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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056928
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】ポイントメイク化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20220404BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220404BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/92
A61K8/19
A61K8/31
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164930
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大畑 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山田 武
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB231
4C083AB232
4C083AC012
4C083AC372
4C083AC421
4C083AC422
4C083CC11
4C083DD11
4C083DD17
4C083DD28
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】水と接触した際に水への色素の溶出を抑制するポイントメイク化粧料を提供する。
【解決手段】構成脂肪酸が炭素数12~18の脂肪酸であり、HLBが3.2~15であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)構成脂肪酸が炭素数12~18の脂肪酸であり、HLBが3.2~15であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(B)油剤
(C)レーキ色素
を含有する、水との接触においても色素の溶出を抑制するポイントメイク化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポイントメイク化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポイントメイク化粧料は睫毛や肌、口唇に塗布して使用するものであり、涙や飲料等の水分が塗布部に接触することがある。ポイントメイク化粧料などに使用される色素のうち、金属でレーキ処理され水に不溶となったレーキ色素は、金属イオンが水分中のナトリウムイオンと置換されることで水溶性となり、水中へ溶出し色にじみや色移りが生じる問題があった。
【0003】
レーキ色素と水分が接触するのを防ぐため、フッ素系の油剤を用い撥水性を付与した口唇化粧料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、安全性の問題や使用感の観点からフッ素系原料の配合は好ましくない場合がある。
【0004】
また、口唇化粧料が直接水分と接触するのを防ぐため、口唇化粧料の上から塗布し保護するオーバーコート剤が提案されている(例えば、特許文献2参照)。オーバーコート剤はメークアップ化粧料の色移りを防止し、かつ使用感も優れるものであるが、化粧料を塗布した面上に適用する必要があり、工程が煩雑なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-137226号公報
【特許文献2】国際公開WO2017/170704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水と接触した際に水への色素の溶出を抑制するポイントメイク化粧料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、油剤とレーキ色素の混合物に、構成脂肪酸が炭素数12~18の脂肪酸であり、HLBが3.2~15であるポリグリセリン脂肪酸エステルを配合したポイントメイク化粧料が、水と接触した際に水への色素の溶出が無く、上記課題を解決し得る事を見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
即ち、本発明は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを油剤及びレーキ色素と併用してポイントメイク化粧料に配合することで、水と接触した際に水への色素の溶出を抑制するポイントメイク化粧料の開発を可能とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、範囲を表す表記「~」は、上限と下限を含むものである。
【0010】
本発明は、(A)構成脂肪酸が炭素数12~18の脂肪酸であり、HLBが3.2~15であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する。HLBは4~15であることが好ましい。
【0011】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンの製造方法は特に限定はないが、常法のポリグリセリンの製造方法であるグリセリンをアルカリ触媒下に常圧又は減圧下で加熱して得る方法などが挙げられる。
【0012】
ポリグリセリンの平均重合度は、2~20であることが好ましく、2~10であることがより好ましい。
【0013】
ポリグリセリンの平均重合度は、水酸基価から算出したものであり、以下の(i)式により算出する。また、(i)式中の水酸基価は「基準油脂分析試験法2013年度版」(日本油化学会制定)に準拠し測定する。
【0014】
平均重合度=(112220-18×水酸基価)/(74×水酸基価-56110)(i)
【0015】
成分(A)のHLBは以下の(ii)式により求める。
HLB値=20×(1-S/A)[S:エステルのけん化価、A:脂肪酸の酸価](ii)
【0016】
本発明に用いる成分(A)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、HLBが3.2~15であり、構成脂肪酸は、炭素数12~18の飽和又は不飽和の脂肪酸である。具体的にはイソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、イソステアリン酸ポリグリセリル-6、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10、テトララウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10などが挙げられる。ポイントメイク化粧料に対し、1%以上配合されることが好ましい。
【0017】
本発明のポイントメイク化粧料には、(B)油剤と(C)レーキ色素を含有する。
【0018】
成分(B)は特に限定されないが、例えばリンゴ酸ジイソステアリル、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、水添ヒマシ油、ポリブテン、イソドデカン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリエチルヘキサノインなどが挙げられる。中でも、リンゴ酸ジイソステアリルが好ましい。
【0019】
成分(C)は特に限定されないが、例えば赤202、赤204、赤206、黄4などが挙げられる。ポイントメイク化粧料に対し、0.01~10%で配合されることが好ましい。
【0020】
本発明のポイントメイク化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で通常のポイントメイク化粧料に使用される成分、例えば、粉体成分、油性成分、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、水溶性高分子、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料、各種ビタミン、アミノ酸、生薬、消炎剤、細胞賦活剤等を適宜配合することが出来る。
【0021】
本発明のポイントメイク化粧料は、用途や形状は問わず、例えば口紅、リキッドルージュ、リップグロス、リップライナー、アイライナー、アイシャドウ、チーク、ファンデーション、コンシーラー、プレストパウダー等が挙げられる。
【0022】
本発明のポイントメイク化粧料の調製方法は、特に限定されない。
【0023】
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例0024】
〈実施例1~13、比較例1~4〉
表1、2に示す成分を表に示す組成で70℃において加熱溶解した後、室温まで冷却して、ポイントメイク化粧料を製造した。得られたポイントメイク化粧料を用い、水と接触した際の水への色素の溶出確認試験を実施した。シャーレ上にポイントメイク化粧料を取り、水と接触後水への色素の溶出に要した時間を評価した。
(基準)
◎:水と接触後60秒の間に水への色素の溶出が無い
○:水と接触後20秒の間に水への色素の溶出が無い
△:水と接触後10秒の間に水への色素の溶出が無い
×:水と接触直後に水への色素の溶出がある
【0025】
【表1】









【0026】
【表2】
【0027】
※1:Sフェイス IS-201P(阪本薬品工業製)
※2:Sフェイス IS-202P(阪本薬品工業製)
※3:Sフェイス IS-401P(阪本薬品工業製)
※4:Sフェイス IS-601P(阪本薬品工業製)
※5:Sフェイス IS-1001P(阪本薬品工業製)
※6:Sフェイス IS-1002P(阪本薬品工業製)
※7:Sフェイス IS-1005P(阪本薬品工業製)
※8:Sフェイス IS-1009P(阪本薬品工業製)
※9:Sフェイス M-1001(阪本薬品工業製)
※10:SYグリスター MO-7S(阪本薬品工業製)
【0028】
HLBが3.2~15のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた実施例1~13は、HLBが3.2未満のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた比較例1、HLBが15より高いポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた比較例2、炭素数が8のポリグリセリンを用いた比較例3、ポリグリセリン脂肪酸エステルではないものを用いた比較例4に比べ、水接触後の水への色素の溶出抑制効果に優れていた。