(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057497
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】ウェットタオル、ウェットタオルロール体、及びウェットタオル包装体
(51)【国際特許分類】
A47K 7/00 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
A47K7/00 G
A47K7/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165786
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
(57)【要約】
【課題】高い清拭効果があり、薬液の揮発による清拭効果の低下がなく、シート間の張り付きがなく、使用時のべたつきがない、ウェットタオル、ウェットタオルロール体、及びこれを用いたウェットタオル包装体を提供すること。
【解決手段】不織布を含むシートに、薬液が含浸されたウェットタオル10であって、不織布は、パルプを50~85質量%含有し、乾燥状態におけるシートの吸水量(TWA)が、150~350g/m
2であり、乾燥状態であるシートの質量に対する、乾燥状態であるシートに含浸させた薬液の質量の倍率(含浸倍率)が、200~400%である、ウェットタオル10を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を含むシートに、薬液が含浸されたウェットタオルであって、
前記不織布は、パルプを50~85質量%含有し、
乾燥状態における前記シートの吸水量(TWA)が、150~350g/m2であり、
乾燥状態である前記シートの質量に対する、乾燥状態である前記シートに含浸させた薬液の質量の倍率(含浸倍率)が、200~400%である、
ウェットタオル。
【請求項2】
乾燥状態における前記シートの目付が、30~65g/m2である、
請求項1に記載のウェットタオル。
【請求項3】
前記ウェットタオルの横方向引張強さ(WCD)が、300~800gf/25mmであり、
前記ウェットタオルの短手方向における伸縮倍率(横伸び)が、40~120%である、
請求項1又は2に記載のウェットタオル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のウェットタオルはシート状であり、前記ウェットタオルが少なくとも巻回されたロール体である、
ウェットタオルロール体。
【請求項5】
請求項4に記載のウェットタオルロール体と、
前記ウェットタオルロール体を収納するフィルム製の包装袋と、
を有するウェットタオル包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットタオル、ウェットタオルロール体、及びこれを用いたウェットタオル包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
人の身体や物を清拭する際にウェットタオルが用いられている。その使用形態としては、様々なものがある。例えば、大判の不織布をスティック状に丸め、1枚ずつ包装した個包装タイプのウェットタオル等が用いられている。このような大判である製品は、例えば、身体清拭に用いられることが多い。
【0003】
このようなウェットタオルに関するものとして、例えば、特許文献1には、繊維のシートに消臭液を含浸し密閉された容器に収納した招集用ウェットティッシュが開示されている。そして、特許文献2には、展開すると身体拭き用途に適合する形に切られたセルロース繊維またはセルロース繊維と合成繊維との複合繊維からなるシートが数回折り畳まれた後にスティック状に巻き上げられたものと、強酸性水が不活性フィルムでシール包装されたものとがフィルム状物で一体包装されている携帯用ウェットティッシュが開示されている。
【0004】
そして、このようなウェットタオルの製造装置に関するものとして、特許文献3には、棒状に巻き取られた布製品等をフィルムで包装する装置であって,布製品等の両側部からフィルムを供給する一対のフィルム供給手段と,それらフィルム供給手段から供給されたフィルム同士の間に挿入させた布製品等の周囲においてフィルム同士を接着させる接着手段とを備え,かつ,布製品等をフィルム同士の間に挿入する際にフィルム供給手段の一方から相対的に早くフィルムを供給することにより,フィルム同士の間で布製品等を回転させる、布製品等の包装装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平01-032693号公報
【特許文献2】登録実用新案3043153号公報
【特許文献3】特許第3681262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したウェットタオルについて、例えば、身体清拭用のウェットタオルは、1枚で身体の隅々まで清拭できる程度の清拭効果が求められる。また、人の肌を刺激することなく、皮脂や汚物の拭き取りが可能である程度の低刺激性も必要である。さらには、冬季や寒冷地等の低温環境下では、電子レンジやホットウォーマーを用いてウェットタオルを加温して使用することがあるが、このような加温時に薬液が揮発して清拭効果が低下しないことが求められる。また、物品清拭用のウェットタオルについても、高い清拭効果、及び薬液の揮発によって清拭効果が低下しないことが求められる。
【0007】
さらに、上述したウェットタオルは、人や物等の清拭対象に対する高い清拭効果及び薬液の揮発による清拭効果の低下がないだけでなく、使用時にシートを広げた際や積層体したシートを1枚ずつ使用する際に、シート間の張り付きがないこと、使用時のべたつきがないこと等も満たす必要がある。しかし、このような要求全てを高いレベルで満足させることができるウェットタオルは未だ開発されていない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高い清拭効果があり、薬液の揮発による清拭効果の低下がなく、シート間の張り付きがなく、使用時のべたつきがない、ウェットタオル、ウェットタオルロール体、及びこれを用いたウェットタオル包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、不織布を含むシートに、薬液が含浸されたウェットタオルであって、不織布は、パルプを50~85質量%含有し、乾燥状態におけるシートの吸水量(TWA)が、150~350g/m2であり、乾燥状態であるシートの質量に対する、乾燥状態であるシートに含浸させた薬液の質量の倍率(含浸倍率)が、200~400%である、ウェットタオルとすることに知見を得て、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
(1)
不織布を含むシートに、薬液が含浸されたウェットタオルであって、前記不織布は、パルプを50~85質量%含有し、乾燥状態における前記シートの吸水量(TWA)が、150~350g/m2であり、乾燥状態である前記シートの質量に対する、乾燥状態である前記シートに含浸させた薬液の質量の倍率(含浸倍率)が、200~400%である、ウェットタオルである。
(2)
乾燥状態における前記シートの目付が、30~65g/m2である、(1)に記載のウェットタオルである。
(3)
前記ウェットタオルの横方向引張強さ(WCD)が、300~800gf/25mmであり、前記ウェットタオルの短手方向における伸縮倍率(横伸び)が、40~120%である、(1)又は(2)に記載のウェットタオルである。
(4)
(1)~(3)のいずれかに記載のウェットタオルはシート状であり、前記ウェットタオルが少なくとも巻回されたロール体である、ウェットタオルロール体である。
(5)
(4)に記載のウェットタオルロール体と、前記ウェットタオルロール体を収納するフィルム製の包装袋と、を有するウェットタオル包装体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い清拭効果があり、薬液の揮発による清拭効果の低下がなく、シート間の張り付きがなく、使用時のべたつきがない、ウェットタオル、ウェットタオルロール体、及びこれを用いたウェットタオル包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るウェットタオルロール体の一例の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るウェットタオルを折り畳んで、
図1のウェットタオルロール体を得る手順の一例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るウェットタオル包装体の一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0015】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0016】
さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0017】
図1は、本実施形態に係るウェットタオルロール体の一例の斜視図である。
【0018】
本実施形態に係るウェットタオル10は、不織布を含むシートに、薬液が含浸されたウェットタオルであって、不織布は、パルプを50~85質量%含有し、乾燥状態におけるシートの吸水量(TWA)が、150~350g/m2であり、乾燥状態であるシートの質量に対する、乾燥状態であるシートに含浸させた薬液の質量の倍率(含浸倍率)が、200~400%である、ウェットタオルである。
【0019】
(ウェットタオル)
【0020】
ウェットタオル10は、パルプを50~85質量%含有する不織布である。パルプの含有率(パルプ比)が、50質量%未満であると、薬液の保持性が不十分となってしまい、例えば、ウェットタオル10の1枚あたりの清拭可能面積が低くなる。また、パルプの含有率が、85%より高いと、ウェットタオル10を折り曲げたり、積層したりした場合に、シート同士が張り付きやすくなってしまい、例えば、ウェットタオル10を広げ難くなる。パルプの含有率の下限は、55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、パルプの含有率の上限は、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
パルプとしては、特に限定されないが、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース、ダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等が挙げられる。NBKPは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
不織布は、パルプだけでなく、樹脂を更に含有するパルプ含有不織布であってもよい。不織布が樹脂を含有する場合、樹脂の種類は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ乳酸等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィンであることが好ましい。また、不織布が樹脂を含む場合、樹脂の含有率は、50質量%未満であることが好ましく、45質量%未満であることがより好ましく、40質量%未満であることがより好ましい。また、樹脂の含有率の上限は、20質量%よりも大きいことが好ましく、25質量%より大きいことがより好ましい。
【0023】
不織布としては、例えば、パルプを含有する繊維に、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維を、ケミカルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、エアレイド法、湿式スパンレース法、スパンボンド法、メルトボンド法等の加工法によって一体化したものを使用することができる。
【0024】
不織布の具体例としては、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布を積層したスパンボンド-メルトブローン複合不織布等が挙げられる。これらの中でも、スパンボンド不織布が好ましい。そして、スパンボンド不織布を少なくとも有する複合不織布の場合、スパンボンド不織布を50質量%以上含有することがより好ましい。
【0025】
不織布の製造方法については、特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。例えば、複数の不織布を積層した複合不織布の製造方法としては、例えば、複数の不織布層を積層した積層体に対して、水流交絡法により高圧の水を打ち込んで絡め合わせる方法が好ましい。このような水流交絡法により得られた不織布(水流交絡不織布)によれば、シートの表裏差を出しやすいため、シートを広げやすくなる。ここでいうシートの表裏差は、パルプの含有量の差である。例えば、一方の表面がパルプの含有率が高い不織布層面であり、他方の表面がパルプの含有率が低い又はパルプを含まない不織布層面であることにより、表裏差を出すことができる。パルプの含有量の表裏差を設けることで、シート間の張り付きを一層効果的に防止することができる。
【0026】
(薬液)
【0027】
薬液としては、清拭用途に使用可能な薬液を特に限定なく使用できる。薬液としては、例えば、除菌剤を含み、必要に応じて、保湿剤、エモリエント剤、その他添加剤等を含む薬液が挙げられる。薬液は、例えば、各成分を水に溶解又は分散させた液体として使用可能である。
【0028】
除菌剤としては、清拭用途に使用可能な成分を特に限定なく使用できる。除菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等の第四級アンモニウム塩、ポリアミノプロピルビグアニド、パラベン(メチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル)、エチルパラベン(パラオキシ安息香酸エチル)、プロピルパラベン(パラオキシ安息香酸プロピル)、イソプロピルパラベン(パラオキシ安息香酸イソプロピル)、ブチルパラベン(パラオキシ安息香酸ブチル)、イソブチルパラベン(パラオキシ安息香酸イソブチル)、ベンジルパラベン(パラオキシ安息香酸ベンジル)等)、安息香酸及びその塩類(安息香酸ナトリウム等)、クロロクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸及びその塩類(サリチル酸ナトリウム等)、ソルビン酸及びその塩類(ソルビン酸カリウム等)、デヒドロ酢酸及びその塩類(デヒドロ酢酸ナトリウム等)、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、メチルイソチアゾリノン等が挙げられる。
【0029】
除菌剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
薬液における除菌剤の含有量は、薬液成分に応じて適宜決定することができるが、例えば、薬液全量の0.01~5.0質量%であることが好ましい。
【0031】
保湿剤としては、この分野で常用される成分を特に限定なく使用できる。保湿剤としては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール;乳酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム(PCA-Na)等の有機酸類;尿素;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエステル等のアルキレングリコール類等が挙げられる。
【0032】
保湿剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
薬液における保湿剤の含有量は、薬液成分に応じて適宜決定することができるが、例えば、薬液全量の0.0001~10.0質量%であることが好ましい。
【0034】
さらに、油溶性成分のエモリエント剤としては、例えば、天然油脂、長鎖脂肪酸、脂肪酸エステル、ラノリン類(ラノリン、ラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ等)、リン脂質、セラミド類、天然保湿成分(アロエ抽出エキス等)等が挙げられる。
【0035】
また、その他の添加剤として、医薬部外品及び化粧品等に使用可能な添加剤を用いることができる。添加剤としては、ゲル化剤、乳化剤、増粘剤、pH調整剤、金属封鎖剤、界面活性剤、安定化剤、変色防止剤、香料、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記の中でも、本実施形態において使用する薬液の好適例としては、例えば、塩化ベンザルコニウム及び塩化セチルピリジニウム等の第4級アンモニウム塩;ポリアミノプロピルビグアニド、パラベン、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0037】
(ウェットタオルの物性)
【0038】
ウェットタオル10の乾燥状態のシートの吸水量(TWA;Total Water Absorbency)は、150~350g/m2である。TWAが150g/m2未満あると、十分な清拭効果が得られる程度の含浸倍率とすることができず、十分な薬液を保持することができない。また、TWAが350g/m2より大きいと、清拭時に適度な薬液が染み出さないため、汚れ等をしっかりと拭き取ることができず、十分な清拭効果が得られない。TWAの下限は、200g/m2以上であることが好ましく、250g/m2以上であることがより好ましい。また、TWAの上限は、340g/m2以下であることが好ましく、330g/m2以下であることがより好ましい。このような範囲に制御することによって、上述した清拭効果を一層向上させることができ、含浸倍率を高くしなくとも十分な清拭効果が得られるため経済性にも優れる。
【0039】
ウェットタオル10のTWAは、後述する実施例に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0040】
ウェットタオル10の乾燥状態であるシートの質量(g1)に対する、乾燥状態であるシートに含浸させた薬液の質量(g2)の倍率(含浸倍率;g2/g1)は、200~400%である。含浸倍率が200%未満であると、1枚のウェットタオル10で清拭することができる面積(清拭可能面積)が小さくなり、十分な清拭効果が得られない。また、含浸倍率が400%より大きいと、べたつきが発生してしまう。含浸倍率の下限は、220%以上であることが好ましく、240%以上であることがより好ましい。また、含浸倍率の上限は、360%以下であることが好ましく、330%以下であることがより好ましい。
【0041】
ウェットタオル10の乾燥状態におけるシートの目付は、30~65g/m2であることが好ましい。目付の下限は、33g/m2以上であることがより好ましく、35g/m2以上であることが更に好ましい。また、目付の上限は、55g/m2以下であることがより好ましく、45g/m2以下であることが更に好ましい。目付の下限を上記範囲に制御することにより、清拭する際にウェットタオル10が破れることがない程度のシート厚を付与することができる。また、目付の下限を上記範囲に制御することにより、ウェットタオル10が硬くなりすぎず、使用時に拭き取りやすい程度の柔軟性を付与することができる。
【0042】
ウェットタオル10の横方向引張強さ(WCD)は、300~800gf/25mmであることが好ましい。WCDの下限は、380gf/25mm以上であることがより好ましく、430gf/25mm以上であることが更に好ましい。また、WCDの上限は、700gf/25mm以下であることがより好ましく、600gf/25mm以下であることが更に好ましい。WCDの下限を上記範囲に制御することにより、清拭する際にウェットタオル10が破れることを効果的に防止できる。また、WCDの上限を上記範囲に制御することにより、ウェットタオル10が硬くなりすぎず、使用時に拭き取りやすい程度の柔軟性を付与することができる。例えば、後述する
図1のような円柱状のウェットタオルロール体1の場合、その高さ方向が横(CD)方向となる。
【0043】
ウェットタオル10の長手方向における伸縮倍率(横伸び)は、40~120%であることが好ましい。横伸びの下限は、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。また、横伸びの上限は、110%以下であることがより好ましく、100%以下であることが更に好ましい。横伸びの下限を上記範囲に制御することにより、ウェットタオル10が硬くなりすぎず、使用時に拭き取りやすい程度の柔軟性を付与することができる。横伸びの上限を上記範囲に制御することにより、ウェットタオル10が伸びすぎることなく、より拭き取りやすくなる。
【0044】
さらに、上述したWCD及び横伸びのいずれもが、上述した範囲内であることが好ましい。これにより、使用時の拭き取りやすさや、破れにくさが一層向上する。
【0045】
本実施形態に係るウェットタオル10は、いわゆる厚手のウェットタオルとしても好適に使用できる。このような観点から、ウェットタオル10のシート厚は、0.30~0.50mmであることが好ましい。シート厚の下限は、0.33mm以上であることがより好ましく、0.35mm以上であることが更に好ましい。また、シート厚の上限は、0.47mm以下であることがより好ましく、0.45mm以下であることが更に好ましい。シート厚を上記範囲に制御することにより、より拭き取りやすくなる。
【0046】
そして、本実施形態に係るウェットタオル10は、略矩形のシート状とすることができる。長手方向(横方向)の長さは、300~700mmであることが好ましい。この下限は、350mm以上であることがより好ましく、400mm以上であることが更に好ましい。また、この上限は、650mm以下であることがより好ましく、600mm以下であることが更に好ましい。長手方向の長さを上記範囲に制御することにより、より拭き取りやすくなる。
【0047】
また、短手方向(縦方向)の長さは、200~400mmであることが好ましい。この下限は、220mm以上であることがより好ましく、250mm以上であることが更に好ましい。また、この上限は、350mm以下であることがより好ましく、300mm以下であることが更に好ましい。短手方向の長さを上記範囲に制御することにより、より拭き取りやすくなる。
【0048】
(ウェットタオルロール体)
【0049】
本実施形態に係るウェットタオル10はシート状であり、これを少なくとも巻回(矢印F1参照)されたロール体(ウェットタオルロール体1)として使用することができる。ウェットタオルロール体1は、いわゆるスティック状(スティックタイプ)等として好適に使用することができる。ウェットタオルロール体1は、必要に応じて、シート状のウェットタオル10を折りたたんだ後、巻回したものであってもよい。このようなロール体とすることにより、コンパクト化できるとともに、外部との接触面積が小さいため、薬液の揮発を効果的に防止できるとともに、外部との接触による汚染も効果的に防止できる。
【0050】
シート状のウェットタオル10からウェットタオルロール体1を作製する場合、例えば、
図2に示す方法によって得ることができる。
【0051】
図2は、本実施形態に係るウェットタオルを折り畳んで、
図1のウェットタオルロール体を得る手順の一例を示す概念図である。
【0052】
まず、本実施形態に係るウェットタオル10の原反シート100を、長手方向の中央線である折り曲げ線L1において、端部110ともう一方の端部120とを重ねるように2つ折りして(矢印F2参照)、折り曲げシート200を得る。
【0053】
続いて、折り曲げシート200について、端部210及びもう一方の端部220が中央線である折り曲げ線L2に接するように折り曲げる。すなわち、端部210を折り曲げ線L3で折り曲げて(矢印F3参照)、もう一方の端部220を折り曲げ線L4で折り曲げる(矢印F4参照)ことによって、観音折りして、折り曲げシート300を得る。
【0054】
そして、折り曲げシート300を一方の端部310を、折り曲げ端部330(すなわち、端部210及びもう一方の端部220の接線;L2参照)が内側となるように巻回することにより(矢印F1参照)、ウェットタオルロール体1を得ることができる。
【0055】
ウェットタオルロール体1の寸法形状は、特に限定されないが、円柱状であることが好ましい。このような形状とすることにより、シートの広げやすさが一層向上する。
【0056】
(ウェットタオル包装体)
【0057】
図3は、本実施形態に係るウェットタオル包装体の一例の斜視図である。
【0058】
本実施形態によれば、上述したウェットタオルロール体1と、このウェットタオルロール体1を収納するフィルム製の包装袋3と、を有するウェットタオル包装体2とすることができる。
【0059】
例えば、スティック状のウェットタオルロール体1について、1本を包装袋3に単包(個包装)してもよい。このような個包装とすることによって、使用直前に開封し、その後すぐ使用することができるため、薬液の揮発等を防止できる。したがって、使い捨てタイプのウェットタオルロール体1として特に好適である。
【0060】
包装袋3の包装形態は、特に限定されず、ウェットタオルロール体1の形状や種類等を考慮して適宜決定することができる。包装形態としては、例えば、ピロー包装(縦型ピロー包装、横型ピロー包装、スティックピロー包装、平袋ピロー包装等)、ガゼット包装、二方シール包装、チューブロール包装等が挙げられる。これらの中でも、ピロー包装が好ましい。
【0061】
包装袋3は、表面30、裏面31、及び側面32が両端の端部33によってシールされたピロー包装袋である。ピロー包装は、1枚のフィルムを背中合わせでシールして筒状にし、所定の長さで端部をシールし、カットした枕状の包装形態である。ピロー包装は、ウェットタオルロール体1の寸法形状に幅広く対応することができる包装形態であり、ウェットタオルロール体1を密封包装することができるため、薬液の揮発防止の観点からも好ましい。
【0062】
包装袋3の材料であるフィルムは、例えば、樹脂フィルムであることが好ましい。フィルムの材質は、液不透過性を有するものであればよい。
【0063】
フィルムとしては、例えば、バリア性を有する基材フィルムと、シール性を有するシールフィルムとを含む積層フィルムを用いることができる。バリア性を有する基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、アルミ蒸着フィルム、透明蒸着フィルム等が挙げられる。そして、シールフィルムとしては、例えば、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)等が挙げられる。
【0064】
さらには、耐傷性及び美粧性の観点から、最外層にコーティングフィルム(PETフィルム、OPPフィルム等)が更に積層された積層フィルムとしてもよい。
【0065】
包装袋3の寸法形状は、特に限定されないが、スティックピロー包装であることが好ましい。このような寸法形状とすることにより、薬液の揮発防止性等が一層向上する。
【0066】
以上説明してきたように、本実施形態に係るウェットタオル10、ウェットタオルロール体1、及びウェットタオル包装体2によれば、十分な清拭効果を発揮できる程度の薬液含有量でありながら、肌への刺激が少なく、1枚で多くの面積を清拭でき、べたつきがなく、かつ、使用時には広げやすいという利点等を少なくとも発揮できる。
【実施例0067】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0068】
<物性の測定方法>
【0069】
・乾燥状態におけるシートの目付
JIS L 1913:2010に準拠して、ウェットタオル10の乾燥状態におけるシートの目付を測定した。なお、単位面積当たりの質量測定は、質量が一定になるまで60℃乾燥機内に静置して絶乾させた後、JIS P8111:1998に準拠し、調湿した後にJIS L 1913:2010に準拠して測定した。
【0070】
・ウェットタオル10のパルプの含有率(パルプ比)
ウェットタオル10のシートを1cm×1cm四方に裁断して、サンプルを準備した。このサンプルの質量を測定して、シートの質量とした。そして、サンプルを、酢酸緩衝液(pH4~4.5)700mLに浸し、セルロース分解酵素(商品名「セルラーゼオノズカ3S」、ヤクルト薬品工業社製)を濃度1質量%となるように添加した。そして、40℃、166rpmで12時間浸漬させた。その後、サンプルを取り出して、水で洗浄し、乾燥させた。かかる処理後のサンプルの質量を測定し、下記式に基づきパルプの含有率を算出した。
パルプの含有率=処理後のサンプルの質量(g)/処理前のサンプルの質量(g)×100
【0071】
・ウェットタオル10の横方向の引張強さ(WCD)及び横伸び率の測定
JIS L 1913:2010に準拠して、ウェットタオル10のWCD及び横伸び率を測定した。なお、ここでいう「横」とは、ウェットタオル10の円柱形の高さ方向をいう。
【0072】
・乾燥状態におけるシートの吸水量(TWA)
ウェットタオル10を7.5cm×7.5cm四方に裁断して、サンプルを準備した。そして、このサンプルの質量が一定になるまで60℃乾燥機内に静置して、絶乾後のサンプルを得た。この絶乾後のサンプルの質量を測定した(絶乾後質量)。次に、このサンプルを蒸留水中に2分間浸漬した後、水蒸気飽和状態(RH100%)の容器中で、サンプルの1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態で吊るし、30分放置して水切り後の質量を測定した。そして、測定値をサンプル1m2あたりの保水量(g/m2)に換算した。
【0073】
・薬液の含浸倍率
ウェットタオル10のシートを1cm×1cmに裁断して、サンプルを準備した。このサンプルの質量を測定した(絶乾前質量)。
続いて、このサンプルの質量が一定になるまで60℃乾燥機内に静置して、絶乾後のサンプルを得た。この絶乾後のサンプルの質量を測定した(絶乾後質量)。
そして、下記式に基づき、乾燥状態であるシートの質量に対する、乾燥状態であるシートに含浸させた薬液の質量の倍率(含浸倍率)を求めた。
含浸倍率(%)=(絶乾前質量g-絶乾後質量g)/絶乾後質量g×100
【0074】
<評価方法>
【0075】
・ウェット持続性
室内環境において、モニターがシートで被介護者の陰部を除く全身を清拭した。清拭作業後にシートを手で絞り、最後まで湿潤状態を保てているか評価した。
【0076】
・汚れの落ちやすさ
室内環境において、モニターがシートで被介護者の陰部清拭を実施した際の、排泄物や皮脂などの汚れの落ち具合を評価した。一回の清拭時間が短いほど、汚れが落ちやすいものとした。
【0077】
・皮膚刺激性
モニターが身体を清拭した際の皮膚への刺激を評価した。
【0078】
・拭き取り易さ
モニターが身体を清拭した際の拭き取り易さを評価した。
【0079】
・シート一枚で十分に拭き取れる(清拭可能面積)
室内環境において、モニターがシートで被介護者の陰部を除く全身を清拭し、その後、陰部清拭を行った。一枚のシートで全ての作業が完了しうるか評価した。
【0080】
・べたつき
モニターが身体を清拭した際の、べたつきによる不快感を評価した。
【0081】
・シートの広げやすさ
モニターがスティック状のシートを広げる際の広げやすさを評価した。フィルム包装の開封から清拭作業開始までの時間が短いほど、シートを広げやすいものとした。
【0082】
上述した各評価項目について、モニター30人中、
30~25人が良いと判断した場合を「◎」と評価した。
24~16人が良いと判断した場合を「〇」と評価した。
15~10人が良いと判断した場合を「△」と評価した。
9~5人が良いと判断した場合を「×」と評価した。
4~0人が良いと判断した場合を「××」と評価した。
【0083】
<実施例1>
【0084】
(ウェットタオル10、ウェットタオルロール体1の作製)
【0085】
まず、薬液タンクにて各成分を混合し、均一に攪拌することによって薬液を調製した。そして、含浸ノズルから薬液を噴霧し、均一に含浸することによってウェットタオル10を作製した。続いて、得られたウェットタオル10をカットして、横幅600mm、縦幅300mmの原反シート100(
図2参照)を準備した。この原反シート100を、
図2に示す手順によって、折り加工及び巻き加工することによってウェットタオルロール体1を作製した。
【0086】
(ウェットタオル包装体2の作製)
【0087】
透明蒸着PET/LLDPEのフィルムを用いて、上述したウェットタオルロール体1を個包装(1本のみ包装)し、ピロー包装(縦型)のウェットタオル包装体2を得た。この包装袋3は、スティックピロー包装であり、得られたウェットタオル包装体2の形状は、ロール体であった。
【0088】
<実施例2~6、比較例1~3>
【0089】
表1に示す条件に変更した点以外は、実施例1と同様の方法によって、ウェットタオル、ウェットタオルロール体及びウェットタオル包装体を作製した。
【0090】
表1に、各実施例及び各比較例の条件及び評価結果を示す。
【0091】
【0092】
以上より、本実施例に係るウェットタオル、ウェットタオルロール体及びウェットタオル包装体について、高い清拭効果があり、薬液の揮発による清拭効果の低下がなく、シート間の張り付きがなく、使用時のべたつきがないことが少なくとも確認できた。