(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057468
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂発泡粒子、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体、発泡樹脂複合体、熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法及び熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/16 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
C08J9/16 CFD
C08J9/16 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165746
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】田井 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】田積 皓平
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼▲原▼ 佑輔
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA66
4F074AA66L
4F074AA74
4F074AA98
4F074AB03
4F074AB04
4F074AB05
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA95
4F074BB10
4F074BC12
4F074CA22
4F074CA35
4F074CA49
4F074CC06X
4F074DA02
4F074DA12
4F074DA13
4F074DA20
(57)【要約】
【課題】従来技術では、温度が上昇した後に、発泡粒子成形体が軟弱になるという事情を鑑み、耐熱強度に優れる熱可塑性樹脂発泡粒子を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含み、前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含み、ガラス転移温度が単一であることよりなる。前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度は80~130℃が好ましく、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が3~35J/gであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含み、
ガラス転移温度Tgが単一である、熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項2】
前記ガラス転移温度Tgは、80~130℃である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項3】
加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が3~35J/gである、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエステル系樹脂の含有割合は、40~95質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリイミド系樹脂の含有割合は、5~60質量%である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項5】
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における損失正接tanδが最大となる温度は、120~230℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項6】
前記ポリイミド系樹脂がポリエーテルイミド系樹脂である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項7】
前記ポリエステル系樹脂が、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が、リサイクル原料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂と発泡剤とを含む熱可塑性樹脂組成物を押し出し、発泡して、熱可塑性樹脂発泡粒子を得る工程を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物は、架橋剤をさらに含む、請求項9に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項11】
熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含み、
ガラス転移温度Tgが単一である、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【請求項12】
前記ガラス転移温度Tgは、80~130℃以下である、請求項11に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【請求項13】
加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値は、3~35J/gである、請求項11又は12に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエステル系樹脂の含有割合は、40~95質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリイミド系樹脂の含有割合は、5~60質量%である、
請求項11~13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【請求項15】
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における損失正接tanδが最大となる温度は、120~230℃である、請求項11~14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【請求項16】
前記ポリイミド系樹脂がポリエーテルイミド系樹脂である、請求項11~15のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【請求項17】
前記ポリエステル系樹脂が、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【請求項18】
前記熱可塑性樹脂が、リサイクル原料を含む、請求項11~17のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【請求項19】
請求項9又は10に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法により前記熱可塑性樹脂発泡粒子を得、得られた熱可塑性樹脂発泡粒子を金型のキャビティ内に充填し、前記キャビティ内の前記熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡粒子とし、前記二次発泡粒子同士を熱融着させて熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を得る、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項20】
請求項11~18のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体と、前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面の少なくとも一部に設けられた繊維強化樹脂層とを有する、発泡樹脂複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡粒子、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体、発泡樹脂複合体、熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法及び熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を含む発泡粒子(熱可塑性樹脂発泡粒子)の成形体(熱可塑性樹脂発泡粒子成形体)は、軽量で、断熱性、緩衝性及び機械的強度に優れている。このため、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体(単に「発泡粒子成形体」ということがある)は、自動車、航空機、鉄道車両等への適用が検討されている。
熱可塑性樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂は、剛性及び耐熱性に優れた発泡粒子成形体となり得るため、ポリエスエル系樹脂を用いた発泡粒子成形体の検討が進められている。
【0003】
発泡粒子成形体の製造方法として、型内発泡成形が挙げられる。型内発泡成形について、説明する。熱可塑性樹脂発泡粒子(単に、「発泡粒子」ということがある)を金型のキャビティ内に充填する。キャビティ内の発泡粒子を熱水や水蒸気等の加熱媒体によって加熱して発泡させて二次発泡粒子としつつ、発泡粒子の発泡圧によって二次発泡粒子同士を熱融着一体化させて、所望形状の発泡粒子成形体を得る。
【0004】
例えば、特許文献1では、低結晶化度のポリエチレンテレフタレート(PET)の予備発泡粒子を金型内に充填し、金型表面の温度をPETのガラス転移温度Tgよりも高い温度に加熱して型内発泡成形を行い、次いで所定の時間をかけて金型の表面温度がガラス転移温度Tgよりも低くならないように冷却する発泡粒子成形体の製造方法が開示されている。特許文献1の発明によれば、型内発泡成形のための加熱終了後に、その成形体を金型から取り出さずに金型の表面温度がTgよりも低くならないように冷却することで、発泡粒子成形体の結晶化を促進して、加熱寸法安定性の向上を図っている。しかし、特許文献1の発明は、結晶化を促進するための冷却工程を要するため、成形時間が長くなるといった問題を有している。なお、「加熱寸法安定性」とは、発泡粒子成形体の温度が高められた際に、伸長又は収縮を生じにくい性質を意味する。
【0005】
こうした問題に対して、特許文献2には、結晶性ポリエステル系樹脂と、特定のガラス転移温度Tgの非晶性ポリエステル系樹脂とを特定の割合で含有する発泡粒子の製造方法が提案されている。特許文献2の発明によれば、結晶性ポリエステル系樹脂よりも高いガラス転移温度Tgを有する非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂を含有していることから、この熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形して得られる発泡粒子成形体は、結晶化度を上昇させるための工程を要することなく優れた加熱寸法安定性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2000/035650号
【特許文献2】特開2014-070153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の発明は、加熱寸法安定に優れるものの、加熱されると軟弱になる(耐熱強度が低い)。このため、温度が上昇すると、剛性が低下するおそれがある。
そこで、本発明は、耐熱強度に優れる熱可塑性樹脂発泡粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶性ポリエステル系樹脂との混合物は充分に相溶していないため、2種のポリエステル系樹脂の内の低い方のガラス転移温度に達すると、軟化して変形を生じるとの知見を得た。この知見を基に、相溶性の高い2種の樹脂を含ませることで、耐熱強度を高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の態様を有する。
<1>
熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含み、
ガラス転移温度Tgが単一である、熱可塑性樹脂発泡粒子。
<2>
前記ガラス転移温度Tgは、80~130℃である、<1>に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<3>
加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が3~35J/gである、<1>又は<2>に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<4>
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエステル系樹脂の含有割合は、40~95質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリイミド系樹脂の含有割合は、5~60質量%である、
<1>~<3>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<5>
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における損失正接tanδが最大となる温度は、120~230℃である、<1>~<4>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<6>
前記ポリイミド系樹脂がポリエーテルイミド系樹脂である、<1>~<5>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<7>
前記ポリエステル系樹脂が、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、<1>~<6>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
<8>
前記熱可塑性樹脂が、リサイクル原料を含む、<1>~<7>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子。
【0010】
<9>
前記熱可塑性樹脂と発泡剤とを含む熱可塑性樹脂組成物を押し出し、発泡して、熱可塑性樹脂発泡粒子を得る工程を有する、<1>~<8>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法。
<10>
前記熱可塑性樹脂組成物は、架橋剤をさらに含む、<9>に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法。
【0011】
<11>
熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含み、
ガラス転移温度Tgが単一である、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
<12>
前記ガラス転移温度Tgは、80~130℃以下である、<11>に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
<13>
加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値は、3~35J/gである、<11>又は<12>に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
<14>
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリエステル系樹脂の含有割合は、40~95質量%であり、
前記熱可塑性樹脂の総質量に対する前記ポリイミド系樹脂の含有割合は、5~60質量%である、
<11>~<13>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
<15>
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における損失正接tanδが最大となる温度は、120~230℃である、<11>~<14>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
<16>
前記ポリイミド系樹脂がポリエーテルイミド系樹脂である、<11>~<15>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
<17>
前記ポリエステル系樹脂が、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、<11>~<16>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
<18>
前記熱可塑性樹脂が、リサイクル原料を含む、<11>~<17>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体。
【0012】
<19>
請求項9又は10に記載の熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法により前記熱可塑性樹脂発泡粒子を得、得られた熱可塑性樹脂発泡粒子を金型のキャビティ内に充填し、前記キャビティ内の前記熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡粒子とし、前記二次発泡粒子同士を熱融着させて熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を得る、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の製造方法。
【0013】
<20>
<11>~<18>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体と、前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の表面の少なくとも一部に設けられた繊維強化樹脂層とを有する、発泡樹脂複合体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂発泡粒子によれば、耐熱強度の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
【
図2】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
【
図3】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
【
図4】本発明の熱可塑性樹脂発泡粒子の製造装置の一例を示す側断面模式図である。
【
図5】本発明の熱可塑性樹脂発泡粒子の製造装置の一例を示す正面模式図である。
【
図6】本発明の熱可塑性樹脂発泡粒子の製造装置の一例を示す正面模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る発泡樹脂複合体の断面図である。
【
図9】実施例3の損失正接tanδの測定結果を示すグラフである。
【
図10】比較例1の損失正接tanδの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本稿において、「~」はその両端の値を下限値及び上限値として含む範囲を表す。
【0017】
(熱可塑性樹脂発泡粒子)
本発明の熱可塑性樹脂発泡粒子(発泡粒子)は、熱可塑性樹脂を含む。発泡粒子は、熱可塑性樹脂と発泡剤とを含む熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある)を造粒し、発泡してなる粒子である。
発泡粒子は、粒子状の発泡体である。発泡粒子は、いわゆる型内発泡成形で成形される熱可塑性樹脂発泡粒子成形体(発泡粒子成形体)の原料に用いられる。
【0018】
<熱可塑性樹脂>
発泡粒子の熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含む。本発明の発泡粒子は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂との双方を含むことで、発泡粒子成形体の耐熱強度を高められる。
【0019】
≪ポリエステル系樹脂≫
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリエチレンフラノエート樹脂(PEF)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂(C-PET)がより好ましい。C-PETは、酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコールであるポリエステル系樹脂である。
ポリエステル系樹脂は、石油化学品由来のポリエステル系樹脂でもよいし、いわゆるバイオPET等の植物由来のポリエステル系樹脂でもよいし、これらの混合物でもよい。
植物由来のポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、植物由来のポリエチレンフラノエート樹脂、植物由来のポリトリメチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
また、ポリエステル系樹脂は、リサイクル原料でもよい。
これらのポリエステル系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0020】
以下、植物由来のポリエステル系樹脂について説明する。
植物由来のポリエステル系樹脂は、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーである。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来のポリエステル系樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
【0021】
植物由来のポリエステル系樹脂について、PET、PEFを例にして説明する。
【0022】
PETの合成反応を(1)式に示す。nモルのエチレングリコールとnモルのテレフタル酸(Benzen-1,4-dicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PETが合成される。この合成反応における化学量論上の質量比は、エチレングリコール:テレフタル酸=30:70(質量比)である。
【0023】
【0024】
[(1)式中、nは化学量論係数(重合度)であり、250~1100の数である。]
【0025】
エチレングリコールは、エチレンを酸化し、水和することで、工業的に製造される。また、テレフタル酸は、パラキシレンを酸化することで、工業的に製造される。
ここで、
図1に示すように、植物由来のエタノール(バイオエタノール)の脱水反応によりエチレンを得、このエチレンから合成されたエチレングリコール(バイオエタノール由来のエチレングリコール)と、石油化学品由来のテレフタル酸からPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来30質量%のPETである。
また、
図2に示すように、植物由来のイソブタノール(バイオイソブタノール)の脱水反応によりパラキシレンを得、このパラキシレンから合成したテレフタル酸と、バイオエタノール由来のエチレングリコールとからPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来100質量%のPETである。
【0026】
PEFの合成反応を(2)式に示す。nモルのエチレングリコールと、nモルのフランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PEFが合成される。
【0027】
【0028】
[(2)式中、nは化学量論係数(重合度)であり、250~1100の数である。]
【0029】
フランジカルボン酸(FDCA)は、例えば、植物由来のフルクトースやグルコースの脱水反応によってヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を得、HMFを酸化して得られる。
図3に示すように、FDCA及びエチレングリコールの双方が植物由来の場合、製造されるPEFは、植物由来100質量%のPEFである。
【0030】
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、50~100℃が好ましく、60~90℃がより好ましく、70~85℃がさらに好ましい。Tgが上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tgが上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。なお、「成形性」は、例えば、発泡粒子を金型のキャビティに充填し、これを加熱して二次発泡させた際に、所望の形状に近づけられることであり、所望の形状に近づくほど、成形性は「良好」である。
【0031】
ポリエステル系樹脂の融点は、230~270℃が好ましく、240~260℃がより好ましく、245~255℃がさらに好ましい。融点が上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。融点が上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
【0032】
ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、0.5~1.5が好ましく、0.6~1.3がより好ましく、0.7~1.2がさらに好ましい。IV値が上記下限値以上であれば、発泡時の破泡が抑制され、連続気泡率をより低められる。IV値が上記上限値以下であれば、密度をより低くし、表面をより平滑にして、外観の美麗さを高められる。
IV値は、JIS K7367-5(2000)の方法で測定できる。
【0033】
ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnは、9,000~45,000であり、15,000~43,000が好ましく、20,000~40,000がより好ましい。
Mnが上記下限値以上であれば、耐寒性(即ち、低温での機械的強度)をさらに高められる。Mnが上記上限値以下であれば、耐熱性をさらに高められる。
【0034】
ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzは、50,000~500,000であり、180,000~450,000が好ましく、100,000~400,000がより好ましい。
Mzが上記範囲内であれば、耐寒性(即ち、低温での機械的強度)をさらに高められる。
【0035】
Mn及びMzは、以下の方法で測定できる。
[ポリエステル系樹脂の分子量]
測定対象から試料5mgを取り、これにヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)0.5mL、クロロホルム0.5mLの順に追加して軽く手動で振とうする。これを浸漬時間24±1.0hrで放置する。試料が完全に溶解したことを確認後に、クロロホルムで10mLに希釈して軽く手動で振とうして、混合する。その後、ジーエルサイエンス(株)製の非水系0.45μmのクロマトディスク、又は(株)島津ジーエルシー製の非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過して、測定試料とする。測定試料を次の測定条件にて、クロマトグラフで測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の数平均分子量Mn及びZ平均分子量Mzを求める。
【0036】
〔測定装置〕
・測定装置=東ソー(株)製、「HLC-8320GPC EcoSEC」、ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)。
〔GPC測定条件〕
・カラム
〈サンプル側〉
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL-H(6.0mm×4.0cm)×1本。
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列。
〈リファレンス側〉
抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列。
カラム温度=40℃。
移動相=クロロホルム。
〈動相流量〉
サンプル側ポンプ=1.0mL/分。
リファレンス側ポンプ=0.5mL/分。
検出器=UV検出器(254nm)。
注入量=15μL。
測定時間=26分。
サンプリングピッチ=500m秒。
【0037】
〔検量線用標準ポリスチレン試料〕
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM-105」及び「STANDARD SH-75」から、質量平均分子量Mwが5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、131,000、54,000、20,000、7,590、3,450、1,320のものを用いる。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、131,000、20,000、3,450)及びB(3,120,000、442,000、54,000、7,590、1,320)にグループ分けする。Aを秤量(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解する。Bを秤量(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解する。
標準ポリスチレン検量線は、作成した各A及びB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得る。その検量線を用いて数平均分子量Mn及びZ平均分子量Mzを算出する。
【0038】
発泡粒子に含まれる熱可塑性樹脂の総質量に対するポリエステル系樹脂の含有割合は、40~95質量%が好ましく、45~90質量%がより好ましく、50~80質量%がさらに好ましく、50~70質量%が特に好ましい。ポリエステル系樹脂の含有割合が上記下限値以上であれば、成形性を高められる。ポリエステル系樹脂の含有割合が上記上限値以下であれば、耐熱強度をより高められる。
【0039】
≪ポリイミド系樹脂≫
ポリイミド系樹脂としては、特に限定されないが、環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであることが好ましく、溶融成形性を有するポリマーであることが好ましい。
ポリイミド系樹脂としては、例えば、米国特許第4141927号明細書、特許第2622678号公報、特許第2606912号公報、特許第2606914号公報、特許第2596565号公報、特許第2596566号公報、特許第2598478号公報などに記載されるポリエーテルイミド、特許第2598536号公報、特許第2599171号公報、特開平9-48852号公報、特許第2565556号公報、特許第2564636号公報、特許第2564637号公報、特許第2563548号公報、特許第2563547号公報、特許第2558341号公報、特許第2558339号公報、特許第2834580号公報に記載のポリマー等が挙げられる。本発明の効果が損なわれない範囲であれば、ポリイミド系樹脂の主鎖に環状イミド以外の構造単位が含まれていてもよい。環状イミド以外の構造単位としては、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が挙げられる。
また、ポリイミド系樹脂は、リサイクル原料でもよい。
これらのポリイミド系樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0040】
ポリイミド系樹脂は、例えば、下記(3)式で表される化合物が好ましい。
【0041】
【0042】
[(3)式中、Rは、炭素数6~42の炭素原子の有する芳香族基であり、R’は、炭素数6~30の2価の芳香族基、炭素数2~30の脂肪族基及び炭素数4~30の脂環族基からなる群から選ばれた少なくとも1種の2価の有機基である。pは繰り返し単位を表す数である。]
【0043】
ポリイミド系樹脂としては、ポリエステル系樹脂との相溶性を高める観点から、エーテル結合を有する構造単位を有するポリエーテルイミド系樹脂が好ましい。
【0044】
ポリイミド系樹脂は、従来公知の製造方法により調製できる。例えば、(3)式中のRを誘導することができる原料であるテトラカルボン酸並びにその酸無水物のいずれかもしくは双方と、(3)式中のR’を誘導することができる原料である脂肪族一級ジアミン並びに芳香族一級ジアミンよりなる群から選ばれる一種もしくは二種以上の化合物を脱水縮合することにより得られる。ポリイミド系樹脂の製造方法として具体的には、ポリアミド酸を得て、次いで、加熱閉環する方法を例示することができる。または、酸無水物とピリジン、カルボジイミド等の化学閉環剤を用いて化学閉環する方法、上記テトラカルボン酸無水物と上記R’を誘導することのできるジイソシアネートとを加熱して脱炭酸を行って重合する方法等を例示できる。
【0045】
テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、1,1’-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,2’-ビス[(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン及びその酸無水物等が挙げられる。
【0046】
ジアミンとしては、例えば、ベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルブタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルベンゾフェノン、o,m,p-フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等及びこれらの芳香族一級ジアミンの炭化水素基を構造単位に有する芳香族一級ジアミン、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジメチルアミン、2-メチル-1,3-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等及びこれらの脂肪族、並びに脂環族一級ジアミンの炭化水素基を構造単位に有する脂肪族及び脂環族一級ジアミン等を例示できる。
【0047】
ポリイミド系樹脂のガラス転移温度Tgは、190~240℃が好ましく、200~230℃がより好ましく、210~220℃がさらに好ましい。Tgが上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tgが上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
【0048】
ポリイミド系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、3~30g/10分が好ましく、5~25g/10分がより好ましく、7~20g/10分がさらに好ましい。MFRが上記下限値以上であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。MFRが上記上限値以下であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。
【0049】
ポリイミド系樹脂の数平均分子量は、5,000~50,000が好ましく、6,000~39,000がより好ましく、7,000~27,000がさらに好ましい。ポリイミド系樹脂の数平均分子量が上記下限値以上であれば耐衝撃性をより高められる。ポリイミド系樹脂の数平均分子量が上記上限値以下であれば成形性をより高められる。
【0050】
発泡粒子に含まれる熱可塑性樹脂の総質量に対するポリイミド系樹脂の含有割合は、5~60質量%が好ましく、10~55質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましく、30~50質量%が特に好ましい。ポリイミド系樹脂の含有割合が上記下限値以上であれば、耐熱強度をより高められる。ポリイミド系樹脂の含有割合が上記上限値以下であれば、成形性をより高められる。
【0051】
発泡粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、リサイクル原料を含んでいてもよい。ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂の何れか一方にリサイクル原料を含んでいてもよく、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂の両方にリサイクル原料を含んでいてもよい。ポリエステル系樹脂の一部又は全部がポリエステル系樹脂のリサイクル原料であってもよく、ポリイミド系樹脂の一部又は全部がポリイミド系樹脂のリサイクル原料であってもよい。
リサイクル原料は、例えば、次の原料等が挙げられる。
1)発泡粒子又は発泡粒子成形体等の発泡体を粉砕して得られるフレーク状の樹脂を押出機で再溶融させ、ノズル金型よりストランド状に押出し、これを冷却した後ペレタイズした回収ペレット。
2)PETボトルを粉砕して得られるフレーク状の樹脂を押出機で再溶融させ、ノズル金型よりストランド状に押出し、これを冷却した後ペレタイズした再生PET。
【0052】
≪その他の樹脂≫
発泡粒子は、熱硬化性樹脂を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、全く含まないか、発泡粒子の品質に影響しない程度に含むことをいう。発泡粒子に含まれる熱硬化性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0質量%が最も好ましい。
【0053】
熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂及びポリイミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂)を含んでもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂等が挙げられる。
【0054】
熱可塑性樹脂の総質量に対して、ポリエステル系樹脂及びポリイミド系樹脂の合計割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、100質量%が最も好ましい。ポリエステル系樹脂及びポリイミド系樹脂の合計割合が上記下限値以上であれば、発泡粒子の耐熱強度をより高められる。
【0055】
≪物性≫
発泡粒子は、単一のガラス転移温度Tgを示す。ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とが相溶することで、単一のガラス転移温度Tgとなる。発泡粒子のガラス転移温度Tgが単一であることで、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgよりも高いガラス転移温度Tgとなり、発泡粒子成形体の耐熱強度が高まる。
なお、「ガラス転移温度が単一」であるとは、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定チャート(DSC曲線)において、2回目昇温過程にみられる結晶化ピークよりも低温側におけるガラス転移温度Tgが単一であると認識できることをいう。但し、2回目昇温過程において結晶化ピークが観測されない場合は、2回目昇温過程の温度範囲(30~300℃)におけるガラス転移温度Tgが単一であると認識できることをいう。
発泡粒子におけるガラス転移温度Tgは、例えば、80~130℃が好ましく、85~125℃がより好ましく、90~120℃がさらに好ましい。Tgが上記下限値以上であれば、発泡粒子成形体の耐熱強度及び加熱寸法安定性をより高められる。Tgが上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
発泡粒子におけるガラス転移温度Tgは、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定で求められる。
なお、発泡粒子におけるガラス転移温度Tgは、発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgと同一視できる。
【0056】
発泡粒子における吸熱量と発熱量との差の絶対値(吸熱発熱差)は、3~35J/gが好ましく、5~25J/gがより好ましく、7~15J/gがさらに好ましい。吸熱発熱差が上記下限値以上であれば、結晶化度が高まり、発泡粒子成形体の耐熱強度及び加熱寸法安定性をより高められる。吸熱発熱差が上記上限値以下であれば、結晶化度が高まりすぎず、優れた二次発泡性や熱融着性を発揮し、成形性や機械強度を高められる。
吸熱発熱差は、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められ吸熱量と発熱量との差である。
なお、発泡粒子における吸熱発熱差は、発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂の吸熱発熱差と同一視できる。
【0057】
発泡粒子において、加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における損失正接tanδが最大となる温度は、120~230℃が好ましく、130~225℃がより好ましく、150~220℃がさらに好ましい。損失正接tanδが最大となる温度が上記下限値以上であれば、発泡粒子成形体が軟化する温度が高くなり、発泡粒子成形体の耐熱強度をより高められる。損失正接tanδが最大となる温度が上記上限値以下であれば、発泡粒子成形体が軟化する温度が過度に高くなりすぎず、成形性をより高められる。
発泡粒子の損失正接tanδが最大となる温度は、発泡粒子成形体を成形し、この発泡粒子成形体の固体粘弾性を測定することにより求められる。
【0058】
<発泡剤>
発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン等のフロン、二酸化炭素、窒素等が挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素、窒素が好ましい。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0059】
発泡剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して、例えば、0.1~12質量部が好ましい。
【0060】
<任意成分>
本実施形態の発泡粒子は、熱可塑性樹脂及び発泡剤以外のその他成分(任意成分)を含有してもよい。
任意成分としては、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤、結晶化促進剤、滑剤、架橋剤、界面活性剤、収縮防止剤、難燃剤、劣化防止剤等が挙げられる。
【0061】
架橋剤としては、例えば、無水ピロメリット酸等の酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物等が挙げられる。樹脂組成物に架橋剤を配合することで、発泡時の破泡が抑制され、連続気泡率をより低められる。
架橋剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.08~0.8質量部が好ましい。
【0062】
気泡調整剤は、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末等の混合物等である。これらの気泡調整剤は、発泡粒子の独立気泡率を高め、発泡粒子を形成しやすい。
気泡調整剤の含有量は樹脂100質量部に対して、例えば、0.2~5質量部が好ましい。
【0063】
安定剤は、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等である。
安定剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0064】
紫外線吸収剤は、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等である。
紫外線吸収剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0065】
酸化防止剤は、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、及びフラーレン等である。
酸化防止剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0066】
着色剤は、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、酸化亜鉛、沈降性シリカ、カドミウム赤等である。
本実施形態の発泡粒子を食品用の容器に用いる場合には、上記の着色剤の中から衛生協議会登録品を選択することが好ましい。
着色剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、2質量部以下が好ましい。
【0067】
結晶化促進剤は、例えば、ケイ酸塩、炭素、金属酸化物等である。ケイ酸塩としては、例えば、含水ケイ酸マグネシウムであるタルクが挙げられる。炭素としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、活性炭、グラファイト、グラフェン、コークス、メソポーラスカーボン、ガラス状炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられ、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラックが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。
結晶化促進剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、3質量部以下が好ましい。
【0068】
上述の任意成分は、それぞれ1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
発泡粒子に含まれる任意成分の総量は、発泡粒子の総質量に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。
【0069】
<物性>
発泡粒子の大きさは、用途に応じて適宜選択され、発泡粒子の群の平均粒子径は、例えば、0.5~5mmとされる。
発泡粒子の群の平均粒子径はD50で表現される値である。
具体的には、ロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、篩目開き26.5mm、22.4mm、19.0mm、16.0mm、13.2mm、11.20mm、9.50mm、8.80mm、6.70mm、5.66mm、4.76mm、4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm及び0.180mmのJIS標準篩(JIS Z8801-1:2006)で試料約25gを10分間分級し、篩網上の試料重量を測定した。得られた結果から累積重量分布曲線を作成し、累積重量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とする。
【0070】
発泡粒子の連続気泡率は、20%以下が好ましく、18%以下がより好ましく、16%以下がさらに好ましい。発泡粒子の連続気泡率が上記上限値以下であると、発泡粒子の二次発泡性をより高め、成形性や機械強度をより高められる。発泡粒子の連続気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により求められる。
【0071】
発泡粒子の見掛け密度は、例えば、0.027~0.675g/cm3が好ましく、0.045~0.45g/cm3がより好ましく、0.0675~0.27g/cm3がさらに好ましい。見掛け密度が上記下限値以上であれば、発泡粒子成形体の緩衝力を高められる。見掛け密度が上記上限値以下であると、発泡粒子成形体の機械的強度を高められる。
【0072】
発泡粒子の嵩発泡倍率は、例えば、2~50倍が好ましく、3~30倍がより好ましく、5~20倍がさらに好ましい。嵩発泡倍率が上記下限値以上であれば、緩衝力を高められる。嵩発泡倍率が上記上限値以下であると、機械的強度を高められる。
【0073】
発泡粒子の平均気泡径は、例えば、5~500μmが好ましく、10~400μmがより好ましく、20~300μmがさらに好ましい。平均気泡径が上記下限値以上であれば、緩衝力を高められる。平均気泡径が上記上限値以下であると、機械的強度を高められる。
平均気泡径は、ASTM D3576-77の試験方法に準拠して測定できる。
【0074】
<製造方法>
本発明の発泡粒子の製造方法としては、熱可塑性樹脂と発泡剤とを含む樹脂組成物を押し出し、発泡して、発泡粒子を得る方法、熱可塑性樹脂を押し出して樹脂粒子を得、得られた樹脂粒子に発泡剤を含侵して発泡粒子とする方法が挙げられる。
より具体的な発泡粒子の製造方法としては、例えば、次の方法等が挙げられる。
1)熱可塑性樹脂と発泡剤とを押出機に供給して溶融混錬し、溶融状態の樹脂組成物を押出機先端に設けたダイの孔から空中に押し出して発泡させ、押し出して発泡させると同時に切断し、切断された発泡した球状の粒子を水中に投じて冷却して、発泡粒子を得る方法。
2)熱可塑性樹脂と発泡剤とを押出機に供給して溶融混錬し、溶融状態の樹脂組成物を押出機先端に設けたダイの孔から水中に押し出して発泡させて冷却し、押し出して発泡させて冷却すると同時に切断し、切断された発泡した球状の発泡粒子を得る方法。
3)熱可塑性樹脂と発泡剤とを押出機に供給して溶融混錬し、溶融状態の樹脂組成物を押出機先端に設けたダイの孔から水中に押し出して冷却し、押し出して冷却すると同時に切断し、切断された球状の発泡性粒子を得て、発泡性粒子を加熱して発泡粒子を得る方法。
4)熱可塑性樹脂を押出機に供給して溶融混錬し、溶融状態の熱可塑性樹脂を押出機先端に設けたダイの孔から空中に押し出して、押し出すと同時に切断し、切断された球状の樹脂粒子を水中に投じて冷却して樹脂粒子を得て、樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得て、発泡性粒子を加熱して発泡粒子を得る方法。
5)熱可塑性樹脂を押出機に供給して溶融混錬し、溶融状態の熱可塑性樹脂を押出機先端に設けたダイの孔から水中に押し出して冷却し、押し出して冷却すると同時に切断し、切断された球状の樹脂粒子を得て、樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得て、発泡性粒子を加熱して発泡粒子を得る方法。
6)熱可塑性樹脂を押出機に供給して溶融混錬し、溶融状態の熱可塑性樹脂を押出機先端に設けたダイの孔からストランド状に押し出し、押し出した後に水中に導き冷却し、冷却した後に所定の長さ毎に切断して柱状の樹脂粒子を得て、樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得て、発泡性粒子を加熱して発泡粒子を得る方法。
【0075】
以下、樹脂組成物を空中に押し出して発泡させ、これを切断して球状の粒子を水中に投じて冷却する方法について、より詳細に説明する。
【0076】
本発明の発泡粒子の製造に用いられる押出機を説明する。
図4の発泡粒子製造装置10は、押出機(不図示)と、押出機の先端に設けられたノズル金型1とを有する。ノズル金型1の先端には、回転軸2が接続されている。回転軸2は、後述する冷却部材4を構成する冷却ドラム41の前部41aを貫通してモータ等の駆動部材3に連結されている。
ノズル金型1の前端面1aには、ノズルの出口部11が複数個、回転軸2を中心とした同一仮想円A上に等間隔に形成されている(
図5参照)。
【0077】
ノズル金型1のノズルの数(即ち、出口部11の数)は、2~80個が好ましい。ノズル数が1個の場合、発泡粒子の製造効率が低下することがある。80個より多い場合、互いに隣接するノズルから押出発泡される押出発泡体同士が接触して合着することがある。また、押出発泡体を切断して得られる発泡粒子同士が合着することがある。ノズルの数は、5~60個がより好ましく、8~50個が特に好ましい。
ノズル金型1におけるノズルの出口部11の直径(開口径)は、0.2~2mmが好ましい。出口部11の開口径が0.2mm未満の場合、押出圧力が高くなりすぎて押出発泡が困難となることがある。出口部11の開口径が2mmより大きい場合、発泡粒子の径が大きくなって金型への充填効率が低下することがある。出口部11の開口径は、0.3~1.6mmがより好ましく、0.4~1.2mmが特に好ましい。
ノズル金型1のランド部の長さは、ノズル金型1のノズルにおける出口部11の開口径の4~30倍が好ましい。長さが4倍未満の場合、フラクチャーが発生して安定的に押出発泡できないことがある。30倍より大きい場合、ノズル金型1に大きな圧力が加わり過ぎて押出発泡できない場合がある。ランド部の長さは、5~20倍がより好ましい。
【0078】
ノズル金型1の前端面1aにおけるノズルの出口部11で囲まれた部分には、回転軸2が前方に向かって突出した状態に配設されている。
回転軸2の後端部の外周面には一枚又は複数枚の回転刃5が一体的に設けられており、全ての回転刃5は、その回転時には、前端面1aに常時、接触した状態となる。なお、回転軸2に複数枚の回転刃5が一体的に設けられている場合には、複数枚の回転刃5は回転軸2の周方向に等間隔毎に配列されている。また、
図5では、一例として、四個の回転刃5を回転軸2の外周面に一体的に設けた場合を示している。
回転軸2が回転することによって回転刃5は、前端面1aに常時、接触しながら、ノズルの出口部11が形成されている仮想円A上を移動し、ノズルの出口部11から押出された押出発泡体を順次、連続的に切断可能に構成されている。
発泡粒子製造装置10は、ノズル金型1の少なくとも前端面1aと、回転軸2とを包囲する冷却部材4が配設されている。冷却部材4は、ノズル金型1よりも大径な正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設された円筒状の周壁部41bとを有する有底円筒状の冷却ドラム41とを備えている。
【0079】
周壁部41bにおけるノズル金型1の外面に対向する領域には、冷却液42を供給するための供給口41cが形成されている。供給口41cは、周壁部41bを貫通している。周壁部41bの外面で、供給口41cには、冷却液42を冷却ドラム41内に供給するための供給管41dが接続されている。
冷却液42は、供給管41dを通じて、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に沿って斜め前方に向かって供給されるように構成されている。
【0080】
周壁部41bの前端部下面には、排出口41eが形成されている。排出口41eは、周壁部41bを貫通している。周壁部41bの外面で、排出口41eには、排出管41fが接続されている。
押出機としては、従来から汎用されている押出機であれば、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム型の押出機が挙げられる。
【0081】
発泡粒子製造装置10を用いた発泡粒子の製造方法を説明する。
供給口41cを介して、冷却液42を供給管41dから冷却ドラム41内に供給する。供給された冷却液42は、供給される際の流速に伴う遠心力によって、周壁部41bの内周面に沿って螺旋状を描くように前方(前部41a方向)に向かって進む。冷却液42は、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向(即ち、周壁部41bの周方向)に広がる。周壁部41bの周方向に広がった冷却液42は、供給口41cより前方の周壁部41bの内周面を全面的に被覆する。
【0082】
冷却液42としては、発泡粒子を冷却できれば、特に限定されず、例えば、水、アルコール等が挙げられるが、使用後の処理を考慮すると、水が好ましい。
冷却液42の温度は、10~40℃が好ましい。冷却液の温度が10℃以上であれば、冷却ドラム41の近傍に位置するノズル金型1が過度に冷却されることなく、樹脂組成物をより円滑に出口部11から押し出せる。冷却液の温度が40℃以下であれば、粒子状切断物の冷却をより速やかに行える。
【0083】
回転刃5を回転させつつ、樹脂組成物をノズルの出口部11から押し出す。
樹脂組成物に配合されるポリエステル系樹脂(原料ポリエステル系樹脂)のガラス転移温度Tgは、50~100℃が好ましく、60~90℃がより好ましく、70~85℃がさらに好ましい。Tgが上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tgが上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。なお、「成形性」は、例えば、発泡粒子を金型のキャビティに充填し、これを加熱して二次発泡させた際に、所望の形状に近づけられることであり、所望の形状に近づくほど、成形性は「良好」である。
【0084】
原料ポリエステル系樹脂の融点は、230~270℃が好ましく、240~260℃がより好ましく、245~255℃がさらに好ましい。融点が上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。融点が上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
【0085】
原料ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、0.5~1.5が好ましく、0.6~1.3がより好ましく、0.7~1.2がさらに好ましい。IV値が上記下限値以上であれば、発泡時の破泡が抑制されて連続気泡率をより低められる。IV値が上記上限値以下であれば、密度をより低くし、発泡粒子成形体の表面をより平滑にして、外観の美麗さを高められる。
IV値は、JIS K7367-5(2000)の方法で測定できる。
【0086】
原料ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnは、9,000~45,000であり、15,000~43,000が好ましく、20,000~40,000がより好ましい。
Mnが上記下限値以上であれば、発泡粒子成形体の耐寒性(即ち、低温での機械的強度)をさらに高められる。Mnが上記上限値以下であれば、発泡粒子成形体の耐熱性をさらに高められる。
【0087】
原料ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzは、50,000~500,000であり、80,000~450,000が好ましく、100,000~400,000がより好ましい。
Mzが上記範囲内であれば、発泡粒子成形体の耐寒性をさらに高められる。
【0088】
樹脂組成物は、ノズル金型1から押出発泡された押出発泡体となり、かつ回転刃5で切断されて、粒子状切断物となる。全ての回転刃5は前端面1aに常時、接触しながら回転しており、ノズル金型1から押出発泡された押出発泡体は、回転刃5と、ノズルの出口部11端縁との間に生じる剪断応力によって、一定の時間間隔で大気中において切断されて粒子状切断物となる。この時、押出発泡体の冷却が過度とならない範囲内において、押出発泡体に水を霧状に吹き付けてもよい。
【0089】
ノズル金型1のノズル内においては、樹脂組成物が発泡しないようにしている。樹脂組成物は、ノズルの出口部11から吐出された直後は、未だに発泡しておらず、吐出されてから僅かな時間が経過した後に発泡を始める。従って、押出発泡体は、ノズルの出口部11から吐出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続し、未発泡部に先んじて押出された発泡途上の発泡部とからなる。
ノズルの出口部11から吐出されてから発泡を開始するまでの間、未発泡部はその状態を維持する。この未発泡部が維持される時間は、ノズルの出口部11における樹脂圧力や、発泡剤量等によって調整できる。ノズルの出口部11における樹脂圧力が高いと、樹脂組成物は、ノズル金型1から押出されてから直ぐに発泡することはなく、未発泡の状態を維持する。ノズルの出口部11における熱可塑性樹脂の吐出圧力の調整は、ノズルの出口部11の開口径、押出量、樹脂組成物の溶融粘度及び溶融張力によって調整できる。加えて、発泡剤量を適正な量に調整することによって、ノズル金型1の内部において熱可塑性樹脂脂組成物が発泡することを防止し、未発泡部を確実に形成できる。
全ての回転刃5は前端面1aに常時、接触した状態で押出発泡体を切断していることから、押出発泡体は、ノズルの出口部11から吐出された直後の未発泡部において切断された粒子状切断物となる。
【0090】
回転刃5の回転数は2000~10000rpmが好ましく、2000~9000rpmがより好ましく、2000~8000rpmが特に好ましい。回転数が上記下限値以上であれば、押出発泡体を回転刃5によってより確実に切断して、合着を防止し、発泡粒子をより均一な形状にできる。回転数が上記上限値以下であれば、後述する冷却液42に達するまでの時間が充分に確保されて嵩発泡倍率をより高められる。
【0091】
図6に示すように、回転刃5によって切断された粒子状切断物Pは、回転刃5による切断応力によって切断と同時に冷却ドラム41の内壁に向かって飛散され、周壁部41bの内周面を被覆する冷却液42に衝突する。粒子状切断物は、冷却液42に衝突するまでの間も発泡をし続け、粒子状切断物は発泡によって略球状に成長する。このため、得られる発泡粒子は略球状である。この際、粒子状切断物Pは、冷却液42の表面に対して斜交し、かつ冷却液42の流れ方向Xの上流から下流に向かって、冷却液42に衝突することが好ましい(
図6参照)。粒子状切断物を冷却液42に衝突させるときに、粒子状切断物Pを冷却液42の流れを追う方向から冷却液42に衝突することで、粒子状切断物Pは冷却液42の表面に弾かれることなく、粒子状切断物Pは、冷却液42内に円滑に、かつ確実に進入して、冷却液42によって冷却されて、発泡粒子となる。
【0092】
本実施形態によれば、押出発泡体を回転刃5によって切断した後に、粒子状切断物を直ちに冷却液42によって冷却していることから、粒子状切断物が過度に発泡するのを防止して、所望する嵩発泡倍率の発泡粒子を得られる。
加えて、粒子状切断物は、押出発泡体の切断後に直ちに冷却されるため、発泡粒子の結晶化度の上昇が抑制されている。このため、発泡粒子は、優れた二次発泡性や熱融着性を発揮し、得られる発泡粒子成形体は優れた機械強度を有している。さらに、型内発泡成形時にポリエステル系樹脂の発泡粒子成形体の結晶化度を上昇させることで、加熱寸法安定性をより高められる。
【0093】
冷却液42で冷却された発泡粒子は、冷却液42と共に、排出口41eを介して排出管41fに流入し、冷却ドラム41外に排出される。排出された発泡粒子は、冷却液42から分離され、必要に応じて乾燥される。発泡粒子と冷却液42との分離方法としては、例えば、篩を通す等、従来公知の固液分離方法が挙げられる。
【0094】
(熱可塑性樹脂発泡粒子成形体)
本実施形態の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体(発泡粒子成形体)は、発泡粒子を発泡し、互いに融着させたものである。発泡粒子成形体としては、自動車、航空機、鉄道車両又は船舶等の輸送機器の部品、電気製品の緩衝材や筐体等が挙げられる。自動車の部品としては、例えば、エンジン付近に用いられる部材、外装材、断熱材等が挙げられる。また、例えば、発泡粒子成形体としては、魚箱、野菜箱等の食品包装容器、電気製品に用いる緩衝材、梱包材、構造部材、断熱材等が挙げられる。
【0095】
発泡粒子成形体の大きさは、特に限定されず、用途を勘案して適宜決定される。
【0096】
発泡粒子成形体は、単一のガラス転移温度Tgを示す。ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とが相溶することで、単一のガラス転移温度Tgとなる。発泡粒子成形体のガラス転移温度Tgが単一であることで、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgよりも高いガラス転移温度Tgとなり、発泡粒子成形体の耐熱強度が高まる。
発泡粒子成形体のガラス転移温度Tgは、例えば、80~130℃が好ましく、85~125℃がより好ましく、90~120℃がさらに好ましい。Tgが上記下限値以上であれば、発泡粒子成形体の耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tgが上記上限値以下であれば、成形性が向上し、外観が美麗に仕上がる。
【0097】
発泡粒子成形体の吸熱発熱差は、3~35J/gが好ましく、10~30J/gがより好ましく、15~28J/gがさらに好ましい。吸熱発熱差が上記下限値以上であれば、結晶化度が高まり、発泡粒子成形体の加熱寸法安定性を高められる。吸熱発熱差が上記上限値以下であれば、結晶化度が高まりすぎず、発泡粒子成形体の耐衝撃性を高められる。
吸熱発熱差は、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められ吸熱量と発熱量との差である。
【0098】
発泡粒子成形体において、加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における損失正接tanδが最大となる温度は、120~230℃が好ましく、130~225℃がより好ましく、150~220℃がさらに好ましい。損失正接tanδが最大となる温度が上記下限値以上であれば、発泡粒子成形体が軟化する温度が高くなり、発泡粒子成形体の耐熱強度をより高められる。損失正接tanδが最大となる温度が上記上限値以下であれば、発泡粒子成形体が軟化する温度が過度に高くなりすぎず、成形性をより高められる。
【0099】
発泡粒子成形体の連続気泡率は、例えば、20%以下が好ましく、18%以下がより好ましく、16%以下がさらに好ましい。発泡粒子成形体の連続気泡率が上記上限値以下であると、発泡粒子成形体の耐衝撃性をより高められる。発泡粒子成形体の連続気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により求められる。
【0100】
発泡粒子成形体の見掛け密度は、例えば、0.027~0.675g/cm3が好ましく、0.045~0.45g/cm3がより好ましく、0.0675~0.27g/cm3がさらに好ましい。発泡粒子成形体の見掛け密度が上記下限値以上であると、発泡粒子成形体の耐衝撃性をより高められる。発泡粒子成形体の見掛け密度が上記上限値以下であると、発泡粒子成形体をより軽量にできる。
【0101】
発泡粒子成形体の発泡倍率は、例えば、2~50倍が好ましく、3~30倍がより好ましく、5~20倍がさらに好ましい。発泡粒子成形体の発泡倍率が上記下限値以上であると、発泡粒子成形体の耐衝撃性をより高められる。発泡粒子成形体の発泡倍率が上記上限値以下であると、発泡粒子成形体の機械的強度をより高められる。
【0102】
発泡粒子成形体の平均気泡径は、例えば、5~500μmが好ましく、10~400μmがより好ましく、20~300μmがさらに好ましい。発泡粒子成形体の平均気泡径が上記下限値以上であると、発泡粒子成形体の耐衝撃性をより高められる。発泡粒子成形体の平均気泡径が上記上限値以下であると、発泡粒子成形体の表面平滑性をより高められる。
発泡粒子成形体の平均気泡径は、ASTM D2842-69に記載の方法に準拠して測定できる。
【0103】
<製造方法>
発泡粒子を用いた発泡粒子成形体は、従来公知の製造方法で製造できる。
発泡粒子成形体の製造方法としては、例えば、次の方法等が挙げられる。
1)発泡粒子(嵩発泡倍率:2~50倍)を成形型内に充填し、これを加熱して、発泡粒子を二次発泡させて二次発泡粒子としつつ融着して、型内発泡成形により、発泡粒子成形体(発泡倍率:2~50倍)とする(加熱成形工程)方法。
2)発泡粒子を加熱して任意の嵩発泡倍率に発泡させた予備発泡粒子(嵩発泡倍率:2~50倍)とし(予備発泡工程)、予備発泡粒子を成形型内に充填し、これを加熱して、予備発泡粒子を二次発泡させて二次発泡粒子としつつ融着して、型内発泡成形により発泡粒子成形体(発泡倍率:2~50倍)とする(加熱成形工程)方法。
【0104】
二次発泡させる方法としては、例えば、金型のキャビティ内を水蒸気で加熱する方法が挙げられる。
二次発泡させる温度は、例えば、100~180℃が好ましい。
二次発泡させる時間(即ち、金型に蒸気を供給する時間)は、5~120秒間が好ましい。
なお、二次発泡においては、雌型側からキャビティ内に水蒸気を供給してもよいし、雄型側からキャビティ内に水蒸気を供給してもよいし、これらを交互に行ってもよい。
さらに、発泡粒子に不活性ガス又は空気(以下、不活性ガス等と称する)を含浸させて、発泡粒子の二次発泡力を向上させてもよい(内圧付与工程)。なお、不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
発泡粒子に不活性ガス等を含浸させる方法としては、例えば、常圧以上の圧力を有する不活性ガス等雰囲気下に発泡粒子を置くことによって、発泡粒子中に不活性ガス等を含浸させる方法が挙げられる。発泡粒子は、金型内に充填する前に不活性ガス等が含浸されてもよいが、発泡粒子を金型内に充填した後に金型ごと不活性ガス等雰囲気下に置くことで含浸されてもよい。なお、不活性ガスが窒素である場合、ゲージ圧(大気圧基準)0.1~2MPaの窒素雰囲気中に発泡粒子を20分~24時間に亘って放置してもよい。
【0105】
加熱成形工程に次いで、金型内の発泡粒子成形体をさらに加熱することで、熱可塑性樹脂の結晶化度を高めてもよい(保熱工程)。
【0106】
(発泡樹脂複合体)
発泡樹脂複合体は、本発明の発泡粒子成形体と、発泡粒子成形体の表面の少なくとも一部に設けられた繊維強化樹脂層(表皮材)とを有する。
発泡樹脂複合体は、耐熱性及び機械強度に優れており、輸送機器構成用部材として広範囲に用いることができる。加えて、発泡樹脂複合体は、建築資材、風車翼、ロボットアーム、電気製品の筐体、ヘルメット用緩衝材、農産箱、保温保冷容器等の輸送容器、産業用ヘリコプターのローターブレード、部品梱包材としても好適に用いることができる。
輸送機器構成部材としては、自動車、航空機、鉄道車両又は船舶等の輸送機器の本体を構成する構造部材が挙げられる。自動車の本体を構成する構造部材としては、例えば、ドアパネル、ドアインナー、バンパー、フェンダー、フェンダーサポート、エンジンカバー、ルーフパネル、トランクリッド、フロアパネル、センタートンネル、クラッシュボックス、カウル等が挙げられる。例えば、従来、鋼板で作製されていたドアパネルに樹脂複合体を用いると、鋼板製ドアパネルと略同一の剛性を有し、かつ大幅に軽量化できるため、自動車の軽量化を図れる。
【0107】
例えば、
図7の発泡樹脂複合体100は、平板状の発泡粒子成形体(発泡層)102と、発泡粒子成形体102の両面に設けられた繊維強化樹脂層104とを有する。
【0108】
発泡層102は、上述した本発明の発泡粒子成形体である。
繊維強化樹脂層104を構成している繊維としては、特に限定されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維等が挙げられる。この内、優れた機械強度及び耐熱性を有していることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
繊維の形態としては、特に限定されず、例えば、織物、編物、不織布、繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)をポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂糸又はガラス繊維糸等のステッチ糸で結束(縫合)してなる面材等が挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。
繊維は、(1)織物、編物若しくは不織布同士又はこれらを任意の組み合わせで複数枚、積層してなる多層面材、(2)繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)をポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂糸又はガラス繊維糸等のステッチ糸で結束(縫合)してなる複数枚の面材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた面材どうしをポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂糸又はガラス繊維糸等のステッチ糸で一体化(縫合)してなる多層面材であってもよい。
【0109】
繊維強化樹脂層104に含まれる樹脂としては、未硬化の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂を予備重合した樹脂等が挙げられる。耐熱性、弾性率及び耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤等の添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
繊維強化樹脂層104の樹脂の含有量は、繊維強化樹脂層104の総質量に対して、20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。樹脂の含有量が上記下限値以上であれば、繊維同士の結合がより高まり、得られる発泡樹脂複合体の機械強度がより高まる。樹脂の含有量が上記上限値以下であれば、繊維間に存在する樹脂の量が多くなりすぎず、繊維強化樹脂層104の機械強度がより高まり、得られる発泡樹脂複合体の機械強度がより高まる。
【0110】
繊維に樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)繊維を樹脂中に浸漬する方法、(2)繊維に樹脂を塗布する方法等が挙げられる。
【0111】
本実施形態において、発泡粒子成形体の両面に位置する繊維強化樹脂層の素材は、互いに同じでもよいし、異なってもよい。
【0112】
繊維強化樹脂層104の厚さは、例えば、0.1~5mmが好ましく、0.3~3mmがより好ましい。繊維強化樹脂層104の厚さが上記下限値以上であれば、発泡樹脂複合体100の機械強度をより高められる。繊維強化樹脂層104の厚さが上記上限値以下であれば、発泡樹脂複合体100のさらなる軽量化を図れる。
本実施形態において、発泡粒子成形体102の両面に位置する繊維強化樹脂層104の厚さは、互いに同じでもよいし、異なってもよい。
【0113】
<製造方法>
発泡粒子成形体102の表面に繊維強化樹脂層104を設ける方法としては、特に限定されず、例えば、(1)発泡粒子成形体102の表面に接着剤を介して繊維強化樹脂層104を積層し、接合する方法、(2)発泡粒子成形体102の表面に、熱可塑性樹脂が含浸された繊維強化樹脂層104を積層し、熱可塑性樹脂をバインダーとして、発泡粒子成形体102の表面に繊維強化樹脂層104を接合する方法、(3)発泡粒子成形体102の表面に、未硬化の熱硬化性樹脂が含浸された繊維強化樹脂層104を積層し、熱硬化性樹脂の硬化物をバインダーとして発泡粒子成形体102に繊維強化樹脂層104を接合する方法、(4)発泡粒子成形体102の表面に、加熱されて軟化状態の繊維強化樹脂層104を積層し、発泡粒子成形体102の表面に繊維強化樹脂層104を押圧することによって、発泡粒子成形体102に繊維強化樹脂層104を接合する方法等が挙げられる。方法(4)では、繊維強化樹脂層104を発泡粒子成形体102の表面に沿って変形させることも可能である。ここで、本発明の発泡粒子成形体102は高温環境下における耐荷重性に優れていることから、方法(4)も好適に用いることができる。
これら方法により、発泡粒子成形体102の表面に繊維強化樹脂層104を一体的に設けられる。
発泡粒子成形体102の表面に繊維強化樹脂層104を接合する方法としては、例えば、オートクレーブ法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、PCM(Prepreg Compression Molding)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法等が挙げられる。
【0114】
上述の実施形態の発泡樹脂複合体は、平板状の発泡粒子成形体を有するが、本発明はこれに限定されず、発泡粒子成形体の形状は用途に応じて適宜決定できる。即ち、発泡樹脂複合体の形状は、用途に応じて適宜決定できる。
上述の実施形態では、発泡粒子成形体の両面に繊維強化樹脂層が設けられているが、本発明はこれに限定されず、発泡粒子成形体の片面にのみ繊維強化樹脂層が設けられていてもよいし、発泡粒子成形体の表面の一部にのみ繊維強化樹脂層が設けられていてもよい。
【0115】
本実施形態の発泡粒子は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とが相溶しており、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が単一であるため、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgよりも高いガラス転移温度Tgとなり、耐熱強度を高められる。このため、発泡粒子を加熱成形して得られる発泡粒子成形体は、耐熱強度に優れる。
加えて、本実施形態の発泡粒子は、保熱工程を要することなく、優れた耐熱強度を発揮するため、発泡粒子成形体の生産性を高められる。本実施形態の発泡粒子成形体は、結晶化度が20%未満でも、優れた耐熱強度を発揮する。
さらに、本実施形態の発泡粒子成形体は、保熱工程を経て製造されることで、結晶化度が高まり、加熱寸法安定性がより高まる。
【実施例0116】
以下、本発明について実施例を示して説明するが、本発明はこれらにより限定されることはない。
【0117】
(使用原料)
<ポリエステル系樹脂>
・PET(A):遠東新世紀社製、商品名「CH-611」、ガラス転移温度Tg:78℃、融点:251℃、IV値:1.02、バイオマス度:0%。
・PET(B):INDRAMA社製、商品名「RAMAPET N1B」、ガラス転移温度Tg:78℃、融点:247℃、IV値:0.80、バイオマス度:30%。
・PET(C):遠東新世紀社製、商品名「CH-653」、ガラス転移温度Tg:79℃、融点:248℃、IV値:1.01、バイオマス度:27~30%。
・PET(D):遠東石塚グリーンペット社製、商品名「CB-603RJ」、ガラス転移温度Tg:79℃、融点:248℃、IV値:0.80、バイオマス度:0%、PETボトルをリサイクルした再生PET。
【0118】
<ポリイミド系樹脂>
・PEI(A):ポリエーテルイミド、SABIC Innovative Plastics社製、商品名「Ultem1000」、ガラス転移温度Tg:217℃、MFR:9g/10分。
・PEI(B):ポリエーテルイミド、SABIC Innovative Plastics社製、商品名「Ultem1010」、ガラス転移温度Tg:217℃、MFR:17.8g/10分。
【0119】
<非晶性ポリエステル系樹脂>
・PCT(G):イーストマンケミカル製、商品名「Traitan TX-1001」、芳香族ジカルボン酸成分=テレフタル酸、ジオール成分=1,4-シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ガラス転移温度Tg:107℃、IV値:0.72。
【0120】
<タルクマスターバッチ>
・タルクMB:PET=72質量%、タルク=28質量%からなるマスターバッチ。
【0121】
<架橋剤>
・PMDA:無水ピロメリット酸。
【0122】
(発泡粒子の評価方法)
<嵩密度>
発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した。JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定を行い、下記(s1)式に基づいて、発泡粒子の嵩密度を求めた。
発泡粒子の嵩密度(kg/m3)=[発泡粒子を入れたメスシリンダーの質量(kg)-メスシリンダーの質量(kg)]/[メスシリンダーの容量(m3)]・・・(s1)
【0123】
<嵩発泡倍率>
発泡粒子の嵩発泡倍率は、各例の配合割合から熱可塑性樹脂の密度を求め、熱可塑性樹脂の密度を得られた発泡粒子の嵩密度で除した値とした。なお、各樹脂の密度は以下の値を用いた。
・PET:1.35g/cm3。
・PEI:1.28g/cm3。
・PCT:1.18g/cm3。
【0124】
<連続気泡率>
発泡粒子の連続気泡率を下記の方法で測定した。まず、体積測定空気比較式比重計の試料カップを用意し、この試料カップの80%程度を満たす量の発泡粒子の全質量A(g)を測定した。次に、発泡粒子全体の体積B(cm3)を、比重計を用いて1-1/2-1気圧法により測定した。なお、測定には、東京サイエンス社の「体積測定空気比較式比重計1000型」を使用した。
金網製の容器を用意し、この金網製の容器を水中に浸漬し、この水中に浸漬した状態における金網製の容器の質量C(g)を測定した。この金網製の容器内に、全ての発泡粒子を入れ、この金網製の容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れた発泡粒子の全量とを併せた質量D(g)を測定した。なお、発泡粒子及び金網製容器の質量測定には、大和製衡社製「電子天びんHB3000」(最小目盛り0.01g)を使用した。
そして、下記式に基づいて発泡粒子の見掛け体積E(cm3)を算出し、この見掛け体積Eと発泡粒子全体の体積B(cm3)に基づいて下記(s2)式により発泡粒子の連続気泡率を算出した。なお、水1gの体積を1cm3とした。また、本測定において発泡粒子は、予め、JISK7100-1999 記号23/50、2級の環境下で16時間保管した後、同環境下において測定を実施した。
連続気泡率(%)=100×(E-B)/E・・・(s2)
(E=A+(C-D))
【0125】
<融点、結晶化温度、ガラス転移温度Tg>
融点、結晶化温度及びガラス転移温度Tgは、JIS K7121:1987、JIS K7121:2012に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下の通りとした。
発泡粒子又は発泡粒子成形体から切り出した試料をアルミニウム製測定容器の底に、すきまのないように5.5±0.5mg充填後、アルミニウム製の蓋をした。次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施した。窒素ガス流量20mL/分のもと、以下のステップ1~4で試料の加熱と冷却とを施して、DSC曲線を得た。
(ステップ1)30℃で2分間保持。
(ステップ2)10℃/分の速度で30℃から300℃まで昇温し(1回目昇温過程)、10分間保持。
(ステップ3)試料を速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷。
(ステップ4)10℃/分の速度で30℃から300℃まで昇温(2回目昇温過程)。
なお、基準物質としてアルミナを用いた。装置付属の解析ソフトを用いて、
図8(実施例3の測定結果)に示すように2回目昇温過程にみられる融解ピーク及び結晶化ピークのトップの温度を読みとって融点及び結晶化温度とした。ガラス転移温度Tgは2回目昇温過程にみられるDSC曲線より、装置付属の解析ソフトを用いて、中間点ガラス転移温度を算出した。この中間点ガラス転移温度は該規格(9.3)より求めた。
なお、ガラス転移温度Tgは、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定チャート(DSC曲線)において、2回目昇温過程にみられる結晶化ピークよりも低温側におけるガラス転移温度Tgを採用した。但し、2回目昇温過程において結晶化ピークが観測されない場合は、2回目昇温過程の温度範囲(30~300℃)におけるガラス転移温度Tgを採用した。
【0126】
<吸熱量(a)、発熱量(b)、結晶化度>
吸熱量(a)(融解熱量)及び発熱量(b)(結晶化熱量)はJIS K7121:1987、JIS K7121:2012に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下の通りとした。
発泡粒子又は発泡粒子成形体から切り出した試料をアルミニウム製測定容器の底に、すきまのないように5.5±0.5mg充填後、アルミニウム製の蓋をした。次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施した。窒素ガス流量20mL/分のもと、以下のステップ1~2で試料の加熱及び冷却を施して、DSC曲線を得た。
(ステップ1)30℃で2分間保持。
(ステップ2)速度10℃/分で30℃から300℃まで昇温(1回目昇温過程)。
この時の基準物質にはアルミナを用いた。吸熱量(a)及び発熱量(b)は、装置付属の解析ソフトを用いて算出した。具体的には、
図4に示すように、吸熱量(a)は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側のベースラインへ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出した。発熱量(b)は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側へ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出した。
結晶化度は、下記方法で求められる。まず、前記吸熱量(a)と前記発熱量(b)の差を求める。この差をポリエチレンテレフタレート完全結晶の理論融解熱量140.1J/gで除して求められる割合を結晶化度とする。
つまり、結晶化度は下記(s3)式より求める。
結晶化度(%)=(吸熱量(a)(J/g)-発熱量(b)(J/g))/140.1(J/g)×100・・・(s3)
【0127】
(発泡粒子成形体の評価方法)
<密度>
発泡粒子成形体の密度は、JIS K7222:1999「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の測定」に記載される方法により測定した。100cm3以上の発泡粒子成形体を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定した。密度を下記(s4)式により算出した。
密度(g/cm3)=発泡粒子成形体の質量(g)/発泡粒子成形体の体積(cm3)・・・(s4)
【0128】
<発泡倍率>
発泡粒子成形体の嵩発泡倍率は、各例の配合割合から熱可塑性樹脂の密度を求め、熱可塑性樹脂の密度を得られた発泡粒子成形体の密度で除した値とした。なお、各樹脂の密度は以下の値を用いた。
・PET:1.35g/cm3。
・PEI:1.28g/cm3。
・PCT:1.18g/cm3。
【0129】
<固体粘弾性測定>
固体粘弾性測定は、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「EXSTRAR DMS6100」粘弾性スペクトロメータを用いた。発泡粒子成形体から、表面スキン層を取り除き、直径約10mm、厚み約2mmの円柱状の試料を切り出した。条件は次の通りとした。
・モード:圧縮制御モード。
・雰囲気:窒素雰囲気。
・周波数:1Hz。
・昇温速度:5℃/分。
・測定温度:30℃~300℃。
・歪振幅:5μm。
・最小圧縮力:100mN。
・張力ゲイン:1.5。
・力振幅初期値:100mN。
解析は装置付属の解析ソフトを用いた。損失正接tanδが最大となる温度は、50~240℃の温度範囲における損失正接tanδの測定値において最大となる温度として読み取った値である。
試験片の寸法測定には、Mitutoyo Corporation製「DIGIMATIC」CD-15タイプを用いた。
【0130】
<加熱寸法変化率(加熱寸法安定性の評価)>
発泡粒子成形体の加熱寸法変化率はJIS K6767:1999「発泡プラスチック-ポリエチレン-試験方法」に記載のB法にて測定した。発泡粒子成形体から、平面形状が一辺150mmの正方形であり、かつ厚みが発泡粒子成形体の厚みである試験片を切り出した。上記試験片の中央部の縦方向及び横方向に、それぞれ互いに平行な3本の100mmの直線を50mm間隔に記入した。縦方向及び横方向についてそれぞれ3本の直線の長さを測定し、それらの相加平均値L0を初めの寸法とした。その後、試験片を100℃及び120℃にそれぞれ設定した熱風循環式乾燥機の中に168時間に放置して、加熱試験を行った。加熱試験後に試験片を取り出し、試験片を25℃にて1時間放置した。次に、試験片の表面に記入した縦方向及び横方向のそれぞれ3本の直線の長さを測定し、それらの相加平均値L1を加熱後の寸法とした。下記(s5)式に基づいて加熱寸法変化率を算出した。
加熱寸法変化率(%)=100×|(L1-L0)|/L0・・・(s5)
各設定温度における発泡粒子成形体の加熱寸法変化率測定の結果から以下の判定基準で評価した。
【0131】
≪判定基準≫
◎:加熱寸法変化率が1.0%未満である。
○:加熱寸法変化率が1.0%以上1.5%未満である。
△:加熱寸法変化率が1.5以上2.0未満である。
×:加熱寸法変化率が2.0以上である。
【0132】
<曲げ弾性率(耐熱強度)>
曲げ試験における曲げ弾性率は、JIS K7221-1:2006記載の方法に準拠し測定した。曲げ弾性率は(株)島津製作所製「オートグラフAG-X plus 100kN」万能試験機、(株)島津製作所製「TRAPEZIUM X」万能試験機データ処理を用いて測定した。試験片は発泡粒子成形体から幅25mm×長さ130mm×厚さ20mmのサイズにて切り出した。試験速度は10mm/minとした。加圧くさび及び支持台の先端部の半径は5Rとした。支点間距離は100mmとした。試験片はJIS K7100:1999の記号「23/50」、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調節した後、測定に用いた。
測定は標準雰囲気下及び80℃にて実施した。80℃においては、80℃に設定した恒温槽で24時間状態調節後、恒温槽から試験片を取出し、直ちに(株)島津製作所製「TCR2A型」付帯恒温槽内に設置した冶具に試験片を置き、3分間保持した後に測定した。前記雰囲気温度における試験片の数はそれぞれ5個とした。
曲げ弾性率は、荷重-ひずみの関係が直線となる部分の傾きが最大となる荷重領域を設定し、前記万能試験機データ処理にて算出した。各試験片における曲げ弾性率測定値の相加平均を曲げ弾性率の値とした。
80℃における曲げ弾性率(E80)と標準雰囲気下(23℃)における曲げ弾性率(E23)を用いて、下記(s6)式に基づいて保持率を算出した。
保持率(%)=(E80)/(E23)×100・・・(s6)
発泡粒子成形体の曲げ弾性率の保持率の結果から以下の判定基準で評価した。
【0133】
≪判定基準≫
◎:保持率が80%以上である。
○:保持率が75%以上80%未満である。
△:保持率が70%以上75%未満である。
×:保持率が70%未満である。
【0134】
<外観>
発泡粒子成形体の表面を目視にて確認し、以下の判定基準で評価した。
≪判定基準≫
◎:発泡粒子間の間隙が無く、成形体表面が非常に平滑で成形体外観が非常によい。
○:発泡粒子間の間隙が非常に少なく、成形体表面がほぼ平滑で成形体外観が良好である。
△:発泡粒子間の間隙が少なく、成形体表面に小さな凹凸があり、成形体外観がやや劣る。
×:発泡粒子間の間隙が多数あり、成形体表面に大きな凹凸があり、成形体外観が大きく劣る。
【0135】
<総合評価>
加熱寸法変化率、曲げ弾性率及び外観の評価結果を下記評価基準によって分類した。
【0136】
≪評価基準≫
◎:全ての項目の評価が「◎」であった。
〇:全ての項目の評価が「◎」か「〇」であり、1つ以上が「〇」であった。
△:全ての項目の評価で「×」がなく、かついずれかの項目の評価で「△」が1つ以上であった。
×:いずれかの項目の評価が「×」であった。
【0137】
(実施例1)
図3~5に示した発泡粒子製造装置10と同様の製造装置を用いて、以下の手順で発泡粒子を作製した。
まず、表中の配合に従い、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、タルクマスターバッチ及び架橋剤を、シリンダー口径Dが65mmでかつL(シリンダー長さ)/D(シリンダー口径)比が34の単軸押出機に供給し、これらを290℃にて溶融混練した。続いて、押出機の途中から、発泡剤としてブタン(イソブタン:ノルマルブタン=35:65(質量比))を表中の量となるように、溶融状態の溶融混練物に圧入し、溶融混練物中に均一に分散させて、樹脂組成物とした。その後、押出機の前端部において、溶融状態の樹脂組成物を300℃にした後、押出機の前端に取り付けたマルチノズル式のノズル金型1の各ノズルから樹脂組成物を押出発泡させた。樹脂組成物の押出量を30kg/hとした。
なお、ノズル金型1は、出口部11の直径が1mmのノズルを20個有しており、全ての出口部11は、直径139.5mmの仮想円A上に等間隔毎に位置していた。そして、回転軸2の後端部外周面には、2枚の回転刃5が回転軸2の周方向に180°の位相差でもって一体的に設けられており、各回転刃5はノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態で仮想円A上を移動するように構成されていた。
【0138】
冷却部材4は、正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設され、かつ内径が320mmの円筒状の周壁部41bとからなる冷却ドラム41を備えていた。そして、供給管41d及び冷却ドラム41の供給口41cを通じて、冷却ドラム41内に20℃の冷却液42を供給した。冷却ドラム41内の容積は17684cm3であった。
冷却液42は、供給管41dから冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に供給される際の流速に伴う遠心力によって、冷却ドラム41の周壁部41b内周面に沿って螺旋状を描くように前方に向かって進んでいた。冷却液42は、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向に広がり、冷却ドラム41の供給口41cより前方の周壁部41bの内周面を全面的に被覆していた。
【0139】
前端面1aに配設した回転刃5を3400rpmの回転数で回転させてあり、ノズル金型1の各ノズルの出口部11から押出発泡された押出発泡体を回転刃5によって切断して略球状の粒子状切断物を製造した。押出発泡体は、ノズル金型1のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなっていた。そして、押出発泡体は、ノズルの出口部11の開口端において切断されており、押出発泡体の切断は未発泡部において行われていた。
なお、上述の発泡粒子の製造にあたっては、まず、ノズル金型1に回転軸2を取り付けず、かつ冷却部材4をノズル金型1から退避させておいた。この状態で、押出機から樹脂組成物を押出発泡して押出発泡体とし、ノズル金型1のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなることを確認した。次に、ノズル金型1に回転軸2を取り付け且つ冷却部材4を所定位置に配設した後、回転軸2を回転させ、押出発泡体をノズルの出口部11の開口端において回転刃5で切断して粒子状切断物を製造した。
【0140】
この粒子状切断物は、回転刃5による切断応力によって外方又は前方に向かって飛ばされ、冷却部材4の冷却ドラム41の内面に沿って流れている冷却液42にこの冷却液42の流れの上流側から下流側に向かって冷却液42を追うように冷却液42の表面に対して斜交する方向から衝突し、粒子状切断物は冷却液42中に進入して直ちに冷却され、発泡粒子が製造された。
得られた発泡粒子は、冷却ドラム41の排出口41eを通じて冷却液42と共に排出された後、脱水機にて冷却液42と分離された。
【0141】
金型(雄金型と雌金型)を備えた型内発泡成形機を用意した。雄金型と雌金型とを型締めした状態において、雌雄金型間には内法寸法が縦300mm×横400mm×高さ30mmである直方体形状のキャビティが形成されていた。
そして、金型クラッキングを3mm取った状態で金型内に発泡粒子を充填後、雌型からキャビティ内が0.08MPa(ゲージ圧)となるように水蒸気を30秒間導入し(一方加熱)、次いで、雄型からキャビティ内が0.08MPa(ゲージ圧)となるように水蒸気を30秒間導入し(逆一方加熱)、次いで、雄雌両型からキャビティ内が0.12MPa(ゲージ圧)となるように30秒間水蒸気を供給し(両面加熱)、発泡粒子を加熱、二次発泡させて二次発泡粒子どうしを熱融着一体化させた。その後、キャビティ内へ水蒸気の導入を止めた状態で300秒間保持した後(保熱工程)、最後に、キャビティ内に冷却液を供給して金型内の発泡粒子成形体を冷却した上でキャビティを開いて発泡粒子成形体を取り出した。
このとき、金型内に発泡粒子を充填する工程から発泡粒子成形体を得るためにかかった時間(成形サイクル時間)は600秒であった。
【0142】
(実施例2~3、6、8~9、11~13、比較例1、3~4)
ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、タルクマスターバッチ、架橋剤及び発泡剤を表中の配合とし、表中に示した成形条件としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡粒子と発泡粒子成形体を作製した。
図9に、実施例3の損失正接tanδの測定結果を示し、
図10に、比較例1の損失正接tanδの測定結果を示す。
【0143】
(実施例4)
実施例3と同じ発泡粒子を用いて、表中の成形条件としたこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0144】
(実施例5)
ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、タルクマスターバッチ、架橋剤及び発泡剤を表中の配合としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡粒子と作製した。作製した発泡粒子を150℃の恒温槽内で1時間静置させて発泡粒子を発泡させ予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子の物性を表中に示す。
前記予備発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内を窒素ガスで置換した後、窒素ガスを含浸圧(ゲージ圧)含浸圧0.5MPaまで圧入し、20℃の環境下に静置し、加圧養生を8時間実施した。(内圧付与工程)その後、予備発泡粒子を圧力容器から取り出した。
内圧付与工程を実施した前記予備発泡粒子を0.30MPa(ゲージ圧)の水蒸気で30秒間加熱することで二次発泡させたところ、実施例3で得られた発泡粒子とほぼ同じ二次発泡性を確認した。
内圧付与工程を実施した前記予備発泡粒子を用いて、表中に示した成形条件としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0145】
(実施例7)
実施例6と同じ発泡粒子を用いて、表中に示した成形条件としたこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0146】
(実施例10)
実施例3と同じ発泡粒子を二軸押出機で再溶融させ、ノズル金型よりストランド状に押出し、これを冷却した後ペレタイズした回収ペレットを作製した。表中の配合及び成形条件に従った以外は、実施例1と同様にして発泡粒子と発泡粒子成形体を作製した。
【0147】
(比較例2)
比較例1と同じ発泡粒子を用いて、表中に示した成形条件としたこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0148】
(比較例5)
比較例4と同じ発泡粒子を用いて、表中に示した成形条件としたこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
本発明を適用した実施例1~13は、耐熱強度(曲げ弾性率)の評価が「△」~「◎」であり、総合評価が「△」~「◎」であった。
PEIを含まない比較例1~2、ガラス転移温度が単一でない比較例3~5は、耐熱強度(曲げ弾性率)の評価が「×」であり、総合評価が「×」であった。
以上の結果から、本発明を適用することで、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の耐熱強度を高められることが、確認された。
【0156】
(実施例14)
<発泡樹脂複合体の作製>
炭素繊維からなる綾織の織物から形成された繊維強化基材に、熱硬化性樹脂として未硬化のエポキシ樹脂を40質量%含有させた厚みが0.22mmの繊維強化樹脂層形成材(CFRP、三菱レイヨン社製「パイロフィルプリプレグ TR3523 381GMX」、目付:200g/m2)を用意した。実施例3にて得られた発泡粒子成形体の両面に2層ずつ繊維強化樹脂層形成材を乗せて積層体とし、オートクレーブ法にて発泡粒子成形体の表面に繊維強化樹脂層形成材を接合した。具体的には、0.3MPaのゲージ圧力に加圧して積層体に押圧力を加えると共に、130℃で60分間に亘って積層体を加熱して、繊維強化樹脂層形成材中の熱硬化性樹脂を硬化させると共に、繊維強化樹脂層形成材を硬化した熱硬化性樹脂によって発泡粒子成形体の両面に接合した。
得られた発泡樹脂複合体の外観を目視観察して、表皮材表面に凹凸部が無く、外観が美麗な発泡樹脂複合体が得られたことを確認した。