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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057232
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/42 20060101AFI20220404BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220404BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H05K3/42 610C
H05K1/02 C
H05K3/46 B
H05K3/46 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165374
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】君島 康紀
(72)【発明者】
【氏名】川合 悟
【テーマコード(参考)】
5E316
5E317
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA43
5E316CC04
5E316CC05
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316CC55
5E316DD02
5E316DD12
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD32
5E316DD33
5E316DD48
5E316EE33
5E316FF07
5E316FF10
5E316FF13
5E316FF15
5E316FF17
5E316FF18
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316HH02
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB12
5E317BB15
5E317BB30
5E317CC25
5E317CC31
5E317CC32
5E317CC33
5E317CD27
5E317CD32
5E317GG11
5E338AA02
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB13
5E338BB22
5E338BB25
5E338EE11
(57)【要約】
【課題】配線基板の特性向上。
【解決手段】実施形態の配線基板は、絶縁層3と、絶縁層3を介して対向する2つの導体層4と、絶縁層3を絶縁層3の厚さ方向に沿って通り抜ける貫通孔21、22の内部に形成されていて2つの導体層4を互いに接続する層間接続導体5と、貫通孔21、22内を埋める樹脂体6と、を備えている。そして、絶縁層3の厚さ方向において層間接続導体5は1000μm以上、2000μm以下の長さを有し、層間接続導体5による貫通孔21、22の内部の体積占有率が45%以上、70%以下であり、樹脂体6による貫通孔21、22の内部の体積占有率が30%以上、55%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層を介して対向する2つの導体層と、
前記絶縁層を前記絶縁層の厚さ方向に沿って通り抜ける貫通孔の内部に形成されていて前記2つの導体層を互いに接続する層間接続導体と、
前記貫通孔内を埋める樹脂体と、
を備える配線基板であって、
前記厚さ方向において前記層間接続導体は1000μm以上、2000μm以下の長さを有し、
前記層間接続導体による前記貫通孔の内部の体積占有率が45%以上、70%以下であり、
前記樹脂体による前記貫通孔の内部の体積占有率が30%以上、55%以下である。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記層間接続導体による前記貫通孔の内部の体積占有率は50%以上である。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記貫通孔の内径は、120μm以上、190μm以下である。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、
前記層間接続導体は、前記貫通孔の内壁上に形成されている金属膜によって構成されており、
前記金属膜の厚さは、25μm以上、40μm以下である。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、前記厚さ方向に沿って前記層間接続導体を貫く中空部を備え、
前記中空部が前記樹脂体で充填されている。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、前記厚さ方向に沿って前記絶縁層を貫く磁性体を備え、前記層間接続導体は前記磁性体を貫いている。
【請求項7】
請求項6記載の配線基板であって、前記磁性体における前記厚さ方向と直交する方向の幅は、350μm以上、450μm以下である。
【請求項8】
請求項6記載の配線基板であって、
複数の前記層間接続導体が備えられており、
複数の前記層間接続導体は、前記磁性体に覆われる側面を有する前記層間接続導体、及び、前記絶縁層に覆われる側面を有する前記層間接続導体を含んでいる。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板であって、前記層間接続導体は、前記2つの導体層と一体的に形成されている。
【請求項10】
請求項1記載の配線基板であって、
前記絶縁層及び前記2つの導体層によって前記配線基板のコア基板が構成されており、
前記配線基板は、さらに、前記コア基板上に積層されている1組以上の絶縁層及び導体層を含むビルドアップ層を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コア用の絶縁板を含む絶縁基体を備えた配線基板が開示されている。コア用の絶縁板には、コア用の絶縁板の両面に形成された配線導体同士を接続するスルーホールが形成されており、スルーホールの内部は孔埋め樹脂で充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-39073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される樹脂などの非導電性材料で内部が充填されたスルーホールを介した配線導体間の通電では、スルーホールにおいて過大な電圧降下や発熱が生じることがある。そのため、配線基板を用いる機器において所望の特性が得られないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、絶縁層と、前記絶縁層を介して対向する2つの導体層と、前記絶縁層を前記絶縁層の厚さ方向に沿って通り抜ける貫通孔の内部に形成されていて前記2つの導体層を互いに接続する層間接続導体と、前記貫通孔内を埋める樹脂体と、を備えている。そして、前記厚さ方向において前記層間接続導体は1000μm以上、2000μm以下の長さを有し、前記層間接続導体による前記貫通孔の内部の体積占有率が45%以上、70%以下であり、前記樹脂体による前記貫通孔の内部の体積占有率が30%以上、55%以下である。
【0006】
本発明の実施形態によれば、樹脂体で充填される貫通孔内に形成される層間接続導体の電流定格を従来よりも増大させ得ることがある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2】本発明の一実施形態における2つの層間接続導体の軸方向と直交する平面での断面図。
図3A図1のIIIA部の拡大図。
図3B図1のIIIB部の拡大図。
図4】本発明の他の実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図5A】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5B】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5C】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5D】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5E】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5F】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5G】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。図1は、一実施形態の配線基板の一例である配線基板1を示す断面図であり、図2には、絶縁層3の厚さ方向と直交する平面での第1及び第2の層間接続導体51、52の断面図が示されている。
【0009】
図1に示されるように、本実施形態の配線基板1は、絶縁層3と、絶縁層3を介して対向する2つの導体層4と、2つの導体層4を互いに接続する1以上の層間接続導体5と、を備えている。図1の例の配線基板1には、1以上の層間接続導体5として、第1層間接続導体51及び第2層間接続導体52を含む複数の層間接続導体が備えられている。第1層間接続導体51は第1貫通孔21の内部に形成されている。第2層間接続導体52は第2貫通孔22の内部に形成されている。第1貫通孔21及び第2貫通孔22は、それぞれ、絶縁層3を絶縁層3の厚さ方向(以下、絶縁層3の厚さ方向は、単に「Z方向」とも称される)に沿って通り抜けている。各層間接続導体5は、絶縁層3のZ方向に直交する2つの主面(第1面3a及び第2面3b)それぞれに形成された導体層4同士を接続するスルーホール導体である。
【0010】
絶縁層3は、任意の絶縁性樹脂によって形成されている。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、又はフェノール樹脂などが例示される。これら絶縁性樹脂を用いて形成される絶縁層3は、シリカなどの無機フィラーを含んでいてもよい。図1の例では、絶縁層3は、例えばガラス繊維やアラミド繊維などからなる補強材31を含んでいる。
【0011】
配線基板1は、さらに、第1貫通孔21の内部及び第2貫通孔22の内部それぞれを埋める樹脂体6を備えている。樹脂体6は、第1貫通孔21及び第2貫通孔22それぞれの内部において、各層間接続導体5に占有されない領域を埋めている。
【0012】
図1の例の配線基板1は、さらに、Z方向に沿って絶縁層3を貫く磁性体7を備えている。図1の例において第2層間接続導体52は磁性体7を貫いており、従って第2貫通孔22も磁性体7を貫いている。第2層間接続導体52及び第2貫通孔22は、磁性体7を介して絶縁層3を貫いている。一方、第1層間接続導体51は絶縁層3を貫いており、従って第1貫通孔21も絶縁層3を貫いている。前述したように、第1貫通孔21及び第2貫通孔22は、それぞれ、絶縁層3をZ方向に沿って通り抜けている。各貫通孔(又は各層間接続導体)が絶縁層3を「通り抜ける」は、第1貫通孔21のように絶縁層3を直接貫くことに加えて、第2貫通孔22のように磁性体7のような介在物を介して絶縁層3を貫くことも含んでいる。
【0013】
具体的には、絶縁層3は、図1及び図2に示されるように、絶縁層3をZ方向に貫通する第1貫通孔21及び第3貫通孔23を有している。第1層間接続導体51は第1貫通孔21の内壁上に形成されている。従って、第1層間接続導体51は、Z方向に沿っていて絶縁層3に覆われている外周側面51aを有しており、外周側面51aは第1貫通孔21の内壁すなわち絶縁層3に接している。
【0014】
一方、第3貫通孔23の内部は磁性体7で充填されており、磁性体7にはZ方向に沿って磁性体7を貫く第2貫通孔22が形成されている。第2層間接続導体52は、第2貫通孔22の内壁上に形成されている。従って、第2層間接続導体52は、磁性体7に覆われていてZ方向に沿った外周側面52aを有しており、外周側面52aは第2貫通孔22の内壁すなわち磁性体7に接している。
【0015】
このように図1の例では、第1層間接続導体51及び第2層間接続導体52は、それぞれ、第1貫通孔21又は第2貫通孔22の内壁に沿って形成されていて筒状の形態を有している。従って、配線基板1は、第1層間接続導体51又は第2層間接続導体52をZ方向に貫く中空部5aを備えており、中空部5aが樹脂体6で充填されている。
【0016】
図2に示されるように、各層間接続導体5、樹脂体6、並びに磁性体7は、それぞれ、Z方向と直交する断面において略円形の形状を有している。従って、図1及び図2の例において、各層間接続導体5、樹脂体6、並びに磁性体7は、円柱状又は円筒状の形状を有している。しかし、本実施形態において、各層間接続導体5、樹脂体6、並びに磁性体7は、任意の断面形状を有する柱状体又は筒状体であってもよい。
【0017】
図3A及び図3Bには、図1のIIIA部及びIIIB部の拡大図、すなわち、第1層間接続導体51及び第2層間接続導体52の拡大図が、それぞれ示されている。
【0018】
図3A及び図3Bに示されるように、第1層間接続導体51及び第2層間接続導体52は、それぞれ、第1金属膜501と、第1金属膜501上に形成された第2金属膜502とを含んでいる。このように、各層間接続導体51、52は、第1貫通孔21又は第2貫通孔22の内壁上に形成されている金属膜(第1金属膜501及び第2金属膜502)によって構成され得る。第2金属膜502は、例えば電解めっきで形成されためっき膜である。第1金属膜501は、第2金属膜502が電解めっきによって形成される場合の給電層及び/又はシード層として機能する。第1金属膜501は、例えば、無電解めっき又はスパッタリングなどで形成される。しかし、第1及び第2の層間接続導体51、52は、無電解めっきによって形成された金属膜だけを含んでいてもよい。各層間接続導体51、52を構成する材料としては、銅やニッケルなどが主に例示されるが、各層間接続導体51、52の材料は、これらに限定されない。
【0019】
第1層間接続導体51及び第2層間接続導体52それぞれにおけるZ方向の両端部は、第3金属膜43及び第4金属膜44によって覆われている。第3金属膜43及び第4金属膜44は、各層間接続導体に対する所謂蓋めっき膜である。第3金属膜43及び第4金属膜44が形成されているので、後述するように絶縁層3が多層配線基板の一部として用いられる場合に、各層間接続導体と、その真上に形成されるビア導体とを電気的に接続し得ることがある。第3金属膜43は、第1金属膜501と同様に無電解めっきやスパッタリングなどによって形成される。第4金属膜44は、第2金属膜502と同様に、例えば電解めっきによって形成される。第3金属膜43及び第4金属膜44は、例えば、銅又はニッケルなどの金属によって形成される。
【0020】
図3Aに示されるように、配線基板1において絶縁層3を介して対向する2つの導体層4それぞれは5層構造を有し得る。すなわち、導体層4は、金属箔40、金属箔40上の第1金属膜501、第1金属膜501上の第2金属膜502、第2金属膜502上の第3金属膜43、そして第3金属膜43上の第4金属膜44によって構成されている。金属箔40は、任意の金属からなり、例えば金属箔40は銅箔やニッケル箔である。一方、磁性体7上では、図3Bに示されるように、導体層4は、第1金属膜501、第2金属膜502、第3金属膜43、及び第4金属膜44からなる4層構造を有し得る。
【0021】
第1金属膜501及び第2金属膜502は、それぞれ、第1層間接続導体51又は第2層間接続導体52を構成する部分と、導体層4を構成する部分とを含んでおり、これら2つの部分が一体的に形成されている。すなわち、第1及び第2の層間接続導体51、52それぞれは、第1金属膜501及び第2金属膜502に関して、2つの導体層4と一体的に形成されている。従って、第1及び第2の層間接続導体51、52それぞれと、2つの導体層4それぞれとの間の剥離が生じ難いと考えられる。
【0022】
樹脂体6の材料は、中空部5aを満たし得るものであれば特に限定されない。樹脂体6は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を含み得る。また、樹脂体6の材料は、銀粒子などの導電性粒子とエポキシ樹脂などとを含む導電性樹脂を含んでいてもよい。樹脂体6は、好ましくは、エポキシ樹脂などで形成される絶縁層3の熱膨張率と近い熱膨張率を有している材料を含んでいる。
【0023】
図3A及び図3Bに例示される第1及び第2の貫通孔21、22それぞれの内部全体が第1及び第2の金属膜501、502で充填されると、第1及び第2の金属膜501、502を含む導体層4が所望の厚さよりも厚くなることがある。その場合、エッチングなどの簡便な方法で導体層4に微細なピッチで並ぶ配線パターン(ファインピッチパターン)を設けることが困難になることがある。そのため、本実施形態では、第1層間接続導体51又は第2層間接続導体52を構成する第1及び第2の金属膜501、502は、第1及び第2の貫通孔21、22の内部の全体には形成されていない。
【0024】
そして各貫通孔の内部において各層間接続導体に占有されていない領域は、例えばエポキシ樹脂などを含む樹脂体6で埋められている。各貫通孔の内部の空き領域が埋められるので、後述される他の実施形態のように絶縁層3が多層配線基板の一部として用いられる場合に、各層間接続導体の真上にビア導体を形成することができる。各種樹脂材料を含む樹脂体6は、各金属膜を構成する例えば銅などの金属よりも絶縁層3の熱膨張率と近い熱膨張率を有し易く、例えば熱応力が軽減されることがある。
【0025】
一方、樹脂体6は、エポキシ樹脂などで構成される場合、一般的には絶縁体となり得る。樹脂体6は、導電性粒子を含む場合でも、第1及び第2の層間接続導体51、52の材料よりも低い導電性を有し得る。そのため、従来の配線基板では、スルーホール導体などの層間接続導体で接続される2つの導体層同士の間の電気抵抗が、所望の抵抗値よりも大きくなることがある。その場合、その2つの導体層間の通電において、過大な電圧降下や発熱が生じてしまって配線基板において所望の特性が得られなかったり、スルーホール導体の断線が生じたりすることがある。
【0026】
そこで本実施形態では、導体層4がファインピッチパターンを有し得るように、且つ、所望の特性や信頼性が得られるような態様で、各層間接続導体及び樹脂体6が設けられている。具体的には、各貫通孔21、22に対して所定の体積占有率を有するように、各層間接続導体51、52及び樹脂体6が形成されている。
【0027】
まず、各層間接続導体51、52は、各層間接続導体51、52それぞれによる各貫通孔21、22の内部の体積占有率(以下、この体積占有率は単に「体積占有率α」とも称される)として、45%以上、70%以下の体積占有率を有している。各層間接続導体51、52は、好ましくは、体積占有率αとして50%以上の体積占有率を有し得る。具体的には、第1層間接続導体51による第1貫通孔21の内部の体積占有率、及び、第2層間接続導体52による第2貫通孔22の内部の体積占有率は、いずれも、45%以上、70%以下である。
【0028】
一方、本実施形態において樹脂体6は、樹脂体6による各貫通孔21、22の内部の体積占有率(以下、この体積占有率は単に「体積占有率β」とも称される)として、30%以上、55%以下の体積占有率を有している。樹脂体6は、好ましくは、体積占有率βとして、30%以上、50%以下の体積占有率を有し得る。換言すると、樹脂体6による第1貫通孔21及び第2貫通孔22それぞれの内部の体積占有率は、30%以上、55%以下である。
【0029】
本実施形態では、第1及び第2の層間接続導体51、52、並びに樹脂体6が、各貫通孔に対して、上記の体積占有率を有するように構成されている。そのため、2つの導体層4それぞれの厚さが過大となることを回避しながら、2つの導体層4同士の間の電気抵抗が過大となることを回避し得ることがある。従って、導体層4の厚さ、及び、導体層4同士の間の電気抵抗の両方に関して好ましい値が得られることがある。
【0030】
本実施形態では、2つの導体層4の間に介在する絶縁層3は、1000μm以上の厚さを有している。すなわち第1層間接続導体51及び第2層間接続導体52それぞれは、Z方向において1000μm以上の長さを有している。Z方向における各層間接続導体の両端間の電気抵抗は、各層間接続導体のZ方向の長さDの増大に伴って増大する。特に各層間接続導体がZ方向において1000μm以上のような長さを有していると、Z方向における各層間接続導体の両端間の電気抵抗は過大になり易い。しかし本実施形態では、第1及び第2の層間接続導体51、52、並びに樹脂体6が、各貫通孔に対して前述した体積占有率を有するように構成されているので、各層間接続導体の両端間の電気抵抗の増加が抑制され易い。本実施形態は、1000μm以上の厚さを有する絶縁層を有する配線基板において特に有益であると考えられる。
【0031】
しかし、各層間接続導体のZ方向の長さDが顕著に長い場合、2つの導体層4同士の間の電気抵抗が所望値を上回ることがある。従って、Z方向における各層間接続導体51、52の長さD、すなわち絶縁層3の厚さとしては、2000μm以下が好ましいことがある。
【0032】
図3Aの例において、第1及び第2の金属膜501、502並びに金属箔40を含む各導体層4の厚さT4は、例えば、35μm以上、50μm以下である。絶縁層4がこの程度の範囲の厚さ有していると、所望のファインピッチパターンと、所望の電流定格を有する導体パターンとを導体層4に共存させ得ることがある。
【0033】
各層間接続導体51、52の体積占有率αが45%以上であり、樹脂体6の体積占有率βが55%以下であり、絶縁層3の厚さが2000μm以下である場合、数十アンペア以上の電流を、顕著な温度上昇及び/又は電圧降下を伴わずに各層間接続導体51、52に流し得ることがある。好ましくは、このような大きさの電流を流し得るように、第1及び第2の貫通孔21、22それぞれの内径R、及び/又は、各層間接続導体51、52を構成する金属膜の厚さT5(第1金属膜501の厚さと第2金属膜502の厚さの和)が調整される。
【0034】
各層間接続導体51、52の体積占有率αが70%以下であり、樹脂体6の体積占有率βが30%以上である場合、各導体層4において、60μm/60μm(配線幅/配線間隔)の配線ルールでファインピッチパターンを形成し得ることがある。好ましくは、このような配線ルールを適用し得るように、各貫通孔の内径R、各層間接続導体51、52を構成する金属膜の厚さT5、さらに、金属箔40並びに第3及び第4の金属膜43、44の厚さが調整される。
【0035】
本実施形態において第1及び第2の貫通孔21、22それぞれの内径Rは、例えば120μm以上、190μm以下である。なお、便宜上「内径」という用語が用いられているが、第1及び第2の貫通孔21、22、並びに第3貫通孔23の平面形状(Z方向と直交する平面での断面形状)は円形に限定されない。第1~第3の貫通孔21、22、23の「内径」は、各貫通孔の平面形状における外周上の2点間の最大距離である。
【0036】
また本実施形態において、第1及び第2の層間接続導体51、52それぞれを構成する金属膜の厚さT5は、例えば、25μm以上、40μm以下である。このような厚さT5を有する第1及び第2の層間接続導体51、52は、従来の配線基板におけるスルーホールなどと比べて、各層間接続導体を介した熱の伝導性の向上に寄与することがあり、配線基板の放熱性向上に寄与することがある。また、このような厚さT5を有する各層間接続導体51、52では、各層間接続導体51、52と、2つの導体層4それぞれとの連結部分である屈折部Cにおいて、従来の配線基板と比べて断線が生じ難いと考えられる。
【0037】
第1及び第2の貫通孔21、22の内径R、並びに第1及び第2の層間接続導体51、52それぞれを構成する金属膜の厚さT5が上記に例示の値を有していると、第1及び第2の層間接続導体51、52が、前述した45%以上、70%以下の体積占有率αを有し易い。換言すると、樹脂体6が、前述した30%以上、55%以下の体積占有率βを有し易い。
【0038】
なお、各導体層4の積層構造は、図3A及び図3Bに示されるような5層構造又は4層構造に限定されず、各導体層4は任意の層数を有し得る。例えば、第3金属膜43及び第4金属膜44は形成されなくてもよい。また金属箔40が設けられなくてもよい。
【0039】
図3Bに示されるように、磁性体7は第3貫通孔23の内部を充填しており、第2層間接続導体52のZ方向に沿う外周側面52aを覆っている。磁性体7は、第3貫通孔23の内壁と第2層間接続導体52との間に介在している。第2層間接続導体52が磁性体7を貫通しているので、第2層間接続導体52の周囲には大きな磁束密度が生じ得る。従って第2層間接続導体52を用いて、配線基板1において高いインダクタンスを有するインダクタンスを形成し得ると考えられる。磁性体7におけるZ方向と直交する方向の幅W、すなわち第3貫通孔23の内径は、例えば、350μm以上、450μm以下である。例えば120μm以上、190μm以下の内径Rを有する第2貫通孔22内に形成される第2層間接続導体52の周囲において効率よく磁束密度を高めることができると考えられる。
【0040】
磁性体7は、少なくとも、絶縁層3よりも磁性を帯び易い材料を含んでいる。磁性体7は、例えば、鉄、酸化鉄、コバルト、又はニッケルなどの強磁性を示す材料を含んでいる。磁性体7は、これらの強磁性を示す材料の他に、エポキシ樹脂又はウレタン樹脂などの樹脂材料を含んでいてもよい。
【0041】
なお、図1などに例示の配線基板1は、第1層間接続導体51及び第2層間接続導体52を備えているが、実施形態の配線基板は、磁性体7を貫かない第1層間接続導体51だけを備えていてもよく、磁性体7を貫く第2接続導体52だけを備えていてもよい。
【0042】
つぎに、図4を参照して、本発明の他の実施形態が説明される。図4には、他の実施形態の一例である配線基板10が示されている。図4に示されるように、配線基板10は、コア基板11と、ビルドアップ層12と、ビルドアップ層13とを備える多層配線基板である。コア基板11は、図1に例示される一実施形態の配線基板1の絶縁層3及び2つの導体層4によって構成されている。絶縁層3の第1面3a上にビルドアップ層12が形成され、第2面3b上にビルドアップ層13が形成されている。ビルドアップ層12及びビルドアップ層13は、それぞれ、コア基板11上に積層されている1組以上の絶縁層及び導体層を含んでいる。
【0043】
図4の例においてビルドアップ層12は、絶縁層3の第1面3a上に積層されている絶縁層14、絶縁層14上に形成されている導体層16、並びに、絶縁層14及び導体層16の上に交互に積層されている2つの絶縁層15及び2つの導体層17を含んでいる。ビルドアップ層13は、絶縁層3の第2面3b上に積層されている絶縁層14、絶縁層14上に形成されている導体層16、並びに、絶縁層14及び導体層16の上に交互に積層されている2つの絶縁層15及び2つの導体層17を含んでいる。
【0044】
なお、本実施形態の配線基板10の説明では、配線基板10の厚さ方向においてコア基板11から遠い側は「上側」もしくは「上方」、又は単に「上」とも称され、コア基板11に近い側は「下側」もしくは「下方」、又は単に「下」とも称される。さらに、各導体層及び各絶縁層において、コア基板11と反対側を向く表面は「上面」とも称され、コア基板11を向く表面は「下面」とも称される。
【0045】
配線基板10では、さらに、ビルドアップ層12及びビルドアップ層13それぞれの上に、ソルダーレジスト19が形成されている。ソルダーレジスト19には、ビルドアップ層12、13それぞれの最表層の導体層17の一部を露出させる開口19aが設けられている。開口19a内には、例えばはんだなどの導電性の材料を用いてバンプ17bが形成されている。
【0046】
また、ビルドアップ層12、13それぞれの絶縁層14には、絶縁層14を貫通するビア導体18aが形成されている。ビア導体18aは、絶縁層14を挟む導体層4と導体層16とを接続している。さらに、ビルドアップ層12、13それぞれの絶縁層15には、絶縁層15を貫通するビア導体18bが形成されている。ビア導体18bは、絶縁層15を挟む導体層17同士、又は絶縁層15を挟む導体層16と導体層17とを接続している。
【0047】
絶縁層14及び絶縁層15は、絶縁層3と同様に、任意の絶縁性樹脂によって形成される。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などが例示される。絶縁層14、15は、シリカなどの無機フィラーを含んでいてもよく、ガラス繊維やアラミド繊維などによる織布状又は不織布状の補強材を含んでいてもよい。図4の例では、絶縁層14は補強材141を含んでいる。
【0048】
導体層16、17は、導体層4と同様に、銅又はニッケルなどの任意の金属によって形成される。導体層16、17それぞれは、金属箔、無電解めっき膜若しくはスパッタリング膜、及び/又は電解めっき膜などを含む多層構造を有し得る。また、導体層16、17は、それぞれ、任意の導体パターンを含み得る。ビルドアップ層12、13それぞれの最表層の導体層17は、外部の電子部品や配線基板などが接続される接続パッド17aを含んでいる。接続パッド17aを露出させるようにソルダーレジスト層19に開口19aが設けられており、接続パッド17a上にバンプ17bが形成されている。
【0049】
ビア導体18a、18bは、それぞれの上側の導体層16又は導体層17と一体的に形成されており、例えば無電解めっき膜及び電解めっき膜によって形成されている。図4の例では、一部のビア導体18aは、コア基板11のスルーホール導体(第1層間接続導体51又は第2層間接続導体52)の上に積層されている。
【0050】
図4の例のように、第1層間接続導体51及び/又は第2層間接続導体52を貫通孔(第1貫通孔21又は第2貫通孔22)内に含む絶縁層3は、多層配線基板のコア基板を構成していてもよい。絶縁層3及び2つの導体層4によって構成されるコア基板11の両面それぞれには、3組よりも少ない、又は3組よりも多い、絶縁層及び導体層が積層されていてもよい。
【0051】
つぎに、図1の配線基板1の製造方法の一例が、図5A図5Gを参照して説明される。
【0052】
図5Aに示されるように、配線基板1の絶縁層3となる1000μm以上、2000μm以下の厚さを有する絶縁層と、この絶縁層の両表面にそれぞれ積層された金属箔40を含む出発基板1aが用意される。出発基板1aの絶縁層は、例えばエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成されており、ガラス繊維などによって構成される補強材31(図1参照)を含んでいる。
【0053】
そして、出発基板1aを貫通する貫通孔(第3貫通孔23)が形成される。第3貫通孔23は、第2層間接続導体が形成されるべき所定の位置に形成される。第3貫通孔23は、例えば、炭酸ガスレーザー光が照射されるレーザー加工、又はドリル加工などによって形成される。レーザー光のスポット径、又はドリル径は、形成される第3貫通孔23が所定の内径、例えば350μm以上、450μm以下の内径を有するように選択される。
【0054】
図5Bに示されるように、第3貫通孔23の内部が、磁性体7で充填される。第3貫通孔23の内壁面が磁性体7によって覆われる。例えば、鉄、酸化鉄、又はコバルトなどの強磁性を示す材料からなる粒子を含むエポキシ樹脂又はウレタン樹脂などが、絶縁層3の第1面3a側、及び第1面3a側と反対側の第2面3b側のいずれか又は両方から注入される。必要に応じて、第1面3a側及び第2面3b側のうちの一方から供給されたエポキシ樹脂などが、第3貫通孔23を通じて他方から吸引されてもよい。第3貫通孔23内に注入された磁性材を含む樹脂は、必要に応じて加熱などによって固化される。その結果、第3貫通孔23内を充填する磁性体7が形成される。
【0055】
磁性体7における絶縁層3の第1面3a側及び第2面3b側それぞれの端面は、必要に応じて化学機械研磨などの任意の方法で研磨される。磁性体7の両端面それぞれと、第1面3a上及び第2面3b上それぞれの金属箔40の表面とが、好ましくは略面一にされる。
【0056】
図5Cに示されるように、第1貫通孔21及び第2貫通孔22が形成される。第1貫通孔21は第1層間接続導体が形成されるべき所定の位置に形成される。第2貫通孔22は、第2層間接続導体が形成されるべき所定の位置、すなわち、第3貫通孔23内の磁性体7を貫通する位置に形成される。
【0057】
第1及び第2の貫通孔21、22は、第3貫通孔23と同様に、例えば、炭酸ガスレーザー光によるレーザー加工、又はドリル加工などによって形成される。レーザー光のスポット径、又はドリル径は、形成される第1貫通孔21及び第2貫通孔22が所定の内径R、例えば120μm以上、190μm以下の内径Rを有するように、選択される。
【0058】
図5Dに示されるように、第1層間接続導体51及び第2層間接続導体52が、第1貫通孔21内及び第2貫通孔22内にそれぞれ形成される。図5Dでは各層間接続導体51、52の図示が簡略化されているが、前述した第1金属膜501及び第2金属膜502(図3A及び図3B参照)が、第1及び第2の貫通孔21、22それぞれの内壁面に形成される。その結果、それぞれ2層の金属膜からなる第1層間接続導体51及び第2層間接続導体52が形成される。第1及び第2の金属膜501、502は、絶縁層3の第1面3aの上及び第2面3bの上にも形成され、第1面3a及び第2面3bそれぞれに、図5Cの金属箔40を含む3層構造の金属層500が形成される。
【0059】
各層間接続導体51、52を構成する各金属膜は、例えばスパッタリングや無電解めっき、又は、電解めっきによって形成される。無電解めっきや電解めっきの条件は、各層間接続導体51、52による、第1貫通孔21又は第2貫通孔22の内部の体積占有率が、45%以上、70%以下となるように調整される。その結果、第1貫通孔21又は第2貫通孔22の内部に対する体積占有率が、30%以上、55%以下となる中空部5aが残される。無電解めっきや電解めっきの条件は、各層間接続導体51、52を構成する金属膜の厚さT5が、例えば25μm以上、40μm以下となるように調整されてもよい。各層間接続導体51、52は、例えば銅又はニッケルなどの金属によって形成される。
【0060】
図5Eに示されるように、中空部5aが樹脂体6で充填される。例えば、エポキシ、アクリル又はフェノールなどの樹脂が、絶縁層3の第1面3a側及び第2面3b側のいずれか又は両方から中空部5aに注入される。必要に応じて、第1面3a側及び第2面3b側のうちの一方から供給されたエポキシ樹脂などが他方から吸引されてもよい。中空部5aに注入された樹脂は、必要に応じて加熱などによって固化される。その結果、樹脂体6が形成される。
【0061】
必要に応じて、樹脂体6における第1面3a側及び第2面3b側それぞれの端面が、化学機械研磨などの任意の方法で研磨される。樹脂体6の両端面それぞれと、第1面3a側及び第2面3b側それぞれの金属層500の表面とが、好ましくは略面一にされる。
【0062】
図5Fに示されるように、絶縁層3の第1面3a上及び第2面3b上に導体層4が形成される。具体的には、図5Eの金属層500上及び樹脂体6上に、前述した第3金属膜43及び第4金属膜44(図3A及び図3B参照)が、例えばスパッタリングや無電解めっき、又は電解めっきによって形成される。第1及び第2の層間接続導体51、52それぞれに対する所謂蓋めっき膜が形成される。その結果、5層構造を有し得る導体層4が形成される。その後、導体層4上に、導体層4が有するべき導体パターンに応じた開口M1を有するエッチングマスクMが形成される。
【0063】
図5Gに示されるように、導体層4がパターニングされる。導体層4の不要部分が、例えばウェットエッチングやドライエッチングによって除去される。その結果、図1に示される、各層間接続導体51、52を備える配線基板1が完成する。
【0064】
なお、先に参照した図4に例示の配線基板10は、図5Gの状態の配線基板1の一面にビルドアップ層12を形成すると共に、他面にビルドアップ層13を形成することによって形成される。ビルドアップ層12、13それぞれは、例えば、フィルム状のエポキシ樹脂若しくはプリプレグなどの積層による絶縁層の形成と、アディティブ法又はサブトラクティブ法などの任意の方法による導体層及びビア導体の形成とを繰り返すことによって形成され得る。
【0065】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。実施形態の配線基板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。
【符号の説明】
【0066】
1、10 配線基板
11 コア基板
12、13 ビルドアップ層
14、15 絶縁層
16、17 導体層
3 絶縁層
3a 第1面
3b 第2面
4 2つの導体層
5 1以上の層間接続導体
51 第1層間接続導体
52 第2層間接続導体
5a 中空部
21 第1貫通孔
22 第2貫通孔
23 第3貫通孔
6 樹脂体
7 磁性体
D 各層間接続導体のZ方向の長さ
R 第1及び第2の貫通孔の内径
T5 層間接続導体を構成する金属膜の厚さ
W 磁性体の幅
Z 絶縁層の厚さ方向
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G