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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057500
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20210101AFI20220404BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20220404BHJP
   B23K 1/18 20060101ALI20220404BHJP
   B23K 1/20 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G02B7/00 F
B23K1/00 330Z
B23K1/18 B
B23K1/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165791
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 孝樹
【テーマコード(参考)】
2H043
【Fターム(参考)】
2H043AE02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】第1の部品と第2の部品とを接合材によって接合する接合体の製造方法において、接合材が位置ずれした状態で接合材を溶融した場合に発生する半田外観不良を抑制する。
【解決手段】第1の部品と第2の部品12とを接合材15によって接合する接合体の製造方法であって、第2の部品12の先端面に接合材15の少なくとも一部分を接合する第1接合工程と、第2の部品12の先端部に第1の部品を配置する工程と、接合材15を介して第1の部品と第2の部品12とを接合する第2接合工程とを備える接合体の製造方法とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部品と第2の部品とを接合材によって接合する接合体の製造方法であって、
前記第2の部品の先端面に前記接合材の少なくとも一部分を接合する第1接合工程と、
前記第2の部品の先端部に前記第1の部品を配置する工程と、
前記接合材を介して前記第1の部品と前記第2の部品とを接合する第2接合工程と、を備えることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項2】
前記接合材は円環状であることを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1接合工程において、
前記接合材の外周の一部分が前記先端面に接合されることを特徴とする請求項1または2に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の部品は円柱状であり、前記第2の部品は前記先端部に凹部を備えた筒状であり、前記第1の部品は前記第2の部品の凹部に収容されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
前記第1接合工程において、
前記凹部の環状先端面に前記接合材を接合し、
前記第2接合工程において、
前記接合材を溶融させて前記凹部の内面と前記第1の部品の外周面との間に充填することで前記第1の部品と前記第2の部品とを接合することを特徴とする請求項4に記載の接合体の製造方法。
【請求項6】
前記第1接合工程において、
前記接合材は複数箇所で接合されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異種材料の接合には接着剤やはんだなどの接合部材が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1の光学ユニットでは、筒状の枠に光学部材を収容してはんだ接合することにより、筒状の枠と光学部材とを接合している。
【0004】
即ち、この光学ユニットでは、筒状の枠と円柱状の光学部材とを用いており、筒状の枠の一端側には、他端側より内径が増大されている凹部が形成されている。光学部材を筒状の枠に接合する際には、筒状の枠に形成されたの凹部が上を向くように立置し、筒状の枠の凹部へと光学部材を収容する。この際、凹部の内面と光学部材の外周面との間に隙間が形成される。この隙間の上部開口を覆うように、半田材料によって形成されている円環状の接合材を筒状の枠の環状面に載置する。このとき、筒状の枠の凹部に収容されている光学部材の先端面は、筒状の枠の環状面より所定量突出しているため円環状の接合材の位置決めがなされている。(例えば、特許文献1の図3)。光学部材の先端面が筒状の枠の環状面と略同一面となっている場合は、光学部材の後端面で円環状の接合材の位置決めがなされている。(例えば、特許文献1の図12)。
【0005】
そして、治具によって光学部材に負荷を与えて筒状の枠の凹部の環状底面に光学部材を押圧し、この状態で光学部材、筒状の枠及び接合材を加熱炉内に投入する。加熱炉内で接合材が溶融され、溶融された半田材料の所定量の半田材料は隙間に充填され、残りの半田材料は筒状の枠の環状面に滞留する。この後、接合材を冷却固化することにより、光学部材と筒状の枠とが接合される。
【0006】
前述した治具は光学部材に負荷を与えるための治具であり、円環状の接合材の位置決めは光学部材によって行われているため治具で円環状の接合材の位置決めはしていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-288423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1には光学部材で円環状の接合材の位置決めができない場合の光学部材と筒状の枠との接合体の製造方法は記載されていなかった。円環状の接合材が位置決めされていない場合は加熱炉内へ投入するときの振動などによって円環状の接合材が位置ずれしてしまう。位置ずれした状態で円環状の接合材が溶融すると、溶融した半田材料が光学部品表面に付着して半田外観不良が発生する場合がある。
【0009】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、半田外観不具合を抑制する接合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の部品と第2の部品とを接合材によって接合する接合体の製造方法であって、第2の部品の先端面に接合材の少なくとも一部分を接合する第1接合工程と、第2の部品の先端部に第1の部品を配置する工程と、接合材を介して第1の部品と第2の部品とを接合する第2接合工程とを備える接合体の製造方法とする。接合材は円環状としてもよい。第1接合工程において、接合材の外周の一部分が先端面に接合してもよい。また、第1の部品は円柱状であり、第2の部品は先端部に凹部を備えた筒状であり、第1の部品は第2の部品の凹部に収容されてもよい。第1接合工程において凹部の環状先端面に接合材を接合し、第2接合工程において接合材を溶融させて凹部の内面と第1の部品の外周面との間に充填することで第1の部品と第2の部品とを接合してもよい。さらに、第1接合工程において、接合材は複数箇所で接合してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接合体の製造方法によれば、半田外観不具合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】接合体であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図2】第1の部品であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図3】第2の部品であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図4】接合材であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図5】第2の部品の環状先端面に接合材を接合したものであり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図6】第2の部品の凹部に第1の部品を収容したものであり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図7】第2の部品の環状先端面に接合材の外周の一部分を接合した平面図である。
図8】第2の部品の環状先端面に接合材の外周を3箇所接合した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。説明を分かりやすくするために説明の順番を次の通りとする。まず、接合体について説明し、次に、接合体を構成する部品(第1の部品、第2の部品、接合材)について説明し、最後に本発明の接合体の製造方法について説明する。なお、本発明の範囲は以下の実施の形態に限定されるものではなく本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また図面においては各構成をわかりやすくするために実際の形状や実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0014】
図1(a)は本発明の接合体の製造方法からなる接合体の平面図であり、図1(b)は図1(a)のA-Aの断面図である。本発明の接合体の製造方法から得られる接合体10は以下の通りである。第2の部品12の凹部13の環状先端面14に円環状の接合材15が接合され、この第2の部品12の凹部13に第1の部品11を収容後加熱炉内に投入する。(後述する図6参照)。円環状の接合材15は加熱炉内で溶融し、溶融した円環状の接合材15の所定量は、第2の部品12の凹部13の内面と第1の部品11の外周面との間に充填される。また、残りの溶融した円環状の接合材15は、第2の部品12の凹部13の環状先端面14の表面に滞留する。この後、溶融した円環状の接合材15を冷却固化することにより、円環状の接合材15は接合材16となり第1の部品11と第2の部品12とが接合され接合体10が得られる。
【0015】
前述した接合体10は以下の部品からなる。
【0016】
図2(a)は第1の部品の平面図であり、図2(b)は図2(a)のA-A断面図である。第1の部品11は、例えば、ガラスや水晶などからなる透光性部材である。図示しないが第1の部品11の外周面には円環状の接合材15の濡れ性向上のため金属膜が形成されている。金属膜は下地層にNi膜、表面層にAu膜など、円環状の接合材15との密着性も考慮し適宜選択すればよい。なお、第1の部品11は円柱状であり、外径は5mm、厚みは1mmである。
【0017】
図3(a)は第2の部品の平面図であり、図3(b)は図3(a)のA-A断面図である。第2の部品12は筒状であり、例えば、ステンレス製部材からなる。第2の部品12の一端側には凹部13が形成される。なお、凹部13の環状先端面14には後述する円環状の接合材15が接合される。(後述する図5参照)。図示しないが第2の部品12の凹部13の内面及び環状先端面14には円環状の接合材15との濡れ性向上のため金属膜が形成されている。金属膜は下地層にNi膜、表面層にAu膜など、円環状の接合材との密着性も考慮し適宜選択すればよい。第2の部品12の外径は6mm、第1の部品11を収容する凹部13の内径は5.2mm、長さは5mmである。なお、第2の部品12の一端側に形成される凹部13は、前述した第1の部品11を収容するためのものであり、形状は凹部に限定されず、例えば、段部にしてもよい。
【0018】
図4(a)は円環状の接合材の平面図であり、図4(b)は図4(a)のA-A断面図である。円環状の接合材15は、例えば、AuSnはんだからなる。なお、円環状の接合材15の内径は5.2mm、外径は6mm、厚みは0.2mmである。円環状の接合材15は、AuSnはんだに限定されずAgSnはんだを用いても構わない。
【0019】
前述した接合体10は以下の接合体の製造方法によって得られる。
【0020】
前述した第1の部品11、第2の部品12及び円環状の接合材15を用意する。
【0021】
図5(a)は第2の部品の環状先端面に接合材を接合した平面図であり、図5(b)は図5(a)のA-A断面図である。先ず、円環状の接合材15を第2の部品12の凹部13の環状先端面14に配置する。次に、円環状の接合材15の表面をレーザなどで、例えば、円環状の接合材15の内周と外周との間の一部分を溶融させて第2の部品12の凹部13の環状先端面14に接合し接合箇所17aを形成する。これが第1接合工程に相当する。このときのレーザのスポット径は0.2mmである。なお、円環状の接合材15を第2の部品12の凹部13の環状先端面14に接合するとき、第2の部品12の凹部13に円柱状の治具などを収容する。この円柱状の治具の先端面は、第2の部品12の凹部13の環状先端面14より所定量突出しているため円環状の接合材15の位置決めができるので第2の部品12の凹部13の環状先端面14に円環状の接合材15を精度よく接合できる。精度よく接合ができると円環状の接合材15を溶融したときの半田外観不良を抑制できる。接合材を接合する雰囲気は、例えば、大気雰囲気、窒素雰囲気下、真空雰囲気下である。
【0022】
図6(a)は第2の部品の凹部に第1の部品を収容した平面図であり、図6(b)は図6(a)のA-A断面図である。本実施例においては、第2の部品12の凹部13の筒内の段差部が第2の部品12の先端部に相当する。第2の部品12の凹部13の底面に第1の部品11が配置されることで、第2の部品12の凹部13の内面と第1の部品11の外周面との間に隙間が形成される。このとき、円環状の接合材15は第1の部品11により位置決めがなされていない。なお、前述したように第2の部品12の凹部13の環状先端面14には円環状の接合材15が接合されている。
【0023】
最後に、第2の部品12の凹部13に第1の部品11を収容した接合前品を加熱炉内に投入する。このとき、円環状の接合材15は第2の部品12の凹部13の環状先端面14に接合されているため、加熱炉内へ投入するときの振動が加わっても円環状の接合材15は位置ずれしない。加熱炉内で円環状の接合材15は接合箇所17aから溶融が始まり徐々に円環状の接合材15は溶融されていく。溶融された円環状の接合材15の所定量は、第2の部品12の凹部13の内面と第1の部品11の外周面との間に充填される。残りの溶融した円環状の接合材15は第2の部品12の凹部13の環状先端面14に滞留する。この後、溶融した円環状の接合材15を冷却固化することにより、円環状の接合材15は接合材16となり第1の部品11と第2の部品12とが接合され接合体10が得られる。(前述した図1参照)。これが第2接合工程に相当する。加熱炉内で円環状の接合材15は接合箇所17aから溶融が始まる理由は以下の通りである。接合箇所17aは、第2の部品12の凹部13の環状先端面14に円環状の接合材15を接合したときの余熱が残っているため接合されていない箇所よりも溶融しやすいためである。このように、円環状の接合材15は第2の部品12の凹部13の環状先端面14に接合されているため、加熱炉内へ投入するときの振動が加わっても円環状の接合材15は位置ずれしないので半田外観不良を抑制することができる。なお、加熱炉内の雰囲気は、例えば、大気雰囲気、窒素雰囲気下、真空雰囲気下である。
【0024】
図7は第2の部品の環状先端面に接合材の外周の一部分を接合した平面図である。円環状の接合材15の外周を、レーザなどで一部分を溶融させて第2の部品12の凹部13の環状先端面14の外周に接合し接合箇所17b及び17cを形成する。この第2の部品12の凹部13に第1の部品11を収容した接合前品を加熱炉内に投入すると円環状の接合材15は第2の部品12の凹部13の環状先端面14に接合された接合箇所17b及び17c、すなわち円環状の接合材15の外周から溶融が始まり円環状の接合材15の内周に向かって溶融していく。これにより、溶融した接合材は第2の部品12の凹部13の内面と第1の部品11の外周面との間に充填されやすくなる。
【0025】
図8は第2の部品の環状先端面に接合材の外周を3箇所接合した平面図である。円環状の接合材15の外周を3箇所レーザなどで溶融させて第2の部品12の凹部13の環状先端面14の外周に接合し接合箇所17d、17e及び17fを形成する。このとき、接合された3箇所を仮想線で結び平面視すると略正三角形となる。略正三角形となるように接合すると、接合箇所17d、17e及び17fをそれぞれ結ぶ仮想線の長さは等しいので、均衡がとれた箇所で接合されている。これにより、第2工程において、熱による円環状の接合材15の収縮による円環状の接合材15の外周部が捲れ上がる不具合を抑制できる。なお、円環状の接合材15の外周6箇所をレーザなどで溶融させて第2の部品12の凹部13の環状先端面14の外周に接合し接合箇所を6箇所形成する。接合された6箇所を仮想線で結び平面視すると略正六角形となり、接合された6箇所をそれぞれ結ぶ仮想線の長さは等しいので前述した効果が得られる。また、円環状の接合材15の外周9箇所をレーザなどで溶融させて第2の部品12の凹部13の環状先端面14の外周に接合し接合箇所を9箇所形成する。接合された9箇所を仮想線で結び平面視すると略正九角形となり、接合された9箇所をそれぞれ結ぶ仮想線の長さは等しいので前述した効果が得られる。
【0026】
円環状の接合材15の外周を第2の部品12の凹部13の環状先端面14の外周に接合した後に、第1の部品11を第2の部品12の凹部13に収容した例を示したが、第1の部品11を第2の部品12に収容した後に円環状の接合材15の外周を第2の部品12の凹部13の環状先端面14の外周に接合しても構わない。また、本実施例では第2の部品12の先端面の形状は環状先端面14のため、円環状の接合材15を用いた例を示したが、この例に限定されず、第2の部品12の先端面の形状に応じて接合材の形状を適宜選択すればよい。
【符号の説明】
【0027】
10 接合体
11 第1の部品
12 第2の部品
13 凹部
14 環状先端面
15 円環状の接合材(溶融した円環状の接合材)
16 接合材
17a、17b、17c、17d、17e、17f 接合箇所












図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8