(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057438
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】固定ハウジングと可動ハウジングを備えたコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/91 20110101AFI20220404BHJP
H01R 13/631 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H01R12/91
H01R13/631
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165700
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】玉木 祥一郎
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA04
5E021FA05
5E021FB01
5E021FB02
5E021FC07
5E021FC36
5E021HA05
5E021HC11
5E021HC12
5E021HC14
5E223AB20
5E223AB21
5E223AB26
5E223AC05
5E223EA01
5E223EA02
5E223EA33
(57)【要約】
【課題】従来のコネクタの欠点、例えば、可動ハウジングは、実質的に、端子のみによって固定ハウジングに支持されていることから、端子の劣化が激しく、また、大きな衝撃や振動に対する端子の耐力が十分でないといった問題を解消する。
【解決手段】固定ハウジングと、相手端子の少なくとも一部が挿入される挿入空間を有する可動ハウジングと、挿入空間に挿入された相手端子の少なくとも一部と接続される端子と、固定ハウジングに設置され、可動ハウジングを固定ハウジングに対して可動状態で保持する保持部材とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ハウジングと、
相手端子の少なくとも一部が挿入される挿入空間を有する可動ハウジングと、
前記挿入空間に挿入された前記相手端子の少なくとも一部と接続される端子と、
前記固定ハウジングに設置され、前記可動ハウジングを前記固定ハウジングに対して可動状態で保持する保持部材と、を備えることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記保持部材は、前記可動ハウジングを、前記固定ハウジングに対して弾性保持する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記保持部材は、基部と、前記基部から前記相手端子が挿入される側に向って延びる弾性片とを含む、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記弾性片が、前記可動ハウジングの外周面の一の対向側の外周面にそれぞれ配置される一対の弾性片を含む、請求項2又は3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記一対の弾性片の少なくとも一方の弾性片が、前記挿入空間に前記相手端子が挿入される方向に沿う方向と直交するいずれかの面において、前記一対の弾性片の対向方向と交差する方向に沿って前記可動ハウジングの外周面に位置付けられた、前記可動ハウジングを弾性保持する一対の弾性保持部を有する、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記挿入空間に前記相手端子が挿入される方向に沿う方向と直交するいずれかの面において、前記弾性片の対向方向と交差する方向に沿って、前記可動ハウジングが複数配列されている、請求項4又は5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記保持部材は、前記固定ハウジングとともに被固定部材に固定される被固定部を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項8】
前記端子は、前記可動ハウジングとの間に遊びを設けた状態で前記固定ハウジングに固定される、請求項1乃至7のいずれかに記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定ハウジングと可動ハウジングを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、上記タイプの従来のコネクタの一例が開示されている。
この従来のコネクタでは、端子の一端側に可動ハウジングが、端子の他端側に固定ハウジングがそれぞれ保持されており、端子の弾性変形によって可動ハウジングが固定ハウジングに対して移動することができるものとなっている。
固定ハウジングに対する可動ハウジングのこの移動は、相手側コネクタとの接続時における、振動や衝撃による相手側コネクタとの間における位置ずれを許容すること等に役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成では、可動ハウジングは実質的に端子のみによって固定ハウジングに支持されていることから、端子に大きな負荷がかかり易く、また、大きな衝撃や振動に対する端子の耐力が十分でないといった問題があった。
本発明の目的は、上記の欠点を解消したコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によるコネクタは、固定ハウジングと、相手端子の少なくとも一部が挿入される挿入空間を有する可動ハウジングと、前記挿入空間に挿入された前記相手端子の少なくとも一部と接続される端子と、前記固定ハウジングに設置され、前記可動ハウジングを前記固定ハウジングに対して可動状態で保持する保持部材と、を備えることを特徴として有する。
この態様のコネクタによれば、可動ハウジングは、保持部材によって固定ハウジングに対して可動状態で保持され、端子によっては支持されていないことから、端子に大きな負荷がかかることはなく、従って、端子の劣化を軽減することができる。また、この場合でも、可動ハウジングは、保持部材によって固定ハウジングに対して可動状態で保持されていることから、相手側コネクタとの接続時における、振動や衝撃による相手側コネクタとの間における位置ずれを許容することもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来のコネクタの欠点を解消したコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一つの好適な実施形態によるコネクタの上側斜視図である。
【
図6】本発明のコネクタの使用態様の一例を示す断面斜視図である。
【
図11A】可動ハウジングを保持部材によって弾性保持した状態を示す斜視図である。
【
図11B】可動ハウジングを保持部材によって弾性保持した状態を示す斜視図である。
【
図12】保持部材に被固定部を設けた変形例によるコネクタの上側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する材料、大きさ、形状、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。
【0009】
図1に、本発明の一つの好適な実施形態によるコネクタ1の上側斜視図、
図2に、
図1のA-A線断面斜視図、
図3に、その平面図、
図4に、その底面図、
図5に、
図3のB-B線断面図をそれぞれ示し、更に、
図6に、コネクタ1の使用態様の一例を断面斜視図で示す。
【0010】
コネクタ1は、全体として略直方形状を有しており、固定ハウジング2、可動ハウジング4、保持部材3、端子6、及び固定金具8を含む。これらの構成要素のうち、特に、可動ハウジング4、保持部材3、及び端子6は、それらの一つの組として使用されることから、互いに同数設けられる。本実施形態では、計三組設けられており、従って、可動ハウジング4、保持部材3、及び端子6は、それぞれ3個ずつ設けられている。勿論、このような組数に限定されるものではなく、例えば、3組より少なくてもよいし、それより多くてもよい。可動ハウジング4、保持部材3、及び端子6を含む、これら複数組の配列方向は、固定ハウジング2の長手方向「γ」と一致する。
【0011】
コネクタ1は、相手側コネクタ10(
図6参照)と接続させることができる。接続時、相手側コネクタ10の相手端子11の少なくとも一部が、「α1」方向に沿って可動ハウジング4の挿入空間40に挿入され、挿入空間40に位置付けた端子6の少なくとも一部と電気的に接続される。相手端子11は、また、「α1」と逆方向、即ち、「α2」方向に沿って挿入空間40から抜去される。
【0012】
図6に示すように、コネクタ1は、実際の使用時には、被固定部材である基板13や筐体(図示されていない)に取り付けた状態で使用される。基板13等への取り付けは、主として、固定ハウジング2に設けた固定金具8(
図1乃至
図4参照)を通じて行うことができ、更に、端子6の固定部66を利用することもできる。固定金具8は、基部80とネジ止め部82を含み、それらの全体で側面視略L字状を成す。固定金具8を固定ハウジング2に固定するため、基部80の両側部にそれぞれ、外方に突出する圧入突起80aが設けられている。固定金具8を通じた、基板13や筐体(図示されていない)へのコネクタ1の取り付けは、固定金具8のネジ止め部82を基板13の例えば裏面に沿って位置付け、ネジ止め部82に設けた半円状の切り欠き82aにネジ(図示されていない)の一部を引っ掛けた状態で該ネジを基板13にネジ止めすることによって行う。但し、固定金具8は必ずしも必要なものではなく、後述するように、例えば、保持部材3の一部によって代替することもできる。
【0013】
図7Aに、固定ハウジング2の斜視図、
図7Bに、その平面図、
図7Cに、その底面図をそれぞれ示す。固定ハウジング2は、樹脂から成り、断面略凹状の収容空間20を有する。収容空間20の、相手端子11の挿入側「m」は開放されており、この開放側を通じて、保持部材3、端子6、及び可動ハウジング4が、これらの順に、挿入方向「α1」に沿って、相手端子11が挿入される側「m」から固定ハウジング2の側「n」に向って取り付けられる。このとき、保持部材3及び端子6は、それぞれ、固定ハウジング2に直接取り付けられるのに対し、可動ハウジング4は、固定ハウジング2と同様に樹脂から成り、また、固定ハウジング2に直接取り付けられず、固定ハウジング2に設置された保持部材3によって弾性保持される。また、端子6は、可動ハウジング4とは無関係に、可動ハウジング4との間に遊びを設けた状態で、固定ハウジング2にのみ固定される。これら保持部材3、端子6、及び可動ハウジング4の取り付けは、一連の連続作業として行うことができ、よって、コネクタ1の組み立て作業を容易にすることができる。固定ハウジング2は、その底部に、貫通穴22を有しており、コネクタ1と相手側コネクタ10の接続時には、この貫通穴22を通じて、相手側コネクタ10の相手端子11を逃がすことができるようになっている。
【0014】
固定ハウジング2に保持部材3を設置するため、収容空間20の内周面25、特に、内周面25の固定ハウジング2の短手方向「β」における対向側に、1つの保持部材3について一対の溝25b、25cが、固定ハウジング2の長手方向「γ」に沿って設けられている。本実施形態では、保持部材3の個数(3個)に対応して、計三対の溝25b、25cが設けられている。各対における溝25bと溝25cは、互いに設けられている位置が短手方向「β」において相違するだけで、それらの大きさ及び形状は実質的に同じである。各溝25b、25cは、保持部材3と取り付け方向と同様に、挿入方向「α1」に沿って、相手端子11が挿入される側「m」から固定ハウジング2の側「n」に向って延びている。
【0015】
また、固定ハウジング2に端子6を取り付けるため、収容空間20の内周面25、特に、内周面25の短手方向「β」、言い換えれば、保持部材3を設置するための対の溝25b、25cに沿う方向であって、且つ、それら対の溝25b、25cよりも外側、特に、溝25cの側に、1個の端子6について1個の溝25aが、長手方向「γ」に沿って設けられている。本実施形態では、端子6の個数(3個)に対応して、計3個の溝25aが設けられている。各溝25aは、溝25b、25cと同様に、挿入方向「α1」に沿って、相手端子11が挿入される側「m」から固定ハウジング2の側「n」に向って延びている。各溝25aはまた、溝25b、25cと異なり、固定ハウジング2の底部を貫通した状態で設けられている。短手方向「β」における、溝25aと溝25cとの間には、更に、端子6の一部(第二のU字部683)を受け入れることができる有底の凹部25dが、溝25a等と同方向「α」に沿って延びている。
【0016】
固定ハウジング2に固定金具8を取り付けるため、固定ハウジング2の外周面26における、一の対向側、ここでは、固定ハウジング2の長手方向「γ」における対向側に、それぞれ、「α」方向及び「β」方向に沿ってそれぞれ窪んだ一対の溝26aが設けられている。これらの溝26aに、それぞれ、固定金具8の圧入突起80aを圧入することによって、固定金具8は固定ハウジング2に固定される。但し、固定金具8は、保持部材3等とは逆に、抜去方向「α2」に沿って、固定ハウジング2の側「n」から相手端子11が挿入される側「m」に向って取り付けられる。
【0017】
図8A、8Bに、端子6の斜視図及び側面図をそれぞれ示す。端子6は、一枚の金属板を打ち抜き、折り曲げることによって形成される。各端子6は、基部64、基部64の一端側に設けた固定部66、更に、基部64の他端側に設けた湾曲部68及び接続部62を含む。基部64は、固定ハウジング2の溝25aに固定した状態で使用する。また、固定部66は、基板13(
図6参照)に固定した状態で使用する。更に、湾曲部68及び接続部62は、基部64及び/又は固定部66において固定されることにより、片持ち梁状に支持され、相手端子との間における位置ずれを許容できるよう弾性変形可能な状態で使用される。
【0018】
基部64は、固定ハウジング2に取り付けられる部分である。固定金具8の基部80と同様に、両側部のそれぞれに、外方に突出する圧入突起64aを有する。各端子6の基部64を、挿入方向「α1」に沿って、固定ハウジング2の内周面25に設けたそれぞれの溝25a(
図7A、7B等参照)に圧入することにより、各端子6は、圧入突起64aを利用して固定ハウジング2に固定される。端子6は、基部64においてのみ、固定ハウジング2に固定され、他の部分は、いずれの部材にも固定されない。言い換えれば、端子6は、可動ハウジング4との間に遊びを設けた状態にあり、可動ハウジング4とは全く別個に動作し得る。この場合、端子6は、他の部材による、例えば振動の影響を受けることはなく、共振周波数も適切に抑制することができる。
【0019】
固定部66は、基部64との間で側面視略L字状を成す部分であって、基部64を溝25aに圧入された状態で、基板13の、例えば裏面に沿って位置付けられる。固定部66は、半田等を利用して被固定部材である基板13に固定される。従って、固定部66は、固定金具8と同様に、基板13等へのコネクタ1の取り付けに利用することもできる。
【0020】
接続部62は、相手端子11が挿入される側「m」に向って延びる2個の接触片621、622を含む。接触片621、622は、湾曲部68に接続された連結部60によって互いに連結されている。各接触片621、622は、側面視略「く」の字形状を成すことにより互いに接近する方向に折り曲げられており、それらの片621、622が形成する凸部同士の間に、挿入空間40に挿入された相手端子11の少なくとも一部を弾性挟持する接点62aを構成している。
【0021】
湾曲部68は、基部64と接続部62の間を繋ぐ部分であって、接続部62に弾性を付与する。湾曲部68を設けたことにより、相手側コネクタとの接続時における、振動や衝撃による相手側コネクタとの間における位置ずれを許与することができる。湾曲部68は、接続部62の側から基部64の側に向って、略矩形状の第一のU字部681、逆U字部682、及び第二のU字部683をこれらの順に含む。これら複数の部分を設けたことにより、特に、短手方向「β」における位置ずれを効果的に許容することができる。特に、第二のU字部683は、基部64を、固定ハウジング2の内周面25に設けた溝25a(
図7A、7B等参照)に圧入する際に、固定ハウジング2の内周面25に設けた凹部25d(
図7A、7B等参照)に配置される。
【0022】
図9A、9Bに、保持部材3の斜視図及び側面図をそれぞれ示す。保持部材3は、一枚の金属板を打ち抜き、折り曲げることによって形成される。保持部材3は、本実施形態に示すように、左右対称形状を有するものであってもよい。保持部材3には、主として、基部31と、基部31から相手端子が挿入される側「m」に向ってそれぞれ延びる係止部34及び弾性片32が含まれる。係止部34a、34b及び弾性片32a、32bは、それぞれ、本実施形態に示すように、一対ずつ設けてもよい。
【0023】
基部31は、固定ハウジング2の底部側に略水平に配置される略矩形板状の部分であって、その中心付近に開口31aを有する。保持部材3が固定ハウジング2に設置されたとき、保持部材3の開口31aは、固定ハウジング2の貫通穴22と連通し、貫通穴22と同様に、相手側コネクタ10の相手端子11を逃がす働きを持つ。
【0024】
係止部34a、34bは、保持部材3を固定ハウジング2に設置したとき、固定ハウジング2に設けた対の溝25b、25cにそれぞれ圧入固定される。この結果、保持部材3は、固定ハウジング2の所定位置に固定される。圧入するため、係止部34a、34bには、各溝25b、25cの幅方向「γ」に延びる圧入突起340が設けられている。
【0025】
弾性片32a、32bは、それぞれ、挿入空間40に相手端子11が挿入される方向「α1」に沿う方向「α」と直交するいずれかの面「β―γ面」において、一の対向方向「β」と交差する方向、例えば、直交する方向「γ」に沿って、一対の弾性片部321、322、又は、一対の弾性片部323、324を有する。
【0026】
一方の弾性片32aにおける一対の弾性片部321、322は、それぞれ、相手端子が挿入される側「m」に向って延びており、それらの端部中間付近に、一の対向方向「β」において相手弾性片32bに接近する側に向って折り曲げられた弾性保持部321a、322aを有し、且つ、それらの端部に、一の対向方向「β」と直交する方向「γ」において互いに接近する側に折り曲げられた略L字状の把持部321b、322bを有する。
【0027】
同様に、他方の弾性片32bにおける一対の弾性片部323、324は、それぞれ、相手端子が挿入される側「m」に向って延びており、それらの端部中間付近に、一の対向方向「β」において相手弾性片32aに接近する側に向って折り曲げられた弾性保持部323a、324aを有し、且つ、それらの端部に、一の対向方向「β」と直交する方向「γ」において互いに接近する側に折り曲げられた略L字状の把持部323b、324bを有する。
【0028】
基部31において、弾性片32a、32b同士、更に詳細には、一方の弾性片32aの弾性片部321と他方の弾性片32bの弾性片部323同士、及び、一方の弾性片32aの弾性片部322と他方の弾性片32bの弾性片部324同士は、それぞれ、挿入空間40に相手端子11が挿入される方向「α1」に沿う方向「α」と直交するいずれかの面「β―γ面」における、一の対向方向(例えば、「β」方向)における対向側に、一の対向方向「β」において互いに接近する方向に付勢された状態で対向配置されている。
【0029】
また、基部31において、一方の弾性片32aの一対の弾性保持部321a、322a同士(これらの端部側に設けた一対の把持部321b、322b同士も同様)は、それぞれ、一の対向方向「β」と直交する方向「γ」においても互いに接近する方向に付勢されており、同様に、他方の弾性片32bの弾性保持部323a、324a同士(これらの端部側に設けた把持部323b、324b同士も同様)は、一の対向方向「β」と直交する方向「γ」においても互いに接近する方向にそれぞれ付勢されている。
【0030】
図10A、10Bに、可動ハウジング4の斜視図及び側面図をそれぞれ示し、また、
図11A、11Bに、可動ハウジング4を保持部材3によって弾性保持した状態を斜視図で示し、更に、
図11Cに、
図11A、11Bの側面図を示す。可動ハウジング4は、本実施形態のように、保持部材3と同様に、左右対称形状を有するものであってもよい。
【0031】
各可動ハウジング4は、全体として縦長の略直方形状を成し、挿入方向「α1」に沿う方向「α」に挿入空間40を有する。挿入空間40には、挿入口41を通じて、相手端子11(
図6参照)の少なくとも一部が挿抜され得る。相手端子11の挿入を容易にするため、挿入口41には、相手端子11の挿入側「m」からそれとは反対の側「n」に向って先細となるテーパー41aが設けられている。可動ハウジング4は、この挿入空間40を通じて、挿入方向「α」において貫通した状態で設けられている。但し、必ずしも挿入方向「α」において貫通している必要はない。
【0032】
可動ハウジング4のフランジ42の下側に位置する外周面44、45の、例えば、「γ」方向に沿う一の対向側の外周面44にそれぞれ、一の対向方向「β」と直交する方向「γ」に沿って、中央突起部43と、中央突起部43を挟んでその両側に延びる凹陥部46が設けられている。中央突起部43は、「β」方向において、可動ハウジング4の外方に突出した状態で設けられており、これとは逆に、凹陥部46は、「β」方向において、可動ハウジング4の内方に引っ込んだ状態で設けられている。中央突起部43は、「α-γ面」において、略十字形状を有しており、十字の肩部48の「α」方向における上側に、凹陥部46と同様に可動ハウジング4の内方に引っ込んだ窪み43bを有し、一方、十字の肩部48の「α」方向における下側に、「α」方向に沿って肩部48の上側に向うにつれて「β」方向において外方に突出している傾斜部43aを有する。
【0033】
固定ハウジング2に、保持部材3と可動ハウジング4を取り付ける際は、固定ハウジング2に保持部材3を予め設置しておき、設置された保持部材3に対して、更に言えば、設置された保持部材3の一対の弾性片32a、32bに対して、可動ハウジング4を、挿入方向「α1」に沿って、相手端子11が挿入される側(m)から固定ハウジング2の側(n)に向って移動させる。このとき、例えば、弾性片32aにおいては、一対の弾性片部321、322にそれぞれ設けた弾性保持部321a、322aが、可動ハウジング4の外周面44に設けた凹陥部46に嵌る。また、これと略同時期に、一対の弾性片部321、322にそれぞれ設けた略L字状の把持部321b、322bが、可動ハウジング4の外周面44に設けた傾斜部43aを摺動して十字の肩部48を乗り越えて窪み43bに嵌る。この結果、可動ハウジング4は、弾性保持部321a、322aにおいて、保持部材3によって弾性保持される。このとき、可動ハウジング4は、実質的に、弾性保持部321a、322aによってのみ支持され、保持部材3の基部31から多少浮いた状態にある。また、このとき、可動ハウジング4は、弾性片32a、32bの働きによって、保持部材3によって弾性保持された状態で、特に、「β」方向及び「γ」方向において、自由に移動し得る。更に、この状態にあるときは、可動ハウジング4を保持部材3から抜ける方向「α2」に移動させようとしても、略L字状の把持部321b、322bが肩部48と衝突してしまうため、可動ハウジング4が、保持部材3や固定ハウジング2の収容空間20から容易に抜け出してしまうことはない。
【0034】
以上の説明は、好ましい実施形態に関するものであり、物品を単に代表するものであることを理解すべきである。異なる実施形態の変形及び修正が上述の教示に照らして当業者に容易に明らかになることを認めることができる。従って、例示的実施形態並びに代替的な実施形態は、添付の特許請求の範囲で説明する物品及び方法の精神から逸脱することなく行うことができる。
【0035】
例えば、本実施形態では、被固定部材である基板13等に、コネクタ1を取り付けるために、主として、固定ハウジング2に設けた固定金具8(
図1乃至
図4参照)を用いていたが、例えば、
図12、13に示すように、固定金具8に代えて、保持部材3Aに、基板13等に固定される被固定部37を設けてもよい。
図12は、変形例によるコネクタ1Aの上側斜視図、
図13は、変形例による保持部材の斜視図であって、それぞれ、
図1、
図9Aに対応する。尚、これらの
図12、13において、
図1等に示した部材と同様の部材には、同じ参照番号に「A」の文字を付している。この変形例の構成によれば、固定ハウジング2Aに固定された保持部材3Aの一部である被固定部37を利用して、コネクタ1を被固定部材に固定することができることから、固定金具8を省略することができる。勿論、固定金具8を省略せずに、固定金具8と共に、被固定部37を用いて、固定力を更に強化してもよい。
また、本実施形態では、弾性片34を、保持部材3の一部とし金属で形成していたが、樹脂によって形成することもできる。この場合、弾性片を、可動ハウジング4や固定ハウジング2の一部によって形成することもできる。従って、保持部材3と、可動ハウジング4及び固定ハウジング2は、常に、完全に別個のものとする必要は必ずしもない。
更に、本実施形態では、可動ハウジング4は、固定ハウジング2に対して弾性保持されるとしていたが、必ずしも弾性保持される必要はなく、固定ハウジング2に対して、弾性を有さずに可動状態で保持されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 コネクタ
2 固定ハウジング
3 保持部材
4 可動ハウジング
6 端子
8 固定金具
10 相手側コネクタ
11 相手端子
13 基板
20 収容空間
25 内周面
25a乃至25c 溝
31 基部
32 設置部
40 挿入空間
42 フランジ
43 中央突起部
43a 傾斜部
43b 窪み
44、45 外周面
46 凹陥部
48 肩部
62 接続部
64 基部
68 湾曲部