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特開2022-57073果物皮剥装置および果物加工装置並びに果物皮剥方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057073
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】果物皮剥装置および果物加工装置並びに果物皮剥方法
(51)【国際特許分類】
   A23N 7/00 20060101AFI20220404BHJP
   A23N 15/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A23N7/00 G
A23N15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165141
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】591065549
【氏名又は名称】福岡県
(71)【出願人】
【識別番号】517261844
【氏名又は名称】株式会社マルミツサンヨー
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】在川 功一
(72)【発明者】
【氏名】永田 成敏
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA01
4B061AA02
4B061BA12
4B061BB07
4B061CB02
4B061CB11
4B061CB24
4B061CB25
(57)【要約】
【課題】確実に外皮を剥くことが可能な果物皮剥装置を提供する。
【解決手段】果物皮剥装置は、下カップC1と上カップC2とにより果物の枝側と花落ち部分側とを挟み込み、果物の外皮に切り込みを入れる切込刃により外皮の赤道部より枝側に寄せて円周方向に切り込みを入れ、下カップC1内および上カップC2内を吸引する吸引手段により外皮を吸引しながら、固定された下カップC1と回転する上カップC2との回転差により外皮を引き離し、環状部材331の果物側に向いた開口縁部に形成されたガイド部331aが外皮と果肉との間に挿入して残余の外皮を剥く。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椀状に形成され、果物を挟む一方のカップおよび他方のカップと、
前記一方のカップ内および前記他方のカップ内を吸引する吸引手段と、
前記一方のカップと前記他方のカップとに回転差を付与する回転手段と、
前記果物の外皮に切り込みを入れる切込刃と、
前記果物側に向いた開口縁部にガイド部が形成された環状部材とを備え、
前記一方のカップと前記他方のカップとにより前記果物の枝側と花落ち部分側とを挟み込み、前記切込刃により外皮の赤道部より枝側または花落ち部分側に寄せて円周方向に切り込みを入れ、前記一方のカップと前記他方のカップにて外皮を吸引しながら、前記回転手段により回転させて回転差により外皮を引き離し、前記環状部材の前記ガイド部を外皮と果肉との間に挿入して残余の外皮を剥く果物皮剥装置。
【請求項2】
前記一方のカップが前記果物の下側に配置され、前記他方のカップが前記果物の上側に配置されており、
前記一方のカップは、前記果物の下側を支持するカップ本体と、前記カップ本体内に配置された吸引用カップとを備え、
前記カップ本体を支持する外筒管と、前記吸引用カップに接続されて昇降し、前記吸引手段に接続される内筒管とを有する支持管を備えた請求項1記載の果物皮剥装置。
【請求項3】
前記環状部材と共に、前記果物の方向に移動して、前記果物を押し付ける押圧部と、果肉中心部に入り込み、空気が注入されることで風船が膨らむ実割補助部とを備えた請求項1または2記載の果物皮剥装置。
【請求項4】
前記請求項1から3のいずれかの項に記載の果物皮剥装置と、前記果物皮剥装置に供給される柑橘系果物を蒸す蒸気加熱装置と、前記蒸気加熱装置からの蒸された柑橘系果物のサイズを選別して、サイズごとに設置された前記果物皮剥装置に柑橘系果物を供給する選果機と、前記果物皮剥装置からの柑橘系果物の果肉からじょう嚢を分割する実割機とを備えた果物加工装置。
【請求項5】
椀状に形成された一方のカップと他方のカップとにより果物の枝側と花落ち部分側とを挟み込む工程と、
前記果物の外皮に切り込みを入れる切込刃により外皮の赤道部より枝側または花落ち部分側に寄せて円周方向に切り込みを入る工程と、
前記一方のカップ内および前記他方のカップ内を吸引する吸引手段により外皮を吸引しながら、前記一方のカップと前記他方のカップとに回転差を付与する回転手段により回転させて、回転差により外皮を引き離す工程と、
前記果物側に向いた開口縁部にガイド部が形成された環状部材の前記ガイド部を外皮と果肉との間に挿入して残余の外皮を剥く工程とを含む果物皮剥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果物の外皮を剥く作業を自動化する果物皮剥装置および果物加工装置並びに果物皮剥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果物は、缶詰にされたり、ジュースにされたり、他の食品の材料になったりする。
果物が、これらの食品になるときには、最初に皮が剥かれるが、人手による作業では煩雑な作業であることから効率が悪い。そこで、果物皮剥装置の一例として、みかん類の自動皮剥装置が特許文献1により知られている。
【0003】
特許文献1に記載のみかん類の自動皮剥装置は、出入する吸着子とこれに起伏する把握子とを附設した把握装置を回転するように対設して給送される果物の両側を把握回転させ、その回転中に刃物を作用させて外皮に切目を施し、後両側の把握装置に回転差を与えて外皮を捻回させて除去するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭34-6889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のみかん類の自動皮剥装置では、刃物が回動している果物の外周のほぼ中央に接触して切り込みを入れ、先端部に吸着子が形成された一方の支軸を回転させ、他方の支軸を停止とすることで、その回転差により外皮が捻転作用を受け、同時に、吸着子が果物の外皮を吸着しつつ、把持子が外周を把持した状態で、両方の支軸を退行させることで、外皮を引き剥がしている。
【0006】
しかし、この方法では、外皮の外周を把持した把持子が、外皮を左右に引っ張っているだけなので、皮は実にしっかりと付いた状態のままでは、きれいに剥けない可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、確実に外皮を剥くことが可能な果物皮剥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の果物皮剥装置は、椀状に形成され、果物を挟む一方のカップおよび他方のカップと、前記一方のカップ内および前記他方のカップ内を吸引する吸引手段と、前記一方のカップと前記他方のカップとに回転差を付与する回転手段と、前記果物の外皮に切り込みを入れる切込刃と、前記果物側に向いた開口縁部にガイド部が形成された環状部材とを備え、前記一方のカップと前記他方のカップとにより前記果物の枝側と花落ち部分側とを挟み込み、前記切込刃により外皮の赤道部より枝側または花落ち部分側に寄せて円周方向に切り込みを入れ、前記一方のカップと前記他方のカップにて外皮を吸引しながら、前記回転手段により回転させて回転差により外皮を引き離し、前記環状部材の前記ガイド部を外皮と果肉との間に挿入して残余の外皮を剥くことを特徴としたものである。
【0009】
本発明の果物皮剥方法は、椀状に形成された一方のカップと前記他方のカップとにより前記果物の枝側と花落ち部分側とを挟み込む工程と、前記果物の外皮に切り込みを入れる切込刃により外皮の赤道部より枝側または花落ち部分側に寄せて円周方向に切り込みを入る工程と、前記一方のカップ内および前記他方のカップ内を吸引する吸引手段により外皮を吸引しながら、前記一方のカップと前記他方のカップとに回転差を付与する回転手段により回転させて、回転差により外皮を引き離す工程と、前記果物側に向いた開口縁部にガイド部が形成された環状部材の前記ガイド部を外皮と果肉との間に挿入して残余の外皮を剥く工程とを含むことを特徴としたものである。
【0010】
本発明は、椀状の一方のカップと他方のカップとにより果物の枝側と花落ち部分側とを挟み込み、切込刃により果物の外皮の赤道部より枝側または花落ち部分側に寄せて切り込みを入れ、回転差によって外皮を引き離す。そして、環状部材のガイド部を外皮と果肉との間に挿入して残余の外皮を剥く。そうすることで、蓋を剥がすようにして、寄せた側の外皮を残余の外皮から引き離すことができる。また、環状部材のガイド部を外皮と果肉との間に挿入することで残余の下側の外皮を外側に向かって押し拡げることで、果肉から残余の外皮を剥くことができる。
【0011】
前記一方のカップが前記果物の下側に配置され、前記他方のカップが前記果物の上側に配置されており、前記一方のカップは、前記果物の下側を支持するカップ本体と、前記カップ本体内に配置された吸引用カップとを備え、前記カップ本体を支持する外筒管と、前記吸引用カップに接続されて昇降し、前記吸引手段に接続される内筒管とを有する支持管を備えたものとすることができる。
一方のカップが、カップ本体と、吸引用カップとから形成され、支持管が、外筒管と、内筒管とを備えている。そのため、内筒管を上昇させて吸引用カップを上昇させることで、カップ本体に載った、果肉を取り出した後の外皮を一方のカップから押し出すことができる。
【0012】
前記環状部材と共に、前記果物の方向に移動して、前記果物を押し付ける押圧部と、果肉中心部に入り込み、空気が注入されることで風船が膨らむ実割補助部とを備えたものとすることができる。
押圧部が果肉の上部を押し付けながら実割補助部が果肉中心部に入り込み、空気が注入されることで風船を膨らませる。そうすることで、果肉中心部が膨らみ、じょう嚢同士の間に隙間ができるので、次の工程における実割機による実割を補助することができる。
【0013】
また、本発明の果物加工装置は、本発明の果物皮剥装置と、前記果物皮剥装置に供給される柑橘系果物を蒸す蒸気加熱装置と、前記蒸気加熱装置からの蒸された柑橘系果物のサイズを選別して、サイズごとに設置された前記果物皮剥装置に柑橘系果物を供給する選果機と、前記果物皮剥装置からの柑橘系果物の果肉からじょう嚢を分割する実割機とを備えたことを特徴したものである。
【0014】
本発明の果物加工装置によれば、蒸気加熱装置と、選果機と、果物皮剥装置と、実割機とが直列に繋がり、果物皮剥装置が柑橘系果物のサイズに合わせて並列に設置されていることで、収穫された様々なサイズの柑橘系果物から、分割された状態のじょう嚢を出荷することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、蓋を剥がすようにして、寄せた側の外皮を残余の外皮から引き離すことができ、残余の下側の外皮を外側に向かって押し拡げて、果肉から残余の外皮を剥くことができるので、確実に外皮を剥くことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係る果物皮剥装置を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図2図1に示す果物皮剥装置の第2ステージに設置された第1装置を説明するための図である。
図3図1に示す果物皮剥装置の第3ステージに設置された第2装置を説明するための図である。
図4図1に示す果物皮剥装置の第4ステージに設置された第3装置を説明するための図である。
図5図1に示す果物皮剥装置の第5ステージに設置された第4装置を説明するための図である。
図6図1に示す果物皮剥装置の第6ステージに設置された第5装置を説明するための図である。
図7図1に示す果物皮剥装置の果物皮剥方法を説明するための図である。
図8図1に示す果物皮剥装置の第7ステージでの下カップの動作を説明するための図である。
図9】本発明の実施の形態2に係る果実加工装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る果物皮剥装置を図面に基づいて説明する。果物皮剥装置は、柑橘系果物の一例である甘夏の外皮を剥くものである。
【0018】
(果物皮剥装置の構成)
まず、本実施の形態1に係る果物皮剥装置の構成について説明する。
図1(A)および同図(B)に示す果物皮剥装置10は、ステージユニット20と、各ステージ(第1ステージ~第8ステージ)に配置された作業ユニット30と、吸引ユニット40と、制御盤50とを備えている。
【0019】
ステージユニット20は、円盤状のステージ本体21と、ステージ本体21の各ステージに設けられた下側作業部22と、ステージ本体21を回転させる回転駆動部23とを備えている。
下側作業部22は、果物の下側が載る一方のカップである下カップC1と、上端が下カップC1に接続され、下カップC1内と連通する吸引用配管である支持管221とを備えている。
【0020】
図8に示すように、下カップC1は、果物の下側を支持するカップ本体C11と、カップ本体C11内に配置され、果物の底部に吸着するために支持管221に連通した吸引用カップC12とを備えている。
支持管221は、ステージ本体21に回転自在に接続されると共に、制御盤50により図示しないブレーキ機構が制御されることで回転が抑止される。
図8に示すように、支持管221は、外筒管221aと内筒管221bとを備えている。外筒管221aは、上端がカップ本体C11に接続され、下端がステージ本体21に接続されている。内筒管221bは、上端が吸引用カップC12に接続され、下端がステージ本体21に形成された貫通孔を貫通し、吸引ユニット40に接続される。内筒管221bは、図示しない昇降手段により昇降する。
回転駆動部23は、回転軸がステージ本体21に連結されている。回転駆動部23は、制御盤50により制御されるモーターにより形成することができる。
【0021】
作業ユニット30は、第2ステージから第5ステージのそれぞれには、第1装置31から第6装置36が、ステージ本体21の外方に設置されている。
第1装置31と第2装置32と第4装置34とは、基本構成が同じ上側作業部60である。
【0022】
図2から図3に示すように上側作業部60は、果物の上側に被さる他方のカップである上カップC2と、上カップC2を吊り下げる支持管61と、上カップC2を回転させる回転駆動部62と、上カップC2を昇降させる昇降部63とを備えている。
支持管61は、上カップC2の上端に接続され、下カップC1内と連通して他の配管を介して吸引ユニット40(図1参照)に接続されている。
下カップC1と上カップC2とは、果物を挟み込んだときに、下カップC1と上カップC2との間に、後述する切り込みを入れるための隙間ができる大きさに形成されている。
【0023】
回転駆動部62は、回転軸と支持管61とがベルトに巻回されていることで上カップC2を回転させる。この回転駆動部62により上カップC2は円周方向に回転する自転機能を有する。回転駆動部62は、制御盤50(図1参照)により制御されるモーターとすることができる。
昇降部63は、制御盤50による制御により伸縮して上カップC2を昇降する。
【0024】
図2に示す第1装置31には、上側作業部60に、果物の外皮に切り込みを入れるための切込刃311が配置されている。切込刃311は、下半分より上半分の方に寄せた位置としている。切込刃311の位置は、例えば、上下方向の半分より上側に寄った位置から、7/10までの位置とすることができる。
【0025】
図4に示す第3装置33は、果物の下カップC1側の外皮を引き剥がすための環状部材331と、果物を押し付ける押圧部332と、空気が注入されることで風船が膨らむ実割補助部333とを備えている。
環状部材331は、果物側(下側)の外側周縁部を開口部に向かうに従って徐々に厚みが薄くなるテーパー面とすることにより、リング状の先細り形状としたガイド部331aが形成されている。環状部材331の直径は、果物から外皮分を引いた果肉部分の直径としている。
押圧部332は、中心部位置に実割補助部333を通過させるための貫通孔が形成された円盤部332aと、円盤部332aを果物に押し付けるばね部材332bとを備えている。
実割補助部333は、先端部333aが先細り形状に形成され、胴部333bに空気が注入されると膨らむ風船が配置され、基端部333cに風船に注入される空気が送気される配管が接続されている。
【0026】
図5に示す第4装置34には、上側作業部60の近傍に、皮剥の可否を検出するセンサ(図示せず)と、皮剥ができなかった果物を排出するための押し出し部341が配置されている。
【0027】
図6に示す第5装置35は、皮剥が完了した果物を、次の工程へ移すための搬送路へ排出する取り出し部351が配置されている。
取り出し部351は、ロッドが伸縮するシリンダ部351aと、ロッド351bの先端に設けられた上カップC3とを備えている。上カップC3には、図示しない吸引用のチューブが接続されており、上カップC3内を吸引する。
【0028】
図1に示す吸引ユニット40は、吸引ポンプ41と、吸引ポンプ41からのチューブ(図示せず)が接続され、回転するステージ本体21の各ステージに形成された貫通孔に接続される吸引用ダクト管42とを備えている。
制御盤50は、果物皮剥装置10を全体制御するものである。
【0029】
以上のように果物皮剥装置10が構成されることで、吸引ポンプ41と、吸引用ダクト管42とを備えた吸引ユニット40が吸引手段として機能し、下カップC1を支持する支持管221の回転を抑止するブレーキ機構と、上カップC2の支持管61を回転させる回転駆動部62とが、回転差を付与する回転手段として機能する。
【0030】
(果物皮剥装置の動作および使用状態)
次に、果物皮剥装置10の動作および使用状態を、図1から図6および図7に基づいて説明する。
なお、図7において、各ステージ示す円形の内側半分が黒により塗り潰されている場合には、下カップC1による吸引を示しており、円形の外側半分が黒により塗り潰されている場合には、上カップC2による吸引を示している。
【0031】
まず、蒸された甘夏が、図1に示す搬入路R1から第1ステージの下カップC1に搭載される。このとき、甘夏は、枝側が上であっても、花落ち部分側が上であってもよい。
第1ステージでは、甘夏が下カップC1に搭載されると、下カップC1の吸引用カップC12により甘夏の底部が吸引される。そして、ステージ本体21が回転して第2ステージへ移動する。
【0032】
図2および図7に示すように、第2ステージでは、上カップC2が果物の上部を吸引した状態で上カップC2を下降させて押さえ付け、回転させる。
上カップC2の回転に伴って下カップC1も回転する。そして、切込刃311を外皮に当接する。このとき、切込刃311を、果物の赤道部より枝側または花落ち部分側に寄せて当てる。例えば、上下方向の6/10の高さ位置に接触させる。上カップC2が回転することにより、上カップC2と共に果物を挟み込む下カップC1も連動して回転する。そのため、切込刃311が接触した位置の外皮の円周方向に切れ込みが入る。甘夏の場合には、約4mmの切り込みを入れる。
【0033】
図3および図7に示すように、第3ステージでは、下カップC1も吸引する。そして、下カップC1を支持する支持管221は、固定状態とする。上カップC2は引き続き吸引状態である。
このような状態で、上カップC2を回転しながら上昇させると、下カップC1と上カップC2との回転差により切れ込み位置にて下側の外皮から上側の外皮が引き離され、上側の外皮が果肉から分離して剥ける。
【0034】
図4および図7に示すように、第4ステージでは、下カップC1が、上側の外皮が剥けた果物に吸引した状態で、果物の上方に位置する第3装置33を下降させる。このとき、下カップC1の吸引用カップC12を上昇させる。
そうすることで、第3装置33の環状部材331は、ガイド部331aが下側の外皮と果肉との間に入り込み、上側の外皮が剥がされた残余の外皮を外側に押し拡げることで、下側の外皮を剥がすことができる。
また、環状部材331が降下して、果物の方向に移動することで、ばね部材332bにより付勢された円盤部332aが果肉の上部を押し付けながら実割補助部333が果肉中心部に入り込む。実割補助部333に空気が注入されると、風船が膨らむので、果肉中心部が膨らみ、じょう嚢同士の間に隙間ができる。そのため、次の工程における実割機による実割を補助することができる。
【0035】
図5および図7に示すように、下カップC1により外皮を吸引状態で固定状態とすると共に、上カップC2により果肉を吸引状態で回転させる。そうすることで、上カップC2が果肉を吸引した状態で回転するため、下カップC1が吸引している下側の外皮から、果肉の下側部分が完全に引き離される。
【0036】
しかし、第1ステージから第4ステージまでの工程で、外皮が果肉から剥がれない場合がある。そのような場合には、図5および図7に示す第5ステージでは、図示しないセンサにより外皮が剥けていないことが検知されると、下カップC1と上カップC2とによる吸引が解除され、上カップC2が上昇する。そして、第4装置34の押し出し部341が伸長して果物を押し出すことにより、不良排出路R2に不良となった果物が押し出される。
【0037】
図6および図7に示すように、第6ステージでは、下カップC1が外皮を吸引した状態とする。次に、下カップC1の側方に位置する第5装置35の取り出し部351において、シリンダ部351aからロッド351bを進出させて、上カップC3に果肉を吸引させる。そして、ロッド351bが退行してシリンダ部351a内へ入り、取り出し路R3上に上カップC3が位置すると、上カップC3による果肉への吸引を解除する。そうすることで、果肉を、上カップC3から取り出し路R3へ移すことができる。
【0038】
最後に、図7および図8に示すように、第7ステージでは、下カップC1は吸引が解除された状態である。そして、下カップC1の吸引用カップC12を上昇させることで、カップ本体C11に載った外皮を吸引用カップC12から押し出し、下部皮排出路R4に排出することができる。
なお、図7に示すように、第8ステージは特に作業は無い空ステージである。
【0039】
以上のように、果物皮剥装置10では、下カップC1と上カップC2にて外皮を吸引しながら上カップC2を回転して、切込刃311により果物の外皮の赤道部より上側に寄せて円周方向に切り込みを入れ、回転しない下カップC1との回転差により、上カップC2側の外皮を引き離す。そして、環状部材331のガイド部331aを外皮と果肉との間に挿入して残余の外皮を剥く。
そうすることで、蓋を剥がすようにして、上側の外皮を下側の外皮から引き離すことができる。従って、容易に上側の外皮を果肉から引き剥がすことができる。
また、環状部材331のガイド部331aを外皮と果肉との間に挿入することで残余の下側の外皮を外側に向かって押し拡げることで、果肉から下側の外皮を剥くことができる。従って、下側の外皮も、容易に剥がすことができる。
よって、果物皮剥装置10は、確実に外皮を剥くことが可能である。
【0040】
また、下カップC1が、カップ本体C11と、吸引用カップC12とから形成され、支持管221が、外筒管221aと、内筒管221bとを備えている。そのため、内筒管221bを上昇させて吸引用カップC12を上昇させることで、カップ本体C11に載った、果肉を取り出した後の外皮を下カップC1から押し出すことができる。
【0041】
更に、環状部材331と共に、押圧部332と実割補助部333が果物の方向に移動して、押圧部332が果物を押し付けると、実割補助部333が果肉中心部に入り込み、風船を膨らませる。そうすることで、実割補助部333による風船の膨らみにより果肉中心部が膨らむので、実割を補助することができる。
【0042】
本実施の形態1では、下カップC1を一方のカップ、上カップC2を他方のカップとして説明したが、反対でもよい。また、下カップC1は果物の下側、上カップC2は果物の上側に当接するように配置されているが、果物の枝側と花落ち部分側とを横向きに配置して、果物を一方のカップと他方のカップとにより水平方向から接近させて挟み込むようにしてもよい。
【0043】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る果物加工装置を図面に基づいて説明する。
図9に示す果物加工装置100は、果物の一例である柑橘系果物の外皮を剥き、じょう嚢を分割する機能を備えている。
果物加工装置100は、蒸気加熱装置101と、選果機102と、実施の形態1に係る果物皮剥装置10と、実割機103とを備えている。
【0044】
蒸気加熱装置101は、高温の、例えば、98度の蒸気により柑橘系果物を加熱して外皮を緩んだ状態とするスコルダーである。蒸気加熱装置101により蒸された柑橘系果物は、蒸気加熱装置101から選果機102へ送られる。
【0045】
選果機102は、蒸気加熱装置101からの蒸された柑橘系果物のサイズを選別して、サイズごとに設置された果物皮剥装置10に柑橘系果物を供給するものである。
選果機102により選別された柑橘系果物は、サイズに基づいて、選果機102に繋がる搬送路104a~104cに送られる。
【0046】
本実施の形態2では、選果機102は、「大」、「中」、「小」と規格外の「特大」の4種類のサイズを選別して、「特大」以外の果物を搬送路104a~104cへ送る。
また、「特大」と判定された柑橘系果物は、排出路105に送られ、箱106に収納される。
【0047】
搬送路104a~104cにより搬送される柑橘系果物は、各サイズに対応させて3台が並列設置された果物皮剥装置10のそれぞれの水槽107に投入される。
【0048】
果物皮剥装置10により皮剥きされた果物の果肉は、搬送路108により3台の果物皮剥装置10から集約され、実割機103の流水槽109へ投入される。
実割機103は、果物皮剥装置10からの柑橘系果物の果肉からじょう嚢を分割するものである。流水槽109に投入された柑橘系果物は、実割機103により実割される。
【0049】
蒸気加熱装置101と、選果機102、実割機103とは、従来の装置が使用できる。
【0050】
このように、果物加工装置100は、蒸気加熱装置101と、選果機102、果物皮剥装置10、実割機103が直列に繋がり、果物皮剥装置10が柑橘系果物のサイズに合わせて並列に設置されていることで、収穫された様々なサイズの柑橘系果物から、分割された状態のじょう嚢を出荷することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、果物の皮剥きの自動化に好適であり、特に、柑橘系果物に最適である。
【符号の説明】
【0052】
10 果物皮剥装置
20 ステージユニット
21 ステージ本体
22 下側作業部
221 支持管
221a 外筒管
221b 内筒管
23 回転駆動部
30 作業ユニット
31 第1装置
311 切込刃
32 第2装置
33 第3装置
331 環状部材
331a ガイド部
332 押圧部
332a 円盤部
332b ばね部材
333 実割補助部
333a 先端部
333b 胴部
333c 基端部
34 第4装置
341 押し出し部
35 第5装置
351 取り出し部
351a シリンダ部
351b ロッド
36 第6装置
40 吸引ユニット
41 吸引ポンプ
42 吸引用ダクト管
50 制御盤
60 上側作業部
61 支持管
62 回転駆動部
63 昇降部
100 果物加工装置
101 蒸気加熱装置
102 選果機
103 実割機
104a~104c 搬送路
105 排出路
106 箱
107 水槽
108 搬送路
109 流水槽
C1 下カップ
C11 カップ本体
C12 吸引用カップ
C2,C3 上カップ
R1 搬入路
R2 不良排出路
R3 取り出し路
R4 下部皮排出路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9