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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057563
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20220404BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20220404BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20220404BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61F13/535 100
A61F13/47 100
A61F13/534 100
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165885
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
(72)【発明者】
【氏名】前田 智恵子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200CA13
3B200DB15
3B200DB19
3B200DE01
(57)【要約】
【課題】介助者も装着者自身でも適正な位置に装着し易い吸収性物品の提供。
【解決手段】トップシート10と吸収体20とバックシート30とを備え、長さが760mm以上880mm以下、吸収体20長さが520mm以上680mm以下、中央領域に配置され身体側に接触し吸収体20を有する吸収部70と、吸収部70の長さ方向両側に対に設けられ、長さ方向両端部が装着者の衣類から外方に延出する延出部60a、60bと、延出部60a、60bの衣類側表面に係合する係合手段61a、61bと、有し、係合手段61a、61bの剥離強度が0.4N/cm以上1.1N/cm以下、吸収体20は、非肌面起毛の拡散性シート15と、肌面起毛の親水性不織布11にSAP12を担持し、包装シート13で包んだ吸収性シート14とを有し、吸収性シート14は、SAP12担持量に基づく高密度領域21と低密度領域22とを有する吸収性物品50。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
長さ方向寸法が760mm以上880mm以下であり、
前記吸収体の長さ方向寸法が520mm以上680mm以下であり、
幅方向中央を長さ方向に延びる中央領域を含む領域に配置され、身体側に接触し、前記吸収体を有する吸収部と、
前記吸収性物品を装着したときに、長さ方向両端部が装着者の衣類から外方に延出して折り返される、前記吸収体を含まない延出部と、
前記延出部を折り返したときに、前記延出部の前記衣類側の表面に係合する係合手段と、を有し、
前記係合手段は、かなきん3号(JIS L 0803準拠試験用添付白布 綿)への剥離強度が0.4N/cm以上1.1N/cm以下であり、
前記吸収体は、
非肌面が起毛した親水性不織布のトランスファーシートと、
肌面が起毛した親水性不織布に高吸収性ポリマーが担持され、親水性シートで包まれた吸収性シートと、を有し、
前記吸収性シートは、
幅方向中央を長さ方向に延び、前記高吸収性ポリマーの担持量が高い高密度領域と、
前記高密度領域の長さ方向前後に配置され、前記高吸収性ポリマーの担持量が前記高密度領域よりも低い低密度領域と、を有し、
前記高密度領域の前記高吸収性ポリマー担持量が160g/m以上390g/m以下であり、
前記低密度領域の前記高吸収性ポリマー担持量が30g/m以上120g/m以下である、吸収性物品。
【請求項2】
前記高密度領域の長さ方向寸法は、前記吸収体の長さ方向寸法の40%以上60%以下であり、長さ方向において、一端の前記低密度領域の寸法と、他端の前記低密度領域の寸法とが同寸である、請求項1に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に吸収性物品には、テープ止めタイプ、パンツタイプ、尿取りパッド等の紙おむつがあり、これらの紙おむつは装着対象者の排泄における介護の必要度に応じて適宜選択されて使用される。吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を含んでいる。吸収性物品において、尿等の体液は、トップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないように構成されている。
【0003】
ここで、尿取りパッドの使用には、これを単独で装着者の下着に添わせて用いる場合や、テープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつをアウターとし、尿取りパッドをインナーとして使用する場合等がある。いずれの場合においても、体液の漏れを有効に防止し、尿取りパッドの吸収性能を十分に発揮させるためには、装着者の股間部へのフィット性を高め、装着者の性別を問わず、装着者の尿道口に尿取りパッドの吸収面を密着させる必要がある。尿取りパッドについては、フィット性を高めて多量の体液を吸収し、かつ体液の漏れを防止することを目的として、種々の提案がなされている。
【0004】
特許文献1には、紙おむつのインナーパッドであって、該パッドの股部が浮くことを防ぎ、人体に対するフィット性の低下を防止するとともに、尿等の体液漏れを防止するために、紙おむつ本体の一対の立体ギャザーの股部の表面に紙おむつ本体側立体ギャザーの内面に着脱自在に止着される第一の固定手段を備え、バックシートの腹側部及び背側部の表面に紙おむつ本体の内面に着脱自在に止着される第二の固定手段をそれぞれ備えた吸収性物品が開示されている。
【0005】
特許文献2には、紙おむつ本体への取り付け作業や位置調節を容易に行うため、及び取り付けた着衣の動きに追従しすぎることなく、フィット性の低下を防ぐとともに尿等の体液の漏れを防ぐために、尿取りパッド(使い捨て補助パッド)の前側部と後側部における幅方向の両縁部に固定手段を備え、尿取りパッドの長さ方向股部及び幅方向中央部に固定手段が存在しない領域を備えた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-240561号公報
【特許文献2】特開2012-249691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
失禁症状を有する高齢者の中でも排泄障害の程度が低く失禁尿量の少ない人は、介護用紙おむつでなく従来の下着に尿取りパッド(軽失禁パッド)を利用するユーザーが多い。しかしながら、尿取りパッドは吸収目安量の大小に連動して製品長が異なる製品が主流であり、要介助の高齢者の中には介助者が尿取りパッドを装着すると、該尿取りパッドの吸収量が十分症状に適合した製品でも吸収部分から排泄位置(的)を外してしまう事例が後を絶たず、課題となっている。また、尿取りパッドを利用する高齢者の中には、日中車イスに長時間着座して過ごす人も多い。このような高齢者にとっては、車イスに着座した状態での尿取りバッドの装着し易さを向上させることが課題の一つになっている。
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載の尿取りパッドは、いずれも装着時、装着中において介助者や装着者自身が、適宜装着位置等を調整することで、適正な位置に装着することを考慮したものではない。また、特許文献1及び特許文献2に記載の尿取りパッドは、装着者の身体との密着性、フィット性を高めようとするものであるが、装着位置を調整するための構成を備えていない。
【0009】
本発明の目的は、介助者、装着者が適正な位置に装着しやすく、装着している状態を認識しやすく、吸収量を軽度な尿漏れ症状に適正化した吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含まず、高吸収性ポリマーの担持(目付)量に応じて2つの領域を有し、所定構造である高吸収性シートを用いるとともに、長さ方向の両端部が装着者の衣類から外方に延出され、かつ衣類に所定強度で固定できるように構成することで、所望の吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の吸収性物品に係る。
【0011】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
長さ方向寸法が760mm以上880mm以下であり、
前記吸収体の長さ方向寸法が520mm以上680mm以下であり、
幅方向中央を長さ方向に延びる中央領域を含む領域に配置され、身体側に接触し、前記吸収体を有する吸収部と、
前記吸収性物品を装着したときに、長さ方向両端部が装着者の衣類から外方に延出して折り返される、前記吸収体を含まない延出部と、
前記延出部を折り返したときに、前記延出部の前記衣類側の表面に係合する係合手段と、を有し、
前記係合手段は、かなきん3号(JIS L 0803準拠試験用添付白布 綿)への剥離強度が0.4N/cm以上1.1N/cm以下であり、
前記吸収体は、
非肌面が起毛した親水性不織布のトランスファーシートと、
肌面が起毛した親水性不織布に高吸収性ポリマーが担持され、親水性シートで包まれた吸収性シートと、を有し、
前記吸収性シートは、
幅方向中央を長さ方向に延び、前記高吸収性ポリマーの担持量が高い高密度領域と、
前記高密度領域の長さ方向の前後に配置され、前記高吸収性ポリマーの担持量が前記高密度領域よりも低い低密度領域と、を有し、
前記高密度領域の前記高吸収性ポリマー担持量が160g/m以上390g/m以下であり、
前記低密度領域の前記高吸収性ポリマー担持量が30g/m以上120g/m以下である、吸収性物品。
(2)前記高密度領域の長さ方向寸法は、前記吸収体の長さ方向寸法の40%以上60%以下であり、長さ方向において、一端の前記低密度領域の寸法と、他端の前記低密度領域の寸法とが同寸である、上記(1)の吸収性物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、介助者も利用者自身でも適正な位置に装着しやすく、装着している状態を認識しやすく、吸収量を軽度な尿漏れ症状に適正化した吸収性物品を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る吸収性物品の構成を示す模式平面図である。(a)は表面を示し、(b)は裏面を示す。
図2図1に示す吸収性物品の模式断面図である。(a)は図1(a)に示すY-Y切断線における長さ方向断面図であり、(b)は図1(a)に示すX-X切断線における幅方向断面図である。
図3図1に示す吸収性物品中、吸収体の長さ方向の寸法関係を示す模式断面図である。
図4】第1実施形態の吸収性物品を装着者が装着した状態を示す模式断面図である。
図5】第1実施形態の吸収性物品の延出部の機能を示す模式斜視図である。(a)は延出部をパンツタイプ紙おむつの内部から取り出した状態を示し、(b)は延出部をパンツタイプ紙おむつの外表面に固定した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、吸収性物品の装着とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長さ方向(又は長手方向)とは吸収性物品を身体に装着したときに装着者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、幅方向とは長さ方向に対して直交する方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する方向である。肌面とは、吸収性物品を装着したときに、装着者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌面とは、装着者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0015】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、第1実施形態に係る吸収性物品50について説明する。図1乃至図3は、吸収性物品50を示す。図4は、吸収体20を示す。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0016】
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用及び成人用の種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁パッド、尿吸収パッド等のパッド製品、パンツ型、テープ止め型等の紙おむつ等が挙げられる。これらの中でも、吸収体20を幅広に構成したワイドパッド製品として好適に使用できる。また、アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしてのパッド製品形態の吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長さ方向の寸法(以下単に「長さ」ともいう)は760mm以上880mm以下の範囲であり、幅方向の寸法(以下単に「幅」ともいう)は特に限定されないが、例えば、50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の長さを前記範囲とすることにより、後述する長さ方向両端部の延出部60a、60bを有効に形成できる。
【0017】
吸収性物品50は、図1に示すように、幅方向中央を長さ方向に延びる中央領域を含む領域に配置され、身体側に接触し、吸収体20を有する吸収部70と、長さ方向では両端部が吸収部70の両側に設けられて対になり、吸収性物品50を装着したときに、長さ方向両端部が装着者の衣類から外方に延出して折り返される、吸収体20を含まない延出部60a、60bと、延出部60a、60bの長さ方向両端部を折り返したときに、該両端部の衣類に面する表面に設けられ、衣類の外表面に係合して該両端部を衣類に固定する係合手段61a、61bと、を含む。なお、吸収性物品50は、長さ方向において、装着者の腹部に主に当接する前側部と、前側部に連設され、装着者の股間部に主に当接する股部と、股部に連設され、装着者の臀部及び背部に主に当接する後側部と、に区分され、前側部及び後側部がそれぞれ延出部60a、60bに相当し、股部が吸収部70に相当する。
【0018】
延出部60a、60bは、図2(a)等に示すように、例えば、トップシート10及びバックシート30の各長さを、前述の吸収性物品50の長さである760mm以上880mm以下の範囲に設定することにより形成される。延出部60a、60bには、トップシート10及びバッグシート30以外にも、補助不織布等を設けてその引張強度を高めてもよい。補助不織布としては、パンツタイプ紙おむつやテープタイプ紙おむつの外装不織布及び内装不織布として使用される各種不織布を使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。また、係合手段61a、61bとしては、かなきん3号(JIS L 0803準拠試験用添付白布 綿)への剥離強度が0.4N/cm以上1.1N/cm以下のものであれば特に限定されず、例えば、メカニカルフックテープ、ズレ止め用ホットメルト等が挙げられる。前述の剥離強度が0.4N/cm未満では、係合手段60a、60bのいずれか一方又は両方のアウター表面からの外れが発生し、吸収性物品50の装着者股間部に対する密着性が低下し、横モレ等が生じる傾向がある。前述の剥離強度が1.1N/cmを超えると、吸収性物品50の装着感、着け心地が低下する傾向と共に、アウター表面に損傷が生じる傾向がある。
【0019】
また、吸収性物品50は、図2(b)に示すように、肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向配置され、非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置された吸収体20と、トップシート10の肌側面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体20は、長さが520mm以上680mm以下であり、非肌面が起毛した親水性不織布のトランスファーシート15と、肌面が起毛した親水性不織布としての基体不織布11に高吸収性ポリマー12が担持され、包装シート13で包まれた、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含まない吸収性シート14を有し、吸収性シート14は高吸収性ポリマー12の担持量が相対的に高い高密度領域21と、高吸収性ポリマー12の担持量が相対的に低い低密度領域22とを有する。
【0020】
本実施形態によれば、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含有しない吸収性シート14を有する吸収体20は、フラッフパルプ等の吸収性繊維と高吸収性ポリマー12とから構成された従来のフラッフパルプ吸収体に比べて、長さの自由度が高く、高吸収ポリマー12の適正な担持量の配置により、吸収部70と、装着性に機能の比重を分割した領域を有する延出部60a、60bを設けることで、装着感と吸収性を確保でき、コスト面でも優れた吸収性物品50が得られる。すなわち、長さ方向中央部の高吸収ポリマー高密度領域21が体液の吸収を担い、前後の低密度領域21が高吸収ポリマー12由来の剛さを抑え、屈曲性を高め、肌当たりの固さを軽減することで、装着感を高めたものである。例えば座位をとった際に、後部の臀部付近に位置する低密度領域22により座面の固さを緩衝し、仰臥位の場合は長さがあることで段差にならず低密度領域22の適度なクッション性で違和感を軽減したものである。衣類側に向けて毛羽立ちを有するトランスファーシート(以下「拡散性シート」ともいう)15と、吸収性シートの主に低密度領域22が体液を受け止め有効に全体に拡散させる働きをする。また、係合部61a、61bの衣類表面又はパンツタイプ、テープタイプの紙おむつの外表面からの剥離強度を規定された範囲とすることで、特徴的な長さと構成とを有する吸収性物品50がずれにくいながらも位置調整による繰り返しの脱着操作を軽快に行うことができ、さらに身体機能が低下したが失禁症状は軽微なモニターへの使用テストでも、延出部60a、60bの両端部をつまんで移動させれば、位置調整が簡便になり、自身で延出部60a、60bの両端部の状態から装着位置が認識しやすいことで、モレを抑制しうるという結果が得られる。吸収体20の高密度領域21と低密度領域22とで構成される高吸収ポリマー領域の配置を前後対称とすることで、吸収性物品50の前後を気にすることなく装着し機能させることができる。
【0021】
図4及び図5は、パンツタイプ紙おむつ80をアウターとし、吸収性物品50をインナー用の尿取りパッドとして装着した状態を示している。吸収性物品50は、吸収部70が装着者の股間部に主に当接し、長さ方向において吸収部70の両側には延出部60a、60bが設けられ、パンツタイプ紙おむつ80の外側に比較的大きな長さで延出され、係合部材61a、61bにより、装着者の腹側及び腰側に固定される。係合手段61a、61bを外した状態で、延出部60a、60bを前後に引っ張れば、大きな力で引っ張らなくても吸収性物品50の移動は容易である。また、高齢者等の身体が硬い人でも、身体の前後に位置する延出部60a、60bを容易に把持し得ることから、高齢者自身でもパンツタイプ紙おむつ80を脱ぐことなく、延出部60a、60bのいずれかを引っ張るだけで吸収性物品50の位置を容易に調整できる。
【0022】
以下、シート状又は板状の各構成部材について、トップシート10、吸収体20、バックシート30及び立体ギャザー40の順でさらに詳しく説明する。これらの構成部材は、シート状及び板状以外の立体形状を有していてもよい。
【0023】
<トップシート>
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体20を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート10及び/又はバックシート30の長さ方向両端を延長し、吸収性物品50の所定長さに調整することにより、延出部60a、60bが形成される。また、トップシート10及びバックシート30の長さ方向両端に長さ方向に延びる補助不織布を接合することで、延出部60a、60bを形成してもよい。トップシート10は、装着者の肌に当接する場合あることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の1種又は2種以上を含む、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。
【0024】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、公知の方法に従ってエンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10には、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有させてもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m以上40g/m以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20へと誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0025】
<吸収体>
吸収体20は、例えば、トップシート10を経由して拡散性シート15を透過してきた体液を吸収、及び保持する。本実施形態の吸収体20は、前述したように、長さb(図3)が520mm以上680mm以下であり、非肌面が起毛面15aである親水性不織布としての拡散性シート15と、肌面が起毛面11aである親水性不織布(以下「基体不織布」ともいう)11に高吸収性ポリマー12が担持され、これを親水性シート(以下「包装シート」ともいう)13で包んだ、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含まない吸収性シート14と、を有し、吸収性シート14は高吸収性ポリマー12の担持量が相対的に高い高密度領域21と、高吸収性ポリマー12の担持量が相対的に低い低密度領域22と、を有している。なお、吸収体20は、長さ方向の一端から他端にかけて、装着者の下腹部に主に当接する腹側部と、腹側部に連設され、装着者の股間部に主に当接する股部と、股部に連設され、装着者の尻部に主に当接する尻側部と、に区分される。
【0026】
(拡散性シート)
拡散性シート15は、トップシート10と吸収性シート14との間に配置され、親水性不織布から構成され、吸収性シート14を臨む非肌面が起毛面15aであり、トップシート10を臨む肌面が非起毛面15bである。起毛面15aは複数の起毛繊維15xが立設された面であり、拡散性シート15の表面に毛羽立ち加工等の起毛加工を施すことにより、形成される。このような複数の起毛繊維15xからなる層は、クッション性、屈曲性、フィット性、体液拡散性等に優れ、吸収性物品50の装着感や体液吸収性が向上する。拡散性シート15の片側表面15aを起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチ等を用いる方法が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃を用いる方法が好ましい。
【0027】
(吸収性シート)
図2(b)に示すように、吸収性シート14は、基体不織布11と、基体不織布11の起毛面11aに設けられた体液吸収層16と、包装シート13とから構成される。
【0028】
(基体不織布)
基体不織布11は親水性不織布から構成され、図2に示すように、拡散性シート15の非肌面に対向する肌面が起毛面11aになり、非肌面が非起毛面11bになる。起毛面11aには複数の起毛繊維11xが立設され、複数の起毛繊維11x間には高吸収性ポリマー12が固着担持され、体液吸収層16を形成する。起毛面11aに立設された複数の起毛繊維11xは、基体不織布11の表面に毛羽立ち加工等の起毛加工を施すことにより、形成される。基体不織布11の複数の起毛繊維11xにより、不織布本来の嵩高さに加えて、吸収性シート14に適度な厚みとやわらかさが付与され、良好なクッション性が発生し、着用時のフィット感が向上する。また、基体不織布11を起毛させると、起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させることができる。基体不織布11の片側表面11aを起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチ等を用いる方法が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃を用いる方法が好ましい。
【0029】
基体不織布11及び拡散性シート15における起毛の程度は特に限定されず、目視で起毛を確認できればよいが、例えば、起毛の程度としての起毛率が5%以上90%以下の範囲、又は8%以上80%以下の範囲である。起毛率とは、起毛加工による基体不織布11の厚さの増加率を意味する。起毛前の基体不織布11の厚さをT1、起毛後の基体不織布11の厚さをT2としたとき、起毛率(%)=[(T2―T1)/T1]×100である。厚さT1、T2は、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下で測定される。また、基体不織布11の非起毛面11bや拡散性シート15の非起毛面15bでも、繊維を起毛させてもよい。
【0030】
包装シート13は親水性シートから構成され、基体不織布11及び体液吸収層16の全体を包む。より具体的には、包装シート13の表面の幅方向中央部付近に、基体不織布11の非起毛面11bを載置し、これらをホットメルト接着剤等で接着した後、包装シート13の幅方向両端部をC折りし、体液吸収層16の上方(体液吸収層16と拡散性シート15との間)で厚み方向に重ね合わせる。これらの両端部をホットメルト接着剤等で固定してもよい。
【0031】
(高密度領域及び低密度領域)
本実施形態の吸収体20では、図1等に示すように、体液吸収層16は面方向に、高密度領域21と低密度領域22という2つの領域に区分される。これら2つの領域を設けることで、装着者自身による吸収性物品50の装着のし易さ、装着感、着け心地、装着した状態での吸収性物品50の位置の把握し易さ、モレの防止等を高水準で満たし、利便性の高い吸収性物品50が得られる。
【0032】
高密度領域21は、吸収性シート14(又は体液吸収層16)の幅方向中央部を長さ方向に延びる帯状の領域であり、高吸収性ポリマー12の担持(目付)量が相対的に高くなっている。高密度領域21の高吸収性ポリマー担持量は160g/m以上390g/m以下である。160g/m未満では、吸収性物品50の吸収量や吸収速度等の吸収性能が低下する傾向があり、390g/mを超えると、装着者が高吸収性ポリマー12の体液吸収後の硬さを感じやすくなる傾向がある。また、高密度領域21の長さd(図3)は、吸収体20の長さb(図3)よりも短くなるように構成され、例えば、吸収体20の長さb(図3)の40%以上60%以下である。高密度領域21の長さdが40%未満では、延出部60a、60bによる、吸収体20と装着者の股間部との位置合わせを十分に実施できない傾向があり、60%を超えると、体勢により装着者が高吸収ポリマー12由来の固さを感じやすくなる傾向がある。
【0033】
低密度領域22は、高密度領域21の長手方向の前後を挟むように設けられた領域であり、高吸収性ポリマー12の担持(目付)量が相対的に低くなっている。低密度領域22における高吸収性ポリマー担持(目付)量は120g/m以下又は30g/m以上120g/m以下である。120g/mを超えると、吸収体20における体液拡散性が低下し、吸収性能の低下や、横モレが発生しやすくなる傾向がある。好ましい実施形態では、低密度領域22は、長さ方向両端部の長さe、e図3)が同寸である。この実施形態によれば、吸収体20全体として、長さ方向に対称な構造になり、装着者が後前等を気にすることなく吸収性物品50を装着できることから、吸収性物品50の利便性が一層向上する。また、基体不織布11を起毛させるとき、高密度領域21及び低密度領域22の部分のみを起毛させてもよく、基体不織布11の全面を起毛させてもよい。
【0034】
次に、吸収体20中、吸収性シート14を構成する基体不織布11、高吸収性ポリマー12、包装シート13について、この順で説明する。
【0035】
基体不織布11、及び拡散性シート15を構成する親水性不織布(基材)としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布等が挙げられる。これらの不織布の中でも、嵩を高くする観点等から、基体不織布11及び拡散性シート15にはエアスルー不織布が好ましい。
【0036】
基体不織布11及び拡散性シート15の厚さは特に限定されないが、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下の範囲、0.5mm以上5.0mm以下の範囲又は0.5mm以上2.0mm以下の範囲である。また、基体不織布11及び拡散性シート15の坪量は特に限定されないが、例えば、35g/m以上120g/m以下の範囲である。また、包装シート13の厚さは0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は5g/m以上40g/m以下の範囲である。
【0037】
なお、基体不織布11としてエアスルー不織布を用いる場合、エアスルー不織布の坪量が35g/m以上120g/m以下の範囲である。好ましい実施形態では、エアスルー不織布を構成する繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。エアスルー不織布を構成する繊維の太さを上述の範囲に調整することにより、エアスルー不織布の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させやすくなり、起毛面11aにおける高吸収性ポリマー12の均一分散性が向上する。
【0038】
包装シート13は、例えば、体液吸収層16全体に体液をほぼ均一に拡散させ、体液吸収層16からの高吸収性ポリマー12の脱落を防止する。包装シート13を構成する親水性シートとしては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。
【0039】
ここで、パルプ含有不織布とは、スパンボンド不織布と、スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面にパルプ繊維ウェブを一体化した不織布である(例えば、米国特許第5284703号明細書)。パルプ含有不織布は、例えば、スパンボンド不織布に水流交絡法によりパルプ繊維を高圧水流下に打ち付けることにより製造される。この方法で得られたパルプ含有不織布は、スパンボンド不織布の繊維と、パルプ繊維ウェブのバルブパルプ繊維とが絡み合い、かつパルプ繊維の一部がスパンボンド不織布を厚み方向に貫通することで、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとを強固に一体化したものである。
【0040】
包装シート13の坪量は、例えば15g/m以上80g/m以下の範囲である。本実施形態の吸収体20中では、包装シート13の坪量を前述の範囲から選択すると、吸収体20や全体としての体液拡散性が高水準に維持される。また、包装シート13の坪量を前述の範囲にすると、その厚みを薄くすることが可能になり、吸収体20が必要以上に嵩高になることが防止される。その結果、吸収性物品50の良好な着用感が維持される。
【0041】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー12としては、尿を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0042】
粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマー12の使用を避けると、吸収速度や吸収量等の吸収性能を高め、ごつごつとした触感の発生を低減できる。したがって、中位粒子径を有する粒子状の高吸収性ポリマー12が好ましい。中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0043】
好ましい実施形態では、高吸収性ポリマー12は、ホットメルト接着剤により、起毛繊維11x間に固着担持される。ホットメルト接着剤は、基体不織布11の坪量が比較的低いとき等に、高吸収性ポリマー12の固着担持を補強する。ホットメルト接着剤の含有量は、高吸収性ポリマー12の吸収性及び着用時の肌触りを損なわない観点から、例えば10g/m以下の範囲である。なお、高吸収性ポリマー12の吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないという観点から、ホットメルト接着剤の含有量は例えば10g/m以下の範囲である。ホットメルト接着剤としては融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
【0044】
(吸収体の寸法、形状)
吸収体20は、長さ方向の寸法b(図3)が520mm以上680mm以下の範囲であり、幅方向寸法が例えば50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は90mm以上380mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長さ方向寸法が180mm以上580mm以下の範囲、前側部及び後側部の幅がともに180mm以上380mm以下の範囲であり、股部の幅が90mm以上200mm以下の範囲である。また、吸収体20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収体20の平面視形状は、本実施形態では長方形状であるが、砂時計状、Iの字状、4角が丸まった角丸四角形、長円等でもよい。
【0045】
また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体20の形状のさらなる安定化を図るために、吸収体20、をキャリアシートで包んでもよい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュー、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布等が挙げられる。キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一でも異なるものでもよい。
【0046】
<バックシート>
バックシート30には、吸収体20が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を有する基材を用いる。該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層体である複合不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布、これらの2種以上の積層体である複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。
【0047】
バックシート30の坪量は、例えば強度及び加工性の点から、15g/m以上40g/m以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止する観点から、通気性を有するバックシート30が好ましい。バックシート30に通気性を付与するには、例えば、樹脂フィルムにフィラーを配合する方法、バックシート30に穿孔のためにエンボス加工を施す方法等を利用できる。ここで、フィラーとしては炭酸カルシウムが挙げられ、フィラーを公知の方法に従って配合できる。
【0048】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の装着者が排泄した体液の横モレを防止するために、吸収性物品50の幅方向両端付近で吸収性物品50の長手方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0049】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を装着者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収体20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0050】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの坪量は、例えば、13g/m以上20g/m以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0051】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10の縁辺とバックシート30の縁辺とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、吸収性物品50の用途や形態に応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等が適宜設けられる。
【0052】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0053】
以下に本実施形態の実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に説明する。なお、表1において、係合手段には次のものを用いた。
(種1)ズレ止めホットメルト 品種A(商品名:TECHNOMELT DF 5486、ヘンケルジャパン(株)製)
(種2)ズレ止めホットメルト 品種B(商品名:NW1043CZP、積水フーラー(株)製)
(種3)メカニカルフックテープ 弱係合(商品名:CHK-06672、スリーエムジャパン(株)製)
(種4)メカニカルフックテープ 強係合(商品名:CHK05393、3M China Ltd.製)
【0054】
(実施例1~5及び比較例1~5)
拡散性シート、及び吸収性シートの基体不織布(但し比較例1を除く)として用いられる各エアスルー不織布(表1)の片側表面を回転ノコ刃で物理的に起毛させ、毛羽立ち加工を施し、片面起毛エアスルー不織布(起毛後厚さ1.2mm、起毛率25%)を作製した。次に、上記で得られた片面起毛エアスルー不織布(基体不織布、目付60g/m、但し比較例1を除く)、高吸収性ポリマー(体液吸収層での各目付が担持量に相当)、及び吸収性シートの包装シート(スパンボンド不織布、目付15g/m)を用い、表1に記載の構成を有する吸収体を作製した。
なお、比較例1では、エアスルー不織布に代えて、フラッフパルプからなる吸収体(前側部幅110mm、股部幅95mm、後側部幅110mm、目付230g/m)を用い、フラッフパルプ中に高吸収性ポリマーを180g/mの目付で混入した(表1の※1、※2)。
【0055】
トップシートとしてエアスルー不織布(坪量25g/m)を用い、拡散性シートとして上記で得られた片面起毛エアスルー不織布(拡散性不織布の基材、目付40g/m)を用い、上記で得られた吸収体を用い、液不透過性のバックシートとして、通気性ポリエチレンシート(坪量30g/m)を用い、立体ギャザーとして、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布(坪量15g/m)を用いて、実施例1~5及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつである吸収性物品を作製した。
【0056】
実施例1~5及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつについて、次の評価を実施した。結果を表2に示す。なお、装着者が実施例1~5及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつを装着する際には、アウターとしてのパンツタイプ紙おむつと、インナーとしての実施例1~5及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつとを組み合わせて用いた。
【0057】
<荷重下厚み>
35gf/cmの荷重下における吸収体の高密度領域及び低密度領域の各厚みを測定した。
<係合手段の剥離強度>
係合手段をかなきん3号(JIS L 0803準拠試験用添付白布 綿)に固定した試料を用意した。固定には係合手段をかなきん3号へ静置し、その上から2kgの重さのローラーを1往復させ圧締し、試料とした。この試料をテンシロン引張試験機の上下のチャック部に40mmずつ挟んだ。次いで、剥離速度を500mm/minにして、係合手段が白布から剥離するときの引張力(N/cm)を剥離強度として測定した。この測定を各係合手段について10回実施した。剥離試験には、エー・アンド・デー(株)製の材料試験機、製品名:ORIENTEC RTC-1250A、データの処理には同社の汎用試験機データ処理システムTACTを用い、チャートにおいて変位上で剥離強度の安定した部分を積分平均により求め試験結果とした。得られた数値の中から最低値と最高値とを求め、表2に示した。
<モニター評価>
(車イス使用者による装着し易さ)
実施例1~5及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつについて、介護施設での車イス使用者モニター(装着者モニター)8人の回答を得、次の基準で評価した。
◎:「アウターとの位置を気にしなくてよい」との評価が8人全員のとき。
○:「アウターとの位置を気にしなくてよい」との評価が6人以上7人以下のとき。
△:「アウターとの位置を気にしなくてよい」との評価が3人以上5人以下のとき。
×:「アウターとの位置を気にしなくてよい」との評価が1人以上2人以下又はいないのとき。
(装着者及び介助者による評価)
介護施設において8人の要装着者に実施例1~5及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつを装着してもらい、日中及び夜間の装着を1週間継続した。そして、装着者及び介助者による装着感、着け心地評価、介助者による位置の把握しやすさ評価、及び介助者によるモレの有無評価を次の基準に準じて行った。
(装着感、着け心地)
◎:「仰臥位や座位で段差や硬さを感じない」との評価が8人全員のとき。
〇:「仰臥位や座位で段差や硬さを感じない」との評価が6人以上7人以下のとき。
△:「仰臥位や座位で段差や硬さを感じない」との評価が3人以上5人以下のとき。
×:「仰臥位や座位で段差や硬さを感じない」との評価が1人以上2人以下又はいないとき。
(位置の把握しやすさ)
〇:「延出部の固定部分が視認できるので、尿取りパッドの位置が分かりやすい」との評価が6人以上8人以下のとき。
△:「延出部の固定部分が視認できるので、尿取りパッドの位置が分かりやすい」との評価が3人以上5人以下のとき。
×:「延出部の固定部分が視認できるので、尿取りパッドの位置が分かりやすい」との評価が1人以上2人以下又はいないのとき。
(モレの有無)
〇:「モレが少ない」との評価が6人以上8人以下のとき。
△:「モレが少ない」との評価が3人以上5人以下のとき。
×:「モレが少ない」との評価が1人以上2人以下又はいないのとき。
【0058】
(吸収速度(繰返し吸収速度))
実施例1~5及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつを平面に伸ばして広げた状態で固定し、その肌側面の幅方向、長さ方向の中央に内径30mmの筒状の吸収速度治具を設置し、1回あたり150mlの0.9%生理食塩水を注入し、紙おむつ表面に液面が吸収されるまでの時間を計測した。吸収後から3分後に次の150mlを注入し、同様に吸収されるまでの時間を計測した。この操作を繰り返し、150ml×3回の吸収に要する時間の合計を吸収速度(秒)とした。吸収速度治具の重量により35g/cm加圧下で測定を行った。
(逆戻り量)
実施例1~5及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつを平面に伸ばして広げた状態で固定し、パッドタイプ紙おむつの肌側面の幅方向、長さ方向の中央に0.9%生理食塩水150mlを3分間隔で5回注水し、注水完了後10分間静置した。パッドタイプ紙おむつの肌側面の幅方向、長さ方向の中央に濾紙を置き、さらにその上へ35g/m荷重となる重りを置いて1分間静置した。その後に重りを取りのぞき、濾紙が吸収した0.9%生理食塩水の重量を、吸収前後の重量差より求め、逆戻り量(ウエットバック、g)とした。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
<車イス利用者モニター(装着者)の装着評価>
(実施例1~4)アウターとの位置を気にしなくて良い。固定の着け剥がしが軽快。(実施例5) 変形しやすく、位置を合わせやすい。固定の着け剥がしが軽快。(比較例1)下着を下ろして貼り付けるが、上げて位置が合わないと再度下着を下ろして調整しなくてはならない。(比較例2)少し屈曲させるのに負荷を感じる。(比較例3)装着時に体に沿って変形しやすい。(比較例4)固定の剥がす抵抗がやや強い。(比較例5)固定の着け剥がしが軽快。
<装着者及び介助者モニター回答、日中及び夜間1週間装着>装着感、着け心地(装着者回答)
(実施例1)仰臥位でも後側部が段差にならない。(実施例2)座位でも固さを感じにくい。(実施例3、4)座位でも吸収後のしみ出しを感じにくい。(実施例5)◎フィット感が良く感じられる。(比較例1)座位や仰臥位で吸収体のあるところと無いところの段差を感じる。(比較例2)座位や仰臥位で吸収体の固さを感じる。(比較例3)フィット感が良く感じられるが、吸収後の濡れ感がある。(比較例4)繰り返しの固定部脱着で下着が毛羽立ち、付着力が低下し位置ズレしたケースが生じた。(比較例5)就寝時に外れるケースがあった。
<位置の把握しやすさ(介助者回答)>
(実施例1~5及び比較例2~4)延出部の固定部分がアウター外で視認できるので脱がさなくとも位置を把握できる。(比較例1)下着内の吸収性物品の位置を見ないとわからない。(比較例5)固定部分が外れてズレている場合があり、視認できなかった。
<モレの有無(介助者回答)>
(実施例1~5及び比較例2)横モレなし。(比較例1、3)横モレあり。(比較例4、5)外れてずれたケースがあり、横モレが生じた。
【0061】
(実施例1)長さのある吸収性物品にすることで、装着者による装着操作でも適正な吸収位置へ誘導することが出来た。長さ方向へずれて的を外すことがなく、介助者による装着位置の確認も容易となり、モレを抑制することができた。
(実施例2)規定内で高吸収ポリマーの担持量を低めにして作製した吸収性物品は、モレを生じることなく日中及び夜間に使用でき、所定領域の高吸収性ポリマーの担持量を減じたことで、屈曲性、クッション性が向上し、良好な装着感が得られた。
(実施例3)規定内で高吸収ポリマーの担持量を高めにして作製した吸収性物品は、モレを生じることなく日中及び夜間に使用でき、高吸収性ポリマーが増加することで体勢変換時の高体圧下でもドライ感が向上した。
(実施例4)高密度部の長さ方向寸法を規定内で長めにして作製した吸収性物品は、様々な体勢でも大きな違和感を生じずに装着でき、ドライ感が高かった。
(実施例5)高密度部の長さ方向寸法を規定内で短めにして作成した吸収性物品は、日中から夜間の様々な体勢でモレなく装着でき、フィットしやすく装着感も良好であった。
(比較例1)従来サイズのパッドである吸収性物品は、長さ方向寸法が短いことから、係合部を下着に貼り付ける位置を決めるのに気を遣うため、装着者、介助者ともに負担を感じ、装着後の位置ズレや、横モレが発生した。
(比較例2)吸収体における高吸収ポリマーの担持量を均一として作製した吸収性物品は、モレは見られなかったが.高吸収性ポリマー由来の固さがあり、装着しづらく、装着後も前後の長い部分に違和感が感じられた。
(比較例3)吸収体における高吸収ポリマーの担持量を低めに均一として作製した吸収性物品は、装着感は良好であるものの、体液吸収後に体液の滲み出しが生じ、座位等での不快感が生じた。
(比較例4)係合手段の係合力を規定の範囲よりも高く設定して作製した吸収性物品は、繰り返し使用するうちに下着表面が痛んで毛羽立ちし、外れてモレに至るケースもみられた。
(比較例5)係合手段の係合力を規定の範囲よりも低く設定して作製した吸収性物品は、就寝時等での体勢変換の負荷で係合が外れるケースがあり、モレに至るケースもみられた。
【符号の説明】
【0062】
10 トップシート
11 基体不織布
11a 起毛面
11b 非起毛面
11x 起毛繊維
12 高吸収性ポリマー
13 包装シート
14 吸収性シート
15 トランスファーシート(拡散性シート)
15a 起毛面
15b 非起毛面
15x 起毛繊維
16 体液吸収層
20 吸収体
21 高密度領域
22 低密度領域
30 バックシート
40 立体ギャザー
40a 弾性伸縮部材
40b シート部材
50 吸収性物品
60a、60b 延出部
70 吸収部
80 パンツタイプ紙おむつ
90 装着者
図1
図2
図3
図4
図5