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  • 特開-環境負荷低減方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056847
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】環境負荷低減方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 31/00 20060101AFI20220404BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20220404BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20220404BHJP
   B41M 5/382 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B41J31/00 C
B41M5/41 300
B41M5/41 400
B41M5/40 340
B41M5/40 440
B41M5/382 300
B41M5/382 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164813
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】本田 悟
【テーマコード(参考)】
2C068
2H111
【Fターム(参考)】
2C068AA06
2C068BB08
2C068BB22
2H111AA26
2H111AA27
2H111BA03
2H111BA08
2H111BB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境に与える負荷が低い材料を用いた構成部材からなる熱転写リボンを用いて、熱転写リボンが与える環境負荷そのものを低減させる方法を提供する。
【解決手段】使用済みの熱転写リボン1を回収し、回収した使用済みの熱転写リボンを土壌に埋設することを含む、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減する方法であって、熱転写リボンが、セロファンを含むベースフィルム101の一つの面に熱転写インク層102を有し、もう一つの面にバックコート層103を有して成る、方法に係る。さらに、使用済みの熱転写リボンを回収し、回収した使用済みの熱転写リボンを焼却することを含む、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減する方法であって、熱転写リボンが、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成る、方法に係る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの熱転写リボンを回収し、
回収した該使用済みの熱転写リボンを土壌に埋設することを含む、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減する方法であって、
該熱転写リボンが、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成る、前記方法。
【請求項2】
土壌に埋設された該使用済みの熱転写リボンが、土壌中で生分解することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該セロファンが、防湿セロファンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
使用済みの熱転写リボンを回収し、
回収した該使用済みの熱転写リボンを焼却することを含む、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減する方法であって、
該熱転写リボンが、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成る、前記方法。
【請求項5】
該熱転写リボンが、ポリエチレンテレフタレートを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成る熱転写リボンと比較して、焼却時の燃焼熱が少ないものである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
該セロファンが、防湿セロファンである、請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、環境問題への対応がより重要になっている。環境保全への取り組みが個人レベルだけでなく会社や団体単位でも行われ、環境への取り組み方が、企業の姿勢を表す目安の一つとなっている。企業は、通常の企業活動の他に環境保全活動をも行うことが当然であると認識されるようになっている。
【0003】
環境保全活動として、使用後の資源を回収し、形状を変えて再使用するリサイクル、およびそのまま使用するリユースが挙げられる。リサイクルまたはリユースしやすい製品を提供することは現代の企業に課せられた使命であるとも云える。
【0004】
特許文献1には、熱転写リボンリサイクルシステムが開示されている。特許文献1は、使用済みの熱転写リボンを回収・分解・分別する工程において、そのまま再生するか、部品ごとに分解して再生するか、部品ごとに分解して一部を再生するか、のいずれかの処理を行うことを特徴としている。
【0005】
熱転写リボンは、構成部材として、支管とインクリボンという2種類しかないにもかかわらず、使用されている材料が多種多様であることからリサイクル工程が複雑であった。特許文献1は、このことに鑑み、複数種類の熱転写リボンを俯瞰的に捉えてシステム化し、適宜リユースも組み合わせて、効率的にリサイクルを行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-181864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1にも提起されているように、熱転写リボンのリサイクルまたはリユースをシステム化して行うことは難しい。そこで本発明は、環境に与える負荷が低い材料を用いた構成部材からなる熱転写リボンを用いて、熱転写リボンが与える環境負荷そのものを低減させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の実施形態は、使用済みの熱転写リボンを回収し、回収した該使用済みの熱転写リボンを土壌に埋設することを含む、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減する方法である。一の実施形態において、熱転写リボンは、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成ることを特徴とする。
【0009】
本発明の二の実施形態は、使用済みの熱転写リボンを回収し、回収した該使用済みの熱転写リボンを焼却することを含む、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減する方法である。二の実施形態において、熱転写リボンは、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法は、熱転写リボンの構成部材として生分解性の材料を使用することにより、部品の一部または全部が土壌中で分解して、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減することができる。また本発明の方法は、熱転写リボンの部品として焼却時の発熱量が比較的低い材料を使用することにより、部品の一部または全部が燃焼する際に発生する熱量を低減して、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態にて使用される熱転写リボンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る方法を説明する。一の実施形態は、使用済みの熱転写リボンを回収し、回収した該使用済みの熱転写リボンを土壌に埋設することを含む、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減する方法である。一の実施形態において、熱転写リボンは、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成ることを特徴とする。一の実施形態において、熱転写リボンとは、ラベル、タグ、フィルム、カード等に熱転写法により印字するプリンタに用いるインクリボンのことである。熱転写リボンには、印刷・印字用途に応じて、ワックス系リボン、ワックス/レジン(セミレジン)系リボン、レジン系リボンがある。熱転写リボンは、支管と、インクリボンとから構成されている。このうち、支管は、インクリボンを巻き取るための芯であり、紙やプラスチック類により形成されている。インクリボンは、ベースフィルムと熱転写インク層とバックコート層とから構成され、ベースフィルムの一の面に熱転写インク層、もう一つの面にバックコート層を有している。詳しくは後述する。
【0013】
実施形態における、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減する方法は、使用済みの熱転写リボンを回収する工程と、回収した使用済みの熱転写リボンを土壌に埋設する工程とを含む。使用済みの熱転写リボンとは、今後使用することがなくなり廃棄する必要が生じた熱転写リボン全般を指す。使用済みの熱転写リボンとは、たとえば、熱転写プリンタに装着し、文字、バーコード、絵柄等を熱転写印字した印字済みの熱転写リボンのことである。
【0014】
使用済み熱転写リボンを回収するとは、使用済みの熱転写リボンを、ユーザから所定の場所に移動し集積することである。この際、自治体の回収システム等を適宜利用してもよい。
【0015】
続いて、回収した使用済み熱転写リボンを土壌に埋設する。土壌に埋設するとは、廃棄物埋立地等の所定の場所の土壌を掘り、埋めることである。回収した使用済み熱転写リボンは、廃棄物として土壌に埋められる。
【0016】
このように、回収した使用済み熱転写リボンを土壌に埋設することが、なぜ環境に与える負荷を低減することにつながるかについては、以下に説明する。本実施形態で回収する使用済み熱転写リボンのインクリボンは、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成ることを特徴としている。セロファンは、パルプ(セルロース)を原料とする膜状の材料であり、地中で生物学的に分解する。したがって、本実施形態の方法は、使用済み熱転写リボンを焼却する従来法よりも、環境に排出する二酸化炭素量が圧倒的に低減する。
【0017】
先述したとおり、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成る熱転写リボンのインクリボンのベースフィルムは、セロファンを含むことが好ましい。セロファンは、生物由来の有機的資源であるバイオマス原料の乾燥重量割合(バイオマス度)が80%以上であるものを使用することが特に好ましい。また、セロファンとして防湿セロファンを用いることができる。ここで防湿セロファンとは、セロファンの表面に防湿加工を目的とした樹脂によるコーティングが施されたセロファンである。ここで樹脂として、たとえば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデンを用いることができる。セロファンは、たとえばレンゴー株式会社やフタムラ化学株式会社の製品を使用できる。一方防湿セロファンは、たとえばフタムラ化学株式会社の製品を使用可能である。ベースフィルムの厚みは、3~40μm、好ましくは4~30μm、さらに好ましくは4.5~10μmである。
【0018】
一方、インク層は、従来から使用されている熱転写印字用のインクを含み、その厚みは1~8μm、好ましくは1~4μmである。バックコート層は、インクリボンの形状を維持し、巻き取ったインクリボン同士が貼りつかないようするために設けるものである。またバックコート層は、印字の際に摩擦を低減してインクリボンの走行を安定させるほか、サーマルヘッドからの熱衝撃を緩和して、ベースフィルムであるセロファンのダメージを和らげる役割を果たす。バックコート層として、一般的にはシリコーン系のワックスが用いられる。バックコート層の厚みは0.1~0.6μm、好ましくは0.1~0.3μmである。
【0019】
次に、二の実施形態を説明する。二の実施形態は、使用済みの熱転写リボンを回収し、回収した該使用済みの熱転写リボンを焼却することを含む、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減する方法である。二の実施形態において、熱転写リボンは、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成ることを特徴とする。二の実施形態において、熱転写リボンとは、ラベル、タグ、フィルム、カード等に熱転写法により印字するプリンタに用いるインクリボンのことである。熱転写リボンには、印刷・印字用途に応じて、ワックス系リボン、ワックス/レジン(セミレジン)系リボン、レジン系リボンがある。熱転写リボンは、支管と、インクリボンとから構成されている。このうち、支管は、インクリボンを巻き取るための芯であり、紙やプラスチック類により形成されている。インクリボンは、ベースフィルムと熱転写インク層とバックコート層とから構成され、ベースフィルムの一の面に熱転写インク層、もう一つの面にバックコート層を有している。
【0020】
実施形態における、熱転写リボンが環境に与える負荷を低減する方法は、使用済みの熱転写リボンを回収する工程と、回収した該使用済みの熱転写リボンを焼却する工程とを含む。二の実施形態において、使用済みの熱転写リボンとは、今後使用することがなくなり廃棄する必要が生じた熱転写リボン全般を指す。使用済みの熱転写リボンとは、たとえば、熱転写プリンタに装着し、文字、バーコード、絵柄等を熱転写印字した、印字済みの熱転写リボンのことである。また、本実施形態においても、使用済み熱転写リボンを回収するとは、使用済みの熱転写リボンを、ユーザから所定の場所に移動し集積することである。この際、自治体の回収システム等を適宜利用してもよい。
【0021】
続いて、回収した使用済み熱転写リボンを焼却する。焼却するとは、廃棄物処理場等の所定の場所で、熱転写リボンを燃やすことである。回収した使用済み熱転写リボンは、廃棄物として焼却場にて燃やされる。
【0022】
このように、回収した使用済み熱転写リボンを焼却することが、なぜ環境に与える負荷を低減することにつながるかについては、以下に説明する。本実施形態で回収する使用済み熱転写リボンのインクリボンは、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成ることを特徴としている。セロファンは、パルプ(セルロース)を原料とする膜状の材料であり、従来から熱転写リボンのベースフィルムとして使用されているポリエチレンテレフタレートに比べて焼却時の燃焼熱が少ない。したがって、本実施形態の方法は、従来の熱転写リボン(ポリエチレンテレフタレートを含むベースフィルムを使用した熱転写リボン)を焼却するよりも、排出する燃焼熱が低減する。
【0023】
先述したとおり、セロファンを含むベースフィルムの一つの面に熱転写インク層を有し、もう一つの面にバックコート層を有して成る熱転写リボンのインクリボンのベースフィルムは、セロファンを含むことが好ましい。セロファンは、生物由来の有機的資源であるバイオマス原料の乾燥重量割合(バイオマス度)が80%以上であるものを使用することが特に好ましい。また、セロファンとして防湿セロファンを用いることができる。ここで防湿セロファンとは、セロファンの表面に防湿加工を目的とした樹脂によるコーティングが施されたセロファンである。ここで樹脂として、たとえば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデンを用いることができる。セロファンは、たとえばレンゴー株式会社やフタムラ化学株式会社の製品を使用できる。一方防湿セロファンは、たとえばフタムラ化学株式会社の製品を使用可能である。ベースフィルムの厚みは、3~40μm、好ましくは4~30μm、さらに好ましくは4.5~10μmである。
【0024】
一方、インク層は、従来から使用されている熱転写印字用のインクを含み、その厚みは1~8μm、好ましくは1~4μmである。バックコート層は、インクリボンの形状を維持し、巻き取ったインクリボン同士が貼りつかないようするために設けるものである。またバックコート層は、印字の際に摩擦を低減してインクリボンの走行を安定させるほか、サーマルヘッドからの熱衝撃を緩和して、ベースフィルムであるセロファンのダメージを和らげる役割を果たす。バックコート層として、一般的にはシリコーン系のワックスが用いられる。バックコート層の厚みは0.1~0.6μm、好ましくは0.1~0.3μmである。
【0025】
一および二の実施形態で埋設あるいは焼却される熱転写リボンを、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態で埋設あるいは焼却される熱転写リボンにおけるインクリボンの断面図である。熱転写リボンは、インクリボンと支管とから構成され、このうちインクリボンは、幅5mm~300mm程度の長尺帯状であり、これを支管に巻き取って熱転写リボンとして提供される。図1中、1はインクリボン、101はベースフィルム、102はインク層、103はバックコート層である。ベースフィルム101は、インクリボン1の基材である。実施形態で使用する熱転写リボンのベースフィルムは、セロファンを含む。図1に示す構造を有する熱転写リボンは、通常用いられる熱転写プリンタに装着することができる。
【0026】
ユーザが使用した、たとえば図1に示すような構造を有する使用済み熱転写リボンを、回収して集め、これを焼却する。図1に示す熱転写リボンのベースフィルムは、好ましくはバイオマス度80%以上のセロファンを含むが、セロファンは、焼却時に発生する燃焼熱が、ポリエチレンテレフタレートと比較して少ない。そこで図1の熱転写リボンが環境に与える負荷は従来のポリエチレンテレフタレートを含むベースフィルムに比べて小さくなる。
【0027】
さらにユーザが使用した、たとえば図1に示すような構造を有する使用済み熱転写リボンを、回収して集め、これを土壌に埋設する。図1に示す熱転写リボンのベースフィルムは、好ましくはバイオマス度80%以上のセロファンを含むので、土壌に埋設されると、土壌中で漸次生分解する。したがって、従来から使用されている、ポリエチレンテレフタレート製のベースフィルムを含む熱転写リボンと比較して、図1の熱転写リボンが環境に与える負荷は小さくなる。
【符号の説明】
【0028】
1…熱転写リボン、101…ベースフィルム、102…インク層、103…バックコート層
図1