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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057032
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】硬貨識別用センサ及び硬貨識別方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 5/08 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
G07D5/08 104
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165085
(22)【出願日】2020-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】712007315
【氏名又は名称】Eddyrent Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】山川 和廣
(72)【発明者】
【氏名】前田 修
【テーマコード(参考)】
3E002
【Fターム(参考)】
3E002AA14
3E002BC02
3E002BC04
3E002BC07
3E002DA02
(57)【要約】
【課題】バイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力するものでありながら、コイルの削減や回路構成の簡略化が図れる硬貨識別用センサを提供する。
【解決手段】硬貨2の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出する貫通型磁気センサ3と、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第1非貫通型磁気センサ4と、貫通型磁気センサ3に巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイル7と、第1コイル7にコンデンサC1を接続して構成される第1共振回路21と、第1非貫通型磁気センサ4に巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイル9と、第2コイル9にコンデンサC2を接続して構成される第2共振回路22と、を備え、発振誘導波に応じて各共振回路21、22から出力される振動減衰波の振幅及び位相を検出して出力する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力する硬貨識別用センサであって、
硬貨が通過する硬貨通路を挟んで対向するように配置され、硬貨の径方向両端部で、硬貨の外周側を厚み方向に貫通する磁束を発生しつつ、硬貨の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出する貫通型磁気センサと、
前記硬貨通路を通過する硬貨の中心側と対向するように配置され、硬貨の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する非貫通型磁気センサと、
前記貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイルと、
前記第1コイルにコンデンサを接続して構成される第1共振回路と、
前記非貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイルと、
前記第2コイルにコンデンサを接続して構成される第2共振回路と、
発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検出手段と、
硬貨の通過毎に、前記第1振幅検出手段、前記第1位相検出手段、前記第2振幅検出手段及び前記第2位相検出手段の検出信号を出力する検出信号出力手段と、を備える硬貨識別用センサ。
【請求項2】
前記硬貨通路を挟んで前記非貫通型磁気センサと対向するように配置され、硬貨の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第2非貫通型磁気センサと、
前記第2非貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第3コイルと、
前記第3コイルにコンデンサを接続して構成される第3共振回路と、
発振誘導波に応じて前記第3共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第3振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第3共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第3位相検出手段と、をさらに備え、
前記検出信号出力手段は、硬貨の通過毎に、前記第1振幅検出手段、前記第1位相検出手段、前記第2振幅検出手段、前記第2位相検出手段、前記第3振幅検出手段及び前記第3位相検出手段の検出信号を出力する請求項1に記載の硬貨識別用センサ。
【請求項3】
前記検出信号出力手段は、硬貨非通過時の検出信号と、硬貨通過時の検出信号との差分を出力する請求項1又は2に記載の硬貨識別用センサ。
【請求項4】
前記第2コイルが巻装されるコア、及び前記第3コイルが巻装されるコアのうち、少なくとも一方は、前記第1コイルが巻装されるコアと一体化されている請求項1~3のいずれか1項に記載の硬貨識別用センサ。
【請求項5】
中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な硬貨識別装置であって、
硬貨の磁気的な特性を検出するセンサ部と、
前記センサ部の検出信号に基づいて、バイカラー硬貨を識別する識別部と、を備え、
前記センサ部は、
硬貨の外周側の材質に起因する磁束の変化を検出する外周側磁気センサと、
硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する中心側磁気センサと、
前記外周側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイルと、
前記第1コイルにコンデンサを接続して構成される第1共振回路と、
前記中心側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイルと、
前記第2コイルにコンデンサを接続して構成される第2共振回路と、
発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検出手段と、を備え、
前記識別部は、
前記第1振幅検出手段の検出値と前記第1位相検出手段の検出値との比率である第1比率値を演算する第1比率値演算手段と、
前記第2振幅検出手段の検出値と前記第2位相検出手段の検出値との比率である第2比率値を演算する第2比率値演算手段と、
前記第1比率値と前記第2比率値との相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するバイカラー硬貨識別手段と、を備える硬貨識別装置。
【請求項6】
前記第2コイルが巻装されるコアは、前記第1コイルが巻装されるコアと一体化されている請求項5に記載の硬貨識別装置。
【請求項7】
硬貨の外周側の材質に起因する磁束の変化を検出する外周側磁気センサと、
硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する中心側磁気センサと、
前記外周側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイルと、
前記第1コイルにコンデンサを接続して構成される第1共振回路と、
前記中心側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイルと、
前記第2コイルにコンデンサを接続して構成される第2共振回路と、
発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検出手段と、を備える硬貨識別用センサの検出信号に基づいて、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別する硬貨識別方法であって、
前記第1振幅検出手段の検出値と前記第1位相検出手段の検出値との比率である第1比率値を演算する第1比率値演算ステップと、
前記第2振幅検出手段の検出値と前記第2位相検出手段の検出値との比率である第2比率値を演算する第2比率値演算ステップと、
前記第1比率値と前記第2比率値との相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するバイカラー硬貨識別ステップと、を備える硬貨識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイカラー硬貨などの識別に用いられる硬貨識別用センサ、硬貨識別装置及び硬貨識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力する硬貨識別用センサが知られている。例えば、特許文献1には、硬貨を片寄せた状態で1枚ずつ間隔を空けて搬送する搬送通路と、搬送通路の硬貨摺動面に面して配置された反射型磁気センサと、搬送通路の一端部を挟持するように配設された第1の透過型センサ及びこの第1の透過型センサと搬送通路を隔てて対向する位置で前記搬送通路の他端部を挟持するように配設された第2の透過型センサから成り、前記硬貨の材質を相互誘導方式で検出する相互誘導型の材質センサと、相互誘導型の材質センサよりも搬送通路の下流側の位置において、共振方式で硬貨の厚みを検出する共振型の材厚センサと、相互誘導型の材質センサよりも搬送通路の下流側の位置において、相互誘導型の材質センサとは別途に、硬貨の材質を共振方式で検出する共振型の材質センサと、を備えた硬貨識別装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5336900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の硬貨識別装置では、コイルの数が多いだけでなく、回路構成が複雑であり、部品点数の削減や構造の簡略化において改善の余地があった。例えば、特許文献1の硬貨識別装置では、励磁コイルと検出コイル(2次コイル)を必要とする相互誘導方式のセンサを備えるため、コイルの数が多い。また、特許文献1の硬貨識別装置では、硬貨の識別要素(分離要素)を増やすために、2種類の励磁周波数を使用するため、2種類の励磁周波数を合成したり分離する回路が必要となり、回路構成が複雑になる。
【0005】
本発明は、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力するものでありながら、コイルの削減や回路構成の簡略化が図れる硬貨識別用センサ、硬貨識別装置及び硬貨識別方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力する硬貨識別用センサであって、硬貨が通過する硬貨通路を挟んで対向するように配置され、硬貨の径方向両端部で、硬貨の外周側を厚み方向に貫通する磁束を発生しつつ、硬貨の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出する貫通型磁気センサと、前記硬貨通路を通過する硬貨の中心側と対向するように配置され、硬貨の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する非貫通型磁気センサと、前記貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイルと、前記第1コイルにコンデンサを接続して構成される第1共振回路と、前記非貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイルと、前記第2コイルにコンデンサを接続して構成される第2共振回路と、発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検出手段と、発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検出手段と、硬貨の通過毎に、前記第1振幅検出手段、前記第1位相検出手段、前記第2振幅検出手段及び前記第2位相検出手段の検出信号を出力する検出信号出力手段と、を備える。
また、第2の発明は、請求項1に記載の硬貨識別用センサにおいて、前記硬貨通路を挟んで前記非貫通型磁気センサと対向するように配置され、硬貨の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第2非貫通型磁気センサと、前記第2非貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第3コイルと、前記第3コイルにコンデンサを接続して構成される第3共振回路と、発振誘導波に応じて前記第3共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第3振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第3共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第3位相検出手段と、をさらに備え、前記検出信号出力手段は、硬貨の通過毎に、前記第1振幅検出手段、前記第1位相検出手段、前記第2振幅検出手段、前記第2位相検出手段、前記第3振幅検出手段及び前記第3位相検出手段の検出信号を出力する。
また、第3の発明は、請求項1又は2に記載の硬貨識別用センサにおいて、前記検出信号出力手段は、硬貨非通過時の検出信号と、硬貨通過時の検出信号との差分を出力する。
また、請求項4の発明は、 請求項1~3のいずれか1項に記載の硬貨識別用センサにおいて、前記第2コイルが巻装されるコア、及び前記第3コイルが巻装されるコアのうち、少なくとも一方は、前記第1コイルが巻装されるコアと一体化されている。
また、請求項5の発明は、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な硬貨識別装置であって、硬貨の磁気的な特性を検出するセンサ部と、前記センサ部の検出信号に基づいて、バイカラー硬貨を識別する識別部と、を備え、前記センサ部は、硬貨の外周側の材質に起因する磁束の変化を検出する外周側磁気センサと、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する中心側磁気センサと、前記外周側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイルと、前記第1コイルにコンデンサを接続して構成される第1共振回路と、前記中心側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイルと、前記第2コイルにコンデンサを接続して構成される第2共振回路と、発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検出手段と、発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検出手段と、を備え、前記識別部は、前記第1振幅検出手段の検出値と前記第1位相検出手段の検出値との比率である第1比率値を演算する第1比率値演算手段と、前記第2振幅検出手段の検出値と前記第2位相検出手段の検出値との比率である第2比率値を演算する第2比率値演算手段と、前記第1比率値と前記第2比率値との相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するバイカラー硬貨識別手段と、を備える。
また、請求項6の発明は、請求項4に記載の硬貨識別装置であって、前記第2コイルが巻装されるコアは、前記第1コイルが巻装されるコアと一体化されている。
また、請求項7の発明は、硬貨の外周側の材質に起因する磁束の変化を検出する外周側磁気センサと、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する中心側磁気センサと、前記外周側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイルと、前記第1コイルにコンデンサを接続して構成される第1共振回路と、前記中心側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイルと、前記第2コイルにコンデンサを接続して構成される第2共振回路と、発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検出手段と、発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検出手段と、を備える硬貨識別用センサの検出信号に基づいて、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別する硬貨識別方法であって、前記第1振幅検出手段の検出値と前記第1位相検出手段の検出値との比率である第1比率値を演算する第1比率値演算ステップと、前記第2振幅検出手段の検出値と前記第2位相検出手段の検出値との比率である第2比率値を演算する第2比率値演算ステップと、前記第1比率値と前記第2比率値との相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するバイカラー硬貨識別ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、貫通型磁気センサに巻装される第1コイルと、非貫通型磁気センサに巻装される第2コイルは、それぞれ、励磁コイル及び検出コイルに兼用されるので、コイルを削減できる。また、各コイルにコンデンサを接続して複数の共振回路を構成し、共振回路のパルス駆動に応じて各共振回路から出力される振動減衰波の振幅及び位相を検出するので、回路構成を複雑にすることなく、硬貨の識別要素(検出信号の種類)を増やすことができる。
また、請求項2の発明によれば、硬貨通路を挟んで非貫通型磁気センサと対向するように配置され、硬貨の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第2非貫通型磁気センサを備えるので、非貫通型磁気センサに対して硬貨が浮上がるような状況でも、非貫通型磁気センサ及び第2非貫通型磁気センサの検出信号に基づいて硬貨の浮上りによる誤差を補正し、硬貨の中心側の材質を精度よく識別できる。
また、請求項3の発明によれば、検出信号出力手段は、硬貨非通過時の検出信号と、硬貨通過時の検出信号との差分を出力するので、温度ドリフトなどの環境誤差をキャンセルし、硬貨の識別精度を高めることができる。
また、請求項4の発明によれば、第2コイルが巻装されるコア、及び第3コイルが巻装されるコアのうち、少なくとも一方は、第1コイルが巻装されるコアと一体化されているので、貫通型磁気センサ及び非貫通型磁気センサに係るパラメータを可及的に統一し、検出する硬貨に起因する磁気特性の変化をより高精度に検出することが可能になる。
また、請求項5の発明によれば、外周側磁気センサに巻装される第1コイルと、中心側磁気センサに巻装される第2コイルは、それぞれ、励磁コイル及び検出コイルに兼用されるので、コイルを削減できる。また、各コイルにコンデンサを接続して複数の共振回路を構成し、共振回路のパルス駆動に応じて各共振回路から出力される振動減衰波の振幅及び位相を検出するので、回路構成を複雑にすることなく、硬貨の識別要素(検出信号の種類)を増やすことができる。また、第1振幅検出手段の検出値と第1位相検出手段の検出値との比率である第1比率値と、第2振幅検出手段の検出値と第2位相検出手段の検出値との比率である第2比率値と、の相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するので、様々なノイズ要素を排除してバイカラー硬貨を高精度に識別することができる。
また、請求項6の発明によれば、第2コイルが巻装されるコアは、第1コイルが巻装されるコアと一体化されているので、外周側磁気センサ及び中心側磁気センサに係るパラメータを可及的に統一し、検出する硬貨に起因する磁気特性の変化をより高精度に検出することが可能になる。
また、請求項7の発明によれば、第1振幅検出手段の検出値と第1位相検出手段の検出値との比率である第1比率値と、第2振幅検出手段の検出値と第2位相検出手段の検出値との比率である第2比率値と、の相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するので、様々なノイズ要素を排除してバイカラー硬貨を高精度に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの要部斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの要部断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの硬貨との位置関係を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの回路構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの共振回路が出力する振動減衰波と、その振幅変化及び位相変化を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの出力波形を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの出力波形を示す図であり、(a)は第1位相検出手段の出力波形を示す図、(b)は第1振幅検出手段の出力波形を示す図、(c)は第2位相検出手段の出力波形を示す図、(d)は第2振幅検出手段の出力波形を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの第1位相検出手段及び第1振幅検出手段の検出信号による硬貨の識別性能を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの第2位相検出手段及び第2振幅検出手段の検出信号による硬貨の識別性能を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの制御手順を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施形態に係る硬貨識別装置の構成を示すブロック図である。
図12】本発明の実施形態に係る硬貨識別装置のセンサ部を示す要部斜視図である。
図13】本発明の実施形態に係る硬貨識別装置のセンサ部を示す要部断面図であり、(a)は第1コイル駆動時の磁束の流れを示す要部断面図、(b)は第2コイル駆動時の磁束の流れを示す要部断面図である。
図14】本発明の実施形態に係る硬貨識別装置の識別性能を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係る硬貨識別方法の処理ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの要部斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの要部断面図であり、図3は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの硬貨との位置関係を示す図である。
【0011】
本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサ1は、硬貨2を識別するための検出信号を出力する。検出対象とする硬貨2には、一種類の金属で製造される通常硬貨(例えば、1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、旧500円硬貨、新500円硬貨)と、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨と、が含まれ、さらに、バイカラー硬貨には、中心側の円板を異なる材質の金属板をサンドイッチ状に挟み込んで製造したバイカラー・クラッド硬貨(例えば、地方自治500円硬貨)が含まれる。
【0012】
バイカラー硬貨を識別するには、硬貨2の中心側の材質と外周側の材質を別々の磁気センサで検出する必要があり、また、バイカラー・クラッド硬貨を識別するには、硬貨2の中心側の材質を検出する磁気センサとして、非貫通型磁気センサ(反射型磁気センサ)を用いる必要がある。非貫通型磁気センサは、硬貨を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の材質に起因する磁束の変化を検出する磁気センサであり、サンドイッチ状に挟み込んだ金属板の影響を受けることなく、表面側の金属板の材質を検出することができる。
【0013】
図1図3に示すように、本実施形態の硬貨識別用センサ1は、硬貨2が通過する硬貨通路を挟んで対向するように配置され、硬貨2の径方向両端部で、硬貨2の外周側を厚み方向に貫通する磁束を発生しつつ、硬貨2の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出する貫通型磁気センサ3と、硬貨通路を通過する硬貨2の一方の面の中心側と対向するように配置され、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第1非貫通型磁気センサ4と、硬貨通路を通過する硬貨2の他方の面の中心側と対向するように配置され、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第2非貫通型磁気センサ5と、を備える。
【0014】
貫通型磁気センサ3は、硬貨通路を挟んで対向するように配置される一対の冂字状のコア6と、一対のコア6にそれぞれ巻装され、電気的に直列に接続される第1コイル7と、を備える。第1コイル7を励磁すると、図2に示すように、硬貨2の径方向両端部で、硬貨2の外周側を厚み方向に貫通する磁束が発生する。第1コイル7は、後述する検出回路20によれば、励磁コイル及び検出コイルに兼用でき、硬貨2の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を数少ないコイルで検出することが可能になる。
【0015】
第1非貫通型磁気センサ4は、硬貨通路を通過する硬貨2の一方の面の中心側と対向するように配置される冂字状のコア8と、コア8に巻装される第2コイル9と、を備える。第2コイル9を励磁すると、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束が発生する。後述する検出回路20によれば、第2コイル9は、励磁コイル及び検出コイルに兼用でき、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を数少ないコイルで検出することが可能になる。
【0016】
第2非貫通型磁気センサ4は、硬貨通路を通過する硬貨2の他方の面の中心側と対向するように配置される冂字状のコア10と、コア10に巻装される第3コイル11と、を備える。第3コイル11を励磁すると、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束が発生する。後述する検出回路20によれば、第3コイル11は、励磁コイル及び検出コイルに兼用でき、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を数少ないコイルで検出することが可能になる。
【0017】
図4は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの回路構成を示すブロック図であり、図5は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの共振回路が出力する振動減衰波と、その振幅変化及び位相変化を示す図である。
【0018】
図4に示すように、硬貨識別用センサの検出回路20は、第1コイル7にコンデンサC1を接続して構成される第1共振回路21と、第2コイル9にコンデンサC2を接続して構成される第2共振回路22と、第3コイル11にコンデンサC3を接続して構成される第3共振回路23と、発振誘導波(例えば、パルス波)に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検波部31(第1振幅検出手段)と、発振誘導波に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検波部41(第1位相検出手段)と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検波部32(第2振幅検出手段)と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検波部42(第2位相検出手段)と、発振誘導波に応じて第3共振回路23から出力される振動減衰波の振幅を検出する第3振幅検波部33(第3振幅検出手段)と、発振誘導波に応じて第3共振回路23から出力される振動減衰波の位相を検出する第3位相検波部43(第3位相検出手段)と、各共振回路21~23をパルス駆動し、各検波部31~33、41~43から検出信号を入力する制御部50(検出信号出力手段)と、を備える。
【0019】
図5に示すように、共振回路21~23が出力する振動減衰波は、硬貨2の有無、材質の違い、径寸法の違いなどに応じて振幅や位相が変化するため、3つの共振回路21~23を構成する本実施形態の硬貨識別用センサ1では、識別要素となる6種類の検出信号を出力することができる。なお、本実施形態の硬貨識別用センサ1は、第1非貫通型磁気センサ4に対して硬貨2の浮上りが発生しても、浮上りによる誤差を補正するために第2非貫通型磁気センサ5を備えるが、第1非貫通型磁気センサ4に対して硬貨2の浮上りが発生しない場合は、第2非貫通型磁気センサ5を省略し、4種類の検出信号で硬貨2を識別するようにしてもよい。
【0020】
図6は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの出力波形を示す図であり、図7は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの出力波形を示す図であり、(a)は第1位相検出手段の出力波形を示す図、(b)は第1振幅検出手段の出力波形を示す図、(c)は第2位相検出手段の出力波形を示す図、(d)は第2振幅検出手段の出力波形を示す図であり、図8は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの第1位相検出手段及び第1振幅検出手段の検出信号による硬貨の識別性能を示す図であり、図9は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの第2位相検出手段及び第2振幅検出手段の検出信号による硬貨の識別性能を示す図である。
【0021】
図6及び図7は、左側から順番に、新500円硬貨の表面、新500円硬貨の裏面、旧500円硬貨の表面、旧500円硬貨の裏面、地方自治500円硬貨の表面、地方自治500円硬貨の裏面を通した場合に、硬貨識別用センサ1から出力される第1位相検出信号(図7の(a))、第1振幅検出信号(図7の(b))、第2位相検出信号(図7の(c))及び第2振幅検出信号(図7の(d))の波形を示している。このような4種の出力波形によれば、図8及び図9に示すように、通常硬貨、バイカラー硬貨及びバイカラー・クラッド硬貨を含む各種の硬貨2を精度よく識別(分離)することが可能になる。
【0022】
図10は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの制御手順を示すフローチャートである。
【0023】
図10に示すように、制御部50は、カウンタをクリアした後(S1)、各コイル7、9、11の測定(位相検出及び振幅検出)を行い(S2)、今回の測定値(N)と前回の測定値(N-1)を比較する(S3)。制御部50は、今回の測定値(N)が前回の測定値(N-1)と一致すると判断した場合、カウンタをインクリメントした後(S4)、カウンタが上限値(例えば、1000)に達したか否かを判断する(S5)。制御部50は、カウンタ値が上限に達したと判断した場合、各コイル7、9、11の測定値(位相検出値及び振幅検出値)を基準値(硬貨非通過時の測定値)として格納し(S6)、カウンタをクリアした後(S7)、出力値の演算(S8)及び演算値の出力を行う(S9)。つまり、カウンタ値が上限に達する毎に各コイル7、9、11の基準値が更新される。
【0024】
一方、制御部50は、ステップS5において、カウンタ値が上限に達していないと判断した場合は、出力値の演算(S8)及び演算値の出力を行い(S9)、また、ステップS3において、今回の測定値(N)が前回の測定値(N-1)と一致しないと判断した場合、カウンタをクリアした後(S7)、出力値の演算(S8)及び演算値の出力を行う(S9)。制御部50は、ステップS8において、各コイル7、9、11の測定値(位相検出値及び振幅検出値)と各コイル7、9、11の基準値(位相基準値及び振幅基準値)との差分を演算し、その演算値を出力した後(S9)、ステップS2に戻り、一連の処理(S2~S9)を繰り返す。
【0025】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力する硬貨識別用センサ1であって、硬貨2が通過する硬貨通路を挟んで対向するように配置され、硬貨2の径方向両端部で、硬貨2の外周側を厚み方向に貫通する磁束を発生しつつ、硬貨2の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出する貫通型磁気センサ3と、硬貨通路を通過する硬貨2の中心側と対向するように配置され、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第1非貫通型磁気センサ4と、貫通型磁気センサ3に巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイル7と、第1コイル7にコンデンサC1を接続して構成される第1共振回路21と、第1非貫通型磁気センサ4に巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイル9と、第2コイル9にコンデンサC2を接続して構成される第2共振回路22と、発振誘導波に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検波部31と、発振誘導波に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検波部41と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検波部32と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検波部42と、硬貨2の通過毎に、第1振幅検出信号、第1位相検出信号、第2振幅検出信号及び第2位相検出信号を出力する制御部50と、を備えるので、コイルの兼用化によってコイルの数を削減できるだけでなく、回路構成を複雑にすることなく、硬貨2の識別要素(検出信号の種類)を増やすことができる。
【0026】
また、硬貨識別用センサ1は、硬貨通路を挟んで第1非貫通型磁気センサ4と対向するように配置され、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第2非貫通型磁気センサ5と、第2非貫通型磁気センサ5に巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第3コイル11と、第3コイル11にコンデンサC3を接続して構成される第3共振回路23と、発振誘導波に応じて第3共振回路23から出力される振動減衰波の振幅を検出する第3振幅検波部33と、発振誘導波に応じて第3共振回路23から出力される振動減衰波の位相を検出する第3位相検波部43と、をさらに備え、制御部50は、硬貨2の通過毎に、第1振幅検出信号、第1位相検出信号、第2振幅検出信号、第2位相検出信号、第3振幅検出信号及び第3位相検出信号を出力するので、第1非貫通型磁気センサ4に対して硬貨2が浮上がるような状況でも、第1非貫通型磁気センサ4及び第2非貫通型磁気センサ5の検出信号に基づいて硬貨2の浮上りによる誤差を補正し、硬貨2の中心側の材質を精度よく識別できる。
【0027】
また、制御部50は、硬貨非通過時の検出信号と、硬貨通過時の検出信号との差分を出力するので、温度ドリフトなどの環境誤差をキャンセルし、硬貨2の識別精度を高めることができる。
【0028】
つぎに、本発明の実施形態に係る硬貨識別装置100について、図11図15を参照して説明する。
【0029】
図11に示すように、硬貨識別装置100は、硬貨の磁気的な特性を検出するセンサ部1Bと、センサ部1Bの検出信号に基づいて、バイカラー硬貨を識別する識別部101と、を備える。なお、センサ部1Bは、前述した硬貨識別用センサ1に相当するものであり、共通の構成については、硬貨識別用センサ1と同じ符号を用いることにより、硬貨識別用センサ1の説明を援用したり、図示を省略したりする場合がある。
【0030】
センサ部1Bは、硬貨2の外周側の材質などに起因する磁束の変化を検出する外周側磁気センサ3Bと、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する中心側磁気センサ4Bと、外周側磁気センサ3Bに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイル7Bと、第1コイル7BにコンデンサC1を接続して構成される第1共振回路21と、中心側磁気センサ4に巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイル9Bと、第2コイル9BにコンデンサC2を接続して構成される第2共振回路22と、発振誘導波に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検波部31と、発振誘導波に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検波部41と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検波部32と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検波部42と、を備える。
【0031】
識別部101は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能的な構成として、第1振幅検波部31の検出値と第1位相検波部41の検出値との比率である第1比率値を演算する第1比率値演算手段(第1比率値演算ステップ:図15のステップS1)と、第2振幅検波部32の検出値と第2位相検波部34の検出値との比率である第2比率値を演算する第2比率値演算手段(第2比率値演算ステップ:図15のステップS2)と、第1比率値と第2比率値との相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するバイカラー硬貨識別手段(バイカラー硬貨識別ステップ:図15のステップS3)と、を備える。
【0032】
このような硬貨識別装置100によれば、第1振幅検波部31の検出値と第1位相検波部41の検出値との比率である第1比率値と、第2振幅検波部32の検出値と第2位相検波部42の検出値との比率である第2比率値と、の相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するので、様々なノイズ要素を排除してバイカラー硬貨を高精度に識別することができる。
【0033】
図14を参照して具体的に説明すると、単一合金で形成され硬貨(例えば、1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、旧500円硬貨、新500円硬貨)の場合、第1比率値と第2比率値は、所定の1次関数に近似する相関関係を示し、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨(例えば、地方自治500円硬貨)の場合、第1比率値と第2比率値の相関関係は、所定の1次関数から外れる。したがって、第1比率値と第2比率値の相関関係が所定の1次関数に近似しない場合、バイカラー硬貨であると判定することが可能になる。
例えば、第1比率値をx、第2比率値をy、定数をa、bとすると、単一合金で形成され硬貨の場合は、下記の1次関数に近似する。
y=ax+b
ここで、単一合金硬貨とバイカラー硬貨を識別する近似閾値をkとすると、下記の式が成立するか否かに基づいてバイカラー硬貨を識別することが可能になる。
|y-ax-b|>k
【0034】
また、図12及び図13に示すように、センサ部1Bでは、第2コイル9Bが巻装されるコア8Bが、第1コイル7Bが巻装されるコア6Bと一体化されている。このようにすると、外周側磁気センサ3B及び中心側磁気センサ4Bに係るパラメータを可及的に統一し、検出する硬貨2に起因する磁気特性の変化をより高精度に検出することが可能になる。なお、一体化には、一体成型だけでなく、別々に形成した複数の部材を一体的に接合する場合や一体的に積層する場合を含むものとする。
【0035】
具体的に説明すると、外周側磁気センサ3Bは、硬貨通路を挟んで対向する一対のコア61、62を備えており、一方のコア61は、第1コイル7Bが巻装される基部61aと、基部61aの両端部から硬貨通路側に突出し、硬貨2の外周側に近接する一対の外周側突出部61bと、を一体に備える。また、他方のコア62は、第1コイル7Bが巻装される基部62aと、基部62aの両端部から硬貨通路側に突出し、硬貨2の外周側に近接する一対の外周側突出部62bと、基部62aの中間部から硬貨通路側に突出し、硬貨2の中心側に近接する中心側突出部62cと、を一体に備え、中心側突出部62cには、第2コイル9Bが巻装されている。
【0036】
図13の(a)に示すように、第1コイル7Bを励磁すると、一対のコア61、62の外周側突出部61b、62b間に、硬貨2の外周側を厚み方向に貫通する磁束が発生し、硬貨2の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出することが可能になる。また、図13の(b)に示すように、第2コイル9Bを励磁すると、コア62の中心側突出部62cと外周側突出部62bとの間に、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束が発生し、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出することが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
1 硬貨識別用センサ
2 硬貨
3 貫通型磁気センサ
4 第1非貫通型磁気センサ
5 第2非貫通型磁気センサ
7 第1コイル
9 第2コイル
11 第3コイル
20 検出回路
21 第1共振回路
22 第2共振回路
23 第3共振回路
31 第1振幅検波部
32 第2振幅検波部
33 第3振幅検波部
41 第1位相検波部
42 第2位相検波部
43 第3位相検波部
50 制御部
C1~C3 コンデンサ
100 硬貨識別装置
1B センサ部
101 識別部
7B 第1コイル
9B 第2コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2020-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイカラー硬貨などの識別に用いられる硬貨識別用センサ及び硬貨識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力する硬貨識別用センサが知られている。例えば、特許文献1には、硬貨を片寄せた状態で1枚ずつ間隔を空けて搬送する搬送通路と、搬送通路の硬貨摺動面に面して配置された反射型磁気センサと、搬送通路の一端部を挟持するように配設された第1の透過型センサ及びこの第1の透過型センサと搬送通路を隔てて対向する位置で前記搬送通路の他端部を挟持するように配設された第2の透過型センサから成り、前記硬貨の材質を相互誘導方式で検出する相互誘導型の材質センサと、相互誘導型の材質センサよりも搬送通路の下流側の位置において、共振方式で硬貨の厚みを検出する共振型の材厚センサと、相互誘導型の材質センサよりも搬送通路の下流側の位置において、相互誘導型の材質センサとは別途に、硬貨の材質を共振方式で検出する共振型の材質センサと、を備えた硬貨識別装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5336900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の硬貨識別装置では、コイルの数が多いだけでなく、回路構成が複雑であり、部品点数の削減や構造の簡略化において改善の余地があった。例えば、特許文献1の硬貨識別装置では、励磁コイルと検出コイル(2次コイル)を必要とする相互誘導方式のセンサを備えるため、コイルの数が多い。また、特許文献1の硬貨識別装置では、硬貨の識別要素(分離要素)を増やすために、2種類の励磁周波数を使用するため、2種類の励磁周波数を合成したり分離する回路が必要となり、回路構成が複雑になる。
【0005】
本発明は、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力するものでありながら、コイルの削減や回路構成の簡略化が図れる硬貨識別用センサ及び硬貨識別方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力する硬貨識別用センサであって、
硬貨が通過する硬貨通路を挟んで対向するように配置され、硬貨の径方向両端部で、硬貨の外周側を厚み方向に貫通する磁束を発生しつつ、硬貨の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出する貫通型磁気センサと、前記硬貨通路を通過する硬貨の中心側と対向するように配置され、硬貨の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第1非貫通型磁気センサと、前記硬貨通路を挟んで前記非貫通型磁気センサと対向するように配置され、硬貨の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第2非貫通型磁気センサと、前記貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイルと、前記第1コイルにコンデンサを接続して構成される第1共振回路と、前記非貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイルと、前記第2コイルにコンデンサを接続して構成される第2共振回路と、前記第2非貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第3コイルと、前記第3コイルにコンデンサを接続して構成される第3共振回路と、発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検出手段と、発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検出手段と、発振誘導波に応じて前記第3共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第3振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第3共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第3位相検出手段と、硬貨の通過毎に、前記第1振幅検出手段、前記第1位相検出手段、前記第2振幅検出手段、前記第2位相検出手段、前記第3振幅検出手段及び前記第3位相検出手段の検出信号を出力する検出信号出力手段と、を備える。
また、請求項2の発明は、 請求項1に記載の硬貨識別用センサにおいて、前記第2コイルが巻装されるコア、及び前記第3コイルが巻装されるコアのうち、少なくとも一方は、前記第1コイルが巻装されるコアと一体化されている。
また、請求項3の発明は、硬貨の外周側の材質に起因する磁束の変化を検出する外周側磁気センサと、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する中心側磁気センサと、前記外周側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイルと、前記第1コイルにコンデンサを接続して構成される第1共振回路と、前記中心側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイルと、前記第2コイルにコンデンサを接続して構成される第2共振回路と、発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検出手段と、発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検出手段と、発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検出手段と、を備える硬貨識別用センサの検出信号に基づいて、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別する硬貨識別方法であって、前記第1振幅検出手段の検出値と前記第1位相検出手段の検出値との比率である第1比率値を演算する第1比率値演算ステップと、前記第2振幅検出手段の検出値と前記第2位相検出手段の検出値との比率である第2比率値を演算する第2比率値演算ステップと、前記第1比率値と前記第2比率値との相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するバイカラー硬貨識別ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、貫通型磁気センサに巻装される第1コイルと、第1非貫通型磁気センサに巻装される第2コイルは、それぞれ、励磁コイル及び検出コイルに兼用されるので、コイルを削減できる。また、各コイルにコンデンサを接続して複数の共振回路を構成し、共振回路のパルス駆動に応じて各共振回路から出力される振動減衰波の振幅及び位相を検出するので、回路構成を複雑にすることなく、硬貨の識別要素(検出信号の種類)を増やすことができる。また、硬貨通路を挟んで第1非貫通型磁気センサと対向するように配置され、硬貨の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第2非貫通型磁気センサを備えるので、非貫通型磁気センサに対して硬貨が浮上がるような状況でも、第1非貫通型磁気センサ及び第2非貫通型磁気センサの検出信号に基づいて硬貨の浮上りによる誤差を補正し、硬貨の中心側の材質を精度よく識別できる。
また、請求項2の発明によれば、第2コイルが巻装されるコア、及び第3コイルが巻装されるコアのうち、少なくとも一方は、第1コイルが巻装されるコアと一体化されているので、貫通型磁気センサ及び非貫通型磁気センサに係るパラメータを可及的に統一し、検出する硬貨に起因する磁気特性の変化をより高精度に検出することが可能になる
また、請求項3の発明によれば、第1振幅検出手段の検出値と第1位相検出手段の検出値との比率である第1比率値と、第2振幅検出手段の検出値と第2位相検出手段の検出値との比率である第2比率値と、の相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するので、様々なノイズ要素を排除してバイカラー硬貨を高精度に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの要部斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの要部断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの硬貨との位置関係を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの回路構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの共振回路が出力する振動減衰波と、その振幅変化及び位相変化を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの出力波形を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの出力波形を示す図であり、(a)は第1位相検出手段の出力波形を示す図、(b)は第1振幅検出手段の出力波形を示す図、(c)は第2位相検出手段の出力波形を示す図、(d)は第2振幅検出手段の出力波形を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの第1位相検出手段及び第1振幅検出手段の検出信号による硬貨の識別性能を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの第2位相検出手段及び第2振幅検出手段の検出信号による硬貨の識別性能を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの制御手順を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施形態に係る硬貨識別装置の構成を示すブロック図である。
図12】本発明の実施形態に係る硬貨識別装置のセンサ部を示す要部斜視図である。
図13】本発明の実施形態に係る硬貨識別装置のセンサ部を示す要部断面図であり、(a)は第1コイル駆動時の磁束の流れを示す要部断面図、(b)は第2コイル駆動時の磁束の流れを示す要部断面図である。
図14】本発明の実施形態に係る硬貨識別装置の識別性能を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係る硬貨識別方法の処理ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの要部斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの要部断面図であり、図3は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの硬貨との位置関係を示す図である。
【0011】
本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサ1は、硬貨2を識別するための検出信号を出力する。検出対象とする硬貨2には、一種類の金属で製造される通常硬貨(例えば、1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、旧500円硬貨、新500円硬貨)と、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨と、が含まれ、さらに、バイカラー硬貨には、中心側の円板を異なる材質の金属板をサンドイッチ状に挟み込んで製造したバイカラー・クラッド硬貨(例えば、地方自治500円硬貨)が含まれる。
【0012】
バイカラー硬貨を識別するには、硬貨2の中心側の材質と外周側の材質を別々の磁気センサで検出する必要があり、また、バイカラー・クラッド硬貨を識別するには、硬貨2の中心側の材質を検出する磁気センサとして、非貫通型磁気センサ(反射型磁気センサ)を用いる必要がある。非貫通型磁気センサは、硬貨を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の材質に起因する磁束の変化を検出する磁気センサであり、サンドイッチ状に挟み込んだ金属板の影響を受けることなく、表面側の金属板の材質を検出することができる。
【0013】
図1図3に示すように、本実施形態の硬貨識別用センサ1は、硬貨2が通過する硬貨通路を挟んで対向するように配置され、硬貨2の径方向両端部で、硬貨2の外周側を厚み方向に貫通する磁束を発生しつつ、硬貨2の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出する貫通型磁気センサ3と、硬貨通路を通過する硬貨2の一方の面の中心側と対向するように配置され、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第1非貫通型磁気センサ4と、硬貨通路を通過する硬貨2の他方の面の中心側と対向するように配置され、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第2非貫通型磁気センサ5と、を備える。
【0014】
貫通型磁気センサ3は、硬貨通路を挟んで対向するように配置される一対の冂字状のコア6と、一対のコア6にそれぞれ巻装され、電気的に直列に接続される第1コイル7と、を備える。第1コイル7を励磁すると、図2に示すように、硬貨2の径方向両端部で、硬貨2の外周側を厚み方向に貫通する磁束が発生する。第1コイル7は、後述する検出回路20によれば、励磁コイル及び検出コイルに兼用でき、硬貨2の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を数少ないコイルで検出することが可能になる。
【0015】
第1非貫通型磁気センサ4は、硬貨通路を通過する硬貨2の一方の面の中心側と対向するように配置される冂字状のコア8と、コア8に巻装される第2コイル9と、を備える。第2コイル9を励磁すると、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束が発生する。後述する検出回路20によれば、第2コイル9は、励磁コイル及び検出コイルに兼用でき、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を数少ないコイルで検出することが可能になる。
【0016】
第2非貫通型磁気センサ4は、硬貨通路を通過する硬貨2の他方の面の中心側と対向するように配置される冂字状のコア10と、コア10に巻装される第3コイル11と、を備える。第3コイル11を励磁すると、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束が発生する。後述する検出回路20によれば、第3コイル11は、励磁コイル及び検出コイルに兼用でき、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を数少ないコイルで検出することが可能になる。
【0017】
図4は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの回路構成を示すブロック図であり、図5は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの共振回路が出力する振動減衰波と、その振幅変化及び位相変化を示す図である。
【0018】
図4に示すように、硬貨識別用センサの検出回路20は、第1コイル7にコンデンサC1を接続して構成される第1共振回路21と、第2コイル9にコンデンサC2を接続して構成される第2共振回路22と、第3コイル11にコンデンサC3を接続して構成される第3共振回路23と、発振誘導波(例えば、パルス波)に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検波部31(第1振幅検出手段)と、発振誘導波に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検波部41(第1位相検出手段)と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検波部32(第2振幅検出手段)と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検波部42(第2位相検出手段)と、発振誘導波に応じて第3共振回路23から出力される振動減衰波の振幅を検出する第3振幅検波部33(第3振幅検出手段)と、発振誘導波に応じて第3共振回路23から出力される振動減衰波の位相を検出する第3位相検波部43(第3位相検出手段)と、各共振回路21~23をパルス駆動し、各検波部31~33、41~43から検出信号を入力する制御部50(検出信号出力手段)と、を備える。
【0019】
図5に示すように、共振回路21~23が出力する振動減衰波は、硬貨2の有無、材質の違い、径寸法の違いなどに応じて振幅や位相が変化するため、3つの共振回路21~23を構成する本実施形態の硬貨識別用センサ1では、識別要素となる6種類の検出信号を出力することができる。なお、本実施形態の硬貨識別用センサ1は、第1非貫通型磁気センサ4に対して硬貨2の浮上りが発生しても、浮上りによる誤差を補正するために第2非貫通型磁気センサ5を備えるが、第1非貫通型磁気センサ4に対して硬貨2の浮上りが発生しない場合は、第2非貫通型磁気センサ5を省略し、4種類の検出信号で硬貨2を識別するようにしてもよい。
【0020】
図6は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの出力波形を示す図であり、図7は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの出力波形を示す図であり、(a)は第1位相検出手段の出力波形を示す図、(b)は第1振幅検出手段の出力波形を示す図、(c)は第2位相検出手段の出力波形を示す図、(d)は第2振幅検出手段の出力波形を示す図であり、図8は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの第1位相検出手段及び第1振幅検出手段の検出信号による硬貨の識別性能を示す図であり、図9は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの第2位相検出手段及び第2振幅検出手段の検出信号による硬貨の識別性能を示す図である。
【0021】
図6及び図7は、左側から順番に、新500円硬貨の表面、新500円硬貨の裏面、旧500円硬貨の表面、旧500円硬貨の裏面、地方自治500円硬貨の表面、地方自治500円硬貨の裏面を通した場合に、硬貨識別用センサ1から出力される第1位相検出信号(図7の(a))、第1振幅検出信号(図7の(b))、第2位相検出信号(図7の(c))及び第2振幅検出信号(図7の(d))の波形を示している。このような4種の出力波形によれば、図8及び図9に示すように、通常硬貨、バイカラー硬貨及びバイカラー・クラッド硬貨を含む各種の硬貨2を精度よく識別(分離)することが可能になる。
【0022】
図10は、本発明の実施形態に係る硬貨識別用センサの制御手順を示すフローチャートである。
【0023】
図10に示すように、制御部50は、カウンタをクリアした後(S1)、各コイル7、9、11の測定(位相検出及び振幅検出)を行い(S2)、今回の測定値(N)と前回の測定値(N-1)を比較する(S3)。制御部50は、今回の測定値(N)が前回の測定値(N-1)と一致すると判断した場合、カウンタをインクリメントした後(S4)、カウンタが上限値(例えば、1000)に達したか否かを判断する(S5)。制御部50は、カウンタ値が上限に達したと判断した場合、各コイル7、9、11の測定値(位相検出値及び振幅検出値)を基準値(硬貨非通過時の測定値)として格納し(S6)、カウンタをクリアした後(S7)、出力値の演算(S8)及び演算値の出力を行う(S9)。つまり、カウンタ値が上限に達する毎に各コイル7、9、11の基準値が更新される。
【0024】
一方、制御部50は、ステップS5において、カウンタ値が上限に達していないと判断した場合は、出力値の演算(S8)及び演算値の出力を行い(S9)、また、ステップS3において、今回の測定値(N)が前回の測定値(N-1)と一致しないと判断した場合、カウンタをクリアした後(S7)、出力値の演算(S8)及び演算値の出力を行う(S9)。制御部50は、ステップS8において、各コイル7、9、11の測定値(位相検出値及び振幅検出値)と各コイル7、9、11の基準値(位相基準値及び振幅基準値)との差分を演算し、その演算値を出力した後(S9)、ステップS2に戻り、一連の処理(S2~S9)を繰り返す。
【0025】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力する硬貨識別用センサ1であって、硬貨2が通過する硬貨通路を挟んで対向するように配置され、硬貨2の径方向両端部で、硬貨2の外周側を厚み方向に貫通する磁束を発生しつつ、硬貨2の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出する貫通型磁気センサ3と、硬貨通路を通過する硬貨2の中心側と対向するように配置され、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第1非貫通型磁気センサ4と、貫通型磁気センサ3に巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイル7と、第1コイル7にコンデンサC1を接続して構成される第1共振回路21と、第1非貫通型磁気センサ4に巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイル9と、第2コイル9にコンデンサC2を接続して構成される第2共振回路22と、発振誘導波に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検波部31と、発振誘導波に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検波部41と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検波部32と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検波部42と、硬貨2の通過毎に、第1振幅検出信号、第1位相検出信号、第2振幅検出信号及び第2位相検出信号を出力する制御部50と、を備えるので、コイルの兼用化によってコイルの数を削減できるだけでなく、回路構成を複雑にすることなく、硬貨2の識別要素(検出信号の種類)を増やすことができる。
【0026】
また、硬貨識別用センサ1は、硬貨通路を挟んで第1非貫通型磁気センサ4と対向するように配置され、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第2非貫通型磁気センサ5と、第2非貫通型磁気センサ5に巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第3コイル11と、第3コイル11にコンデンサC3を接続して構成される第3共振回路23と、発振誘導波に応じて第3共振回路23から出力される振動減衰波の振幅を検出する第3振幅検波部33と、発振誘導波に応じて第3共振回路23から出力される振動減衰波の位相を検出する第3位相検波部43と、をさらに備え、制御部50は、硬貨2の通過毎に、第1振幅検出信号、第1位相検出信号、第2振幅検出信号、第2位相検出信号、第3振幅検出信号及び第3位相検出信号を出力するので、第1非貫通型磁気センサ4に対して硬貨2が浮上がるような状況でも、第1非貫通型磁気センサ4及び第2非貫通型磁気センサ5の検出信号に基づいて硬貨2の浮上りによる誤差を補正し、硬貨2の中心側の材質を精度よく識別できる。
【0027】
また、制御部50は、硬貨非通過時の検出信号と、硬貨通過時の検出信号との差分を出力するので、温度ドリフトなどの環境誤差をキャンセルし、硬貨2の識別精度を高めることができる。
【0028】
つぎに、本発明の実施形態に係る硬貨識別装置100について、図11図15を参照して説明する。
【0029】
図11に示すように、硬貨識別装置100は、硬貨の磁気的な特性を検出するセンサ部1Bと、センサ部1Bの検出信号に基づいて、バイカラー硬貨を識別する識別部101と、を備える。なお、センサ部1Bは、前述した硬貨識別用センサ1に相当するものであり、共通の構成については、硬貨識別用センサ1と同じ符号を用いることにより、硬貨識別用センサ1の説明を援用したり、図示を省略したりする場合がある。
【0030】
センサ部1Bは、硬貨2の外周側の材質などに起因する磁束の変化を検出する外周側磁気センサ3Bと、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する中心側磁気センサ4Bと、外周側磁気センサ3Bに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイル7Bと、第1コイル7BにコンデンサC1を接続して構成される第1共振回路21と、中心側磁気センサ4に巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイル9Bと、第2コイル9BにコンデンサC2を接続して構成される第2共振回路22と、発振誘導波に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検波部31と、発振誘導波に応じて第1共振回路21から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検波部41と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検波部32と、発振誘導波に応じて第2共振回路22から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検波部42と、を備える。
【0031】
識別部101は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能的な構成として、第1振幅検波部31の検出値と第1位相検波部41の検出値との比率である第1比率値を演算する第1比率値演算手段(第1比率値演算ステップ:図15のステップS1)と、第2振幅検波部32の検出値と第2位相検波部34の検出値との比率である第2比率値を演算する第2比率値演算手段(第2比率値演算ステップ:図15のステップS2)と、第1比率値と第2比率値との相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するバイカラー硬貨識別手段(バイカラー硬貨識別ステップ:図15のステップS3)と、を備える。
【0032】
このような硬貨識別装置100によれば、第1振幅検波部31の検出値と第1位相検波部41の検出値との比率である第1比率値と、第2振幅検波部32の検出値と第2位相検波部42の検出値との比率である第2比率値と、の相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するので、様々なノイズ要素を排除してバイカラー硬貨を高精度に識別することができる。
【0033】
図14を参照して具体的に説明すると、単一合金で形成され硬貨(例えば、1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、旧500円硬貨、新500円硬貨)の場合、第1比率値と第2比率値は、所定の1次関数に近似する相関関係を示し、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨(例えば、地方自治500円硬貨)の場合、第1比率値と第2比率値の相関関係は、所定の1次関数から外れる。したがって、第1比率値と第2比率値の相関関係が所定の1次関数に近似しない場合、バイカラー硬貨であると判定することが可能になる。
例えば、第1比率値をx、第2比率値をy、定数をa、bとすると、単一合金で形成され硬貨の場合は、下記の1次関数に近似する。
y=ax+b
ここで、単一合金硬貨とバイカラー硬貨を識別する近似閾値をkとすると、下記の式が成立するか否かに基づいてバイカラー硬貨を識別することが可能になる。
|y-ax-b|>k
【0034】
また、図12及び図13に示すように、センサ部1Bでは、第2コイル9Bが巻装されるコア8Bが、第1コイル7Bが巻装されるコア6Bと一体化されている。このようにすると、外周側磁気センサ3B及び中心側磁気センサ4Bに係るパラメータを可及的に統一し、検出する硬貨2に起因する磁気特性の変化をより高精度に検出することが可能になる。なお、一体化には、一体成型だけでなく、別々に形成した複数の部材を一体的に接合する場合や一体的に積層する場合を含むものとする。
【0035】
具体的に説明すると、外周側磁気センサ3Bは、硬貨通路を挟んで対向する一対のコア61、62を備えており、一方のコア61は、第1コイル7Bが巻装される基部61aと、基部61aの両端部から硬貨通路側に突出し、硬貨2の外周側に近接する一対の外周側突出部61bと、を一体に備える。また、他方のコア62は、第1コイル7Bが巻装される基部62aと、基部62aの両端部から硬貨通路側に突出し、硬貨2の外周側に近接する一対の外周側突出部62bと、基部62aの中間部から硬貨通路側に突出し、硬貨2の中心側に近接する中心側突出部62cと、を一体に備え、中心側突出部62cには、第2コイル9Bが巻装されている。
【0036】
図13の(a)に示すように、第1コイル7Bを励磁すると、一対のコア61、62の外周側突出部61b、62b間に、硬貨2の外周側を厚み方向に貫通する磁束が発生し、硬貨2の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出することが可能になる。また、図13の(b)に示すように、第2コイル9Bを励磁すると、コア62の中心側突出部62cと外周側突出部62bとの間に、硬貨2の中心側を厚み方向に貫通しない磁束が発生し、硬貨2の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出することが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
1 硬貨識別用センサ
2 硬貨
3 貫通型磁気センサ
4 第1非貫通型磁気センサ
5 第2非貫通型磁気センサ
7 第1コイル
9 第2コイル
11 第3コイル
20 検出回路
21 第1共振回路
22 第2共振回路
23 第3共振回路
31 第1振幅検波部
32 第2振幅検波部
33 第3振幅検波部
41 第1位相検波部
42 第2位相検波部
43 第3位相検波部
50 制御部
C1~C3 コンデンサ
100 硬貨識別装置
1B センサ部
101 識別部
7B 第1コイル
9B 第2コイル
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別可能な検出信号を出力する硬貨識別用センサであって、
硬貨が通過する硬貨通路を挟んで対向するように配置され、硬貨の径方向両端部で、硬貨の外周側を厚み方向に貫通する磁束を発生しつつ、硬貨の外周側の材質及び径寸法に起因する磁束の変化を検出する貫通型磁気センサと、
前記硬貨通路を通過する硬貨の中心側と対向するように配置され、硬貨の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第1非貫通型磁気センサと、
前記硬貨通路を挟んで前記非貫通型磁気センサと対向するように配置され、硬貨の中心側を厚み方向に貫通しない磁束を発生しつつ、硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する第2非貫通型磁気センサと、
前記貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイルと、
前記第1コイルにコンデンサを接続して構成される第1共振回路と、
前記非貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイルと、
前記第2コイルにコンデンサを接続して構成される第2共振回路と、
前記第2非貫通型磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第3コイルと、
前記第3コイルにコンデンサを接続して構成される第3共振回路と、
発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第3共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第3振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第3共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第3位相検出手段と、
硬貨の通過毎に、前記第1振幅検出手段、前記第1位相検出手段、前記第2振幅検出手段、前記第2位相検出手段、前記第3振幅検出手段及び前記第3位相検出手段の検出信号を出力する検出信号出力手段と、を備える硬貨識別用センサ。
【請求項2】
前記第2コイルが巻装されるコア、及び前記第3コイルが巻装されるコアのうち、少なくとも一方は、前記第1コイルが巻装されるコアと一体化されている請求項1に記載の硬貨識別用センサ。
【請求項3】
硬貨の外周側の材質に起因する磁束の変化を検出する外周側磁気センサと、
硬貨の中心側の材質に起因する磁束の変化を検出する中心側磁気センサと、
前記外周側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第1コイルと、
前記第1コイルにコンデンサを接続して構成される第1共振回路と、
前記中心側磁気センサに巻装され、励磁コイル及び検出コイルに兼用される第2コイルと、
前記第2コイルにコンデンサを接続して構成される第2共振回路と、
発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第1振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第1共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第1位相検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の振幅を検出する第2振幅検出手段と、
発振誘導波に応じて前記第2共振回路から出力される振動減衰波の位相を検出する第2位相検出手段と、を備える硬貨識別用センサの検出信号に基づいて、中心側の材質と外周側の材質が異なるバイカラー硬貨を識別する硬貨識別方法であって、
前記第1振幅検出手段の検出値と前記第1位相検出手段の検出値との比率である第1比率値を演算する第1比率値演算ステップと、
前記第2振幅検出手段の検出値と前記第2位相検出手段の検出値との比率である第2比率値を演算する第2比率値演算ステップと、
前記第1比率値と前記第2比率値との相関関係に基づいて、バイカラー硬貨であるか否かを識別するバイカラー硬貨識別ステップと、を備える硬貨識別方法。