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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057085
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/32 20100101AFI20220404BHJP
   G01N 21/3581 20140101ALI20220404BHJP
   G01N 21/3554 20140101ALI20220404BHJP
【FI】
B67D7/32 Z
G01N21/3581
G01N21/3554
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165160
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 茂
【テーマコード(参考)】
2G059
3E083
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB04
2G059CC09
2G059EE01
2G059FF04
2G059FF06
2G059HH05
2G059KK01
2G059MM05
2G059MM12
3E083AA03
3E083AC02
3E083AC23
3E083AD01
(57)【要約】
【課題】供給燃料中に混入した水(含水率)を高精度に検知することが可能な燃料供給装置を提供する
【解決手段】給油機10は、予め定められている時系列区間の供給燃料の含水率平均値Rwを演算して異常を判別することにより、供給燃料全体の含水率は許容範囲内で異常がない場合であっても、当該センサの検出域を瞬間的に通過する一部の供給燃料による瞬時含水率が許容範囲外で、瞬間的に実際の供給燃料の値以上の含水率に対応する物性値が当該センサによって一時的ではあるものの検出されてしまうような場合は、この事象だけに基づいて、直ちに、供給燃料の含水率が許容範囲外で異常があると判定されることは無いようにする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給対象に供給する燃料が送液される燃料供給路と、
前記燃料供給路に設けられ、前記燃料供給路内の検出域に所在している燃料について混入している水を検出する水検出部と、
前記水検出部の検出出力に基づいて当該水検出部の検出域に所在している燃料中の含水量もしくは含水率を計測する水混入計測部と、
供給対象への燃料供給作業中もしくは燃料供給中に、前記水検出部の検出出力を基に前記水混入計測部によって逐次計測された燃料中の含水量もしくは含水率が記憶される含水値記憶部と、
前記含水値記憶部に記憶されている複数の燃料中の含水量もしくは含水率を基に、予め定められた時系列区間の積算含水量もしくは含水率平均値を演算する水混入演算部と、
前記水混入演算部によって逐次演算される予め定められた時系列区間の積算含水量もしくは含水率平均値を予め定められた異常判定値と比較して、供給対象に供給する燃料における異常の有無を判定する異常判定部と、
を備えている燃料供給装置。
【請求項2】
前記水検出部は、
前記燃料供給路を流れる燃料が通過可能な検出域流路を間に介在させて、相対向配置されたテラヘルツ波発信部およびテラヘルツ波検出部を有して構成されている、
請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記水混入計測部は、前記水検出部の検出出力に基づいて当該水検出部の検出域に所在している燃料中の含水率を計測し、
前記含水値記憶部は、供給対象への燃料供給作業中もしくは燃料供給中に、前記水検出部の検出出力を基に前記水混入計測部によって逐次計測された燃料中の含水率が記憶され、
前記水混入演算部は、前記含水値記憶部に記憶されている複数の燃料中の含水率を基に、予め定められた時系列区間の含水率平均値を演算し、
前記異常判定部は、
前記水混入演算部によって逐次演算される予め定められた時系列区間の含水率平均値を予め定められた異常判定用の含水率しきい値と比較して、供給対象に供給する燃料における異常の有無を判定し、
予め定められた時系列区間は、前記水混入計測部による含水率の計測間隔よりも長く、供給対象への燃料供給作業中時間もしくは燃料供給中時間よりも短い一定時間長さである、
請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記水混入計測部は、前記水検出部の検出出力に基づいて当該水検出部の検出域に所在している燃料中の含水量を計測し、
前記含水値記憶部は、供給対象への燃料供給作業中もしくは燃料供給中に、前記水検出部の検出出力を基に前記水混入計測部によって逐次計測された燃料中の含水量が記憶され、
前記水混入演算部は、前記含水値記憶部に記憶されている複数の燃料中の含水量を基に、予め定められた時系列区間の積算含水量を演算し、
前記異常判定部は、
前記水混入演算部によって逐次演算される予め定められた時系列区間の積算含水量を予め定められた異常判定用の積算含水量しきい値と比較して、供給対象に供給する燃料における異常の有無を判定し、
予め定められた時系列区間は、前記水混入計測部による含水率の計測間隔よりも長く、供給対象への燃料供給作業中時間もしくは燃料供給中時間よりも短い一定時間長さである、
請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記水混入計測部によって計測された前記水検出部の検出域に所在している燃料中の含水量もしくは含水率についての、燃料供給作業毎のトレンド、
または、
前記水混入演算部によって演算された予め定められた時系列区間の積算含水量もしくは含水率平均値についての、燃料供給作業毎のトレンド、
を解析する解析部、
をさらに備える請求項1に記載の燃料供給装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等の供給対象に燃料を供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガソリンスタンドのような燃料供給所では、燃料は貯溜タンクに貯蔵されており、供給対象に対する燃料供給は、貯溜タンクに連通接続されて設置された燃料供給装置によって行われる。燃料供給装置では、供給対象に供給された燃料供給量(給液量)が計測・表示される。
【0003】
貯溜タンクは、貯溜している燃料の増減に伴って容量変化するタンク内の気相部分の圧力を調整できるように、通常、タンク内の気相部分が大気と連通可能な構造になっている。また、貯溜タンクや、貯溜タンクと燃料供給装置との間を連通接続する配管は、通常、燃料供給所の地下等に設置される。
【0004】
このような燃料供給所では、貯溜タンク内の気相部分の空気(大気)中に含まれる水蒸気の結露によって、貯蔵されている燃料に水分が混入したり、貯溜タンクや貯溜タンクと燃料供給装置との間を連通接続する配管の腐食や亀裂によって、タンク外部の地中の水分がタンク内や配管内に浸入したりすることが起こり得る。そして、許容範囲を超えて水分が混入している燃料が供給対象である車両に供給されてしまうと、燃焼不良によってエンジン破損やエンジン停止等の不具合が起こる可能性があった。
【0005】
そこで、車両等の供給対象に供給する燃料に混入している水を検知する機能を備えて、供給燃料の含水率が所定の含水率を超えたこと、すなわち供給燃料中に混入している水分が許容範囲を超えたことを検出すると、供給対象に対する燃料供給を停止するように構成された燃料供給装置が開発されている。また、このような燃料供給装置に適用可能な、燃料中への水分の混入を検知する方式としては、供給燃料の静電容量、導電率、濁度等の物性値を測定し、その測定値に基づいて検知を行うものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-154746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、燃料中への水分の混入を検知する方式を備えた燃料供給装置では、供給燃料の静電容量、導電率、濁度等の物性値を測定する水検出部としてのセンサが、供給対象に供給するための燃料が流れる燃料供給路に設けられる。そして、水検出部としてのセンサは、当該センサが設置された燃料供給路部分に所在する燃料について、すなわち、燃料供給路における当該センサの検出域に所在している燃料について、その静電容量、導電率、濁度等の物性値を測定する。
【0008】
そのため、例えば、しばらくの間、供給対象に対する燃料供給の停止状態が続いたような場合は、燃料供給路内で燃料の流れ(燃料の移動)がない状態がこの間続くので、供給燃料中における燃料分と水分との分離が進んで、分離した水分が燃料供給路における当該センサの検出域に静止位置するようになってしまうと、実際の供給燃料の値以上の含水率に対応する物性値が、当該センサによって一時的ではあるものの検出されてしまうことになる。
【0009】
また、供給対象への実際の燃料供給中に、供給燃料全体の含水率は許容範囲内で異常がない場合であっても、当該センサの検出域を瞬間的に通過する一部の供給燃料による瞬時含水率が許容範囲外で、瞬間的に実際の供給燃料の値以上の含水率に対応する物性値が当該センサによって一時的ではあるものの検出されてしまうような場合は、その検出時点で、供給対象への実際の燃料供給が中止されてしまうことになる。
【0010】
また、これらの事象を考慮して、異常を判定するための基準となる含水率の値を高めに設定した場合は、高めに設定した分だけ、異常の検出が遅れてしまうことになる。
【0011】
本開示は、上記した課題を鑑みてなされたものであり、供給燃料中に混入した水(含水率)を高精度に検知することが可能な燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る燃料供給装置は、
供給対象に供給する燃料が送液される燃料供給路と、
前記燃料供給路に設けられ、前記燃料供給路内の検出域に所在している燃料について混入している水を検出する水検出部と、
前記水検出部の検出出力に基づいて当該水検出部の検出域に所在している燃料中の含水量もしくは含水率を計測する水混入計測部と、
供給対象への燃料供給作業中もしくは燃料供給中に、前記水検出部の検出出力を基に前記水混入計測部によって逐次計測された燃料中の含水量もしくは含水率が記憶される含水値記憶部と、
前記含水値記憶部に記憶されている複数の燃料中の含水量もしくは含水率を基に、予め定められた時系列区間の積算含水量もしくは含水率平均値を演算する水混入演算部と、
前記水混入演算部によって逐次演算される予め定められた時系列区間の積算含水量もしくは含水率平均値を予め定められた異常判定値と比較して、供給対象に供給する燃料における異常の有無を判定する異常判定部と、
を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る燃料供給装置によれば、供給対象への実際の燃料供給中に、供給燃料全体の含水率は許容範囲内で異常がない場合であっても、当該センサの検出域を瞬間的に通過する一部の供給燃料による瞬時含水率が許容範囲外で、瞬間的に実際の供給燃料の値以上の含水率に対応する物性値が当該センサによって一時的ではあるものの検出されてしまうような場合は、この事象だけに基づいて、直ちに、供給燃料の含水率が許容範囲外で異常があると判定されることは無いため、より正確な異常検出を行える。
【0014】
また、異常を検出するための判定値を変えてはいないため、本来は異常であるにもかかわらず、異常を検出できないという不都合を低減できる。
【0015】
また、本開示の上記した以外の、課題、構成および効果については、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示に係る燃料供給装置の一実施例としての給油機の全体構成図である。
図2】水検出器が設けられた供給管路部分の断面図である。
図3】水検知制御装置の記憶部に予め記憶されている検量線を説明するための模式図である。
図4】水検知制御装置の記憶部に予め記憶されている検量線を説明するための模式図である。
図5】給油作業の際に給油機制御装置が実行する給油機給油制御の一実施例のフローチャートである。
図6】給油作業の際に水検知制御装置が実行する平均含水率Rwav測定処理の一実施例のフローチャートである。
図7】給油作業の際に給油機制御装置若しくは水検知制御装置のうちのいずれかが実行する時系列区間の計測の一実施例のフローチャートである。
図8】供給燃料全体の含水率は許容範囲内で異常がない場合であっても、水検出器の検出域を瞬間的に通過する一部の供給燃料による瞬時含水率Rwが許容範囲外である給油作業の例の模式図である。
図9】含水率平均値Rwavを基に演算して取得した含水率のトレンドの一例である。
図10】含水率平均値Rwavを基に演算して取得した含水率のトレンドの別例である。
図11】含水率平均値Rwavを基に演算して取得した含水率のトレンドのさらに別例である。
図12】総加水量ΣWを表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示に係る燃料供給装置の一の実施形態について、図面に基づいて説明する。説明では、本開示に係る燃料供給装置を、車両等の供給対象にレギュラーガソリン,ハイオクガソリン,軽油等といった燃料油液を供給する給油所、いわゆるガソリンスタンドに燃料供給装置として設置される給油機を例に説明する。なお、本開示に係る燃料供給装置が適用される燃料供給所は、ガソリンスタンドに限られるものではない。また、給油機も、レギュラーガソリン,ハイオクガソリン,軽油といった液種(油種)を供給する給油機に限られるものではない。
【0018】
図1は、本開示に係る燃料供給装置の一実施例としての給油機の全体構成図である。
【0019】
給油機10は、図示の例では、給油機筐体11内に、送液機器としてのポンプ12、流量計測機器としての流量計14、給油機各部の作動制御や給油量の演算や表示制御を行う給油機制御装置30、供給燃料中に混入している水を検出する水検出器40、水検出器40の検出出力に基づいて燃料中の含水率を演算する水検知制御装置50等を収容している。加えて、ポンプ12には、ポンプ12を駆動するためのポンプ駆動モータ13が付設され、流量計14には、供給燃料の単位流量(例えば、0.01L)毎の流れに応じた流量パルスを生成する流量発信器15が付設されている。
【0020】
給油機筐体11からは、先端に給油ノズル18を有するホース17が延設され、ホース17に基端側は、給油機筐体11内の流量計14の流出口側と、供給管路16を介して連通接続されている。給油ノズル18には、操作レバーの操作に応動して開閉弁し、車両等の供給対象内における燃料油液の液面がノズル先端の吐出パイプに達すると操作レバーの操作位置にかかわらず閉弁する自動閉弁機構が備えられている。給油ノズル18は、給油機筐体11に設けられたノズル掛け19に対して取り出し・収納自在になっており、給油作業が行われていない間はノズル掛け19に収納される。ノズル掛け19には、ノズル掛け19に対する給油ノズル18の取り出し・収納を検出するノズルスイッチ21が設けられている。
【0021】
給油機10は、ポンプ12の駆動によって、給油所地下に設置された地下タンク(貯溜タンク)90から汲み上げ配管91を介して燃料油液を汲み上げる。汲み上げ配管91は、地中を延設され、一端側は地下タンク90内に導入されて開口し、他端側はポンプ12の吸い込み口に連通接続されている。ポンプ12によって地下タンク90から汲み上げられた燃料油液は、ポンプ12の吐出口に流入口が連通接続された流量計14、供給管路16、ホース17を介して、給油ノズル18に向けて送液される。この場合、供給管路16等を含む給油機筐体11内における燃料油液の流路部分および汲み上げ配管91が、給油機10の燃料供給路に該当する。
【0022】
また、本実施例の給油機10では、燃料中の含水率Rwを計測するための機構として、供給燃料の静電容量、導電率、濁度等の物性値を測定して供給燃料中の混入している水を検出する水検出器40が、給油機10の燃料供給路に設けられている。図示の例では、水検出器40として、供給燃料の濁度を測定して供給燃料中の混入している水を検出する水検出器が、給油機筐体11内の供給管路16に備えられている。
【0023】
図2は、水検出器が設けられた供給管路部分の断面図である。
【0024】
本実施例では、水検出器40は、供給管路16内の供給燃料に向けてテラヘルツ波を発信するテラヘルツ波発信部41と、供給燃料中を通過してきたテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出部42とを備えた構成になっている。テラヘルツ波発信部41は、例えばテラヘルツ波共鳴トンネルダイオード等を有して構成され、その発信端面からテラヘルツ波検出部42に向けて所定周波数のテラヘルツ波を出射できる構成になっている。これに対し、テラヘルツ波検出部42は、テラヘルツ波発信部41から発信されたテラヘルツ波をその受信端面で受信してその受信信号を検出する検出素子で、テラヘルツ波発信部41と同様、テラヘルツ波共鳴トンネルダイオードを有して構成されている。
【0025】
水検出器40は、供給燃料が流通可能な検出域を挟んで、テラヘルツ波を出射するテラヘルツ波発信部41の発信端面とテラヘルツ波を入射させるテラヘルツ波検出部42の受信端面とを相対向させるようにして、供給管路16に両者を配置した構成になっている。さらに、水検出器40は、相対向する発信端面および受信端面がそれぞれ隔離部材43,43で覆われて、供給燃料が流通可能な検出域に臨むテラヘルツ波発信部41の発信端面およびテラヘルツ波検出部42の受信端面が、両端面間の検出域を流れる供給管路16内の供給燃料と接液しない構成になっている。そして、このような水検出器40を具体的に設置する供給管路16部分としては、ポンプの吐出側であることが好ましい。その理由としては、燃料供給路中の燃料中に水分が混入している場合に、ポンプにより燃料中における燃料と水分とが攪拌されることにより、燃料供給路中の燃料に混入している水分を均一化することができ、この結果、水検出器40により検出される含水率を安定化させることができることが期待できるためである。そのため、設置される供給管路16部分としては、ポンプの吐出側に近ければ近いほど好ましい。
【0026】
この場合、隔離部材43は、テラヘルツ波を透過し、かつ、燃料及び水と接触することによって変形、膨潤、溶解等の劣化を起こさない材料で構成されている。加えて、給油機10の使用環境に鑑み、-20℃から40℃の熱耐性がある材料であることが望ましい。隔離部材43の材料としては、例えば、フッ素樹脂材を用いることができる。
【0027】
また、隔離部材43は、フッ素樹脂材に替えて、ガラスや石英などのテラヘルツ波透過性材料を基板とし、その表面にフッ素樹脂を塗布して構成してもよい。テラヘルツ波透過性材料としては、目的とする含水率Rwの測定(例えば、Rw<2%、2%≦Rw<5%、及びRw≧5%の判別)が可能な程度に、テラヘルツ波を十分透過させることができる材料が用いることができる。
【0028】
一例として、隔離部材43の材料としては、エチレンテトラフルオロエチレン(以下、ETFE)、四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレンの共重合体(PFA)を用いることができる。ただし、隔離部材43の材料は、これら例示したものに限定されるものではなく、所定のテラヘルツ波透過性、耐油性、耐水性、耐熱性を有し、含水率Rw<2%、2%≦Rw<5%、Rw≧5%の判別が可能な材料であればなお好ましい。さらに、フッ素樹脂材料の中でも、テラヘルツ波が極性分子によって吸収されることから、非極性分子からなるフッ素樹脂材料が、隔離部材43の材料として望ましい。
【0029】
上記の隔離部材43に用いられるフッ素樹脂は、撥油性及び撥水性を有する。燃料や水等の隔離部へ付着による汚れやすさの指標として、表面自由エネルギーがある。表面自由エネルギーについては、表面自由エネルギーが低いと、燃料や水が付着しにくく、表面自由エネルギーが高いと、燃料や水が付着しやすいことを意味する。すなわち、表面自由エネルギーが低いと、撥油性及び撥水性があるため汚れにくく、表面自由エネルギーが高いと、撥油性及び撥水性がなく、汚れやすい。したがって、表面自由エネルギーが低いフッ素樹脂を隔離部材43の材料として用いることで、隔離部材43の表面の汚れを抑制することができ、これにより含水率Rwの計測精度を上げることができる。
【0030】
また、隔離部材43の表面が汚れにくいことから、給油機10のメンテナンスや、隔離部材43や計測部品の交換の頻度を下げることも可能となる。隔離部材43の形状は、テラヘルツ波発信部41およびテラヘルツ波検出部42を供給燃料に直接接触させない形状であれば、チューブや板状、筒状でもよい。
【0031】
また、一般的に、水分が混入した燃料を大流量・高吐出で給油する際、燃料油と水分が混じり合い、水泡や気泡が発生する。水泡や気泡の粒子径は、静水下での気泡及び水泡の評価では、およそ200~300μmの範囲である。
【0032】
そこで、図示した水検出器40では、波長が3mm~300μm(周波数が0.1THz~1.0THz)のテラヘルツ波を、テラヘルツ波発信部41から出射し、テラヘルツ波検出部42に入射させる。テラヘルツ波の波長(3mm~300μm)は、水泡や気泡の粒子径(200~300μm程度)と同等か、それよりも十分に長波長帯にある場合が多い。このため、テラヘルツ波は、水泡や気泡による散乱の影響をほとんど受けない利点がある。
【0033】
テラヘルツ波が通過し供給燃料が流通する、テラヘルツ波発信部41とテラヘルツ波検出部42との間の検出域の距離Lは、テラヘルツ波が水に吸収される量に鑑みて、テラヘルツ波が透過可能な距離に設定されている。
【0034】
テラヘルツ波発信部41とテラヘルツ波検出部42との間の検出域の距離Lは、その距離が長くなるにつれて、検出域を透過するテラヘルツ波の減衰量が多くなり、テラヘルツ波の受信量の損失が大きくなり、含水率Rwの計測精度が低下する。この観点からは、検出域の距離Lは短いほうが好ましい。
【0035】
そこで、検出域の距離Lは、含水率Rwの計測精度が低くならず、かつ、含水率Rwの変化量を判別することができる長さに設定されている。検出域の距離Lは、 テラヘルツ波の周波数と水の吸収係数とに基づいて算出することが可能である。例えば、テラヘルツ波の波長が0.3THzである場合における水の吸収係数は100cm-1である(非特許文献、S.G.Wamen et al, Appl.opt. vol.23, p.1206(1984))。
【0036】
例えば、図示の水検出器40の構成で、含水率Rw>5%を検知するためには、テラヘルツ波の水による吸収が大きいため、検出域の距離Lは短いほうが好ましい(例えば、6mm以下)。検出域の距離Lをそれよりも長くすると、水によるテラヘルツ波の吸収が大きく、テラヘルツ波が全量減衰してしまい、テラヘルツ波検出部42側でテラヘルツ波を検出できなくなることが生じ得る。検出域の距離Lが短い方が、伝搬に伴うテラヘルツ波の損失が少なくなり、受信強度を高められるため、含水率Rwの検出感度を高くすることができる。
【0037】
例えば、図示の水検出器40の場合は、供給燃料が流通する検出域の距離Lは4mm、テラヘルツ波発信部41の発信端面とテラヘルツ波検出部42の受信端面との間の距離(テラヘルツ波の光路長)は10mmとし、コリメートレンズを使用しない構成とした。また、隔離部材43にはETFEのチューブを使用し、テラヘルツ波発信部41からのテラヘルツ波の発振周波数が0.3THzである構成とした。
【0038】
なお、図示は省略するが、テラヘルツ波発信部41及びテラヘルツ波検出部42の間にコリメートレンズを配置することもできる。コリメートレンズを配置することで、テラヘルツ波検出部42でのテラヘルツ波の受信強度を高め、テラヘルツ波をより遠方まで高い強度のままで送信することができるようになる。テラヘルツ波検出部42におけるテラヘルツ波の受信強度が十分に高く、含水率Rwの定量が可能であれば、コリメートレンズは用いなくてもよい。
【0039】
このように構成された水検出器40のテラヘルツ波発信部41およびテラヘルツ波検出部42は、それぞれ水検知制御装置50に接続され、給油機制御装置30からの制御信号に基づいて水検知制御装置50によって作動制御され得る。その際、テラヘルツ波検出部42による受信信号(テラヘルツ波の受信強度に基づく水検出信号)は、水検知制御装置50に出力され、水検知制御装置50では、この受信信号に基づき、テラヘルツ波発信部41とテラヘルツ波検出部42との間の、供給管路16内部の検出域を通過する燃料の含水率Rwが演算される。
【0040】
図示の例では、テラヘルツ波検出部42による受信信号は、例えばテラヘルツ波の受信強度に応じた大きさの電圧信号に変換されて、水検知制御装置50に取り込まれる。水検知制御装置50は、例えばCPU,メモリ,インターフェース等を備えたコンピュータ装置によって構成され、その記憶部には、既知の含水率Rwと電圧値の関係を示した検量線が予め記憶されている。水検知制御装置50は、水検出器40から水検出信号として取り込んだ、テラヘルツ波の受信強度に応じた大きさの電圧信号から、例えば、供給対象への供給液種や供給燃料の吐出量に応じた検量線に基づいて、供給対象に対する供給燃料中の含水率Rwを演算する。
【0041】
図3図4は、水検知制御装置の記憶部に予め記憶されている検量線を説明するための模式図である。図3は、供給液種が軽油で吐出流量が75L/minである場合における給油機10の検量線の模式図であり、図4は、供給液種がレギュラーガソリンで吐出流量が40L/minである場合における給油機10の検量線の模式図である。
【0042】
図3および図4ともに、含水率Rwを様々に変化させた場合における、テラヘルツ波検出部42でのテラヘルツ波の受信強度をプロットした結果を示したものである。図中、同一の含水率の値に対するテラヘルツ波の受信強度の値のばらつき(標準偏差)は、エラーバーで示してある。いずれの給油機10とも、含水率Rwが大きくなるほど、テラヘルツ波検出部42でのテラヘルツ波の受信強度は低下する。検量線Cは、このように含水率Rwを様々に変化させた場合における、テラヘルツ波検出部42でのテラヘルツ波の受信強度をプロットした結果を基にして作成される。いずれの給油機10とも、検出域の距離Lが4mm、テラヘルツ波発信部41の発信端面とテラヘルツ波検出部42の受信端面との間の距離(テラヘルツ波の光路長)が10mm、コリメートレンズを使用しない構成、隔離部材43にはETFEのチューブを使用、テラヘルツ波発信部41からのテラヘルツ波の発振周波数が0.3THzで同一であるため、供給液種の違いや吐出流量の大きさの違いによる影響を余り受けずに、含水率Rwが2%以下、2%から5%、5%以上であるかの判定が検量線Cを用いて可能であることが理解される。
【0043】
このように、図示の水検出器40の構成によれば、燃料の含水率Rwが、安全基準を超える5%(第2の閾値)に達したか否かを検出することに加え、安全基準は満たしているが装置の保守点検が必要又は推奨されると判断されるレベル(2%(第1の閾値)≦Rw<5%(第2の閾値))にあるか否かも高精度に検出することが可能となる。このような高精度な検知が可能となることで、装置の保守や点検などの対策を早期に施すことができる給油機10を提供することができる。
【0044】
この演算の結果は、水検知制御装置50から給油機制御装置30に送信された後、給油量等の給油情報が表示される表示器22に表示される。そして、演算の結果の燃料の含水率Rwが所定の範囲内であることに該当する場合、給油機制御装置30からの指示の下、警報器23により警報が発せられる。
【0045】
給油機制御装置30は、作業者による給油ノズル18の操作に基づく給油作業の進行に合わせて、給油機10におけるポンプ駆動モータ13すなわちポンプ12、表示器22といった各部の作動を制御し、流量計に付設された流量発信器15から給油中に出力される流量パルスを計数して給油量(供給対象に供給された供給燃料量)等を演算し、表示器22に給油量を含む給油作業に係る給油情報を表示する。
【0046】
また、給油機制御装置30は、水検知制御装置50による供給燃料の含水率の測定を制御するとともに、水検知制御装置50で演算された、水検出器40の検出域における供給燃料の含水率(水検出器40の検出域に所在し、また通過する燃料の含水率)の演算結果を受信し、これら演算結果に従い、給油機10の全体ならびに各部を制御する。加えて、図示の例の給油機制御装置30の場合は、給油作業の実行より取得されるこれら演算結果の蓄積から給油機制御装置30もしくは水検知制御装置50によって生成される、含水率に係る各種トレンド情報を、表示器22に視認可能な状態で表示させることができる。
【0047】
また、供給対象に供給している燃料に含水率Rwの異常が発生したことが水検知制御装置50で判定された場合は、給油機制御装置30は、水検知制御装置50からの異常判定結果を受けて、例えばブザー等により構成される警報器23等といった異常判定結果を出力する出力部に対して異常発生指示を出力することもできる。
【0048】
給油機制御装置30は、水検知制御装置50と同様に、例えばCPU,メモリ,インターフェース等を備えたコンピュータ装置によって構成されて、水検知制御装置50と信号接続およびデータ接続された構成になっている。なお、上記説明では、両者の機能を明確にするため、給油機制御装置30と水検知制御装置50とは、それぞれ別装置として図1ではブロックを分けて異なる符号を付して示したが、水検知制御装置50は、CPU,メモリ,インターフェース等を備えたコンピュータ装置からなる給油機制御装置30で共用させることも可能である。
【0049】
次に、本実施例の給油機10の、給油作業時における各部の制御構成について、図5図7に基づいて説明する。
【0050】
図5は、給油作業の際に給油機制御装置が実行する給油機給油制御の一実施例のフローチャートである。
図6は、給油作業の際に水検知制御装置が実行する含水率平均値Rwav測定の一実施例のフローチャートである。
図7は、給油作業の際に給油機制御装置若しくは水検知制御装置のうちのいずれかが実行する時系列区間の計測の一実施例のフローチャートである。
【0051】
図5に示すように、給油機制御装置30による給油機給油制御では、給油ノズル18がノズル掛け19に収納されていて給油作業が行われていない給油機10の待機状態では、給油機制御装置30は、ノズルスイッチ21のスイッチ検出出力を基に、作業者によって給油ノズル18がノズル掛け19から取り出されて給油作業が開始されたか否かを監視している(ステップSD010)。
【0052】
給油ノズル18がノズル掛け19から作業者によって取り出され、給油作業が開始されると(SD010、YES)、給油機制御装置30は、ポンプ駆動モータ13を駆動して(SD020)、ポンプ12から給油ノズル18への送液を開始させ、表示器22の給油量表示をゼロリセットする等して(SD030)、供給対象への給油ノズル18の開弁操作に基づく実際の燃料供給開始に備えた準備処理を行う。
【0053】
上述した準備処理を終えると、給油機制御装置30は、流量発信器15から供給される燃料油液の所定単位流量(例えば、0.01リットル)毎の流れに対応した流量パルスからなる流量信号を基に供給対象に対する給油量(燃料供給量)を演算して表示器22に表示し(SD040)、水検知制御装置50から、後述の水検知制御装置50が演算した供給燃料の含水率の平均値(含水率平均値)Rwavを取得するとともに(SD050)、供給対象に対する給油を終了するか否かの給油終了の確認(SD060)、取得した含水率平均値Rwavが2%未満であるか否かの確認(SD070)、取得した含水率平均値Rwavが2%以上で5%未満であるか否かの確認(SD080)を行う。そして、これら確認の結果、含水率平均値Rwavが2%未満である場合(SD070、YES)や2%以上で5%未満である場合(SD080、YES)、すなわち含水率平均値Rwavが5%未満である場合は、給油機制御装置30は、ステップSD040-SD050-SD060-SD070に示した処理、またはステップSD040-SD050-SD060-SD070-SD080に示した処理を繰り返し行うようになっている。
【0054】
これら一連の処理において、ステップSD060で示した、供給対象に対する給油を終了するか否かの給油終了の確認は、給油機制御装置30によって、例えば、ノズル戻し、制限量/制限時間到達、設定給油量の給油完了、緊急停止信号の入力、緊急停止ボタンの操作に基づいて行われる。そして、給油機制御装置30は、給油終了を確認すると(SD060、YES)、ポンプ12等の送液機器による給油ノズル18への送液を停止させる(SD090)。
【0055】
また、給油機制御装置30は、ステップSD070の、取得した含水率平均値Rwavが2%未満であるか否かの確認で、2%未満であることが確認された場合は(SD070、YES)、表示器22および/または警報器23で含水率平均値Rwavが異常であることを警報中であるか否かを確認し(SD071)、警報中である場合は(SD071、YES)、この警報を一旦停止してから(SD072)、ステップSD040-SD050-SD060-SD070に示した処理、またはステップSD040-SD050-SD060-SD070-SD080に示した処理を繰り返す。また、給油機制御装置30は、ステップSD080の、取得した含水率平均値Rwavが2%以上で5%未満であるか否かの確認で、2%以上で5%未満であることが確認された場合は(SD080、YES)、表示器22および/または警報器23で含水率平均値Rwavが異常であることを警報中であるか否かを確認し(SD081)、警報中でない場合は(SD081、NO)、表示器22および/または警報器23で警報開始させてから(SD082)、ステップSD040-SD050-SD060-SD070に示した処理、またはステップSD040-SD050-SD060-SD070-SD080に示した処理を繰り返す。
【0056】
一方、給油機制御装置30は、ステップSD070およびステップSD080の確認で、含水率平均値Rwavが5%以上であることが確認された場合は(SD070、NOかつSD080、NO)、ステップSD040-SD050-SD060-SD070に示した処理、またはステップSD040-SD050-SD060-SD070-SD080に示した処理を繰り返すことなく、表示器22および/または警報器23で含水率平均値Rwavが異常であることを警報中であるか否かを確認し(SD081)、警報中でない場合は(SD083、NO)、表示器22および/または警報器23で警報開始させ(SD084)、ポンプ12等の送液機器による給油ノズル18への送液を停止させる(SD090)。
【0057】
給油機制御装置30は、ステップSD090でポンプ12等の送液機器による給油ノズル18への送液を停止させた後は、作業者によって給油ノズル18がノズル掛け19に収納されて給油作業が終了されたか否かを監視している(SD100)。そして、給油機制御装置30は、給油作業が終了されたことを確認されると(SD100、YES)、含水率平均値Rwavが異常であることを警報中であるか否かを確認し(SD110)、警報中でない場合(SD110、NO)、すなわち、供給燃料における水の混入が異常で供給対象に対する給油が強制的に中止させられた(SD080、NO)以外の場合として、現在の給油作業をそのまま終了させて、次の給油作業に備える。
【0058】
これに対し、警報中である場合(SD110、NO)、すなわち、ステップSD080で、供給燃料における水の混入が異常で供給対象に対する給油が強制的に中止させられた場合は、給油機制御装置30は、係員によるこの異常状態についての認識後、所定のリセット操作がなされるまで(SD111)、警報を停止せず、警報中を維持する(SD120)。
【0059】
一方、水検知制御装置50による含水率平均値Rwav測定は、図5のステップSD010で給油作業の開始が給油機制御装置30によって検知されると(図5、ステップSD010)、給油機制御装置30からの測定開始指示を受けて、水検知制御装置50により、給油機制御装置30による給油機給油制御と並行して、予め定められている実行間隔、すなわち、予め定められている水検出器40のテラヘルツ波検出部42の出力についてのサンプリング間隔で繰り返し実行される。
【0060】
なお、給油機制御装置30からの測定開始指示の出力タイミングとしては、給油ノズル18がノズル掛け19から作業者によって取り出され給油作業が開始されたとき、または、ノズル掛け19から取り出された給油ノズル18が作業者によって開弁操作され、供給対象に対する燃料供給が実際に開始されたとき等が利用可能である。例えば、給油機制御装置30は、前者の場合は、ノズルスイッチ21のスイッチ検出出力を基に測定開始指示を水検知制御装置50に出力することができ、後者の場合は、ノズルスイッチ21のスイッチ検出出力と流量発信器15からの流量パルスの入力とを基に測定開始指示を水検知制御装置50に出力することができる。
【0061】
図6に示すように、含水率平均値Rwav測定では、水検知制御装置50は、水検出器40のテラヘルツ波検出部42からのテラヘルツ波の受信強度に応じた大きさの電圧信号を読み込み(ステップSR010)、この読み込んだ電圧信号を電圧値にA/D変換する等してテラヘルツ波の受信量を演算する(SR020)。それから、水検知制御装置50は、予め記憶部にデータテーブル若しくは演算式として記憶してある既知の含水率Rwと電圧値の関係(検量線C)から、テラヘルツ波の受信量に対応する含水率Rwを演算し(SR030)、この含水率Rwを含水率平均値演算エリアに蓄積記憶する(SR040)。
【0062】
それから、水検知制御装置50は、水検知制御装置50自身または給油機制御装置30で別途計測している所定の時系列区間の測定が完了し、含水率平均値Rwavの演算指示が入力されているか否かを確認する(SR050)。水検知制御装置50は、含水率平均値Rwavの演算指示が入力されている場合は(SR050、YES)、含水率平均値演算エリアに記憶されている当該時系列区間内の複数の含水率Rwを用いて、当該時系列区間における含水率平均値Rwavを演算し(SR060)、演算した含水率平均値Rwavを、今回の給油作業で取得された含水率平均値Rwavを蓄積しておくための履歴記憶エリアに記憶する一方(SR070)、必要に応じて、含水率平均値演算エリアに蓄積されている含水率Rwの記憶内容のクリアが行われる。
【0063】
これに対し、SR050含水率平均値Rwavの演算指示が入力されていない場合は(SR050、NO)、含水率平均値Rwavの演算は行わずに、今回の含水率平均値Rwav測定を終了する。
【0064】
したがって、水検知制御装置50では、予め定められているサンプリング間隔で、水検出器40のテラヘルツ波検出部42から、テラヘルツ波検出部42が検出しているテラヘルツ波の検出出力(受信強度に応じた大きさの電圧信号)の取得が行われる一方、このサンプリング間隔よりも区間長さが大きな時系列区間毎に、当該時系列区間の含水率平均値Rwavの演算が行われるようになっている。
【0065】
次に、ステップSR050で述べた含水率平均値Rwavの演算指示について、その生成方法について、図7に基づいて説明する。含水率平均値Rwavの演算指示の生成は、図示の実施例では、給油機制御装置30と水検知制御装置50とは信号接続およびデータ接続された構成になっているため、水検知制御装置50または給油機制御装置30のうちのいずれでも実行可能であるが、ここでは、水検知制御装置50が実行する場合を例に説明する。
【0066】
含水率平均値Rwavの演算指示では、図7に示すように、水検知制御装置50は、供給対象に対する給油が開始されたか否かを監視して(ステップSS010)、給油の開始を確認した場合は(SS010、YES)、図6のステップSR0600に示した含水率平均値Rwavの演算で利用される、区間長さが予め定められている時系列区間の計測を開始する(SS020)。
【0067】
この場合、給油が開始されたか否かの確認は、図6に示した水検知制御装置50が含水率平均値Rwav測定の開始と同期していることが好ましく、例えば、給油ノズル18がノズル掛け19から作業者によって取り出され給油作業が開始されたか否か、ノズル掛け19から取り出された給油ノズル18が作業者によって開弁操作され、供給対象に対する燃料供給が実際に開始されたか否か等に基に行われる。
【0068】
また、予め定められている時系列区間の区間長さは、図6に示した含水率Rwのサンプリング間隔に比べて時間長さが長くなるものであれば、例えば、所定時間(例えば、10sec)で規定することや、所定燃料供給量(例えば、10.00L単位、もしくは10L分の流量パルス数単位)で規定することが可能である。予め定められている時系列区間の区間長さを所定時間で規定した場合は、各時系列区間に含まれる含水率Rwの個数は時系列区間毎で略一定になる。また、予め定められている時系列区間の区間長さを所定燃料供給量で規定した場合は、各時系列区間に含まれる含水率Rwの個数は各時系列区間の燃料供給速度(吐出流速)の大きさの違いによって変化する。以下では、予め定められている時系列区間の区間長さを所定時間で規定した場合を例に説明する。
【0069】
ステップSS020で、所定時間で規定されている時系列区間の区間長さの計測を開始すると、水検知制御装置50は、この所定時間の計時を完了したか否か(SS030)、給油の終了が確認されたか否か(SS040)をそれぞれ監視する。そして、水検知制御装置50は、所定時間の計時を完了し、その間に給油の終了が確認されなかった場合は(SS030、YES)、当該時系列区間に対応した含水率平均値Rwavの演算指示を出力して(SS031)、ステップSS020に戻り、所定時間で規定されている時系列区間の区間長さの計測を再び開始する。
【0070】
一方、所定時間で規定されている時系列区間の区間長さの計測中に、給油の終了が確認された場合は(SS040、YES)、水検知制御装置50は、所定時間で規定されている時系列区間の区間長さの計測を終了し(SS041)、さらに、図示の例では、この間における図6に示した含水率平均値Rwavの測定の実行で履歴エリアに蓄積された当該給油作業において取得した含水率平均値Rwavを、履歴エリアから取り出して、当該給油作業と対応付けて、水検知制御装置50の記憶部に設けられた分析記憶エリアに保存記憶する(SS042)。これにより、水検知制御装置50の記憶部における分析記憶エリアには、給油作業毎に対応させて、当該給油作業中に図6に示した含水率平均値Rwavの測定の実行で取得された1または複数の含水率平均値Rwavが保存されることになる。
【0071】
以上のように構成された本実施例の給油機10によれば、テラヘルツ波発信部41およびテラヘルツ波検出部42を有する水検出器40を備え、図3図4に示したような含水率Rwが2%未満、2%から5%未満、5%以上であるかの判定が可能な検量線Cを用いて供給燃料の含水率平均値Rwを測定することができるので、供給対象に燃料を高吐出(例えば、75L/min)で大量(例えば、400L)に給油する給油装置に適用した場合でも、精度良く燃料の含水率Rwを計測することが可能になる。その結果、供給対象に供給する燃料の含水率Rwについて、含水率Rwが2%未満で異常がない場合と、含水率Rwが2%から5%未満で供給対象である車両での使用としては許容範囲内であるが給油機10において保守点検が必要又は推奨されると判断され得る場合と、含水率Rw5%以上で供給対象である車両で使用されると燃焼不良が起きる可能性が高い場合とを供給対象に対する給油中に区別することができる。
【0072】
さらに、この供給燃料の含水率Rwの判別の際も、予め定められている時系列区間の供給燃料の含水率平均値Rwを演算して異常を判別するので、供給燃料全体の含水率は許容範囲内で異常がない場合であっても、水検出器40の検出域を瞬間的に通過する一部の供給燃料による瞬時含水率Rwが許容範囲外(例えば、2%≦Rw<5%、5%≦Rw)で、瞬間的に実際の供給燃料の値以上の含水率Rwに対応する電圧値(物性値)が水検出器40のテラヘルツ波検出部42によって一時的ではあるものの検出されてしまうような場合は、この事象だけに基づいて、直ちに、供給燃料の含水率Rwが許容範囲外で異常があると判定されることは無いため、より正確な異常検出を行える。
【0073】
図8は、供給燃料全体の含水率は許容範囲内で異常がない場合であっても、水検出器の検出域を瞬間的に通過する一部の供給燃料による瞬時含水率Rwが許容範囲外である給油作業の例の模式図である。
【0074】
従来技術の給油機では、図8に示すような給油作業が事象として現れると、供給燃料全体の含水率平均値Rwavは2%未満であるのにもかかわらず、点線で示すような5%を超える瞬時含水率Rwが含まれていると、その測定時点で異常と判定されて給油作業が中止されてしまうが、予め定められている時系列区間の供給燃料の含水率平均値Rwを演算して異常を判別する本実施例の給油機10では、直ちに、供給燃料の含水率Rwが許容範囲外で異常があると判定されることは無いため、より正確な異常検出を行える。
【0075】
また、異常を検出するための判定値(例えば、2%≦Rw<5%、5%≦Rw)を変えてはいないため、本来は異常であるにもかかわらず、異常を検出できないという不都合を低減できる。
【0076】
また、本実施例の給油機10では、給油作業毎に対応させて、当該給油作業中に含水率平均値Rwavの測定の実行で取得された1または複数の含水率平均値Rwavが、水検知制御装置50の記憶部における分析記憶エリアに保存できるようになっているので、例えば図9図11に示すような含水率のトレンドを、給油機制御装置30または水検知制御装置50は、この分析記憶エリア保存されている含水率平均値Rwavを基に演算して取得することができる。
【0077】
図9は、含水率平均値Rwavを基に演算して取得した含水率のトレンドの一例である。
【0078】
図9は、直近50回の給油作業について、各給油作業毎に、作業毎の含水率平均値Rwavの平均値Rwav2を算出し、この作業毎の含水率平均値Rwavの平均値Rwav2を、縦軸を含水率の値[%]とし横軸を直近50回の給油作業別としたグラフ上にプロットした、含水率のトレンド分析結果である。この含水率のトレンド分析結果によれば、直近50回の給油作業における含水率の増/減/一定といった変化傾向を把握することができる。
【0079】
図10は、含水率平均値Rwavを基に演算して取得した含水率のトレンドの別例である。
【0080】
図10は、直近1か月間の給油作業について、各給油作業毎に、作業毎の含水率平均値Rwavの平均値Rwav2を算出し、さらにこれを基に1日の給油作業全体における含水率の平均値Rwav3と1週間の給油作業全体における含水率の平均値Rwav4を算出し、この含水率の平均値Rwav3およびRwav4を、縦軸を含水率の値[%]とし横軸を月日としたグラフ上にプロットした、含水率のトレンド分析結果である。この含水率のトレンド分析結果によれば、直近1か月間の給油作業における含水率の増/減/一定といった変化傾向を1日単位および1週間単位で把握することができる。
【0081】
図11は、含水率平均値Rwavを基に演算して取得した含水率のトレンドのさらに別例である。
【0082】
図11は、1日の給油作業について、各給油作業毎に、作業毎の含水率平均値Rwavの平均値Rwav2を算出し、この作業毎の含水率平均値Rwavの平均値Rwav2を基に、1日における給油作業の総回数に対して、平均値Rwav2のそれぞれ値範囲に対応した給油作業の回数が占める割合[%]を、縦軸を割合[%]とし横軸を平均値Rwav2の各値範囲したグラフ上に棒グラフで表した、含水率のトレンド分析結果である。この含水率のトレンド分析結果によれば、平均値Rwav2のそれぞれ値範囲のうち、どの値範囲の給油作業が多かったか少なかったかを把握することができる。
【0083】
そして、これら図9図11に示すような含水率のトレンドは、表示器22が画像表示可能な表示器であれば、当該表示器に表示させることができる。また、表示器22が画像表示可能な表示器でなくとも、例えば給油所LAN等によって当該給油機10と通信接続された給油管理装置(SSC)や給油所POSに送信出力することによって、これらの表示器に表示させることもできる。
【0084】
本実施例の給油機10は、上述したように構成されるが、各部の具体的構成については上述した構成に限られるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0085】
例えば、上述した給油機10では、予め定められている時系列区間の各時系列区間は隣り合う時系列区間同士が接して連なるように構成したが、隣り合う時系列区間同士の一部が重なる構成であってもよいし、また、当所の時系列区間が供給対象に対する燃料供給時間(給油時間)や燃料供給量(給油量)の増大に合わせて所定区間長さを所定量ずつ増大していく構成であってもよい。後者の場合は、増大させた最後の時系列区間の含水率平均値Rwavを自動的に当該給油作業の含水率平均値Rwav2とすることが可能である。
【0086】
また、上述した給油機10では、水検知制御装置50は、テラヘルツ波の受信量に対応する含水率(瞬時含水率)Rwを演算して時系列区間の含水率平均値Rwavを演算するように構成したが(図6)、テラヘルツ波の受信量に対応する含水量(瞬時含水量)Fwを演算して時系列区間の含水量平均値Fwavを演算し、この得られた時系列区間の含水量平均値Fwavを遂次加算していき、供給対象に対する燃料供給量に占める総含水量ΣFwを取得するように構成してもよい。そして、供給対象に対する燃料供給量に占める総含水量ΣFwが、供給対象に対する燃料供給量の何%にあたるかを随時算出し、予め定められた含水率(例えば、5%)を超える場合には、異常と判定するようにしてもよい。
【0087】
さらに、図12に示すように、時系列単位区間毎の燃料吐出量(給油吐出量)に、時系列単位区間毎の含水率(瞬時含水率)Rwを乗算して、時系列単位区間毎の含水量を算出し、この時系列単位区間毎の含水量を、供給対象に対する燃料供給中の間、積算して、供給対象に対して加水した総加水量ΣWを算出して、この総加水量ΣWが予め定められている異常判定値に達したか否かに応じて異常を判定するように構成してもよい。
【0088】
図12は、総加水量ΣWを表した模式図である。
【0089】
また、供給燃料の濁度を測定して、供給燃料中の混入している水を検出する水検出器40としては、テラヘルツ波発信部41およびテラヘルツ波検出部42に代えて、発光側光ファイバと受光側光ファイバとを有して構成される光ファイバセンサを用いてもよい。光ファイバセンサは、例えば、両光ファイバの発光端面および受光端面を、供給管路16の内部の供給燃料に臨ませた構成になっている。さらに、水検出器40としては、時系列区間毎の含水量や含水率を測定できるものであるならば、これらテラヘルツ波発信部41およびテラヘルツ波検出部42、光ファイバセンサにも限られない。
【0090】
このような変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
10 給油機、
11 給油機筐体、
12 ポンプ、
13 ポンプ駆動モータ、
14 流量計、
15 流量発信器、
16 供給管路、
17 ホース、
18 給油ノズル、
19 ノズル掛け、
21 ノズルスイッチ、
22 表示器、
23 警報器、
30 給油機制御装置、
40 水検出器、
41 テラヘルツ波発信部、
42 テラヘルツ波検出部、
43 隔離部材、
50 水検知制御装置。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12