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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057417
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/018 20060101AFI20220404BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20220404BHJP
   A62B 99/00 20090101ALI20220404BHJP
【FI】
A41D13/018
A41D13/05
A41D13/05 106
A62B99/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165662
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】相川 国大
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
【テーマコード(参考)】
2E184
3B011
【Fターム(参考)】
2E184JA10
2E184KA09
2E184KA11
2E184LB05
3B011AA01
3B011AC04
3B011AC21
(57)【要約】
【課題】流入口から流入する膨張用ガスにより膨張するエアバッグが、円滑に、複数の膨張部位を膨張させて、複数の保護対象部位を保護可能な着用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】保護対象者1に装着されて、作動時、保護対象者1の保護対象部位3L,3Rを保護可能に、ガス発生器20からの膨張用ガスにより膨張する複数の膨張部位50,51、を配設させて構成されるエアバッグ40、を備える。エアバッグにおける膨張用ガスの流入部位に、ガス発生器からの膨張用ガスをエアバッグ内に流入させる流入口45が、エアバッグの外周壁41を開口させて配設されるとともに、流入口からエアバッグ内に流入する膨張用ガスを、複数の膨張部位50,51側に向けて分岐させる整流手段R1が、配設されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象者に装着されて、作動時、保護対象者の保護対象部位を保護可能に、ガス発生器からの膨張用ガスにより膨張する複数の膨張部位、を配設させて構成されるエアバッグ、を備えた着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグにおける膨張用ガスの流入部位に、
前記ガス発生器からの膨張用ガスを前記エアバッグ内に流入させる流入口が、前記エアバッグの外周壁を開口させて配設されるとともに、
前記流入口から前記エアバッグ内に流入する膨張用ガスを、複数の前記膨張部位側に向けて分岐させる整流手段が、配設されていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグの前記流入口の周縁に、前記ガス発生器における膨張用ガスを吐出するガス吐出部側を接続させるリテーナが配設され、
前記リテーナが、前記整流手段として、
前記エアバッグの前記流入口の周縁における前記エアバッグの外周面側に配置されて、前記流入口と連通する連通口を有するとともに、前記ガス吐出部からの膨張用ガスを前記流入口側に流し可能に、前記ガス吐出部側と連結される外周側部と、
前記エアバッグの前記流入口の周縁における前記エアバッグの内周面側に配置されて、前記外周側部とで前記流入口周縁を挟持して前記外周側部と結合されるとともに、前記流入口からの膨張用ガスを前記エアバッグ内に流出可能な流出口を有した内周側部と、
を備えて構成され、
前記内周側部が、前記流出口として、複数の前記膨張部位側に向けてそれぞれ開口させた分岐流出口を配設させるとともに、前記流入口から流入する膨張用ガスを前記分岐流出口側に流す分岐流路を配設させて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグの前記流入口の周縁における前記エアバッグの内周面側に、前記流入口から流入する膨張用ガスを、複数の前記膨張部位側に流し可能な前記整流手段としてのディフューザーが、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記ディフューザーが、パイプ材から形成されて、
前記エアバッグの内周面側の前記流入口周縁から延びる元側パイプ部と、
該元側パイプ部の先端で、前記元側パイプ部を経て前記流入口から流入する膨張用ガスを、複数の前記膨張部位側に流し可能な分岐パイプ部と、
を備えて構成されていることを特徴とする請求項3に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記ディフューザーが、可撓性を有したシート材から形成されて、
前記エアバッグの内周面側の前記流入口を覆うように配設されるとともに、外周縁側を、前記エアバッグの内周面側の前記流入口周縁に対して、非結合部位を設けて、結合させ、
前記非結合部位を、前記流入口から流入する膨張用ガスを、複数の前記膨張部位側に流し可能な分岐流出口とするように、配設されていることを特徴とする請求項3に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグが、
前記流入口の周縁の第1壁部と、該第1壁部と対向する第2壁部とを備えて、膨張用ガスの流入時、前記第1壁部と前記第2壁部とを相互に離隔させて膨張する構成とするとともに、
前記流入口の周縁に、前記第1壁部と前記第2壁部とを相互に結合させる閉じ部を配設させ、
前記閉じ部が、前記流入口を囲むように断続的に配設されるとともに、前記整流手段を構成するように、隣接する前記閉じ部間を、複数の前記膨張部位側に流し可能な分岐流出口として、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項7】
複数の前記膨張部位が、保護対象部位としての保護対象者の腰部の左右の大腿骨周り、を覆い可能な位置として、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項8】
複数の前記膨張部位として、保護対象者の頭部の後面側を覆い可能な頭保護部、を有して構成されていることを特徴とする請求項7に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項9】
前記ガス発生器から前記エアバッグの複数の前記膨張部位に流出されるまでの膨張用ガスの流路に、前記ガス発生器の作動時に発生する残渣を補足可能なメッシュ状の残渣補足材が、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の着用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護対象者に着用させて、保護対象者の転倒時等に、膨張させたエアバッグの膨張部位により、保護対象者の保護対象部位を保護する着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用エアバッグ装置としては、着用した保護対象者(例えば、高齢者)の転倒時、加速度センサや角速度センサによって、転倒を検知して、ガス発生器から吐出した膨張用ガスにより膨張した所定位置の各エアバッグが、それぞれ、保護対象者の保護対象部位である臀部や腰部、あるいは、頭部や左右の側部、を覆うものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。また、1つのガス発生器からの膨張用ガスを流入させてエアバッグを膨張させて、エアバッグの左右の膨張部位が、保護対象者の保護対象部位としての左右の大腿骨付近を保護するように覆うものもあった(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-317002号公報
【特許文献2】国際公開第2010/090317号公報
【特許文献3】特表2014-514462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2に記載されているように、保護対象部位の数に対応した複数のエアバッグを使用しては、膨張用ガスを供給するガス発生器も複数必要となって、嵩張ったり、あるいは、重くなって、保護対象者に着用させる着用エアバッグ装置としては、課題がある。また、特許文献3に記載されているように、1つのガス発生器からの膨張用ガスを、エアバッグの所定の流入口を経て流入させて、エアバッグを膨張させる構成としていても、複数の保護対象部位に対応させて、エアバッグの複数の膨張部位を膨張させる構成では、円滑に、エアバッグ内に膨張用ガスを流して、各膨張部位を膨張させる点に、課題が生ずる。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、流入口から流入する膨張用ガスにより膨張するエアバッグが、円滑に、複数の膨張部位を膨張させて、複数の保護対象部位を保護可能な着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る着用エアバッグ装置は、保護対象者に装着されて、作動時、保護対象者の保護対象部位を保護可能に、ガス発生器からの膨張用ガスにより膨張する複数の膨張部位、を配設させて構成されるエアバッグ、を備えた着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグにおける膨張用ガスの流入部位に、
前記ガス発生器からの膨張用ガスを前記エアバッグ内に流入させる流入口が、前記エアバッグの外周壁を開口させて配設されるとともに、
前記流入口から前記エアバッグ内に流入する膨張用ガスを、複数の前記膨張部位側に向けて分岐させる整流手段が、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る着用エアバッグ装置では、作動時、ガス発生器からの膨張用ガスが、流入口を経て、エアバッグ内に流入すると、整流手段により、各膨張部位に対応し、分岐されて、流れる。そのため、エアバッグの保護対象部位に応じた複数の膨張部位が、素早く膨張完了状態まで膨張できて、円滑に、膨張することとなる。
【0008】
したがって、本発明に係る着用エアバッグ装置では、流入口から流入する膨張用ガスにより膨張するエアバッグが、円滑に、複数の膨張部位を膨張させて、複数の保護対象部位を保護することができる。
【0009】
そして、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記エアバッグの前記流入口の周縁に、前記ガス発生器における膨張用ガスを吐出するガス吐出部側を接続させるリテーナが配設され、
前記リテーナが、前記整流手段として、
前記エアバッグの前記流入口の周縁における前記エアバッグの外周面側に配置されて、前記流入口と連通する連通口を有するとともに、前記ガス吐出部からの膨張用ガスを前記流入口側に流し可能に、前記ガス吐出部側と連結される外周側部と、
前記エアバッグの前記流入口の周縁における前記エアバッグの内周面側に配置されて、前記外周側部とで前記流入口周縁を挟持して前記外周側部と結合されるとともに、前記流入口からの膨張用ガスを前記エアバッグ内に流出可能な流出口を有した内周側部と、
を備えて構成され、
前記内周側部が、前記流出口として、複数の前記膨張部位側に向けてそれぞれ開口させた分岐流出口を配設させるとともに、前記流入口から流入する膨張用ガスを前記分岐流出口側に流す分岐流路を配設させて構成されていてもよい。
【0010】
このような構成では、作動時、ガス発生器のガス吐出部から膨張用ガスが吐出されると、膨張用ガスは、リテーナの外周側部の連通口からエアバッグの流入口を経て、内周側部の分岐流路に流入し、そして、分岐流路の各分岐流出口から、各膨張部位へ流れて、エアバッグの保護対象部位に応じた各膨張部位が、円滑に膨張することとなる。
【0011】
また、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記エアバッグの前記流入口の周縁における前記エアバッグの内周面側に、前記流入口から流入する膨張用ガスを、複数の前記膨張部位側に流し可能な前記整流手段としてのディフューザーが、配設されていてもよい。
【0012】
このような構成では、作動時、ガス発生器からの膨張用ガスが流入口を経て、エアバッグの内周側に流入しようとすると、整流手段としてのディフューザーによって、膨張用ガスが、複数の膨張部位側に分岐されて流れることから、エアバッグの保護対象部位に応じた各膨張部位が、円滑に膨張することとなる。
【0013】
この場合、前記ディフューザーが、パイプ材から形成されて、
前記エアバッグの内周面側の前記流入口周縁から延びる元側パイプ部と、
該元側パイプ部の先端で、前記元側パイプ部を経て前記流入口から流入する膨張用ガスを、複数の前記膨張部位側に流し可能な分岐パイプ部と、
を備えて構成されていてもよい。
【0014】
このような構成では、作動時、ガス発生器からの膨張用ガスが流入口を経て、エアバッグの内周側に流入しようとすると、膨張用ガスは、ディフューザーにおける流入口周縁から延びる元側パイプ部を経て、元側パイプ部の先端側の分岐パイプ部から、複数の膨張部位側に分岐されて流れることから、エアバッグの保護対象部位に応じた各膨張部位が、円滑に膨張することとなる。
【0015】
あるいは、前記ディフューザーが、可撓性を有したシート材から形成されて、
前記エアバッグの内周面側の前記流入口を覆うように配設されるとともに、外周縁側を、前記エアバッグの内周面側の前記流入口周縁に対して、非結合部位を設けて、結合させ、
前記非結合部位を、前記流入口から流入する膨張用ガスを、複数の前記膨張部位側に流し可能な分岐流出口とするように、配設されていてもよい。
【0016】
このような構成では、作動時、ガス発生器からの膨張用ガスが流入口を経て、エアバッグの内周側に流入しようとすると、膨張用ガスは、流入口を覆っていたディフューザーを構成するシート材に当り、ついで、シート材の外周縁側に向かう。そして、膨張用ガスは、エアバッグの内周面側と結合されていない非結合部位からなる各分岐流出口から、複数の膨張部位側に分岐されて流れることから、エアバッグの保護対象部位に応じた各膨張部位が、円滑に膨張することとなる。
【0017】
そしてまた、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記エアバッグが、
前記流入口の周縁の第1壁部と、該第1壁部と対向する第2壁部とを備えて、膨張用ガスの流入時、前記第1壁部と前記第2壁部とを相互に離隔させて膨張する構成とするとともに、
前記流入口の周縁に、前記第1壁部と前記第2壁部とを相互に結合させる閉じ部を配設させ、
前記閉じ部が、前記流入口を囲むように断続的に配設されるとともに、前記整流手段を構成するように、隣接する前記閉じ部間を、複数の前記膨張部位側に流し可能な分岐流出口として、配設されていてもよい。
【0018】
このような構成では、作動時、ガス発生器からの膨張用ガスが流入口を経て、エアバッグの内周側に流入しようとすると、膨張用ガスは、第1壁部と第2壁部とを相互に結合させた閉じ部により囲まれた部位に、一旦、貯留される状態となり、その後、閉じ部間の各分岐流出口から、複数の膨張部位側に分岐されて流れることから、エアバッグの保護対象部位に応じた各膨張部位が、円滑に膨張することとなる。
【0019】
そして、本発明に係る着用エアバッグ装置では、複数の前記膨張部位が、保護対象部位としての保護対象者の腰部の左右の大腿骨周り、を覆い可能な位置として、配設されていることが望ましい。
【0020】
このような構成では、エアバッグの膨張した各膨張部位が、保護対象者の左右の大腿骨付近を覆って保護できることから、治療に長引くこととなる高齢者の転倒時等に発生し易い大腿骨付近の骨折を、防止することができる。
【0021】
この場合、エアバッグは、複数の前記膨張部位として、保護対象者の頭部の後面側を覆い可能な頭保護部、を有して構成されていてもよい。
【0022】
また、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記ガス発生器から前記エアバッグの複数の前記膨張部位に流出されるまでの膨張用ガスの流路に、前記ガス発生器の作動時に発生する残渣を補足可能なメッシュ状の残渣補足材が、配設されていてもよい。
【0023】
このような構成では、ガス発生器が作動されて、ガス発生器から膨張用ガスとともに、残渣がエアバッグの膨張部位側に流れようとして、残渣補足材により残渣が補足されて、膨張部位内に残渣が流入しない。そのため、エアバッグの膨張完了後におけるエアバッグの膨張部位の破損時、残渣が、エアバッグ外へ流出することが無く、残渣による弊害を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る第1実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図2】第1実施形態の着用エアバッグ装置の作動時のエアバッグを示す背面図である。
図3】実施形態の着用エアバッグ装置のガス発生器付近の拡大背面図である。
図4】実施形態のリテーナの概略縦断面図であり、図3のIV-IV部位に対応する。
図5】実施形態のリテーナの内周側部を示す概略縦断面図であり、図4のV-V部位に対応する。
図6】実施形態に使用したリテーナの変形例を使用した着用エアバッグ装置が、作動した状態を示す概略背面図である。
図7図6に示すリテーナの内周側部の分岐流路を説明する概略縦断面図である。
図8】第2実施形態の着用エアバッグ装置を示す概略背面図である。
図9】第2実施形態の概略縦断面図であり、図8のIX-IX部位に対応する。
図10】第2実施形態のディフューザー付近を示す概略縦断面図であり、図9のX-X部位に対応する。
図11】第2実施形態に使用するディフューザーの概略斜視図である。
図12】第2実施形態の変形例を示す概略背面図である。
図13図12に示す変形例に使用するディフューザーの概略斜視図である。
図14】第3実施形態の着用エアバッグ装置を示す概略背面図である。
図15】第3実施形態の概略縦断面図であり、図14のXV-XV部位に対応する。
図16】第3実施形態のディフューザー付近を示す概略縦断面図であり、図15の XVI- XVI部位に対応する。
図17】第3実施形態の変形例を示す概略背面図である。
図18図17に示す変形例の着用エアバッグ装置の概略縦断面図であり、図17のXVIII-XVIII部位に対応する。
図19図17に示す変形例のディフューザー付近を示す概略縦断面図であり、図18のXIX-XIX部位に対応する。
図20】第4実施形態の着用エアバッグ装置を示す概略背面図である。
図21】第4実施形態の着用エアバッグ装置の概略縦断面図であり、図20のXXI-XXI部位に対応する。
図22】第4実施形態の流入口付近を示す背面図であり、図21のXXII-XXII部位に対応する。
図23】保持体の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の着用エアバッグ装置10は、図1~5に示すように、ガス発生器20と、ガス発生器20からの膨張用ガスGにより膨張するエアバッグ40と、保護対象者1の転倒を検知するセンサ部18を備えてガス発生器20を作動させる作動制御装置17と、ガス発生器20、エアバッグ40、及び、作動制御装置17を保持するベスト型の保持体11と、を備えて構成されている。
【0026】
保持体11は、保護対象者1の上半身1aに装着可能なベストとして構成され、保護対象者1の上半身1aの正面を覆う左前部12及び右前部13を備えるとともに、保護対象者1の上半身1aの背面を覆う背面部14を備えて構成され、さらに、左前部12と右前部13との内側縁12a,13a相互を結合させるファスナー等の締結具16を備えて構成されている。換言すれば、保持体11は、背面部14の左部14bの前方側に、左前部12を連ならせるように配設させ、背面部14の右部14cの前方側に、右前部13を連ならせるように配設させて、構成されている。
【0027】
作動制御装置17は、上下前後左右の3軸周りの角速度を検知可能な角速度センサと、上下前後左右の3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、を有してなるセンサ部18を備えるとともに、センサ部18からの信号により、保護対象者1が通常動作と異なった転倒動作を行っていると検知されると、ガス発生器20を作動させるように構成されている。なお、具体的には、作動制御装置17は、センサ部18からの信号により、保護対象者1が通常動作と異なった転倒動作を開始していると、種々の閾値から判定可能な判定手段を備えて、判定手段の判定に基づいて、保護対象者1が転倒したと検出し、そして、ガス発生器20を作動させる。また、作動制御装置17には、センサ部18の作動用やガス発生器20の作動用信号の出力用に、図示しない電池等からなる電源も内蔵されている。
【0028】
作動制御装置17は、保持体11における背面部14の右部14cにおける内側面の下部14d側に、保護対象者1の衣服等と接触しないように、図示しないカバー布等に覆われて、取り付けられている。
【0029】
ガス発生器20は、内部に圧縮された二酸化炭素等からなる膨張用ガスGを貯留した略円柱状の本体部20aと、本体部20aの先端の小径の略円柱状のガス吐出部20bと、を備えて構成され、ガス吐出部20bには、膨張用ガスGを吐出する吐出口20cが配設されている。ガス発生器20は、保護対象者1の転倒を検知した作動制御装置17の作動信号を入力して、本体部20aとガス吐出部20bとの境界部位付近に配設された図示しないイニシエータを作動させて、図示しないバーストディスクを破断することにより、本体部20a内に貯留した膨張用ガスGをガス吐出部20bの吐出口20cから吐出する構成としている。
【0030】
エアバッグ40は、ポリエステルやポリアミド等の織布から縫製や袋織り等により、膨張用ガスGの漏れを防止された状態の袋状に、形成されており、膨張完了時の外周壁41として、外形形状を略同等として保護対象者1から離れた外側の第1壁部42と、保護対象者1に接近した内側の第2壁部43と、を備えて、左右両側に、膨張部位50,51を配設させて構成されている。これらの膨張部位50,51は、保護対象者1の腰部2の左右の大腿骨転子部3(L,R)を保護対象部位としており、エアバッグ40の膨張完了時に、保護対象者1の腰部2の左右の側面2aを中心として、前後に延びて、大腿骨転子部3(L,R)の周囲を覆えるように、配設されている。そして、エアバッグ40は、膨張完了時、左右の腰保護部50,51を略長方形板状に膨張させるとともに、左右の腰保護部50,51の上縁50a,51a側相互を連通させて膨張する連通部47、を備えて構成されている。連通部47は、膨張時の左右の腰保護部50,51の間のエアバッグ40の中央部位に配設されるとともに、腰保護部50,51の下縁50b,51b側を上昇させたように、腰保護部50,51より上下方向の幅寸法を狭めた帯状としている。そして、連通部47における第1壁部42には、膨張用ガスGを流入させる流入口45が開口されている。
【0031】
なお、エアバッグ40は、腰保護部50,51の上縁50a,51a側に、複数の取付タブ40aが配設されており、これらの取付タブ40aを、縫製等により、保持体11の内側面側に取り付けて、保持体11に保持される。
【0032】
また、エアバッグ40は、着用エアバッグ装置10の作動前の状態では、腰保護部50,51の下縁50b,51b側を、上縁50a,51a側に接近させるように、腰保護部50,51内に入れ込むように、折り畳まれて、保持体11に保持される。
【0033】
そして、エアバッグ40の流入口45の周縁には、ガス発生器20における膨張用ガスGを吐出するガス吐出部20b側を接続させるリテーナ23が配設されている。第1実施形態のリテーナ23は、流入口45からエアバッグ40内に流入する膨張用ガスGを、均等に分岐させて左右の腰保護部50,51側へ流入させる整流手段R1を構成している。
【0034】
リテーナ23は、剛性を有した合成樹脂や金属から形成されて、エアバッグ40の流入口45の周縁におけるエアバッグ40の外周面42a側に配置される外周側部24と、エアバッグ40の流入口45の周縁におけるエアバッグ40の内周面42b側に配置される内周側部29と、を備えて構成されている。外周側部24と内周側部29とは、第1壁部42の流入口45の周縁を挟持して、複数(実施形態では4個ずつ)のボルト37とナット(雌ねじ部)38とを利用して、相互に結合されている。なお、第1実施形態では、ナット(雌ねじ部)38は、後述する流路板32に埋設されている。
【0035】
外周側部24は、ガス発生器20のガス吐出部20bを前後で挟持するカバー側部25とインナプレート部27とを備えて構成されている。カバー側部25は、ガス吐出部20bの後方側の外周を覆い可能な略半割り円筒状のカバー部25aを備えるとともに、カバー部25aの上下の両縁側に、ボルト37を挿通させる取付孔25fを配設させたフランジ部25eを配設させている。インナプレート部27は、上下方向の中央付近に、流入口45と連通する連通口27dを設けた略長方形板状として、上下両側に、カバー側部25の取付孔25fの配置位置に対応して、ボルト37を挿通させる取付孔27fを配設させている。なお、インナプレート部27の連通口27dの周縁には、流入口45の内周付近を膨張用ガスGの熱等から保護できるように、流入口45内に進入するように、略四角筒形状に延びる筒部27eが配設されている。
【0036】
また、第1実施形態では、流入口45は、略正方形に開口され、連通口27dも、略正方形に開口されて、筒部27eが、流入口45に進入するように、配設されている。
【0037】
さらに、筒部27eの元部側には、連通口27dを塞ぐように、メッシュ状の残渣補足材21が、固着されている。残渣補足材21は、ガス発生器20の作動時に、残渣を補足して、膨張用ガスGを通過させるもので、エアバッグ40内への残渣の流入を防止する。残渣補足材21は、布製若しくは金属製のメッシュとしている。
【0038】
そして、カバー側部25のカバー部25aの内周面側と、インナプレート部27のカバー部25aの対向する部位と、には、外周側部24と内周側部29とのボルト37・ナット(雌ねじ部)38による締結時、ガス吐出部20bを挟持し、かつ、吐出口20cにおけるガス発生器20の軸方向の両側をシール可能な押え部25b,25cと支持部27a,27bとが、対応して、配設されている。押え部25b,25cと支持部27a,27bとは、相互に、ガス吐出部20b側に突出して、ガス吐出部20bの外周面側に当接される湾曲した支持面25d,27cを備えている。なお、左方側の押え部25bと支持部27aとの支持面25d,27cは、ガス発生器20の本体部20aにおけるガス吐出部20b近傍の小径の外周面に当接されて、リテーナ23からのガス発生器20の左右の抜け止め作用も果たしている。右方側の押え部25cと支持部27bとの支持面25d,27cは、ガス発生器20のガス吐出部20bの外周面に圧接されるように、配設されている。
【0039】
内周側部29は、流入口45の周縁における第1壁部42の内周面42b側に配置される取付基板30と、取付基板30のエアバッグ40の内部側に組み付けられる流路板32と、を備えて構成されている。
【0040】
取付基板30には、流入口45から流入する膨張用ガスGをエアバッグ40内に流入させる挿通孔30aが開口されている。流路板32には、取付基板30側の面に、挿通孔30aと連通して、挿通孔30aから流入する膨張用ガスGを左右両側に分岐して流し可能に、凹溝32aを設けてなる分岐流路34が、配設されている。分岐流路34の左右両側の先端は、分岐流出口35(L,R)として、分岐流路34を流れて膨張用ガスGを、左右の腰保護部50,51側に流し可能に構成されている。
【0041】
そして、これらの取付基板30と流路板32とは、外周縁に、各ボルト37を挿通させる取付孔30b,32bが配設されている。なお、流路板32には、取付孔32b自体に、ナット38が埋設されている。そのため、各ボルト37を、リテーナ23の外周側部24の取付孔25f,27f、エアバッグ40の流入口45の周縁の取付孔46、リテーナ23の内周側部29の取付孔30b,32bに貫通させて、ナット38と締結させれば、流入口45の周縁を、カバー側部25とインナプレート部27とを締結させてなる外周側部24と、取付基板30と流路板32とを締結させてなる内周側部29と、によって挟持することができる。そしてまた、その際、ガス発生器20のガス吐出部20b付近を、外周側部24のカバー側部25の押え部25b,25cとインナプレート部27の支持部27a,27bとで挟持させて、リテーナ23にガス発生器20を保持させていれば、ガス発生器20自体を、エアバッグ40の流入口45付近に、シール性を確保して、組み付けることができる。
【0042】
そして、ガス発生器20を組み付けたエアバッグ40は、下縁50b,51bを上縁50a,51a側に接近させるように折り畳んで、取付タブ40aを利用して、保持体11に取り付けるとともに、予め、保持体11に取り付けておいた作動制御装置17からの作動信号入力用のリード線19をガス発生器20に接続させれば、保持体11にエアバッグ40やガス発生器20等を保持させた着用エアバッグ装置10を製造することができる。
【0043】
第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、締結具16を利用して、保持体11を保護対象者1の上半身1aに装着し、その後、保護対象者1が転倒等すると、センサ部18からの信号を入力していた作動制御装置17が、ガス発生器20を作動させる。そして、ガス発生器20からの膨張用ガスGが、整流手段R1としてのリテーナ23の連通口27dから、流入口45と挿通孔30aとを経て、エアバッグ40内に流入すると、整流手段R1の流路板32の分岐流路34により、各膨張部位としての腰保護部50,51に対応し、分岐されて、流れる。そのため、エアバッグ40の保護対象部位に応じた複数の膨張部位50,51が、素早く膨張完了状態まで膨張できて、円滑に、膨張することとなる。
【0044】
したがって、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、流入口45から流入する膨張用ガスGにより膨張するエアバッグ40が、円滑に、複数の膨張部位50,51を膨張させて、複数の保護対象部位3L,3Rを保護することができる。
【0045】
そして、第1実施形態では、エアバッグ40の流入口45の周縁に、ガス発生器20における膨張用ガスGを吐出するガス吐出部20b側を接続させるリテーナ23が配設され、リテーナ23が、整流手段R1として、構成されている。このリテーナ23は、エアバッグ40の流入口45の周縁におけるエアバッグ40の外周面42a側に配置されて、流入口45と連通する連通口27dを有するとともに、ガス吐出部29bからの膨張用ガスGを流入口45側に流し可能に、ガス吐出部20b側と連結される外周側部24と、エアバッグ40の流入口45の周縁におけるエアバッグ40の内周面42b側に配置されて、外周側部24とで流入口45の周縁を挟持して外周側部24と結合されるとともに、流入口45からの膨張用ガスGをエアバッグ40内に流出可能な流出口35を有した内周側部29と、を備えて構成されている。そして、内周側部29が、流出口35として、複数の膨張部位50,51側に向けてそれぞれ開口させた分岐流出口35L,35Rを配設させるとともに、流入口45から流入する膨張用ガスGを分岐流出口35L,35R側に流す分岐流路34を配設させて構成されている。
【0046】
そのため、第1実施形態では、作動時、ガス発生器20のガス吐出部20bから膨張用ガスGが吐出されると、膨張用ガスGは、リテーナ23の外周側部24の連通口27dからエアバッグ40の流入口45を経て、内周側部29の分岐流路34に流入し、そして、分岐流路34の各分岐流出口35L,35Rから、各膨張部位50,51へ流れて、エアバッグ40の保護対象部位に応じた各膨張部位としての腰保護部50,51が、円滑に膨張することとなる。
【0047】
また、第1実施形態等の着用エアバッグ装置10では、ガス発生器20からエアバッグ40の複数の膨張部位50,51に流出されるまでの膨張用ガスGの流路(第1実施形態では、リテーナ23の連通口27dの周縁)に、ガス発生器20の作動時に発生する残渣を補足可能なメッシュ状の残渣補足材21が、配設されている。
【0048】
そのため、このような構成では、ガス発生器20が作動されて、ガス発生器20から膨張用ガスGとともに、残渣がエアバッグ40の膨張部位50,51側に流れようとして、残渣補足材21により残渣が補足されて、膨張部位50,51内に残渣が流入しない。そのため、エアバッグ40の膨張完了後におけるエアバッグ40の膨張部位50,51の破損時、残渣が、エアバッグ40外へ流出することが無く、残渣による弊害を防止できる。
【0049】
なお、残渣補足材21は、ガス発生器20からエアバッグ40の複数の膨張部位50,51に流出されるまでの膨張用ガスGの流路に配設されていればよく、筒部27eの先端側、あるいは、分岐流路34の途中、あるいは、各流出口35(L,R)の端部付近等に、配設することができる。
【0050】
また、分岐流路34に関し、各分岐流出口35L,35Rから流出する膨張用ガスGが、各膨張部位に向かって流出しやすいように、図6,7に示す着用エアバッグ装置10Aのように構成してもよい。
【0051】
この着用エアバッグ装置10Aでは、リテーナ23Aの外周側部24Aと内周側部29Aとの左右方向の幅寸法が、第1実施形態のリテーナ23より大きくして、内周側部29Aの流路板32Aに設けた凹溝32aが、取付基板30の挿通孔30aの位置から左右両側に延びつつ下方に湾曲するように配設されている。すなわち、分岐流路34Aが、挿通孔30aから左右の分岐流出口35L,35R側に向かって、斜め下方向の外向きに配設されることとなる。
【0052】
そのため、この着用エアバッグ装置10Aでは、エアバッグ40の膨張時、作動時のガス発生器20からの膨張用ガスGが、リテーナ23Aの連通口27d、エアバッグ40の流入口45、及び、取付基板30の挿通孔30a、を経て、分岐流路34Aに流入すれば、分岐流出口34L,35R側に向かって、斜め下向きの外側に向かうように案内されて、そして、分岐流出口34L,35Rから、膨張完了時の左右の腰保護部50,51の中央側に向かって、流出することから、左右の腰保護部50,51を、保護対象部位としての大腿骨転子部3L,3Rを迅速に覆えるように、膨張させることができる。
【0053】
また、整流手段R2としては、図8~11に示す第2実施形態のように、ディフューザー60を使用してもよい。図8~11に示す第2実施形態の着用エアバッグ装置10Bのエアバッグ40とガス発生器20とは、第1実施形態と同様なものが使用されている。
【0054】
そして、リテーナ23Bとしては、第1実施形態のリテーナ23の流路板32が、ディフューザー60に変更されて、第1実施形態のリテーナ23の取付基板30に対応する取付基板30Bが、挿通孔30aの周縁に、ディフューザー60の元側パイプ部61を組み付ける結合筒部30cを配設させている。換言すれば、第2実施形態では、第1実施形態のリテーナ23における外周側部24と、流路板32を除いた内周側部29と、からなるリテーナ本体31を、リテーナ23Bとして、そのリテーナ23Bに、ディフューザー60を組み付ける構成としている。
【0055】
ディフューザー60は、エアバッグ40の流入口45の周縁におけるエアバッグ40の内周面42b側に、流入口45から流入する膨張用ガスGを、複数の膨張部位50,51側に流し可能な整流手段R2を構成するものである。そして、第2実施形態では、ディフューザー60が、剛性を有した金属製若しくは合成樹脂製ののパイプ材から形成されて、エアバッグ40の内周面42b側の流入口45の周縁から延びる元側パイプ部61と、元側パイプ部61の先端61cで、元側パイプ部61を経て流入口45から流入する膨張用ガスGを、複数の膨張部位50,51側に流し可能な左右二又状に分岐する分岐パイプ部62,63と、を備えて構成されている。
【0056】
詳しくは、第2実施形態では、リテーナ23Bの外周側部24が、第1実施形態と同様に構成され、内周側部29Bが、第1実施形態の内周側部29と異ならせて、流路板32を備えずに、取付基板30Bに、挿通孔30aの周縁からエアバッグ40内に延びる結合筒部30cを設けて構成されている。そして、結合筒部30cの外周側に雄ねじ部30dを設けて、ディフューザー60の元側パイプ部61の元部61aの雌ねじ部61bを、雄ねじ部30dに螺合させて、ディフューザー60を取付基板30Bの結合筒部30cに取り付けている。
【0057】
また、リテーナ23Bの取付基板30Bには、取付孔30bの端末側に、ナット38を溶着させている。そのため、このリテーナ23Bでも、各ボルト37を、リテーナ23Bの外周側部24の取付孔25f,27f、エアバッグ40の流入口45の周縁の取付孔46、リテーナ23Bの内周側部29Bの取付孔30bに貫通させて、ナット38と締結させれば、流入口45の周縁を、カバー側部25とインナプレート部27とを締結させてなる外周側部24と、取付基板30Bからなる内周側部29Bと、によって挟持することができて、その際、ガス発生器20のガス吐出部20b付近を、外周側部24のカバー側部25の押え部25b,25cとインナプレート部27の支持部27a,27bとで挟持させて(図3,9参照)、リテーナ23Bにガス発生器20を保持させていれば、ガス発生器20自体を、エアバッグ40の流入口45付近に、シール性を確保して、組み付けることができる。
【0058】
そして、第1実施形態と同様に、ガス発生器20を組み付けたエアバッグ40を折り畳んで保持体11に保持させて、保護対象者1に着用エアバッグ装置10Bを装着させた後、保護対象者1が転倒等して、ガス発生器20が作動して、ガス吐出部20bから膨張用ガスGが吐出されれば、ガス発生器20からの膨張用ガスGが、リテーナ23Bの連通口27d、流入口45、挿通孔30aを経て、エアバッグ40の内周側に流入しようとする。すると、膨張用ガスGは、ディフューザー60における流入口45周縁から延びる元側パイプ部61を経て、元側パイプ部61の先端61c側の分岐パイプ部62,63から、詳しくは、分岐パイプ部62,63の先端の分岐流出口65(L,R)から、複数の膨張部位50,51側に分岐されて流れることから、エアバッグ40の保護対象部位に応じた各膨張部位50,51が、円滑に膨張することとなる。
【0059】
なお、エアバッグ40Cが、図12に示すように、腰保護部50,51の他、保護対象者1の頭部5、特に、後頭部6の後側を覆って、頭部5を保護可能な頭保護部53を備えて構成されている場合には、エアバッグ40Cを使用する着用エアバッグ装置10Cとしては、使用するディフューザー60Cとして、図12,13に示すように、元側パイプ部61から延びる先端61cに、左右に延びる分岐パイプ部62,63の他に、上方に延びる分岐パイプ部63を配設させたものを使用すればよい。
【0060】
なお、エアバッグ40Cは、左右の腰保護部50,51に連通する連通部47の流入口45付近から、上方に延びる筒状の連通部48を配設させ、連通部48の上端に、頭保護部53を配設させて構成されている。エアバッグ40Cは、腰保護部50,51の上縁50a,51a、連通部48の左右の側縁48a、及び、頭保護部53の下縁53bに設けられた取付タブ40aにより、保持体11に取り付けられている。また、エアバッグ40Cは、腰保護部50,51の下縁50b,51b側を上縁50a,51a側に接近させるように、腰保護部50,51内に入れ込み、頭保護部53の上縁53a側を下縁53b側に接近させるように、頭保護部53内に入れ込むように折り畳んで、保持体11に収納保持される。頭保護部53は、保持体11の襟部15の位置に収納される。
【0061】
また、エアバッグ40Cが、第1実施形態のエアバッグ40より、容量が大きいことから、着用エアバッグ装置10Cでは、出力の大きなガス発生器20Cが使用されている。
【0062】
この着用エアバッグ装置10Cでは、エアバッグ40Cが連通部48と頭保護部53とを備え、ガス発生器20Cが出力を大きくし、そして、ディフューザー60Cが上方に延びる分岐パイプ部64を備えている点を、第2実施形態の着用エアバッグ装置10Bと異ならせているだけで、他の構成等は、第2実施形態と同様である。
【0063】
この着用エアバッグ装置10Cの作動時には、ガス発生器20Cが作動して、ガス吐出部20bから膨張用ガスGが吐出されれば、ガス発生器20Cからの膨張用ガスGが、リテーナ23Bの連通口27d、流入口45、挿通孔30aを経て、エアバッグ40Cの内周側に流入し、ディフューザー60Cにおける流入口45周縁から延びる元側パイプ部61を経て、元側パイプ部61の先端61c側の分岐パイプ部62,63,64の分岐流出口65(L,R,U)から、複数の膨張部位50,51,53側に分岐されて流れることから、エアバッグ40の保護対象部位である左右の大腿骨転子部3L,3Rや後頭部6に応じた各膨張部位50,51,53が、円滑に膨張することとなる。
【0064】
また、ディフューザーとしては、図14~16に示す第3実施形態の着用エアバッグ装置10Dのように、可撓性を有したシート材67から形成されるディフューザー60Dを使用してもよい。
【0065】
第3実施形態の着用エアバッグ装置10Dのエアバッグ40とガス発生器20とは、第1実施形態と同様なものが使用されている。そして、リテーナ23Dとしては、内周側部29Dが、第1実施形態の内周側部29と異なって、流路板32を備えず、取付基板30Dに、挿通孔30aと取付孔30bとを設けて、取付孔30b周縁に、ナット38を溶着させた点が、異なっている。換言すれば、リテーナ23Dは、第1実施形態の流路板32や第2実施形態の結合筒部30cを備えないリテーナ本体31、から構成されている。
【0066】
ディフューザー60Dは、エアバッグ40の流入口45の周縁におけるエアバッグ40の内周面42b側に、流入口45から流入する膨張用ガスGを、複数の膨張部位50,51側に流し可能な整流手段R3を構成するものであり、エアバッグ40の第1壁部42等と同様な可撓性を有したポリエステル等の織布、あるいは、不織布等からなるシート材67から形成されている。
【0067】
第3実施形態のシート材67は、左右方向に延びた略長方形板としている。そして、このディフューザー60Dは、エアバッグ40の内周面42b側の流入口45を覆うように配設されるとともに、外周縁67a,67b側を、エアバッグ40の内周面42b側の流入口45の周縁に対して、非結合部位69を設けて、結合させて、非結合部位69を、流入口45から流入する膨張用ガスGを、複数の膨張部位50,51側に流し可能な分岐流出口71L,71Rとするように、配設されている。第3実施形態の場合、シート材67の左右方向に直線状に延びた上下の縁67a,67bを、結合部位68とするように、流入口45の周縁の第1壁部42に、縫合糸70を使用した縫製により結合させ、シート材67の左右の上下方向に延びた縁67c,67d側を、第1壁部42に結合しない非結合部位69として、分岐流出口71L,71Rとしている。
【0068】
この着用エアバッグ装置10Dでは、エアバッグ40の流入口45の周縁の外周面42a側と内周面42b側とに、リテーナ23Dの外周側部24と内周側部29Dとを配置させて、各ボルト37を、リテーナ23Dの外周側部24の取付孔25f,27f、エアバッグ40の流入口45の周縁の取付孔46、リテーナ23Dの内周側部29Dの取付孔30bに貫通させて、ナット38と締結させれば、流入口45の周縁を、カバー側部25とインナプレート部27とを締結させてなる外周側部24と、取付基板30Dからなる内周側部29Dと、によって挟持することができて、その際、ガス発生器20のガス吐出部20b付近を、外周側部24のカバー側部25の押え部25b,25cとインナプレート部27の支持部27a,27bとで挟持させて(図3,15参照)、リテーナ23Dにガス発生器20を保持させていれば、ガス発生器20自体を、エアバッグ40の流入口45付近に、シール性を確保して、組み付けることができる。
【0069】
そして、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、ガス発生器20を組み付けたエアバッグ40を折り畳んで保持体11に保持させて、保護対象者1に着用エアバッグ装置10Dを装着させた後、保護対象者1が転倒等して、ガス発生器20が作動して、ガス吐出部20bから膨張用ガスGが吐出されれば、ガス発生器20からの膨張用ガスGが、リテーナ23Dの連通口27d、流入口45、挿通孔30aを経て、エアバッグ40の内周側に流入しようとする。すると、膨張用ガスGは、流入口45を覆っていたディフューザー60Dを構成するシート材67に当り、ついで、シート材67の外周縁における上下左右の縁67a,67b,67c,67d側に向かう。そして、膨張用ガスGは、エアバッグ40の内周面42b側と結合されていない非結合部位69からなる左右の各分岐流出口71L,71Rから、複数の膨張部位50,51側に分岐されて流れることから、エアバッグ40の保護対象部位に応じた各膨張部位50,51が、円滑に膨張することとなる。
【0070】
なお、このようなシート状のディフューザーを使用するエアバッグでも、図17に示すように、腰保護部50,51の他、保護対象者1の頭部5の後頭部6を保護可能な頭保護部53を備えたエアバッグ40Cに対応するように、ディフューザー60Eを構成してもよい。
【0071】
このディフューザー60Eは、三叉状のシート材67Eとして、エアバッグ40Cの流入口45の周縁の内周面42b側を覆うように配設し、そして、突出した三叉状の先端の3つの縁67fを、非結合部位69Eとし、3つの縁67f相互の間の湾曲した縁67eを、結合部位68Eとして、第1壁部42に、縫合糸70の縫合により、結合させている(図18,19参照)。
【0072】
このディフューザー60Eを使用した着用エアバッグ装置10Eでも、作動時、流入口45からエアバッグ40C内に流入するガス発生器20Cからの膨張用ガスGは、流入口45を覆っていたディフューザー60Eを構成するシート材67Eに当り、そして、シート材67Eの外周縁側に向かう。そして、膨張用ガスGは、エアバッグ40Cの内周面42b側と結合されていない非結合部位69Eからなる左右方向両側と上方との三方に向かう各分岐流出口71L,71R,71Uから、複数の膨張部位50,51,53側に分岐されて流れることから、エアバッグ40Cの保護対象部位に応じた各膨張部位50,51,53が、円滑に膨張することとなる。
【0073】
また、整流手段としては、図20~22に示す第4実施形態の着用エアバッグ装置10Fの整流手段R4のように、エアバッグ40Fの外周壁41自体から形成してもよい。
【0074】
第4実施形態のエアバッグ40Fは、図12,17に示すエアバッグ40Cと同様に、保護対象者1の保護対象部位としての大腿骨転子部3L,3Rや後頭部6を保護可能に、腰保護部50,51と頭保護部53とを備えるとともに、腰保護部50,51と頭保護部53とを連通する連通部47,48を備え、連通部47には、流入口45を配設させている。
【0075】
また、このエアバッグ40Fは、エアバッグ40Cと同様に、流入口45の周縁の第1壁部42と、第1壁部42と対向する第2壁部43とを備えて、膨張用ガスGの流入時、第1壁部42と第2壁部43とを相互に離隔させて膨張する構成としている。
【0076】
そして、エアバッグ40Fは、流入口45の周縁に、第1壁部42と第2壁部43とを相互に結合させる閉じ部80,81,82を配設させている。これらの閉じ部80,81,82は、流入口45を囲むように断続的に、連続した直線状に配設されるとともに、整流手段R4を構成するように、隣接する閉じ部80,81間、閉じ部81,82間、閉じ部82,80間を、複数の膨張部位50,51,53側に流し可能な分岐流出口84L,84R,84Uとして、配設させている。
【0077】
この着用エアバッグ装置10Fでは、使用するリテーナ23Dは、第3実施形態に使用したものと同様であり、また、ガス発生器20Cは、第2実施形態の変形例に使用したものと同様に、出力を大きくしたものが使用されている。
【0078】
そして、エアバッグ40Fは、エアバッグ40Cと同様に、腰保護部50,51の上縁50a,51a、連通部48の左右の側縁48a、及び、頭保護部53の下縁53bに設けられた取付タブ40aにより、保持体11に取り付けられ、また、腰保護部50,51の下縁50b,51b側を上縁50a,51a側に接近させるように、腰保護部50,51内に入れ込み、頭保護部53の上縁53a側を下縁53b側に接近させるように、頭保護部53内に入れ込むように折り畳んで、収納される。頭保護部53は、保持体11の襟部15の位置に収納される。
【0079】
この第4実施形態の着用エアバッグ装置10Fでも、第1実施形態と同様に、ガス発生器20Cを組み付けたエアバッグ40Fを折り畳んで保持体11に保持させて、保護対象者1に着用エアバッグ装置10Fを装着させた後、保護対象者1が転倒等して、ガス発生器20Cが作動して、ガス吐出部20bから膨張用ガスGが吐出されれば、ガス発生器20Cからの膨張用ガスGが、リテーナ23Dの連通口27d、流入口45、挿通孔30aを経て、エアバッグ40Fの内周側に流入しようとする。すると、膨張用ガスGは、第1壁部42と第2壁部43とを相互に結合させた閉じ部80,81,82により囲まれた部位83に、一旦、貯留される状態となり、その後、閉じ部80,81,82間の各分岐流出口84L,84R,84Uから、複数の膨張部位50,51,53側に分岐されて流れることから、エアバッグ40Fの保護対象部位に応じた各膨張部位50,51,53が、円滑に膨張することとなる。
【0080】
なお、第4実施形態では、分離された三角形の辺の位置に、閉じ部80,81,82を配設したが、流入口45の周縁の上下に離れた位置に、第1壁部42と第2壁部43との相互を結合するように、左右方向に沿う閉じ部を設ければ、左右の腰保護部50,51だけを設けたエアバッグ40に、エアバッグ40自体から形成する整流手段R4を配設することができる。
【0081】
また、閉じ部としては、直線状に配設する他、曲線状に配設してもよい。
【0082】
なお、第1,2実施形態等では、エアバッグ40の複数の膨張部位50,51が、保護対象部位としての保護対象者の腰部2の左右の大腿骨周り(大腿骨転子部3L,3R付近)、を覆い可能な位置として、配設されている。そのため、このような構成では、エアバッグ40の膨張した各膨張部位50,51が、保護対象者の左右の大腿骨付近(大腿骨転子部3L,3R付近)を覆って保護できることから、治療に長引くこととなる高齢者の転倒時等に発生し易い大腿骨付近の骨折を、防止することができる。
【0083】
勿論、第2実施形態の変形例や第4実施形態のエアバッグ40C,40Fのように、複数の膨張部位50,51,53として、保護対象者の頭部5の後面側を覆い可能な頭保護部53、を有して構成されていてもよい。
【0084】
また、第1,2実施形態等では、エアバッグ40等を保持する保持体11として、ベスト型を例示したが、袖部を有したジャケット型としてもよく、さらに、図23に示すベルト型の保持体11Aとしてもよい。この保持体11Aでは、左右の端末相互を締結できるファスナー等の締結具16Aを備えており、締結具16Aにより、第1実施形態のエアバッグ40やガス発生器20等を取り付けた保持体11Aを保護対象者1の腰部2付近に巻き付ければ、着用エアバッグ装置10Gを保護対象者1に装着させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1…保護対象者、2…腰部、3(L,R)…大腿骨転子部、5…頭部、10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G…着用エアバッグ装置、20,20C…ガス発生器、20b…ガス吐出部、21…残渣補足材、23,23A,23B,23D…リテーナ、24,24A…外周側部、27d…連通口、29,29A,29B,29D…内周側部、34,34A…分岐流路、35(L,R)…分岐流出口、40,40C,40F…エアバッグ、41…外周壁、42…第1壁部、42a…外周面、42b…内周面、43…第2壁部、45…流入口、50、51…(膨張部位)腰保護部、53…(膨張部位)頭保護部、60,60C,60D,60E…ディフューザー、61…元側パイプ部、62…(左)分岐パイプ部、63…(右)分岐パイプ、64…(上)分岐パイプ、65(L,R,U)…分岐流出口、67,67E…シート材、67a…上縁、67b…下縁、67c…左縁、67d…右縁、67e…(結合)縁、67f…(非結合)縁、68,68E…結合部位、69,69E…非結合部位、71(L,R,U)…分岐流出口、80,81,82…閉じ部、84(L,R,U)…分岐流出口、
R1,R2、R3,R4…整流手段、G…膨張用ガス。
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