(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057079
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】除湿剤容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20220404BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20220404BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20220404BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B65D81/26 Q
B65D1/26 110
B01D53/26 210
B65D77/20 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165149
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】714008950
【氏名又は名称】白元アース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】古舘 由布子
(72)【発明者】
【氏名】金野 覚
(72)【発明者】
【氏名】相川 豊子
【テーマコード(参考)】
3E033
3E067
4D052
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA15
3E033BA21
3E033BB08
3E033DA06
3E033DA08
3E033DD01
3E033FA04
3E033GA01
3E067AA05
3E067AB99
3E067BA07A
3E067BB14A
3E067BC02A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA35
3E067EB27
3E067EE45
3E067FA01
3E067FB11
3E067FC01
4D052AA09
4D052CA04
4D052CA06
4D052HA12
4D052HA13
4D052HA14
4D052HA15
4D052HA49
(57)【要約】
【課題】
十分な量の潮解性薬剤を収容可能でありながら嵩高さが抑制され、かつ使用開始直後から使用終了までの間、良好な吸湿速度が維持され得る除湿剤容器を提供する。
【解決手段】
除湿剤容器は、底面部10、側面部20および天面が開口してなる天面開口部30を有する防水性の容器本体40と、側面部20の上端から延在するフランジ部50と、容器本体40に収容された潮解性薬剤60と、天面開口部30を覆いフランジ部50の上面側に接着された透湿防水シート70と、透湿防水シート70を覆う非透湿性の蓋シート80と、を備え、容器本体40内部の気体が脱気されており、底面部10の下面からフランジ部50の上面までの高さH2が、脱気前の底面部10からフランジ部50の上面までの高さH1よりも小さくなるよう構成される。
を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部、側面部および天面が開口してなる天面開口部を有する防水性の容器本体と、
前記側面部の上端から延在するフランジ部と、
前記容器本体に収容された潮解性薬剤と、
前記天面開口部を覆い前記フランジ部の上面側に接着された透湿防水シートと、
前記透湿防水シートを覆う非透湿性の蓋シートと、
を備え、
前記容器本体内部の気体が脱気されており、
前記底面部の下面から前記フランジ部の上面までの高さH2が、脱気前の前記底面部の下面から前記フランジ部の上面までの高さH1よりも小さいことを特徴とする除湿剤容器。
【請求項2】
前記底面部の厚みTb(μm)に対する前記側面部の厚みTs(μm)の比Ts/Tbが1未満である請求項1に記載の除湿剤容器。
【請求項3】
前記フランジ部の厚みTf(μm)が180μ以上400μm以下であって、
前記底面部の厚みTb(μm)に対する前記フランジ部の厚みTf(μm)の比Tf/Tbが1以上である請求項1または2に記載の除湿剤容器。
【請求項4】
前記容器本体が、1枚の樹脂シートから構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の除湿剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に潮解性薬剤が収容された除湿剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クローゼット、押入れ、あるいは下駄箱などの収納空間の湿気取りとして、塩化カルシウムなどの潮解性薬剤を用い、空気中の水分を吸収することで液化させ、これを容器内に貯めるタンクタイプの除湿器が広く提案されている。
【0003】
たとえば、下記特許文献1には、合成樹脂材料によって形成された上面開口の自立する容器を用いるタンクタイプの除湿器(以下、従来技術1ともいう)が開示されている。従来技術1は、容器の上下方向中間部に、複数の滴下孔を有する受け皿が配置され、当該受け皿上に顆粒状の潮解性薬剤が収容されるとともに、容器の上面開口部分が透湿防水性のシートで覆われて構成される。従来技術1では、潮解性薬剤が吸湿して発生した潮解液は、滴下孔を通じて受け皿の下方に貯留される。
【0004】
また、従来技術1のようなタンクタイプとは別に、袋タイプの除湿剤も提案されている。たとえば、下記特許文献2には、ポリエチレン製またはポリプロピレン製などの透明フィルムと透湿性フィルムを重ね合わせてその三方をヒートシールして袋形状とし、これに塩化カルシウムなどの潮解性薬剤を充填し、開口部をヒートシールしてなる除湿袋(以下、従来技術2ともいう)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-274985号公報
【特許文献2】特開平5-245332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述する従来技術1、2には、それぞれ以下の問題点があった。
即ち、潮解性薬剤は、空気中の水分を吸収することで潮解液となり体積が増加するため、従来技術1のようなタンクタイプの除湿器は、製品使用終期の潮解液量を考慮して十分な大きさに設計される。そのため、タンクタイプの除湿器は嵩高くなり、出荷時の運搬、店頭で当該除湿器を購入した消費者の持ち運び、あるいは保管などにおいて嵩張るという問題があった。
【0007】
また従来技術1のようなタンクタイプの除湿器は、吸湿速度が遅いという問題があった。本発明者らの検討によれば、潮解性薬剤は、透湿防水性のシートと距離が近いほど吸湿しやすく、また潮解液となった後も吸湿を続けるが、このときも潮解液面と、透湿防水性のシートとの距離が近いほど吸湿しやすい。かかる知見において、従来技術1は、使用開始直後には、容器内の受け皿上に収容された潮解性薬剤と容器の上面開口部分を覆う透湿防水性のシートとの距離が比較的近いため充分な速度で吸湿を開始し得るが、これにより発生した潮解液は受け皿の下方に貯留される。そのため、潮解液の発生とともに透湿防水性のシートとの距離が遠くなり、開封後しばらく経つと、吸湿速度が減速してしまうものと考えられた。
【0008】
一方、従来技術2は、透明フィルムと透湿性フィルムを袋状に構成して潮解性薬剤を収納するため、従来技術1に比べ嵩が小さい。しかし、袋の容量が小さいため、収容する潮解性薬剤の量に限界があり、そのため吸湿量にも限界があった。また、従来技術2の構成では、潮解液は透湿性フィルム内に貯留されるため、長期間使用しているうちに、外部に水溶液の一部が滲み出す虞があった。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、十分な量の潮解性薬剤を収容可能でありながら嵩高さが抑制され、かつ使用開始直後から使用終了までの間、良好な吸湿速度が維持され得る除湿剤容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の除湿剤容器は、底面部、側面部および天面が開口してなる天面開口部を有する防水性の容器本体と、側面部の上端から延在するフランジ部と、上記容器本体に収容された潮解性薬剤と、上記天面開口部を覆い上記フランジ部の上面側に接着された透湿防水シートと、上記透湿防水シートを覆う非透湿性の蓋シートと、を備え、上記容器本体内部の気体が脱気されており、上記底面部から上記透湿防水シートまでの高さH2が、脱気前の上記底面部から上記透湿防水シートまでの高さH1よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を備える本発明の除湿剤容器は、高さ方向に圧縮されるよう脱気され減容されているため、嵩高くなることが防止されており、運搬や保管がし易い。また、高さ方向に圧縮されていることから、内部に収容された潮解性薬剤と、天面開口部を覆う透湿防水シートとの距離が近い。そのため本発明は、使用開始時から吸湿速度が速い。しかも、吸湿により発生した潮解液の体積が増えるにつれて、脱気され圧縮された容器本体が伸長して元の形状に戻っていくため、常に、潮解液面は透湿防水シートの付近に存在することになる。そのため、本発明は、使用開始後、日数が経過しても速い吸湿速度が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる除湿剤容器の側面図である。
【
図2】(2A)~(2C)は、本発明に用いられる容器本体の製造工程の一例を説明する説明図である。
【
図3】(3A)~(3C)は、本発明の除湿剤容器の製造工程の一例を説明する説明図である。
【
図4】(4A)~(4C)は、本発明の除湿剤容器の使用開始時から使用後期までを説明する説明図である。
【
図5】実施例1、実施例2および比較例3の使用時の吸湿量の長期経時変化を示すグラフである。
【
図6】使用開始時、10日目、31日目に側面方向から撮影した実施例1、実施例2および比較例2の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。尚、本発明の説明に関し用いる図面は、本発明および本発明に含まれる部材の寸法、寸法比率および形状を限定するものではない。
尚、本明細書において上下方向とは、任意の高さ位置からみた天地方向を意味し、水平方向とは、上記天地方向に対し垂直な方向を意味する。
【0014】
まず、
図1を用いて本発明の一実施形態にかかる除湿剤容器の概要について説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる除湿剤容器100の側面図である。
除湿剤容器100は、底面部10、側面部20および天面が開口してなる天面開口部30を有する防水性の容器本体40と、側面部20の上端から延在するフランジ部50と、容器本体40に収容された潮解性薬剤60と、天面開口部30を覆いフランジ部50の上面側に接着された透湿防水シート70と、透湿防水シート70を覆う非透湿性の蓋シート80と、を備える。除湿剤容器100において、容器本体40内部の気体は脱気されている。そのため、底面部10下面からフランジ50上面までの高さH2(以下、脱気後開封前の高さH2という場合がある)が、脱気前の底面部10下面からフランジ部50上面までの高さH1(以下、脱気前の高さH1という場合がある)よりも小さくなるよう構成されている。尚、脱気前の高さH1を示す容器本体30は、容器本体の断面を示す
図3Aが参照される。
【0015】
かかる構成の除湿剤容器100は、容器本体40内部を脱気することによって、容器本体40の高さ方向の寸法が小さくなるよう減容されている。そのため除湿剤容器100は、嵩が小さく運搬や保管がし易い。
また、除湿剤容器100は上述のとおり脱気前に比べて高さ寸法が小さくなるよう脱気されるため、容器本体40に収容された潮解性薬剤60と透湿防水シート70までの距離が短くなる。そのため、使用開始時から良好な吸湿速度が示される。本発明のその他の効果は、以下に示す除湿剤容器100の詳細な説明において順次説明する。
【0016】
(容器本体)
容器本体40は、底面部10、側面部20および天面開口部30を有する。底面部10は、所定の面積を有し略平板状に構成された部分であり、その形状は特に限定されず、たとえば四方形、円形、楕円形あるいは任意の形状であってもよい。
側面部20は、底面部10の外縁から上方に延在し、容器本体40の内部と外部とを区画する。側面部20の上端側は、開口しており、天面開口部30が形成されている。脱気前の側面部20は、
図3Aに参照されるように、シワや折り目のない壁状である。これに対し、
図1に示す容器本体40は、脱気され密封された状態であり、側面部20が不規則に収縮し容器本体40の高さ寸法が脱気前に比べて小さくなっている。即ち、容器本体40は、脱気後開封前の高さH2が、脱気前の高さH1よりも小さくなるよう構成されている。
本発明において脱気とは、容器本体40の内部の気体の一部を除去することを意味する。脱気によって、実質的に容器本体40の容積が減容される。そのため容器本体40において、少なくとも側面部20は、潮解液の貯留性を維持しつつ脱気により収縮し容器本体40の減容を可能とする程度に柔軟性のある部材で構成される。具体的には、たとえば、適度な厚みと強度を有する樹脂シートが挙げられる。このような樹脂シートを用いて側面部20または容器本体40全体を構成することによって、従来のタンクタイプの除湿器の容器に比べプラスチックなどの部材の使用量を減量でき、廃棄時のごみの量を減らすことができるという点でも本発明は有利である。
【0017】
側面部20の構成部材は、上述のとおり容器本体40が脱気されたとき収縮可能であり、その状態で潮解液を貯留可能である部材であれば、いずれのものであってもよい。成形性などを加味すると、上記構成部材としては、ポリエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などからなる防水性の樹脂シートが挙げられる。上記樹脂シートは、上述する樹脂部材を1種または2種以上の混合樹脂として構成される。柔軟性などを考慮すると、構成部材にポリエチレン系樹脂が含まれている樹脂シートが好ましい。また樹脂シートは、単層シートであってもよいし、あるいは、複数の樹脂層を有する積層シートであってもよい。たとえば、両最外面にポリエチレン系樹脂層を有し、その間に、これ以外の樹脂層を有する積層シートが柔軟性の観点から好ましく、より具体的な例としては、ポリエチレン系樹脂層/ナイロン系樹脂層/ポリエチレン系樹脂層がこの順で積層されてなる積層シートが挙げられる。
【0018】
底面部10は、側面部20と同じ部材で構成されてもよいし、異なる部材で構成されてもよい。製造容易性や廃棄処理などを考慮すると底面部10と側面部20とは同様の部材で構成されることが好ましく、底面部10および側面部20がともに樹脂部材で構成されることがより好ましく、底面部10および側面部20が同一の樹脂部材で構成されることがさらに好ましい。
【0019】
上述する底面部10および側面部20を備える容器本体40は、1枚の樹脂シートから構成されることが好ましい。これによって、底面部10と側面部20との境界が連続的に構成されるため、潮解液が漏れ出ることが良好に防止される。また製造時の部品点数を減らすことができるため、容器本体40を1枚の樹脂シートから構成することは、製造上においても有利である。
さらに、容器本体40およびフランジ部50までが、1枚の樹脂シートで構成されていることがより好ましい。製造工程における部品点数を減らすことができ製造工程上有利である上、接触などによるフランジ部50の脱落や破損が生じにくい。
【0020】
上述する樹脂シートから構成された容器本体40における底面部10の厚みTb(μm)および側面部20の厚みTs(μm)は、脱気による減容を許容する範囲で特に限定されない。容器本体40の保形性および防湿性の観点からは、上記厚みTbおよび厚みTsは、10μm以上であることが好ましく20μm以上であることがより好ましい。一方、脱気を許容し、かつ良好な保形性および防湿性を維持しつつ使用部材量を減量するという観点からは、上記厚みTbおよび厚みTsは、400μm以下であることが好ましく380μm以下であることがより好ましい。
【0021】
除湿剤容器100は、容器本体40内部の気体が脱気され上下方向に収縮するという特徴を有している。そのため、脱気された状態の容器本体40の安定性を良好なものとし、また脱気時に上下方向に十分に収縮可能とするとともに、底面部10の収縮を回避するという観点から、底面部10の厚みTb(μm)に対する側面部20の厚みTs(μm)の比Ts/Tbは、1未満であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.6以下であることがさらに好ましい。
上述する比Ts/Tbが1以上であると、脱気時に底面部10にシワがよってしまう虞があり、容器の設置安定性が十分ではなくなる場合ある。また除湿剤容器100は、使用開始後、容器本体40に潮解液が溜まるにつれて、脱気により収縮した容器本体40が元の形状に戻る方向に拡張していくが、底面部10にシワが寄った状態で潮解液が溜まっていくと、当該潮解液の荷重で底面部10のシワが伸長し難く、拡張した容器本体40が傾いてしまう場合がある。このように容器本体40が傾斜した場合、使用期間後半に潮解液と透湿防水シート70とが接触する虞がある。透湿防水シート70は、防水性であるため、通常はそのような接触が発生しても潮解液が漏れ出ない構成となっているが、透湿防水シート70にピンホールが発生し、あるいは接着された透湿防水シート70とフランジ部50との一部が剥離してしまった場合などには、潮解液が漏れ出る虞がある。
【0022】
一方、側面部20の防湿性および潮解液が溜まった際の容器本体40の保形性の観点からは、上記比Ts/Tbは、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
尚、
図3Aに示すとおり、除湿剤容器100において、底面部10の厚みTb(μm)とは、容器本体40の底面部10の中央部の厚みを指し、側面部20の厚みTs(μm)とは、脱気前の容器本体40における底面部10下面からフランジ部50上面までの高さH1に対し、上から3/8の高さ位置に相当する領域における側面部20の厚みを指す。側面部20の厚みTsは、上述する高さ位置において、無作為に選択された4箇所の厚みの算術平均値である。尚、上述する厚みTbおよび厚みTsの測定は、脱気前に行ってもよいし、脱気後に行ってもよい。
【0023】
容器本体40の寸法および形状は特に限定されず、収容する潮解性薬剤60の量、用途、使用が予定される空間の広さなどを勘案して適宜決定してよい。除湿剤容器100が家庭用に用いられる場合には、容器本体40の容量は、たとえば300ml~1200ml程度に設計することができ、天面開口部30の面積を適度に確保するという観点からは、脱気前の容器本体40の高さは3cm~10cm程度に設計することができる。ここで除湿剤容器100は、脱気されて上下方向に収縮しており、脱気前の容器本体の高さH1よりも脱気後開封前の高さH2の方が小さく、従来よりも嵩高さが改善されている。そのため、業務用の除湿剤容器100として、容器本体40を上述する家庭用に適した容量や高さの2倍~10倍程度に大きく設計しても、運搬や保管がしやすい。
【0024】
(フランジ部)
除湿剤容器100は、容器本体40の側面部20の上端から延在するフランジ部50が設けられている。フランジ部50は、側面部20の上端から、上下方向に交差する方向に延在しており、上面側が透湿防水シート70との接着面となっている。フランジ部50により、天面開口部30を覆う透湿防水シート70はしっかりと支持されている。本実施形態では、フランジ部50は、
図1に示すとおり、側面部20の上端から容器外方向に向かって略水平に延在している。容器外方向に向かって設けられたフランジ部50は、後述する深絞り加工において容器本体40とともに製造しやすい。一方、図示省略する変形例としてフランジ部50を容器内方向(即ち、上面視において容器本体40より外側に突出しない方向)に向かって延在させてもよく、かかる態様は、除湿剤容器100の形状をよりコンパクト化できる点で好ましい。
フランジ部50は、天面開口部30の少なくとも一部に設けられ、好ましくは、開口全周に設けられる。
【0025】
フランジ部50は、容器本体40とは別体にて構成され側面部20の上端に接着あるいは接合等されてもよいが、好ましくは側面部20と一体的に設けられるとよい。例えば、1枚の防水性の樹脂シートを用い側面部20とフランジ部50とを一体的に成形加工することができる。もちろん、側面部20を含めた容器本体40とフランジ部50とを一体的に成形加工してもよい。
【0026】
樹脂部材から構成されるフランジ部50の厚みTf(μm)は、特に限定されず、透湿防水シート70を支持可能な程度の厚みを有するものであればよい。容器本体40とのバランスを考慮すると、具体的な好ましい厚み範囲としては、フランジ部50の厚みTf(μm)は、180μm以上400μm以下であり、かつ底面部10の厚みTb(μm)に対するフランジ部50の厚みTf(μm)の比Tf/Tbは、1以上であることが好ましく、1を超えることがより好ましい。かかる厚み範囲のフランジ部50であれば、脱気時や使用時において、透湿防水シート70を十分に支持可能である。
尚、ここでフランジ部50の厚みTfは、フランジ部50の無作為に選択された4箇所において測定された厚みの算術平均値である。
【0027】
除湿剤容器100は、1枚の樹脂シートを用いて、底面部10、側面部20、およぶフランジ部50が一体的に成形され、かつ、フランジ部50が上述する好ましい厚み範囲を満たすとともに、上述する底面部10の厚みTb(μm)に対する側面部20の厚みTs(μm)の比Ts/Tbが1未満であることがより好ましい。これによって、脱気時に側面部20を収縮させ容器本体40を減容させつつ保形性を良好に維持することができる。
【0028】
たとえば1枚の防水性樹脂シート42(
図2A参照)を用い、容器本体40およびフランジ部50が一体的に形成された除湿剤容器100において、使用された防水性樹脂シート42の厚みが200μm以上400μm以下であり、かつフランジ部50の厚みTf(μm)≧底面部10の厚みTb(μm)>側面部20の厚みTs(μm)であることは好ましい態様の1つといえる。かかる態様では、脱気により、透湿防水シート70をしっかりと支持した状態で上下方向に側面部20を収縮させやすく、かつ底面部10の収縮を防止することができる上、吸湿により発生する潮解液を貯留するに足る強度、および容器本体40の保形性が良好に確保されやすい。
【0029】
(潮解性薬剤)
次に潮解性薬剤60について説明する。
潮解性薬剤60は、吸湿することによって水溶液化する剤を広く含み、具体的な例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、酢酸カリウム、等の潮解性物質が挙げられ、特に塩化カルシウムや塩化マグネシウムが吸湿能力及び価格等の点から好ましい。潮解性薬剤60は、公知の潮解性物質を1種で、または2種以上含有して構成される。たとえば潮解性薬剤60は、上述する潮解性物質を1種または2種以上用い、滴下造粒方式や空冷造粒方式等により粒状に製剤される。
【0030】
容器本体40に収容される潮解性薬剤60の量は特に限定されず、脱気前の容器本体40の容積、使用が予定される空間の広さなどを勘案して適宜決定することができる。
【0031】
(透湿防水シート)
容器本体40の天面開口部30を覆う透湿防水シート70は、透湿性であり、かつ防水性(つまり潮解液の通過を防止する性質)のシートである。透湿防水シート70としては、たとえば微多孔膜樹脂シートが好ましい。この微多孔膜樹脂シートの製造方法は特に限定されないが、たとえば無機充填剤を含有した熱可塑性樹脂シートを成形後に延伸することにより製造可能である。この微多孔膜樹脂シートの成形に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、あるいはポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド等があげられる。この微多孔膜樹脂シートからなる透湿防水性フィルムには、住化積水フィルム(株)製の商品名「セルポア」、(株)トクヤマ製の商品名「NFシート」、(株)ニトムズ製の商品名「ブレスロン」、三菱ケミカル(株)製の商品名「エクセポール」等がある。
上記微多孔膜樹脂シートの透湿性を阻害しない範囲で、当該微多孔膜樹脂シートに不織布や他の有孔フィルムを積層して多層シートとしてもよい。
【0032】
透湿防水シート70の外縁領域は、上述するフランジ部50へ接着されて取付けられ固定される。フランジ部50に対する接着方法は、たとえば超音波溶着法、熱板溶着法、高周波溶着法などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0033】
(蓋シート)
蓋シート80は、透湿防水シート70を覆う非透湿性シートである。蓋シート80は、上面視において少なくとも天面開口部30の領域において透湿防水シート70を完全に覆うことが好ましい。蓋シート80は、使用前の状態において、容器本体40に収容された潮解性薬剤60の吸湿を防止し、かつ脱気して減容された状態を維持するために容器本体40を密封し、使用時には剥離されて除去される。
【0034】
蓋シート80は、非透湿性(ガスバリヤ性)であればよく、透明または不透明であってよい。非透湿性のシートとしては、たとえば、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデンコートPET(K-PET)、ポリ塩化ビニリデンコートOPP(K-OPP)、シリカ蒸着PET、アルミナ蒸着PET等の樹脂系シートのほか、アルミシート等があげられ、これらの非透湿シートを単層で用いてもよいし、複数層を複合(ラミネート)して用いてもよい。
非透湿シートの透湿防水シートと接する側は易剥離性接着層があり、使用開始時に蓋シートのみを容易に剥離できるようになっている。
【0035】
(製造方法)
次に、除湿剤容器100の製造方法の一例について
図2および
図3を用いて説明する。
図2A~
図2Cは、容器本体40の製造工程の一例を説明する説明図であり、深絞り加工において、成形補助のためのプラグを用いた成形(以下、プラグアシストともいう)により容器本体40を所定の形状に深絞り加工する工程を示している。
図3A~
図3Cは、容器本体40を用い、除湿剤容器100を製造する製造工程の一例を説明する説明図である。
図2および
図3に示す各図面はいずれも縦断面図である。
尚、以下に除湿剤容器100の製造方法の一実施形態を示すが、かかる説明は本発明の除湿剤容器の製造方法を何ら限定するものではない。
【0036】
本実施形態における除湿剤容器100の製造方法は、容器形成工程、収容工程、脱気密封工程を備える。これらの工程について順に説明する。
容器形成工程は、
図2A~
図2Cに示すとおり、防水性樹脂シート42を所定の成形型201に設置し、底面部10と側面部20と側面部20の上端から延在するフランジ部50とを備える所定の形状に深絞り加工して、フランジ部50を備える容器本体40を形成する工程である。
より具体的には、まず
図2Aに示すとおり、所望の成形型201に対し、容器本体40を構成する1枚の樹脂シートである防水性樹脂シート42を配置する。防水性樹脂シート42の外縁部は挟持体204に挟持され、水平方向に張った状態が維持される。容器本体40を深絞り加工する場合、プラグアシストを行わずに、成形型201に設けられた吸引孔203より防水性樹脂シート42を吸引(真空吸引)し、成形型201の内壁面に沿わせて所望形状に加工することもできるが、プラグアシストを採用することで、より望ましい所望形状の容器本体40が得られやすい。
尚、
図2には加熱装置を図示省略しているが、深絞り加工する前に、適宜、防水性樹脂シート42を加熱して柔らかくすることによって、所望の容器本体40が得られやすい。
【0037】
プラグ202は、成形型201と凹凸状に対となっており、防水性樹脂シート42を介して成形型201とプラグ202とを対向させ、次いで
図2Bに示すとおり凹凸篏合させることによって、防水性樹脂シート42を所望形状の容器本体40に形成することができる。真空吸引だけではなく、プラグアシストを採用することによって、深絞り加工の際に、底面部10に相当する部分の厚みが薄くなりすぎることを防止し、上述する、底面部10の厚みTb(μm)に対する側面部20の厚みTs(μm)の比Ts/Tbが1未満となるよう調整し易い。
【0038】
その後、
図2Cに示すとおり、プラグ202が成形型201から外される。この後、フランジ部50となる部分を残して、防水性樹脂シート42の外縁領域を裁断することによって容器本体40と、側面部20の上端から連続するフランジ部50とを一体的に形成することができる。
【0039】
上述する容器形成工程において形成された容器本体40の縦断面図を
図3Aに示す。
次に、
図3Bに示すとおり、容器形成工程の実施によって得られた容器本体40に潮解性薬剤60を収容させて、次いでフランジ部50上面に透湿防水シート70の外縁を接着する収容工程を実施し、その後、透湿防水シート70の上面に、この透湿防水シート70を覆う非透湿性の蓋シート80を積層させ、透湿防水シート70を面方向に張った状態を維持しつつ、
図3Cに示すとおり、容器本体40の内部の気体を脱気し蓋シート80で容器本体40を密封する脱気密封工程を実施する。
【0040】
一般的に潮解性薬剤60は、吸湿して潮解液となることで体積が増大する。そのため、上記収容工程の段階では、
図3Bに示すとおり、脱気前の容器本体40の容量を十分に下回る量の潮解性薬剤60が収容される。したがって、脱気前の状態では、容器本体40に収容された潮解性薬剤60の上面と透湿防水シート70との間には有意な距離がある。脱気を行わない場合には、かかる距離が、使用開始時において潮解性薬剤60の吸湿速度を緩やかなものとする要因となる。これに対し、除湿剤容器100は、容器本体40内部の気体が脱気され、これによって脱気後開封前の高さH2が、脱気前の高さH1よりも小さくなり、除湿剤容器100の嵩が小さくなる。
【0041】
ここで脱気の方法は、容器本体40を上下方向に収縮させて減容させることができる方法であればいずれの方法でもよい。たとえば、吸引機により容器本体40の内部の気体を吸引してもよいし、あるいは、上下方向から圧力をかけて容器本体40が適度な高さ(高さH2)になるまで物理的に押しつぶしても良い。
【0042】
尚、脱気密封工程において、脱気のために容器本体40内部の気体を吸引して減圧し、内圧が大気圧未満となるよう容器本体40を蓋シート80で密封してもよい。あるいは、容器本体40を上下方向に物理的に押しつぶすことによって内部の空気を押し出して減容させ蓋シート80で密封するなどして、容器本体40の内圧が略大気圧の状態で蓋シート80により密封してもよい。つまり本発明の除湿剤容器は、容器本体の内圧が大気圧未満の態様および大気圧と略同じ圧力である態様のいずれも包含する。容器本体40の内圧が大気圧未満である除湿剤容器100によれば、使用時まで、減容した状態を維持しやすく、コンパクト化(嵩軽減)が良好に図られる。
【0043】
脱気の程度は、脱気前の高さH1>脱気後開封前の高さH2となる範囲で、収容される潮解性薬剤60の量などを鑑み適宜決定してよい。たとえば、
図3Bの状態から脱気して減容し、
図3Cの状態となったときに、容器本体40に収容された潮解性薬剤60の上面と透湿防水シート70の下面とが接触する程度に減容されることが好ましい。
【0044】
上述のとおり製造された除湿剤容器100は、
図3Cに示すとおり、
図3Bに参照される脱気前の状態に比べて、潮解性薬剤60の上面と透湿防水シート70との距離が近い。そのため、蓋シート80を剥がして使用を開始した直後から、速い速度で吸湿が行われる。使用開始直後から吸湿速度が速いということは、除湿剤容器100を使用する使用者にとって、吸湿の効果がより迅速に確認できる点で非常に望ましい。また、除湿剤容器100によれば、使用開始時だけではなく、使用中期以降も速い吸湿速度が維持される。かかる効果については後述する使用例においてさらに説明する。
【0045】
(使用例)
次に除湿剤容器の使用例について
図4A~
図4Cを用いて説明する。
図4A~
図4Cは、除湿剤容器100の使用開始時から使用後期までを説明する説明図であり、いずれも縦断面図で示している。
【0046】
上述のとおり製造された除湿剤容器100は、使用時には蓋シート80が剥離され容器本体40が開封される。
図4Aには、脱気後であって使用開始時の底面部下面からフランジ部上面までの高さH3(以下、脱気後開封直後の高さH3ともいう)を示している。
除湿剤容器100の高さは、脱気後開封前の高さH2≦脱気後開封直後の高さH3<脱気前の高さH1の関係を示す。脱気後開封直後の高さH3が脱気後開封前の高さH2より高くなりうる理由は、脱気にて収縮した側面部20の一部が樹脂部材の弾性変形等によって元の形状に戻ろうと伸長し、潮解性薬剤60と透湿防水シート70との間の空間44が、開封前よりも大きくなりうるためである。
【0047】
上述するとおり、吸湿速度を速くするためには、潮解性薬剤60と透湿防水シート70との距離がなるべく短い(脱気後開封直後の高さH3がなるべく小さい)ことが望ましく、そのためには、上述する比Ts/Tbが1未満であることが好ましい。比Ts/Tbが1以上であると、側面部20の強度が強くなり、蓋シート80を取り外した際に、側面部20が元の形状に戻ろうとする力が働きやすいからである。
【0048】
吸湿が始まると、
図4Bに示すとおり、潮解液62が発生し潮解性薬剤60の量が減少する。潮解性薬剤60は、吸湿して潮解液62となることで体積が増大するため、開封前の潮解性薬剤60のみの体積よりも、開封後の潮解性薬剤60および潮解液62の体積の和の方が大きくなる。その結果、除湿剤容器100では、容器本体40に貯留される潮解液62の上面を常に透湿防水シート70に近い位置(あるいは接触する位置)に存在させることができ、これによって速い吸湿速度が良好に維持される。
【0049】
さらに潮解液62の量が増大すると、
図4Cに示すとおり、潮解性薬剤60は全て目視では確認できない程度に液化する。除湿剤容器100における吸湿はこれで停止するわけではなく、潮解液62自体の吸湿能により、さらに吸湿は持続する。容器本体40は、内容物(潮解液62)の体積の増加により、収縮していた側面部20が押し広げられ、徐々に脱気前の容積に戻り始める。
つまりこのときも容器本体40は増加した潮解液62の体積の分だけ、押し広げられるため、潮解液62の上面は透湿防水シート70に近い位置に維持される。
【0050】
以上のとおり、除湿剤容器100によれば、使用開始時には、潮解性薬剤60と透湿防水シート70との距離が近く、使用中期から使用後期は、潮解液62と透湿防水シート70との距離が近いため、常に速い吸湿速度が維持され、高い吸湿能力が発揮される。
【実施例0051】
以下に、本発明を実施例と比較例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。また実施例および比較例の一部について説明するために
図5および
図6を用いる。また製造条件、容器本体寸法および評価については、表1に示す。
図5は、実施例1、実施例2および比較例3の使用時の吸湿量の長期経時変化を示すグラフである。
図6は、使用開始時、10日目、31日目に側面方向から撮影した実施例1、実施例2および比較例2の写真である。尚、長期経時変化を観察するために、実施例1、実施例2、比較例3は、31日目までの観察用と、長期経時変化(180日目までの観察)用のサンプルを3つずつ(計6つ)作成し、それぞれ、31日目までの観察と、長期経時変化(180日目までの観察)とに用いた。
【0052】
(実施例1)
深絞り加工可能な真空圧空成形機の成形型に、ポリエチレン系樹脂/ナイロン系樹脂/ポリエチレン系樹脂の三層からなる非透湿性の複層フィルム(厚み200μm)をセットし、上記複層フィルムを真空引きしながらプラグアシストして間口が80mm×167mmの長方形であって高さが80mmの容器本体を成形した。フランジ部の幅寸法は短辺18mmでは、長辺では15mmとした。
上述のとおり形成された容器本体に潮解性薬剤(塩化カルシウム・二水和物280g)を充填した。尚、塩化カルシウム・二水和物280gは、約650gの水分を吸湿可能な潮解性薬剤の量である。
次いで、フランジ部の上面に透湿防水シートを熱溶着し、その後、容器内を吸引して、潮解性薬剤が透湿防水シートにしっかりと接触した状態となるまで脱気し、透湿防水シートを覆う蓋シートを剥離可能に熱溶着して、実施例1の除湿剤容器を得た。
尚、透湿防水シートとしては、ポリオレフィン系微多孔膜の両面に芯層がポリエチレンテレフタレート、鞘層がポリエチレンから構成された鞘芯構造の不織布を貼り合わせたものを用いた。また蓋シートとしては、アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムと延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムとを貼り合わせ、透湿防水シートと接する側の面にパートコート剤を塗工したガスバリヤ性のあるシートを用いた。
【0053】
(実施例2)
容器本体を構成する複層フィルムの厚みを400μmに変更したこと以外は実施例1と同様に除湿剤容器を製造し、これを実施例2とした。
(実施例3)
プラグアシストを行わなかったこと以外は実施例1と同様に除湿剤容器を製造し、これを実施例3とした。
(実施例4)
容器本体を構成する複層フィルムの厚みを400μmに変更したこと以外は実施例3と同様に除湿剤容器を製造し、これを実施例4とした。
【0054】
(比較例1)
脱気をせずに蓋シートを熱溶着したこと以外は実施例1と同様に除湿剤容器を製造し、これを比較例1とした。
(比較例2)
容器本体を構成する複層フィルムの厚みを400μmに変更したこと以外は比較例1と同様に除湿剤容器を製造し、これを比較例2とした。
(比較例3)
市販品のタンクタイプの除湿器(タンクの形状寸法;幅150mm×奥行85mm×高さ101mm、収容される潮解性薬剤の種類と量;塩化カルシウム・二水和物/280g)を準備し、これを比較例3とした。
【0055】
(容器本体寸法測定1)
潮解性薬剤を充填する前に、実施例1~4および比較例1~3それぞれに用いられた容器本体の高さH1、底面部の厚みTb(μm)、側面部の厚みTs(μm)およびフランジ部の厚みTf(μm)を測定した。測定には各実施例、各比較例において、それぞれ3つのサンプルのうち、目視で最も標準的と判断された1つのサンプルについて行った。
容器本体の高さH1は、底面部の下面からフランジ上面までの距離を測定した。
底面部の厚みTbは、底面部の中央部の厚みを測定した。
側面部の厚みTsは、底面部の下面からフランジ部の上面までの高さH1に対し上方から3/8の高さ位置において、無作為に選択した4箇所の厚みを測定し、その算術平均値を算出することにより求めた。
フランジ部の厚みTfは、フランジ部の無作為に選択した4箇所の厚みを測定し、その算術平均値を算出することにより求めた。
【0056】
(容器本体寸法測定2)
使用直前の容器本体の高さH2(脱気後開封前の高さH2)を測定した。測定には各実施例、各比較例において、それぞれ3つのサンプルのうち、目視で最も標準的と判断された1つのサンプルについて行った。測定は、目視で最も高い箇所および目視で最も低い箇所を避け、中間地点の1箇所で底面部の下面からフランジ上面までの距離を測定し、これを高さH2とした。
また蓋シートを剥がした直後において、高さH2の測定方法と同様の方法で、再度、高さH3(脱気後開封後の高さH3)を測定した。
【0057】
(測定・評価)
上述のとおり準備した実施例および比較例を用いて以下のとおり測定、評価を行った。
各実施例および各比較例の蓋シートを剥がして開封し、開始時の重量W0を測定し、透湿防水シートを上面側にして床面に設置した。室内を温度25度、湿度80%RHの環境に維持し1か月放置した。
そして1か月後に各実施例および各比較例の重量W1を測定し、重量W1から重量W0を差し引いた値を、使用31日目の増加重量とした。重量の測定は、各実施例、各比較例において、それぞれ3つのサンプル全ての重量を測定して平均値を算出し、当該平均値を重量W1として、重量W0との差異を求め増加重量を得た。
【0058】
使用31日目の容器本体の高さH4を、高さH2の測定方法と同様の方法で測定した。
【0059】
使用31日目の除湿剤容器の形状を以下のとおり評価した。
〇・・・安定して自立しており、側面視において透湿防水シートの傾きが少なく略水平方向に配置されていた。
△・・・底面部にシワが残っているか、容器本体が有意に歪んでいるか、あるいは側面視において透湿防水シートが有意に傾いていることが観察された。
×・・・側面視において、透湿防水シートが顕著に傾いているか、あるいは、容器本体が顕著に歪んでいることが確認された。
【0060】
(長期吸湿評価)
実施例1、実施例2、および比較例3については、さらに180日目まで重量の測定を行い、使用開始時の重量W0との差異(増加量)を求めた。その結果をプロットしたグラフを
図5に示す。重量の測定は、各実施例、各比較例において、それぞれ3つのサンプル全ての重量を測定して平均値を算出し、当該平均値と重量W0との差異(増加量)を求めた。
【0061】
(写真観察)
実施例1、実施例2、比較例2について、試験開始時、10日目、31日目において、側面方向から写真撮影を行った。結果を
図6に示す。尚、実施例1、実施例2、および比較例2において、それぞれ3つのサンプルの中から、目視で最も標準的と判断された1つのサンプルを選択し、写真撮影に用いた。
【0062】
上述する実施例比較例の結果から、200μmの厚みの樹脂シートを使用した実施例1、実施例3、および比較例1では、実施例1、3の増加重量が有意に多いことが確認された。また400μmの厚みの樹脂シートを用いた実施例2、実施例4、および比較例2においても同様の傾向が確認された。また、タンクタイプの市販品である比較例3は、最も増加重量が少なかった。
【0063】
実施例3、4は、比較例に対し増加重量が高く望ましい結果が示されたが、側面部厚みTs/底面部厚みTbが1を超えており、相対的に側面部の厚みが大きく、底面部の厚みが小さかった。そのため、使用31日目の形状評価において、実施例1、2よりやや劣る結果が示された。
【0064】
図5に示すとおり、実施例1、2は、使用開始初期から吸湿速度が速く、その後も速い吸湿速度が維持されることが確認された。また実施例1、2は、3か月前後で、目安とされる650gの重量増加が確認された。一方、比較例3は、使用開始直後は、実施例1、2と同程度の吸湿速度を示したが、すぐに減速し、その後は、吸湿速度は遅いままであり、使用開始60日目の時点で、吸湿量(重量増加)は実施例1の半分程度であった。
【0065】
図6に示すとおり、開始時(蓋シートを取り去った直後)において、実施例1、実施例2は、容器本体が上下方向に収縮していることが確認され、嵩が減っていることが目視でも確認された。また、10日目において、吸湿速度の最も速かった実施例1は、目視では、ほぼ潮解性薬剤が確認できず、31日目において、実施例2も、目視では、ほぼ潮解性薬剤が確認できなかった。これにより目視においても、実施例は、吸湿の速度が速いことが確認された。一方、比較例2は、31日目においても潮解性薬剤が残っており吸湿速度が遅いことが確認された。
【0066】
本発明の除湿剤容器は、たとえばクローゼット、押入れ、下駄箱、または室内などの家庭内の所定空間における除湿を目的とする家庭用の除湿器として用いることができる。また本発明の除湿剤容器は、上述するとおり容器本体が脱気されて嵩が軽減されるため、大型化しても、運搬や保管等がしやすく、また廃棄も容易である。そのため本発明は、たとえば業務用の食品庫やレンタル倉庫、湿度を嫌う精密機器が設置された部屋などの広い空間用に多量の潮解材を収容した大きな容器本体を備える業務用の除湿器としても好適である。