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  • 特開-マイクロレンズの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057386
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】マイクロレンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20220404BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220404BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H01L27/146 D
G03F7/20 501
G02B3/00 A
G02B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165615
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤田 慶
【テーマコード(参考)】
2H197
4M118
【Fターム(参考)】
2H197AB13
2H197BA11
2H197CE10
2H197HA08
4M118AB01
4M118AB03
4M118BA03
4M118CA27
4M118EA14
4M118GC07
4M118GD04
4M118GD06
(57)【要約】
【課題】高さが異なるマイクロレンズを、工程数を増やす事無く、形成可能なマイクロレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、固体撮像素子用の半導体基板4上に形成されたポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層3を、第一のフォトマスク2を用いて露光する事によって、現像により、個々のマイクロレンズとなる分離した未露光の前記感光性樹脂層からなるパターンを形成可能な第一の露光部6を形成する工程と、前記未露光の感光性樹脂層からなるパターンに対して、第二のフォトマスク2´を用いて、第一のフォトマスクで露光した露光強度より弱い露光強度で露光する事によって、現像により、未露光の感光性樹脂層より低い感光性樹脂層からなるパターンを形成可能な第二の露光部7を形成する工程と、を備えているマイクロレンズの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の高さを有する固体撮像素子用マイクロレンズの製造方法であって、
少なくとも、
半導体基板上に形成されたポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層を、第一のフォトマスクを用いて露光する第一露光工程と、
前記第一露光工程後に第二のフォトマスクを用いて露光する第二露光工程を備え、
前記マイクロレンズは、第一マイクロレンズと前記第一マイクロレンズよりも高さの低い第二マイクロレンズを少なくとも有し、
前記第一のフォトマスクはバイナリマスクであり、前記マイクロレンズの母体となる樹脂パターンに対応する遮光部と、前記樹脂パターン間の区分け線に対応する開口部を備え、
前記第二のフォトマスクは階調マスクであり、前記樹脂パターンのうち、前記第二マイクロレンズの位置に対応する透過部を備え、前記透過部を透過する露光光の露光強度は前記開口部を透過する露光光の露光強度より弱い事を特徴とする固体撮像素子用マイクロレンズの製造方法。
【請求項2】
前記第二のフォトマスクがグレートーンマスクである事を特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子上に形成されるマイクロレンズの製造方法に関する。更に詳しくは、1つの固体撮像素子上に異なる高さのマイクロレンズを容易に形成する事ができるマイクロレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子上にカラーフィルタを形成したイメージセンサにおいて、受光部への入射光量を増加させ、固体撮像素子の感度を向上させる目的で、カラーフィルタの上にマイクロレンズが形成される。
【0003】
近年、別の光学系を使用した専用のオートフォーカス検出機構を使用せず、固体撮像素子の中にオートフォーカスセンサを組み込んだ像面位相差オートフォーカス方式の固体撮像素子が製品化されている。この固体撮像素子においては、色毎にマイクロレンズの高さを変更する事がある。
【0004】
マイクロレンズの高さを変更する方法としては、画素毎に透過率を制御したグレースケールマスクを使用する事によりマイクロレンズの高さを制御する方法や、異なる高さ毎にマイクロレンズを形成する作業を全ての形状について行う方法、などが行なわれている。
【0005】
しかしながら、グレースケールマスクは高価であり、また工程数が増える為、高コストになる問題がある。また、レンズの高さを目的に合わせて自由自在に形成する事が困難である事、また隣接する画素のマスク透過率が変わると、マイクロレンズを同じ高さで形成する必要がある場合であっても異なる高さとなってしまう、などの問題もある。
【0006】
この様に、1つの固体撮像素子の面内で、例えば、高さ(厚さ)が異なるマイクロレンズを、工程数を増やすことなく形成する事は容易ではなかった。
【0007】
その様な問題点を解決する先行技術としては、特許文献1に、色毎に感度特性の最適化を図る為、色毎に異なる高さのマイクロレンズを形成する技術が開示されている。
【0008】
この技術は、緑色カラーフィルタに対応した部位にドライエッチ転写法により、まず1色目のマイクロレンズを形成する。具体的には、まずマイクロレンズ層を全体に塗布し、その層の緑色カラーフィルタに対応した部位に感光性レジストパターンを形成した後、軟化温度以上の加熱処理によって、現像により形成されたレジストパターンをレンズ形状に形成する。更にドライエッチングによって、そのレンズ形状をマイクロレンズ層に転写する事によってマイクロレンズを形成する。この様にして形成したマイクロレンズの高さ(厚さ)は緑色に対する感度を最適にする様に形成される。
【0009】
次に、青色に対する感度を最適にするマイクロレンズを形成する。具体的には、感光性マイクロレンズ層を全体に塗布し、その層の青色カラーフィルタに対応した部位に感光性マイクロレンズ層のパターンを形成し、軟化温度以上の加熱処理によって、マイクロレンズを形成する。この時に形成されるマイクロレンズの高さは、青色の感度を最適化する様に形成される。
【0010】
最後に、同様にして、赤色の感度を最適化する高さを備えたマイクロレンズを赤色カラーフィルタに対応した部位に形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014-154662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この技術においては、色毎に固体撮像素子の感度を最適化する為、2種類以上の異なる高さのマイクロレンズを形成可能とする優れた技術であるが、ドライエッチ転写法と、感光性マイクロレンズ層をパターニング後、感光性マイクロレンズ層を構成する樹脂の軟化温度以上の加熱処理を行う方法の2つの工程を使用する必要があるため、工程が長くなるデメリットがある。
【0013】
上記の事情に鑑み、本発明は、高さが異なるマイクロレンズを、工程数を増やす事無く、形成可能なマイクロレンズの製造方法を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決する手段として、本発明の第一の態様は、固体撮像素子用の半導体基板上に、ポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィ法により、高さが異なる2種類以上の樹脂パターンを形成後、樹脂パターンの軟化温度以上に加熱処理する事によりマイクロレンズを形成するマイクロレンズの製造方法であって、
少なくとも、
前記半導体基板上に形成されたポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層を、第一のフォトマスクを用いて露光する事によって、分離した個々のマイクロレンズとなる未露光のポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層からなるパターンを現像により形成可能な第一の露光部を形成する工程と、
前記未露光のポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層からなるパターンに対して、第二のフォトマスクを用いて、第一のフォトマスクで露光した露光強度より弱い露光強度で露光する事によって、未露光のポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層より低いポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層からなるパターンを現像により形成可能な第二の露光部を形成する工程と、を備えている事を特徴とするマイクロレンズの製造方法である。
【0015】
また、前記第一のフォトマスクがバイナリマスクであり、前記第二のフォトマスクがグレートーンマスクであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第一の態様におけるマイクロレンズの製造方法によれば、少なくとも、現像により、個々のマイクロレンズとなる分離した未露光のポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層からなるパターンを形成可能な第一の露光部を形成する工程と、現像により、未露光のポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層より低いポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層からなるパターンを形成可能な第二の露光部を形成する工程と、を備えている。その為、形状が異なるマイクロレンズを、工程数を増やす事無く、形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のマイクロレンズの製造方法を説明する説明図であって、(a)は半導体基板上に形成されたマイクロレンズ用感光性樹脂層を、フォトマスクAを用いて露光する状態を例示する断面図、(b)は露光によってマイクロレンズ用感光性樹脂層に露光部A(感光した部分)と未露光部(感光していない部分)が形成された状態を例示する断面図、(c)は未露光部を、フォトマスクBを用いて露光する状態を例示する断面図、(d)は(c)によって未露光部A´に露光部Bが形成された状態を例示する断面図、(e)は現像により、未露光部A´に高いマイクロレンズ用樹脂パターンが形成され、露光部Bに低いマイクロレンズ用樹脂パターンが形成された状態を例示する断面図、(f)は加熱処理によって、高いマイクロレンズ用樹脂パターンが高いマイクロレンズになり、低いマイクロレンズ用樹脂パターンが低いマイクロレンズとなった状態を例示する断面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のマイクロレンズの製造方法について、図1を用いて説明する。
本発明のマイクロレンズの製造方法は、固体撮像素子用の半導体基板4(図1(a)参照)上に、ポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂を用いて、高さが異なる2種類以上のマイクロレンズ10(図1(f)参照)を形成するマイクロレンズの製造方法である。なお、ここで高さとは、高さ以外に、マイクロレンズの断面形状や平面視における形状を含める事であっても良い。
【0019】
図1(a)は、固体撮像素子となる半導体基板4の上に、マイクロレンズ用感光性樹脂の塗液を塗布し、乾燥する事によって形成したマイクロレンズ用感光性樹脂層3に、第一のフォトマスク2を用いて露光光1を露光する工程を例示した断面説明図である。
【0020】
第一のフォトマスク2は、光透過部15と遮光部16を備える。マイクロレンズ用感光性樹脂層3からマイクロレンズの母体となる樹脂パターンを形成する為、樹脂パターン間のマイクロレンズ用感光性樹脂層3を除去した区分け線を形成する。光透過部15は区分け線に対応した開口部である。遮光部16は露光光を遮る領域であり、樹脂パターンに対応している。すなわち第一のフォトマスク2はマイクロレンズ用感光性樹脂層3に形成するパターンを備えたフォトマスクである。
【0021】
半導体基板4には、各受光素子の上にカラーフィルタ層(不図示)が形成されている。それらの受光素子の上に形成されたカラーフィルタに対応してマイクロレンズが形成される。マイクロレンズは、1画素に割り当てられた面積に入射する光をできるだけ多く受光素子に入射させる機能を果たす光学的な部品である。その為、使用される樹脂には、できるだけ高い光透過率が求められる。
【0022】
マイクロレンズ用感光性樹脂としては、フェノール系やフェノールノボラック系感光性樹脂やアクリル系の感光性樹脂、アルカリ可溶性のポリスチレン樹脂などが代表的に用いられる。あるいは、低分子量のメラミン-エポキシ共重合物が前記樹脂の硬化剤として用いられることがある。
ポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂としては、ポジ型の感光性樹脂であって、透明性が良好で、且つメルトフロー性(樹脂の軟化温度以上の加熱により軟化した際の流動性)が良好な樹脂であれば、特に限定されない。例えば、JSR MFR-512(JSR製)の様なポジ型の感光性樹脂を好適に使用する事ができる。
【0023】
図1(b)は、(a)で行った露光により、ポジ型のマイクロレンズ用感光性樹脂層3が、第一のフォトマスク2の光透過部15を通って露光された部分である第一の露光部6が形成された状態を示している。同時に、第一のフォトマスク2の遮光部16に対応した部分は、未露光部6´となる。この様にして、第一の露光後の基板5が得られる。
【0024】
図1(c)は、第一の露光後の基板5に対して、第二のフォトマスク2´を用いて、露光光1を露光する状況を例示した断面説明図である。第二のフォトマスク2´は光透過部15´と遮光部16´を備えた階調マスクである。露光光1は、第二のフォトマスク2´の光透過部15´を通って第一の露光後の基板5に露光される。光透過部15´は、第二のフォトマスク2´における遮光膜が除去された開口部(ガラス基板だけの部分)より光透過率が低く、遮光部16´より光透過率が高い領域である。光透過率を低下させる手段
としては、光学濃度を低下させた半透明膜を開口部に使用する方法と、開口部に解像できない微細なスリットを形成する方法と、が知られている。前者はハーフトーンマスク、後者はグレートーンマスクと呼ばれている。本発明の第一の態様において使用する第二のフォトマスク2´は、ハーフトーンマスクとグレートーンマスクの何れであっても構わない。
【0025】
図1(d)は、図1(c)における露光によって得られた、第二の露光部7が形成された第二の露光後の基板8を例示している。第二のフォトマスク2´の光透過部15´の光透過率は、第一のフォトマスク2の光透過部15の光透過率より小さくなっている。その為、第二の露光部7を露光する際の露光強度は、第一の露光部6を露光する際の露光強度より弱いものとなっている。第二の露光部7の未露光部を弱く露光する事で、前記未露光部6´(図1(b)参照)の一部のみが現像処理によって除去され、その部分の樹脂層の厚さを薄くする事が可能となる。
【0026】
図1(e)は、第二の露光後の基板8を現像処理した後に形成されたマイクロレンズ用樹脂パターンの断面を例示している。図1(d)の第二の露光部7に対応する部分には、高さが低いマイクロレンズ用樹脂パターン12が形成される。一方、第二の露光後の基板8において、露光されなかった部分(第二のフォトマスク2´の遮光部16´に対応する第二の未露光部7´)には、現像処理によって殆ど現像が進まない為、高いマイクロレンズ用樹脂パターン11が形成される。
【0027】
以上の様にして、第一のフォトマスク2を使用して半導体基板4上に形成したマイクロレンズ用感光性樹脂層3を露光して得た第一の露光後の基板5に対して、第二のフォトマスク2´を使用して、所望の位置に配置されている第一の露光後の基板5の未露光部6´を選択して露光する事により、その露光された未露光部6´、即ち第二の露光後の基板8の第二の露光部7の樹脂パターンの高さを低くする事ができる。
【0028】
更に、第二の露光後の基板8の第二の未露光部7´に対して、同様にして、露光強度が異なる露光を行う事ができる。この様にして、選択的に、未露光の部分に露光強度が異なる部分を必要なだけ形成して行く事により、更に高さが異なる樹脂パターンを形成して行く事ができる。
【0029】
図1(f)は、熱フローにより高さの異なるマイクロレンズを形成する工程を示している。すなわち、上述の工程により得られた高さが異なるマイクロレンズ用樹脂パターン9を、樹脂パターン9の軟化温度以上に加熱し、樹脂の変形を起こす。その結果、樹脂パターン9をレンズ形状に変化させ、高さが相対的に高いマイクロレンズ13および高さが相対的に低いマイクロレンズ14を形成する事ができる。図1では2種類の高さのあるマイクロレンズについて記載したが、マイクロレンズ用樹脂パターン9の高さを変えることで3種類以上の高さの異なるマイクロレンズを形成できる。
【0030】
以上の様にして、2種類以上の高さが異なるマイクロレンズを、固体撮像素子用の半導体基板4上に形成する事ができる。
【0031】
また、使用するフォトマスク2、2´の設計によって、1画素の平面視の形状やサイズを変更する事も可能である。その為、2種類以上の高さだけでなく、平面視の形状やサイズを含めて変更する事ができる。
【符号の説明】
【0032】
1・・・露光光
2・・・第一のフォトマスク
2´・・・第二のフォトマスク
3・・・マイクロレンズ用感光性樹脂層
4・・・半導体基板
5・・・第一の露光後の基板
6・・・第一の露光部
6´・・・未露光部
7・・・第二の露光部
7´・・・第二の未露光部
8・・・第二の露光後の基板
9・・・マイクロレンズ用樹脂パターン
10・・・マイクロレンズ
11・・・高いマイクロレンズ用樹脂パターン
12・・・低いマイクロレンズ用樹脂パターン
13・・・高いマイクロレンズ
14・・・低いマイクロレンズ
15、15´・・・光透過部
16、16´・・・遮光部
図1