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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057239
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】クランチ性を有する香辛料加工品
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/14 20160101AFI20220404BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A23L27/14
A23G3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165385
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】北中 進介
(72)【発明者】
【氏名】塚本 慎平
(72)【発明者】
【氏名】山本 詞衣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潔
(72)【発明者】
【氏名】長田 健二
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
【テーマコード(参考)】
4B014
4B047
【Fターム(参考)】
4B014GB11
4B014GK01
4B014GL10
4B014GP01
4B047LB09
4B047LE07
4B047LF09
4B047LG23
4B047LG43
4B047LG44
4B047LP02
4B047LP07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】そのまま食べることができ、香りや味も良い、クランチ性を有するホール状香辛料加工品及びその製造方法、並びに、前記香辛料加工品を含有する、香辛料の香りや味を有する食品組成物を提供すること。
【解決手段】糖質が含浸されたホール状の香辛料の焼成物であり、前記香辛料が花椒、山椒及び胡椒からなる群より選ばれる1種以上であり、前記香辛料100重量部に対して前記糖質が5~30重量部含浸されており、水分値が5重量%未満である香辛料加工品、並びに前記香辛料加工品及び15重量%以上の油脂を含有する食品素材を混合してなる食品組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質が含浸されたホール状の香辛料の焼成物であり、
前記香辛料が花椒、山椒及び胡椒からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記香辛料100重量部に対して前記糖質が5~30重量部含浸されており、
水分値が5重量%未満である、香辛料加工品。
【請求項2】
前記糖質中の二糖類の割合が70重量%以上である、請求項1に記載の香辛料加工品。
【請求項3】
前記香辛料加工品の破断強度が0.5~5kgの範囲にある請求項1又は2に記載の香辛料加工品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の香辛料加工品及び15重量%以上の油脂を含有する食品素材を混合してなる、食品組成物。
【請求項5】
前記食品素材が種実類又はスナック菓子である、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
花椒、山椒及び胡椒からなる群より選ばれる1種以上のホール状の香辛料の乾燥物と糖質を含む溶液とを接触させ、次いで、150℃以上で加熱乾燥する工程を有する、請求項1~3のいずれかに記載の香辛料加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香辛料加工品に関する。詳しくは、クランチ性を有するそのまま食べることのできる香辛料加工品及びその製造方法、並びに前記香辛料加工品を含有する食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
「麻」と表現されるように、花椒は中国で古くから使用される香辛料である。近年、日本でもその爽やかな香りと独特の痺れる刺激が人気となり、料理や加工食品に様々な形で使用されるようになった。花椒や山椒、胡椒のような刺激のある香辛料(スパイス)は、香りだけでなく刺激もダイレクトに味わえるように、粉末で料理に混ぜ込んで食べる場合が多い。また、挽きたての香りを楽しめるように、ミル付き容器の状態で販売されているものもある。そのように、香辛料は粉末状にしてしまうと香りが抜けていく問題がある。そんな中、胡椒をホール状のまま食べて味わえるような提案もされている(特許文献1)。前記技術によれば、カリッとした食感があり、割れた瞬間に香ばしい香りを発する胡椒が得られる。しかし、油溶性の香気成分が油中に出てしまうことや、小粒の香辛料を産業的に大量にフライするのはハンドリングが難しい等の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-96591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、そのまま食べることができ、香りや味も良い、クランチ性を有するホール状香辛料加工品及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
また、本発明の他の目的は、前記香辛料加工品を含有する、香辛料の香りや味を有する食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ホール状の香辛料に糖質を含浸させ、その後焼成することにより、香辛料の香りや味が良く、クランチ性も有した香辛料加工品を作製し得ることを見出して、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
(1)糖質が含浸されたホール状の香辛料の焼成物であり、
前記香辛料が花椒、山椒及び胡椒からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記香辛料100重量部に対して前記糖質が5~30重量部含浸されており、
水分値が5重量%未満である、香辛料加工品、
(2)前記糖質中の二糖類の割合が70重量%以上である、前記(1)に記載の香辛料加工品、
(3)前記香辛料加工品の破断強度が0.5~5kgの範囲にある前記(1)又は(2)に記載の香辛料加工品、
(4)前記(1)~(3)のいずれかに記載の香辛料加工品及び15重量%以上の油脂を含有する食品素材を混合してなる、食品組成物、
(5)前記食品素材が種実類又はスナック菓子である、前記(4)に記載の食品組成物、
(6)花椒、山椒及び胡椒からなる群より選ばれる1種以上のホール状の香辛料の乾燥物と糖質を含む溶液とを接触させ、次いで、150℃以上で加熱乾燥する工程を有する、前記(1)~(3)のいずれかに記載の香辛料加工品の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の香辛料加工品は、糖質の含浸及び焼成により、香辛料に特有の香りや味が引き出され、そのまま食べられるカリッとしたクランチ性のある食感を有したものである。また、本発明の香辛料加工品は、他の食品素材と併用することで、香辛料の香りや味を楽しむことができる食品組成物を作製することができる。例えば、本発明の香辛料加工品をピーナッツ等の種実類と油脂存在下で共存させると、種実類にも香辛料の香りが移行し、食感も相まって嗜好性の高い食品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0009】
本発明の香辛料加工品は、糖質が含浸されたホール状の香辛料の焼成物であり、
前記香辛料が花椒、山椒及び胡椒からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記香辛料100重量部に対して前記糖質が5~30重量部含浸されており、
水分値が5重量%未満であることを特徴とする。
【0010】
本発明に用いる香辛料の種類は、花椒、山椒及び胡椒からなる群より選ばれる1種以上である。中でも、原料の花椒については、ホール状であっても食感にクランチ性がなく、そのまま食べる習慣がないのに対し、本発明の香辛料加工品では、ホール状の花椒の香りや味だけでなく、カリッとしたクランチ性のある食感を楽しむことができる点で、従来にない食品となっている。
【0011】
また、ホール状とは、実の形のままの状態を指すが、割れ欠けのあるものや、中身が落ちて殻だけの状態のものも含み、いわゆる粉砕・抽出等の加工をしていないものを指す。
【0012】
また、本発明に用いるホール状の香辛料は、糖質を含浸させるために、乾燥物であることが好ましい。
【0013】
本発明の香辛料加工品は、前記香辛料100重量部に対して糖質が5~30重量部含浸されている。この含浸量は、具体的には、ホール状の香辛料を、糖質を含む溶液中に接触させた後に乾燥させる工程において、工程前後の重量変化を測定することで計算できる。
【0014】
前記糖質としては、砂糖、乳糖、果糖、粉末水飴、粉飴、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元水飴、マルトース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロース、パラチノース、還元パラチノース等が挙げられる。中でも食感や作業性の点で、砂糖、乳糖、マルトース、トレハロース、パラチノース等の二糖類が好ましい。前記糖質は、単独でもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0015】
また、本発明で用いる糖質を含む溶液としては、糖質の水溶液、糖液、液糖(全砂糖液糖、転化糖液糖及びこれらの混合液糖、濃厚砂糖溶液に他の糖質を混合したもの、異性化糖と、砂糖溶液の混合したもの、異性化糖など)が好ましく、中でも、糖質を含む溶液中の前記糖質における二糖類の割合が70重量%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の香辛料加工品の水分値は、5重量%未満である。水分値が5重量%を超えると、香辛料加工品がクランチ性を有する食感とならず、そのまま食するに適さないものになる。
【0017】
本発明の香辛料加工品は、クランチ性のある食感を有する。この食感を有する指標として、破断強度が挙げられる。例えば、テクスチャー・アナライザー(「TextureAnalyzer TA.XT.plus」、StableMicro Systems社製)を用いて、直径2mmの円柱プローブ(スピード2mm/s)を0.5~5kgの範囲で香辛料加工品に力を加えると、一般的なスナック菓子と同様に割れて、2個以上に分解する。本発明では、前記プローブの押圧によって香辛料加工品が2個以上に分解される時の強度を破断強度とする。
【0018】
本発明の香辛料加工品の製造方法としては、ホール状の香辛料の乾燥物と糖質を含む溶液とを接触させ、次いで、加熱乾燥することで焼成する方法が挙げられる。
【0019】
香辛料と糖質を含む溶液との接触方法としては、糖質を含む溶液へ香辛料を浸漬したり、糖質を含む溶液を香辛料へ噴霧したりする等が挙げられるが、安定して組織内部に入り込ませるためには浸漬の方法が好ましい。例えば、ブリックス(Bx.)10~40程度の糖液に10~20分浸漬することが挙げられる。
【0020】
加熱乾燥条件としては、150℃以上が好ましい。加熱乾燥温度が150℃未満では、糖質と香辛料とのメイラード反応が不十分で、香辛料加工品の香り、味及び食感のいずれかが劣るものとなる。例えば、熱風オーブンで160~180℃で10~60分間加熱することが挙げられる。
【0021】
本発明の香辛料加工品は、15重量%以上の油脂を含有する食品素材と混合することで、油脂を介して食品素材に香りや味が移行し、嗜好性の高い食品組成物となる。
【0022】
前記食品素材は、ピーナッツ・カシューナッツ・アーモンド等の種実類、小麦・米・とうもろこし等の穀物類、じゃがいも・さつまいも等のイモ類、大豆・えんどう豆等の豆類、肉類、野菜類等を原料としたものであり、原料由来の油脂、もしくはフライ、油脂の噴霧、油脂の練り込み等の工程によって、最終的に15重量%以上の油脂を含有する食品素材となればよい。中でも、本発明の香辛料加工品と組み合わせることで軽食やおつまみとして美味しく食べられるという観点から、前記種実類、もしくは穀物類・イモ類・豆類・肉類・野菜類を原料としてフライした(油で揚げた)スナック菓子を、前記食品素材として使用することが好ましい。
【0023】
前記食品組成物中における前記香辛料加工品の含有量としては、特に限定はないが、香辛料に由来する香りや味を感じる観点から、その下限は0.5重量%以上が好ましい。また、前記香辛料加工品の含有量の上限については、特に限定はないが、食品素材の味を楽しむ観点から、50重量%以下が好ましい。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0025】
(実施例1)
水あめ(日本コーンスターチ株式会社製「ハイマルトースM70」)を水に薄めてBx.30、液温30℃に調整し、そこにホール状の花椒(エスビー食品株式会社製)を15分間浸漬させた。
その後、網に上げ、表面の水溶液を振動でふるい落とし、170℃で15分間熱風乾燥させた。
得られた香辛料加工品は、加工前の重量との比較によって、香辛料100重量部に対して糖質が15重量部含浸していることがわかった。
得られた香辛料加工品は、花椒の香りや味が引き出され、そのまま食べられるカリッとしたクランチ性のある食感を有したものとなった。
【0026】
また、得られた香辛料加工品5重量部を炒ったピーナッツ95重量部と混合し、塩をふりかけてアルミ袋の中に1週間静置させて味付けピーナッツを得た。得られた味付けピーナッツは、花椒の香りや味が染み込んだ嗜好性の高いものとなった。
【0027】
(実施例2~6、比較例1)
実施例1の糖質を表1の糖質に変え、実施例1と同様に香辛料加工品を作製した。比較例1を除くいずれの香辛料加工品も、香辛料100重量部に対して糖質が5~30重量部含浸していた。
【0028】
実施例2~6で得られた香辛料加工品は、いずれも花椒の香りや味が引き出され、そのまま食べられるカリッとしたクランチ性のある食感を有したものとなった。
【0029】
一方、比較例1は、風味の出方も悪く、クランチ性も有しない、そのままで食すには適さないものとなった。
【0030】
<破断強度の評価>
得られた香辛料加工品についての破断強度を測定するために、テクスチャー・アナライザー(「TextureAnalyzer TA.XT.plus」、StableMicro Systems社製)を使用した。下記に記載した条件で測定を行った。
測定プローブ:P/2
測定:プローブが底面に到達するまで降下させる。
プローブスピード:2mm/s
測定温度:20℃
破断強度:食品が割れて2個以上に分解されたときの力(kg)
得られた香辛料加工品1つあたり5回の測定を行い、その平均値を破断強度とし、得られた結果を表1に示す。
【0031】
<官能試験>
実施例1~6及び比較例1で得られた香辛料加工品の官能試験を以下の基準に基づいて行った。
なお、パネラーとして3名で香辛料加工品を食べ、得られた評価のうち、最多の評価を結果として表1に示す。
〇:香辛料の香りや味を強く感じることができ、かつカリッとしたクランチ性のある食感を有するもの。
△:香辛料の香りや味の他に、焦げなどの異臭や異味を感じたり、または香辛料どうしがくっついてクランチ性が発揮され難いもの。
×:クランチ性がないもの。
【0032】
【表1】
【0033】
(実施例7、8)
ホール状の花椒の代わりに、ホール状の山椒(エスビー食品株式会社製、実施例7)、ホール状の黒胡椒(エスビー食品株式会社製、実施例8)を用いて実施例1と同様に香辛料加工品を作製した。いずれの香辛料加工品も、香辛料100重量部に対して糖質が5~30重量部含浸していた。得られた香辛料加工品は、香辛料の香りや味が引き出され、そのまま食べられるカリッとしたクランチ性のある食感を有したものとなった。