(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057536
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220404BHJP
B41J 11/06 20060101ALI20220404BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J11/06
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 305
B41J2/01 303
B41J2/165 203
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165850
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】川北 彬広
(72)【発明者】
【氏名】吉本 久晃
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB06
2C056EB30
2C056EB31
2C056EC06
2C056EC28
2C056EC29
2C056EC30
2C056HA29
2C056HA38
2C056JA13
2C056JB04
2C056JC17
2C056JC18
2C056KD10
2C058AB04
2C058AC07
2C058AE02
2C058AE08
2C058AF31
2C058DA11
2C058DA20
(57)【要約】
【課題】筐体の内部のミストを回収する際に筐体の外部から筐体の内部に埃を吸引することを抑制し、且つ、従来の印刷装置よりもヘッド内の液体が乾燥することを抑制できる印刷装置を提供すること。
【解決手段】印刷装置1は、筐体、ヘッド30、ファン94、95、加湿器86、及びフィルタを備える。ヘッド30は、筐体の内部に配置され、液体を吐出する。ファン94、95は、筐体の内部に配置される。加湿器86は、ファン94の排気口946の側に配置された供給口75に加湿された空気を供給する。加湿器86は、ファン95の排気口956の側に配置された供給口76に加湿された空気を供給する。フィルタ480は、供給口75に対して、ファン94の側に配置される。フィルタ480は、供給口76に対して、ファン95の側に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に配置され、液体を吐出するヘッドと、
前記筐体の前記内部に配置されたファンと、
前記ファンの排気口の側に配置された供給口に加湿された空気を供給する加湿器と、
前記供給口に対して、前記ファンの側に配置されたフィルタと
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ファンは、前記ヘッドに対して前記液体の吐出方向に配置されることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記フィルタは、前記ヘッドから前記ファンの吸入口に向かう経路に配置されることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
媒体が配置されるプラテンを、副走査方向側の前記筐体に設けられたプラテン開口を通って、前記筐体の内部位置と前記筐体の外部との間を搬送する搬送機構と、
前記内部位置において前記副走査方向に交差する方向に対向して配置される一対の内壁と
を更に備え、
前記ファンは前記一対の内壁の何れかに設けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記一対の内壁の各々に設けられた一対の前記ファンと、
前記一対のファンの各々に対応して設けられた一対の前記フィルタと
を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
主走査方向に前記ヘッドを移動する移動機構を更に備え、
前記ファンの前記排気口は、前記ヘッドの移動範囲内に配置された前記ヘッドに対して前記吐出方向にあることを特徴とする請求項2~5の何れかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記移動範囲の一端側に配置された前記ヘッドと対向する位置に設けられ、前記ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス機構を更に備え、
前記ファンの前記排気口は前記移動範囲の前記一端側に配置された前記ヘッドと対向する位置、且つ、前記メンテナンス機構に対して前記吐出方向に配置されることを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記筐体の前記内部に設けられ、前記筐体の前記内部の湿度及び温度の少なくとも何れかを検出するセンサと、
前記センサの検出結果に基づき、前記筐体の前記内部の前記湿度及び前記温度の少なくとも何れかが吐出基準を満たさない場合に、前記加湿器により前記加湿された空気を前記供給口から前記筐体の前記内部へ供給し、前記吐出基準を満たす場合に、前記加湿器により前記加湿された空気を前記供給口から前記筐体の前記内部へ供給することを停止する供給調整部と
を更に備えることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット式の印刷装置は、ヘッド、筐体、ファン、及びフィルタを備える(例えば、特許文献1参照)。ヘッドは、筐体に収容される。ファンは、筐体の背面に設けられ、ヘッドから液体を吐出する際に発生するミストを筐体の内部の空気と共に筐体の外部に排出する。フィルタは、ファンの背面に取り付けられ、筐体の外部に排出されたミストを回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の印刷装置では、ファンが筐体の内部の空気を筐体外部に排出するのに伴い、筐体の内部は負圧になり、筐体の前面に設けられた開口から筐体の外部の空気が筐体の内部に取り込まれる。この時、筐体の外部の空気と共に埃が筐体の内部に吸引される可能性がある。また、筐体の外部の空気は、ヘッド近傍に送られるため、ヘッド内の液体が乾燥しやすくなる。
【0005】
本発明は、筐体の内部のミストを回収する際に筐体の外部から筐体の内部に埃を吸引することを抑制し、且つ、従来の印刷装置よりもヘッド内の液体が乾燥することを抑制できる印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る印刷装置は、筐体と、前記筐体の内部に配置され、液体を吐出するヘッドと、前記筐体の前記内部に配置されたファンと、前記ファンの排気口の側に配置された供給口に加湿された空気を供給する加湿器と、前記供給口に対して、前記ファンの側に配置されたフィルタとを備える。供給口に対して、ファンの側にフィルタが配置される。これにより、ファンの排気口から送られる空気に加湿器から供給される空気が合流し、ヘッドに送られる。従って、ヘッドが加湿環境に配置されるので、ヘッド内の液体が乾燥することが抑制され、ヘッドからの液体の吐出不良が起こる可能性を低減できる。また、ファンは筐体の内部に配置される。これにより加湿器とファンとが駆動された時、ファンの排気口から送られた空気により、筐体の内部から外部への空気の流れが生じやすくなる。従って、筐体の外部から埃等が筐体の内部に吸引される可能性を低減できる。更に、供給口に対して、ファンの側にフィルタが配置される。これにより、ヘッドから吐出された液体のミストがフィルタで回収されるので、ミストが供給口から供給される加湿空気に混じりにくくなる。従って、供給口に対して、ファンの側にフィルタを備えない装置よりもヘッドがミストで汚れる可能性を低減できる。
【0007】
前記ファンは、前記ヘッドに対して前記液体の吐出方向に配置されてもよい。ヘッドから液体を吐出する際に発生するミストはヘッドに対して吐出方向に集まりやすい。従って、ファンがヘッドに対して液体の吐出方向とは反対側に設けられる場合に比べ、ミストを含む筐体の内部の空気がファンにより効率的にフィルタに送られる。
【0008】
前記フィルタは、前記ヘッドから前記ファンの吸入口に向かう経路に配置されてもよい。これにより、フィルタは、ヘッドからファンの吸入口に向かう経路で、ヘッドによる空気中のミストを回収するので、フィルタが供給口とファンの排気口との間に設けられる場合に比べ、ミストがファンに付着しにくい。
【0009】
前記印刷装置は、媒体が配置されるプラテンを、副走査方向側の前記筐体に設けられたプラテン開口を通って、前記筐体の内部位置と前記筐体の外部との間を搬送する搬送機構と、前記内部位置において前記副走査方向に交差する方向に対向して配置される一対の内壁とを更に備え、前記ファンは前記一対の内壁の何れかに設けられてもよい。一対の内壁の何れかにファンが設けられるので、ミストは、ヘッドからファンに向かいやすくなる。従って、プラテンに配置された媒体にミストが付着する可能性を低減できる。
【0010】
前記印刷装置は、前記一対の内壁の各々に設けられた一対の前記ファンと、前記一対のファンの各々に対応して設けられた一対の前記フィルタとを更に備えてもよい。一対のファンは一対の内壁の各々に設けられるので、筐体の内部に、ファンの排気口からヘッドの向かう空気の流れと、ヘッドからファンの吸入口に向かう流れとが生じる。このため、大きなプラテン開口から埃が筐体の内部に吸引されず、埃がヘッドに到達する可能性を低減できる。
【0011】
前記印刷装置は、主走査方向に前記ヘッドを移動する移動機構を更に備え、前記ファンの前記排気口は、前記主走査方向における前記ヘッドの移動範囲内に配置された前記ヘッドに対して前記吐出方向にあってもよい。ファンの排気口は、ヘッドの移動範囲内に配置されたヘッドに対して吐出方向にあるので、ファンは、ヘッドの近くに配置される。従って、ミストを含む筐体の内部の空気を効率的にフィルタに送ることができる。ファンは、移動範囲内にあるヘッドに、加湿された空気を効率的に送ることができる。
【0012】
前記印刷装置は、前記移動範囲の一端側に配置された前記ヘッドと対向する位置に設けられ、前記ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス機構を更に備え、前記ファンの前記排気口は前記移動範囲の前記一端側に配置された前記ヘッドと対向する位置、且つ、前記メンテナンス機構に対して前記吐出方向に配置されてもよい。この場合、ファンは、主走査方向においてメンテナンス機構が設けられた一端側に設けられ、排気口はメンテナンス機構に対して吐出方向に配置される。このため、メンテナンス機構によりヘッドがメンテナンスされている間に、ヘッドに加湿された空気を送ることができる。従って、メンテナンス中にヘッド内の液体が乾燥することを抑制できる。更に、メンテナンス機構に加湿された空気が送られることで、メンテナンス機構の周囲の雰囲気が乾燥することを抑制できる。
【0013】
前記印刷装置は、前記筐体の前記内部に設けられ、前記筐体の前記内部の湿度及び温度の少なくとも何れかを検出するセンサと、前記センサの検出結果に基づき、前記筐体の前記内部の前記湿度及び前記温度の少なくとも何れかが吐出基準を満たさない場合に、前記加湿器により前記加湿された空気を前記供給口から前記筐体の前記内部へ供給し、前記吐出基準を満たす場合に、前記加湿器により前記加湿された空気を前記供給口から前記筐体の前記内部へ供給することを停止する供給調整部とを更に備えてもよい。センサの検出結果に応じて、加湿器により加湿された空気を供給口から筐体の内部に供給するか、供給を停止するかが調整される。このため、吐出基準を満たす場合に、加湿された空気の供給を停止することにより、加湿器の駆動の効率化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】ミスト回収機構73の収容部49の開閉を示す正面図である。
【
図5】ミスト回収機構73の収容部49の開閉を示す平面図である。
【
図7】第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5の図示を省略した、印刷装置1の仕切り板28、29を示す断面図である。
【
図8】印刷装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図9】ファン94、95、862、863が駆動された場合の印刷装置1の内部の空気の流れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る印刷装置1を説明する。
図1の上方、下方、左下方、右上方、右下方、及び左上方が各々、印刷装置1の上方、下方、前方、後方、右方、及び左方である。
図1の上下方向は鉛直方向である。以下の説明では、左右方向を主走査方向、前後方向を副走査方向と記載することもある。本実施形態において図面中の機械的要素は、実際のスケールを示す。
【0016】
図1に示す印刷装置1はインクジェットプリンタであり、布帛、紙等の印刷媒体にインクを吐出して印刷を行う。印刷装置1は、白インク、及びカラーインク(黒、イエロー、シアン、及びマゼンタの四色のインク)を用いて、印刷媒体にカラー画像を印刷できる。
【0017】
図1、
図2を参照し、印刷装置1の外観構成を説明する。
図1に示すように、印刷装置1は筐体8、搬送機構14、操作ボタン15、表示画面16、及び収納部17を備える。筐体8は、直方体状であり、本体10と蓋11とを備える。本体10には正面視矩形状のプラテン開口13が副走査方向側の筐体8、即ち、筐体8の前面の左右方向の中心に形成される。本実施形態の副走査方向は前後方向である。プラテン開口13から後方の位置に後述する内部位置Pがある。蓋11は本体10の上側に設けられ、蓋11の後端を軸として回転することで、本体10の上面を覆う位置と本体10の上面を開放する位置とに開閉できる。以下では、筐体8の上面、右面、底面、及び左面によって囲まれる空間を、筐体8の内部という。
【0018】
操作ボタン15と表示画面16とは、筐体8の前面のうちプラテン開口13の右側に、設けられる。操作ボタン15は、作業者による操作に応じて各種情報を印刷装置1に入力する。表示画面16は各種情報を表示する。従って、作業者は印刷装置1の前側で印刷装置1を操作する。
【0019】
搬送機構14は、印刷媒体が配置されるプラテン12を、プラテン開口13を通って、筐体8の内部位置Pと筐体8の外部との間を搬送する。プラテン12が
図2に示す筐体8の内部位置Pに配置され、後述するヘッド30から液体が吐出されて印刷が行われる。
図2に示すように、搬送機構14は、プラテン支持部37(
図3参照)、左右一対のレール38、伝達部材39、及び副走査モータ26(
図8参照)を備える。プラテン支持部37は、プラテン12を下方から支持する。プラテン12は板状である。左右一対のレール38は前後方向に延び、プラテン支持部37を前後方向に移動可能に支持する。一対のレール38の前端は、筐体8の前面よりも前方にある。伝達部材39は、プラテン支持部37と、副走査モータ26とに連結し、副走査モータ26の駆動に応じて、左右一対のレール38で規定される搬送経路に沿ってプラテン支持部37を前後方向に移動させる。プラテン12が筐体8の前面よりも前側に配置された状態、即ち筐体8の外部で、作業者は、プラテン12の上面に印刷媒体を配置する。
図2に示すように、収納部17は筐体8の右側に設けられる。収納部17には複数のカートリッジ18が前側から収納される。各カートリッジ18内には印刷に使用されるインク等の各種液体が入っている。
【0020】
図2~
図7を参照し、印刷装置1の内部構造を説明する。
図2に示すように、印刷装置1は、
図1に示す筐体8の内部に枠体2、内壁71、72(
図3参照)、仕切り板28、29(
図3参照)、キャリッジ6、ヘッド31~36、基板ボックス9、移動機構77、第一メンテナンス機構4、第二メンテナンス機構5、ミスト回収機構73、74(
図3参照)、加湿器86(
図3参照)、及びセンサ91~93(
図3参照)を備える。
【0021】
図3に示すように、枠体2はシャフト57、58を含む前後方向に延びる複数のシャフト、左右方向に延びる複数のシャフト、シャフト55、56を含む上下方向に延びる複数のシャフトで格子状に構成される。枠体2の上端にはガイドシャフト20が固定される。
図2に示すように、ガイドシャフト20は前シャフト21、後シャフト22、左シャフト23、及び右シャフト24で構成される。
【0022】
前シャフト21は枠体2の前端部に配置され、枠体2の左端部から右端部まで左右方向に延びる。後シャフト22は枠体2の前後方向の略中央に配置され、枠体2の左端部から右端部まで左右方向に延びる。左シャフト23は枠体2の左端部に配置され、前シャフト21の左端から後シャフト22の左端までの前後方向に延びる。右シャフト24は枠体2の右端部に配置され、前シャフト21の右端から後シャフト22の右端まで前後方向に延びる。前シャフト21及び後シャフト22はキャリッジ6を支持する。搬送機構14は枠体2に固定される。
【0023】
図3に示すように、内壁71、72は、筐体8の内部位置Pにおいて副走査方向に交差する主走査方向に対向して配置される。内壁71、72は、ガイドシャフト20よりも下方において前後方向に延び、枠体2に固定される。内壁71は、内部位置Pに配置されたプラテン12の左方に設けられ、シャフト57に固定される。内壁72は、内部位置Pに配置されたプラテン12の右方に設けられ、シャフト58に固定される。前後方向において、内壁71、72は、前シャフト21と後シャフト22との間に位置する。
【0024】
仕切り板28は、ガイドシャフト20の下方、且つ、内壁71の左方において、枠体2に固定され、前後左右方向に延びる。仕切り板28の右端部は内壁71の下端部と連結する。仕切り板29は、ガイドシャフト20の下方、且つ、内壁72の右方において、枠体2に固定され、前後左右方向に延びる。仕切り板29の左端部は内壁72の下端部と連結する。
図7に示すように、仕切り板28の右前部には仕切り板28を上下方向に貫通する平面視円状の供給口75が形成される。仕切り板29の左前部には仕切り板29を上下方向に貫通する平面視円状の供給口76が形成される。供給口75と供給口76との位置関係は、特に制限されないが、本実施形態においては、前後方向において、供給口75は、供給口76よりも前方に形成される。
【0025】
図2に示すように、キャリッジ6は主走査方向に移動可能に前シャフト21と後シャフト22とに支持される。キャリッジ6には装着部61~66が設けられる。装着部61~66に各々、ヘッド31~36が装着される。装着部61、62、63はキャリッジ6の右部に配置され、装着部61、62、63の順で後側から前側に向かって一列に並ぶ。装着部64、65、66は装着部61、62、63の列の左側に配置され、装着部64、65、66の順で後側から前側に向かって一列に並ぶ。
【0026】
ヘッド31~36は各々、筐体8の内部に配置され、液体を吐出する。白インク及びカラーインクは各々、ヘッド31~36の何れかから吐出されればよい。本実施形態では、ヘッド31、34には各々、白インクのカートリッジ18から白インクが供給される。ヘッド32、35には各々、抜染剤のカートリッジ18から抜染剤が供給される。抜染剤は印刷媒体の色を抜くための液体である。ヘッド33、36には各々、カラーインクのカートリッジ18からカラーインクが供給される。ヘッド31~36は各々、ヘッド31~36が後述の印刷位置B2にある時に、下方に液体を吐出する。以下では、ヘッド31~36を総称する場合、又は何れかを特定しない場合には、ヘッド30という。
【0027】
移動機構77は、ヘッド30を装着したキャリッジ6を主走査方向に移動させる。移動機構77は、駆動ベルト98、及び主走査モータ99を備える。キャリッジ6の後端部には駆動ベルト98が連結する。駆動ベルト98は後シャフト22上に設けられ、左右方向に延びる。駆動ベルト98の左端部は主走査モータ99に連結する。主走査モータ99が駆動することで、駆動ベルト98は、キャリッジ6を前シャフト21及び後シャフト22に沿って左右方向に移動させる。
【0028】
図2、
図3では、ヘッド30の移動範囲Rを、キャリッジ6の左右方向の中心で示す。
図3に示すように、ヘッド30は、移動機構77により、主に、メンテナンス位置B1、印刷位置B2、及びヘッド待機位置B3の三種類の位置の何れかに配置される。メンテナンス位置B1は、ヘッド30の移動範囲Rの左端部にあり、ヘッド30が後述の第一メンテナンス機構4又は第二メンテナンス機構5によりメンテナンスされる位置である。印刷装置1は、非印刷時にヘッド30をメンテナンス位置B1に移動し、第一メンテナンス機構4又は第二メンテナンス機構5によるメンテナンスを行う。第二メンテナンス機構5は第一メンテナンス機構4の右側に位置する印刷位置B2は、主走査方向において、メンテナンス位置B1とヘッド待機位置B3との間、且つ内部位置Pに配置されたプラテン12の上方の位置である。印刷位置B2にヘッド30が配置された状態で、印刷データに従ってヘッド30が液体を吐出し、プラテン12に載置された印刷媒体に印刷が行われる。ヘッド待機位置B3は、ヘッド30の移動範囲Rの右端にあり、作業者がヘッド30に対する清掃等の操作を行う場合に配置される位置である。印刷装置1は、例えば、非印刷時に操作ボタン15に基づく指示に基づき、ヘッド30をヘッド待機位置B3に移動させ、待機させる。
【0029】
第一メンテナンス機構4は、メンテナンス位置B1に配置されたヘッド30と対向する位置に設けられ、ヘッド30のメンテナンスを行う。第一メンテナンス機構4は、筐体8内の内壁71の左方、且つガイドシャフト20の下方において、仕切り板28上に設けられる。
図2に示すように、第一メンテナンス機構4は、六つのキャップ41~46とキャップ支持部47とを備える。各キャップ41~46の内部には、保湿液を含んだスポンジが配置されている。キャップ41~46の各々の位置関係は、装着部61~66の各々の位置関係と同じである。キャップ41~46は各々、平面視矩形状であり、キャップ支持部47によって下方から支持される。キャップ支持部47はキャップ41~46を上下方向に移動できる。印刷装置1は、非印刷時に、ヘッド30がメンテナンス位置B1に位置する状態でキャップ支持部47を上方に移動させる。これにより、キャップ41~46はヘッド31~36の各ノズル面を下方から覆ってキャッピングする。この結果、ヘッド30のノズル面に設けられたノズル内のインク、抜染剤が乾燥することを抑制できる。
【0030】
第二メンテナンス機構5は、メンテナンス位置B1に配置されたヘッド30と対向する位置に設けられ、ヘッド30のメンテナンスを行う。
図3に示すように、第二メンテナンス機構5は、筐体8内の内壁71の左方、且つガイドシャフト20の下方において、仕切り板28上に設けられる。第二メンテナンス機構5は、主走査方向において、第一メンテナンス機構4と内壁71との間に位置する。第二メンテナンス機構5は、ヘッド30のノズル面の払拭及びフラッシング動作の実行により、ヘッド30を洗浄するための機構である。
【0031】
図2に示すように、第二メンテナンス機構5は、洗浄機構501~503を備える。洗浄機構501~503は各々キャップ41~43の右側に位置する。洗浄機構501~503の構造は共通である。洗浄機構501は、ワイパー601、604、及びパンチングメタル591を備える。洗浄機構502は、ワイパー602、605、及びパンチングメタル592を備える。洗浄機構503は、ワイパー603、及びワイパー606を備える。各洗浄機構501~503は更に、洗浄液槽620及びフラッシングボックス630を備える。
図2の洗浄機構503を拡大した図では、パンチングメタル593の図示を省略している。
【0032】
ワイパー601~606は各々、ヘッド31~36のノズル面を払拭する。ワイパー601~606は各々、フォームワイパー611、及びゴムワイパー612を備える。フォームワイパー611は、図示しない上下反転機構等により上下反転し、洗浄液槽620内部に侵入可能に構成されている。従って、フォームワイパー611は、洗浄液により湿っている。フラッシングボックス630は、パンチングメタル591~593の各々の下方に設けられ、フラッシング動作によりヘッド30から吐出され、パンチングメタル591~593を通過した液体を受ける。
【0033】
図3に示すように、ミスト回収機構73、74は、ヘッド30から液体を吐出する際に発生するミストを回収する。主走査方向において、ミスト回収機構73は、筐体8(
図1参照)の内部において搬送機構14の左側に設けられ、ミスト回収機構74は、筐体8の内部において搬送機構14の右側に設けられる。ミスト回収機構73、74は互いに左右対称の構成を有するので、以下では、ミスト回収機構73の構成を説明し、ミスト回収機構74の説明を省略する。
【0034】
図4~
図6に示すように、ミスト回収機構73は、内壁71、三つのファン94(
図6参照)、及びフィルタユニット48を備える。内壁71は、中空の箱状である。内壁71の右面79は、上下前後方向に延びる板状である。内壁71の上面には、前後方向に長いスリット状の吸入口713が形成される。
【0035】
図4、
図5に示すように、内壁71は、固定板70、及び収容部49を備える。固定板70は、内壁71の上端において左右方向に延びる板状の部分である。
図3に示すように、固定板70は前後方向に延びるシャフト57に固定される。
図4、
図5に示すように、収容部49は、箱状であり、前後方向に長い直方体状のフィルタユニット48を取外し可能に内壁71の内部に収容する。フィルタユニット48は、フィルタ480と、支持体481とを備える。収容部49は、内壁71の右面後端部と収容部49の本体491の右面後端部とに連結された蝶番492により、矢印Q(
図5(B)参照)で示す方向に内壁71の右面79に対し開閉可能に設けられる。係合部493は、収容部49の右前部に設けられ、作業者の操作なしで開閉しないように内壁71の右面79の前端部に設けられた被係合部712と係合する。
【0036】
図6に示す三つのファン94は、筐体8(
図1参照)の内部に配置される。三つのファン94は、ヘッド30に対して液体の吐出方向(即ち、下方)に配置される。例えば、ファン94は、前シャフト21、及び後シャフト22よりも下方に配置されればよい。三つのファン94は各々、内壁71の左面78の下部に設けられる。三つのファン94は各々前後方向に略等間隔で配置され、以下の構成を有する。
図3に示すように、ファン94の吸入口945は、ファン94の右方にあり、ファン94の排気口946は、ファン94の左方にある。即ち、吸入口945は、ファン94に対し、内部位置Pに配置されたプラテン12側にあり、排気口946は、ファン94に対し、筐体8の左面側、且つ、第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5側にある。従ってファン94の排気口946は筐体8の内部にある。主走査方向において、ファン94は、内壁71と、供給口75との間に配置される。ファン94の吸入口945は、内壁71の左面78の下部に連結する。
【0037】
フィルタ480は、供給口75に対して、ファン94の側に配置される。例えば、フィルタ480は、ファン94の排気口946から供給口75に向かう筐体8内の経路に位置しても良いが、より望ましくは、フィルタ480は、ヘッド30からファン94の吸入口945に向かう筐体8内の経路に配置されるのがよい。フィルタ480は空気中のミストを吸着して回収する。フィルタ480は、例えば、複数の微小な孔が形成された樹脂製フィルタであり、フィルタ480の表面にミストが吸着する。フィルタ480は、前後方向に延びる直方体状である。一般に、小さな孔のみのフィルタは、ミスト回収性能が高い分、大きな孔を有するフィルタに比べ孔にミストが詰まりやすく、比較的短時間で回収性能が低下する。これに対し、フィルタ480は、ファン94の駆動によって吸入口713から内壁71の内部に取り込まれた空気の流れの下流側程、フィルタ480の微小な孔の平均的な大きさが、小さくなるのが望ましい。これにより、フィルタ480によるミストの回収率を高めつつ、フィルタ480の回収性能が低下する時間を長期化している。支持体481は、枠体であり、フィルタ480を支持する。
【0038】
吸入口713は、ファン94の吸入口945よりもミストの発生源、即ち、印刷位置B2にあるヘッド30の近くにある。
図4に示すように、ミスト回収機構73において、各ファン94が駆動された場合、内壁71の吸入口713から内壁71内に吸い込まれた空気は、フィルタユニット48を通過するので、フィルタ480は、空気中のミストを吸着し、回収する。フィルタ480を通過し、ミストが回収された空気は、ファン94の吸入口945から排気口946を介して、内壁71の内部の空間から排出される。即ち、ファン94が駆動された場合、内壁71の右面79と左面78とに囲まれた空間を矢印K2で示すように空気が流れる。
【0039】
ミスト回収機構73において、フィルタ480の交換作業を行う場合、プラテン12が筐体8の外部に配置された状態で、作業者は、係合部493を操作する。これにより、被係合部712(
図5(B)参照)との係合は解除され、収容部49は蝶番492を中心に回動する。作業者は使用済みのフィルタ480を取り外し、未使用のフィルタ480を本体491に嵌め込んだ後、係合部493を操作する。これにより、収容部49は蝶番492を中心に回動し、
図4(A)及び
図5(A)に示すように、係合部493は、被係合部712と係合し、本体491が内壁71に対し閉じられる。
【0040】
図3に示すように、ミスト回収機構74は、ミスト回収機構73の内壁71、三つのファン94、及びフィルタユニット48に各々対応する内壁72、三つのファン95(
図3では一つのみ図示)、及びフィルタユニット48を備える。ミスト回収機構74の上面には、吸入口713に対応する、前後方向に長いスリット状の吸入口723(
図7参照)が形成される。各ファン95が駆動された場合、内壁72の内部の空間を矢印K12(
図9参照)で示すように空気が流れる。詳細には、各ファン95が駆動された場合、吸入口723から吸入された空気は、フィルタユニット48のフィルタ480を通過後、ファン95の吸入口955の側から、ファン95の排気口956の側に送られる。
【0041】
図3に示す加湿器86は、ファン94の排気口946の側(ファン94の左側)に配置された供給口75に加湿された空気を供給する。加湿器86は、ファン95の排気口956の側(ファン95の右側)に配置された供給口76に加湿された空気を供給する。配置される位置は特に限られないが、加湿器86は、筐体8の内部、且つ、仕切り板29の下方に設けられる。加湿器86は、貯留部860(
図8参照)、加湿駆動部861(
図8参照)、吸入口89、チューブ87、88、及びファン862、863(
図8参照)を備える。貯留部860は、加湿に用いられる液体(例えば、水)を貯留する。貯留部860には、給水管が接続されてもよく、例えば水道、及び図示しない給水タンク等の外部装置から貯留部860に水が供給されてもよい。
【0042】
吸入口89は、筐体8の右側面に取り付けられ、筐体8の外部から加湿器86内に空気を取り込む。加湿駆動部861は、吸入口89を介し筐体8の外部から加湿器86内に取り込まれた空気を、貯留部860に貯留された液体を使用して加湿する。加湿駆動部861は、蒸気式、気化式、超音波式、及び電気分解式等の任意の方式で空気を加湿してよい。加湿器86は、吸入口89と、貯留部860(
図8参照)との間等の加湿前の空気の流路に、空気中の埃等を除去するフィルタを備えてもよい。チューブ87の一端は、加湿器86に接続され、他端は供給口75に接続される。供給口75は、移動範囲Rの左端側に配置されたヘッド30の下方にある。チューブ88の一端は、加湿器86に接続され、他端は供給口76に接続される。供給口76は、移動範囲Rの右端側に配置されたヘッド30の下方にある。
【0043】
図8に示すファン862は、加湿駆動部861により加湿された空気を、
図3に示すチューブ87を介して供給口75に供給する。供給口75に供給された加湿空気は、筐体8の内部の内の内壁71よりも左方、且つ、仕切り板28よりも上方の空間(左側空間)を通って、ヘッド30に向けて送られる。
図8に示すファン863は、加湿駆動部861により加湿された空気を、
図3に示すチューブ88を介して供給口76に供給する。供給口76から供給された加湿空気は、筐体8の内部の内の内壁72よりも右方、且つ、仕切り板29よりも上方の空間(右側空間)を通って、筐体8の内部のヘッド30に向けて送られる。印刷装置1は仕切り板28、29、により印刷装置1の内部空間を上下に仕切っているため、加湿器86により供給口75,76に供給された加湿空気は、ヘッド30に向かいやすくなる。
【0044】
図3に示すように、センサ91~93は筐体8の内部に設けられ、筐体8の内部の湿度及び温度の少なくとも何れかを検出すればよいが、本実施形態のセンサ91~93は各々、筐体8の内部の温度及び湿度の何れも検出する。センサ91、92は各々供給口75、76に対応して設けられる。例えば、
図2、
図3に示すように、センサ91は、前シャフト21の左方、且つ、供給口75の上方付近に配置され、センサ92は、前シャフト21の右方、且つ、供給口76の上方付近に配置される。
図3に示すように、センサ93は、仕切り板29の下方、且つ、加湿器86の左方に配置され、加湿器86の周囲の雰囲気、即ち、加湿器86により加湿されていない非加湿雰囲気の温度及び湿度を検出する。
【0045】
上記構成によれば、印刷装置1は、副走査モータ26の駆動によってプラテン12を前後方向(副走査方向)に移動させ、主走査モータ99の駆動によってキャリッジ6を左右方向(主走査方向)に移動させることで、印刷媒体をヘッド30に対して前後方向及び左右方向に搬送する。印刷装置1は、印刷媒体をヘッド30に対して前後方向及び左右方向に搬送しながらヘッド30から各種液体を吐出する。詳細には、印刷装置1は、まず、ヘッド32、35から抜染剤を吐出して印刷媒体から色を抜く。又は、印刷装置1は、まず、ヘッド31、34から白インクを吐出して印刷媒体に下地を形成する。印刷装置1は、印刷媒体の色が抜かれた部分又は形成された下地の上に、ヘッド33、36からカラーインクを吐出してカラー画像を印刷する。なお、印刷装置1は、白インクも抜染剤も吐出してもよい。
【0046】
図8を参照し、印刷装置1の電気的構成を説明する。
図8に示すように、印刷装置1の制御部80はCPU81、ROM82、及びRAM83を備える。CPU81はROM82及びRAM83と電気的に接続し、印刷装置1の制御を司る。ROM82は、CPU81が印刷装置1の動作を制御するための制御プログラム、各種プログラムの実行時にCPU81が必要な情報等を記憶する。RAM83は、制御プログラムで用いられる各種データ、印刷媒体に印刷を行うための印刷データ等を一時的に記憶する。なお、これら電気素子の一部は、ヘッド30の右側に設けられた基板ボックス9に設けられる。
【0047】
CPU81には主走査モータ99、副走査モータ26、ヘッド駆動部27、第一メンテナンス駆動部84、第二メンテナンス駆動部85、加湿器86、センサ91~93、ファン94、95、及び操作ボタン15が電気的に接続される。主走査モータ99は、駆動することによってキャリッジ6を主走査方向に移動させる。副走査モータ26は、駆動することによってプラテン12を副走査方向に移動させる。これにより、ヘッド30(
図2参照)は、プラテン12に対して主走査方向及び副走査方向に相対移動する。ヘッド駆動部27は圧力素子等で構成され、駆動することによって、ヘッド31、34から白インクを吐出させ、ヘッド32、35から抜染剤を吐出させ、又はヘッド33、36からカラーインクを吐出させる。
【0048】
第一メンテナンス駆動部84は、キャップ支持部47(
図2参照)を上下方向に移動できる。第二メンテナンス駆動部85は、ワイパー601~606(
図2参照)の位置を接触位置と、非接触位置とに変更できる。センサ91~93は各々、筐体8の内部の温度及び湿度を検出し、検出結果をCPU81に出力する。CPU81はセンサ91~93からの検出結果に基づいて、検出結果が所定の吐出基準を満たすか否かを特定できる。操作ボタン15は、作業者によって操作され、操作に応じた信号をCPU81に出力する。作業者は操作ボタン15を操作することで、例えば印刷を開始するための印刷指示を印刷装置1に入力できる。
【0049】
図9を参照し、印刷装置1のCPU81がファン94、95、及び加湿器86を駆動した場合の筐体8(
図1参照)の内部の空気の流れについて説明する。CPU81がファン94、95、及び加湿器86を駆動した場合、筐体8の内部の内の内壁71の左方において、矢印K1で示す、加湿器86から供給口75に向かう加湿空気と、矢印K2で示す、ファン94の排気口946(
図3参照)から排出された空気とが合流する。排気口946から排出された空気と合流した加湿空気は、筐体8の左面と内壁71との間の左側空間を、矢印K3に示すように左上方に移動する。
【0050】
加湿空気は、ガイドシャフト20の上方において、矢印K4で示すように、筐体8の上面に沿って右方に移動する。加湿空気の一部は吸入口713(
図3参照)から内壁71の内部に吸い込まれ、残りはプラテン開口13(
図1参照)から筐体8の外部に排出される。即ち、供給口75から供給された加湿空気は、ファン94の排気口946(
図3参照)から排出される空気と合流し、矢印K3、K4で示すように移動することで、
図2に示すヘッド31~36のノズル面を加湿し、ヘッド30に設けられたノズル内部の液体の乾燥を防ぐことができる。また、第一メンテナンス機構4のキャップ41~46の内部に配置された保湿液を含んだスポンジ、及び第二メンテナンス機構5の洗浄液により湿ったフォームワイパー611の乾燥も防ぐことができる。
【0051】
同様に、筐体8の内部の内の内壁72の右方の右側空間において、矢印K1~K3の各々に対応する矢印K11~K13で示される空気の流れが生る。加湿空気はガイドシャフト20の上方において、矢印K14で示すように、筐体8の上面に沿って左方に移動する。加湿空気の一部は吸入口723(
図7参照)から吸い込まれ、残りはプラテン開口13から筐体8の外部に排出される。供給口76から供給された加湿空気は、ファン95の排気口956(
図3参照)から排出される空気と合流し、矢印K13、K14で示すように移動することで、ヘッド30の移動範囲Rの右端付近の雰囲気、及びヘッド31~36のノズル面を加湿する。
【0052】
図3、
図9、
図10を参照し、加湿処理を説明する。本実施形態のCPU81は、センサ91の出力結果に基づきファン862の駆動を制御し、センサ92の出力結果に基づきファン863を制御する。これにより、CPU81は、加湿器86からの加湿空気の供給を調整し、センサ91によって検出されるセンサ91の周囲の湿度と、センサ92によって検出されるセンサ92の周囲の湿度とを個別に制御する。以下では、センサ91の出力結果に基づき、ファン862の駆動を制御することで、センサ91の周囲の湿度を制御する場合の処理を説明する。印刷装置1の電源が投入され、プログラムで設定された開始時間になると、CPU81は、ROM82から制御プログラムを読み出して動作することで、加湿処理を実行する。本実施形態の印刷装置1は、作業者が設定した稼働時間の間、常に加湿処理を実行する。常に加湿処理を実行することにより、加湿を開始してから筐体8の内部の湿度が上がるまで印刷開始を待たなくてよい。加湿処理が実行されている期間中、別途実行される処理により、ファン94、95が駆動される。
【0053】
CPU81は、センサ91の検出結果を取得する(S1)。CPU81は、S1で取得された検出結果が吐出基準を満たすかを判断する(S2)。吐出基準は、センサ91により取得される湿度及び温度の少なくとも何れかに関する基準を含めばよく、あらかじめ設定される吐出基準は、ヘッド30が安定して液体を吐出可能な湿度及び温度の少なくとも何れかに関する基準である。例えば、温度ごとに湿度に関する吐出基準が定められても良い。湿度は、測定雰囲気の温度の飽和水蒸気量に対する水蒸気量との比で表される。このため、例えば、吐出基準は、センサ91により取得された温度及び湿度に基づき算出される水蒸気量が、閾値よりも大きい条件を満たすことであってもよい。CPU81は、センサ91の検出結果に加え、センサ93の検出結果に基づき、吐出基準を満たすか否かを判断してもよい。
【0054】
CPU81は、S1で取得された検出結果が吐出基準を満たさないと判断した場合(S2:NO)、ファン862の駆動を開始又は継続し、加湿器86により加湿された空気を供給口75から筐体8の内部へ供給する(S3)。加湿器86により加湿された空気が供給口75から筐体8の内部の左側空間に供給されることで、主に、筐体8の内部の左側空間、及びヘッド30の移動範囲Rの左半分の湿度が上昇する。
【0055】
CPU81は、S1で取得された検出結果が吐出基準を満たすと判断した場合(S2:YES)、ファン862の駆動を停止することで、加湿器86により加湿された空気を供給口75から筐体8の内部へ供給することを停止する(S4)。この時、ファン94の駆動は継続されるので、ファン94の排気口946から排出された空気は、左側空間を左上方に移動し、前シャフト21の上方において、右方に移動する。CPU81は、現在時刻が終了時刻に達したか否かを判断する(S5)。終了時刻に達していない場合(S5:NO)、CPU81は処理をS1に戻す。終了時刻に達した場合(S5:YES)、CPU81は以上で加湿処理を終了する。センサ92の出力結果に基づき、ファン863の駆動を制御することで、センサ92の周囲の湿度を制御する加湿処理は、上記のセンサ91の周囲の湿度を制御する加湿処理と同様に実行される。これによりCPU81は、センサ91、92の値に応じて供給口75、76からの加湿空気の供給と、供給停止とを個別に調整できる。
【0056】
上記実施形態において、印刷装置1、筐体8、加湿器86、フィルタ480、プラテン12は各々、本発明の印刷装置、筐体、加湿器、フィルタ、プラテンの一例である。ファン94、95は各々、本発明のファンの一例である。吸入口945、955は各々、本発明の吸入口の一例である。排気口946、956は各々、本発明の排気口の一例である。供給口75、76は各々、本発明の供給口の一例である。ヘッド31~36は各々、本発明のヘッドの一例である。プラテン開口13、搬送機構14、及び移動機構77は各々、本発明のプラテン開口、搬送機構、及び移動機構の一例である。内壁71、72は、本発明の一対の内壁の一例である。センサ91、92は各々、本発明のセンサの一例である。第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5は各々、メンテナンス機構の一例である。S1~S4の処理を実行するCPU81は、本発明の供給調整部の一例である。
【0057】
図3に示すように、上記実施形態の印刷装置1は、筐体8(
図1参照)、ヘッド30、ファン94、95、加湿器86、及びフィルタ480を備える。ヘッド30は、筐体8の内部に配置され、液体を吐出する。ファン94、95は、筐体8の内部に配置される。加湿器86は、ファン94の排気口946の側(左方)に配置された供給口75に加湿された空気を供給する。すなわち、供給口75はヘッド30からファン94の吸入口945に向かう空気の経路の途中にはなく、ファン94の排気口946からヘッド30に向かう空気の経路の途中に配置されていればよい。加湿器86は、ファン95の排気口956の側(右方)に配置された供給口76に加湿された空気を供給する。同様に、供給口76はヘッド30からファン95の吸入口955に向かう空気の経路の途中にはなく、ファン95の排気口956からヘッド30に向かう空気の経路の途中に配置されていればよい。
【0058】
ミスト回収機構73のフィルタ480は、供給口75に対して、ファン94の側に配置される。すなわち、ミスト回収機構73のフィルタ480は、ファン94の排気口946からヘッド30に向かう空気の経路において、排気口946と供給口75との間に配置される、または、ヘッド30からファン94の吸入口945に向かう空気の経路に配置されればよい。ミスト回収機構74のフィルタ480は、供給口76に対して、ファン95の側に配置される。すなわち、ミスト回収機構74のフィルタ480は、ファン95の排気口956からヘッド30に向かう空気の経路において、排気口956と供給口76との間に配置される、または、ヘッド30からファン95の吸入口955に向かう空気の経路に配置されればよい。これにより、ファン94の排気口946から送られる空気及びファン95の排気口956から送られる空気に加湿器86から供給される空気が合流し、ヘッド30に送られる。従って、ヘッド30が加湿環境に配置されるので、ヘッド30内の液体が乾燥することが抑制され、ヘッド30からの液体の吐出不良が起こる可能性を低減できる。
【0059】
また、ファン94、95は筐体8の内部に配置される。これにより加湿器86とファン94、95とが駆動された時、ファン94の排気口946と、ファン95の排気口956とから送られた空気により筐体8の内部は正圧になり、筐体8の内部から外部への空気の流れが生じやすくなる。従って、筐体8の外部から埃等が筐体8の内部に吸引される可能性を低減できる。更に、供給口75に対して、ファン94の側にミスト回収機構73のフィルタ480が配置され、供給口76に対して、ファン95の側にミスト回収機構74のフィルタ480が配置される。これにより、ヘッド30から吐出された液体のミストがフィルタ480で回収されるので、ミストが供給口75、76から供給される加湿空気に混じりにくくなる。従って、供給口75に対して、ファン94の側にフィルタ480を備えず、供給口75に対して、ファン95の側にフィルタ480を備えない装置よりもヘッド30がミストで汚れる可能性を低減できる。
【0060】
ファン94、95は、ヘッド30に対して液体の吐出方向に配置される。ヘッド30から液体を吐出する際に発生するミストは、ヘッド30に対して吐出方向に集まりやすい。従って、ファン94、95がヘッド30に対して液体の吐出方向とは反対側に設けられる場合に比べ、ミストを含む筐体8の内部の空気がファン94、95により効率的にフィルタ480に送られる。
【0061】
印刷装置1の各フィルタ480は、ヘッド30からファン94の吸入口945に向かう経路と、ヘッド30からファン95の吸入口955に向かう経路に配置される。一方のフィルタ480は、ヘッド30からファン94の吸入口945に向かう経路で、ヘッド30による空気中のミストを回収し、他方のフィルタ480は、ヘッド30からファン95の吸入口955に向かう経路で、ヘッド30による空気中のミストを回収する。これにより、一方のフィルタ480が供給口75とファン94の排気口946との間、及び他方のフィルタ480が供給口76とファン95の排気口956との間に設けられる場合に比べ、ミストがファン94、95に付着しにくい。
【0062】
印刷装置1は、搬送機構14、及び内壁71、72を備える。搬送機構14は、印刷媒体が配置されるプラテン12を、副走査方向側の筐体8に設けられたプラテン開口13(
図1参照)を通って、筐体8の内部位置と筐体8の外部との間を搬送する。内壁71、72は、筐体8の内部位置において副走査方向に交差する方向に対向して配置される。ファン94は内壁71に設けられる。ファン95は内壁72に設けられる。これにより、ミストは、ヘッド30からプラテン12には向かわず、ヘッド30からファン94に向かいやすくなる。従って、プラテン12に配置された印刷媒体にミストが付着する可能性を低減できる。
【0063】
印刷装置1は、内壁71、72の各々に設けられたファン94、95と、ファン94、95の各々に対応して設けられたフィルタ480とを備える。ファン94は内壁71に設けられ、ファン95は内壁72に設けられる。これにより、筐体8の内部位置Pに配置されたプラテン12の主走査方向の一方側(左側)において、ファン94の排気口946からヘッド30に向かう空気の流れと、ヘッド30からファン94の吸入口945に向かう流れとが生じる。筐体8の内部位置Pに配置されたプラテン12の主走査方向の他方側(右側)において、ファン95の排気口956からヘッド30に向かう空気の流れと、ヘッド30からファン95の吸入口955に向かう流れとが生じる。このため、主走査方向の長さがプラテン12よりも大きいプラテン開口13から埃が筐体8の内部に吸引されず、埃がヘッド30に到達する可能性を低減できる。
【0064】
図2に示すように、印刷装置1は、主走査方向にヘッド30を移動する移動機構77を備える。
図3に示すように、ファン94の排気口946及びファン95の排気口956は各々、主走査方向におけるヘッド30の移動範囲R内に配置されたヘッド30に対して吐出方向にある。従って、ファン94、95をヘッド30の近くに配置でき、ミストを含む筐体8の内部の空気を効率的にフィルタ480に送ることができる。また、ファン94、95は、移動範囲R内にあるヘッド30に、加湿された空気を効率的に送ることができる。
【0065】
ミストはヘッド30が移動した場合に、ヘッド30と共に移動しやすい。ファン94の排気口946は、主走査方向におけるヘッド30の移動範囲R内の一端部(左端部)に配置されたヘッド30に対して吐出方向にある。ファン95の排気口956は、主走査方向におけるヘッド30の移動範囲R内の他端部(右端部)に配置されたヘッド30に対して吐出方向にある。これにより、ファン94、95は各々、ヘッド30と共に移動したミストを効率的にフィルタ480に送ることができる。
【0066】
印刷装置1は、ヘッド30の移動範囲Rの左端側に配置されたヘッド30と対向する位置に設けられ、ヘッド30のメンテナンスを行う第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5を備える。ファン94の排気口946は、ヘッド30の移動範囲Rの左端側に配置されたヘッド30と対向する位置、且つ、第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5に対して吐出方向に配置される。ファン94は、主走査方向において第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5が設けられた左端側に設けられ、排気口946は第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5に対して吐出方向に配置される。第一メンテナンス機構4又は第二メンテナンス機構5によりヘッド30がメンテナンスされている間に、ヘッド30に加湿された空気を送ることができるので、メンテナンス中にヘッド30内の液体が乾燥することを抑制できる。更に、第一メンテナンス機構4に加湿された空気を送ることで、第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5の周囲の雰囲気を加湿でき、フォームワイパー611等の湿気を帯びる部材が乾燥することを抑制できる。
【0067】
印刷装置1は、筐体8の内部に設けられ、筐体8の内部の湿度及び温度の少なくとも何れかを検出するセンサ91、92と、CPU81とを備える。CPU81はセンサ91の検出結果に基づき、加湿器86からの加湿空気の供給を調整する。即ち、CPU81はセンサ91の検出結果に基づき、筐体8の内部の湿度及び温度の少なくとも何れかが吐出基準を満たさないと判断した場合に(S2:NO)、加湿器86により加湿された空気を供給口75から筐体8の内部へ供給する(S3)。CPU81は、検出結果が吐出基準を満たすと判断した場合に(S2:YES)、加湿器86により加湿された空気を供給口75から筐体8の内部へ供給することを停止する(S4)。同様に、CPU81はセンサ92の検出結果に基づき、加湿器86からの加湿空気の供給を調整する。即ち、CPU81はセンサ92の検出結果に基づき、筐体8の内部の湿度及び温度の少なくとも何れかが吐出基準を満たさないと判断した場合に(S2:NO)、加湿器86により加湿された空気を供給口76から筐体8の内部へ供給する(S3)。CPU81は、検出結果が吐出基準を満たすと判断した場合に(S2:YES)、加湿器86により加湿された空気を供給口76から筐体8の内部へ供給することを停止する(S4)。このため、CPU81は、吐出基準を満たす場合に、加湿された空気の供給を停止することにより、加湿器86の駆動の効率化ができる。
【0068】
供給口75が形成された仕切り板28と、メンテナンス位置B1に配置されたヘッド30との間には第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5がある。一方、供給口76が形成された仕切り板29と、ヘッド待機位置B3に配置されたヘッド30との間には第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5は配置されない。このため、供給口75、76から、同じように加湿空気が供給された場合、左側空間と、右側空間とで、湿度が互いに異なる場合がある。CPU81は、センサ91、92の値に応じて供給口75、76からの加湿空気の供給を個別に切り替えることで、左側空間と、右側空間とで湿度が互いに異なることを抑制できる。
【0069】
本発明は上記実施形態から種々変更できる。以下説明する各種変形例は、各々組み合わせ可能である。印刷装置1のヘッド30の数、配置、及び構成等は適宜変更されてよい。印刷装置1は、移動機構77を備えず、プラテン12の主走査方向の長さ以上の長さを有するラインヘッドを備えてもよい。ヘッド30から吐出される液体の種類は適宜変更されてよい。印刷装置1の主走査方向、副走査方向、及び吐出方向は各々、印刷装置1の構成に応じて印刷装置1の任意の方向が適宜変更されてよい。加湿器86は筐体8の外部に設けられてもよいし、筐体8の内部の任意の位置に設けられてもよい。加湿器86は、供給口75、76の数に応じた数設けられてもよい。即ち、印刷装置1は例えば、供給口75に加湿空気を供給する第一の加湿器86と、供給口76に加湿空気を供給する第二の加湿器86とを備えてもよい。
【0070】
ファン94、95、供給口75、76、及びフィルタ480の形状、数及び配置は各々、適宜変更されてよい。内壁71、72の少なくとも何れかは、省略されてもよいし、構成及び配置が適宜変更されてもよい。例えば、印刷装置1は筐体8の内部に一以上のファンを備えればよく、ファン94、95の何れかは省略されてもよい。ファン94は前後方向に三つ並んでいたが、ファン94は四つ以上でもよいし、二以下でもよい。ファン94の数と、ファン95の数とは互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。内壁71、72の一方のみにファンが設けられてもよい。ファン94、95の少なくとも何れかは、内壁71、72以外(例えば、左側空間、右側空間)に設けられてもよい。ファン94と、ヘッド30との間に、供給口75が設けられてもよい。
【0071】
第一メンテナンス機構4及び第二メンテナンス機構5の構成、及び配置の少なくとも何れかが変更されてもよい。例えば、第一メンテナンス機構4は、移動範囲Rの左端部に配置されたヘッド30の下方に配置され、第二メンテナンス機構5は、移動範囲Rの右端部に配置されたヘッド30の下方に配置されてもよい。
【0072】
センサ91~93の少なくとも何れかは省略されてもよいし、センサ91~93の種類、個数、及び配置の少なくとも何れかは適宜変更されてよい。センサ91、92の数は、供給口75、76の数と互いに異なっていてもよい。センサ91、92は各々、供給口75、76に対しヘッド30側に設けられなくてもよい。
【0073】
CPU81が行うプログラムはケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、不揮発性の記憶装置に記憶してもよい。他の装置は例えば、PC、ネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
【0074】
印刷装置1が行う加湿処理の一部又は全部はCPU81とは別の電子機器(例えば、ASIC)が行ってもよい。印刷装置1が行う処理は複数の電子機器(例えば、複数のCPU)が分散処理してもよい。印刷装置1が行う処理の各ステップは必要に応じて順序の変更、ステップの省略、追加ができる。本発明の範囲は印刷装置1上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)等が、CPU81の指令で各処理の一部又は全部を行う態様も含む。
【0075】
CPU81は、センサ91~93の検出結果によらず、常時供給口75、76から加湿空気を供給してもよいし、加湿空気の供給と供給停止とを所定のタイミングで交互に切り替えてもよい。
図10の加湿処理を実行するタイミングは、印刷装置1の使用条件等を考慮し、任意のタイミングに変更されてよい。CPU81はセンサ91~93の少なくとも何れかの検出結果に基づき、供給口75から加湿空気を供給するか否かと、供給口76から加湿空気を供給するか否かとの双方を制御してもよい。CPU81は、センサ91~93の検出結果の少なくとも何れかが、吐出基準を満たすか否かに応じて、ファン862、863の駆動量を制御して、供給口75、76から供給される加湿空気の供給量を制御してもよいし、加湿駆動部861の駆動量を制御して、供給口75、76から供給される加湿空気の温度及び湿度の少なくとも何れかを制御してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 印刷装置
4 第一メンテナンス機構
5 第二メンテナンス機構
8 筐体
12 プラテン
13 プラテン開口
14 搬送機構
30~36 ヘッド
71、72 内壁
75、76 供給口
86 加湿器
91~93 センサ
94、95、862、863 ファン
480 フィルタ
712、723、945、955 吸入口
946、956 排気口