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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057416
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】プロテクタ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/05 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
A41D13/05 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165661
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 瞳
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AB18
3B011AC04
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】手軽に着用することができて、保護対象者の保護対象部位を安定して保護することが可能なプロテクタの提供。
【解決手段】保護対象者Mにおける保護対象部位TPを覆って保護可能に構成されるプロテクタP。保護対象者に装着させるための装着ベルト部1と、装着ベルト部から延びるようにして保護対象部位を覆うように配置されるプロテクタ本体7と、を備える。プロテクタ本体が、保護対象部位を保護可能に構成される略板状の保護パッド10と、保護パッドの外側に重なるように配置されて作動時に内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能に構成されるエアバッグ13と、を備えるとともに、重なった保護パッドとエアバッグとの外周側を、アウタカバー部25によって覆う構成とされる。エアバッグが、少なくとも外周縁側の一部を保護パッド側に結合させることにより、膨張完了時における保護パッドからの浮き上がりを抑制される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象者における保護対象部位を覆って保護可能に構成されるプロテクタであって、
前記保護対象者に装着させるための装着ベルト部と、該装着ベルト部から延びるようにして前記保護対象部位を覆うように配置されるプロテクタ本体と、を備える構成とされ、
該プロテクタ本体が、前記保護対象部位を保護可能に構成される略板状の保護パッドと、該保護パッドの外側に重なるように配置されて作動時に内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能に構成されるエアバッグと、を備えるとともに、重なった前記保護パッドと前記エアバッグとの外周側を、アウタカバー部によって覆う構成とされて、
前記エアバッグが、少なくとも外周縁側の一部を前記保護パッド側に結合させることにより、膨張完了時における前記保護パッドからの浮き上がりを抑制されるように構成されていることを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
前記エアバッグが、前記装着ベルト部から離隔した側となる離隔側端部を、前記保護パッド側に結合させていることを特徴とする請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記エアバッグが、前記装着ベルト部側となる近接側端部を、前記保護パッド側に結合させていることを特徴とする請求項2に記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記エアバッグが、前記保護パッド側の面を、略全面にわたって、前記保護パッドに貼着されていることを特徴とする請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項5】
前記エアバッグにおいて、前記保護パッドに結合される端部が、前記保護パッドの端末の端面を巻きこむようにして、前記保護パッドの内側面側で、前記保護パッドに結合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプロテクタ。
【請求項6】
前記装着ベルト部が、前記保護対象者の腰部に巻き付けられる構成とされ、
前記プロテクタ本体が、前記保護対象者における左右の大腿骨の付け根の外方をそれぞれ覆うように、前記装着ベルト部から下方に延びるように2箇所に配設されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護対象者における保護対象部位を覆って保護可能に構成されるプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保護対象者(例えば高齢者)における保護対象部位を覆って保護するプロテクタとしては、人が着用する衣服(上着やズボン)の一部に、保護パッドとエアバッグとを重ねて収納させ、保護パッドの外表面側で膨張したエアバッグと保護パッドとによって、保護対象部位を、覆って保護する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。また、プロテクタとしては、腰に巻き付けるように装着して、作動時に膨張したエアバッグにより腰部を覆う構成のものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第103689828号明細書
【特許文献2】国際公開第2019/207474号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のプロテクタは、保護パッドの外表面側で膨張したエアバッグと保護パッドとによって、保護対象部位を安定して保護できる構成であるものの、人が着用する衣服の一部に設ける構成であることから、手軽に着用することができなかった。特許文献2に記載のように保護対象部位の近傍に巻き付けて使用するタイプのプロテクタは、手軽に着用することができるが、このタイプのプロテクタに、特許文献1に記載の構成のプロテクタを単に転用しようとしても、膨張したエアバッグが保護パッドから浮き上がってしまう場合があり、エアバッグと保護パッドとによって、安定して保護対象部位を覆って保護する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、手軽に着用することができて、保護対象者の保護対象部位を安定して保護することが可能なプロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプロテクタは、保護対象者における保護対象部位を覆って保護可能に構成されるプロテクタであって、
保護対象者に装着させるための装着ベルト部と、装着ベルト部から延びるようにして保護対象部位を覆うように配置されるプロテクタ本体と、を備える構成とされ、
プロテクタ本体が、保護対象部位を保護可能に構成される略板状の保護パッドと、保護パッドの外側に重なるように配置されて作動時に内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能に構成されるエアバッグと、を備えるとともに、重なった保護パッドとエアバッグとの外周側を、アウタカバー部によって覆う構成とされて、
エアバッグが、少なくとも外周縁側の一部を保護パッド側に結合させることにより、膨張完了時における保護パッドからの浮き上がりを抑制されるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のプロテクタは、装着ベルト部を利用して保護対象者に装着させる構成であることから、手軽に着用することができる。また、本発明のプロテクタでは、保護対象者の保護対象部位を保護可能に構成されるプロテクタ本体が、装着ベルト部から延びるように配設される構成であり、このプロテクタ本体は、保護パッドと、保護パッドの外側(保護対象者から離れた側)において保護パッドに重なるように配置されるエアバッグと、を有し、保護パッドと膨張したエアバッグとによって、保護対象者における保護対象部位を、保護する構成である。そして、エアバッグは、少なくとも外周縁側の一部を保護パッド側に連結されて、膨張完了時に、保護パッドからの浮き上がりを抑制された状態で、保護パッドの外側を覆うこととなる。そのため、プロテクタ本体が、装着ベルト部から延びるように配置される構成であっても、エアバッグを、保護パッドからの浮き上がりを抑制して、安定して保護パッドの外側を覆うように配置させることができ、保護パッドとエアバッグとによって、保護対象者の保護対象部位を安定して覆うことができる。また、本発明のプロテクタでは、プロテクタ本体を構成する保護パッドとエアバッグとは、アウタカバー部によって覆われていることから、着用時の意匠性も良好である。さらに、本発明のプロテクタでは、保護パッドは、保護対象部位を保護可能に構成されており、仮にエアバッグが膨張しなかった場合においても、保護対象者の保護対象部位を保護パッドのみによっても、保護することができる。
【0008】
したがって、本発明のプロテクタでは、手軽に着用することができて、保護対象者の保護対象部位を安定して保護することができる。
【0009】
また、本発明のプロテクタにおいて、エアバッグにおける装着ベルト部から離隔した側となる離隔側端部を、保護パッド側に結合させる構成とすれば、膨張したエアバッグにおいて、装着ベルト部から離隔した側となる離隔側端部が、保護パッドから浮き上がることを、確実に抑制できて、好ましい。
【0010】
さらに、上記構成のプロテクタにおいて、エアバッグにおける装着ベルト側となる近接側端部を、保護パッド側に結合させる構成とすれば、膨張したエアバッグにおいて、装着ベルト部側となる近接側端部も、保護パッドから浮き上がることを抑制でき、膨張したエアバッグによって、保護パッドの外側(保護対象者から離れた側)を、広く安定して覆うことが可能となって、好ましい。
【0011】
なお、エアバッグは、保護パッド側の面を、略全面にわたって、保護パッドに貼着させるように、構成してもよい。
【0012】
さらに、上記構成のプロテクタにおいて、エアバッグにおいて保護パッドに結合される端部を、保護パッドの端末の端面を巻きこむようにして、保護パッドの内側面側で、保護パッドに結合させるように、構成すれば、端部を保護パッドの外側面側で結合させる場合と比較して、端部の保護パッドへの実質的な結合エリアを大きく確保することができ、膨張したエアバッグを保護パッドに広く密着させることが可能となり、換言すれば、エアバッグ全体を、保護パッドに沿うように膨張させることが可能となって、好ましい。
【0013】
具体的には、本発明のプロテクタとして、装着ベルト部を、保護対象者の腰部に巻き付けられる構成とし、
プロテクタ本体を、保護対象者における左右の大腿骨の付け根の外方をそれぞれ覆うように、装着ベルト部から下方に延びるように2箇所に配設させる構成とすることが、好ましい。
【0014】
このような構成のプロテクタでは、2つのプロテクタ本体によって、左右の大腿骨の付け根付近を安定して保護することができ、保護対象者(例えば、高齢者)が、転倒によって、治療が長引く大腿骨を骨折することを、抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態であるプロテクタを、保護対象者としての装着者に装着させた状態の概略図である。
図2】実施形態のプロテクタを平らに展開した状態の平面図である。
図3】実施形態のプロテクタの概略縦断面図であり、図2のIII-III部位に対応する。
図4】実施形態のプロテクタの概略横断面図であり、図2のIV-IV部位に対応する。
図5】実施形態のプロテクタにおいて、アウタカバー部と、エアバッグと、保護パッドと、を並べた状態の平面図である。
図6】実施形態のプロテクタにおいて、装着者に装着させた状態で、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略図である。
図7】実施形態のプロテクタにおいて、エアバッグが膨張を完了させた状態の上下方向に沿った概略縦断面図である。
図8】実施形態のプロテクタにおいて、エアバッグが膨張を完了させた状態の前後方向に沿った概略部分横断面図(左側の概略横断面図)である。
図9】実施形態のプロテクタにおいて、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す装着状態での概略縦断面図である。
図10】本発明の他の形態のプロテクタであり、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、図1に示すように、保護対象者(装着者M)の腰部MWの周囲(詳細には、骨盤MPの周囲)に巻くように装着して、保護対象部位として、装着者Mの大腿骨TBの付け根(大腿骨転子部TP)の外側を覆う構成のプロテクタPを例に採り説明をする。実施形態では、上下,前後,左右の方向は、特に断らない限り、装着者Mに装着させた状態での装着者Mの上下,前後,左右の方向と一致するものである。
【0017】
プロテクタPは、図1~5に示すように、装着ベルト部1と、装着ベルト部1から延びるように配置される2つのプロテクタ本体7(7L,7R)と、プロテクタ本体7(7L,7R)を構成するエアバッグ13に膨張用ガスを供給するガス発生器20と、装着者Mの転倒を検知するセンサ部23を備えてガス発生器20を作動させる作動制御装置22と、を備える構成とされている。
【0018】
作動制御装置22は、上下前後左右の3軸回りの角速度を検知可能な角速度センサと、3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、を有するセンサ部23を、備えるとともに、センサ部23からの信号によって、装着者Mの通常動作と異なる転倒動作を検知すると、ガス発生器20を作動させるように、構成されている。具体的には、装着者Mが通常動作と異なった転倒動作を開始していると、作動制御装置22は、種々の閾値から判定可能な判定手段を備えていることから、その判定手段の判定に基づいて装着者Mの転倒を検出し、ガス発生器20を作動させることとなる。この作動制御装置22には、センサ部23の作動用やガス発生器20の作動用信号の出力のために、図示しない電池等からなる電源が、内蔵されている。
【0019】
プロテクタ本体7(7L,7R)は、それぞれ、保護パッド10と、保護パッド10の外側に重なるように配置されるエアバッグ13と、重なった保護パッド10とエアバッグ13との外周側を覆うアウタカバー部25と、を備えている。各プロテクタ本体7L,7Rは、装着ベルト部1を、装着者Mの骨盤MPの周囲に巻き付けるように装着させた状態で、装着者Mの左右の大腿骨TBの付け根(大腿骨転子部TP)の外側を覆うように、構成されている(図9参照)。
【0020】
装着ベルト部1は、2つのプロテクタ本体7L,7Rを上端側で連結し、かつ、さらに左右の外方に延びるような帯状とされるベルト本体2と、ベルト本体2を装着者Mに装着させるための装着手段4と、を備えている。実施形態の場合、ベルト本体2は、アウタカバー部25におけるベルト構成部26から、構成されるもので、内部に、エアバッグ13の後述するガス供給路部15を、配設させている。装着手段としては、実施形態では、装着者Mの腰回りの寸法に応じて容易に微調整可能で、かつ、着脱を容易とするように、鉤状側部4aとループ側部4bとを有したベルト本体2の端部2a,2b側相互を連結可能な1対の面状ファスナー4が、配設されている。
【0021】
保護パッド10は、プロテクタ本体7(7L,7R)に、それぞれ、配設されるもので、略板状として、可撓性を有し、かつ、装着者Mの転倒時等における衝撃作用時に、大腿骨TBの付け根近傍(大腿骨転子部TP)を保護可能な硬さとクッション性とを有している。実施形態の場合、保護パッド10は、ウレタン樹脂等の合成樹脂製とされている。保護パッド10は、外形形状を、保護対象部位としての大腿骨転子部TPの周囲を広く覆い可能に上下に幅広とした略長方形の板状とされている。この保護パッド10は、装着ベルト部1を骨盤MPの周囲に巻き付けるように装着者Mに装着させた状態で、大腿骨転子部TPの外側(左右の側方)を前後上下に広く覆い可能に構成されている(図8,9参照)。具体的には、保護パッド10は、厚さt(図3参照)を5~10mmの範囲内に設定されて、平らに展開した状態での左右方向側(装着時における前後方向側)の幅寸法W1(図5参照)を60~120mm(望ましくは80~100mm)の範囲内とし、上下方向側の幅寸法L1(図5参照)を160~200mm(望ましくは160~180mm)の範囲内として、構成されている。この保護パッド10は、後述するごとく、上端10a側と下端10b側とに、それぞれ、各バッグ本体16(16L,16R)の上端16a側と下端16b側とを結合させることとなるが、バッグ本体16(16L,16R)の膨張完了時にも、上下方向側での撓みを抑制されて、平板状の状態を保持されて配置されることとなる。
【0022】
保護パッド10の外側に重なるように配置されるエアバッグ13は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されている。エアバッグ13は、装着時に内側(装着者M側,保護パッド10側)に配置される内側壁部13aと、外側に配置される外側壁部13bと、を有し、内側壁部13aと外側壁部13bとの外周縁相互を縫合糸を用いて縫着(結合)させることにより、袋状とされている(図3~5参照)。なお、エアバッグ13は、袋織りにより形成してもよい。エアバッグ13は、図5に示すように、プロテクタ本体7L,7Rを構成する2つのバッグ本体16(16L,16R)と、バッグ本体16L,16Rの上端16a側においてバッグ本体16L,16R相互を連通させるガス供給路部15と、を備えている。エアバッグ13は、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。
【0023】
ガス供給路部15は、膨張完了形状を、左右方向に略沿った棒状として構成されるもので、上述したごとく、装着ベルト部1におけるベルト本体2内に配置される部位であり、実施形態の場合、詳細な図示は省略するが、エアバッグ13の膨張完了時には、装着者Mの骨盤MPの後方となる位置に配置されることとなる。実施形態では、このガス供給路部15の部位に、ガス発生器20が、エアバッグ13の内部に膨張用ガスを供給可能に連結されている(図2参照)。ガス発生器20は、詳細な図示を省略するが、ガス供給路部15の長手方向の中央付近に配置されるもので、内部に圧縮ガスを封入させて構成されて、作動時に、封入状態を解除されて、エアバッグ13内にコールドガスを噴出可能な構成とされている。このガス発生器20は、上述した作動制御装置22と電気的に接続されており、装着者Mの転倒を検知した作動制御装置22からの作動信号を入力させて、作動される構成である。
【0024】
各バッグ本体16(16L,16R)は、上端16aを、ガス供給路部15の上縁よりも下方に位置させるように、ガス供給路部15に対して段差を設けられるようにして配置されている(図5参照)。すなわち、各バッグ本体16(16L,16R)は、エアバッグ13の膨張完了時には、骨盤MPの後方に配置されるガス供給路部15よりも下側に配置されることとなり、換言すれば、骨盤MPよりも下方となる位置に配置されることとなる(図9参照)。各バッグ本体16(16L,16R)は、平らに展開した状態の外形形状を、装着状態における前後方向側で幅広とし、かつ、下端16b側にかけてやや狭幅に構成される略台形状とされている。詳細には、各バッグ本体16(16L,16R)は、図5に示すように、平らに展開した状態での上下方向側の幅寸法と左右方向側(装着時における前後方向側)の幅寸法とを、保護パッド10における上下方向側及び左右方向側の幅寸法よりも大きく設定されて、構成されている。具体的には、バッグ本体16は、上端16a側と下端16b側とを、後述するごとく、保護パッド10の上端10a側と下端10b側とに、それぞれ、結合(縫着)されるもので、膨張完了時において、図8,9に示すように、保護パッド10の外側を略全面にわたって覆い、かつ、膨張完了時の厚さT(図7参照)を150mm程度に設定されるように、平らに展開した状態の幅寸法を設定されている。実施形態の場合、バッグ本体16は、平らに展開した状態の左右方向側の幅寸法W2(装着時における前後方向側、図5参照)を、保護パッド10の前後方向側の幅寸法W1の2倍程度に設定され、平らに展開した状態の上下方向側の幅寸法L2(図5参照)を、保護パッド10の上下方向側の幅寸法L1の1.4倍程度に設定されている。バッグ本体16における平らに展開した状態の上下方向側の幅寸法L2は、保護パッド10の上下方向側の幅寸法L1の1~2倍の範囲内に設定することが、好ましい。
【0025】
保護パッド10とバッグ本体16とは、前後方向側(左右方向側)での中心の位置を略一致させるようにして、上端10a,16a側と下端10b,16b側とを、相互に結合させて、連結されるもので、バッグ本体16は、膨張完了時に、保護パッド10よりも前後両側に突出して配置されることとなる(図8参照)。また、バッグ本体16の上端16aと下端16bとを保護パッド10の上端10a,下端10bに結合させる上側結合部位18U,下側結合部位18Dは、それぞれ、保護パッド10の上端10a側及び下端10b側において、端末の端面を巻きこむようにして、保護パッド10の内側面10c側で、上端16a,下端16bを、保護パッド10に結合(縫着)させるようにして、形成されている(図3,7参照)。具体的には、実施形態では、上側結合部位18Uは、エアバッグ13において外周縁を縫合糸STを用いて結合させている部位の結合代において、上側に配置される上側結合代13cを保護パッド10の内側面10c側に位置させた状態で、縫合糸STを用いて、この上側結合代13cを保護パッド10に結合させることにより、形成され、下側結合部位18Dは、同様に、下側結合代13dを保護パッド10の内側面10c側に位置させた状態で、縫合糸STを用いて、下側結合代13dを保護パッド10に結合させることにより、形成されている。上側結合部位18U,下側結合部位18Dは、保護パッド10の前後(左右)の略全域にわたって、連続的に、形成されている(図5の二点鎖線参照)。
【0026】
アウタカバー部25は、エアバッグ13を構成する基布よりも触感の良好な可撓性を有した織布から形成されるもので、実施形態の場合、図2~4に示すように、プロテクタ本体7(7L,7R)と装着ベルト部1との外周面を全周にわたって覆う構成とされており、具体的には、アウタカバー部25は、装着ベルト部1におけるベルト本体2を構成するベルト構成部26と、プロテクタ本体7において保護パッド10とバッグ本体16との外周側を覆う本体カバー部27(27L,27R)と、を備える構成とされている。アウタカバー部25は、装着時に内側(装着者M側)に配置される内側壁部25aと、装着時に外側に配置される外側壁部25bと、を有し、内側壁部25aと外側壁部25bとの外周縁相互を結合(縫着)させることにより、袋状とされている。アウタカバー部25は、図2,5に示すように、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。ベルト構成部26において、本体カバー部27L,27R間となる中間部位26aの内部には、上述したごとく、エアバッグ13におけるガス供給路部15と、エアバッグ13に膨張用ガスを供給するガス発生器20と、が、配設される構成であり、この中間部位26aは、ベルト構成部26において、本体カバー部27よりも左右の外方に延びるように形成される先端側部位26bよりも、幅広に構成されている(図2参照)。各本体カバー部27(27L,27R)は、保護パッド10とバッグ本体16との外周を全周にわたって覆い、かつ、内部でバッグ本体16を円滑に膨張可能なように、平らに展開した状態での上下方向側の幅寸法と左右方向側(装着時における前後方向側)の幅寸法とを、バッグ本体16における上下方向側及び左右方向側の幅寸法よりも大きく設定されて、構成されている。
【0027】
実施形態のプロテクタPでは、装着ベルト部1を、装着手段としての面状ファスナー4を用いて、装着者Mの骨盤MPの周囲に巻き付けることにより、装着者Mに装着させた状態で、センサ部23が装着者Mの転倒を検知すれば、作動制御装置22からガス発生器20に作動信号が出力されて、エアバッグ13の内部に膨張用ガスが流入することとなり、エアバッグ13が、図6~9に示すように膨張を完了させることとなる。
【0028】
そして、実施形態のプロテクタPでは、装着ベルト部1を利用して装着者M(保護対象者)に装着させる構成であることから、手軽に着用することができる。また、実施形態のプロテクタPでは、装着者M(保護対象者)の保護対象部位としての大腿骨TBの付け根付近(大腿骨転子部TP)を保護可能に構成されるプロテクタ本体7(7L,7R)が、装着ベルト部1から延びるように配設される構成であり、このプロテクタ本体7は、保護パッド10と、保護パッド10の外側(装着者Mから離れた側)において保護パッド10に重なるように配置されるエアバッグ13(バッグ本体16)と、を有し、保護パッド10と膨張したエアバッグ13とによって、装着者Mにおける保護対象部位(実施形態の場合、大腿骨転子部TP)を、保護する構成である。そして、エアバッグ13におけるバッグ本体16は、少なくとも外周縁側の一部(実施形態の場合、上端16a側と下端16b側)を保護パッド10側に連結されて、膨張完了時に、保護パッド10からの浮き上がりを抑制された状態で、保護パッド10の外側を覆うこととなる(図9参照)。そのため、プロテクタ本体7が、装着ベルト部1から延びるように配置される構成であっても、バッグ本体16を、保護パッド10からの浮き上がりを抑制して、安定して保護パッド10の外側を覆うように配置させることができ、保護パッド10とバッグ本体16とによって、装着者Mの大腿骨転子部TPを安定して覆うことができる。また、実施形態のプロテクタPでは、プロテクタ本体7を構成する保護パッド10とエアバッグ13とは、アウタカバー部25によって覆われていることから、着用時の意匠性も良好である。さらに、実施形態のプロテクタPでは、保護パッド10は、保護対象部位である大腿骨TBの付け根近傍(大腿骨転子部TP)を保護可能に構成されており、仮にエアバッグ13が膨張しなかった場合においても、装着者Mの大腿骨TBの付け根近傍(大腿骨転子部TP)を保護パッド10のみによっても、保護することができる。
【0029】
したがって、実施形態のプロテクタPでは、手軽に着用することができて、装着者M(保護対象者)の保護対象部位を安定して保護することができる。
【0030】
また、実施形態のプロテクタPでは、エアバッグ13(バッグ本体16)における装着ベルト部1から離隔した側となる離隔側端部としての下端16bが、保護パッド10側に結合される構成であることから、膨張したエアバッグ13(バッグ本体16)において、装着ベルト部1から離隔した側となる下端16bが、保護パッド10から浮き上がることを、確実に抑制できる。なお、このような点を考慮しなければ、エアバッグの下端をダイレクトに、保護パッドに結合させる構成としなくともよく、例えば、エアバッグの下端近傍における側縁(前縁と後縁)を、保護パッド側に結合させる構成としてもよい。
【0031】
さらに、実施形態のプロテクタPでは、エアバッグ13(バッグ本体16)における装着ベルト部1側となる近接側端部としての上端16aも、保護パッド10側に結合される構成であり、バッグ本体16は、上端16a側と下端16b側とを、ともに、保護パッド10側に結合される構成である。そのため、膨張したエアバッグ13(バッグ本体16)において、装着ベルト部1側となる上端16aも、保護パッド10から浮き上がることを抑制でき、膨張したエアバッグ13(バッグ本体16)によって、保護パッド10の外側(装着者Mから離れた側)を、上下に広く安定して覆うことができる。勿論、このような点を考慮しなければ、エアバッグは、下端側のみを保護パッド側に結合させ、上端側を保護パッド側に結合させない構成としてもよい。
【0032】
さらに、実施形態のプロテクタPでは、エアバッグ13(バッグ本体16)において保護パッド10に結合される上端16a,下端16bが、保護パッド10の端末の端面を巻きこむようにして、保護パッド10の内側面10c側で、保護パッド10に結合される構成である。そのため、端部を保護パッドの外側面側で結合させる場合と比較して、上端16a,下端16bの保護パッド10への実質的な結合エリアを大きく確保することができ、膨張したエアバッグ13(バッグ本体16)を保護パッド10に広く密着させることが可能となり、換言すれば、エアバッグ13(バッグ本体16)全体を、上下の全域にわたって保護パッド10に沿うように膨張させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、エアバッグの端部を、保護パッドの端末を巻きこまない状態で、保護パッドの外側面側となる位置で、保護パッドに結合させる構成としてもよい。
【0033】
また、図10に示すように、エアバッグ13におけるバッグ本体16の内側壁部13aを、全面にわたって、接着剤を塗布して形成した接着層30によって、保護パッド10の外側面10dに、貼着させる構成としてもよい。このような構成としても、バッグ本体16を、上下の略全域にわたって、保護パッド10に沿うように膨張させることができる。
【0034】
実施形態では、プロテクタPは、装着ベルト部1を腰部MWに巻き付けるようにして、装着者Mに装着させて、この装着ベルト部1から下方に延びる2つのプロテクタ本体7(7L,7R)によって、保護対象部位としての左右の大腿骨TBの付け根(大腿骨転子部TP)の外方を覆う構成とされている。そのため、2つのプロテクタ本体7(7L,7R)によって、左右の大腿骨TBの付け根付近(大腿骨転子部TP)を安定して保護することができ、装着者Mが、転倒によって、治療が長引く大腿骨TBを骨折することを、抑制することができる。そのため、実施形態のプロテクタPは、高齢者に好適に使用することができる。
【0035】
なお、プロテクタとしては、実施形態に限定されるものではなく、例えば、保護対象者の肩や、肘、膝等を保護対象部位とし、その周囲に装着ベルト部によって巻き付けられる構成のものも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…装着ベルト部、4…面状ファスナー(装着手段)、7(7L,7R)…プロテクタ本体、10…保護パッド、10a…上端、10b…下端、10c…内周面、13…エアバッグ、16(16L,16R)…バッグ本体、16a…上端(近接側端部)、16b…下端(離隔側端部)、25…アウタカバー部、M…装着者(保護対象者)、MW…腰部、TB…大腿骨、TP…大腿骨転子部(保護対象部位)、P…プロテクタ。
図1
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図9
図10