られた水溶液B2を室温(25℃)で15分間撹拌混合した。なお、テルペノイド以外の油性成分を配合する場合、別途調製した油性成分と可溶化剤(非イオン界面活性剤)との混合物を水溶液B2に所定量添加し、90℃で15分間撹拌混合した。テルペノイドを配合する場合、別途調製したテルペノイドと可溶化剤(非イオン界面活性剤及びプロピレングリコールの少なくとも一方)との混合物を水溶液B2に所定量添加し、室温(25℃)で15分間撹拌混合した。
次いで、眼科用組成物の25℃でのpHが7になるように、必要に応じてpH調整剤でpHを調整した後、全量が100mLになるように残りの精製水を加えて、眼科用組成物を得た。なお、pH調整剤としては、塩酸及び水酸化ナトリウムの少なくとも一方を用いた。また、pHの測定には、pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、商品名「HM-25R」)を用いた。
得られた眼科用組成物について、実施例1と同様に浸透圧を測定したところ、220~260mOsmの範囲内であることを確認した。また、実施例1と同様に目の疲れ改善効果を評価したところ、目の疲れを充分に改善できたことを確認した。
なお、表3~5中の「単位」とは、ビタミンAであるレチノールパルミチン酸エステルの配合量の単位が「単位/100mL」であることを意味する。例えば「50000単位」は、レチノールパルミチン酸エステルの配合量が「5万単位/100mL」であることを意味する。
【0073】
【0074】
【0075】