(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056936
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】グルココルチコイド受容体阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/585 20060101AFI20220404BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220404BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220404BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220404BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220404BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220404BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220404BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61K31/585
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/18
A23L33/10
A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164943
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】591262779
【氏名又は名称】救心製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】507148456
【氏名又は名称】学校法人 岩手医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 康晴
(72)【発明者】
【氏名】堀 厚
(72)【発明者】
【氏名】上田 実
(72)【発明者】
【氏名】田村 理
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD69
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC04
4B117LK06
4B117LK17
4B117LP01
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA13
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4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA18
(57)【要約】
【課題】新規なグルココルチコイド受容体阻害剤を提供する。
【解決手段】3α-ブファリン、3α-ブファリン誘導体、又は3α-ブファリン誘導体の薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有するグルココルチコイド受容体阻害剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3α-ブファリン、3α-ブファリン誘導体、又は3α-ブファリン誘導体の薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有するグルココルチコイド受容体阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載のグルココルチコイド受容体阻害剤を含む中枢神経障害改善組成物。
【請求項3】
医薬品又は医薬部外品である請求項2に記載の中枢神経障害改善組成物。
【請求項4】
飲食品である請求項2に記載の中枢神経障害改善組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルココルチコイド受容体阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グルココルチコイドは副腎皮質より放出されるホルモンの一種であり、炎症反応を抑え、様々なストレスに対処する作用を有することが知られている。グルココルチコイド受容体に対して作動薬として働く物質は、強い抗炎症作用と免疫抑制作用を有し、慢性の副腎皮質機能低下症(アジソン病)や膠原病、アレルギー、自己免疫疾患、血液疾患などに広く用いられている。しかしながら、こうした物質は全身性に作用するため、大量投与や長期投与によって血糖上昇、高血圧、骨粗しょう症、消化性潰瘍、易感染等の様々な副作用が起こることが知られている。
【0003】
一方、グルココルチコイド受容体に対して阻害作用を有する薬物は、アルツハイマー病やパーキンソン病のような神経変性疾患や慢性の炎症反応、治療抵抗性のうつ病患者において、過剰のグルココルチコイドが中枢神経系へのダメージを引き起こし、その病態の悪化と関係していることが、近年明らかとなった。そこで、これらの疾患の治療のための創薬ターゲットの一つとなっている(非特許文献1)。
【0004】
具体的には、アルツハイマー病モデル動物とされる遺伝子改変マウスにおいて、グルココルチコイド受容体の拮抗薬が行動障害を改善し(非特許文献2)、また、慢性ストレスモデルラットにおいてグルココルチコイド受容体の阻害薬が不安行動の低下を示すことが確認されている。グルココルチコイド受容体阻害薬が、これら疾患の予防や治療に寄与する可能性が報告されている(非特許文献3、4)
【0005】
グルココルチコイド受容体阻害剤としては、ミフェプリストン(RU-486)が知られている(非特許文献5)。このミフェプリストンは抗黄体形成ホルモン作用も備えており、臨床的には米国やドイツなどで妊娠初期の人工妊娠中絶薬として使われている。また、現在開発が進められているレラコリラントにも抗黄体形成ホルモン作用があることが知られており(非特許文献6)、より受容体選択性のある物質の開発が望まれている。
【0006】
近年、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病に代表される中枢神経変性疾患は、その患者数が増加しているものの、根本的治療薬は存在しない。このため、その予防や治療に寄与する薬剤等の発明は喫緊の課題の一つである。また、慢性ストレスによるうつ病や不眠症、高血圧などの循環器障害、自律神経調節障害などが社会活動において生産性低下を招いて社会問題となっている。こうした慢性ストレス患者には、中枢神経系の器質的な障害がみられることが報告されている。
【0007】
中枢神経系の器質的障害をきたす疾患に対して、障害予防あるいは組織修復作用を持つ物質の研究や再生医療による治療のための研究が進められている。しかしながら、中枢神経障害を改善する有効な特効薬は存在せず、再生医療もコスト面や安全性の問題で広く実用化されるに至っていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Alejandro F. De Nicola et al., 2020. Insights into thetherapeutic potential of glucocorticoid receptor modulators forneurodegenerative diseases Int J. mol. Sci. 21: 2137.
【非特許文献2】M. Pedrazzoli et al., 2019. Glucocorticoid receptors modulatedendric spine plasticity and microglia activity in and animal model ofAlzheimer’s disease. Neurobiology of Disease 131: 104568.
【非特許文献3】J. Ding et al., 2019. Late glucocorticoid receptor antagonismchanges the outcome of adult life stress. Psychoneuroendocrinology 107:169-178.
【非特許文献4】吾郷由希夫ら.,2009.うつ病と副腎皮質ホルモン受容体.日薬理誌134:304-308.
【非特許文献5】Sergiu Dalm, Adriaan M. Karssen, Onno C. Meijer1, Joseph K.Belanoff, E. Ronald de Kloet1:Resetting the StressSystem with a Mifepristone Challenge. Cellular and Molecular Neurobiology(2019) 39:503-522.
【非特許文献6】Sherice Williams and Chaitali Ghosh: Neurovascular glucocorticoid receptorsand glucocorticoids: implications in health, neurological disorders and drugtherapy. Drug Discovery Today (2020) 25:89-106.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規なグルココルチコイド受容体阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、3α-ブファリンが、グルココルチコイド受容体を阻害する作用を有することを見出した。すなわち、本発明は、3α-ブファリン、3α-ブファリン誘導体、又は3α-ブファリン誘導体の薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有するグルココルチコイド受容体阻害剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、新規なグルココルチコイド受容体阻害剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】グルココルチコイド受容体に対する3α-ブファリンのアンタゴニスト活性を示す図である。
【
図2】ビタミンD受容体に対する3α-ブファリンのアンタゴニスト活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のグルココルチコイド受容体阻害剤は、3α-ブファリン、3α-ブファリン誘導体、又は3α-ブファリン誘導体の薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する。3α-ブファリンは、下記化学式で表される化合物であり、蟾酥(センソ)の主薬効成分であるブファジエノライドの一つであるブファリンの主代謝物である。
【0014】
【0015】
センソは、ヒキガエル科のアジアヒキガエル(Bufogargarizans CANTOR)又はヘリグロヒキガエル(Bufo melanostictus SCHNEIDER)の耳腺分泌物を集めたもので、主薬効成分として強心ステロイド成分ブファジエノライドとインドールアルカロイド成分が知られている(第17改正日本薬局方)。センソは、古来強心作用、抗炎症作用、呼吸興奮作用、局所麻酔作用を有することが知られているため、日本では動悸、息切れ、気つけの効能を有する医薬品の成分あるいは原料としても使われている(第17改正日本薬局方解説書(廣川書店))。
【0016】
センソの強心成分ブファジエノライドは、ジギタリス由来の強心配糖体と類似した作用機序を有するが、生体内で早期に代謝され、その代謝物は薬理作用が弱まることが知られている。3α-ブファリンは、センソに含まれる強心成分の標的分子とされるNa+,K+-ATPaseに対する阻害作用が、ブファリンに比べて大幅に減弱することが知られている(東間章二ら.,1991, センソ成分Bufalin及びCinobufaginの生体内動態.薬学雑誌111:687-694.)。
【0017】
本発明者らは、ブファジエノライド及びその主代謝物の核内受容体に対する作用を検討した結果、3α-ブファリンがグルココルチコイド受容体作動薬の作用に拮抗することを見出し、本発明を成すに至ったものである。
【0018】
本発明のグルココルチコイド受容体阻害剤における3α-ブファリンは、任意の手法により得ることができる。例えば、公知の有機化学的手法により合成することができる。あるいは、センソなどの生薬又はヒキガエルの耳腺分泌物を原料として、常法により抽出・精製を行ってブファリンを得、この化合物から有機化学的又は生物学的な手法で得ることもできる。
【0019】
3α-ブファリン誘導体としては、例えば、以下のものが挙げられる。
・3α位の水酸基が、メトキシ基、アセトキシ基、カルボキシル基、酢酸エステル、コハク酸エステル、グルタリル酸エステル、アジピン酸エステル、ピメリン酸エステル、又はスベリン酸エステルに置換されたもの
・1β位の水素原子が水酸基に置換されたもの
・5β位の水素原子が水酸基に置換されたもの
・10位のメチル基がヒドロキシメチル基に置換されたもの
・11位の水素原子が酸素原子、11α位の水素原子が水酸基、又は11β位の水素原子が水酸基に置換されたもの
・12位の水素原子が酸素原子、12α位の水素原子が水酸基、又は12β位の水素原子が水酸基に置換されたもの
・16β位の水素原子がアセトキシ基、又は水酸基に置換されたもの
【0020】
また、本明細書において、薬学的に許容可能な塩は、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等、各種の塩を含む。例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、及び酒石酸塩等の有機酸塩を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0021】
金属塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が挙げられる。アンモニウム塩の例としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩が挙げられる。有機アミン付加塩の例としては、モルホリン付加塩、ピペリジン付加塩が挙げられる。アミノ酸付加塩の例としては、グリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩、アルギニン付加塩が挙げられる。
【0022】
本発明のグルココルチコイド受容体阻害剤は、アルツハイマー病やパーキンソン病に代表される神経変性疾患や慢性ストレスなどによる中枢神経系の障害の予防、進行抑制、及び/又は治療に有用である。したがって、本発明のグルココルチコイド受容体阻害剤は、それ自体で中枢神経障害改善のために用いることができる。本発明の効果を損なわない限り、水やエタノールなどの医薬品や飲食品と一般に利用される溶剤にて溶解して使用してもよい。
【0023】
あるいは、本発明のグルココルチコイド受容体阻害剤にさらなる有効成分を配合して、中枢神経障害改善組成物として用いることもできる。そのような有効成分としては、例えば、他のグルココルチコイド受容体調節作用を有する物質、あるいは認知症、パーキンソン病などの神経変性疾患、あるいは慢性ストレス障害に対して予防又は治療効果を有する物質などが挙げられる。具体的には、生薬サフラン又はその抽出液、生薬センソ又はその抽出液などである。サフランの配合量は、1日量として4~100mg程度、センソの配合量は1日量として1~5mg程度とすることができるが、特に限定されない。
【0024】
本発明の中枢神経障害改善組成物には、牛黄(ゴオウ)、人参(ニンジン)、羚羊角(レイヨウカク)、真珠(シンジュ)、沈香(ジンコウ)、龍脳(リュウノウ)、動物胆(ドウブツタン)、麝香(ジャコウ)、紅参(コウジン)、水牛角(スイギュウカク)及び甘草(カンゾウ)などの生薬を、さらなる有効成分として配合することもできる。
【0025】
本発明の中枢神経障害改善組成物は、前記の有効成分の他に、本発明の効果を損なわない限り、賦形剤、甘味料、酸味料、増粘剤、香料、色素、乳化剤、及びその他に医薬品や飲食品などで一般に利用されている添加剤や素材を含んでいてもよい。
【0026】
本発明の中枢神経障害改善組成物は、医薬品又は医薬部外品として使用することができる。医薬品又は医薬部外品は、投与方法に応じて、適切な賦形剤等と共に当業者に既知の方法で製剤化して得ることができる。投与方法としては、経口投与、外用投与、経直腸投与(坐薬)、点眼等の非経口投与が挙げられる。なかでも、経口投与、外用投与等が好ましい。経口投与する場合、上記1日あたりの量を一度に、もしくは数回に分けて投与することができる。投与は、食前、食後、食間のいずれに行ってもよく、また投与期間は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0027】
医薬品又は医薬部外品は、経口又は非経口投与用の任意の剤形とすることができる。例えば、丸剤、顆粒剤、散剤、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、カプセル剤(例えば、硬又は軟ゼラチンカプセル剤)、液剤、乳濁剤、懸濁剤、細粒剤及びチュアブル剤などが挙げられる。これらは、常法により製剤化することができる。注射用の形態としては、例えば静脈直接注入用、点滴投与用などが挙げられる。必要に応じて、乳糖、ブドウ糖、D-マンニトール、でんぷん、結晶セルロース、炭酸カルシウム、カオリン、ゼラチン等の担体や、溶剤、溶解補助剤、等張化剤等の通常の添加剤を適宜配合してもよい。
【0028】
あるいは、本発明の医薬品又は医薬部外品は、非経口的に例えば注射剤として静脈内、筋肉内、腹腔内、腹腔内、又は皮下注射、坐剤の形態で直腸的に投与することができる。またさらに、軟膏、クリーム剤、液剤、ローション剤、乳剤、チンキ剤、軟膏剤、水性ゲル剤、油性ゲル剤、エアゾール剤、パウダー剤、シャンプー及び石鹸等の外用剤の形態で局部的又は経皮的に投与してもよく、点眼液及び洗眼液の形態で眼局所的に投与することもできる。外用剤の1日当たりの投与量は、投与する対象の症状、目的、年齢、投与方法等に応じて適宜設定することができる。
【0029】
医薬品又は医薬部外品の用量は、特に制限されないが、剤型、使用者若しくは患者などの摂取者又は摂取動物の年齢、体重及び症状に応じて適宜選択することができる。例えば、有効成分量として1日あたり摂取者又は摂取動物の体重1kgにつき、経口投与の場合0.00001~0.1g、好ましくは0.00001~0.05g、より好ましくは0.0001~0.05gを、非経口投与の場合は0.000001~0.01g、好ましくは0.000001~0.005g、より好ましくは0.00001~0.005gを投与してもよい。
摂取期間は、使用者又は患者の年齢、症状、投与経路等に応じて、任意に定めることができる。
【0030】
本発明の中枢神経障害改善組成物は、飲食品として使用することができる。その場合、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤、又は錠剤のいずれの形態であってもよい。飲食品は、一般食品、機能性食品、健康食品、健康補助食品、栄養補助食品(サプリメント)、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、美容食品及び特定機能性表示食品などの各種飲食品として利用することができる。
【0031】
飲食品の形態としては、例えば、飲料(清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、粉末飲料、果実飲料、乳飲料、ゼリー飲料など)、菓子類(あめ、チョコレート、クッキー、ケーキ、チューインガム、キャンディー、タブレット、グミ、饅頭、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム、シャーベットなど)、水産加工品(魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺんなど)、畜産加工品(ハンバーグ、ハム、ソーセージ、ウィンナー、チーズ、バター、ヨーグルト、生クリーム、チーズ、マーガリン、発酵乳など)、スープ(粉末状スープ、液状スープなど)、主食類(ご飯類、麺(乾麺、生麺)、パン、シリアルなど)、調味料(マヨネーズ、ショートニング、ドレッシング、ソース、たれ、しょうゆなど)、サプリメントなどが挙げられる。
【0032】
本発明の中枢神経障害改善組成物を飲食品中に含有させる場合には、所定量のグルココルチコイド受容体阻害剤が摂取されるように適切な量を摂取すればよい。飲食品の摂取量は、飲食品中におけるグルココルチコイド受容体阻害剤の含有量に応じて、適宜選択することができる。
【0033】
さらにまた、本発明の中枢神経障害改善組成物は、動物用飼料に配合して用いることもできる。形態としては、ドライドッグフード、ドライキャットフード、ウェットドッグフード、ウェットキャットフード、セミモイストドックフード、養鶏用飼料、牛、豚などの家畜用飼料に配合することができる。
【0034】
動物用飼料の動物には、ペット動物、畜産動物、又は動物園などで飼育されている動物を含む、疾患の予防又は治療を必要とする全ての動物が含まれる。本発明の中枢神経障害改善組成物は、ヒト以外の動物、例えば、牛、馬、豚、羊などの家畜用哺乳類、鶏、ウズラ、ダチョウなどの家禽類、は虫類、鳥類あるいは小型哺乳類などのペット類などにも、適宜用いることができる。
【実施例0035】
以下、本発明に係るグルココルチコイド受容体阻害剤を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0036】
[試料の調製]
センソよりブファリンを単離精製し、これに酸化クロムを加えて氷酢酸中で酸化して、3-ケトブファリンとした。3-ケトブファリンは、常法により精製した後、メタノールに溶解した。得られた溶液に水素化ホウ素ナトリウムを加えて攪拌し、30分後濃縮した。シリカゲル薄層クロマトグラフィーにて3α-ブファリンに相当する部分をかきとり、抽出して再結晶することにより3α-ブファリンを単離精製した。
こうして得られた3α-ブファリンをエタノールに溶解して、10-3Mの濃度の被験薬液を調製した。被験薬液は、10-3Mの3α-ブファリンエタノール溶液である。
【0037】
[アンタゴニスト活性の評価]
活性評価には、ヒト胎児由来腎臓上皮細胞株293T細胞を用いたデュアルレポーターアッセイシステムを利用した。細胞の培養には、10%チャコール処理ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地を用いて、一般的な37℃、5%CO2雰囲気下で培養した。細胞は、おおよそ4日ごとに約10倍に希釈して継代維持を行った。活性評価時には、pH指示薬であるフェノールレッドを含まない培地を用いた。
【0038】
<グルココルチコイド受容体アンタゴニスト活性>
まず、293T細胞を12穴マルチウェルプレートに15×105cells/mL/wellの細胞数で播種し、一昼夜前培養を行った。その後、リポフェクタミン2000を用い、グルココルチコイド受容体をコードしたプラスミド(25ng)、グルココルチコイド受容体結合領域の下流にホタルルシフェラーゼをコードしたプラスミド(250ng)、及びCMVプロモーターの下流にウミシイタケルシフェラーゼをコードしたプラスミド(1ng)をOptiMEM培地0.4mLに溶解させ、各ウェルにトランスフェクションした。
【0039】
6時間のインキュベーション後、上清を除去し、各ウェルに1mLの培地を加えた。さらに、前述の被験薬液を1μL加えて48時間培養した。アンタゴニスト活性を評価するために、既知リガンドとしてのデキサメタゾンの10-3Mエタノール溶液1μLも加えて培養した。
培養後、上清を除去してPBSで洗浄し、細胞を破砕した。破砕にはDual-Luciferase ReporterAssay System (Promega)のキットにあるLysis Buffer 300μLを各ウェルに用いた。破砕液50μLに対してキットの発色試薬20μLを添加することで、ホタルルシフェラーゼによる発光量(F)及びウミシイタケルシフェラーゼによる発光量(R)を測定した。
【0040】
その結果を、
図1に示す。
図1において、縦軸は(F/R)であり、データは平均±標準偏差(mean±SD)を示している。デキサメタゾンの場合には「4.67±0.52」であり、被験薬液を添加した場合には「1.80±0.74」であった。これにより、3α-ブファリンがグルココルチコイド受容体に対してアンタゴニスト活性を有することが確認された。
【0041】
<ビタミンD受容体アンタゴニスト活性>
まず、293T細胞を12穴マルチウェルプレートに15×105cells/mL/wellの細胞数で播種し、一昼夜前培養を行った。その後、リポフェクタミン2000を用い、ビタミンD受容体をコードしたプラスミド(25ng)、ビタミンD受容体結合領域の下流にホタルルシフェラーゼをコードしたプラスミド(250ng)、CMVプロモーターの下流にウミシイタケルシフェラーゼをコードしたプラスミド(1ng)、及びレチノイドX受容体をコードしたプラスミド(25ng)をOptiMEM培地0.4mLに溶解させ、各ウェルにトランスフェクションした。
【0042】
6時間のインキュベーション後、上清を除去し、各ウェルに1mLの培地を加えた。さらに、前述の被験薬液を1μL加えて48時間培養した。アンタゴニスト活性を評価するために、既知リガンドとしてのビタミンDの10-3Mエタノール溶液1μLも加えて培養した。
培養後、上清を除去してPBSで洗浄し、細胞を破砕した。破砕にはDual-Luciferase ReporterAssay System (Promega)のキットにあるLysis Buffer 300μLを各ウェルに用いた。破砕液50μLに対してキットの発色試薬20μLを添加することで、ホタルルシフェラーゼによる発光量(F)及びウミシイタケルシフェラーゼによる発光量(R)を測定した。
【0043】
その結果を、
図2に示す。
図2において、縦軸は(F/R)であり、データは平均±標準偏差(mean±SD)を示している。ビタミンDの場合には「1.24±0.15」であり、被験薬液を添加した場合には「0.85±0.24」であった。これにより、3α-ブファリンがビタミンD受容体に対してアンタゴニスト活性を有することが確認された。