(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057485
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】電磁弁及びブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20220404BHJP
B60T 15/36 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
F16K31/06 305G
F16K31/06 305J
B60T15/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165769
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 秀宣
(72)【発明者】
【氏名】榎本 隆
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 厚
(72)【発明者】
【氏名】小林 和幸
【テーマコード(参考)】
3D049
3H106
【Fターム(参考)】
3D049BB21
3D049BB35
3D049HH20
3D049JJ08
3D049JJ09
3H106DA04
3H106DA12
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD04
3H106EE14
3H106EE20
3H106GA20
3H106GA25
3H106GC05
3H106KK22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プランジャとスリーブとの間の空間から空気を排出できる電磁弁及びブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】コイル34の磁界によってシート42に向かって付勢されるプランジャ32と、第1の流路61を塞ぐ閉位置と、第2の流路65に前記第1の流路を連通させる開位置と、の間で移動可能であり、前記プランジャによって前記閉位置に向かって付勢される、弁部材33と、前記弁部材を前記開位置に向かって付勢する付勢部材35と、前記プランジャを移動可能に支持する内周面43aと、前記弁部材が前記開位置に位置するときに前記プランジャを支持する底面43bと、を有し、前記弁部材が前記開位置に位置するときの前記内周面及び前記底面と前記プランジャとの間の空間の第1の容積が、前記弁部材が前記閉位置に位置するときの前記空間の第2の容積と前記第1の容積との差以下である、スリーブ43と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部流路が設けられた筐体と、
前記筐体に設けられ、前記内部流路に含まれる第1の流路が設けられたシートと、
電流を流されることで磁界を発生させるコイルと、
前記筐体の内部に位置し、前記磁界によって前記シートに向かって付勢される、プランジャと、
前記筐体の内部で前記シートと前記プランジャとの間に位置し、前記シートに接触して前記第1の流路を塞ぐ閉位置と、前記シートから離間して前記内部流路に含まれる第2の流路に前記第1の流路を連通させる開位置と、の間で移動可能であり、前記磁界に付勢された前記プランジャによって前記閉位置に向かって付勢される、弁部材と、
前記弁部材を前記開位置に向かって弾性力により付勢する付勢部材と、
前記筐体に設けられ、前記プランジャを移動可能に支持する内周面と、前記弁部材が前記開位置に位置するときに前記プランジャを支持して当該プランジャが前記シートから離間することを制限する底面と、を有し、前記弁部材が前記開位置に位置するときの前記内周面及び前記底面と前記プランジャとの間の空間の第1の容積が、前記弁部材が前記閉位置に位置するときの前記内周面及び前記底面と前記プランジャとの間の空間の第2の容積と前記第1の容積との差以下である、スリーブと、
を備える電磁弁。
【請求項2】
前記プランジャは、前記内周面に向く側面と、前記シートに向く第1の端面と、前記第1の端面の反対側に位置して前記底面に向く第2の端面と、を有し、前記側面に前記第1の端面と前記第2の端面との間で延びる複数の溝が設けられた、請求項1の電磁弁。
【請求項3】
前記複数の溝は、一つの第1の溝と、前記第1の溝よりも小さい少なくとも一つの第2の溝と、を含む、請求項2の電磁弁。
【請求項4】
前記第1の容積は、前記第2の容積と前記第1の容積との前記差よりも小さい、請求項1乃至請求項3のいずれか一つの電磁弁。
【請求項5】
マスタシリンダと、
ホイールシリンダと、
ブレーキ液が流れる流路を通じて前記内部流路が前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとに接続された、請求項1乃至請求項4のいずれか一つの電磁弁と、
を備えるブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電磁弁及びブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブレーキ制御装置において、電磁弁は、通電されたコイルにより発生した磁界によりプランジャを吸引する。磁界がプランジャを吸引することで、プランジャと弁部材とが流路を閉じる方向に付勢される。また、弁部材は、スプリングにより流路を開く方向に付勢される(特許文献1)。
【0003】
プランジャは、スリーブによって移動可能に支持される。プランジャとスリーブとの間の空間は、ブレーキ液が流れる流路に連通しており、ブレーキ液が満たされている。ブレーキ液は、例えば、流体抵抗を生じ、プランジャ及び弁部材の振動を減衰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、プランジャとスリーブとの間の空間に空気が存在することがある。この場合、ブレーキ液による流体抵抗が低下し、プランジャ及び弁部材の振動が減衰しにくくなる。
【0006】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、プランジャとスリーブとの間の空間から空気を排出できる電磁弁及びブレーキ制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る電磁弁は、一例として、内部流路が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、前記内部流路に含まれる第1の流路が設けられたシートと、電流を流されることで磁界を発生させるコイルと、前記筐体の内部に位置し、前記磁界によって前記シートに向かって付勢される、プランジャと、前記筐体の内部で前記シートと前記プランジャとの間に位置し、前記シートに接触して前記第1の流路を塞ぐ閉位置と、前記シートから離間して前記内部流路に含まれる第2の流路に前記第1の流路を連通させる開位置と、の間で移動可能であり、前記磁界に付勢された前記プランジャによって前記閉位置に向かって付勢される、弁部材と、前記弁部材を前記開位置に向かって弾性力により付勢する付勢部材と、前記筐体に設けられ、前記プランジャを移動可能に支持する内周面と、前記弁部材が前記開位置に位置するときに前記プランジャを支持して当該プランジャが前記シートから離間することを制限する底面と、を有し、前記弁部材が前記開位置に位置するときの前記内周面及び前記底面と前記プランジャとの間の空間の第1の容積が、前記弁部材が前記閉位置に位置するときの前記内周面及び前記底面と前記プランジャとの間の空間の第2の容積と前記第1の容積との差以下である、スリーブと、を備える。よって、一例としては、弁部材が閉位置から開位置へ移動する間に、上記空間の流体の半分以上が、上記空間から排出される。従って、弁部材が閉位置から開位置へ移動する間に大部分が移動する流体が、空気を上記空間から排出することができる。
【0008】
上記電磁弁では、一例として、前記プランジャは、前記内周面に向く側面と、前記シートに向く第1の端面と、前記第1の端面の反対側に位置して前記底面に向く第2の端面と、を有し、前記側面に前記第1の端面と前記第2の端面との間で延びる複数の溝が設けられる。よって、一例としては、本実施形態に係る電磁弁は、弁部材が閉位置から開位置へ移動する間に、第2の端面と底面との間の空気を、複数の溝を通じて排出することができる。
【0009】
上記電磁弁では、一例として、前記複数の溝は、一つの第1の溝と、前記第1の溝よりも小さい少なくとも一つの第2の溝と、を含む。よって、一例としては、弁部材が閉位置から開位置へ移動する間に、流体及び空気が、一つの第1の溝を通って集中的に排出される。従って、第1の溝における流体の流れが、流速及び流量を増大させられ、空気をプランジャとスリーブとの間の空間から遠くへ移動させることができる。
【0010】
上記電磁弁では、一例として、前記第1の容積は、前記第2の容積と前記第1の容積との前記差よりも小さい。よって、一例としては、弁部材が閉位置から開位置へ移動する間に、プランジャとスリーブとの間の空間の空気が、当該空間から離間した位置まで排出される。
【0011】
本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置は、一例として、マスタシリンダと、ホイールシリンダと、ブレーキ液が流れる流路を通じて前記内部流路が前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとに接続された上記電磁弁と、を備える。よって、一例としては、内部流路を流れるブレーキ液が、プランジャとスリーブとの間の空間に存在する。弁部材が閉位置から開位置へ移動する間に、上記空間のブレーキ液の半分以上が、上記空間から排出される。従って、弁部材が閉位置から開位置へ移動する間に大部分が移動するブレーキ液が、空気を上記空間から排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一つの実施形態に係るブレーキ制御装置の電磁弁を示す断面図である。
【
図2】
図2は、上記実施形態のプランジャ及びスリーブを示す断面図である。
【
図3】
図3は、上記実施形態のプランジャ及びスリーブを
図2のF3-F3線に沿って示す断面図である。
【
図4】
図4は、上記実施形態の弁部材が閉位置に位置するときのプランジャ及びスリーブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、一つの実施形態について、
図1乃至
図4を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0014】
図1は、一つの実施形態に係るブレーキ制御装置10の電磁弁21を示す断面図である。ブレーキ制御装置10は、自動車のような車両1に搭載される。なお、ブレーキ制御装置10は、この例に限られない。
【0015】
図1に示すように、ブレーキ制御装置10は、マスタシリンダ(M/C)11と、ホイールシリンダ(W/C)12と、アクチュエータ13と、ECU(electronic control unit)15とを有する。なお、ブレーキ制御装置10は、この例に限られない。
【0016】
M/C11とW/C12との間に、ブレーキ液が流れる流路Cが設けられる。アクチュエータ13は、流路Cの経路においてM/C11とW/C12との間に設けられ、ブレーキ液の圧力を制御する。
【0017】
アクチュエータ13は、電磁弁21とポンプ22とを有する。電磁弁21は、電磁弁の一例であり、例えばアクチュエータ13における差圧制御弁である。アクチュエータ13は、増圧制御弁、減圧制御弁、リザーバ、逆止弁、及び固定容量ダンパのような種々の部品をさらに有する。電磁弁21は、差圧制御弁に限られず、増圧制御弁、減圧制御弁、又は他の弁であっても良い。
【0018】
電磁弁21は、流路Cの経路において、M/C11とW/C12との間に設けられる。なお、流路Cは、電磁弁21を迂回する流路を有しても良い。電磁弁21は、筐体31と、プランジャ32と、弁部材33と、コイル34と、付勢部材35とを有する。
【0019】
電磁弁21は、例えば、連通状態と差圧状態とに制御可能である。電磁弁21は、ドライバが車両1のブレーキペダルの操作を行う通常時ではコイル34に電流が流されず、連通状態となる。一方、電磁弁21は、コイル34に電流が流されることで、当該コイル34が発生させた磁界によりプランジャ32及び弁部材33が閉弁方向に付勢される。これにより、電磁弁21は、リリーフ弁のように機能し、差圧状態となる。
【0020】
電磁弁21により生じる差圧値は、電磁弁21のコイル34に流される電流の電流値に応じて変化する。電磁弁21により生じる差圧値は、当該電流値が大きいほど大きくなる。
【0021】
差動状態の電磁弁21は、流路Cを介してW/C12に接続される部分(以下、W/C12側と称する)におけるブレーキ液の圧力(以下、W/C圧と称する)が、流路Cを介してM/C11に接続される部分(以下、M/C11側と称する)におけるブレーキ液の圧力(以下、M/C圧と称する)よりも所定値以上高くなった際に、W/C12側からM/C11側へのブレーキ液を流動させる。このため、差動状態の電磁弁21は、W/C圧をM/C圧よりも所定値より高くならないように維持する。
【0022】
電磁弁21には、M/C11側からW/C12側へのブレーキ液の流動を許容する逆止弁が設けられても良い。当該逆止弁は、ドライバによりブレーキペダルが踏み込まれた場合に、M/C圧をW/C12に伝達可能とする。
【0023】
以下、電磁弁21の構造について詳述する。筐体31は、ガイド41と、シート42と、スリーブ43と、フィルタ44とを有する。すなわち、ガイド41、シート42、スリーブ43、及びフィルタ44は、筐体31に設けられる。
【0024】
ガイド41は、金属のような磁性体により作られる。ガイド41は、例えば、アクチュエータ13の筐体13aに設けられた略円柱状の凹部13bに加締められる。ガイド41の一部は、アクチュエータ13の筐体13aから外部に突出している。
【0025】
ガイド41は、中心軸Axに沿って延びる略円筒形に形成される。中心軸Axは、ガイド41の略中心を通り、ガイド41の長手方向に延びている。なお、中心軸Axは、ガイド41の中心とずれていても良い。
【0026】
以下、便宜上、中心軸Axに沿う方向が軸方向、中心軸Axと直交する方向が径方向、及び中心軸Axまわりに回転する方向が周方向と称される。軸方向は、ガイド41の長手方向である。
【0027】
軸方向は、
図1に示す第1の方向D1と第2の方向D2とを含む。第1の方向D1は、中心軸Axに沿う一方向であり、開弁方向とも称され得る。第2の方向D2は、第1の方向D1の反対方向であり、閉弁方向とも称され得る。
【0028】
略円筒状のガイド41の内部に、内孔50が設けられる。内孔50は、中心軸Axに沿って延び、ガイド41を軸方向に貫通している。このため、内孔50は、第1の方向D1におけるガイド41の端部41aと、第2の方向D2におけるガイド41の端部41bとに開口している。端部41aは、アクチュエータ13の筐体13aの外部に位置する。端部41bは、アクチュエータ13の凹部13bの内部に位置する。
【0029】
内孔50は、第1の挿通孔51と、第2の挿通孔52と、第3の挿通孔53とを有する。第1の挿通孔51と、第2の挿通孔52と、第3の挿通孔53とはそれぞれ、内孔50の一部である。第1の挿通孔51、第2の挿通孔52、及び第3の挿通孔53は、互いに軸方向に連通している。
【0030】
第1の挿通孔51は、ガイド41の端部41aに開口している。中心軸Axと直交する第1の挿通孔51の断面は、例えば、略多角形に形成される。なお、中心軸Axと直交する第1の挿通孔51の断面は、円形のような他の形状であっても良い。
【0031】
第2の挿通孔52は、ガイド41の端部41bに開口している。中心軸Axと直交する第2の挿通孔52の断面は、例えば、略円形に形成される。なお、中心軸Axと直交する第2の挿通孔52の断面は、他の形状であっても良い。
【0032】
第3の挿通孔53は、第1の挿通孔51と第2の挿通孔52との間に位置する。中心軸Axと直交する第3の挿通孔53の断面は、例えば、略円形に形成される。なお、中心軸Axと直交する第3の挿通孔53の断面は、この例に限られない。
【0033】
中心軸Axと直交する第3の挿通孔53の断面は、中心軸Axと直交する第1の挿通孔51の断面より小さい。さらに、中心軸Axと直交する第3の挿通孔53の断面は、中心軸Axと直交する第2の挿通孔52の断面よりも小さい。
【0034】
ガイド41に、複数の貫通孔55が設けられる。貫通孔55は、ガイド41を径方向に貫通し、第2の挿通孔52に連通する。貫通孔55は、例えば、第3の挿通孔53の近傍に位置する。
【0035】
シート42は、第3の挿通孔53から第2の方向D2に離間した位置で、第2の挿通孔52に嵌め込まれる。これにより、軸方向において、シート42と第3の挿通孔53との間に、空間56が形成される。空間56は、第2の挿通孔52に含まれる。貫通孔55は、空間56とガイド41の外部とを連通する。
【0036】
シート42は、金属により作られ、略円筒状に形成される。略円筒状のシート42の内部に、第1の流路61が設けられる。第1の流路61は、中心軸Axに沿って軸方向にシート42を貫通する。このため、第1の流路61と内孔50とは、同軸上に配置される。
【0037】
第1の流路61は、第1の方向D1におけるシート42の端面42aと、第2の方向D2におけるシート42の端面42bとに開口する。端面42aは、空間56に面し、第3の挿通孔53に向く。端面42bは、端面42aの反対側に位置する。第1の流路61は、空間56に連通可能である。
【0038】
第1の流路61に、オリフィス61aが設けられる。オリフィス61aは、第1の流路61の他の部分よりも中心軸Axと直交する断面が小さい部分である。さらに、シート42は、端面42aからオリフィス61aに向かうに従って先細る略円錐状の座面42cを有する。
【0039】
スリーブ43は、第2の方向D2に開放されるとともに底のある略円筒状に形成される。スリーブ43は、例えば、ステンレスのような非磁性の金属により作られる。なお、スリーブ43はこの例に限られない。
【0040】
スリーブ43の内部に、ガイド41の端部41aが挿入される。スリーブ43は、溶接又は他の手段により、ガイド41に固定される。これにより、スリーブ43の内部に、ガイド41の第1の挿通孔51に連通する収容室62が設けられる。
【0041】
スリーブ43は、内周面43aと、底面43bとを有する。内周面43aは、中心軸Axに沿って延びる略円筒状の面である。内周面43aは、中心軸Axに向く。例えば、内周面43aの一部は、ガイド41に溶接される。底面43bは、ガイド41の端部41aに向く略半球状の面である。なお、内周面43a及び底面43bの形状は、この例に限られない。
【0042】
内周面43a、底面43b、及びガイド41の端部41aが、収容室62を規定(形成)する。なお、収容室62は、この例に限られない。内周面43a、底面43b、及びガイド41の端部41aは、収容室62の内側に向く。
【0043】
フィルタ44は、中心軸Axに沿って延びる略円筒状に形成される。フィルタ44の内部に、ガイド41が嵌め込まれる。フィルタ44は、ガイド41に設けられた複数の貫通孔55を、当該ガイド41の外側から覆う。
【0044】
フィルタ44に、複数の貫通孔63が設けられる。複数の貫通孔63はそれぞれ、フィルタ44を径方向に貫通する。フィルタ44の複数の貫通孔63のそれぞれは、ガイド41の複数の貫通孔55のそれぞれよりも小さい。フィルタ44の貫通孔63は、ガイド41の貫通孔55に連通する。これにより、フィルタ44は、貫通孔63よりも大きい異物が空間56に流入することを抑制する。
【0045】
以上の筐体31の内部に、ブレーキ液が流れる内部流路Cvが設けられる。内部流路Cvは、上述の第1の流路61と、第2の流路65とを含む。第2の流路65は、貫通孔55,63、及び空間56を含む。このため、第1の流路61と第2の流路65とは、互いに連通可能である。
【0046】
内部流路Cvは、流路Cを通じてM/C11とW/C12とに接続される。第1の流路61は、流路Cを通じてW/C12に接続される。さらに、第1の流路61は、流路Cを通じてポンプ22に接続される。第2の流路65は、流路Cを通じてM/C11に接続される。このように、第1の流路61は内部流路CvのうちW/C12側であり、第2の流路65は内部流路CvのうちM/C11側である。
【0047】
プランジャ32は、金属のような磁性体により作られ、中心軸Axに沿って延びる略円柱状に形成される。プランジャ32は、スリーブ43の収容室62に収容される。このため、プランジャ32は、シート42から第1の方向D1に離間している。
【0048】
図2は、本実施形態のプランジャ32及びスリーブ43を示す断面図である。
図2に示すように、プランジャ32は、側面70と、第1の端面71と、第2の端面72とを有する。
【0049】
側面70は、中心軸Axに沿って延びる略円筒状の面である。なお、側面70の中心は、中心軸Axから若干ずれていても良い。側面70は、スリーブ43の内周面43aに向く。側面70の直径は、スリーブ43の内周面43aの直径よりも僅かに小さい。このため、側面70の少なくとも一部と、内周面43aとの間に、僅かな隙間が設けられる。
【0050】
プランジャ32の側面70は、スリーブ43の内周面43aにより、筐体31に対して軸方向に移動可能に支持される。言い換えると、プランジャ32は、スリーブ43の内周面43aにより、軸方向にガイドされる。
【0051】
例えば、スリーブ43の内周面43aは、側面70の一部に当接することで、プランジャ32が径方向に移動することを制限する。さらに、内周面43aは、側面70の他の一部からわずかに離間することで、プランジャ32が軸方向に滑らかに移動することを許容する。
【0052】
第1の端面71は、第2の方向D2におけるプランジャ32の端面である。なお、第1の端面71は、この例に限られない。例えば、プランジャ32は、第1の端面71から第2の方向D2に突出した部分を有しても良い。
【0053】
第1の端面71は、略平坦に形成され、第2の方向D2に向く。なお、第1の端面71は、この例に限られず、他の形状を有しても良い。
図1に示すように、第1の端面71は、間隔を介してガイド41の端部41aに向く。また、第1の端面71は、ガイド41を介してシート42の端面42aに向く。プランジャ32が第2の方向D2に移動することで、第1の端面71がガイド41の端部41aに当接可能であっても良い。
【0054】
第2の端面72は、第1の端面71の反対側に位置する。第2の端面72は、第1の方向D1におけるプランジャ32の端面である。なお、第2の端面72は、この例に限られない。第2の端面72は、スリーブ43の底面43bに向く。
【0055】
図2に示すように、第2の端面72は、平面72aと、曲面72bとを有する。平面72aは、略平坦に形成され、第1の方向D1に向く。曲面72bは、側面70と平面72aとの間に設けられた略半球状の面である。曲面72bの少なくとも一部の半径は、スリーブ43の底面43bの半径と略等しい。
【0056】
プランジャ32の側面70に、複数の溝75が設けられる。複数の溝75はそれぞれ、第1の端面71と、第2の端面72の平面72aと、の間で略軸方向に延びている。このため、溝75は、側面70と、第1の端面71と、第2の端面72の平面72aとに開口する。
【0057】
図3は、本実施形態のプランジャ32及びスリーブ43を
図2のF3-F3線に沿って示す断面図である。
図3に示すように、複数の溝75は、一つの第1の溝76と、一つの第2の溝77とを含む。なお、複数の溝75は、複数の第2の溝77を含んでも良い。すなわち、複数の溝75は、少なくとも一つの第2の溝77を含む。
【0058】
第2の溝77は、第1の溝76よりも小さい。このため、プランジャ32は、非対称な形状を有する。例えば、中心軸Axと直交する第2の溝77の断面は、中心軸Axと直交する第1の溝76の断面よりも小さい。また、第2の溝77の容積は、第1の溝76の容積よりも小さい。
【0059】
第1の溝76は、車両1の上方に向く。また、第2の溝77は、車両1の下方に向く。このように、第1の溝76と第2の溝77とは、反対側に位置する。なお、複数の溝75が複数の第2の溝77を含む場合、第1の溝76と複数の第2の溝77とは、周方向に略等間隔に配置される。なお、第1の溝76及び第2の溝77の配置は、この例に限られない。
【0060】
図1に示すように、弁部材33は、筐体31の内部でシート42とプランジャ32との間に位置する。弁部材33は、シート42に対して軸方向に移動することができる。弁部材33は、シャフト81と弁体82を有する。
【0061】
シャフト81は、例えば、ステンレスのような非磁性の金属により作られる。シャフト81は、嵌合部85と、摺動部86とを有する。嵌合部85は、中心軸Axに沿って延びる多角柱状に形成される。摺動部86は、中心軸Axに沿って延びる略円柱状に形成される。中心軸Axと直交する嵌合部85の断面は、中心軸Axと直交する摺動部86の断面よりも大きい。
【0062】
嵌合部85は、第1の挿通孔51に収容される。嵌合部85は、第1の挿通孔51において、ガイド41により軸方向に移動可能に支持される。なお、嵌合部85と第1の挿通孔51の内面との間には、僅かな隙間が設けられる。さらに、ガイド41は、嵌合部85が中心軸Axまわりに回転することを制限する。
【0063】
摺動部86は、嵌合部85から、第3の挿通孔53を通って、空間56まで突出する。摺動部86は、第3の挿通孔53において、ガイド41により軸方向に移動可能に支持される。なお、摺動部86と第3の挿通孔53の内面との間には、僅かな隙間が設けられる。
【0064】
弁体82は、例えば、略半球状に形成される。なお、弁体82の形状は、この例に限られない。弁体82は、空間56に位置し、第2の方向D2における摺動部86の端部に設けられる。弁体82は、シャフト81と一体に軸方向に移動することができる。
【0065】
第1の方向D1におけるシャフト81の嵌合部85の端部は、プランジャ32の第1の端面71に当接する。シャフト81は、プランジャ32と一体的に軸方向に移動することができる。なお、シャフト81は、プランジャ32に固定されても良い。
【0066】
弁部材33は、閉位置Pcと、開位置Poとの間で、軸方向に移動可能である。
図1は、閉位置Pcに位置する弁部材33を二点鎖線で示し、開位置Poに位置する弁部材33を実線で示す。
【0067】
弁部材33が閉位置Pcに位置するとき、弁体82は、シート42の座面42cに当接することで、第1の流路61を塞ぐ。言い換えると、弁部材33が閉位置Pcに位置するとき、弁体82は、座面42cに当接することで、第1の流路61と第2の流路65との間を遮断する。
【0068】
弁部材33が開位置Poに位置するとき、弁体82は、シート42の座面42cから離間する。これにより、弁体82は、第1の流路61を開放し、第2の流路65に第1の流路61を連通させる。
【0069】
コイル34は、例えば、中心軸Axまわりに巻かれたソレノイドである。コイル34は、スリーブ43の外側に位置し、スリーブ43を囲んでいる。コイル34は、電流を流されることで磁界を発生させる。ECU15が、コイル34へ流される電流を制御する。
【0070】
コイル34は、例えば、樹脂のような非磁性体により作られた円筒状のスプールに収納される。さらに、磁性体により作られたヨークが、スプール及びコイル34を保持する。スプール及びヨークは、筐体31に含まれても良い。
【0071】
付勢部材35は、例えば、中心軸Axまわりに巻かれたコイルスプリングである。なお、付勢部材35は、他の弾性体であっても良い。付勢部材35は、第1の挿通孔51に収容され、ガイド41の支持面41cと、シャフト81の嵌合部85との間に位置する。支持面41cは、第1の挿通孔51の内面と第3の挿通孔53の内面との間に位置し、第1の方向D1に向く。
【0072】
付勢部材35は、支持面41cと嵌合部85とに支持されるとともに、支持面41cと嵌合部85との間で圧縮されている。このため、付勢部材35は、支持面41cに支持され、嵌合部85を第1の方向D1に付勢する。
【0073】
なお、付勢部材35は、支持面41cに限らず、例えばシート42の端面42aに支持されても良い。この場合、例えば、第1の挿通孔51と第2の挿通孔52とが連通し、第3の挿通孔53が省略され、付勢部材35が端面42aと嵌合部85とに支持される。
【0074】
付勢部材35により付勢されたシャフト81の嵌合部85が第1の方向D1に移動すると、弁体82及びプランジャ32もシャフト81と一体的に第1の方向D1に移動する。これにより、弁部材33がシート42から離間する。すなわち、付勢部材35は、弁部材33を開位置Poに向かって弾性力により付勢する。
【0075】
図2に示すように、弁部材33が開位置Poまで移動すると、プランジャ32の第2の端面72の曲面72bが、スリーブ43の底面43bに当接する。底面43bは、弁部材33が開位置Poに位置するとき、プランジャ32の曲面72bを支持して、プランジャ32がシート42からさらに離間することを制限する。
【0076】
付勢部材35は、開位置Poに位置する弁部材33を、第1の方向D1にさらに付勢する。すなわち、弁部材33が開位置Poに位置する場合も、付勢部材35は、支持面41cと嵌合部85との間で圧縮されている。このため、付勢部材35は、弁部材33を開位置Poまで移動させることができる。なお、付勢部材35は、この例に限られない。
【0077】
図2に示すように、弁部材33が開位置Poに位置するとき、プランジャ32の第2の端面72の平面72aは、スリーブ43の底面43bから離間している。このため、平面72aと底面43bとの間に、底空間91が設けられる。また、上述のように、プランジャ32の側面70の少なくとも一部とスリーブ43の内周面43aとの間に、僅かな隙間92が設けられる。
【0078】
底空間91及び隙間92のように、スリーブ43の内周面43a及び底面43bとプランジャ32との間に、空間95が存在する。空間95は、収容室62に含まれる。弁部材33が開位置Poに位置するとき、空間95は、底空間91と、隙間92と、第1の溝76と、第2の溝77とを含む。第1の溝76は、第1の溝76の底面76aと内周面43aとの間の空間である。第2の溝77は、第2の溝77の底面77aと内周面43aとの間の空間である。
【0079】
図1に示すように、スリーブ43の内部の収容室62は、内部流路Cvの第2の流路65と、第1の挿通孔51及び第3の挿通孔53を通じて連通する。このため、内部流路Cvを流れるブレーキ液は、第1の挿通孔51及び第3の挿通孔53の内周面とシャフト81との間の隙間を通り、収容室62に流入する。なお、収容室62と第2の流路65とは、他の流路を通じて連通していても良い。
【0080】
上述のように、スリーブ43の内周面43a及び底面43bとプランジャ32との間の空間95は、収容室62に含まれる。このため、収容室62に流入したブレーキ液は、空間95に満たされる。
【0081】
ECU15は、電磁弁21及びポンプ22を制御することで、各W/C12に発生させられるW/C圧を制御できる。通常時において、ECU15は、コイル34に電流を流さない。弁部材33は、付勢部材35に付勢され、開位置Poに位置する。これにより、弁部材33の弁体82がシート42の座面42cから離間し、電磁弁21が連通状態となる。
【0082】
連通状態の電磁弁21では、第2の流路65に第1の流路61が連通する。言い換えると、電磁弁21が開き、M/C11側の流路CとW/C12側の流路Cとが連通する。このため、M/C11側とW/C12側との間でブレーキ液が流れることができる。
【0083】
車両1のブレーキペダルが踏み込まれると、第1の流路61を通じてM/C11からW/C12へブレーキ液が流れる。一方、ブレーキペダルの踏み込みが中止されると、第1の流路61を通じてW/C12からM/C11へブレーキ液が速やかに戻される。
【0084】
一方、ECU15は、ポンプ22によりW/C12の圧力を増大させる場合、ポンプ22を駆動させるとともに、電磁弁21を差圧状態に制御する。ECU15は、コイル34に電流を流すことで、コイル34に磁界を発生させる。
【0085】
コイル34は、磁界を発生させることで、電磁力によりプランジャ32を第2の方向D2に吸引する。言い換えると、プランジャ32は、コイル34が発生させた磁界によって、シート42に向かって付勢される。
【0086】
磁界により吸引されたプランジャ32は、シャフト81を第2の方向D2に押し、弁体82をシート42の座面42cへ近づける。このように、弁部材33は、磁界に付勢されたプランジャ32によって閉位置Pcに向かって付勢される。
【0087】
ポンプ22が吐出したブレーキ液は、W/C12側の流路Cから第1の流路61に流入する。ブレーキ液は、コイル34の磁界により付勢された弁部材33の弁体82を第1の方向D1に押す。ブレーキ液は、弁体82をシート42の座面42cから離間させ、弁体82と座面42cとの間の隙間を通って第1の流路61から第2の流路65の空間56に流入する。このように、ポンプ22は、第1の流路61から第2の流路65にブレーキ液を流す。
【0088】
磁界により生じる吸引力が弁部材33をシート42に近づく第2の方向D2に付勢する一方、ブレーキ液と付勢部材35とにより生じる反力が弁部材33をシート42から遠ざかる第1の方向D1に付勢する。弁部材33は、吸引力と反力とが釣り合う位置へ移動し、第1の流路61の開放度合い(開弁度)を調整する。
【0089】
コイル34に流される電流の電流値によって、吸引力は変化する。このため、ECU15は、コイル34に流す電流を調整することで、弁部材33の位置を調整する。弁部材33の位置が調整されることで、第1の流路61から第2の流路65に流れるブレーキ液の流量と、第1の流路61及びW/C12における圧力とが調整される。
【0090】
また、ECU15は、電磁弁21を閉状態に制御しても良い。ECU15は、ポンプ22を駆動せず、コイル34に電流を流す。コイル34は、磁界を発生させ、電磁力によりプランジャ32を第2の方向D2に吸引する。
【0091】
弁部材33は、磁界に付勢されたプランジャ32によって閉位置Pcに向かって付勢される。ポンプ22がブレーキ液を吐出しないため、プランジャ32は、弁部材33を閉位置Pcまで移動させ、弁体82により第1の流路61を塞ぐ。
【0092】
以上のように、電磁弁21において、弁部材33が開位置Poと閉位置Pcとの間で移動させられる。また、プランジャ32は、弁部材33を第2の方向D2に付勢し、又は弁部材33により第1の方向D1に付勢され、弁部材33と一体的に移動する。
【0093】
例えば、内部流路Cvにおける圧力変動、又はポンプ22の吐出量の変化のような外乱が、プランジャ32及び弁部材33に入力されることがある。当該外乱は、プランジャ32及び弁部材33に自励振動を生じる虞がある。しかし、プランジャ32とスリーブ43との間の空間95に満たされたブレーキ液は、流体抵抗による減衰力を生じ、プランジャ32及び弁部材33が自励振動することを抑制できる。
【0094】
一方、プランジャ32とスリーブ43との間の空間95に空気が存在することがある。例えば、内部流路Cvでブレーキ液とともに流れる空気が、第1の挿通孔51及び第3の挿通孔53とシャフト81との間の隙間を通り、収容室62の空間95に流入することがある。また、空間95を満たすブレーキ液に含有される空気が、例えば温度変化により析出することがある。空間95のブレーキ液に空気が混入すると、空間95における流体抵抗が低下する虞がある。
【0095】
本実施形態の電磁弁21は、プランジャ32が開位置Poへ移動することで、空間95の空気を排出する。以下、本実施形態の電磁弁21による空間95の空気の排出について詳述する。
【0096】
図2に示すように、弁部材33が開位置Poに位置するときの空間95の容積Vsoは、例えば、底空間91、隙間92、第1の溝76、及び第2の溝77の容積の合計である。容積Vsoは、第1の容積の一例である。なお、弁部材33が開位置Poに位置するとき、プランジャ32の第2の端面72の曲面72bと、スリーブ43の底面43bとの間に隙間が存在することがある。この場合、容積Vsoは当該隙間の容積も含む。
【0097】
図4は、本実施形態の弁部材33が閉位置Pcに位置するときのプランジャ32及びスリーブ43を示す断面図である。
図4に示すように、弁部材33が閉位置Pcに位置するとき、プランジャ32の第2の端面72は、スリーブ43の底面43bから離間している。このため、プランジャ32の第2の端面72とスリーブ43の底面43bとの間に、底空間99が設けられる。弁部材33が閉位置Pcに位置するときの底空間99は、弁部材33が開位置Poに位置するときの底空間91よりも大きい。
【0098】
弁部材33が閉位置Pcに位置するとき、空間95は、隙間92と、第1の溝76と、第2の溝77と、底空間99とを含む。このため、弁部材33が閉位置Pcに位置するときの空間95の容積Vscは、例えば、隙間92、第1の溝76、第2の溝77、及び底空間99の容積の合計である。容積Vscは、第2の容積の一例である。
【0099】
容積Vsoは、容積Vscと容積Vsoとの差ΔV以下に設定される。言い換えると、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間に、スリーブ43の内周面43a及び底面43bとプランジャ32との間の空間95の容積は、半分以下になる。本実施形態では、容積Vsoは、容積Vscと容積Vsoとの差ΔVよりも小さく設定される。
【0100】
閉位置Pcから開位置Poへ移動する弁部材33は、プランジャ32を移動させ、空間95の容積を減少させる。すなわち、移動するプランジャ32は、空間95に満たされたブレーキ液を、空間95の外に押し出す。
【0101】
容積Vsoが容積の差ΔV以下であるため、空間95に満たされたブレーキ液の半分以上が、空間95から排出される。また、空間95に存在する空気の体積は、一般的に、容積Vsoよりも小さい。このため、空間95に存在する空気は、排出されるブレーキ液の流れによって空間95から排出されやすい。また、弁部材33が開位置Poに位置するときの空間95の容積が小さいため、空間95に空気が残りにくく、空気の析出量も少なくなる。
【0102】
また、プランジャ32に設けられた複数の溝75は、プランジャ32の第2の端面72とスリーブ43の底面43bとの間の底空間91(又は底空間99)に連通する。このため、底空間91(又は底空間99)に存在する空気は、溝75を通って排出される。
【0103】
本実施形態では、第2の溝77は、第1の溝76よりも小さい。このため、第2の溝77におけるブレーキ液の圧力が、第1の溝76におけるブレーキ液の圧力よりも大きくなる。当該圧力差により、ブレーキ液は、第2の溝77の近傍から、第1の溝76へ向かって流れる。すなわち、空間95のブレーキ液は、第1の溝76を通って空間95から排出されるように、おおよそ一方向へ流れる。なお、ブレーキ液の一部は、第2の溝77を通って空間95から排出されても良い。
【0104】
弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間、第1の溝76を流れるブレーキ液の流量は、第2の溝77を流れるブレーキ液の流量よりも多い。また、第1の溝76を流れるブレーキ液の流速は、例えば複数の溝75の大きさが略等しい場合に溝75を流れるブレーキ液の流速よりも速い。なお、第1の溝76を流れるブレーキ液の流速は、この例に限られない。
【0105】
第1の溝76は、車両1の上方に向く。空間95の空気は、浮力により、空間95における上端に集まりやすい。このため、空間95の空気は、第1の溝76の近傍に集まる。空気は、上述のように流量が多く且つ流速が速い第1の溝76におけるブレーキ液の流れにより、空間95から排出される。
【0106】
容積Vsoと容積の差ΔVとが等しい場合、空間95の空気は、プランジャ32の第1の端面71の近傍まで、又はより遠くまで排出される。容積Vsoが容積の差ΔVより小さい場合、空間95の空気は、プランジャ32から離間した位置まで排出される。これにより、プランジャ32の周囲の空気が除去され、ブレーキ液がプランジャ32に作用させる流体抵抗の低下が解消される。従って、電磁弁21は、流体抵抗による減衰力が空気により低下させられることを抑制し、プランジャ32及び弁部材33が自励振動することを抑制できる。
【0107】
以上のように、電磁弁21は、弁部材33が閉位置Pcに位置する閉状態から、弁部材33が開位置Poに位置する連通状態に移行する間に、空間95の空気を排出することができる。また、電磁弁21は、差圧状態から連通状態に移行する間に、空間95の空気を排出しても良い。
【0108】
例えば、差圧状態では、弁部材33が、所定の区間(調圧領域)に位置する。調圧領域は、開位置Poと閉位置Pcとの間であって、閉位置Pcの近傍に設けられる。弁部材33が調圧領域に位置するとき、シート42の座面42cと弁体82との間の隙間が狭くなり、第1の流路61及びその上流のW/C12側の圧力が上昇する。
【0109】
容積Vsoは、弁部材33が調圧領域に位置するときのスリーブ43とプランジャ32との間の空間95の容積と容積Vsoとの差以下に設定される。これにより、電磁弁21は、弁部材33が調圧領域から開位置Poへ移動する間に、空間95の空気を排出できる。
【0110】
以上説明された実施形態に係るブレーキ制御装置10において、プランジャ32は、筐体31の内部に位置し、磁界によってシート42に向かって付勢される。弁部材33は、筐体31の内部でシート42とプランジャ32との間に位置し、シート42に接触して第1の流路61を塞ぐ閉位置Pcと、シート42から離間して第2の流路65に第1の流路61を連通させる開位置Poと、の間で移動可能である。弁部材33は、磁界に付勢されたプランジャ32によって閉位置Pcに向かって付勢される。スリーブ43は、筐体31に設けられ、内周面43aと底面43bとを有する。スリーブ43の内周面43aは、プランジャ32を閉位置Pcと開位置Poとの間で移動可能に支持する。底面43bは、弁部材33が開位置Poに位置するときにプランジャ32を支持して当該プランジャ32がシート42から離間することを制限する。弁部材33が開位置Poに位置するときの内周面43a及び底面43bとプランジャ32との間の空間95の容積Vsoは、弁部材33が閉位置Pcに位置するときの内周面43a及び底面43bとプランジャ32との間の空間95の容積Vscと、容積Vsoと、の差ΔV以下である。すなわち、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間の空間95の容積の変化(差ΔV)は、弁部材33が開位置Poに位置するときの空間95の容積Vso以上に設定される。内周面43a及び底面43bとプランジャ32との間にはブレーキ液が存在する。このため、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間に、空間95のブレーキ液の半分以上が、空間95から排出される。従って、もし空間95に空気が存在したとしても、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間に大部分が移動するブレーキ液が、空気を空間95から排出する。従って、本実施形態の電磁弁21は、プランジャ32とスリーブ43との間の空気がブレーキ液による流体抵抗を低下させることを抑制し、弁部材33及びプランジャ32が外乱によって自励振動を生じることを抑制できる。
【0111】
プランジャ32は、内周面43aに向く側面70と、シート42に向く第1の端面71と、第1の端面71の反対側に位置して底面43bに向く第2の端面72と、を有する。側面70に、第1の端面71と第2の端面72との間で延びる複数の溝75が設けられる。これにより、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間に、第2の端面72と底面43bとの間のブレーキ液及び空気が、複数の溝75を通って排出される。すなわち、複数の溝75は、ブレーキ液及び空気を排出する流路を形成する。従って、本実施形態の電磁弁21は、空気が第2の端面72と底面43bとの間に残ることを抑制できる。
【0112】
複数の溝75は、一つの第1の溝76と、第1の溝76よりも小さい少なくとも一つの第2の溝77と、を含む。これにより、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間に、第2の端面72と底面43bとの間のブレーキ液及び空気は、一つの第1の溝76を通って排出される。一方、第2の溝77では、流れの抵抗が大きくなり、ブレーキ液が流れにくい。すなわち、ブレーキ液及び空気の大部分は、一つの第1の溝76を通って集中的に排出される。このため、第1の溝76におけるブレーキ液の流量及び流速が大きくなり、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間のブレーキ液及び空気の移動距離が増大する。従って、本実施形態の電磁弁21は、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間に空気をプランジャ32とスリーブ43との間の空間95から遠くへ移動させることができ、空気が空間95に残ることをさらに抑制できる。
【0113】
容積Vsoは、容積Vscと容積Vsoとの差ΔVよりも小さい。これにより、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間に、プランジャ32とスリーブ43との間の空間95の空気が、当該空間95から離間した位置まで排出される。従って、本実施形態の電磁弁21は、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間に空気をプランジャ32とスリーブ43との間の空間95から遠くへ移動させることができ、空気が空間95に残ることをさらに抑制できる。
【0114】
電磁弁21の内部流路Cvは、ブレーキ液が流れる流路Cを通じてM/C11とW/C12とに接続される。内部流路Cvを流れるブレーキ液が、プランジャ32とスリーブ43との間の空間95に存在する。このため、本実施形態の電磁弁21では、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間に、空間95のブレーキ液の半分以上が、空間95から排出される。従って、もし空間95に空気が存在したとしても、弁部材33が閉位置Pcから開位置Poへ移動する間に大部分が移動するブレーキ液が、空気を空間95から排出する。従って、本実施形態のブレーキ制御装置は、プランジャ32とスリーブ43との間の空気がブレーキ液による流体抵抗を低下させることを抑制し、弁部材33及びプランジャ32が外乱によって自励振動を生じることを抑制できる。
【0115】
以上説明された実施形態によれば、プランジャは、筐体の内部に位置し、磁界によってシートに向かって付勢される。弁部材は、筐体の内部でシートとプランジャとの間に位置し、シートに接触して第1の流路を塞ぐ閉位置と、シートから離間して第2の流路に第1の流路を連通させる開位置と、の間で移動可能である。弁部材は、磁界に付勢されたプランジャによって閉位置に向かって付勢される。スリーブは、筐体に設けられ、内周面と底面とを有する。スリーブの内周面は、プランジャ移動可能に支持する。底面は、弁部材が開位置に位置するときにプランジャを支持して当該プランジャがシートから離間することを制限する。弁部材が開位置に位置するときの内周面及び底面とプランジャとの間の空間の第1の容積は、弁部材が閉位置に位置するときの内周面及び底面とプランジャとの間の空間の第2の容積と第1の容積との差以下である。すなわち、弁部材が閉位置から開位置へ移動する間の上記空間の容積の変化ΔVは、弁部材が開位置に位置するときの上記空間の容積Voよりも大きく設定される。一般的に、内周面及び底面とプランジャとの間にはブレーキ液のような流体が存在する。このため、弁部材が閉位置から開位置へ移動する間に、上記空間の流体の半分以上が、上記空間から排出される。従って、もし上記空間に空気が存在したとしても、弁部材が閉位置から開位置へ移動する間に大部分が移動する流体によって当該空気が上記空間から排出される。従って、本実施形態の電磁弁は、プランジャとスリーブとの間の空気がプランジャとスリーブとの間の流体による流体抵抗を低下させることを抑制し、弁部材及びプランジャが外乱によって自励振動を生じることを抑制できる。
【0116】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0117】
10…ブレーキ制御装置、11…マスタシリンダ、12…ホイールシリンダ、21…電磁弁、31…筐体、32…プランジャ、33…弁部材、34…コイル、35…付勢部材、42…シート、43…スリーブ、43a…内周面、43b…底面、61…第1の流路、65…第2の流路、70…側面、71…第1の端面、72…第2の端面、75…溝、76…第1の溝、77…第2の溝、95…空間、C…流路、Cv…内部流路、Po…開位置、Pc…閉位置、Vso…容積(第1の容積)、Vsc…容積(第2の容積)。