(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056925
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】直動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20220404BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
F16H25/20 K
F16H25/20 B
F16H25/24 B
F16H25/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164924
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【弁理士】
【氏名又は名称】飛永 充啓
(72)【発明者】
【氏名】清水 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】上岡 広樹
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB24
3J062AC07
3J062BA19
3J062CD03
3J062CD22
3J062CD54
3J062CD77
3J062CD79
(57)【要約】
【課題】直動アクチュエータの駆動機構による直動中の出力部が相手部材と前進方向に衝突した際や直動ねじ要素の後進行程の終端位置に達した際にねじ機構でのロック状態発生を防止する。
【解決手段】第一ねじ要素1の回転力を第二ねじ要素2の軸方向の推力に変換するねじ機構と、第一ねじ要素1に回転力を与える駆動機構3とをケース4で支持する。ねじ機構及びケース4に対して出力軸5を軸方向に往復移動可能に配置する。出力軸5と第二ねじ要素2間に配置された第一係止部13は、後進推力を出力軸5に伝達すると共に第二ねじ要素2に対する出力軸5の前進を規制する。第一弾性要素6は、出力軸5が前進不可な状態で前進推力を伝達する場合に第二ねじ要素2に後進方向の弾性反発力を与えかつ出力軸5に前進方向の弾性反発力を与える。第二ねじ要素2の後進行程の終端位置での後進速度を減速させる第二弾性要素7を配置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ねじ要素の回転力を第二ねじ要素の軸方向の推力に変換するねじ機構と、前記第一ねじ要素に前記回転力を与える駆動機構と、前記駆動機構と前記ねじ機構とを支持するケースとを備える直動アクチュエータにおいて、
前記第一ねじ要素、前記第二ねじ要素及び前記ケースに対して軸方向に往復移動可能に配置された出力軸と、
前記第二ねじ要素の前進方向の前記推力を前記出力軸まで伝達するように前記出力軸と前記第二ねじ要素との間に配置され、前記出力軸が前進可能な状態で前進方向の前記推力を伝達する場合に前記第二ねじ要素と前記出力軸を前進方向に連動させ、前記出力軸が前進不可な状態で前進方向の前記推力を伝達する場合に前記第二ねじ要素に後進方向の弾性反発力を与えかつ前記出力軸に前進方向の弾性反発力を与える第一弾性要素と、
後進方向の前記推力によって後進させられる前記第二ねじ要素の後進行程の終端位置での後進速度を減速させる弾性反発力を前記第二ねじ要素に与える第二弾性要素と、をさらに備え、
前記第二ねじ要素は、後進方向の前記推力を前記出力軸に伝達すると共に前記第二ねじ要素に対する前記出力軸の前進を規制する第一係止部を有することを特徴とする直動アクチュエータ。
【請求項2】
前記第二ねじ要素は、前進方向に延びる第一中空軸と、後進方向に延びる第二中空軸とを有し、
前記出力軸は、前記第一中空軸の内側に配置された後部を有し、前記第一弾性要素は、前記第一中空軸の内側と前記出力軸の後部との間に配置されており、前記第二ねじ要素は、前記第一弾性要素の後端を受ける第一ばね受け部を有し、前記第一係止部は、前記出力軸の後部の前進を規制するように前記第一中空軸に設けられており、
前記第二中空軸の内側に対して軸方向に摺動可能に嵌合された環状板と、前記ケースに支持された規制部材とをさらに備え、
前記第二弾性要素は、前記第二中空軸の内側に配置されており、前記第二ねじ要素は、前記第二弾性要素の前端を受ける第二ばね受け部と、前記環状板の後進を規制する第二係止部とを有し、前記規制部材は、前記第二ねじ要素の後進行程の途中から前記第二係止部に代わって前記環状板の後進を規制するように設けられている請求項1に記載の直動アクチュエータ。
【請求項3】
前記第二係止部は、前記第二中空軸の内側に取り付けられた止め輪からなる請求項2に記載の直動アクチュエータ。
【請求項4】
前記第二係止部は、前記第二中空軸の後端部を内側に突出するように塑性変形させた加締め部からなる請求項2に記載の直動アクチュエータ。
【請求項5】
前記第二ねじ要素は、前記第一ねじ要素にねじ嵌合されたナットを有し、
前記第二ねじ要素の第一中空軸、第二中空軸、第一ばね受け部及び第二ばね受け部は、前記ナットと一体に形成されている請求項2から4のいずれか1項に記載の直動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ねじ軸とナットの一方の回転運動を他方の直線運動に変換するねじ機構と、そのねじ軸とナットの一方を正逆回転させる駆動機構とを備える直動アクチュエータに関し、特に、ねじ機構と駆動機構をケースでユニット化したものに関する。
【背景技術】
【0002】
直動アクチュエータは、ねじ軸を回転させてナットを直動させるねじ軸回転タイプと、ナットを回転させてねじ軸を直動させるナット回転タイプとに大別される。
【0003】
従来、ねじ機構の直動ねじ要素(ねじ軸回転タイプではナット、ナット回転タイプではねじ軸)が直動アクチュエータの出力部として構成されている。
【0004】
直動アクチュエータの出力部が軸方向に直動するストロークを一定に制限するため、そのストロークの終端位置において直動ねじ要素の軸方向移動を規制することがある。その規制手段としてケースやねじ軸にストッパを設け、出力部である直動ねじ要素をストッパとの当接によって停止させるようにしている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、直動アクチュエータの出力部である直動ねじ要素を相手部材と非連結に配置する使用環境も考えられる。このような使用環境の場合、相手部材を直動アクチュエータに対して配置する位置決めの際に軸方向の位置ずれが発生したり、相手部材が直動アクチュエータから独立して軸方向に動いたりすることがある。このため、駆動機構による直動ねじ要素の前進時、直動ねじ要素が相手部材に衝突し、回転ねじ要素と直動ねじ要素が噛み込むと、ねじ機構は、その後に駆動機構から回転ねじ要素に逆回転力を与えても直動ねじ要素を移動させることができないロック状態になってしまうことがある。
【0007】
また、直動ねじ要素の後進行程の終端位置を定めるストッパの位置が各種誤差の影響により適切でない場合、駆動機構による直動ねじ要素の後進時、後進行程の終端位置で直動ねじ要素がストッパに衝突してねじ機構がロック状態に至る可能性もある。
【0008】
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、直動アクチュエータの駆動機構による直動中の出力部が相手部材と前進方向に衝突した際や直動ねじ要素の後進行程の終端位置に達した際にねじ機構でのロック状態発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するため、この発明は、第一ねじ要素の回転力を第二ねじ要素の軸方向の推力に変換するねじ機構と、前記第一ねじ要素に前記回転力を与える駆動機構と、前記駆動機構と前記ねじ機構とを支持するケースとを備える直動アクチュエータにおいて、前記第一ねじ要素、前記第二ねじ要素及び前記ケースに対して軸方向に往復移動可能に配置された出力軸と、前記第二ねじ要素の前進方向の前記推力を前記出力軸まで伝達するように前記出力軸と前記第二ねじ要素との間に配置され、前記出力軸が前進可能な状態で前進方向の前記推力を伝達する場合に前記第二ねじ要素と前記出力軸を前進方向に連動させ、前記出力軸が前進不可な状態で前進方向の前記推力を伝達する場合に前記第二ねじ要素に後進方向の弾性反発力を与えかつ前記出力軸に前進方向の弾性反発力を与える第一弾性要素と、後進方向の前記推力によって後進させられる前記第二ねじ要素の後進行程の終端位置での後進速度を減速させる弾性反発力を前記第二ねじ要素に与える第二弾性要素と、をさらに備え、前記第二ねじ要素は、後進方向の前記推力を前記出力軸に伝達すると共に前記第二ねじ要素に対する前記出力軸の前進を規制する第一係止部を有する構成を採用したものである。
【0010】
上記構成の採用により、出力軸を直動アクチュエータの出力部とし、第二ねじ要素を直動ねじ要素として、駆動機構による第二ねじ要素の前進駆動中、第二ねじ要素の前進方向の推力が第一弾性要素を介して出力軸に伝達されるので、第二ねじ要素と出力軸を前進方向に連動させることが可能である。また、駆動機構による第二ねじ要素の後進駆動中、第二ねじ要素の後進方向の推力が第一係止部を介して出力軸に伝達されると共に前記第二ねじ要素に対する前記出力軸の前進が規制されるので、第二ねじ要素と出力軸を後進方向に連動させることが可能である。第二ねじ要素の前進駆動中に出力軸が相手部材に衝突した場合、第一弾性要素の弾性反発力が第二ねじ要素に対して後進方向に与えられ、出力軸に対して前進方向に与えられるので、衝突時の衝撃が第一弾性要素で吸収されると共に、第二ねじ要素の前進速度が減速させられる。このため、第一ねじ要素と第二ねじ要素の噛み込みが防止され、これにより、ねじ機構でのロック状態発生が防止される。一方、第二ねじ要素の後進駆動中、第二ねじ要素が後進行程の終端位置に達する場合、その終端位置での後進速度を減速させるように第二弾性要素の弾性反発力が第二ねじ要素に与えられるので、終端位置に達した第二ねじ要素が駆動機構の慣性回転で更に後進することが防止される。このため、第一ねじ要素と第二ねじ要素の噛み込みが防止され、これにより、ねじ機構でのロック状態発生が防止される。
【0011】
具体的には、前記第二ねじ要素は、前進方向に延びる第一中空軸と、後進方向に延びる第二中空軸とを有し、前記出力軸は、前記第一中空軸の内側に配置された後部を有し、前記第一弾性要素は、前記第一中空軸の内側と前記出力軸の後部との間に配置されており、前記第二ねじ要素は、前記第一弾性要素の後端を受ける第一ばね受け部を有し、前記第一係止部は、前記出力軸の後部の前進を規制するように前記第一中空軸に設けられており、前記第二中空軸の内側に対して軸方向に摺動可能に嵌合された環状板と、前記ケースに支持された規制部材とをさらに備え、前記第二弾性要素は、前記第二中空軸の内側に配置されており、前記第二ねじ要素は、前記第二弾性要素の前端を受ける第二ばね受け部と、前記環状板の後進を規制する第二係止部とを有し、前記規制部材は、前記第二ねじ要素の後進行程の途中から前記第二係止部に代わって前記環状板の後進を規制するように設けられているとよい。このようにすると、第一弾性要素及び出力軸の後部を第一係止部で第二ねじ要素の第一中空軸内に保持し、第二弾性要素を環状板と第二係止部で第二ねじ要素の第二中空軸内に保持したサブユニットとし、第一中空軸に対する出力軸の移動方向に応じて第一弾性要素を伸縮させ、規制部材に対する第二中空軸の移動方向に応じて環状板を第二中空軸に対して軸方向に摺動させると共に第二弾性要素を伸縮させ、第二ねじ要素が後進行程の終端位置まで後進させられる場合には、後進行程の途中から規制部材で環状板の後進を規制して第二弾性要素を圧縮させ、後進行程の終端位置に接近する程に大きくなる弾性反発力を環状板に後進方向に与えて規制部材経由でケースに受けさせると共に第二ねじ要素の第二ばね受け部に前進方向に与えて第二ねじ要素の後進速度を減速させることができる。
【0012】
例えば、前記第二係止部は、前記第二中空軸の内側に取り付けられた止め輪、又は、前記第二中空軸の後端部を内側に突出するように塑性変形させた加締め部からなる。第二係止部を止め輪で構成する場合、環状板の規制位置を止め輪の取付け位置に基づいて定めることが可能なため、加工精度の管理が難しい加締め部で構成する場合よりも規制位置の精度に優れる。一方、第二係止部を加締め部で構成する場合、止め輪で構成する場合よりも部品点数を抑えることができる。
【0013】
また、前記第二ねじ要素は、前記第一ねじ要素にねじ嵌合されたナットを有し、前記第二ねじ要素の第一中空軸、第二中空軸、第一ばね受け部及び第二ばね受け部は、前記ナットと一体に形成されていることが好ましい。このようにすると、ナットの雌ねじ部の内径とナットの外周との間の径差を利用して第一ばね受け部及び第二ばね受け部を形成すると共に第一ねじ要素との間を第一弾性要素、第二弾性要素等の配置に利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、この発明は、上記構成の採用により、直動アクチュエータの駆動機構による直動中の出力部としての出力軸が相手部材と前進方向に衝突した際や、直動ねじ要素としての第二ねじ要素が後進行程の終端位置に達した際にねじ機構でのロック状態発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施形態に係る直動アクチュエータを示す縦断面図
【
図3】
図1の状態から直動アクチュエータの出力軸を前進させた様子を示す縦断面図
【
図4】この発明に係る第二係止部の変更例を示す部分縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一例としての実施形態を添付の
図1~
図4に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すこの直動アクチュエータは、第一ねじ要素1の回転力を第二ねじ要素2の軸方向の推力に変換するねじ機構と、第一ねじ要素1に回転力を与える駆動機構3と、駆動機構3と前述のねじ機構とを支持するケース4と、第一ねじ要素1、第二ねじ要素2及びケース4に対して軸方向に往復移動可能に配置された出力軸5と、出力軸5を第二ねじ要素2に対して前進方向に付勢する第一弾性要素6と、第二ねじ要素2をケース4側に対して前進方向に付勢する第二弾性要素7とを備える。
【0018】
ここで、軸方向とは、第一ねじ要素1の回転軸線に沿った方向のことをいう。以下、その回転軸線に対して直角な方向のことを径方向といい、その回転軸線回りに一周する円周方向を周方向という。また、第二ねじ要素2が相手部材100に向かって軸方向に図中右方へ移動する方向を前進方向(前方)とし、第二ねじ要素2が軸方向に図中左方へ移動する方向を後進方向(後方)とする。
【0019】
第一ねじ要素1は、ケース4に対して回転可能かつ軸方向に移動不可に配置されている。第一ねじ要素1は、雄ねじ部を有するねじ軸8と、ねじ軸8に取り付けられた軸受9と、ねじ軸8に取り付けられた止め輪10とで構成されている。
【0020】
ねじ軸8は、その雄ねじ部と反対側の端部で開口した中空軸状になっている。軸受9は、ねじ軸8の雄ねじ部と反対側をケース4に対して回転可能かつ軸方向に移動不可に支持するためのものである。軸受9は、非分離形の転がり軸受からなる。止め輪10は、ねじ軸8に形成された止め輪溝に取り付けられている。軸受9の内輪は、ねじ軸8の肩部と止め輪10とで軸方向に規制されている。軸受9の外輪は、ケース4の肩部と、ケース4の内側に嵌合された間座11とで軸方向に規制されている。間座11は、駆動機構3を構成する電動モータのハウジングで軸方向に受けられている。
【0021】
第二ねじ要素2は、ケース4に対して回転不可かつ軸方向に移動可能に配置されている。第二ねじ要素2は、ねじ軸8の雄ねじ部にねじ嵌合されたナット12と、ナット12の内周の前方側に取り付けられた第一係止部13と、ナット12の内周の後方側に取り付けられた第二係止部14とで構成されている。
【0022】
図1、2に示すように、ナット12には、雌ねじ部12aと、前進方向に延びる第一中空軸12bと、後進方向に延びる第二中空軸12cと、第一弾性要素6の後端を軸方向に受ける第一ばね受け部12dと、第二弾性要素7の前端を軸方向に受ける第二ばね受け部12eと、第二ねじ要素2の回り止めに使用される複数のピン挿入孔12fとが一体に形成されている。
【0023】
図2に示すように、ピン挿入孔12fは、ナット12の外径面から径方向に延びている。複数のピン挿入孔12fは、周方向複数個所に均等配置で形成されている。
【0024】
図1、
図2に示すように、第一中空軸12b及び第二中空軸12cの外径面を含むナット12の外径面は、ケース4の内側に径方向に支持されており、ケース4の内側と軸方向に摺動可能に接触する嵌め合い面になっている。また、この支持により、ナット12は、第一ねじ要素1のねじ軸8と同軸に配置されている。
【0025】
図1に示す第一中空軸12bの内周、第二中空軸12cの内周は、それぞれ雌ねじ部12aと同軸に延びる筒状になっており、その内径は、雌ねじ部12aの内径よりも大きくなっている。第一ばね受け部12d、第二ばね受け部12eは、それぞれ雄ねじ部12aと第一中空軸12b、第二中空軸12cとの間で内径差を設けるための段差面からなる。
【0026】
出力軸5は、第一中空軸12bの内側に配置された後部5aと、後部5aの中心部から前方に突出する段付き軸部5bとを有する。出力軸5の後部5aは、第一中空軸12bの内側に対して軸方向に摺動可能に嵌合されている。出力軸5の段付き軸部5bは、前方に向かって小径となっている。段付き軸部5bの小径側軸部は、相手部材100に軸方向に突き当てられる。なお、相手部材100と出力軸5は、各々が独立して軸方向に移動可能な非連結の状態で配置されており、常に軸方向に一体で移動するとは限らない。
【0027】
第一弾性要素6、第二弾性要素7は、それぞれ環状ばねからなる。環状ばねとして、圧縮コイルばねが採用されている。第一弾性要素6と第二弾性要素7は、それぞれ複数のばね部材で構成してもよい。
【0028】
第一弾性要素6は、第一中空軸12bの内側において第一ばね受け部12dと出力軸5の後部5aとの間に配置されている。
【0029】
第一係止部13は、止め輪からなる。第一係止部13は、第一中空軸12bの内側に形成された止め輪溝に取り付けられている。第一係止部13は、第二ねじ要素2の後進方向の推力を出力軸5に伝達すると共に、第一弾性要素6によって生成される弾性反発力に抗して第一中空軸12bに対する出力軸5の前進を阻止する。
【0030】
この直動アクチュエータは、第二中空軸12cの内側に対して軸方向に摺動可能に嵌合された環状板15をさらに備える。第二弾性要素7は、第二中空軸12cの内側において第二ばね受け部12eと環状板15との間に配置されている。
【0031】
第二係止部14は、止め輪からなる。第二係止部14は、第二中空軸12cの内側に形成された止め輪溝に取り付けられている。第二係止部14は、第二ねじ要素2の前進方向の推力を環状板15に伝達すると共に、第二弾性要素7によって生成される弾性反発力に抗して第二中空軸12cに対する環状板15の後進を阻止する。
【0032】
この直動アクチュエータは、ケース4の内側に支持された規制部材16をさらに備える。規制部材16は、前方に向かって小径となる中空軸状になっている。規制部材16の内側にねじ軸8の雄ねじ部が通されている。規制部材16は、その大径側軸部においてケース4の肩部に軸方向に支持されることにより、ケース4及びねじ機構に対して後進不可な状態になっている。また、規制部材16は、その大径側軸部においてケース4の内周に径方向に支持されることにより、ねじ機構と同軸に保たれている。
【0033】
規制部材16の小径側軸部の外径は、第二中空軸12cの内径及び第二係止部14の内径よりも小さい。規制部材16は、第二ねじ要素2の後進行程の途中からその小径側軸部の前端において環状板15に軸方向に当接する。その当接後、規制部材16は、第二係止部14に代わって第二中空軸12cに対する環状板15の後進を阻止する。
【0034】
規制部材16の大径側軸部は、第二中空軸12cの後端との接触によってケース4に対する第二ねじ要素2の後進を停止させる部位となる。すなわち、規制部材16の大径側軸部は、ケース4に対する第二ねじ要素2の後進行程の終端位置(後進限界位置)を定める部位となる。第一係止部13及び第一弾性要素6によって出力軸5と第二ねじ要素2の一体的後進が確保されているため、ケース4に対する出力軸5の往復移動のストロークの後進側終端位置は、第二ねじ要素2が後進行程の終端位置にあるときの出力軸5の位置に相当する。
【0035】
駆動機構3は、駆動軸17を有する電動モータからなる。駆動機構3は、駆動軸17を正逆回転させることができる。駆動軸17とねじ軸8の中空部は、正逆回転のいずれの回転方向にも回転力を伝達可能に嵌合されている。駆動軸17に取り付けられた回転伝達部材18は、軸受9と径方向に重なる位置でねじ軸8の中空部に径方向に接合されている。尚、回転伝達部材は、二面幅やDカットといった多角形状、またはスプライン等が適用される。駆動機構3の駆動軸17と第一ねじ要素1とを直結した例を示したが、駆動軸と第一ねじ要素とを平行に配置したり、駆動軸と第一ねじ要素間に回転力を伝達する歯車機構を追加したりすることも可能である。
【0036】
ケース4は、第一ねじ要素1及び第二ねじ要素2を支持するねじケース19と、駆動機構3を支持するモータケース20と、ねじケース19の前端面に突き合わされる前端ケース21とで構成されている。
【0037】
ねじケース19の内周は、ナット12及び規制部材16を径方向に支持して軸方向に案内する。ねじケース19の内周には、
図2に示すように、複数のピン挿入溝19aが形成されている。ピン挿入溝19aは、ナット12のピン挿入孔12fと径方向に対向する部位で軸方向に延びている。ナット12のピン挿入孔12fに保持されたピン22は、ねじケース19のピン挿入溝19aに挿入されている。ナット12に回転力が与えられると、ナット12のピン挿入孔12fに回転方向に押されたピン22がねじケース19のピン挿入溝19aと回転方向に係合するため、ナット12はケース4に対して回転することができない。なお、ピンは、ナット側にもピン挿入溝を設けて軸方向に向けて設置してもよいし、ピンを用いずに多角断面形状のナットとねじケースの嵌合構造でナットをねじケースで回り止めしてもよい。
【0038】
モータケース20は、ねじケース19の後端側に結合されている。モータケース20は、駆動機構3の駆動軸17と第一ねじ要素1の同軸配置及び結合状態を保つように駆動機構3のハウジング部を支持する。
【0039】
図1、3に示すように、前端ケース21は、出力軸5の段付き軸部5bのうちのねじケース19の内周よりも前方に位置する小径側軸部の周囲を取り囲む貫通口21aと、段付き軸部5bの大径側軸部及び第一中空軸12bの前端と軸方向に対向する後端面21bとを有する。前端ケース21の後端面21bは、径方向に沿う環状平坦面からなる。
【0040】
前端ケース21の後端面21bは、
図3に示すように、出力軸5との接触によってケース4に対する出力軸5の前進を停止させる部位となる。また、前端ケース21の後端面21bは、出力軸5との接触後に第一中空軸12bの前端と接触することによってケース4に対する第二ねじ要素2の前進を停止させる部位となる。すなわち、前端ケース21の後端面21bは、ケース4に対する出力軸5の往復移動のストロークの前進側終端位置(前進限界位置)と、ケース4に対する第二ねじ要素2の前進行程の終端位置とを定める部位となる。
【0041】
出力軸5は、前述のように一定の往復移動のストロークの範囲内でケース4に対して軸方向に往復移動可能に配置されている。出力軸5は、この直動アクチュエータの出力部となる部位であり、出力軸5の往復移動のストロークは、この直動アクチュエータで相手部材100の軸方向位置を調整可能な駆動範囲に相当する。
【0042】
ここで、
図1は、第二ねじ要素2が駆動機構3によって後退させられた状態を示し、
図3は、第二ねじ要素2が駆動機構3によって最も前進させられた状態を示す。駆動機構3による第二ねじ要素2の前後進のストロークは、出力軸5の往復移動のストロークよりも長く、その冗長分は、第一弾性要素6と第二弾性要素7を駆動機構3によって圧縮させられる軸方向長さに基づく。
【0043】
第一弾性要素6と第二弾性要素7は、予め所定の圧縮状態で第一中空軸12b、第二中空軸12cの内側に配置されている。これは、相手部材100やケース4側から抵抗を受けずに第二ねじ要素2及び出力軸5が前進又は後進する際、第一係止部13、出力軸5経由又は第二係止部14、環状板15経由で伝達された推力で第一弾性要素6又は第二弾性要素7が一層軸方向に圧縮されることを避け、第二ねじ要素2の前進又は後進に連動して出力軸5を前進又は後進させ、第二ねじ要素2の前進又は後進に対する出力軸5のストロークの損失を実質的に無くすためである。
【0044】
今、
図3の状態から駆動機構3によって第二ねじ要素2を後進駆動する場合を考える。この場合、第二ねじ要素2の第一係止部13と第一ばね受け部12dと第一弾性要素6によって第二ねじ要素2と出力軸5の後進が連動させられる。このとき、環状板15は、第二係止部14によって第二中空軸12cから脱落しないように規制されている。第二ねじ要素2の後進が進むと、第二ねじ要素2の後進行程の途中で規制部材16の前端が環状板15に当接する。この当接後、
図1に示すように、第二ねじ要素2の後進がさらに進むと、第二中空軸12cに対して環状板15が前進して第二係止部14から離れ、規制部材16の前端が第二係止部14に代わって環状板15の後進を阻止する状態となり、これに伴い、環状板15と第二ばね受け部12eとの間の軸方向間隔が狭くなっていくため、第二弾性要素7が軸方向に圧縮され、その弾性反発力が第二ばね受け部12eに前進方向に与えられ、環状板15に後進方向に与えられ、環状板15、規制部材16を介してケース4に受けられる。このため、第二ばね受け部12eに与えられた前進方向の弾性反発力は、第二ねじ要素2の後進を減速させる作用を奏する。この前進方向の弾性反発力は、第二中空軸12cの後端と規制部材16との接触(このときの第二中空軸12cの後端の位置を
図1中に一点鎖線で示す。)によって第二ねじ要素2の後進が停止させられる後進行程の終端位置まで次第に大きくなる。このため、第二ねじ要素2の後進行程の終端位置での第二ねじ要素2の後進速度は減速させられており、第二中空軸12cの後端と規制部材16の接触は、第一ねじ要素1のねじ軸8と第二ねじ要素2の雌ねじ部12aの噛み込みでロック状態が発生する程の勢いになり難く、仮に第二中空軸12cの後端と規制部材16の衝突が生じたとしても第二弾性要素7の衝撃吸収作用でねじ軸8と雌ねじ部12aの噛み込みが防止される。これにより、雌ねじ部12aとねじ軸8間がロック状態になる程に高摩擦状態とならず、ねじ機構でのロック状態発生が防止される。
【0045】
次に、第二ねじ要素2の後進行程の終端位置から駆動機構3によって第二ねじ要素2を前進駆動する場合を考える。この場合、出力軸5がケース4の後端面21bに接触するまでの間、第二ねじ要素2の第一ばね受け部12dと第一弾性要素6と第一係止部13によって第二ねじ要素2と出力軸5の前進が連動させられる。また、第二ねじ要素2が前進していくと、規制部材16の前端と第二ばね受け部12eとの間の軸方向間隔が広がっていき、第二弾性要素7が伸長して環状板15が第二係止部14に接近していく。やがて、環状板15が第二係止部14に当接すると、規制部材16の前端に代わって第二係止部14が環状板15の後進を阻止する状態となる。やがて、
図3に示すように、出力軸5の段付き軸部5bの大径側軸部がケース4の後端面21bに接触すると、出力軸5の前進が停止させられる。さらに第二ねじ要素2が前進すると、出力軸5に対して第二ねじ要素2が前進していき、出力軸5の後部5aと第一ばね受け部12dとの間の軸方向間隔が狭くなっていく。このため、第一弾性要素6が軸方向に圧縮され、その弾性反発力が第一ばね受け部12dに後進方向に与えられ、出力軸5に前進方向に与えられてケース4に受けられる。このため、第一ばね受け部12dに与えられた後進方向の弾性反発力は、第二ねじ要素2の前進を減速させる作用を奏する。この後進方向の弾性反発力は、
図3に示すように第一中空軸12bの前端とケース4の後端面21bとが接触して第二ねじ要素2が前進行程の終端位置に停止させられるまで次第に大きくなる。このため、第二ねじ要素2の前進行程の終端位置での第二ねじ要素2の前進速度は減速させられており、第一中空軸12bの前端とケース4の後端面21bの接触は、ねじ軸8と雌ねじ部12aの噛み込みでロック状態が発生する程の勢いになり難く、仮に第一中空軸12bの前端とケースの後端面21bの衝突が生じたとしても第一弾性要素6の衝撃吸収作用でねじ軸8と雌ねじ部12aの噛み込みが防止される。これにより、雌ねじ部12aとねじ軸8間がロック状態になる程に高摩擦状態とならず、ねじ機構でのロック状態発生が防止される。
【0046】
ここで、第二ねじ要素2の前進行程の途中で出力軸5が相手部材100に軸方向に衝突した場合を考える。この場合、衝突時に駆動機構3を直ぐに停止させることはできず、出力軸5は第二ねじ要素2と等速に前進できないため、第二ねじ要素2が出力軸5に対してさらに前進させられる。この際、第一弾性要素6の前端が出力軸5の後部5aに受けられた状態のまま第一弾性要素6の後端が第二ねじ要素2の第一ばね受け部12dから前進方向に押されるので、第一弾性要素6が圧縮される。その第一弾性要素6の弾性反発力は、第一ばね受け部12dに後進方向に与えられ、出力軸5に前進方向に与えられて相手部材100に伝わるので、第二ねじ要素2の前進速度を減速させる作用を奏し、また、第一弾性要素6により、衝突時の衝撃が吸収される。これにより、ねじ軸8と雌ねじ部12a間が高摩擦状態とならず、ねじ機構でのロック状態発生が防止される。
【0047】
なお、この実施形態では、第二ねじ要素2の後進行程の終端位置と前進行程の終端位置をそれぞれケース4との接触で定めるようにしたが、第一弾性要素6の弾性反発力で第二ねじ要素2の前進行程の終端位置を定めたり、第二弾性要素7の弾性反発力で第二ねじ要素2の後進行程の終端位置を定めたりしてもよい。すなわち、駆動機構3の最大出力に基づく第二ねじ要素2の推力と同等以上の弾性反発力を生成可能な第一弾性要素6を採用すれば、出力軸5の前進停止後に増大する第一弾性要素6の弾性反発力で第二ねじ要素2の前進が停止させられる位置が前進行程の終端位置となる。また、駆動機構3の最大出力に基づく第二ねじ要素2の推力と同等以上の弾性反発力を生成可能な第二弾性要素7を採用すれば、規制部材16と環状板15の当接後に増大する第二弾性要素7の弾性反発力で第二ねじ要素2の後進が停止させられる位置が後進行程の終端位置となる。
【0048】
この直動アクチュエータは、上述のように、第一ねじ要素1の回転力を第二ねじ要素2の軸方向の推力に変換するねじ機構と、第一ねじ要素1に回転力を与える駆動機構3と、駆動機構3とねじ機構とを支持するケース4と、第一ねじ要素1、第二ねじ要素2及びケース4に対して軸方向に往復移動可能に配置された出力軸5と、第二ねじ要素2の前進方向の推力を出力軸5まで伝達するように出力軸5と第二ねじ要素2との間に配置された第一弾性要素6と、後進方向の推力によって後進させられる第二ねじ要素2の後進行程の終端位置での後進速度を減速させる弾性反発力を第二ねじ要素2に与える第二弾性要素7と、を備え、出力軸5が前進可能な状態で第一弾性要素6が前進方向の推力を伝達する場合に第二ねじ要素2と出力軸5を前進方向に連動させ、出力軸5が前進不可な状態で第一弾性要素6が前進方向の推力を伝達する場合に第二ねじ要素2に後進方向の弾性反発力を与えかつ出力軸5に前進方向の弾性反発力を与え、第二ねじ要素2が後進方向の推力を出力軸5に伝達すると共に第二ねじ要素2に対する出力軸5の前進を規制する第一係止部13を有することにより、出力軸5を相手部材100に対する直動アクチュエータの出力部とし、第二ねじ要素2を直動ねじ要素として、駆動機構3による第二ねじ要素2の前進駆動中、第二ねじ要素2の前進方向の推力が第一弾性要素6を介して出力軸5に伝達されるので、第二ねじ要素2と出力軸5を前進方向に連動させることが可能である。また、駆動機構3による第二ねじ要素2の後進駆動中、第二ねじ要素2の後進方向の推力が第一係止部13を介して出力軸5に伝達されると共に第二ねじ要素2に対する出力軸5の前進が規制されるので、第二ねじ要素2と出力軸5を後進方向に連動させることが可能である。第二ねじ要素2の前進駆動中に出力軸5が相手部材100に衝突した場合、第一弾性要素6の弾性反発力が第二ねじ要素2に対して後進方向に与えられ、出力軸に対して前進方向に与えられるので、衝突時の衝撃が第一弾性要素6で吸収されると共に、第二ねじ要素2の前進速度が減速させられる。このため、第一ねじ要素1と第二ねじ要素2の噛み込みが防止され、これにより、ねじ機構でのロック状態発生が防止される。一方、第二ねじ要素2の後進駆動中、第二ねじ要素2が後進行程の終端位置に達する場合、その終端位置での後進速度を減速させるように第二弾性要素7の弾性反発力が第二ねじ要素2に与えられるので、終端位置に達した第二ねじ要素2が駆動機構の慣性回転で更に後進することが防止される。このため、第一ねじ要素1と第二ねじ要素2の噛み込みが防止され、これにより、ねじ機構でのロック状態発生が防止される。
【0049】
このように、この直動アクチュエータは、駆動機構3による直動中の出力部としての出力軸5が相手部材100と前進方向に衝突した際や、直動ねじ要素としての第二ねじ要素2が後進行程の終端位置に達した際にねじ機構でのロック状態発生を防止することができる。
【0050】
また、この直動アクチュエータは、第二ねじ要素2が前進方向に延びる第一中空軸12bと、後進方向に延びる第二中空軸12cとを有し、出力軸5が第一中空軸12bの内側に配置された後部5aを有し、第一弾性要素6が第一中空軸12bの内側と出力軸5の後部5aとの間に配置されており、第二ねじ要素2が第一弾性要素6の後端を受ける第一ばね受け部12dを有し、第一係止部13が出力軸5の後部5aの前進を規制するように第一中空軸12bに設けられており、第二中空軸12cの内側に対して軸方向に摺動可能に嵌合された環状板15と、ケース4に支持された規制部材16と、をさらに備え、第二弾性要素7が第二中空軸12cの内側に配置されており、第二ねじ要素2が第二弾性要素7の前端を受ける第二ばね受け部12eと、環状板15の後進を規制する第二係止部14とを有し、規制部材16が第二ねじ要素2の後進行程の途中から第二係止部14に代わって環状板15の後進を規制するように設けられていることにより、第一弾性要素6及び出力軸5の後部5aを第一係止部13で第一中空軸12b内に保持し、第二弾性要素7を環状板15と第二係止部14で第二中空軸12c内に保持したサブユニットとし、第一中空軸12bに対する出力軸5の移動方向に応じて第一弾性要素6を伸縮させ、規制部材16に対する第二中空軸12cの移動方向に応じて環状板15を第二中空軸12cに対して軸方向に摺動させると共に第二弾性要素7を伸縮させ、第二ねじ要素2が後進行程の終端位置まで後進させられる場合には、後進行程の途中から規制部材16で環状板15の後進を規制して第二弾性要素7を圧縮させ、後進行程の終端位置に接近する程に大きくなる弾性反発力を環状板15に後進方向に与えて規制部材16経由でケース4に受けさせると共に第二ばね受け部12eに前進方向に与えて第二ねじ要素2の後進速度を減速させることができる。
【0051】
なお、第二係止部14及び環状板15を省略し、規制部材16を第二中空軸12cの内側に挿入して規制部材16の前端で直接に第二弾性要素7の後端を受けるようにすることも可能だが、そうすると、規制部材16の外径面と第二中空軸12cの摺動による抵抗が駆動機構3にとって損失となるので好ましくない。
【0052】
また、この直動アクチュエータは、第二係止部14が第二中空軸12cの内側に取り付けられた止め輪からなるので、環状板15の規制位置を止め輪の取付け位置に基づいて定めることができる。
【0053】
なお、
図4に第二係止部の変更例を示すように、第二中空軸12cと一体に形成された第二係止部12gを採用することも可能である。例えば、第二中空軸12cの後端部を周方向等配の複数個所で第二中空軸12cの内側に突出するように塑性変形させる加締め加工により、第二係止部12gを加締め部で構成することが可能である。環状板15の規制位置を止め輪の取付け位置に基づいて定める
図1例は、加工精度の管理が難しい
図4例の場合よりも規制位置の精度に優れる。一方、
図4例のように第二係止部12gを加締め部で構成する場合、止め輪で構成する
図1例の場合よりも部品点数を抑えることができる。
【0054】
また、この直動アクチュエータは、第二ねじ要素2が第一ねじ要素1にねじ嵌合されたナット12を有し、第二ねじ要素2の第一中空軸12b、第二中空軸12c、第一ばね受け部12d及び第二ばね受け部12eがナット12と一体に形成されていることにより、ナット12の雌ねじ部12aの内径とナット12の外周との間の径差を利用して第一ばね受け部12d及び第二ばね受け部12eを形成すると共に第一ねじ要素1との間を第一弾性要素6、第二弾性要素7等の配置に利用することができる。
【0055】
なお、この直動アクチュエータでは、第一ねじ要素1に雄ねじ部、第二ねじ要素2に雌ねじ部を設けたが、第一ねじ要素に雌ねじ部、第二ねじ要素に雄ねじ部を設けたねじ機構に変更することも可能である。この変更は、例えば、第一ねじ要素のねじ軸に第一、第二中空軸相当の部位を設け、これら中空軸の内側に出力軸、第一弾性要素、第二弾性要素を保持させることで実現可能である。この直動アクチュエータでは、雌ねじ部12aの径方向肉厚を利用してばね受け部12d,12eとする段差面が形成されているので、ねじ軸から中空軸を延長する場合に比して第二ねじ要素2の軸方向長さを抑えることができる。また、ねじ機構として第一ねじ要素1と第二ねじ要素2のねじ山同士が直接に螺合する滑りねじを採用したが、ボールねじを採用することも可能である。
【0056】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 第一ねじ要素
2 第二ねじ要素
3 駆動機構
4 ケース
5 出力軸
5a 後部
6 第一弾性要素
7 第二弾性要素
8 ねじ軸
12 ナット
12b 第一中空軸
12c 第二中空軸
12d 第一ばね受け部
12e 第二ばね受け部
12g,14 第二係止部
13 第一係止部
15 環状板
16 規制部材