(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057021
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20220404BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165072
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一慶
(72)【発明者】
【氏名】北尾 真一
(72)【発明者】
【氏名】竹野 陽
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015GB07
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】掻き上げ作業の離脱を考慮して警報を行うことが可能な作業機械を提供すること。
【解決手段】ホイールローダ10は、車両本体1と、後方検出部71と、コントローラ26と、を備える。車両本体1は、車体フレーム2、フロントタイヤ4、およびリアタイヤ7と、車体フレーム2の前方に配置された作業機3と、を有する。後方検出部71は、車体フレーム2、フロントタイヤ4、およびリアタイヤ7の駆動による後方への走行の際に障害物Sを検出する。コントローラ26は、障害物Sの検出と、後方への走行状態と、作業機3による掻き上げ作業状態により第1制御の有効または無効を決定し、第1制御の無効時に、掻き上げ作業状態に基づいて、第1制御を有効にする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、前記走行体の前方に配置された作業機と、有する車両本体と、
前記走行体の駆動による後方への走行の際に物体を検出する後方検出部と、
前記物体の検出と、前記後方への走行状態と、前記作業機による掻き上げ作業状態により第1制御の有効または無効を決定し、
前記第1制御の無効時に、前記掻き上げ作業状態に基づいて、前記第1制御を有効にする制御部と、を備えた、
作業機械。
【請求項2】
前記後方検出部によって前記車両本体の後方に物体を検出したことを報知する第1報知部を更に備え、
前記制御部は、前記第1制御の無効時に第2制御を有効にし、
前記第1制御は、前記第1報知部による報知を実行し、
前記第2制御は、前記第1報知部による報知の変更を実行し、
前記報知の変更は、報知の停止、報知の音量の抑制、または報知の出力形態を変更することを含む、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記掻き上げ作業状態に関する情報は、車速、操作部材の位置、または走行距離を含み、
前記制御部は、前記第1制御の無効時に、前記車速が所定速度以上且つ前記操作部材が後進位置に配置されている場合、前記操作部材が後進位置に配置されてから所定時間以上経過した場合、または前記操作部材が後進位置に配置されてから所定距離以上走行した場合のいずれかの場合に前記第1制御を有効にする、
請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記掻き上げ作業状態に関する情報は、操作部材の位置、パーキングブレーキの制動状態、またはキーのON・OFF状態を含み、
前記制御部は、前記第1制御の無効時に、前記操作部材が後進位置から中立位置に移動若しくは後進位置から前進位置に移動した場合、前記パーキングブレーキが制動した場合、または前記キーが前記OFF状態になった場合のいずれかの場合に前記第1制御を有効にする、
請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記車両本体の走行状態を検出する走行状態検出部と、
前記作業機の状態を検出する作業機状態検出部と、を更に備え、
前記掻き上げ作業状態に関する情報は、前記走行状態、および前記作業機の状態を含み、
前記制御部は、前進時に前記作業機の状態に基づいて、前記掻き上げ作業状態であるか否かを判定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記作業機は、
前記走行体の前部に動作可能に取り付けられたブームと、
前方に向かって開口が配置されるように前記ブームに接続され、前記ブームに対して駆動するバケットと、
前記ブームを駆動するブームシリンダと、を有し、
前記作業機状態検出部は、
前記ブームシリンダのボトム圧を検出するブームボトム圧センサと、
前記ブームの角度を検出するブーム角度センサと、を更に備え、
前記制御部は、前記ブームシリンダのボトム圧と前記ブームの角度に基づいて、前記掻き上げ作業状態であるか否かの判定を行う、
請求項5に記載の作業機械。
【請求項7】
前記制御部は、
前記ブームシリンダのボトム圧が第1閾値以上、且つ前記ブームの角度が第2閾値以下の場合に掘削作業状態であると判定し、前記掘削作業状態との判定中に前記ブームの角度が第3閾値より大きいとき、前記掻き上げ作業状態であると判定し、
前記第3閾値は、前記第2閾値よりも上方に位置する、
請求項6に記載の作業機械。
【請求項8】
前記走行状態検出部は、前記車両本体に設けられた車輪の回転方向、または前記車両本体の前進または後進を設定可能な操作部材が設定された位置を検出し、
前記制御部は、前記走行状態検出部の検出に基づいて前進を判定する、
請求項5~7のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項9】
前記車両本体の傾斜状態を検出する傾斜状態検出部を更に備え、
前記掻き上げ作業状態に関する情報は、前記傾斜状態を含み、
前記制御部は、前記車両本体の傾斜角度が第4閾値以上の場合に、前記掻き上げ作業状態であると判定する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項10】
前記掻き上げ作業状態に関する情報は、前記傾斜状態を含み、
前記制御部は、前記第1制御の無効時に、前記車両本体の傾斜角度が前記第4閾値よりも小さい第5閾値以下の場合に、前記第1制御を有効にする、
請求項9に記載の作業機械。
【請求項11】
前記車両本体の走行状態を検出する走行状態検出部を更に備え、
前記制御部は、前記車両本体の後方の物体の検出を後進時に実行し、
前記走行状態検出部は、前記車両本体に設けられた車輪の回転方向、または前記車両本体の前進または後進を設定可能な操作部材が設定された位置を検出し、
前記制御部は、前記走行状態検出部の検出に基づいて後進を判定する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項12】
前記制御部は、前記第1制御の無効時に第2制御を有効にし、
前記第1制御は、前記車両本体を自動的に制動するために自動ブレーキの駆動を実行し、
前記第2制御は、前記自動ブレーキの制動力の抑制、または前記自動ブレーキの停止を実行する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項13】
前記自動ブレーキの制動力の抑制または前記自動ブレーキの停止を報知する第2報知部を更に備え、
前記制御部は、前記自動ブレーキの制動力の抑制または前記自動ブレーキの停止を行った場合、前記第2報知部によってオペレータに報知を行う、
請求項12に記載の作業機械。
【請求項14】
前記作業機械は、ホイールローダであって、
前記作業機は、
前記走行体の前部に揺動可能に取り付けられたブームと、
前方に向かって開口が配置されるように前記ブームに接続され、前記ブームに対して駆動するバケットと、
前記バケットを駆動するアクチュエータと、
前記ブームに取り付けられ、前記アクチュエータの駆動力を前記バケットへ伝達するサブリンクと、を備えた、請求項1~5および9~11のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項15】
走行体と作業機を有する車両本体の走行体の駆動による後方への走行の際における物体の検出と、後方への走行状態と、前記作業機による掻き上げ作業状態により第1制御の有効または無効を決定する制御決定ステップと、
前記第1制御の無効時に、前記掻き上げ作業状態に基づいて、前記第1制御を有効にする制御有効ステップと、を備えた、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の一例であるホイールローダにおいて、後進時に後方の障害物を検出し衝突を抑制する衝突抑制システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
たとえば、特許文献1では、障害物までの距離に基づいて車両本体の減速を行ったり、警報を発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホイールローダでは傾斜地の上方に土砂を押し上げる掻き上げ作業が行われることがある。このような場合、従来の衝突抑制システムでは後進時に地面を障害物として検出して障害物警報を出力するためオペレータにとって煩わしい。
【0006】
これを回避するために、掻き上げ作業を判定し、掻き上げ作業時には障害物警報の出力を停止するように設定することが考えられる。
【0007】
しかしながら、掻き上げ作業の離脱を考慮していないため、掻き上げ作業後に土砂の山から降りるときに地面を障害物として誤検出し、障害物警報を出力する場合があった。
【0008】
本開示は、掻き上げ作業の離脱を考慮して警報を行うことが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本態様に係る作業機械は、車両本体と、後方検出部と、制御部と、を備える。車両本体は、走行体と、走行体の前方に配置された作業機と、を有する。後方検出部は、走行体の駆動による後方への走行の際に物体を検出する。制御部は、物体の検出と、後方への走行状態と、作業機による掻き上げ作業状態により第1制御の有効または無効を決定し、第1制御の無効時に、掻き上げ作業状態に基づいて、第1制御を有効にする。
【0010】
本態様の作業機械の制御方法は、制御決定ステップと、制御有効ステップと、を備える。制御決定ステップは、走行体と作業機を有する車両本体の走行体の駆動による後方への走行の際における物体の検出と、後方への走行状態と、作業機による掻き上げ作業状態により第1制御の有効または無効を決定する。制御有効ステップは、第1制御の無効時に、掻き上げ作業状態に基づいて、第1制御を有効にする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、掻き上げ作業の離脱を考慮して警報を行うことが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示にかかる実施の形態1のホイールローダの側面図。
【
図2】
図1のホイールローダの駆動系、制動系、操作系、報知系、および検出系の構成を示すブロック図。
【
図3】
図2のコントローラの構成を示すブロック図。
【
図4】
図1のホイールローダの作業状態の遷移を示す図。
【
図5】
図1のホイールローダにおける障害物検出による自動ブレーキ機能を説明するための側面図。
【
図6】
図1のホイールローダによる掻き上げ作業を説明するための側面図。
【
図7】
図1のホイールローダの制御動作を説明するためのフロー図。
【
図8】本開示にかかる実施の形態2のホイールローダの駆動系、制動系、操作系、報知系、および検出系の構成を示すブロック図。
【
図9】
図8のホイールローダの傾斜角に対する第1制御の無効と無効から有効への復帰の関係を示す図。
【
図10】
図1のホイールローダが山から降りている途中の状態を示す側面図。
【
図11】本開示にかかる実施の形態の変形例におけるホイールローダの駆動系、制動系、操作系、および報知系の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示にかかる作業機械の一例としてのホイールローダについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0014】
<構成>
(ホイールローダの概要)
図1は、本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)の構成を示す模式図である。本実施の形態のホイールローダ10は、車両本体1に、車体フレーム2と、作業機3と、一対のフロントタイヤ4(車輪の一例)、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7(車輪の一例)、およびステアリングシリンダ9と、を備えている。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示す。また、「車幅方向」と「左右方向」は同義である。
図1では、前後方向をXで示し、前方向を示すときはXf、後方向を示すときはXbで示す。また、車体フレーム2、フロントタイヤ4、およびリアタイヤ7は、走行体の一例に相当する。
【0015】
ホイールローダ10は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
【0016】
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11とリアフレーム12と、連結軸部13と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0017】
作業機3は作業機ポンプ35b(
図2参照)からの作動油によって駆動される。作業機3は、フロントフレーム11の前部に揺動可能に取り付けられている。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16(ブームシリンダの一例)と、バケットシリンダ17(アクチュエータの一例)と、ベルクランク18(サブリンクの一例)と、を有する。
【0018】
ブーム14の基端は、ブームピン14aによってフロントフレーム11の前部に回動可能に取り付けられている。ブーム14の先端は、バケット15の後部に回動可能に取り付けられている。バケット15の後部は、開口15bの反対側である。ブーム14の基端と先端の間には、リフトシリンダ16のシリンダロッド16aの先端が回動可能に取り付けられている。リフトシリンダ16のシリンダ本体は、フロントフレーム11に回動可能に取り付けられている。
【0019】
ベルクランク18は、一方の端部がバケットシリンダ17のシリンダロッド17aの先端に回動可能に取り付けられている。ベルクランク18の他方の端部は、バケット15の後部に回動可能に取り付けられている。ベルクランク18は、両端部の間においてブーム14の中央近傍のベルクランクサポート14dに回動可能に支持されている。バケットシリンダ17のシリンダ本体は、フロントフレーム11に回動可能に取り付けられている。バケットシリンダ17の伸縮力は、ベルクランクによって回転運動に変換されてバケット15に伝達される。
【0020】
バケット15は、前方に向かって開口するようにブーム14の先端にバケットピン15aによって回動可能に取り付けられている。バケットシリンダ17の伸縮によって、バケット15はブーム14に対して回動し、チルト動作(矢印J参照)およびダンプ動作(矢印K参照)を行う。ここで、バケット15のチルト動作とは、バケット15の開口15bおよび爪15cがキャブ5に向かって回動することにより傾く動作である。バケット15のダンプ動作とは、チルト動作とは反対であって、バケット15の開口15bおよび爪15cがキャブ5から遠ざかるように回動することにより傾く動作である。
【0021】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されており、内部には、ステアリング操作のためのハンドルや、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後側であってリアフレーム12上に配置されており、エンジン31(
図2参照)が収納されている。
【0022】
(ホイールローダの制御に関する構成)
図2は、ホイールローダ10の制御に関する構成を示すブロック図である。
【0023】
ホイールローダ10は、駆動系21と、制動系22と、操作系23と、報知系24と、検出系25と、コントローラ26(制御部の一例)と、を有する。
【0024】
駆動系21は、ホイールローダ10の駆動を行う。制動系22は、ホイールローダ10の走行中において制動を行う。操作系23は、オペレータによって操作が行われる。オペレータによる操作系23の操作に基づいて駆動系21および制動系22が動作する。報知系24は、操作系23の操作または検出系25による検出結果に基づいて、オペレータに対する報知を行う。検出系25は、走行状態の検出、作業機3の状態の検出、および車両本体1の後方の障害物(物体の一例)の検出を行う。コントローラ26(制御部の一例)は、操作系23に対するオペレータの操作および検出系25による検出に基づいて、駆動系21、制動系22、および報知系24の操作を行う。
【0025】
(駆動系21)
駆動系21は、エンジン31と、HST32と、トランスファ33と、アクスル34と、フロントタイヤ4およびリアタイヤ7と、シリンダ駆動部35と、を有する。
【0026】
エンジン31は、例えばディーゼル式のエンジンであり、エンジン31で発生した駆動力がHST(Hydro Static Transmission)32のポンプ32aを駆動する。
【0027】
HST32は、ポンプ32aと、モータ32bと、ポンプ32aとモータ32bを接続する油圧回路32cと、を有する。ポンプ32aは、斜板式可変容量型のポンプであって斜板の角度をソレノイド32dによって変更することができる。ポンプ32aがエンジン31によって駆動されることにより作動油を吐出する。吐出された作動油は、油圧回路32cを通ってモータ32bに送られる。モータ32bは、斜板式であって、斜板の角度をソレノイド32eによって変更することができる。油圧回路32cは、第1駆動回路32c1と、第2駆動回路32c2と、を有する。作動油が、ポンプ32aから第1駆動回路32c1を介してモータ32bに供給されることにより、モータ32bが一方向(例えば、前進方向)に駆動される。作動油が、ポンプ32aから第2駆動回路32c2を介してモータ32bに供給されることにより、モータ32bが他方向(例えば、後進方向)に駆動される。なお、作動油の第1駆動回路32c1若しくは第2駆動回路32c2への吐出方向はソレノイド32dによって変更することができる。
【0028】
トランスファ33は、エンジン31からの出力を前後のアクスル34に分配する。
【0029】
前側のアクスル34には一対のフロントタイヤ4が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。また、後側のアクスル34には一対のリアタイヤ7が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。
【0030】
シリンダ駆動部35は、動力取り出し部35aと、作業機ポンプ35bと、制御弁35cと、を有している。動力取り出し部35aは、PTO(Power Take Off)であり、例えば車両本体1を停止させた状態で、エンジン31からの出力を取り出し、作業機ポンプ35bに伝達する。作業機ポンプ35bは、エンジン31の動力による駆動し、制御弁35cに作動油を吐出する。制御弁35cは、作業機ポンプ35bから供給された作動油を、コントローラ26からの指令に基づいてリフトシリンダ16(ブームシリンダの一例)およびバケットシリンダ17に供給する。
【0031】
(制動系22)
制動系22は、ブレーキ弁41と、サービスブレーキ42と、パーキングブレーキ43と、を有する。
【0032】
ブレーキ弁41は、例えばEPC(Electric Proportional Valve)弁であり、開度を調整することによってサービスブレーキ42に送る作動油の量を調整することができる。
【0033】
サービスブレーキ42は、アクスル34に設けられている。サービスブレーキ42は、油圧式のブレーキであり、例えばブレーキ弁41の開度が大きいときには制動力が強くなり、ブレーキ弁41の開度が小さいときには制動力が弱くなる。
【0034】
自動ブレーキの機能として、後述するブレーキペダル54が操作されていない場合でもブレーキ弁41がコントローラ26からの指示によって駆動され、サービスブレーキ42が作動する。
【0035】
パーキングブレーキ43は、トランスファ33に設けられている。パーキングブレーキ43としては、制動状態と非制動状態に切り替え可能な湿式多段式のブレーキや、ディスクブレーキなどを用いることができる。
【0036】
(操作系23)
操作系23は、アクセル51と、FNRレバー52(操作部材の一例)と、パーキングスイッチ53と、ブレーキペダル54と、復帰スイッチ55と、自動ブレーキ解除スイッチ56と、エンジンキー部57と、を有する。
【0037】
アクセル51は、キャブ5内に設けられている。オペレータは、アクセル51を操作してスロットル開度を設定する。アクセル51は、アクセル操作量を示す開度信号を生成してコントローラ26へ送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいてエンジン31の回転速度を制御する。
【0038】
なお、アクセル51をオフ状態にすると、エンジン31への燃料供給が停止され、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように制御され、内部慣性がはたらくため制動力(後述する弱いブレーキ力)が発生する。
【0039】
FNRレバー52は、キャブ5に設けられている。FNRレバー52は、前進、ニュートラル、または後進の位置をとることができる。FNRレバー52の位置を示す操作信号がコントローラ26に送信され、コントローラ26は、ソレノイド32dを制御して前進または後進を切り替える。
【0040】
パーキングスイッチ53は、キャブ5内に設けられており、オン・オフに状態を切り替え可能なスイッチであり、その状態を示す信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいてパーキングブレーキ43を制動状態または非制動状態にする。
【0041】
ブレーキペダル54は、キャブ5内に設けられている。ブレーキペダル54は、ブレーキ弁41の開度を調整する。また、ブレーキペダル54は、操作量をコントローラ26に送信する。
【0042】
復帰スイッチ55は、後述する自動ブレーキによって車両本体1が停止した後、停止状態から復帰するためにオペレータによって操作される。
【0043】
自動ブレーキ解除スイッチ56は、自動ブレーキの機能を解除し、自動ブレーキの機能が働かないように設定する。
【0044】
エンジンキー部57は、キーを回転させることにより、エンジンのスタート位置と、ACC電源オンの位置と、エンジンのオフ位置の3つの位置をとる。エンジンキー部57の位置情報はコントローラ26に送信される。
【0045】
(報知系24)
報知系24は、警報装置61(第1報知部の一例)と、機能OFF通知ランプ62(第2報知部の一例)と、自動ブレーキ作動通知ランプ63と、を有する。
【0046】
警報装置61は、後述する検出系25の後方検出部71の検出に基づいて車両本体1の後方に障害物を検出した場合にオペレータに警報を行う。警報装置61は、例えば、ランプを有し、ランプを点灯させてもよい。また、ランプに限らず、警報装置61がスピーカを有し、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに警報を表示させてもよい。
【0047】
機能OFF通知ランプ62は、コントローラ26の判断によって自動ブレーキの機能が抑制または停止されている場合に、例えば点灯しオペレータに報知する。また、機能OFF通知ランプ62は、オペレータの判断によって自動ブレーキ解除スイッチ56が操作され自動ブレーキの機能がオフ状態になっている場合に例えば点灯し、オペレータに報知する。また、機能OFF通知ランプ62が消灯している場合には、自動ブレーキの機能を作動することが可能な状態であることを示す。また、機能OFF通知ランプ62は、ランプに限らなくてもよく、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに通知を表示させてもよい。
【0048】
自動ブレーキ作動通知ランプ63は、自動ブレーキが作動している状態であることをオペレータに通知し、復帰スイッチ55による復帰動作が必要なことを通知する。なお、復帰スイッチ55が操作され自動ブレーキが解除されると、自動ブレーキ作動通知ランプ63が消灯する。
【0049】
なお、自動ブレーキ作動通知ランプ63は、ランプに限らなくてもよく、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに通知を表示させてもよい。
【0050】
上述のように報知系24によるオペレータに対する情報の報知の手段は、ランプ、音、モニター等適宜選択することができる。
【0051】
(検出系25)
検出系25は、
図2に示すように、後方検出部71と、走行状態検出部72と、作業機状態検出部73と、を有する。
【0052】
後方検出部71は、車両本体1の後方の障害物を検出する。後方検出部71は、例えば、
図1に示すように車両本体1の後端に取り付けられているが、後端に限らなくても良い。
【0053】
後方検出部71は、例えばミリ波レーダを有している。送信アンテナから発したミリ波帯の電波が障害物の表面で反射して戻ってくる様子を受信アンテナで検出し、物体までの距離を測定することができる。後方検出部71による検出結果がコントローラ26に送信され、コントローラ26は、後進時に所定範囲内に障害物が存在することを検出できる。なお、ミリ波レーダに限らなくてもよく、例えばカメラなどであってもよい。
【0054】
走行状態検出部72は、車両本体1の走行状態を検出する。走行状態検出部72は、走行方向センサ72a、車速センサ72bを有している。
【0055】
走行方向センサ72aは、フロントタイヤ4またはリアタイヤ7の回転方向を検出し、車両本体1が前進または後進状態であるか検出する。走行方向センサ72aは、例えばアクスル34等に配置できるが、車両本体1の走行状態を検出できさえすれば駆動系21のいずれの構成に配置されていてもよい。また、走行方向センサ72aに代えて、または走行方向センサ72aとともにFNRレバー52の位置に基づいて前進または後進を判断してもよい。この場合、FNRレバー52も走行状態検出部72に含まれる。
【0056】
作業機状態検出部73は、作業機3の状態を検出する。作業機状態検出部73は、ブーム角度センサ73a(作業機高さ検出部の一例)と、ブームボトム圧センサ73bと、を有している。
【0057】
ブーム角度センサ73aは、ブーム14の角度を検出し、コントローラ26(制御部の一例)に検出値を出力する。ブーム角度センサ73aは、ポテンショメータで構成することができ、例えばブームピン14aに配置される。
【0058】
ブーム14の角度は、
図1に示すように、ブームピン14aの中心から前方に延びる水平線Lhに対する、ブームピン14aの中心からバケットピン15aの中心に向かう方向に延びる直線Lbの角度θである。直線Lbが水平である場合をブーム角度が0°とする。直線Lbが水平線Lhよりも上方にある場合のブーム14の角度θを正の値とする。直線Lbが水平線Lhよりも下方にある場合のブーム14の角度θを負の値とする。
【0059】
なお、ブーム角度センサ73aは、リフトシリンダ16に設けられたストロークセンサであってもよい。
【0060】
ブームボトム圧センサ73bは、リフトシリンダ16のボトム側に取り付けられている。リフトシリンダ16のボトム側に圧力が加えられ、この圧力でシリンダが伸長しブーム14が上昇する。ブームボトム圧センサ73bは、リフトシリンダ16のシリンダボトム側の油室内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出する。ブームボトム圧センサ73bは、検出したボトム圧をコントローラ26に送信する。
【0061】
(コントローラ26)
コントローラ26は、プロセッサと、記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、プログラムに従ってホイールローダ10の制御のための処理を実行する。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置は、ホイールローダ10を制御するためのプログラムおよびデータを記憶している。記憶装置は、例えば、後述する閾値のデータを記憶している
図3は、コントローラ26の構成を示すブロック図である。
【0062】
コントローラ26は、制御実行決定部81と、ブレーキ指示部82と、報知指示部83と、を有する。なお、コントローラ26は、一つに限らず複数設けられてもよく、制御実行決定部81と、ブレーキ指示部82と、報知指示部83の各機能も複数のコントローラに分かれて設けられていてもよい。
【0063】
制御実行決定部81は、報知系24と制動系22の制御の実行の決定を行う。制御実行決定部81は、障害物判定部91と、掻き上げ判定部92と、決定部93と、制御復帰決定部94と、を有する。
【0064】
障害物判定部91は、後進時に障害物が存在するか否かを判定する。障害物判定部91は、走行方向センサ72aの検出によってフロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が後方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が後進位置であることのいずれかによって後進が行われていることを検出する。障害物判定部91は、後進を検出している状態において、検出系25の後方検出部71から所定範囲内における障害物の検出情報を受け取ると、障害物が存在すると判定する。
【0065】
掻き上げ判定部92は、前進時にホイールローダ10の作業内容が掻き上げ作業であるか否かを判定する。
【0066】
詳しくは、掻き上げ判定部92は、前進時に掘削作業状態であるか否かを判定し、掘削作業状態の判定が保たれたうえで、掻き上げ作業状態であるか否かを判定する。
【0067】
図4は、作業内容の状態遷移を示す図である。掻き上げ判定部92は、掘削作業状態W1と掘削作業以外の状態W2を判定する。
【0068】
掻き上げ判定部92は、前進時に、条件Aと条件Bが成立した場合に掘削作業状態W1であると判定する。
【0069】
掻き上げ判定部92は、フロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が前方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が前進位置であること、によって車両本体1が前方に走行している(前進状態)ことを判定する。
【0070】
条件(A)は、ブームボトム圧センサ73bによる検出値であるブームボトム圧が、第1閾値以上を満たすことである。第1閾値は、コントローラ26に記憶されている。ブームボトム圧が所定閾値以上となることで、リフトシリンダ16に圧力がかかったことが分かる。すなわち、掘削等の際には、バケット15に土砂を積み込んだりすることで、リフトシリンダ16に圧力が付与されるため、ブームボトム圧を検出することによって掘削作業状態であるか否かを判定できる。
【0071】
条件(B)は、ブーム角度センサ73aによる検出値であるブーム14の角度θが第2閾値以下を満たすことである。掘削の際は、ブーム14の角度θが水平状態よりも下方に位置するため、第2閾値は、負の値であることが好ましい。第2閾値は、コントローラ26に記憶されている。
【0072】
すなわち、リフトシリンダ16に所定の第1閾値以上の圧が負荷され、ブーム14の角度θが所定の第2閾値以下に低くなったときに、ホイールローダ10の状態が掘削作業状態W1であると判定される。掻き上げ判定部92は、掘削作業状態W1であると判定すると、掘削フラグをONに設定し、ブーム圧低下フラグをOFFに設定する。
【0073】
次に、掻き上げ判定部92は、掘削作業状態W1において、掻き上げ作業状態W3か、掻き上げ作業以外の状態W4であるかを判定する。掻き上げ判定部92は、掘削フラグがONの状態で、条件(C)を満たした場合に、掻き上げ作業状態W3であると判定し、条件(C)を満たさない場合には、掻き上げ作業以外の状態W4であると判定する。
【0074】
条件(C)は、ブーム角度センサ73aによる検出値であるブーム14の角度θが第3閾値より大きい状態を満たすことである。第3閾値は、例えば負の値である。第3閾値は、第2閾値よりも大きく設定されている。第3閾値は、コントローラ26に記憶されている。なお、第2閾値は、バケット15の位置がタイヤ接地面に近い時を示す。第2閾値は、例えば-40°に設定することができる。また、第3閾値は、ブーム14が水平状態と第2閾値の状態との中間程度に位置する時を示す。第3閾値は、例えば-20°に設定することができる。第3閾値におけるブーム14が、第2閾値におけるブーム14よりも上方に回動した状態となるように第3閾値および第2閾値は設定されている。
【0075】
なお、条件(B)および条件(C)は、ブーム14の角度の大小に基づいて設定されているが、これに限らず、バケット15の位置を検出し、その高さに基づいて設定されていてもよい。バケット15の位置は、例えばキャブ5等に設けられたカメラによって検出することができる。また、第3閾値におけるバケット15の高さは、第2閾値におけるバケット15の高さよりも高くなるように第3閾値および第2閾値は設定されている。
【0076】
このように、作業機3の高さに基づいて、条件(B)と条件(C)を設定し、第3閾値における作業機3の高さを、第2閾値における作業機3の高さよりも高く設定してもよい。
【0077】
掻き上げ判定部92は、掻き上げ作業状態W3であると判定すると、掻き上げフラグを立てる。また、掻き上げ判定部92は、掘削フラグがONの状態で条件(C)を満たさないと判定した場合、掻き上げフラグをOFFに設定する。
【0078】
通常の掘削時と比べて掻き上げの際にはブーム14が上方に位置するため、掘削作業状態W1において、ブーム14の角度θを検出することによって、掻き上げ作業状態W3と掻き上げ作業以外の状態W4を判別することができる。
【0079】
なお、掻き上げ判定部92は、掘削フラグがONの状態において、条件(D)または条件(E)を満たした場合、ホイールローダ10が掘削作業以外の状態W2であるとして掘削フラグをOFFに設定する。
【0080】
条件(D)は、ブームボトム圧低下フラグがONの状態になっていることである。ブーム14の角度θに基づいて予め設定された閾値としてのブームボトム圧よりも、ブームボトム圧センサ73bによる検出値が所定時間の間小さい場合に、ブームボトム圧低下フラグがONに設定される。ここで、ブーム14の角度θに基づいて予め設定された閾値としてのブームボトム圧は、コントローラ26に記憶されている。
【0081】
このように、掻き上げ判定部92は、ブームボトム圧がブーム角度に基づいて設定される閾値よりも所定時間の間小さくなった場合に、ブーム圧低下フラグをONに設定し、掘削作業以外の状態W2に遷移したと判定して、掘削フラグをOFFに設定する。
【0082】
条件(E)は、FNRレバー52の位置が、前進(F)以外の位置(後進(N)かニュートラル(N))に配置されていることである。掻き上げ判定部92は、前進していない場合、掘削作業以外の状態W2であると判定し、掘削フラグをOFFに設定する。
【0083】
以上のように、掻き上げ判定部92は、条件(A)と条件(B)を満たして掘削作業状態W1であると判定した場合、その判定が保たれている状態において、さらに条件(C)を満たしたときに、ホイールローダ10が掻き上げ作業状態W3であると判定し、掻き上げフラグをONに設定する。
【0084】
決定部93は、掻き上げ判定部92の判定結果に基づいて、報知系24と制動系22の制御を決定する。
【0085】
決定部93は、掻き上げ判定部92によって掻き上げ作業ではない(
図4では、掘削作業以外の状態W2および掻き上げ作業以外の状態W4)と判定された場合、報知系24と制動系22の制御として第1制御を有効にする。
【0086】
第1制御は、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定したときに、後述する
図5に示すように、自動ブレーキを作動させ且つ障害物の存在を知らせる警報を発する(物体の検出に対応することの一例)。これは、ホイールローダ10が掻き上げ作業を行っておらず、障害物の検出が誤検出ではないと判断できるためである。
【0087】
また、決定部93は、掻き上げ判定部92によって掻き上げ作業状態W3であると判定された場合、報知系24と制動系22の制御として第2制御を有効にする。第2制御は、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定するか否かにかかわらず、自動ブレーキを作動させず且つ警報も発生させない。なお、第2制御が有効にされている場合は、第1制御は無効にされている。
【0088】
これは、後述する
図5に示すように、ホイールローダ10が掻き上げ作業を行っており、地面を障害物と誤検出すると判断できるためである。
【0089】
ブレーキ指示部82は、決定部93の第1制御または第2制御のうち有効な制御に基づいて自動ブレーキの制御を行う。本明細書における自動ブレーキとは、障害物判定部91の判定結果と掻き上げ判定部92の判定結果に基づいて、自動で車両本体1に制動力を作動させることであり、後述するようにサービスブレーキ42による制動力だけに限られるものではない。
【0090】
決定部93が第1制御を有効にした場合、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定したとき、ブレーキ指示部82は、アクセル51をオフすることによってエンジン31への燃料供給を停止する。そして、ブレーキ指示部82は、ブレーキ弁41を操作することによってサービスブレーキ42を駆動して車両本体1を停止させる。一方、決定部93が第2制御を有効にした場合、自動ブレーキの機能を停止し、ブレーキ指示部82は、ブレーキ弁41の操作を行わず制動力を付与しない。すなわち、第2制御では、仮に障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定したとしても制動力を付与しない。
【0091】
報知指示部83は、決定部93の第1制御または第2制御のうち有効な制御に基づいて、警報装置61または機能OFF通知ランプ62に動作指示を行う。
【0092】
決定部93が第1制御を有効にした状態では、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定したとき、報知指示部83は、警報装置61を作動し、障害物の存在および自動ブレーキの作動をオペレータに報知する。
【0093】
一方、決定部93が第2制御を有効にすると、報知指示部83は、警報装置61の機能を停止し、機能OFF通知ランプ62を点灯し、オペレータに自動ブレーキの機能が停止していることを報知する。すなわち、第2制御では、仮に障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定したとしても警報が行われない。
【0094】
図5は、後進時に障害物Sを検出し、車両本体1を停止させた状態を示す図である。第1制御では、障害物Sの手前で車両本体1が停止するように予め設定された設定ブレーキ力(制動力ともいえる)でサービスブレーキ42を作動させて車両本体1を停車させる。
図5では、停止した車両本体1が二点鎖線で示されている。
【0095】
なお、設定ブレーキ力による自動ブレーキは、上記のようにサービスブレーキ42によって車両本体1を制動させなくてもよく、パーキングブレーキ43を作動させてもよい。この場合、決定部93が報知系24と制動系22の制御として第1制御を有効にし、後進時に障害物Sを検出すると、ブレーキ指示部82は、アクセル51をオフすることによってエンジン31への燃料供給を停止する。そして、ブレーキ指示部82は、パーキングブレーキ43を制御して、車両本体1を制動する。
【0096】
図6は、ホイールローダ10が掻き上げ作業を行っている状態を示す図である。
図6に示すように、地面Gに土砂の山Mが形成されており、その斜面iにホイールローダ10が配置されている。傾斜角θは、例えば、フロントタイヤ4の軸とリアタイヤ7の軸を結ぶ線Lと水平線Hとの成す角度となる。
【0097】
掻き上げ作業後には、ホイールローダ10は斜面iを降りるため、後進の際に地面Gを障害物Sとして検出する。そのため、本実施の形態では、掻き上げ作業状態W3であると判定した場合、報知系24と制動系22の制御として第2制御が有効にされる。第2制御では、自動ブレーキの機能および警報装置61の機能を停止し、機能OFF通知ランプ62を点灯し、自動ブレーキおよび警報装置61を作動させない。
【0098】
なお、第2制御の際には、後方検出部71自体の機能をOFF状態としてもよいし、後方検出部71による検出は行うが、コントローラ26が検出結果を使用しなくてもよいし、または、後方検出部71による検出結果を用いて障害物判定部91による判定が行われるが、判定結果を使用しなくてもよい。
【0099】
制御復帰決定部94は、掻き上げ作業状態に関する情報に基づいて、第1制御の無効から有効への復帰を判定する。掻き上げ作業状態に関する情報は、車速、FNRレバー52(操作部材の一例)の位置、走行距離、パーキングブレーキの制動状態、またはキーの位置を含む。
【0100】
制御復帰決定部94は、車速センサ72bから送信される検出値によって車速を取得する。制御復帰決定部94は、FNRレバー52(操作部材の一例)の位置を、FNRレバー52から送信される操作情報で取得する。制御復帰決定部94は、走行距離を、車速センサ72bからコントローラ26に送信される車速信号とコントローラ26に含まれるタイマーとを用いた演算によって取得する。制御復帰決定部94は、パーキングブレーキ43の制動状態を、パーキングスイッチ53から送信されるON・OFF信号によって取得する。制御復帰決定部94は、キーの位置を、エンジンキー部57から送信される位置情報によって取得する。
【0101】
制御復帰決定部94は、取得した情報に基づいて、以下の条件(1)~(6)のいずれか1つでも満たした場合に、第1制御の有効への復帰を決定する。
【0102】
(1)車速が所定速度以上且つFNRレバー52が後進位置に配置されていること
(2)FNRレバー52が後進位置に配置されてから所定時間以上経過したこと
(3)FNRレバー52が後進位置に配置されてから所定距離以上走行したこと
(4)FNRレバー52が後進位置から中立位置に移動若しくは後進位置から前進位置に移動したこと
(5)パーキングブレーキが制動したこと
(6)キーがOFF状態になったこと
上記条件(1)~(3)のいずれかを満たした場合、ホイールローダ10が掻き上げ作業後に土砂の山から降りた状態であると考えられるため、制御復帰決定部94は、報知系24と制動系22の制御として第2制御の代わりに第1制御を有効へ復帰することを決定する。また、条件(4)~(6)のいずれかを満たした場合、何かの理由によってホイールローダ10を停止したと考えられるため、制御復帰決定部94は、報知系24と制動系22の制御として第2制御の代わりに第1制御の有効への復帰を決定する。
【0103】
制御復帰決定部94によって第1制御の有効への復帰が決定された場合、決定部93は、報知系24と制動系22の制御として第2制御に代えて第1制御を有効にする。
【0104】
このように、掻き上げ作業状態と判定して第1制御を無効にした後に、第1制御の有効への復帰を、掻き上げ作業状態の判定とは別の条件に基づいて決定することによって、掻き上げ作業後に山を下りる際に地面を障害物と誤検知することを防ぐことができる。
【0105】
<動作>
次に、本実施の形態のホイールローダ10の制御動作について説明する。
【0106】
図7は、本実施の形態のホイールローダ10の制御動作を示すフロー図である。
【0107】
はじめに、ステップS10(制御決定ステップの一例)において、コントローラ26の決定部93が、報知系24と制動系22の制御として第1制御を有効にする。第1制御では、障害物判定部91が後進時に障害物が存在すると判定したときに、自動ブレーキを作動させ且つ警報を発する。
【0108】
次に、ステップS20(掻き上げ判定ステップの一例)において、コントローラ26の掻き上げ判定部92が、車両本体1が掻き上げ作業状態W3であるか否かを判定する。ステップS20において掻き上げ作業状態ではないと判定された場合は、制御はステップS10に戻り、第1制御の有効が維持される。
【0109】
一方、ステップS20において掻き上げ作業状態W3であると判定された場合は、制御はステップS30に進む。
【0110】
ステップS30(停止ステップの一例)において、決定部93は、報知系24と制動系22の制御として第1制御を無効にして、第2制御を有効にする。第2制御が有効にされている状態では、自動ブレーキの機能および警報装置61の機能を停止し、機能OFF通知ランプ62を点灯する。このため、仮に後進時に障害物が存在すると判定したとしても、自動ブレーキおよび警報装置61を作動させない。
【0111】
次に、ステップS40において、制御復帰決定部94が、掻き上げ作業状態に関する情報に基づいて、上述した条件(1)~条件(6)のいずれかを満たすか否かを判定し、報知系24と制動系22の制御として第1制御を有効へ復帰するか否かの判定を行う。
【0112】
ステップS40において、条件(1)~条件(6)のいずれも満たさず第1制御を有効へ復帰しないと判定された場合、条件(1)~条件(6)のいずれかを満たすまでステップS40が繰り返される。ステップS40において、制御復帰決定部94が、条件(1)~条件(6)のいずれか1つを満たしたと判定した場合、制御はステップS50に進む。
【0113】
そして、ステップS50において、決定部93は、報知系24と制動系22の制御として第1制御を有効へ復帰する。
【0114】
これにより、掻き上げ作業後に斜面を降りるときも、自動ブレーキの機能および警報装置61の機能を停止し、地面Gを障害物として誤検出を低減することができる。
【0115】
また、自動ブレーキの機能を停止することが可能となるため、掻き上げ作業後に地面を検出し、土砂の山Mから下りられなくなることを防ぐことができる。
【0116】
(実施の形態2)
次に、本開示にかかる実施の形態2のホイールローダ10について説明する。
【0117】
実施の形態1のホイールローダ10では、作業機状態検出部73による検出に基づいて掻き上げ作業状態であるか否かを判定しているが、本実施の形態2のホイールローダ10では、車両本体1の傾斜状態に基づいて掻き上げ作業状態であるか否かを判定する。また、実施の形態1のホイールローダ10で第1制御の有効への復帰を決定した条件と異なり、本実施の形態2のホイールローダ10では、車両本体1の傾斜状態に基づいて第1制御の有効への復帰を決定する。
【0118】
図8は、本実施の形態2のホイールローダ10の駆動系21、制動系22、操作系23、報知系24、および検出系125の構成を示すブロック図である。本実施の形態2のホイールローダ10の検出系125には、実施の形態1の検出系25と比較して、走行状態検出部72および作業機状態検出部73が設けられておらず、車体角度センサ74(傾斜状態検出部の一例)が設けられている。
【0119】
車体角度センサ74は、車両本体1の傾斜状態を検出する。車体角度センサ74は、車両本体1の角度を検出することによって、車両本体1が傾斜状態であるか否かを検出する。なお、車体角度センサ74の代わりにIMU(Inertial Measurement Unit)を用いても良く、車体内外に設置されるカメラの検出画像に基づきホイールローダ10の傾斜状態を決定してもよい。また、ホイールローダ10の傾斜状態を検出可能な構成であればよく、これらの構成に限定されなくてもよい。
【0120】
本実施の形態2では、掻き上げ判定部92は、車体角度センサ74の検出値に基づいて、掻き上げ作業状態であるか否かを判定する。掻き上げ判定部92は、車体角度センサ74による傾斜角が所定閾値θ1(第4閾値の一例、例えば、20°)以上の場合、掻き上げ作業状態であると判定する。なお、傾斜角θ(
図5参照)は、水平に対してホイールローダ10のフロント側が持ち上がった角度である。
【0121】
本実施の形態2では、制御復帰決定部94は、車体角度センサ74による傾斜角が所定閾値θ2(第5閾値の一例、例えば、10°)以下の場合、第1制御の有効への復帰を決定する。これは、車両本体1が掻き上げ作業を行うような傾斜面から降りた状態であると考えられるためである。なお、所定閾値θ2は、所定閾値θ1よりも小さく設定されている。
【0122】
図9は、傾斜角に対する第1制御の無効と有効への復帰の関係を示す図である。
図9に示すように、掻き上げ作業を終了し山を降りたと判定して第1制御の有効への復帰を決定するための閾値θ2は、掻き上げ作業状態と判定して第1制御を無効にするための閾値θ1よりも小さく設定されている。
【0123】
例えば、閾値θ1と閾値θ2を同じ値とすると、
図10に示すように、掻き上げ作業後に山から降りる途中で第1制御の設定が復帰されることになるため、地面Gを障害物と誤検知する。
【0124】
このため、閾値θ2を閾値θ1よりも小さく設定することによって誤検知を低減することができる。
【0125】
なお、本実施の形態2のホイールローダ10の制御動作について
図7を用いて説明すると、ステップS20において、掻き上げ判定部92は、車体角度センサ74による傾斜角が所定閾値θ1以上の場合、掻き上げ作業状態であると判定し、制御はステップS30に進む。一方、傾斜角が所定閾値θ1未満の場合、掻き上げ作業状態ではないと判定し、制御はステップS10に戻る。
【0126】
また、ステップS40において、制御復帰決定部94は、車体角度センサ74による傾斜角が所定閾値θ2以下の場合、復帰条件を満たしたとして第1制御の有効への復帰を決定し、制御はステップS50に進む。一方、車体角度センサ74による傾斜角が所定閾値θ2より大きい場合、復帰条件を満たしていないとしてステップS40の制御が繰り返され、復帰条件を満たすまでステップS40が繰り返される。
【0127】
<特徴>
(1)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、車両本体1と、後方検出部71と、コントローラ26(制御部の一例)と、を備える。車両本体1は、車体フレーム2、フロントタイヤ4、およびリアタイヤ7(走行体の一例)と、車体フレーム2の前方に配置された作業機3と、を有する。後方検出部71は、車体フレーム2、フロントタイヤ4、およびリアタイヤ7の駆動による後方への走行の際に障害物(物体の一例)を検出する。コントローラ26は、障害物の検出と、後方への走行状態と、作業機3による掻き上げ作業状態により第1制御の有効または無効を決定し、第1制御の無効時に、掻き上げ作業状態に基づいて、第1制御を有効にする。
【0128】
これによって、障害物を検出した際に衝突軽減のための対応を行う第1制御を、掻き上げ作業状態との判定によって無効にし、第1制御の無効を行う必要がなくなった場合に第1制御を無効から有効へ復帰することができる。
【0129】
このため、掻き上げ作業後に土砂の山から降りる場合でも、第1制御が有効にされていないため、地面Gを障害物と検知することを防ぎ、誤検知による警報を低減することができる。
【0130】
(2)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、警報装置61(第1報知部の一例)を更に備える。警報装置61は、後方検出部71によって車両本体1の後方に障害物を検出したことを報知する。コントローラ26は、第1制御の無効時に第2制御を有効にする。第1制御は、警報装置61による報知を実行する。第2制御は、警報装置61による報知の変更を実行する。報知の変更は、報知の停止、報知の音量の抑制、または報知の出力形態を変更することを含む。
【0131】
これにより、第1制御の無効の際に、警報を発すること停止、または警報の大きさの抑制、音声からランプへの変更等を行うことが可能となる。
【0132】
(3)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、掻き上げ作業状態に関する情報は、車速、FNRレバー52(操作部材の一例)の位置、走行距離を含む。コントローラ26は、第1制御の無効時に、車速が所定速度以上且つFNRレバー52が後進位置に配置されている場合、FNRレバー52が後進位置に配置されてから所定時間以上経過した場合、FNRレバー52が後進位置に配置されてから所定距離以上走行した場合のいずれかの場合に第1制御を有効にする。
【0133】
これによって、掻き上げ作業後に土砂の山から降りた状態であることがわかるため、障害物の検出に対応する第1制御を有効へ復帰することができる。
【0134】
(4)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、掻き上げ作業状態に関する情報は、FNRレバー52(操作部材の一例)の位置、パーキングブレーキ43の制動状態、またはエンジンキー部57(キーの一例)のON・OFF状態を含む。コントローラ26は、第1制御の無効時に、FNRレバー52が後進位置から中立位置に移動若しくは後進位置から前進位置に移動した場合、パーキングブレーキ43が制動した場合、またはエンジンキー部57がOFF状態になった場合のいずれかの場合に第1制御を有効にする。
【0135】
これによって、何かの理由によって作業車両を停止したことがわかるため、障害物の検出に対応する第1制御を有効へ復帰することができる。
【0136】
(5)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、走行状態検出部72と、作業機状態検出部73と、を備える。走行状態検出部72は、車両本体1の走行状態を検出する。作業機状態検出部73は、作業機3の状態を検出する。掻き上げ作業状態に関する情報は、走行状態、および作業機3の状態を含む。コントローラ26は、前進時に作業機3の状態に基づいて、掻き上げ作業状態であるか否かを判定する。
【0137】
これによって、車両本体1の走行状態と作業機3の状態から掻き上げ作業状態であるか否かを判定することができる。
【0138】
(6)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16(ブームシリンダの一例)と、を有する。ブーム14は、車体フレーム2の前部に動作可能に取り付けられている。バケット15は、前方に向かって開口が配置されるようにブーム14に接続され、ブーム14に対して駆動する。リフトシリンダ16は、ブーム14を駆動する。作業機状態検出部73は、ブームボトム圧センサ73bと、ブーム角度センサ73aと、を備える。ブームボトム圧センサ73bは、リフトシリンダ16のボトム圧を検出する。ブーム角度センサ73aは、ブーム14の角度を検出する。コントローラ26は、リフトシリンダ16のボトム圧とブーム14の角度に基づいて、掻き上げ作業状態であるか否かの判定を行う。
【0139】
このように、ブーム14の角度θと、リフトシリンダ16のボトム圧を検出することで、ホイールローダ10が掻き上げ作業状態であるか否かを判定することができる。
【0140】
(7)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、コントローラ26は、リフトシリンダ16のボトム圧が第1閾値以上、且つブーム14の角度が第2閾値以下の場合に掘削作業状態であると判定し、掘削作業状態との判定中にブーム14の角度が第3閾値より大きいとき、掻き上げ作業状態であると判定する。第3閾値は、第2閾値よりも上方に位置する。
【0141】
このように、ブーム14の角度と、リフトシリンダ16のボトム圧を検出することで、ホイールローダ10が掘削作業状態であるか否かを判定し、掘削作業状態であると判定されたうえで、ブーム14の角度に基づいて、その掘削作業が掻き上げ作業であるか否かを判定することができる。これは、通常の掘削時と比べて掻き上げの際にはブーム14が上方に位置するため、掘削作業状態において、掻き上げ作業状態と掻き上げ作業以外の状態を判別することができるためである。
【0142】
(8)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、走行状態検出部72は、車両本体1に設けられたフロントタイヤ4またはリアタイヤ7の回転方向、または車両本体1の前進または後進を設定可能なFNRレバー52が設定された位置を検出する。コントローラ26は、走行状態検出部72の検出に基づいて前進を判定する。
【0143】
これにより、車両本体1が前進している際に掻き上げ作業状態であるか否かの判定を行うことができる。
【0144】
(9)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、車体角度センサ74(傾斜状態検出部の一例)を更に備える。車体角度センサ74は、車両本体1の傾斜状態を検出する。掻き上げ作業状態に関する情報は、傾斜状態を含む。コントローラ26は、車両本体1の傾斜角度が第4閾値以上の場合に、掻き上げ状態であると判定する。
【0145】
掻き上げ作業の際には車両本体1が土砂の山等の傾斜した場所に配置されているため、傾斜を検出することによって、掻き上げ作業状態であるか否かを判定することができる。
【0146】
(10)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、掻き上げ作業状態に関する情報は、傾斜状態を含む。コントローラ26は、第1制御の無効時に、車両本体1の傾斜角度が第4閾値よりも小さい第5閾値以下の場合に、第1制御を有効にする。
【0147】
このように、掻き上げ作業状態であるか否かの判定に用いる傾斜角度の第4閾値と、衝突軽減のための動作を行う第1制御を復帰させる傾斜角度の第5閾値の大きさを変え、第5の閾値を第4の閾値よりも小さく設定することにより、山を降りる途中における誤検出を低減することができる。
【0148】
(11)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、車両本体1の走行状態を検出する走行状態検出部72を更に備える。コントローラ26は、車両本体1の後方の物体の検出を後進時に実行する。走行状態検出部72は、車両本体1に設けられたフロントタイヤ4またはリアタイヤ7の回転方向、または車両本体1の前進または後進を設定可能なFNRレバー52が設定された位置を検出する。コントローラ26は、走行状態検出部72の検出に基づいて後進を判定する。
【0149】
これによって、車両本体1が後進していることを検出することができる。
【0150】
(12)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、コントローラ26は、第1制御の無効時に第2制御を有効にする。第1制御は、車両本体1を自動的に制動するために自動ブレーキの駆動を実行する。第2制御は、自動ブレーキの制動力の抑制、または自動ブレーキの停止を実行する。
【0151】
これにより、例えば掻き上げ作業で車両本体1が傾斜した場所に配置されている場合に、自動ブレーキが作動して車両本体1を停止させることを防ぐことができる。
【0152】
(13)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、自動ブレーキの制動力の抑制または自動ブレーキの停止を報知する機能OFF通知ランプ62(第2報知部の一例)を更に備える。コントローラ26は、自動ブレーキの制動力の抑制または自動ブレーキの停止を行った場合、機能OFF通知ランプ62によってオペレータに報知を行う。
【0153】
これにより、オペレータは、自動ブレーキの抑制または停止が行われていることを認識することができる。
【0154】
(14)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、作業機3は、ブーム14と、バケット15と、バケットシリンダ17(アクチュエータの一例)と、ベルクランク18(サブリンクの一例)と、を備える。ブーム14は、車体フレーム2の前部に揺動可能に取り付けられている。バケット15は、前方に向かって開口が配置されるようにブーム14に接続され、ブーム14に対して駆動する。バケットシリンダ17は、バケット15を駆動する。ベルクランク18は、ブーム14に取り付けられ、バケットシリンダ17の駆動力をバケット15へ伝達する。
【0155】
これにより、フロントローディング構成を有するホイールローダ10において、掻き上げ作業および掻き上げ作業後に、地面Gを障害物Sと誤検出することによって警報装置61が作動する誤検出による警報を低減することができる。
【0156】
(15)
本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)の制御方法は、ステップS10、ステップS30(制御決定ステップの一例)と、ステップS40、S50(制御有効ステップの一例)と、を備える。ステップS10、S30は、車体フレーム2、フロントタイヤ4、およびリアタイヤ7(走行体の一例)と作業機3を有する車両本体1の走行体の駆動による後方への走行の際における物体の検出と、後方への走行状態と、作業機3による掻き上げ作業状態により第1制御の有効または無効を決定する。ステップS40、S50は、第1制御の無効時に、掻き上げ作業状態に基づいて、第1制御を有効にする。
【0157】
これによって、障害物を検出した際に衝突軽減のための対応を行う第1制御を、掻き上げ作業状態との判定によって無効にし、第1制御の無効を行う必要がなくなった場合に第1制御を無効から有効へ復帰することができる。
【0158】
このため、掻き上げ作業後に土砂の山から降りる場合でも、第1制御が有効にされていないため、地面Gを障害物と検知することを防ぎ、誤検知による警報を低減することができる。
【0159】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0160】
(A)
上記実施の形態では、第2制御において自動ブレーキの機能を停止していたが、停止に限らなくても良く、第1制御のときよりもブレーキ弁41の開度を小さく設定して自動ブレーキのときよりも弱いブレーキ力が作動するように制御してもよい。この弱いブレーキが、自動ブレーキの抑制の一例に対応する。このとき、自動ブレーキの抑制を、機能OFF通知ランプ62で通知してもよい。
【0161】
なお、弱いブレーキ力はブレーキ弁41の開度を調整する代わりにオペレータがアクセル51をオフにした際の制御を行うことによって生じさせてもよい。オペレータがアクセル51をオフすることによって、エンジン31への燃料供給が停止され、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように制御され、弱いブレーキ力が作動される。すなわち、ブレーキ指示部82が、エンジン31への燃料供給を停止し、ポンプ32aとモータ32bの斜板を走行の抵抗となるように制御してもよい。
【0162】
また、アクセルをオフした場合の制御だけでなく、ニュートラルの位置になるようにFNRレバー52を操作した際の制御を行うことによって弱いブレーキ力を作動させてもよい。FNRレバー52がニュートラルの位置の場合、コントローラ26は、ソレノイド32d、32eを制御し、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように移動する。すなわち、ブレーキ指示部82が、エンジン31への燃料供給を停止し、ポンプ32aとモータ32bの斜板を走行の抵抗となるように制御してもよい。
【0163】
これによって、制動力が働き弱いブレーキ力が発生する。なお、ニュートラルの方がアクセル51をオフするだけよりも大きいブレーキ力を得ることができる。
【0164】
(B)
上記実施の形態では、駆動系21にHST32を用いているが、HSTに限らなくても良く、トルクコンバータであってもよい。
図11は、駆動系21にトルクコンバータ132とトランスミッション133が設けられた構成を示すブロック図である。
図11は、実施の形態2の構成の変形例として記載しているが、駆動系21にトルクコンバータ132とトランスミッション133が設けられた構成を実施の形態1に適用してもよい。
【0165】
エンジン31からの駆動力はトルクコンバータ132を介してトランスミッション133に伝達される。トランスミッション133は、トルクコンバータ132を介して伝達されるエンジン31の回転駆動力を変速してアクスル34に伝達する。トランスミッション133には、パーキングブレーキ43が設けられている。
【0166】
トルクコンバータの場合、上記(A)で述べた弱いブレーキ力を生じさせるためには、上記と同様にブレーキ弁41の開度を小さく設定してもよい。また、HSTに比較してブレーキ力が弱くなるが、アクセル51をオフ状態にする制御を行うだけでもよい。なお、設定ブレーキ力を生じさせる場合は、上記実施の形態と同様に、ブレーキ弁41の開度を大きくするか、パーキングブレーキ43を用いればよい。
【0167】
さらに、HSTに限らず、HMT(Hydro Mechanical Transmission)が用いられても良い。
【0168】
(C)
上記実施の形態では、第2制御において、自動ブレーキを作動させず、警報装置61も作動させていないが、例えば警報装置61のみ動作させてもよい。また、自動ブレーキのみ作動させてもよく、自動ブレーキおよび警報装置61の双方を作動させてもよい。双方を作動させる場合は、第1制御と異なるように、第2制御では、自動ブレーキの制動力の抑制や、警報装置61の警報の大きさの抑制等が行ってもよい。
【0169】
(D)
上記実施の形態のホイールローダ10は、自動ブレーキの機能を有しているが、自動ブレーキの機能を有していなくてもよい。この場合、第1制御では、自動ブレーキが作動せず、警報装置61が作動する。また、第2制御では、警報装置61の作動は行われない。
【0170】
また、第1制御において、車両本体1から障害物までの距離に応じて警報の音量を変更してもよい。
【0171】
(E)
上記実施の形態では、警報装置61の報知の変更の一例として第2制御において、警報装置61による警報を停止させているが、これに限らず、警報の音量を抑制してもよく、警報の出力形態を変更してもよい。警報の出力形態を変更するとは、例えば、音による報知を光による報知に変更することである。
【0172】
(F)
なお、制動力の制御は、サービスブレーキ42、パーキングブレーキ43、他に制動力を変更する手段を適宜適用できる。
【0173】
(G)
上記実施の形態1における掻き上げ作業状態の判定条件と、実施の形態2における復帰条件を組み合わせてもよく、逆に、実施の形態2における掻き上げ作業状態の判定条件と、実施の形態1における復帰条件を組み合わせてもよい。
【0174】
また、実施の形態1と実施の形態2における掻き上げ作業状態の判定条件を組み合わせてもよいし、実施の形態1と実施の形態2における復帰条件を組み合わせてもよい。例えば、復帰条件として条件(1)~(6)に、条件(7)として傾斜角が閾値θ2以下であるという条件を加え、条件(1)~(7)のいずれかを満たした場合に復帰条件を満たすとしてもよい。
【0175】
(H)
上記実施の形態では、第2制御において機能OFF通知ランプ62を常時点灯させているが、後進時に障害物を検出したときにのみ機能OFF通知ランプ62を点灯させていてもよい。
【0176】
(I)
上記実施の形態のホイールローダはオペレータが搭乗して操作してもよいし、無人で操作されてもよい。
【0177】
(J)
上記実施の形態では、作業機械の一例としてホイールローダを用いて説明したが、これに限られるものではなく、ブルドーザ、フォークリフト等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本開示の作業機械および作業機械の制御方法によれば、掻き上げ作業の離脱を考慮して警報を行うことが可能な効果を発揮し、ホイールローダ等として有用である。
【符号の説明】
【0179】
1 :車両本体
2 :車体フレーム
3 :作業機
4 :フロントタイヤ
7 :リアタイヤ
26 :コントローラ
71 :後方検出部