(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057498
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】圧電振動子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20220404BHJP
H03H 9/215 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H03H9/19 L
H03H9/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165787
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀行
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC06
5J108DD05
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108FF07
5J108FF14
(57)【要約】
【課題】 圧電振動片を基板に固定するときに発生する導通不良を抑制させる。
【解決手段】 基部2及び当該基部2から一方向に延出する振動部3a、3bを備えた圧電振動片1と、基部2と接合部材によって接合され圧電振動片1を支持する基板10と、を備え、接合部材は、第1接合部材12aと第2接合部材12bとを有し、第1接合部材12aと第2接合部材12bとは前記一方向と直交する方向において離間して配置されているとともに、前記一方向においてずらして配置されている圧電振動子20とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部及び当該基部から一方向に延出する振動部を備えた圧電振動片と、
前記基部と接合部材によって接合され前記圧電振動片を支持する基板と、を備えた圧電振動子において、
前記接合部材は、第1接合部材と第2接合部材とを有し、前記第1接合部材と前記第2接合部材とは前記一方向と直交する方向において離間して配置されているとともに、前記一方向においてずらして配置されている、ことを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
前記圧電振動片は、
前記基部の前記基板と接合される実装面に設けられた一対の固定電極と、
前記振動部に設けられ、前記一対の固定電極の各々に接続される一対の励振電極と、を備えており、
前記第1接合部材は一方の前記固定電極と接合され、前記第2接合部材は他方の前記固定電極と接合されている、ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記圧電振動片の前記実装面には、前記一方の固定電極と前記励振電極の一方とを電気的に接続する一つの接続電極を備えており、
前記一方の固定電極と接合される前記第1接合部材は、前記一方の固定電極における前記振動部側に配置され、
前記他方の固定電極と接合される前記第2接合部材は、前記他方の固定電極における前記基部側に配置される、ことを特徴とする請求項2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記圧電振動片は音叉型圧電振動片であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の圧電振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のタイムスタンダード等として使用される圧電振動子は電子機器の小型化に伴い、圧電振動子に内蔵される圧電振動片のサイズも小型化している。
【0003】
従来の圧電振動子は、パッケージの基板部に一対の電極を備え、一対の電極上にそれぞれ一つの導電性接着剤が設けられており、圧電振動片がその導電性接着剤を介して基板部に接合されるとともに電気的に接続されている(例えば、特許文献1参照。)。圧電振動子の製造は、パッケージの基板部に設けられた電極上に導電性接着剤を塗布し、その導電性接着剤の上に圧電振動片を載置して接合する工程を含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の圧電振動子では、基板部上に導電性接着剤を介して圧電振動片を接合する際、導電性接着剤が圧電振動片により基板部に押し付けられることで基板部の面内方向に拡がり、導電性接着剤同士が接触して導通不良が発生することがあった。また、小型化により、電極に塗布する導電性接着剤の大きさの調整が難しくなってきており、導電性接着剤の塗布量が多すぎた場合でも同様に導電性接着剤同士の接触が発生し導通不良を招くことがある。このような導通不良は、導電性接着剤以外の接合材、例えばペーストはんだやはんだバンプ等による接合でも同様に発生することがある。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、接合材同士の接触に起因する導通不良を抑制できる圧電振動子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基部及び当該基部から一方向に延出する振動部を備えた圧電振動片と、基部と接合部材によって接合され圧電振動片を支持する基板と、を備えた圧電振動子において、接合部材は、第1接合部材と第2接合部材とを有し、第1接合部材と第2接合部材とは一方向と直交する方向において離間して配置されているとともに、一方向においてずらして配置されている圧電振動子とする。圧電振動片は、基部の基板と接合される実装面に設けられた一対の固定電極と、振動部に設けられ、一対の固定電極の各々に接続される一対の励振電極と、を備えており、第1接合部材は一方の固定電極と接合され、第2接合部材は他方の固定電極と接合されている圧電振動子としてもよい。また、圧電振動片の実装面には、一方の固定電極と励振電極の一方とを電気的に接続する一つの接続電極を備えており、一方の固定電極と接合される第1接合部材は、一方の固定電極における振動部側に配置され、他方の固定電極と接合される第2接合部材は、他方の固定電極における基部側に配置される圧電振動子としてもよい。さらにまた、圧電振動片は音叉型圧電振動片である圧電振動子としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圧電振動子によれば、導通不良を抑制できる圧電振動子となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】圧電振動片を支持、固定する基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための形態の一実施例を、図面を用いて説明する。説明を分かりやすくするために説明の順番を次の通りとする。まず圧電振動片について説明し、次に圧電振動片を支持する基板について説明し、最後に圧電振動子について説明する。本明細書においては、圧電振動片の基部から振動部が延びる方向を長手方向とし、圧電振動片の主面と平行であり長手方向と直交する方向を短手方向とする。なお、図面においては各構成をわかりやすくするために実際の形状や実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0011】
図1は圧電振動片を示す図であり、(a)は圧電振動片の上面図、(b)は圧電振動片の下面図である。圧電振動片1は、第1主面、第1主面と対向する第2主面、第1主面と第2主面とを接続する側面とを有する圧電板より構成され、基部2と基部2と接続し長手方向に延びる一対の振動部3a、3bを有する音叉型形状である。圧電振動片1の外形寸法は、例えば、長手方向が略2.22mm、短手方向が略0.5mmであり、その公称周波数は、32.768kHzである。
【0012】
圧電振動片1の表面には電極が形成されており、その電極の構成は次の通りである。基部2の表面には圧電振動片1を支持体に固定、支持するとともに支持体から供給される電源と電気的に接続される第1固定電極4a及び第2固定電極4bを備える。第1固定電極4a及び第2固定電極4bは、基部2の第1主面と第2主面の表面にそれぞれ短手方向に離間して形成れており、第1主面の第1固定電極4aと第2主面の第1固定電極4aとは圧電振動片1の側面に形成した電極を経由して電気的に接続されている。また、第1主面の第2固定電極4bと第2主面の第2固定電極4bとは圧電振動片1の側面に形成した電極を経由して電気的に接続されている。
【0013】
振動部3a、3bには、振動部3a、3bを振動させるための第1励振電極5a及び第2励振電極5bが、振動部3a、3bの長手方向に沿って形成されている。第1励振電極5aは、振動部3aの第1主面及び第2主面と、振動部3bの長手方向の2つの側面とに形成され、第1主面、第2主面及び2つの側面に形成された第1励振電極5a同士は、第1主面の基部2上において短手方向に延び、第1固定電極4aと第1励振電極5aとの間に配置された第1接続電極6aを介して電気的に接続されている。また、第1励振電極5aは、第1主面上において第1固定電極4aと電気的に接続されている。
【0014】
第2励振電極5bは、振動部3bの第1主面及び第2主面と、振動部3aの長手方向の2つの側面とに形成され、第1主面、第2主面及び2つの側面に形成された第2励振電極5b同士は、第2主面の基部2上において短手方向に延び、第2固定電極4bと第2励振電極5bとの間に配置された第2接続電極6bを介して電気的に接続されている、また、第2励振電極5bは、第2主面上において第2固定電極4bと電気的に接続されている。
【0015】
圧電振動片1は、第1固定電極4aと第2固定電極4bとの電気的極性が異なるために第1固定電極4aと第2固定電極4bに電圧を印加すると振動部3a、3bがそれぞれ変形して屈曲振動する。なお、第1主面において第2固定電極4bと第1接続電極6aとは、長手方向に0.04mm離間して配置されており、第2主面において第1固定電極4aと第2接続電極6bとは、長手方向に0.04mm離間して配置されている。圧電振動片1の形成方法は、公知技術であるフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術などが用いられる。
【0016】
図2は前述した圧電振動片1を支持、固定する基板の平面図である。基板10は、圧電振動片1を支持、固定する一方の面と、一方の面に対向する他方の面を有するセラミック製の基板10であり、基板10の一方の面には、圧電振動片1を実装するための電極である第1固定部11a及び第2固定部11bが形成されている。図示しないがこの第1固定部11a及び第2固定部11bは、基板10の一方の面から他方の面を貫通する貫通電極を介して他方の面の外部表面に形成された2つの実装用電極とそれぞれ電気的に接続されている。また、基板10は矩形であり、その外形寸法は、例えば、長手寸法が略3.10mm、短手方向が略1.50mmである。また、基板10に形成される固定部の外形寸法は、例えば、長手寸法が略0.41mm、短手方向が略0.31mmである。
【0017】
図3は本発明の圧電振動子の図である。
図3は、圧電振動片が固定されない側の基板面側より透視した図あり、説明をわかりやすくするため圧電振動片を実線、導電性接着剤を破線、圧電振動片が固定される基板の固定部を一点鎖線で示している。
【0018】
圧電振動子20は、基板10の一方の面上に第2主面を搭載面として圧電振動片1が接合部材によって固定される。具体的には、圧電振動片1の第2主面に配置された第1固定電極4aと基板10の第1固定部11aとが第1導電性接着剤12aによって接着接合され、圧電振動片1の第2主面に配置された第2固定電極4bと基板10の第2固定部11bとが第2導電性接着剤12bによって接着接合されている。そして圧電振動子20は、凹部を備えた不図示の蓋体の凹部内に圧電振動片1を収容するよう基板10上へ配置、接合されている。
【0019】
圧電振動片1と基板10とを接着接合する第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bとは、圧電振動片1が基板10に固定されたとき、圧電振動片1の第2主面と接触する面積がほぼ同一となるよう構成されており、本実施例では、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bの圧電振動片1の第2主面との接触面の形状が略円形であり、その外径はそれぞれ0.20mmである。
【0020】
また、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bは、圧電振動片1の短手方向に離間するとともに長手方向にずらして配置されている。より具体的には、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bは、圧電振動片1の短手方向においては第1固定部11aと第2固定部11bの略中心にそれぞれの中心12a1、12b1を配置するとともに、長手方向においては、第1導電性接着剤12aの中心12a1を第1固定電極4aにおける振動部3aから遠い側(基部2側)に配置し、第2導電性接着剤12bの中心12b1を第2固定電極4bにおける振動部3bに近い側に配置する。本実施例では、第1導電性接着剤12aの中心12a1と第2導電性接着剤12bの中心12b1との間の長手方向の長さは0.35mm、短手方向の長さは0.08mmである。
【0021】
このように、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bとを長手方向にずらして配置することにより、従来の2つの導電性接着剤を長手方向にずらして配置していなかった場合と比較して第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bとの距離を大きくとることが可能となり、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bとが接触することに起因した導通不良の発生を抑制することができる。さらに、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bとの離間距離を大きくしたことで、第1導電性接着剤12a、第2導電性接着剤12bのそれぞれの大きさを従来よりも大きく設定することも可能となり、接合強度の向上や導電性の確保にも有利となる。例えば、本実施例では、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bの外径がそれぞれ0.20mm(半径0.10mm)であり、それぞれの中心12a1、12b1における短手方向の距離が0.08mmであるため、短手方向と平行な直線上に第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bとを配置すると第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bとは接触してしまう。しかし、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bとを長手方向に離間して配置することで、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bとが接触しない構成とすることができ、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bのそれぞれの外径も短手方向の間の距離よりも大きく設定することができる。
【0022】
また、本実施例では、第1導電性接着剤12aと第2導電性接着剤12bのうち第1導電性接着剤12aを振動部3a、3bから遠い側、換言すれば第1導電性接着剤12aを第2導電性接着剤12bより圧電振動片1の基部2側に配置している。圧電振動片1の搭載面である第2主面の基部2には、第2接続電極6bが形成されているが、第2接続電極6bは、第2導電性部材12bと接続される第2固定電極4bと接続され、第1導電性接着剤12aとは電気的に接続されていないため、第2接続電極6bと第1導電性接着剤12aとが接触すると導通不良となる。本実施例のように、第2接続電極6bと電気的に接続されない側の導電性接着剤、ここでは第1接着剤12aを基部2側に配置することで、接続電極と導電性接着剤との間の導通不良も防止することが可能である。
【0023】
以上、本発明の圧電振動子について一つの実施の形態を例に基づき説明してきたが、本発明の範囲はこの実施の形態に限定されるものではなく本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。例えば、実施例では圧電振動片として音叉型の圧電振動片としたが、矩形状の圧電板の主面に励振電極、固定電極が形成されたATカット型の圧電振動片としてもよい。また、圧電振動片と基板とを導電性接着剤により接合したが、はんだペーストやはんだバンプ等の接合材によって接合してもよい。また、圧電振動片を平板状の基板に圧電振動片を接合し、凹部を備えた蓋体によって圧電振動片を内部に収容した圧電振動子としたが、凹部を備えた基板の凹部底面部に圧電振動子を接合し、平板状の蓋体で凹部を塞いで圧電振動片を内部に収容した圧電振動子としてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 圧電振動片
2 基部
3a,3b 振動部
4a 第1固定電極
4b 第2固定電極
5a 第1励振電極
5b 第2励振電極
6a 第1接続電極
6b 第2接続電極
10 基板
11a 第1固定部
11b 第2固定部
12a 第1導電性接着剤
12b 第2導電性接着剤
20 圧電振動子