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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057434
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】受注処理方法、及び受注処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/06 20120101AFI20220404BHJP
【FI】
G06Q30/06 320
G06Q30/06 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165694
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】520381920
【氏名又は名称】SOLIZE Products株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】宅間 健史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB23
5L049BB55
(57)【要約】      (修正有)
【課題】3Dプリンタによる製造を受注するための受注サーバとクライアント間の受注処理方法及び受注処理システムを提供する。
【解決手段】受注処理システムにおいて、受注サーバ4は、CPU40、ネットワークアダプタ47、チェック規則を格納した外部記憶装置6を含んで構成される。CPU40による処理部として、データ受理部41、検査処理部42、要チェック箇所抽出処理部43、3D画像データ生成部44、造形再現率算出部45、金額算出部46と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンタによる製造を受注するための受注サーバとクライアント間の受注処理方法であって、
該クライアントのデータ送信部が、プリントする元となる元データを送信する元データ送信ステップ、
該受注サーバのデータ受理部が、該元データを受信する元データ受信ステップ、
該受注サーバの要チェック箇所抽出処理部が、所定のチェック規則データを参照し、該元データにおいて製造時にチェックすべき要チェック箇所を抽出する要チェック箇所抽出ステップ、
該受注サーバの3D画像データ生成部が、抽出された該要チェック箇所を識別可能に画像上に示した3D画像データを生成し、該クライアントに送信する3D画像データ送信ステップ、
該クライアントの画像表示部が、該3D画像データを受信して使用者に対して表示する3D画像データ表示ステップ
該要チェック箇所が抽出された場合に、該クライアントのデータ送信部が、修正した修正データを送信する修正データ送信ステップ、
該受注サーバのデータ受理部が、該修正データを受信する修正データ受信ステップ、
該クライアントの発注処理部が、使用者の入力を受理して、該受注サーバに発注信号を送信する発注処理ステップ、
該受注サーバが該発注信号に基づいて受注処理する受注処理ステップ、
を有することを特徴とする受注処理方法。
【請求項2】
前記要チェック箇所抽出ステップの前に、
該受注サーバの検査処理部が、受注可能なサイズ又はパーツ数を満たしているかを検査する形状状態検査ステップ
を有する請求項1に記載の受注処理方法。
【請求項3】
前記要チェック箇所抽出ステップの前に、
該受注サーバの検査処理部が、造形可能なデータか否かを検査する造形規定検査ステップ
を有する請求項1又は2に記載の受注処理方法。
【請求項4】
前記要チェック箇所抽出ステップにおいて、
前記チェック規則データには、製造される造形物の肉厚の条件が定義されており、
前記要チェック箇所抽出処理部が、肉厚の条件を満たさない要チェック箇所を抽出する
請求項1ないし3のいずれかに記載の受注処理方法。
【請求項5】
前記要チェック箇所抽出ステップにおいて、
前記チェック規則データには、製造される造形物において、周囲が造形されて内部に残る閉鎖空間が条件として定義されており、
前記要チェック箇所抽出処理部が、該閉鎖空間を抽出する
請求項1ないし4のいずれかに記載の受注処理方法。
【請求項6】
前記要チェック箇所抽出ステップにおいて、
前記チェック規則データには、製造される造形物を構成する複数のパーツ間の距離が条件として定義されており、
前記要チェック箇所抽出処理部が、該閉鎖空間を抽出する
請求項1ないし5のいずれかに記載の受注処理方法。
【請求項7】
前記3D画像データ送信ステップにおいて、
前記3D画像データ生成部が、抽出された該要チェック箇所のオブジェクトに所定の着色を行った3D画像データを生成する
請求項1ないし6のいずれかに記載の受注処理方法。
【請求項8】
前記3D画像データ送信ステップよりも後に、
前記受注サーバの造形再現率算出部が、前記要チェック箇所に基づいて、所定の計算式によって前記元データがどの程度忠実に再現されるかを示す造形再現率を計算して前記クライアントに送信し、
前記クライアントの画像表示部が、該造形再現率を表示する
請求項1ないし7のいずれかに記載の受注処理方法。
【請求項9】
前記発注処理ステップよりも前に、
前記受注サーバの金額算出部が、所定の計算式によって製造を受注する金額を算出する
請求項1ないし7のいずれかに記載の受注処理方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の受注処理方法を実行する前記受注サーバと、前記クライアントからなる受注処理システム。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれかに記載の受注処理方法を実行する
ことを特徴とする受注サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンタによる製造を受注するための受注サーバとクライアント間の受注処理方法及び受注処理システムに関し、特に受注処理を自動化する技術に係る。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dプリントは広く一般にまで普及するようになり、だれもが汎用コンピュータでCAD/CGソフトを利用し、3Dデータを作成し、3Dプリントを実施することができるようになった。しかし3Dプリントでモノづくりを実施するには、ユーザに3Dプリントに対する十分な理解と専門知識が足りていない。
【0003】
ユーザが希望する価格、3Dプリンティング製品の品質を得る為にはその3Dデータを3Dプリントの特性に合わせることが必要であり、これを実施する段取りとして熟練した技術者が3Dプリントでの形状再現性を評価し、ユーザに評価結果を回答し、そのうえで価格を算出するという作業を複数回繰り返す必要があった。
【0004】
このような評価作業において次の課題を抱えている。すなわち、技術者による作業品質のばらつきが発生すること、3Dデータの確認に非常に多くの工数がかかること、今後3Dプリンティング製品の生産量が増える将来が見込まれ、技術者が不足する可能性があること、等である。
【0005】
関連する従来技術として、特許文献1には、顧客が希望する人物や仏像に酷似した精巧な
人形(フィギュア)を、簡単、迅速且つ安価に制作する模型形成システムであって、顧客の注文に応じて、モデルを非接触で撮影して立体画像を得ると共に、立体画像信号を修正・加工し、修正・加工された立体画像信号に従って模型を形成する模型の受注納品管理システムが開示されている。
【0006】
また、特許文献2ないし4には、画像を調整・修正するプリント受注システムが開示されている。特許文献2は立体プリントに係る技術であり、特許文献3及び4は平面印刷に係る技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-200697号公報
【特許文献2】特開2012-205002号公報
【特許文献3】特開2010-079405号公報
【特許文献4】特開2006-270188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術では、立体画像等を修正、加工して造形することは記載されているものの、システムが問題のある箇所を自動的に抽出し、表示したり、ユーザがそれを見ながら修正できるような技術は開示されていない。
【0009】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、所定のチェック規則に基づいてユーザから送信された3Dプリンタ用のデータの評価を自動化すると共に、造形の再現率や製造に係る金額の算出を行うことのできる受注処理に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するため、本発明は次のような受注処理方法及びシステムを提供する。
すなわち、本発明の第1の実施態様によれば、3Dプリンタによる製造を受注するための受注サーバとクライアント間の受注処理方法であって、クライアントのデータ送信部が、プリントする元となる元データを送信する元データ送信ステップ、受注サーバのデータ受理部が、元データを受信する元データ受信ステップ、受注サーバの要チェック箇所抽出処理部が、所定のチェック規則データを参照し、元データにおいて製造時にチェックすべき要チェック箇所を抽出する要チェック箇所抽出ステップ、受注サーバの3D画像データ生成部が、抽出された要チェック箇所を識別可能に画像上に示した3D画像データを生成し、クライアントに送信する3D画像データ送信ステップ、クライアントの画像表示部が、3D画像データを受信して使用者に対して表示する3D画像データ表示ステップ要チェック箇所が抽出された場合に、クライアントのデータ送信部が、修正した修正データを送信する修正データ送信ステップ、受注サーバのデータ受理部が、修正データを受信する修正データ受信ステップ、クライアントの発注処理部が、使用者の入力を受理して、受注サーバに発注信号を送信する発注処理ステップ、受注サーバが発注信号に基づいて受注処理する受注処理ステップ、を有する受注処理方法を提供する。
【0011】
第2の実施態様によれば、上記の要チェック箇所抽出ステップの前に、受注サーバの検査処理部が、受注可能なサイズ又はパーツ数を満たしているかを検査する形状状態検査ステップを有する構成でもよい。
【0012】
第3の実施態様によれば、上記の要チェック箇所抽出ステップの前に、受注サーバの検査処理部が、造形可能なデータか否かを検査する造形規定検査ステップを有する構成でもよい。
【0013】
第4の実施態様によれば、上記の要チェック箇所抽出ステップにおいて、チェック規則データには、製造される造形物の肉厚の条件が定義されており、要チェック箇所抽出処理部が、肉厚の条件を満たさない要チェック箇所を抽出する構成でもよい。
【0014】
第5の実施態様によれば、上記の要チェック箇所抽出ステップにおいて、チェック規則データには、製造される造形物において、周囲が造形されて内部に残る閉鎖空間が条件として定義されており、要チェック箇所抽出処理部が、閉鎖空間を抽出する構成でもよい。
【0015】
第6の実施態様によれば、上記の要チェック箇所抽出ステップにおいて、チェック規則データには、製造される造形物を構成する複数のパーツ間の距離が条件として定義されており、要チェック箇所抽出処理部が、閉鎖空間を抽出する構成でもよい。
【0016】
第7の実施態様によれば、上記の3D画像データ送信ステップにおいて、3D画像データ生成部が、抽出された要チェック箇所のオブジェクトに所定の着色を行った3D画像データを生成することもできる。
【0017】
第8の実施態様によれば、上記の3D画像データ送信ステップよりも後に、サーバ装置の造形再現率算出部が、要チェック箇所に基づいて、所定の計算式によって元データがどの程度忠実に再現されるかを示す造形再現率を計算して上記のクライアント装置に送信し、クライアントの画像表示部が、造形再現率を表示する構成でもよい。
【0018】
第9の実施態様によれば、上記の発注処理ステップよりも前に、サーバ装置の金額算出部が、所定の計算式によって製造を受注する金額を算出することもできる。
【0019】
本発明は、上述した受注処理方法を実行する上記の受注サーバと、上記のクライアントからなる受注処理システムとして提供することもできる。
【0020】
また、上記の受注処理方法を実行する受注サーバとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、所定のチェック規則に基づいてユーザから送信された3Dプリンタ用のデータの評価を自動化すると共に、造形の再現率や製造に係る金額の算出を行うことのできる受注処理に関する技術を提供することができる。
【0022】
特に、価格算出と3Dデータの3Dプリントでの形状再現性確認を、技術者の人工によらずコンピュータシステムが自動で実施することで、ユーザは3Dデータに対する評価結果と価格回答を安易かつ短時間に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明における3Dプリントの受注処理システムの全体図である。
図2】本発明に係るクライアントの構成図である。
図3】本発明に係る受注サーバの構成図である。
図4】本発明に係る受注処理方法のフローチャートである。
図5】本発明に係る受注処理方法における検査工程のフローチャートである。
図6】本発明に係る受注処理方法における要チェック箇所抽出のフローチャートである。
図7】本発明に係る受注処理画面の説明図である。
図8】凸薄肉チェック結果の出力例である。
図9】凹薄肉チェック結果の出力例である。
図10】閉鎖空間チェック結果の出力例である。
図11】パーツ間距離チェック結果の出力例である。
図12】金額算出の出力例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。本発明は以下の実施例に限定されず請求項記載の範囲で適宜実施することができる。
図1は、本発明における受注処理システム(1)の全体図である。本システムを構成するクライアント(2)、Webサーバ(3)、受注サーバ(4)などは、公知のパーソナルコンピュータやサーバ装置により実施することができる。クライアント(2)はタブレット端末やスマートフォンでも実施できる。
【0025】
本発明においてWebサーバ(3)はネットワーク(5)を介してクライアント(2)に対してWebサービスを提供する公知のサーバであるが、本発明においてWebサーバ(3)と受注サーバ(4)は一体で構成してもよい。
【0026】
また、受注サーバ(4)には外部記憶装置(6)が接続されており、外部記憶装置(6)には本発明に係るチェック規則を格納している。受注サーバ(4)と外部記憶装置(6)は直接接続されてもよいし、ネットワーク回線を介して接続されていてもよい。
クライアント(2)、Webサーバ(3)、受注サーバ(4)にはCPU、メモリ、ハードディスク、SSD、ネットワークアダプタ等を備えることができるが、このような機器の詳細については公知であるから説明を省略する。
【0027】
受注サーバ(4)と直接、又はネットワークを介して接続される3Dプリンタ(7)は、本発明に係る受注処理方法によって受注した造形物を3Dプリントする装置である。粉末法、光造型法、熱溶解積層法等の様々な製造方法が知られているが、本発明において3Dプリントの方法については任意であり、限定されない。未知の、あるいは現在一般的でない方法による3Dプリントであっても、本発明の受注処理方法は適用することができる。
【0028】
図2は、本発明に係るクライアント(2)の構成図、図3は受注サーバ(4)の構成図である。また、図4は本発明に係る受注処理方法のフローチャートである。
クライアント(2)は、CPU(20)、ネットワークアダプタ(24)、モニタ(25)、キーボード(26)等から構成される。CPU(20)による処理部として、データ送信部(21)、画像表示部(22)、発注処理部(23)を含むことができる。
【0029】
受注サーバ(4)は、CPU(40)、ネットワークアダプタ(47)、チェック規則を格納した外部記憶装置(6)等から構成される。
CPU(40)による処理部として、データ受理部(41)、検査処理部(42)、要チェック箇所抽出処理部(43)、3D画像データ生成部(44)、造形再現率算出部(45)、金額算出部(46)を含むことができる。
【0030】
このような構成を用いて、次の受注処理方法を実行する。
まずクライアント(2)において公知の3Dデータ作成アプリケーションを用いて3Dプリントする元データを作成する(ステップS01)。
クライアント(2)のデータ送信部(21)が、ネットワークアダプタ(24)、ネットワーク回線を介して、プリントする元となる元データを送信する(ステップS02)。
【0031】
受注サーバ(4)のデータ受理部(41)が、元データを受信する(ステップS03)。このとき、元データを送受信にはWebサーバ(3)のユーザインタフェースを用いることができる。
【0032】
本発明においては必須ではないが、検査処理部(42)による形状状態検査ステップ(ステップS04)、造形規定検査ステップ(S05)を行うことが好ましい。これらについては後述するが、検査処理部(42)は、元データとして受領するSTLファイルの形式要件(画像フォーマットの適合性)を備えているかどうか、提供する製造サービスに適合したサイズやパーツ数であるかどうか、STLファイルが3Dプリントに使用可能なデータかどうかなどの検査処理を行う。
【0033】
次いで、要チェック箇所抽出処理部(43)が、所定のチェック規則データ(6)を参照し、元データにおいて製造時にチェックすべき要チェック箇所を抽出する。(ステップS06)。
【0034】
本発明において、チェック規則(6)は予め人手によって定義された規則でもよいし、機械学習によって自動的に獲得した学習データであってもよい。要チェック箇所としては、例えば製造に用いる3Dプリンタ(7)の特性や用いる材料に応じて、造形物の肉厚に関する条件や、周囲を造形材料で囲まれた閉鎖空間の有無、造形後のパーツ間の距離の条件などを自動的にチェックする。
【0035】
要チェック箇所が抽出(S06)された後、すぐにユーザにフィードバックして修正を行ってもよいが、本実施例では造形再現率算出部(45)が要チェック箇所に基づいて、所定の計算式によって元データがどの程度忠実に再現されるかを示す造形再現率を計算する(ステップS07)。
造形再現率を算出するための所定の計算式、これに用いるパラメータに関しても、外部記憶装置(6)に格納することができる。
【0036】
さらに、金額算出部(46)が、所定の計算式によって製造を受注する金額を算出する(ステップS08)。この金額を算出するための所定の計算式、これに用いるパラメータに関しても、外部記憶装置(6)に格納することができる。
【0037】
造形再現率や金額の算出結果と共に、3D画像データ生成部(44)が、抽出された要チェック箇所を識別可能に画像上に示した3D画像データを生成し、クライアントに対して送信する(ステップS09)。3D画像データの生成方法は、周知のモデリング方法を適用することができ、これに本発明では要チェック箇所に着色するなど識別可能な方法で表示を付加して3D画像データを生成する。
【0038】
クライアント(2)の画像表示部(22)が、3D画像データを受信してモニタ(25)上で、使用者に対して表示する(ステップS10)。
ユーザは表示された要チェック箇所や造形再現率を参照しながら、キーボード(26)やマウス等の入力手段を用いて元データを修正して修正データを作成し、データ送信部(21)から受注サーバ(4)に対して修正データを送信する(S13)。
【0039】
受注サーバ(4)のデータ受理部(41)が、修正データを受信(ステップS14)すると、再び検査処理部(42)や要チェック箇所抽出処理部(43)、造形再現率算出部(45)、金額算出部(46)等による各処理を行う。
【0040】
3D画像データを表示(S10)した後、その内容で製造を発注する場合は発注処理部(23)から発注処理する(ステップS11)。例えばクライアント(2)のモニタ(25)上の表示画面に配置した発注ボタンを押下することで、発注処理とすることができる。
受注サーバ(4)は受注をした後、さまざまな受注処理(S12)を行うことができる。
【0041】
受注処理(S12)としては、受注したこと自体を外部記憶装置に格納したり、ネットワークを通して他のサーバに送信してもよい。また、受注した3Dプリント用のデータを格納したり送信してもよい。あるいは、3Dプリンタ(7)に出力を指示してもよい。
【0042】
このように、本発明では自動的に要チェック箇所を識別可能に表示し、同時に造形再現率や金額を参考にしながらユーザがデータの修正を行えるようにしたことで、ユーザの意思に合致した製造の受注を行うことができる。
【0043】
図5は、本発明に係る受注処理方法における検査工程のフローチャートである。
これらの検査は受注サーバ(4)の検査処理部(42)において実行される。なお、Webサーバ(3)と別に備えた場合、Webサーバ(3)において拡張子が例えばSTLであるかどうかのチェックなど形式検査の一部を行ってもよい。
【0044】
形状状態検査ステップ(S04)は、主として次の2点の検査を行う。第1にデータファイル形式の確認であり、これは単純に拡張子がSTLとなっているか、ではなく、ファイル内ヘッダ記述情報に不整合が無いことなどを以てSTLファイル形式としての成立性を確認する。このような検査を行う意義として、拡張子だけをSTLに変更しアップロードするサイバー攻撃の類と考えられるデータアップロードが多くあり、その対策でもある。
【0045】
また、様々なCAD、CGアプリから出力されるSTLファイルにはSTL形式としてのあるべき作法に則らないファイルが存在しているため、造形品質を維持するために必要な処理である。
本発明における要チェック箇所抽出処理と異なるのは、形状状態検査ステップ(S04)は画像データとしての成立性を確認する形式的な検査であり、3Dプリンタによる製造の結果を評価するものでは無いことである。言い換えれば、立体画像として処理可能であるかどうか、が形式的に検査されることになる。
【0046】
また、形状状態検査ステップ(S04)において、提供する製造サービスの仕様として、造形可能な造形品サイズと、パーツ数に適合しているかどうかもチェックされる。本発明は受注処理方法であるから、用いる3Dプリンタ(7)の仕様や、送付可能なサイズ、受注する料金の制限など、様々な要因によって定められるサイズやパーツ数に関する条件を満たしているかどうかを確認する。
【0047】
形状状態検査の結果に問題なければ次の造形規定チェックに進み、問題がある場合は、造形再現率算出(S07)にスキップする。なお、形状状態検査がNGの場合には、原則として受注ができないので、すぐにクライアント(2)に受注不可の結果を送信してもよい。
【0048】
造形規定検査ステップ(S05)では、受信した元データ(STLファイル)が3Dプリントに使用可能かどうかを確認する。初期の造形規定チェック1ステップ(S51)において、面の反転や、面と面が離れていないか、ソリッドとして成立していることを確認する。
【0049】
STLファイルから3Dプリント用のプリントデータに変換する際に、従来のアプリケーションにおいても自動的に標準形状の修正(S52)は行われている。標準形状が修正しきれない場合には、重度形状修正ステップ(S54)においてユーザが関与しながら形状を修正する。これらの修正処理を経て、問題が解消されれば再度造形規定チェック2ステップ(S53)を経て、次音要チェック箇所抽出ステップ(S06)に進む。
問題が解消されない場合には造形再現率算出ステップ(S07)にスキップするか、クライアント(2)に受注不可の結果を送信する。
【0050】
図6は、本発明に係る受注処理方法における要チェック箇所抽出のフローチャートである。この要チェック箇所抽出処理は本発明の特徴でもある。
まず凹凸薄肉チェックステップ(S61)では、要チェック箇所抽出処理部(43)がチェック規則を参照して、造形物が規定の肉厚に満たない部分を抽出する。チェック規則には製造される造形物の肉厚の条件が定義されているが、この条件には使用する3Dプリンタ(7)の仕様(造形の限界値、印刷スピードの設定)や、選択された材料をパラメータとして含むこともできる。
【0051】
すなわち、ユーザが元データを送信する際に、成形方法や材料を選択して送信した場合に、これをパラメータとして、チェック規則に照合し、肉厚の条件と照合する。従来から3Dプリンタが限定された条件において、単に薄肉を表示する技術は知られているが、本発明では受注処理の一環としてこれらの条件に応じて要チェック箇所を抽出することができる点で、抽出精度を高めている。
【0052】
薄肉の条件として凹面における薄肉と凸面における薄肉とをそれぞれ抽出可能であり、凹又は凸面によって条件を変えてもよい。凹凸薄肉チェックステップ(S61)においてエラーが無い場合は、閉鎖空間チェックステップ(S62)に進む。
【0053】
閉鎖空間チェックステップ(S63)では、周囲を焼結等によって造形されたものの、造形されなかった閉鎖空間には造形材料が閉じ込められ、液体または粉体の状態で残る部分を抽出する。閉鎖空間が破れた場合に材料が流出する可能性があるため、閉鎖空間が発見された場合にはエラーとする。
【0054】
さらに、図上では示していないが、要チェック箇所抽出処理部(43)が製造される造形物を構成する複数のパーツ間の距離が条件に適合視無い場合は抽出することができる。複数パーツで構成するデータに対し、パーツ間の距離が近すぎる場合に、造形時の熱の影響を受け パーツ同士が結合するまたは変形するなどの不良が生じるため、パーツ同士が近接する場合にエラーとする。
【0055】
このような要チェック箇所抽出処理に用いられるチェック規則は、熟練した技術者の経験値に基づいて予め手作業によって定義することができる。
あるいは、公知の機械学習処理を導入して、元データと、製造された造形結果のフィードバックとを学習データとして入力し、該学習結果に基づいて要チェック箇所を抽出してもよい。例えば、学習データとして元データの肉厚と、造形結果についての評価(成功、失敗、あるいは評価値)を入力することで、経験値によらずとも学習結果を得ることができる。
【0056】
要チェック箇所抽出処理部(43)における抽出の結果、本発明は要チェック箇所を識別可能に画像上に示した3D画像データを生成する。識別可能な表示方法としては、例えば当該部位から引出線を伸ばして図示する、当該部位の近傍に文字で表示する、など任意であるが、特に要チェック箇所のオブジェクトに所定の着色することが直感的に分かりやすく好適である。
【0057】
以下、受注処理システム(1)の画面例を用いて具体的に説明する。
図7は、クライアント(2)のモニタ(25)に表示される受注処理画面(10)の説明図である。画面上には3D画像データ生成部(44)が生成した3D画像データ(100)が表示される。外形境界線(101)の内側に本体形状(102)がベース色として緑色で表示されている。
【0058】
本体形状(102)の中で要チェック箇所はベース色と異なる着色によって表示される。これは凹凸薄肉チェック結果モデル出力ステップ(S63)や、閉鎖空間形状モデル出力ステップ(S64)などによって出力されている。
【0059】
図8は、凸薄肉チェック結果の出力例である。凸表面において、造形再現肉厚が最小肉厚、例えば0.8mm以下である場合、肉厚部分(103)を赤く表示する。同時に、全画面において最小肉厚(凸表面)未満の面数(104)を表示することで、微小部分の見落としなどを防ぐことができる。
【0060】
図9は、凹薄肉チェック結果の出力例である。凹表面において、溝形状の溝幅が例えば0.8mm以下である場合、溝の側面(105)を青く表示する。同時に、全画面において最小肉厚(凹表面)未満の側面の面数(106)を表示することで、微小部分の見落としなどを防ぐことができる。
【0061】
図10は、閉鎖空間形状モデル出力ステップ(S64)による閉鎖空間チェック結果の出力例である。抽出された閉鎖空間(107)は構成する面をピンク色で表示する。同時に、全画面において閉鎖空間を構成する面数(108)を表示することで、微小部分の見落としなどを防ぐことができる。
【0062】
図11は、要チェック箇所抽出処理部(43)によるパーツ間距離チェック結果の出力例である。パーツ同士が結合するまたは変形するなどの不良が生じる可能性がある場合に、パーツ同士が近接する面(109)を水色で表示する。
【0063】
図4図6のフローチャートに示すように、本発明では受注サーバ(4)の造形再現率算出部(45)が造形再現率を算出(S07)し、金額算出部(46)が受注額を算出(S08)することができる。
【0064】
造形再現率算出ステップ(S07)は、要チェック箇所抽出処理の結果に基づいて、所定の計算式によって元データがどの程度忠実に再現されるかを示す造形再現率を計算することができる。例えば、全面数に対して、要チェック箇所として抽出されなかった面数の割合を造形再現率としてもよい。
【0065】
あるいは、緑で表示されたベース色の表示領域と、着色された領域との面積比を造形再現率としてもよい。内容に応じて重み付けを行い、肉厚に関するエラーを重み10、閉酸空間に関するエラーを重み100、パーツ間距離チェックのエラーを重み5、というように定義し、これらの重みを面数や面積に乗じてもよい。
【0066】
造形再現率は受注処理画面(10)において、右側に百分率で表示(110)する。このように百分率で表示されることによって、ユーザは元データがどの程度忠実に造形に反映されるかを直感的に把握することができ、同時に修正の必要性を判断する指標ともなる。例えば95%と表示されていて、同時に着色された部位が重要な部分で無い場合には、そのまま発注する判断を行うこともできる。このように、造形再現率の表示と要チェック箇所を識別可能に表示することは相乗的な効果を奏するものである。
【0067】
造形再現率は百分率でなくてもよく、例えば10段階で表示したり、A,B,C,D,Eなどランク表示にしてもよい。
【0068】
造形再現率の計算は上記のように所定の計算式を例えば外部記憶装置(6)に格納して用いてもよいし、機械学習によって算出してもよい。すなわち、元データと、要チェック箇所の抽出結果、造形物についての評価を学習データとして入力し、学習結果に従って算出することもできる。
【0069】
閉鎖空間を全く許容しない場合には、図10に示すように造形再現率(110)を0%と表示することもできる。造形再現率が所定の閾値以下の場合には、発注ボタンを押下できないようにしてもよい。
【0070】
図12は、金額算出の出力例である。金額算出ステップ(S08)において、造形物のサイズや、材料の使用量、製造時間等に応じて、所定の計算式によって製造を受注する金額を算出し、受注処理画面(10)に金額表示(111)する。
【0071】
従来から受注金額を自動的に表示する構成は知られているが、本発明では3D画像データ表示(S10)と同時に表示されるので、造形再現率(110)や、要チェック箇所の情報を総合的に考慮して発注処理(S11)を行うかどうかを判断することができる。このため、ユーザは金額、再現率などを十分に理解して発注でき、満足度の向上と、受注時のトラブルの防止にも寄与する。
【0072】
本実施例における受注処理画面(10)の機能について付言する。
まず、透過表示/非透過表示の切り替え機能(112)を有する。モデルの面を透過表示にすることで、モデル内部および壁の反対側の面に付加された評価結果を確認することができる。多くの3Dビューワには透過表示機能の実装が無いが、透過表示/非透過表示の切り替え機能(112)によって、モデルの内部形状の把握を可能にしている。
【0073】
本機能により、素早く内部形状および壁の反対側の面に付加され要チェック箇所を把握することができる。
一方、透過表示により評価結果の面の色が重なり合い、評価結果が見辛い場合もある。そこで、ユーザが表示の透過/非透過を任意に切り替えることで評価結果を素早く正確に把握することを可能にしている。
【0074】
次に、フォーカス機能を備えている。造形再現性抽出箇所に対し、虫眼鏡アイコン(113)をクリックする毎に抽出箇所をフォーカスする。ユーザが面の色を頼りに要チェック箇所を探すことなく、評価結果を把握することができる。
【0075】
次に、断面表示機能を備えている。XYZの各軸を法線とする面で3Dモデルをカットした断面形状を表示することができる。
【0076】
本発明は上記の構成によって、従来技術者に依っていた作業をシステム化かつ自動化することができる。そして、評価における技術者のノウハウを数値化しシステム化することで作業品質の均一化を図り、技術者の作業工数を削減、技術者不足の解消などの効果がある。また、ユーザは時間、場所に関わらず複数回の確認を短時間で実施できる。
【0077】
プリントでの形状再現性には複数の評価項目があり、従来からこれら項目を評価する機能を備えたCAD/CGソフトウェアは存在するが、個々の評価項目に対する機能となっており、且つ技術者が有するノウハウを必要とする。そのため、ユーザ自身が十分に3Dプリントでの形状再現性評価を実施することは困難であった。
本システムでは複数の評価項目に対し同時に自動で技術者のノウハウを以て評価しユーザに回答することができる。
【0078】
本システムに対し、3Dプリントの特性を数値設定することで、製品の種別、大きさなど区別毎の特性を数値化することで、形状再現性のレベルを市場や業種により要求される品質に合わせることができ、システム提供側において、ノウハウとして蓄積することもでき、付加価値の向上に寄与する。
【0079】
ユーザは評価結果を3D画像で確認することで、評価指摘箇所とその内容を容易に理解することができる。ユーザは3Dプリントに対する専用知識を要せず、3Dデータの3Dプリントでの形状再現性を確認することができる。本システムはWEBシステムより構築され評価依頼から回答表示までをウェブブラウザでユーザに提供することで、ユーザ側のPC環境に依らず利便高いサービスを提供する。
【符号の説明】
【0080】
1 受注処理システム
2 クライアント
20 CPU
21 データ送信部
22 画像表示部
23 発注処理部
24 ネットワークアダプタ
25 モニタ
26 キーボード
3 Webサーバ
4 受注サーバ
41 データ受理部
42 検査処理部
43 要チェック箇所抽出処理部
44 3D画像データ生成部
45 造形再現率算出部
46 金額算出部
47 ネットワークアダプタ
5 ネットワーク
6 外部記憶装置
7 3Dプリンタ
10 受注処理画面
100 3D画像データ
101 外形境界線
102 本体形状
103 凸薄肉
104 凸薄肉面数
105 凹薄肉
106 凹薄肉面数
107 閉鎖空間
108 閉鎖空間面数
109 パーツ間近接面
110 造形再現率
111 製造金額
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12