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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057583
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27D 5/00 20060101AFI20220404BHJP
   B27M 1/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B27D5/00
B27M1/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165910
(22)【出願日】2020-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 達哉
(72)【発明者】
【氏名】久保 耕平
(72)【発明者】
【氏名】濱口 真一
【テーマコード(参考)】
2B002
2B250
【Fターム(参考)】
2B002AA10
2B002AA11
2B002BA09
2B002BB04
2B002BB12
2B002BB14
2B250AA01
2B250BA05
2B250CA11
2B250DA04
2B250EA02
2B250EA13
2B250FA03
2B250FA31
2B250FA33
2B250FA37
2B250GA07
2B250HA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造設備の大型化を招くことなく製造可能な製造方法を提供する。
【解決手段】化粧板の製造方法は、木質化粧基材10の長辺側面対14,14に面取部16と実部17,18とを切削によって形成する第1切削工程と、長辺側面対14,14の木質繊維板が露出する表側端面17b,18bに、湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈した浸透性塗料を塗布して浸透させる第1塗布工程と、第1塗布工程において表側端面17b,18bに塗布されて内部に浸透した浸透性塗料が硬化する前に、短辺側面対15,15に面取部16と実部17,18とを切削によって形成する第2切削工程と、短辺側面対15,15の木質繊維板が露出する表側端面17b,18bに、浸透性塗料を塗布して内部に浸透させる第2塗布工程とを備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧加工が施された化粧面を有する化粧板の製造方法であって、
少なくとも一部が木質繊維板によって構成されて化粧加工が施された化粧面を有する矩形板状の木質化粧基材の上記化粧面を挟むように対向する2つの側面対の一方の第1側面対に、上記化粧面に連続する面取部と該面取部に連続する実部とを、切削によって少なくとも上記面取部に連続する端面において上記木質繊維板が露出するように形成する第1切削工程と、
上記第1側面対の上記端面に、湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈した浸透性塗料を塗布して浸透させる第1塗布工程と、
上記第1塗布工程において上記端面に塗布されて内部に浸透した上記浸透性塗料が硬化する前に、上記2つの側面対の他方の第2側面対に、上記化粧面に連続する面取部と該面取部に連続する実部とを、切削によって少なくとも上記面取部に連続する端面において上記木質繊維板が露出するように形成する第2切削工程と、
上記第2側面対の上記端面に、上記浸透性塗料を塗布して内部に浸透させる第2塗布工程とを備える
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧板の製造方法において、
上記湿気硬化型樹脂組成物は、ポリオールを主剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートの少なくとも一方を硬化剤として含むものであり、
上記浸透性塗料は、25℃での粘度が60mPa・s以下になるように、上記湿気硬化型樹脂組成物を上記希釈剤で希釈したものである
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化粧板の製造方法において、
上記第1塗布工程では、上記化粧面に上記浸透性塗料が付着しないように、上記浸透性塗料を上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布し、
上記第2塗布工程では、上記化粧面に上記浸透性塗料が付着しないように、上記浸透性塗料を上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布する
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の化粧板の製造方法において、
上記第1塗布工程では、上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布された上記浸透性塗料が上記面取部の外表面全体に濡れ拡がりながら内部に浸透するように、上記化粧面を下向きにした状態で上記浸透性塗料を上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布し、
上記第2塗布工程では、上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布された上記浸透性塗料が上記面取部の外表面全体に濡れ拡がりながら内部に浸透するように、上記化粧面を下向きにした状態で上記浸透性塗料を上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布する
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の化粧板の製造方法において、
上記第1及び第2塗布工程では、上記各端面及び該各端面に連続する上記面取部の外表面の一部に上記浸透性塗料を塗布して浸透させる塗布浸透処理を複数回ずつ行う
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の化粧板の製造方法において、
上記第2塗布工程の後に実行され、上記第1及び第2塗布工程において塗布されて浸透した上記浸透性塗料の溶剤を加熱することによって揮発させる加熱工程を備えている
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木質基材の表面に化粧シートや突板等の化粧材を積層した化粧板が、建物の壁面や床面等に用いられている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、木質化粧基材の四周に実加工と面取り加工とを施した後、表面全体に透明の塗料を塗布して透明塗膜層を形成することにより、表面に化粧が施された床板用化粧板を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-120024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、化粧板の木質化粧基材として、比較的吸水性の高い木質繊維板が用いられることがある。木質繊維板は、中性洗剤等の界面活性剤を含む水を吸収すると膨れるという性質を有する。そのため、木質化粧基材として木質繊維板を用いた化粧板に対し、化粧面の汚れを取るために中性洗剤等の界面活性剤を含む水で化粧面を水拭きすると、界面活性剤が水と共に透明塗膜層で覆われていない側面から内部に浸透し、化粧板に膨れが生じる虞があった。
【0006】
そこで、従来、木質化粧基材の側面に防水性を有する保護樹脂を塗布して保護樹脂膜を形成する技術が提案されている。
【0007】
しかしながら、従来の化粧板の製造方法では、木質化粧基材の四周側面に切削加工(面取り加工や実加工)を施した後に、四周側面に保護樹脂を塗布していた。通常、木質化粧基材の側面の処理は、長辺側面と短辺側面とで別々に行われる。具体的には、例えば、切削工程は、木質化粧基材を長辺方向に搬送しながら、長辺側面に切削加工処理を施した後、搬送装置による搬送方向を短辺方向に変更し、短辺側面に切削加工処理を施すことによって行われる。そのため、塗布工程を手作業で行うのではなく、切削工程と同様に自動化する場合、従来の化粧板の製造方法では、切削工程と塗布工程とでそれぞれ処理面を変更する度に、木質化粧基材の搬送方向を変更する必要があり、製造設備の大型化を招くという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造設備の大型化を招くことなく製造可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、木質化粧基材の互いに対向する2つの側面対のうちの一方の第1側面対に切削加工を施した後、他方の第2側面対に切削加工を施す前に、第1側面対の面取部に連続する端面に、湿気硬化型樹脂を溶剤で希釈した浸透性塗料を塗布すると共に、第2側面対に切削加工を施す前に、塗布した浸透性塗料を内部に浸透させるようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、化粧加工が施された化粧面を有する化粧板の製造方法であって、少なくとも一部が木質繊維板によって構成されて化粧加工が施された化粧面を有する矩形板状の木質化粧基材の上記化粧面を挟むように対向する2つの側面対の一方の第1側面対に、上記化粧面に連続する面取部と該面取部に連続する実部とを、切削によって少なくとも上記面取部に連続する端面において上記木質繊維板が露出するように形成する第1切削工程と、上記第1側面対の上記端面に、湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈した浸透性塗料を塗布して浸透させる第1塗布工程と、上記第1塗布工程において上記端面に塗布されて内部に浸透した上記浸透性塗料が硬化する前に、上記2つの側面対の他方の第2側面対に、上記化粧面に連続する面取部と該面取部に連続する実部とを、切削によって少なくとも上記面取部に連続する端面において上記木質繊維板が露出するように形成する第2切削工程と、上記第2側面対の上記端面に、上記浸透性塗料を塗布して内部に浸透させる第2塗布工程とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、少なくとも一部が木質繊維板によって構成された木質化粧基材の2つの側面対に対し、少なくとも面取部に連続する端面において木質繊維板が露出するように切削加工が施される。木質繊維板は、合板等に比べて精密に切削加工を施すことができる。そのため、第1の発明によれば、第1及び第2切削工程において少なくとも面取部に連続する端面を精密に加工することができる。
【0012】
一方、木質化粧基材の四周の上記端面において比較的吸水性が高く界面活性剤によって膨れが生じ易い木質繊維板が露出したままでは、界面活性剤を含む水で化粧板を水拭きした際に、水分と共に界面活性剤が上記端面から吸収されて化粧板に膨れが生じる虞がある。
【0013】
これに対し、第1の発明では、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材の四周の面取部に連続する端面に湿気硬化型樹脂組成物を含む浸透性塗料を塗布して浸透させ、化粧板の製造後に、空気中の水分や木質化粧基材に含まれる水分によって湿気硬化型樹脂を硬化させることにより、上記各端面の表層が防水性を有する樹脂含浸層に形成されるようにしている。そのため、化粧板の化粧面を、界面活性剤を含む水で水拭きすることにより、界面活性剤を含む水が化粧板の化粧面から側面に至っても、木質繊維板が露出する木質化粧基材の端面の表層が上記樹脂含浸層に形成されているため、界面活性剤を含む水が端面から内部に浸透しない。よって、第1の発明によれば、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造することができる。
【0014】
また、第1の発明では、木質化粧基材の2つの側面対の一方の第1側面対に切削加工処理及び塗布処理を施した後、処理面を変更し、他方の第2側面対に切削加工処理塗布処理を施すこととした。そのため、木質化粧基材の搬送方向の変更が1回で済むため、化粧板の製造設備の大型化を招くことなく化粧板を製造することができる。
【0015】
ところで、面取り加工や実加工を精度良く行うには、刃に対して木質化粧基材が位置ずれしないように固定治具等でしっかりと押さえる必要がある。また、木質化粧基材の面取部に連続する端面に精度良く塗布処理を施す場合にも、塗布装置に対して木質化粧基材が位置ずれしないように固定治具等でしっかりと押さえる必要がある。
【0016】
第1の発明では、1つの側面対に対し、切削加工処理と塗布処理とを連続して行うこととしている。そのため、切削工程と塗布処理工程とで別々に固定治具を用意する必要がなく、同一の治具を用いて木質化粧基材をしっかりと押さえて切削加工処理と塗布処理とを精度良く行うことができる。よって、化粧板の製造設備の小型化を図ることができる。
【0017】
また、従来の化粧板の製造方法のように、木質化粧基材の側面に保護樹脂を塗布して該側面上に保護樹脂膜を形成する場合、上述のように、1つの側面対に対して切削加工処理と塗布処理とを連続して行うようにすると、一方の側面対に対する塗布処理の後、他方の側面対の切削加工処理を行う際に、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に保護樹脂が付着し、切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がある。
【0018】
これに対し、第1の発明では、木質化粧基材の側面の該当部分に保護樹脂を塗布して保護樹脂膜を形成するのではなく、湿気硬化型樹脂組成物を溶剤で希釈した浸透性塗料を塗布して内部に浸透させることにより、木質化粧基材の側面の内部に樹脂含浸層を形成することとしている。また、第1塗布工程で塗布された浸透性塗料が浸透した後に、第2切削工程を行うこととしているため、従来の製造方法のように、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に塗料が付着して切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がない。
【0019】
以上のように、第1の発明によれば、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造設備の大型化を招くことなく製造可能な製造方法を提供することができる。
【0020】
第2の発明は、第1の発明において、上記湿気硬化型樹脂組成物は、ポリオールを主剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートの少なくとも一方を硬化剤として含むものであり、上記浸透性塗料は、25℃での粘度が60mPa・s以下になるように、上記湿気硬化型樹脂組成物を上記希釈剤で希釈したものであることを特徴とするものである。
【0021】
第2の発明では、浸透性塗料が、ポリオールを主剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートの少なくとも一方を硬化剤とする湿気硬化型樹脂組成物を含んでいる。そのため、木質化粧基材に浸透した浸透性塗料の溶剤の揮発後、主剤と硬化剤とが反応してなるウレタンプレポリマーが空気中の水分や木質化粧基材に含有されている水分と反応してウレア結合を生成することにより、浸透性塗料が硬化する。これにより、木質化粧基材の四周側面の面取部に連続する端面の表層は、ウレタン樹脂が含浸した防水性に優れた樹脂含浸層となる。よって、第2の発明によれば、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を容易に製造することができる。
【0022】
また、第2の発明では、上記湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈して、25℃での粘度が60mPa・s以下になるように調製した浸透性塗料を用いている。このような浸透性塗料は、浸透速度が速く、瞬時に木質化粧基材に浸透する。そのため、第1塗布工程後、浸透性塗料の浸透を待つことなく、すぐに第2切削工程を行うことができる。つまり、化粧板の製造ラインに、第1塗布工程後、塗料を浸透させる時間を稼ぐために加工を施すことなく木質化粧基材を単に搬送する区間を設ける必要がない。従って、第2の発明によれば、第1及び第2塗布工程を加えても、化粧板の製造ラインの長尺化を抑制することができるため、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造設備の大型化を招くことなく製造することができる。
【0023】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記第1塗布工程では、上記化粧面に上記浸透性塗料が付着しないように、上記浸透性塗料を上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布し、上記第2塗布工程では、上記化粧面に上記浸透性塗料が付着しないように、上記浸透性塗料を上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布することを特徴とするものである。
【0024】
ところで、水拭き時に界面活性剤を含む水が木質化粧基材の内部に浸透して膨れるのを抑制する観点からは、木質化粧基材の面取部の外表面全体に浸透性塗料を塗布して面取部全体の表層を、防水性を有する樹脂含浸層に形成することが好ましい。
【0025】
しかしながら、木質化粧基材の面取部の外表面全体にロールコーターやスポンジコーター等で浸透性塗料を塗布しようとすると、木質化粧基材の化粧面にも塗料が付着して化粧面を汚してしまう虞がある。
【0026】
これに対し、第3の発明では、化粧面に浸透性塗料が付着しないように、第1及び第2側面対の各面取部に連続する端面と該端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料を塗布し、浸透性塗料が化粧面に至る前に完全に内部に浸透するようにしている。そのため、木質化粧基材の化粧面を汚すことなく木質化粧基材の面取部の表層も樹脂含浸層に形成することができる。
【0027】
なお、第3の発明では、木質化粧基材の面取部の外表面に浸透性の低い塗料を塗布して外表面上に保護樹脂膜を形成するのではなく、第1及び第2側面対の面取部に連続する端面及び該端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料を塗布して浸透させることにより、面取部の表層(内部)にも樹脂含浸層を形成することとしている。塗布された浸透性塗料は、端面はもとより、面取部においても完全に浸透しているので、第1塗布工程後に、第2切削工程を行うこととしても、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に塗料が付着して切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がない。また、木質化粧基材の面取部の外表面にロールコーターやスポンジコーター等で浸透性塗料を塗布しないため、浸透性塗料が化粧面まで食み出ることがなく、木質化粧基材の化粧面を汚すことがない。さらに、木質化粧基材の面取部の外表面上に着色塗膜を形成する場合、面取部の外表面上に保護樹脂膜を形成するのではなく、面取部の表層を浸透性塗料が完全に含浸した樹脂含浸層に形成しているため、着色塗膜の密着性を低下させることなく、容易に且つきれいに着色塗膜を形成することができる。
【0028】
第4の発明は、第3の発明において、上記第1塗布工程では、上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布された上記浸透性塗料が上記面取部の外表面全体に濡れ拡がりながら内部に浸透するように、上記化粧面を下向きにした状態で上記浸透性塗料を上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布し、上記第2塗布工程では、上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布された上記浸透性塗料が上記面取部の外表面全体に濡れ拡がりながら内部に浸透するように、上記化粧面を下向きにした状態で上記浸透性塗料を上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布することを特徴とするものである。
【0029】
第4の発明では、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材の化粧面を下向きにした状態で第1及び第2側面対の各面取部に連続する端面と該端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料を塗布することとしている。そのため、上記端面及び該端面に連続する面取部の外表面の一部に塗布された浸透性塗料は、面取部の外表面において下方へ垂れて面取部の外表面全体に濡れ拡がる一方、化粧面に至る前に内部に浸透することとなる。これにより、第4の発明では、木質化粧基材の第1及び第2側面対の各端面の表層だけでなく、面取部の表層も樹脂含浸層に形成することができる。よって、第4の発明によれば、防水性により優れ、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れがより生じ難い化粧板を製造することができる。
【0030】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、上記第1及び第2塗布工程では、上記各端面及び該各端面に連続する上記面取部の外表面の一部に上記浸透性塗料を塗布して浸透させる塗布浸透処理を複数回ずつ行うことを特徴とするものである。
【0031】
ところで、第1及び第2塗布工程において、希釈剤で希釈した低粘度の浸透性塗料を一度に多量に塗布すると、浸透性塗料が木質化粧基材の内部深くまで浸透してしまい、端面及び面取部の表層に樹脂(シール剤)を集中させることができない。また、低粘度の浸透性塗料を一度に多量に塗布すると、塗布された浸透性塗料が面取部を超えて化粧面に食み出し、木質化粧基材の化粧面を汚してしまう虞がある。
【0032】
これに対し、第5の発明では、第1及び第2塗布工程において、1度に多量に浸透性塗料を塗布するのではなく、複数回に分けて浸透性塗料を塗布浸透させることとしている。そのため、第5の発明によれば、木質化粧基材の化粧面を汚すことなく、木質化粧基材の面取部に連続する端面及び面取部の表層に樹脂(シール剤)を集中させることができる。よって、より防水性に優れた化粧板を製造することができる。
【0033】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、上記第2塗布工程の後に実行され、上記第1及び第2塗布工程において塗布されて浸透した上記浸透性塗料の溶剤を加熱することによって揮発させる加熱工程を備えていることを特徴とするものである。
【0034】
第6の発明では、木質化粧基材の四周側面に切削加工を施し、浸透性塗料を塗布した後に、浸透性塗料の溶剤を加熱することによって揮発させることとしている。従って、第6の発明によれば、浸透性塗料に溶剤が含まれていても、加熱により溶剤が揮発するため、最終製品である化粧板に含まれる揮発性化学物質の総量を著しく増大させることなく化粧板を製造することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明の化粧板の製造方法によると、木質化粧基材の互いに対向する2つの側面対のうちの一方の第1側面対に切削加工を施した後、他方の第2側面対に切削加工を施す前に、第1側面対の面取部に連続する端面に、湿気硬化型樹脂を溶剤で希釈した浸透性塗料を塗布すると共に、第2側面対に切削加工を施す前に、塗布した浸透性塗料を内部に浸透させるようにしたため、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造設備の大型化を招くことなく製造可能な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の実施形態1の化粧板の平面図である。
図2図2は、図1の化粧板のA-A’断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態1の化粧板の製造方法の木質化粧基材形成工程から第2塗布工程が終了するまでの木質化粧基材の平面形状の変化を説明するための説明図である。
図4図4は、本発明の実施形態1の化粧板の製造方法の木質化粧基材形成工程から第2塗布工程が終了するまでの木質化粧基材の断面形状の変化を説明するための説明図である。
図5図5は、雌実が形成された木質化粧基材の側面の表側端面に浸透性塗料を塗布した直後の側面及び断面の様子を上段に示し、浸透性塗料が浸透、硬化後の側面及び断面の様子を下段に示す図である。
図6図6は、雄実が形成された木質化粧基材の側面の表側端面に浸透性塗料を塗布した直後の側面及び断面の様子を上段に示し、浸透性塗料が浸透、硬化後の側面及び断面の様子を下段に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0038】
《発明の実施形態1》
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る化粧板1を示し、この化粧板1は、例えば床材等として使用される。化粧板1は、木質化粧基材10と、塗膜層20とを備えている。
【0039】
〈木質基材〉
木質化粧基材10は、木質基材11と表面化粧材12とを積層して接着剤で接着一体化することによって構成されている。
【0040】
木質基材11は、表面側の第1基材11aと裏面側の第2基材11bとを積層して接着剤で接着一体化することによって構成されている。本実施形態1では、第1基材11aは、密度が0.35~0.85g/cmの木質繊維板(中密度繊維板(MDF)又はハードボード)で構成され、第2基材11bは、合板で構成されている。木質基材11は、平面視において950mm×1850mmの長方形状に形成されている。
【0041】
なお、木質基材11は、少なくとも後述する表側端面17b,18bにおいて木質繊維板が露出するものであれば、いかなる材料によって構成されるものであってもよい。また、木質基材11は、第1基材11aと第2基材11bとで構成されず、木質繊維板のみで形成されるものであってもよい。また、木質基材11は、第1基材11aと第2基材11bとの間に他の材料からなる層を有するものであってもよく、第2基材11bのさらに裏面側に樹脂不織布や樹脂系発泡板材が接着一体化されるものであってもよい。さらに、第1基材11aと第2基材11bとが同じ素材(木質繊維板)で構成されて接着一体化されていてもよい。
【0042】
表面化粧材12は、薄板又はシート状に形成され、木質基材11の表面(第1基材11aの表面)を覆うように接着剤で接着されている。表面化粧材12は、例えば、オレフィン樹脂等の防水性を有する樹脂製の化粧シートによって構成されている。表面化粧材12の厚みは、0.15~0.6mm程度に形成されている。本実施形態1では、表面化粧材12の表面が、木質化粧基材10の化粧面13となる。
【0043】
なお、表面化粧材12の材質及び厚みに特に制限はなく、樹脂製の化粧シートの他、コート紙、樹脂含浸紙等の化粧紙、不織布、織布、木質薄化粧突き板等であってもよい。紙の場合、例えば、0.05~0.3mm程度のもの、木質薄化粧突板であれば、0.15~0.3mm程度のものが好適に用いられる。
【0044】
木質化粧基材10の化粧面13と周囲側面(長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15)との間には、面取部16が形成されている。
【0045】
面取部16は、木質化粧基材10の化粧面13と各側面14,15との間の角部を斜め(又は円弧状)に切り欠くことによって形成されている。そのため、面取部16の外表面16aは、化粧面13及び各側面14,15に対して傾斜している。面取部16の大きさに特に制限はないが、面取部16の水平方向及び垂直方向の幅は、それぞれ0.5~1.0mm程度に形成されている。本実施形態1では、面取部16は、木質化粧基材10の表面化粧材12と木質基材11の第1基材11aとに亘って形成されている。つまり、本実施形態1では、木質化粧基材10は、面取部16の外表面16aにおいて木質繊維板が露出するように面取り加工が施されている。
【0046】
木質化粧基材10の各側面14,15には雌実17又は雄実18が形成されている。木質化粧基材10の短辺方向に対向する長辺側面対(第1側面対)14,14の一方には雌実17が形成され、他方には雌実17に嵌合可能な雄実18が形成されている。また、木質化粧基材10の長辺方向に対向する短辺側面対(第2側面対)15,15の一方には雌実17が形成され、他方には雌実17に嵌合可能な雄実18が形成されている。
【0047】
上記長辺側面14及び短辺側面15の雌実17は、同様に構成されている。雌実17は、木質化粧基材10の長辺側面14及び短辺側面15の厚み方向(表裏方向)の中間部分が凹溝部17aになるように木質化粧基材10の側辺部を切り欠くことによって形成されている。また、本実施形態1では、雌実17は、凹溝部17aより裏面側の部分が、凹溝部17aより表面側の部分よりも外側に突出するように形成された所謂あご実に構成されている。そのため、雌実17では、面取部16の外表面16aに連続し、化粧面13に対して垂直な表側端面(端面)17bが、裏面19に対して垂直に連続する裏側端面17cよりも内側に位置している。
【0048】
なお、本実施形態1では、凹溝部17a及び裏側端面17cは、第2基材11bに形成され、表側端面17bは、第1基材11aから第2基材11bに亘って形成されている。つまり、本実施形態1では、木質化粧基材10は、雌実17の表側端面17bにおいて木質繊維板が露出するように実加工が施されている。
【0049】
上記長辺側面14及び短辺側面15の雄実18は、同様に構成されている。雄実18は、木質化粧基材10の長辺側面14及び短辺側面15の表裏方向の中間部分が凸条部18aになるように木質化粧基材10の側辺部を切り欠くことによって形成されている。また、本実施形態1では、雄実18は、あご実に構成された雌実17に対応するように、凸条部18aより裏面側の凹み部分が、凸条部18aより表面側の凹み部分よりも内側に位置するように形成されている。そのため、雄実18では、面取部16の外表面16aに連続し、化粧面13に対して垂直な表側端面(端面)18bが、裏面19に対して垂直に連続する裏側端面18cよりも外側に位置している。
【0050】
なお、本実施形態1では、凸条部18a及び裏側端面18cは、第2基材11bに形成され、表側端面17bは、第1基材11aから第2基材11bに亘って形成されている。つまり、本実施形態1では、木質化粧基材10は、雄実18の表側端面18bにおいて木質繊維板が露出するように実加工が施されている。
【0051】
このように、本実施形態では、隣り合う化粧板1の側辺部が嵌合するように、木質化粧基材10に、雌実17と雄実18とを形成する所謂本実加工を施している。しかしながら、隣り合う化粧板1の側辺部を嵌合させる構造はこれに限らない。例えば、木質化粧基材10の長辺側面14及び短辺側面15の一方では木質化粧基材10の厚み方向の表側の部分を切り欠き、他方では木質化粧基材10の厚み方向の裏側の部分を切り欠くことにより、所謂合決り構造としてもよい。
【0052】
また、木質化粧基材10の各側面14,15の木質繊維板(第1基材11a)が露出する表側端面(端面)17b,18bの表層には、後述する浸透性塗料30を塗布して浸透させることにより、樹脂含浸層31が形成されている。
【0053】
〈塗膜層〉
塗膜層20は、着色層21と透明樹脂層22とを有している。
【0054】
着色層21は、着色塗料によって形成された塗膜層である。着色層21は、木質化粧基材10の木質繊維板(第1基材11a)が露出する面取部16の外表面16aを覆うように、外表面16a上に形成されている。
【0055】
なお、着色層21の形成に使用する着色塗料は特に限定されるものではないが、水性のアクリル系樹脂に顔料粉末を均一分散させた水性着色剤を含むシール性(造膜性)を有する塗料を用いることができる。
【0056】
透明樹脂層22は、透明塗料によって形成された透明の塗膜層である。透明樹脂層22は、木質化粧基材10の化粧面13及び面取部16の外表面16aを覆うように、化粧面13及び着色層21上に形成されている。
【0057】
なお、透明樹脂層22の形成に使用する透明塗料は特に限定されるものではないが、揮発性有機化合物(VOC)の問題がなく、また、化粧板1を床材として用いる場合に、耐傷性、耐磨耗性が良い塗料として、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等の無溶剤紫外線硬化型塗料を用いるのが好適である。
【0058】
-製造方法-
次に、上記化粧板1の製造方法について説明する。この製造方法は、(1)木質化粧基材形成工程、(2)第1切削工程、(3)第1塗布工程、(4)第2切削工程、(5)第2塗布工程、(6)加熱工程、(7)着色層形成工程、(8)透明樹脂層形成工程を有する。各工程は、ベルトコンベア等の搬送装置(図示省略)によって所定方向に搬送される木質基材11又は木質化粧基材10に対して行われる。
【0059】
本実施形態1では、図3に示すように、(2)第1切削工程及び(3)第1塗布工程は、長辺側面対14,14に加工処理を施す長辺加工工程であり、(4)第2切削工程及び(5)第2塗布工程は、木質化粧基材10の短辺側面対15,15に加工処理を施す短辺加工工程である。本実施形態1では、搬送装置(図示省略)によって木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で長辺方向に搬送しながら長辺加工工程を行った後、木質化粧基材10の搬送方向を短辺方向に変更し、木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で短辺方向に搬送しながら短辺加工工程を行う。
【0060】
なお、以下で説明する工程の順序は、一例にすぎず、本発明に係る製造方法はこれに限られない。
【0061】
(1)木質化粧基材形成工程
まず、木質基材11の表面に化粧を施すことによって木質化粧基材10を形成する木質化粧基材形成工程を行う。本実施形態1では、木質基材11の表面に樹脂製の化粧シートからなる表面化粧材12を積層して接着剤で一体化することによって木質化粧基材10を形成する。
【0062】
(2)第1切削工程
次に、木質化粧基材10の長辺側面対14,14に切削加工を施す第1切削工程を行う。第1切削工程は、図示しない搬送装置によって木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で長辺方向に搬送しながら行われる(図3の長辺加工時の図を参照)。
【0063】
本実施形態1では、第1切削工程では、実加工工程と面取り加工工程とを行う。なお、実加工と面取り加工とは同時に行ってもよく、順に行ってもよい。第1切削工程では、刃に対して木質化粧基材10が位置ずれしないように固定する固定治具を備えた切削加工装置が用いられる。
【0064】
第1切削工程の実加工工程では、搬送装置によって搬送される木質化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、木質化粧基材10の長辺側面対14,14の一方を凹溝部17aが形成されるように切り欠き、他方を凸条部18aが形成されるように切り欠く。このようにして、木質化粧基材10の長辺側面対14,14の一方に雌実17を形成し、他方に雄実18を形成する(図3の長辺加工時の図及び図4の長辺加工時のA-A’断面図を参照)。なお、実加工工程では、上述のような切削加工により、木質化粧基材10の長辺側面対14,14の表側端面17b,18bにおいて木質繊維板が露出するように雌実17と雄実18とが形成される。
【0065】
第1切削工程の面取り加工工程では、引き続き搬送装置によって搬送される木質化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、木質化粧基材10の化粧面13と各長辺側面14との間の各角部を斜め(又は円弧状)に切り欠く。このようにして、木質化粧基材10の化粧面13と各長辺側面14との間に面取部16を形成する(図3の長辺加工時の図及び図4の長辺加工時のA-A’断面図を参照)。なお、面取り加工工程では、上述のような切削加工により、木質化粧基材10の長辺側面対14,14の面取部16の外表面16aにおいて木質繊維板が露出するように面取部16が形成される。
【0066】
以上のように、本実施形態1では、木質化粧基材10は、化粧面13が下向きの状態で固定治具によって位置ずれしないように固定された状態で搬送されながら、下端基準で(化粧面13を基準として)切削加工が施される。そのため、木質化粧基材10には、厚みの誤差に関係なく、化粧面13側から面取部16、雌実17及び雄実18の切削加工を精度良く行うことができる。
【0067】
(3)第1塗布工程
第1切削工程の後、即ち、長辺側面対14,14に対する切削加工の後、長辺側面対14,14に浸透性塗料30を塗布して浸透させる第1塗布工程を行う。第1塗布工程は、図示しない搬送装置によって木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で長辺方向に搬送しながら、切削加工装置の固定治具で木質化粧基材10が位置ずれしないように固定した状態で行われる(図3の長辺加工時の図を参照)。
【0068】
第1塗布工程では、切削加工装置の固定治具で木質化粧基材10が位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、塗布装置を用いて木質化粧基材10の長辺側面対14,14の木質繊維板が露出する表側端面17b,18bに浸透性塗料30を塗布する(図5の上図及び図6の上図を参照)。なお、本実施形態1では、長辺側面対14,14の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも余剰の浸透性塗料30が付着するような分量の浸透性塗料30を表側端面17b,18bに塗布する。
【0069】
第1塗布工程は、例えば、長辺方向に搬送される木質化粧基材10の両側に設置された塗布ロール対を有し、各塗布ロールの外周面に浸透性塗料30を定量供給するように構成された塗布装置を用いて行う。具体的には、長辺方向に搬送される木質化粧基材10の両側において、各塗布ロールが外周面を長辺側面対14,14の表側端面17b,18bに当接させながら木質化粧基材10の搬送に伴って垂直回転軸周りに回転することにより、各塗布ロールの外周面の浸透性塗料30が表側端面17b,18bに塗布(転写)される。なお、このとき、余剰の浸透性塗料30が長辺側面対14,14の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも付着する。このようにして、第1塗布工程では、長辺側面対14,14の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部に浸透性塗料30が塗布(転写)される。
【0070】
なお、塗布手段は、塗布ロールを有する上記塗布装置に限定されず、公知の塗布装置を適宜用いることができるが、浸透性塗料30を塗布する塗布器具として、表側端面17b,18bに当接させても変形しない硬質材で構成されたものを用いることが好ましい。
【0071】
本実施形態1では、湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈することによって低粘度に調整したものを浸透性塗料30として用いている。また、湿気硬化型樹脂組成物として分子量1000~5000のポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とを使用し、希釈剤として酢酸ブチルを使用している。例えば、ポリオールの溶液100に対し、10~300のHDIを添加し、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下(より好ましくは、40mPa・s以上60mPa・s以下)になるように、酢酸ブチルで希釈することによって浸透性塗料30を生成する。
【0072】
なお、上記浸透性塗料30として、塗布してから1~2秒、好ましくは1秒以内に概ね木質化粧基材10の内部に浸透する粘度の浸透性塗料30を用いれば、その後の加工処理を問題なく行えることが種々の実験により確認できている。ところで、浸透速度を上げるためには、できる限り希釈剤の添加量を増やし、浸透性塗料30の粘度を低下させるのが好ましいが、希釈剤の添加量が増えすぎると、含まれる湿気硬化型樹脂組成物の量が相対的に減るため、防水性の観点からは好ましくない。このような観点より、浸透性塗料30は、上述のように、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下(より好ましくは、40mPa・s以上60mPa・s以下)になるように希釈するのが好ましい。
【0073】
このように、25℃での粘度が60mPa・s以下の低粘度の浸透性塗料30を、木質化粧基材10の長辺側面対14,14の表側端面17b,18bに塗布すると、浸透性塗料30は、瞬間的に表側端面17b,18bから内部に浸透する。浸透性塗料30が浸透した表側端面17b,18bの表層は、浸透性塗料30の溶剤が揮発した後、イソシアネート系化合物(HDI)が空気中の水分及び木質化粧基材10に含まれる水分を吸収することにより硬化し、樹脂含浸層31となる(図5の下図及び図6の下図を参照)。
【0074】
なお、本実施形態1では、長辺側面対14,14の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも余剰の浸透性塗料30が付着するような分量の浸透性塗料30を表側端面17b,18bに塗布する。つまり、面取部16の外表面16aの一部にも浸透性塗料30が塗布される。面取部16の外表面16aの一部に塗布された浸透性塗料30も速やかに浸透するため、外表面16aに残らない。そして、面取部16の浸透性塗料30が浸透した部分の表層も、樹脂含浸層31となる(図5の下図及び図6の下図を参照)。
【0075】
なお、湿気硬化型樹脂組成物としては、上述のポリオールとHDIの組み合わせの他、HDIのみ、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)のみ、HDIとMDI、ポリオールとMDI、ポリオールとHDIとMDI等を用いることができる。また、希釈剤としては、酢酸ブチルの他、ウレタンシンナー等のHDIやMDIの溶解性に優れた揮発性の高い溶剤を用いることができる。
(4)第2切削工程
第1塗布工程の後、木質化粧基材10の搬送方向を短辺方向に変更して、木質化粧基材10の短辺側面対15,15に切削加工を施す第2切削工程を行う。第2切削工程は、図示しない搬送装置によって木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で短辺方向に搬送しながら行われる(図4の長辺加工時の図を参照)。
【0076】
第2切削工程では、第1切削工程と同様に、実加工工程と面取り加工工程とを行う。なお、実加工と面取り加工とは同時に行ってもよく、順に行ってもよい。第2切削工程でも、刃に対して木質化粧基材10が位置ずれしないように固定する固定治具を備えた切削加工装置が用いられる。
【0077】
第2切削工程の実加工工程では、搬送装置によって搬送される木質化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、木質化粧基材10の短辺側面対15,15の一方を凹溝部17aが形成されるように切り欠き、他方を凸条部18aが形成されるように切り欠く。このようにして、木質化粧基材10の短辺側面対15,15の一方に雌実17を形成し、他方に雄実18を形成する(図3の短辺加工時の図及び図4の短辺加工時のB-B’断面図を参照)。なお、実加工工程では、上述のような切削加工により、木質化粧基材10の短辺側面対15,15の表側端面17b,18bにおいて木質繊維板が露出するように雌実17と雄実18とが形成される。
【0078】
第2切削工程の面取り加工工程では、引き続き搬送装置によって搬送される木質化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、木質化粧基材10の化粧面13と各短辺側面15との間の各角部を斜め(又は円弧状)に切り欠く。このようにして、木質化粧基材10の化粧面13と各短辺側面15との間に面取部16を形成する(図3の短辺加工時の図及び図4の短辺加工時のB-B’断面図を参照)。なお、面取り加工工程では、上述のような切削加工により、木質化粧基材10の短辺側面対15,15の面取部16の外表面16aにおいて木質繊維板が露出するように面取部16が形成される。
【0079】
以上のように、第2切削工程においても、第1切削工程と同様に、木質化粧基材10は、化粧面13が下向きの状態で固定治具によって位置ずれしないように固定された状態で搬送されながら、下端基準で(化粧面13を基準として)切削加工が施される。そのため、木質化粧基材10には、厚みの誤差に関係なく、化粧面13側から面取部16、雌実17及び雄実18の切削加工を精度良く行うことができる。
【0080】
(5)第2塗布工程
第2切削工程の後、即ち、短辺側面対15,15に対する切削加工の後、短辺側面対15,15に浸透性塗料30を塗布して浸透させる第2塗布工程を行う。第2塗布工程は、図示しない搬送装置によって木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で短辺方向に搬送しながら、切削加工装置の固定治具で木質化粧基材10が位置ずれしないように固定した状態で行われる(図3の短辺加工時の図を参照)。
【0081】
第2塗布工程では、切削加工装置の固定治具で木質化粧基材10が位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、塗布装置を用いて木質化粧基材10の短辺側面対15,15の木質繊維板が露出する表側端面17b,18bに浸透性塗料30を塗布する(図5の上図及び図6の上図を参照)。なお、本実施形態1では、短辺側面対15,15の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも余剰の浸透性塗料30が付着するような分量の浸透性塗料30を表側端面17b,18bに塗布する。
【0082】
第2塗布工程は、例えば、短辺方向に搬送される木質化粧基材10の両側に設置された塗布ロール対を有し、各塗布ロールの外周面に浸透性塗料30を定量供給するように構成された塗布装置を用いて行う。具体的には、短辺方向に搬送される木質化粧基材10の両側において、各塗布ロールが外周面を短辺側面対15,15の表側端面17b,18bに当接させながら木質化粧基材10の搬送に伴って垂直回転軸周りに回転することにより、各塗布ロールの外周面の浸透性塗料30が表側端面17b,18bに塗布(転写)される。なお、このとき、余剰の浸透性塗料30が短辺側面対15,15の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも付着する。このようにして、第2塗布工程では、短辺側面対15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部に浸透性塗料30が塗布(転写)される。
【0083】
なお、第1塗布工程と同様に、塗布手段は、塗布ロールを有する上記塗布装置に限定されず、スポンジコーター等の公知の塗布装置を適宜用いることができる。また、塗布する浸透性塗料30は、第1塗布工程の浸透性塗料30と同様のものを用いる。
【0084】
第2塗布工程においても、低粘度の浸透性塗料30を木質化粧基材10の短辺側面対15,15の表側端面17b,18bに塗布することにより、浸透性塗料30は、瞬間的に表側端面17b,18bから内部に浸透する。浸透性塗料30が浸透した表側端面17b,18bの表層は、その後の工程で浸透性塗料30が硬化することにより、樹脂含浸層31に形成される(図5の下図及び図6の下図を参照)。
【0085】
また、第2塗布工程においても、短辺側面対15,15の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも余剰の浸透性塗料30が付着するような分量の浸透性塗料30を表側端面17b,18bに塗布する。つまり、面取部16の外表面16aの一部にも浸透性塗料30が塗布される。面取部16の外表面16aの一部に塗布された浸透性塗料30も速やかに浸透するため、外表面16aに残らない。そして、面取部16の浸透性塗料30が浸透した部分の表層も、樹脂含浸層31となる(図5の下図及び図6の下図を参照)。
【0086】
(6)加熱工程
第2塗布工程の後、即ち、短辺側面対15,15の加工処理後、木質化粧基材10を加熱して浸透性塗料30の溶剤を揮発させる加熱工程を行う。加熱手段は、特に限定されず、公知の加熱手段を用いることができる。また、加熱工程では、木質化粧基材10全体を加熱してもよく、木質化粧基材10において浸透性塗料30が浸透した四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部の表層を局所的に加熱してもよい。
【0087】
このように、加熱工程において、木質化粧基材10に浸透した浸透性塗料30の溶剤を揮発させることにより、最終製品である化粧板1に含まれる揮発性化学物質の総量を低減する。なお、加熱工程は、後述する着色層形成工程において着色層21を加熱して硬化させる硬化工程と共に行ってもよい。
【0088】
(7)着色層形成工程
加熱工程の後、木質化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aに着色塗装を施す着色工程を行う。着色工程では、例えば、ゴムロールコーターを用いることができる。着色層形成工程では、木質化粧基材10の四周の面取部16の木質繊維板が露出する外表面16aに着色塗料を塗布する着色塗料塗布工程と、着色塗料塗布工程において木質化粧基材10の化粧面13に付着した着色塗料を除去する着色塗料除去工程と、硬化工程とを行う。
【0089】
具体的には、着色塗料塗布工程では、着色塗料が定量供給されるゴムロールが、木質化粧基材10の面取部16の外表面16aに当接しながら回転軸周りに正回転(木質化粧基材10とゴムロールの当接部で木質化粧基材10の搬送方向とゴムロールの回転方向が一致する回転)する。これにより、ゴムロールの着色塗料が面取部16の外表面16aに塗布(転写)される。
【0090】
着色塗料除去工程では、ゴムロールが、木質化粧基材10の化粧面13に当接しながら回転軸周りに逆回転(木質化粧基材10とゴムロールの当接部で木質化粧基材10の搬送方向とゴムロールの回転方向が逆向きになる回転)する。これにより、木質化粧基材10の化粧面13に付着した水系の着色塗料がゴムロールに吸収され、化粧面13から除去される。
【0091】
その後、木質化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aに塗布された着色塗料を加熱することによって硬化させる硬化工程が行われる。硬化工程によって着色塗料が硬化することにより、四周の面取部16の外表面16a上に、着色層21(塗膜層)が形成される。
【0092】
(8)透明樹脂層形成工程
着色層形成工程の後、木質化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16aを一体的に覆う透明樹脂層22を形成する透明樹脂層形成工程を行う。透明樹脂層形成工程では、例えば、ロールコーターやフローコーターを用いることができる。透明樹脂層形成工程では、木質化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16aに透明塗料を塗布する透明塗料塗布工程と、透明塗料塗布工程において木質化粧基材10の化粧面13及び面取部16の外表面16aに塗布された透明塗料を硬化させる硬化工程とを行う。
【0093】
具体的には、透明塗料塗布工程では、ロールコーターを用いることにより、搬送装置によって所定方向に搬送される木質化粧基材10の化粧面13及び面取部16の外表面16aに透明塗料が塗布される。
【0094】
本実施形態1では、紫外線硬化樹脂塗料を透明塗料として用いる。そのため、硬化工程では、紫外線照射装置を用いて、木質化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16aに塗布された透明塗料に紫外線を照射する。これにより、透明塗料が硬化して、木質化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16a上に、これらの面を一体的に覆う透明樹脂層22が形成される。
【0095】
以上の工程を経過することにより、上記化粧板1が得られる。
【0096】
なお、第1及び第2塗布工程で木質化粧基材10の四周の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部に塗布されて内部に浸透した浸透性塗料30は、ポリオールとHDIとが反応することにより、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを形成する。このウレタンプレポリマーが、化粧板1の製造後、空気中の水分や木質化粧基材10に含有されている水分と反応してウレア結合を生成することにより、浸透性塗料30が硬化する。このように浸透性塗料30が硬化することにより、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部の表層は、ウレタン樹脂が含浸した防水性に優れた樹脂含浸層31となる。
【0097】
-実施形態1の効果-
上記実施形態1では、少なくとも一部(第1基材11a)が木質繊維板によって構成された木質化粧基材10の2つの側面対14,14,15,15に対し、面取部16及び表側端面17b,18bにおいて木質繊維板が露出するように切削加工が施される。木質繊維板は、合板等に比べて精密に切削加工を施すことができる。そのため、上記実施形態1によれば、第1及び第2切削工程において面取部16及び表側端面17b,18bを精密に加工することができる。
【0098】
一方、木質化粧基材の四周の表側端面17b,18bにおいて比較的吸水性が高く界面活性剤によって膨れが生じ易い木質繊維板が露出したままでは、界面活性剤を含む水で化粧板を水拭きした際に、水分と共に界面活性剤が表側端面17b,18bから吸収されて化粧板に膨れが生じる虞がある。
【0099】
これに対し、上記実施形態1では、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材10の長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15の面取部16に連続する表側端面17b,18bに湿気硬化型樹脂組成物を含む浸透性塗料を塗布して浸透させ、化粧板1の製造後に、空気中の水分や木質化粧基材10に含まれる水分によって湿気硬化型樹脂を硬化させることにより、各表側端面17b,18bの表層が防水性を有する樹脂含浸層31に形成されるようにしている。そのため、化粧板1の化粧面13を、界面活性剤を含む水で水拭きすることにより、界面活性剤を含む水が化粧板1の化粧面13から側面14,14,15,15に至っても、木質繊維板が露出する木質化粧基材10の表側端面17b,18bの表層が上記樹脂含浸層31に形成されているため、界面活性剤を含む水が表側端面17b,18bから内部に浸透しない。よって、本実施形態1によれば、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板1を製造することができる。
【0100】
また、上記実施形態1では、木質化粧基材10の2つの側面対14,14,15,15の一方の長辺側面対14,14に切削加工処理及び塗布処理を施した後、処理面を変更し、他方の短辺側面対15,15に切削加工処理及び塗布処理を施すこととした。そのため、木質化粧基材10の搬送方向の変更が1回で済むため、化粧板1の製造設備の大型化を招くことなく化粧板1を製造することができる。
【0101】
ところで、第1及び第2切削工程において面取り加工や実加工を精度良く行うには、刃に対して木質化粧基材10が位置ずれしないように固定治具等でしっかりと押さえる必要がある。また、第1及び第2塗布工程において木質化粧基材10の面取部16に連続する端面に精度良く塗布処理を施す場合にも、塗布装置に対して木質化粧基材が位置ずれしないように固定治具等でしっかりと押さえる必要がある。
【0102】
本実施形態1では、1つの側面対(長辺側面対14,14又は短辺側面対15,15)に対し、切削加工処理と塗布処理とを連続して行う(第1切削工程と第1塗布工程とを連続して行い、第2切削工程と第2塗布工程とを連続して行う)こととしている。そのため、切削工程と塗布処理工程とで別々に固定治具を用意する必要がなく、同一の治具を用いて木質化粧基材10をしっかりと押さえて切削加工処理と塗布処理とを精度良く行うことができる。よって、化粧板1の製造設備の小型化を図ることができる。
【0103】
また、従来の化粧板の製造方法のように、木質化粧基材の側面に保護樹脂を塗布して該側面上に保護樹脂膜を形成する場合、上述のように、1つの側面対に対して切削加工処理と塗布処理とを連続して行うようにすると、一方の側面対に対する塗布処理の後、他方の側面対の切削加工処理を行う際に、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に保護樹脂が付着し、切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がある。
【0104】
これに対し、本実施形態1では、木質化粧基材10の側面14,15の該当部分に保護樹脂を塗布して保護樹脂膜を形成するのではなく、湿気硬化型樹脂組成物を溶剤で希釈した浸透性塗料30を塗布して内部に浸透させることにより、木質化粧基材10の側面14,15の内部に樹脂含浸層31を形成することとしている。また、第1塗布工程で塗布された浸透性塗料30が浸透した後に、第2切削工程を行うこととしているため、従来の製造方法のように、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に塗料が付着して切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がない。
【0105】
以上のように、本実施形態1によれば、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板1を製造設備の大型化を招くことなく製造可能な製造方法を提供することができる。
【0106】
また、本実施形態1では、浸透性塗料30が、ポリオールを主剤、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を硬化剤とする湿気硬化型樹脂組成物を含んでいる。そのため、木質化粧基材10に浸透した浸透性塗料30の溶剤の揮発後、主剤と硬化剤とが反応してなるウレタンプレポリマーが空気中の水分や木質化粧基材に含有されている水分と反応してウレア結合を生成することにより、浸透性塗料30が硬化する。これにより、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15の面取部16に連続する表側端面17b,18bの表層は、ウレタン樹脂が含浸した防水性に優れた樹脂含浸層31となる。よって、本実施形態1によれば、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板1を容易に製造することができる。
【0107】
また、本実施形態1では、上記湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈して、25℃での粘度が60mPa・s以下になるように調製した浸透性塗料30を用いている。このような浸透性塗料30は、浸透速度が速く、瞬時に木質化粧基材10に浸透する。そのため、第1塗布工程後、浸透性塗料30の浸透を待つことなく、すぐに第2切削工程を行うことができる。つまり、化粧板1の製造ラインに、第1塗布工程後、塗料を浸透させる時間を稼ぐために加工を施すことなく木質化粧基材10を単に搬送する区間を設ける必要がない。従って、本実施形態1によれば、第1及び第2塗布工程を加えても、化粧板1の製造ラインの長尺化を抑制することができるため、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板1を製造設備の大型化を招くことなく製造することができる。
【0108】
ところで、水拭き時に界面活性剤を含む水が木質化粧基材10の内部に浸透して膨れるのを抑制する観点からは、木質化粧基材10の木質繊維板基材が露出する面取部16の外表面16a全体に浸透性塗料30を塗布して面取部16全体の表層を、防水性を有する樹脂含浸層31に形成することが好ましい。
【0109】
しかしながら、木質化粧基材10の面取部16の外表面16a全体にロールコーターやスポンジコーター等で浸透性塗料を塗布しようとすると、木質化粧基材10の化粧面13にも塗料が付着して化粧面13を汚してしまう虞がある。
【0110】
これに対し、本実施形態1では、第1及び第2塗布工程において、化粧面13に浸透性塗料30が付着しないように、長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部に浸透性塗料30を塗布し、浸透性塗料30が化粧面13に至る前に完全に内部に浸透するようにしている。そのため、木質化粧基材10の化粧面13を汚すことなく木質化粧基材10の面取部16の外表面16aの表層も樹脂含浸層31に形成することができる。
【0111】
なお、本実施形態1では、木質化粧基材10の面取部16の外表面16aに浸透性の低い塗料を塗布して外表面16a上に保護樹脂膜を形成するのではなく、長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15の各面取部16に連続する表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部に浸透性塗料30を塗布して面取部16の外表面16aまで浸透させることにより、面取部16の表層(内部)にも樹脂含浸層31を形成することとしている。塗布された浸透性塗料30は、表側端面17b,18bはもとより、面取部16においても完全に浸透しているので、第1塗布工程後に、第2切削工程を行うこととしても、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に塗料が付着して切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がない。また、木質化粧基材10の面取部16の外表面16aにロールコーターやスポンジコーター等で浸透性塗料30を塗布しないため、浸透性塗料30が化粧面13まで食み出ることがなく、木質化粧基材10の化粧面13を汚すことがない。さらに、木質化粧基材10の面取部16の外表面16a上に保護樹脂膜を形成するのではなく、面取部16の表層を浸透性塗料30が完全に含浸した樹脂含浸層31に形成しているため、第1及び第2塗布工程の後に行われる着色層形成工程において、木質化粧基材10の面取部16の外表面16a上に着色塗膜の密着性を低下させることなく、容易に且つきれいに着色層21を形成することができる。
【0112】
また、本実施形態1では、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15に切削加工を施し、表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の一部に浸透性塗料30を塗布した後に、浸透性塗料30の溶剤を加熱することによって揮発させることとしている。従って、本実施形態1によれば、浸透性塗料30に溶剤が含まれていても、加熱により溶剤が揮発するため、最終製品である化粧板1に含まれる揮発性化学物質の総量を著しく増大させることなく化粧板1を製造することができる。
【0113】
また、本実施形態1では、浸透性塗料30の溶剤を加熱することによって揮発させた後に、木質化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aに、着色塗装を施して着色層21を形成することとしている。このような製造方法によれば、露出面に着色塗装が施された意匠性に優れた化粧板1を製造することができる。
【0114】
また、本実施形態1では、着色工程の後に、木質化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16を少なくとも一体的に覆う透明樹脂層22を形成することとしている。このような製造方法によれば、より防水性に優れ、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板1を製造することができる。
【0115】
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、木質化粧基材10の長辺側面対14,14を先に切削加工処理及び塗布処理が施される第1側面対、短辺側面対15,15を後で切削加工処理及び塗布処理が施される第2側面対としていた。しかしながら、本発明に係る木質化粧基材の第1側面対と第2側面対は、上記実施形態1と逆であってもよい。即ち、木質化粧基材10の短辺側面対15,15を先に切削加工処理及び塗布処理が施される第1側面対、長辺側面対14,14を後で切削加工処理及び塗布処理が施される第2側面対としてもよい。
【0116】
また、上記実施形態1では、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の一部に浸透性塗料30を塗布して浸透させていたが、本発明の実施形態はこれに限られない。第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18bのみに浸透性塗料30を塗布して浸透させることとしてもよく、また、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15の外表面全体に浸透性塗料30を塗布して浸透させてもよい。なお、いずれの場合も、面取部16の外表面16aに浸透性塗料30を塗布する場合には、浸透性塗料30が木質化粧基材10の化粧面13に付着しないように浸透性塗料30の粘度、塗布量を調整して塗布する。
【0117】
また、上記実施形態1では、第1及び第2塗布工程では、木質化粧基材10の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の一部に浸透性塗料30を塗布して浸透させる塗布浸透処理を1回のみ行うこととしていたが、本発明の実施形態はこれに限られない。本発明に係る化粧板の製造方法は、第1及び第2塗布工程において、塗布浸透処理を複数回ずつ行うものであってもよい。例えば、木質化粧基材10の搬送方向に順に並ぶ複数の塗布器具(塗布ロール対等)を備えた塗布装置を用いることにより、塗布浸透処理を複数回連続して行うことができる。なお、一の塗布器具によって塗布された浸透性塗料30が完全に浸透した後に(浸透性塗料30が表側端面17b,18b上に残っていない状態で)、次の塗布器具によって浸透性塗料30が塗布されるように、所定の間隔を空けて複数の塗布器具を配置する。
【0118】
ところで、第1及び第2塗布工程において、希釈剤で希釈した低粘度の浸透性塗料30を一度に多量に塗布すると、浸透性塗料30が木質化粧基材10の内部深くまで浸透してしまい、表側端面17b,18b及び面取部16の外表面16aの表層に樹脂(シール剤)を集中させることができない。また、低粘度の浸透性塗料30を一度に多量に塗布すると、塗布された浸透性塗料30が面取部16を超えて化粧面13に食み出し、木質化粧基材10の化粧面13を汚してしまう虞がある。
【0119】
これに対し、上述のように、第1及び第2塗布工程において、1度に多量に浸透性塗料30を塗布するのではなく、複数回に分けて浸透性塗料30を塗布浸透させることとしている。そのため、上記構成によれば、木質化粧基材10の化粧面13を汚すことなく、木質化粧基材10の面取部16に連続する表側端面17b,18b及び面取部16の表層に樹脂(シール剤)を集中させることができる。よって、より防水性に優れた化粧板1を製造することができる。
【0120】
また、上記実施形態1では、第1及び第2塗布工程において塗布浸透処理を1度しか行わないため、防水性の観点からは、25℃での粘度が40~60mPa・s程度に希釈された浸透性塗料30を用いることが好ましいが、塗布浸透処理を複数回行うのであれば、25℃での粘度が20~40mPa・s程度に希釈した浸透性塗料30を用いても、25℃での粘度が40~60mPa・sの1度塗りと同等の防水性を有する樹脂含浸層31を形成することが可能である。
【0121】
また、上記実施形態1では、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材10の化粧面13を下向きにした状態で長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15の表側端面17b,18bと面取部16の外表面16aの一部に浸透性塗料30を塗布することとしている。そのため、表側端面17b,18b及び面取部16の外表面16aの一部に塗布された浸透性塗料30は、面取部16の外表面16aにおいて下方へ垂れる。この作用を利用して、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材10の表側端面17b,18b及び面取部16の一部に塗布された浸透性塗料30が、面取部16の外表面16a全体に濡れ拡がる一方、化粧面13に至る前に内部に浸透するように塗布量及び粘度を調整して浸透性塗料30を塗布することとしてもよい。そのような場合、木質化粧基材10の表側端面17b,18bの表層だけでなく、面取部16全体の表層も樹脂含浸層31に形成される。よって、上記構成によれば、防水性により優れ、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れがより生じ難い化粧板1を製造することができる。
【0122】
また、上記実施形態1では、着色層形成工程と透明樹脂層形成工程とを行って着色層21と透明樹脂層22とを形成することとしていたが、着色層形成工程は省略して着色層21を形成しないこととしてもよい。
【0123】
また、上記実施形態1では、着色層形成工程において、木質化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aのみに着色層21を形成することとしていたが、着色層21は、化粧面13と面取部16の外表面16aの両方に形成してもよい。
【0124】
また、上記実施形態1では、透明樹脂層形成工程において、木質化粧基材10の化粧面13及び面取部16を一体的に覆うように透明樹脂層22を形成していたが、透明樹脂層22は、化粧面13及び面取部16だけでなく表側端面17b,18bの面取部16に連続する一部まで一体的に覆うものであってもよい。
【0125】
また、上記実施形態1では、化粧板1を床材として用いることとしていたが、化粧板1の用途は床材に限られない。その他、例えば、壁材等に用いることも勿論可能である。
【実施例0126】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0127】
まず、以下の手順で浸透性塗料I~Vを精製した。なお、粘度の測定は、対象溶液をビーカーに入れ、ビスコテスターの3号カップ及び3号ローターを使用して測定した。
・浸透性塗料I(低粘度)
ポリオールとHDIを重量比1:1で配合した樹脂液に、25℃での粘度が40mPa・sとなるまで酢酸ブチル(希釈剤)を添加して希釈した。
・浸透性塗料II(低粘度)
ポリオールとHDIを重量比1:2で配合した樹脂液に、25℃での粘度が60mPa・sとなるまで酢酸ブチル(希釈剤)を添加して希釈した。
・浸透性塗料III(低粘度)
HDIのみからなる樹脂液に、25℃での粘度が40mPa・sとなるまで酢酸ブチル(希釈剤)を添加して希釈した。
・浸透性塗料IV(中粘度)
ポリオールとHDIを重量比1:1で配合した樹脂液に、25℃での粘度が80mPa・sとなるまで酢酸ブチル(希釈剤)を添加して希釈した。
・浸透性塗料V(高粘度)
ポリオールとHDIを重量比1:1で配合した樹脂液に、25℃での粘度が500mPa・sとなるまで酢酸ブチル(希釈剤)を添加して希釈した。
【0128】
次に、950mm×1850mmの大きさで厚さ11.7mmの矩形の木質基材11(実施形態1と同様、木質繊維板からなる第1基材11aと、合板からなる第2基材11bとで構成)の表面に水性ビニル系接着剤で0.3mmの厚みのオレフィン樹脂製シートからなる表面化粧材12を貼着して木質化粧基材10を形成し、これを155mm×920mmの大きさにカットすることにより、複数のカット片を得た。
【0129】
複数のカット片に対し、異なる処理(実施例1~4、比較例1~4)を行い、その過程を観察すると共に、実施例1~4及び比較例1,4において試験体1~6を得た。また、試験体1~6に対し、以下の手順で耐薬品性試験を行い、結果を観察した。
【0130】
(耐薬品性試験)
同種の試験体を、雄実と雌実を嵌合させることによって継ぎ合わせ、2cm程度の大きさに丸めた脱脂綿を継ぎ目に置き、該脱脂綿に界面活性剤を含む洗剤を1cc滴下し、乾燥しないようにプリンカップを被せて6時間放置した。6時間経過後、プリンカップと脱脂綿を取り除き、さらに24時間放置した。24時間経過後、化粧面の意匠性を観察した。
【0131】
なお、上記洗剤として、酸性の洗剤である大日本除虫菊株式会社製のサンポール(登録商標)と、アルカリ性の洗剤である花王株式会社製のマイペット(登録商標)とをそれぞれ用いた。以下では、いずれの洗剤を用いても問題が無かった場合、試験結果は「良好」とし、いずれかで問題があった場合、試験結果は「不良」として説明する。
【0132】
(実施例1)
実施例1では、カット片の化粧面が下向きの状態でカット片の長辺側面対に本実加工を施す(一方に雌実、他方に雄実を形成する)と共に、カット片の化粧面と各長辺側面との間に面取部を形成した(第1切削工程)後、カット片の長辺側面対の面取部に連続する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の一部に浸透性塗料Iを塗布して内部に浸透させた(第1塗布工程)。なお、第1切削工程では、木質繊維板が表側端面及び面取部の外表面に露出するように本実加工と面取り加工とを行い、第1塗布工程では、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の一部に浸透性塗料Iを塗布して浸透させる塗布浸透処理を1回だけ行った。
【0133】
次に、カット片の短辺側面対に本実加工を施すと共に、カット片の化粧面と各短辺側面との間に面取部を形成した(第2切削工程)後、カット片の短辺側面対の面取部に連続する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の一部に浸透性塗料Iを塗布して内部に浸透させた(第2塗布工程)。なお、第2切削工程では、木質繊維板が表側端面及び面取部に露出するように本実加工と面取り加工とを行い、第2塗布工程では、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の一部に浸透性塗料Iを塗布して浸透させる塗布浸透処理を1回だけ行った。
【0134】
次に、カット片の面取部に水性のアクリル系樹脂に顔料粉末を均一分散させた水性着色塗料をゴムロールコーターで塗布し(着色塗料塗布工程)、カット片の化粧面に付着した着色塗料を逆回転するゴムロールコーターで除去し(着色塗料除去工程)、カット片の木質繊維板が露出する面取部に着色層を形成した(着色層形成工程)。
【0135】
次に、カット片の化粧面及び面取部の外表面上に、アクリル系透明樹脂で透明樹脂層を形成し(透明樹脂層形成工程)、試験体1を得た。
【0136】
試験体1に対し、耐薬品性試験を行った。
【0137】
実施例1では、低粘度の浸透性塗料Iを用いたため、第1及び第2塗布工程において、浸透性塗料Iは、塗布した瞬間(例えば、0.5秒以内)に表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透し、表側端面及び面取部の外表面に残存しなかった。また、浸透性塗料Iが表側端面及び面取部の外表面に残存していないため、第1塗布工程後の第2切削工程において、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着することがなく、第2切削工程を円滑に行うことができた。また、第1及び第2塗布工程では、面取部の外表面に塗布された浸透性塗料Iが完全に浸透したため、面取部の外表面上に樹脂層が形成されず、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。また、実施例1では、第1及び第2塗布工程において、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料Iを塗布して浸透させることにより、表側端面及び面取部の一部の表層に樹脂含浸層が形成され、着色工程において、木質繊維板が露出する面取部に着色層が形成され、さらに透明樹脂層形成工程により、カット片の化粧面及び面取部の外表面上に、アクリル系透明樹脂で透明樹脂層が形成されたため、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透せず、試験体1(特に、木質繊維板で形成された表面側の第1基材)に膨れが生じなかった。つまり、耐薬品試験の結果は良好であった。
【0138】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で用いた浸透性塗料Iの代わりに浸透性塗料IIを用いる他は、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程、第2塗布工程、着色層形成工程、透明樹脂層形成工程を順に行い、試験体2を得た。そして、試験体2に対し、耐薬品性試験を行った。
【0139】
実施例2においても、低粘度の浸透性塗料IIを用いたため、第1及び第2塗布工程において、浸透性塗料IIは、塗布した瞬間に表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透し、表側端面及び面取部の外表面に残存しなかった。また、浸透性塗料IIが表側端面及び面取部の外表面に残存していないため、第1塗布工程後の第2切削工程において、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着することがなく、第2切削工程を円滑に行うことができた。また、第1及び第2塗布工程では、面取部の外表面に塗布された浸透性塗料IIが完全に浸透したため、面取部の外表面上に樹脂層が形成されず、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。また、実施例2においても、第1及び第2塗布工程において、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料IIを塗布して浸透させることにより、表側端面及び面取部の表層に樹脂含浸層が形成され、着色工程において、木質繊維板が露出する面取部に着色層が形成され、さらに透明樹脂層形成工程により、カット片の化粧面及び面取部の外表面上に、アクリル系透明樹脂で透明樹脂層が形成されたため、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透せず、試験体2(特に、木質繊維板で形成された表面側の第1基材)に膨れが生じなかった。つまり、耐薬品試験の結果は良好であった。
【0140】
(実施例3)
実施例3は、実施例1では、第1及び第2塗布工程において1回しか行わなかった塗布浸透処理を、2回ずつ行う(1回目の塗布後、1秒後に2回目の塗布を行う)こととした他は、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程、第2塗布工程、着色層形成工程、透明樹脂層形成工程を順に行い、試験体3を得た。そして、試験体3に対し、耐薬品性試験を行った。
【0141】
実施例3においても、低粘度の浸透性塗料Iを用いたため、第1及び第2塗布工程において、浸透性塗料Iは、塗布した瞬間に表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透し、表側端面及び面取部の外表面に残存しなかった。また、浸透性塗料Iが表側端面及び面取部の外表面に残存していないため、第1塗布工程後の第2切削工程において、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着することがなく、第2切削工程を円滑に行うことができた。また、第1及び第2塗布工程では、面取部の外表面に塗布された浸透性塗料Iが完全に浸透したため、面取部の外表面上に樹脂層が形成されず、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。また、実施例3においても、第1及び第2塗布工程において、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料Iを塗布して浸透させることにより、表側端面及び面取部の表層に樹脂含浸層が形成され、着色工程において、木質繊維板が露出する面取部に着色層が形成され、さらに透明樹脂層形成工程により、カット片の化粧面及び面取部の外表面上に、アクリル系透明樹脂で透明樹脂層が形成されたため、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透せず、試験体3(特に、MDFで形成された表面側の第1基材)に膨れが生じなかった。つまり、耐薬品試験の結果は良好であった。
【0142】
(実施例4)
実施例4は、第1及び第2塗布工程において、カット片の各表側端面に対し、面取部の外表面が広範囲に濡れる程度の多めの量の浸透性塗料Iを塗布する他は、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程、第2塗布工程、着色層形成工程、透明樹脂層形成工程を順に行い、試験体4を得た。そして、試験体4に対し、耐薬品性試験を行った。
【0143】
実施例4においても、低粘度の浸透性塗料Iを用いたため、第1及び第2塗布工程において、多めに塗った場合においても、浸透性塗料Iは、塗布した瞬間に表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透し、表側端面及び面取部の外表面に残存しなかった。また、実施例1に比べて、浸透性塗料Iを多めに塗布したため、浸透性塗料Iがカット片の面取部の外表面を化粧面側へ垂れながら浸透し、カット片の面取部全体が濡れ色になると共に、表面化粧材との境界まで表面化粧材を汚染することなく、浸透性塗料Iを塗布浸透させることができた。また、浸透性塗料Iが表側端面及び面取部の外表面に残存していないため、第1塗布工程後の第2切削工程において、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着することがなく、第2切削工程を円滑に行うことができた。また、第1及び第2塗布工程では、面取部において完全に浸透するように浸透性塗料Iを塗布したため、面取部の外表面上に樹脂層が形成されず、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。また、実施例4では、第1及び第2塗布工程において、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料Iを塗布して表面化粧材との境界まで浸透させることにより、表側端面及び面取部全体の表層に樹脂含浸層が形成され、また、着色工程において、木質繊維板が露出する面取部に着色層が形成され、さらに透明樹脂層形成工程により、カット片の化粧面及び面取部の外表面上に、アクリル系透明樹脂で透明樹脂層が形成されたため、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透せず、試験体4(特に、木質繊維板で形成された表面側の第1基材)に膨れが生じなかった。つまり、耐薬品試験の結果は良好であった。
【0144】
(比較例1)
比較例1では、実施例1で行った第1及び第2塗布工程を行わず、実施例1と同様の第1切削工程、第2切削工程、着色層形成工程、透明樹脂層形成工程を順に行い、試験体5を得た。そして、試験体5に対し、耐薬品性試験を行った。
【0145】
比較例1では、第1及び第2塗布工程を行わなかったため、第2切削工程を円滑に行うことができ、また、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。また、比較例1では、第1及び第2塗布工程を行わなかったため、木質繊維板が露出する表側端面の表層に樹脂含浸層が形成されず、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透し、試験体5(特に、MDFで形成された表面側の第1基材)に膨れが生じた。つまり、耐薬品試験の結果は不良であった。
【0146】
(比較例2)
比較例2では、実施例1で用いた浸透性塗料Iの代わりに高粘度の浸透性塗料Vを用いて、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程を行ったところ、第1塗布工程において、浸透性塗料Vは、粘度が高いため、表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透せず、表側端面及び面取部の外表面に残存したままであった。また、第1塗布工程後、浸透性塗料Vが表側端面及び面取部の外表面に残存したまま、第2切削工程を行ったため、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着し、第2切削工程を円滑に行うことができなかった。
【0147】
(比較例3)
比較例3では、実施例1で用いた浸透性塗料Iの代わりに中粘度の浸透性塗料IVを用いて、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程を行ったところ、第1塗布工程において、浸透性塗料IVは、浸透性塗料Iに比べて粘度が高いため、表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に速やかに浸透せず、5秒程度の時間を要した。また、第1塗布工程において、浸透性塗料IVが速やかに浸透せず、表側端面及び面取部の外表面に残存している間に、切削加工で生じた屑が付着し、第2切削工程を円滑に行うことができなかった。
【0148】
(比較例4)
比較例4では、実施例1で用いた浸透性塗料Iの代わりに浸透性塗料IIIを用いて、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程、第2塗布工程、着色層形成工程、透明樹脂層形成工程を順に行い、試験体6を得た。そして、試験体6に対し、耐薬品性試験を行った。
【0149】
比較例4においても、低粘度の浸透性塗料IIIを用いたため、第1及び第2塗布工程において、浸透性塗料IIIは、塗布した瞬間に表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透し、表側端面及び面取部の外表面に残存しなかった。また、浸透性塗料IIIが表側端面及び面取部の外表面に残存していないため、第1塗布工程後の第2切削工程において、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着することがなく、第2切削工程を円滑に行うことができた。また、第1及び第2塗布工程では、面取部の外表面に塗布された浸透性塗料IIIが完全に浸透したため、面取部の外表面上に樹脂層が形成されず、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。一方、比較例4では、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透し、試験体6(特に、木質繊維板で形成された表面側の第1基材)に膨れが生じた。つまり、耐薬品試験の結果は不良であった。
【0150】
以上のような実施例1~4と比較例1~4により、第1及び第2塗布工程を行うことが好ましいこと、第1及び第2塗布工程においてHDIだけでなくポリオールを湿気硬化型樹脂組成物として含む低濃度(25℃での粘度が60mPa・s以下)の浸透性塗料I又はIIを用いることが好ましいこと、面取部の外表面に浸透性塗料が付着しないように第1及び第2塗布工程を行うことが好ましいこと等がわかる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、化粧板の製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0152】
1 化粧板
10 木質化粧基材
13 表面
14 長辺側面
15 短辺側面
16 面取部
17 雌実(実部)
17b 表側端面(端面)
18 雄実(実部)
18b 表側端面(端面)
21 着色層
22 透明樹脂層
30 浸透性塗料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木質基材の表面に化粧シートや突板等の化粧材を積層した化粧板が、建物の壁面や床面等に用いられている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、木質化粧基材の四周に実加工と面取り加工とを施した後、表面全体に透明の塗料を塗布して透明塗膜層を形成することにより、表面に化粧が施された床板用化粧板を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-120024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、化粧板の木質化粧基材として、比較的吸水性の高い木質繊維板が用いられることがある。木質繊維板は、中性洗剤等の界面活性剤を含む水を吸収すると膨れるという性質を有する。そのため、木質化粧基材として木質繊維板を用いた化粧板に対し、化粧面の汚れを取るために中性洗剤等の界面活性剤を含む水で化粧面を水拭きすると、界面活性剤が水と共に透明塗膜層で覆われていない側面から内部に浸透し、化粧板に膨れが生じる虞があった。
【0006】
そこで、従来、木質化粧基材の側面に防水性を有する保護樹脂を塗布して保護樹脂膜を形成する技術が提案されている。
【0007】
しかしながら、従来の化粧板の製造方法では、木質化粧基材の四周側面に切削加工(面取り加工や実加工)を施した後に、四周側面に保護樹脂を塗布していた。通常、木質化粧基材の側面の処理は、長辺側面と短辺側面とで別々に行われる。具体的には、例えば、切削工程は、木質化粧基材を長辺方向に搬送しながら、長辺側面に切削加工処理を施した後、搬送装置による搬送方向を短辺方向に変更し、短辺側面に切削加工処理を施すことによって行われる。そのため、塗布工程を手作業で行うのではなく、切削工程と同様に自動化する場合、従来の化粧板の製造方法では、切削工程と塗布工程とでそれぞれ処理面を変更する度に、木質化粧基材の搬送方向を変更する必要があり、製造設備の大型化を招くという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造設備の大型化を招くことなく製造可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、木質化粧基材の互いに対向する2つの側面対のうちの一方の第1側面対に切削加工を施した後、他方の第2側面対に切削加工を施す前に、第1側面対の面取部に連続する端面に、湿気硬化型樹脂を溶剤で希釈した浸透性塗料を塗布すると共に、第2側面対に切削加工を施す前に、塗布した浸透性塗料を内部に浸透させるようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、化粧加工が施された化粧面を有する化粧板の製造方法であって、少なくとも一部が木質繊維板によって構成されて化粧加工が施された化粧面を有する矩形板状の木質化粧基材の上記化粧面を挟むように対向する2つの側面対の一方の第1側面対に、上記化粧面に連続する面取部と該面取部に連続する実部とを、切削によって少なくとも上記面取部に連続する端面において上記木質繊維板が露出するように形成する第1切削工程と、上記第1側面対の上記端面に、湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈した浸透性塗料を塗布して浸透させる第1塗布工程と、上記第1塗布工程において上記端面に塗布された上記浸透性塗料が内部に浸透した後、硬化する前に、上記2つの側面対の他方の第2側面対に、上記化粧面に連続する面取部と該面取部に連続する実部とを、切削によって少なくとも上記面取部に連続する端面において上記木質繊維板が露出するように形成する第2切削工程と、上記第2側面対の上記端面に、上記浸透性塗料を塗布して内部に浸透させる第2塗布工程とを備え、上記第1切削工程と上記第1塗布工程とは、上記第1切削工程の固定治具を用いて連続してなされ、上記第2切削工程と上記第2塗布工程とは、上記第2切削工程の固定治具を用いて連続してなされることを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、少なくとも一部が木質繊維板によって構成された木質化粧基材の2つの側面対に対し、少なくとも面取部に連続する端面において木質繊維板が露出するように切削加工が施される。木質繊維板は、合板等に比べて精密に切削加工を施すことができる。そのため、第1の発明によれば、第1及び第2切削工程において少なくとも面取部に連続する端面を精密に加工することができる。
【0012】
一方、木質化粧基材の四周の上記端面において比較的吸水性が高く界面活性剤によって膨れが生じ易い木質繊維板が露出したままでは、界面活性剤を含む水で化粧板を水拭きした際に、水分と共に界面活性剤が上記端面から吸収されて化粧板に膨れが生じる虞がある。
【0013】
これに対し、第1の発明では、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材の四周の面取部に連続する端面に湿気硬化型樹脂組成物を含む浸透性塗料を塗布して浸透させ、化粧板の製造後に、空気中の水分や木質化粧基材に含まれる水分によって湿気硬化型樹脂を硬化させることにより、上記各端面の表層が防水性を有する樹脂含浸層に形成されるようにしている。そのため、化粧板の化粧面を、界面活性剤を含む水で水拭きすることにより、界面活性剤を含む水が化粧板の化粧面から側面に至っても、木質繊維板が露出する木質化粧基材の端面の表層が上記樹脂含浸層に形成されているため、界面活性剤を含む水が端面から内部に浸透しない。よって、第1の発明によれば、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造することができる。
【0014】
また、第1の発明では、木質化粧基材の2つの側面対の一方の第1側面対に切削加工処理及び塗布処理を施した後、処理面を変更し、他方の第2側面対に切削加工処理塗布処理を施すこととした。そのため、木質化粧基材の搬送方向の変更が1回で済むため、化粧板の製造設備の大型化を招くことなく化粧板を製造することができる。
【0015】
ところで、面取り加工や実加工を精度良く行うには、刃に対して木質化粧基材が位置ずれしないように固定治具等でしっかりと押さえる必要がある。また、木質化粧基材の面取部に連続する端面に精度良く塗布処理を施す場合にも、塗布装置に対して木質化粧基材が位置ずれしないように固定治具等でしっかりと押さえる必要がある。
【0016】
第1の発明では、1つの側面対に対し、切削加工処理と塗布処理とを連続して行うこととしている。そのため、切削工程と塗布処理工程とで別々に固定治具を用意する必要がなく、同一の治具を用いて木質化粧基材をしっかりと押さえて切削加工処理と塗布処理とを精度良く行うことができる。よって、化粧板の製造設備の小型化を図ることができる。
【0017】
また、従来の化粧板の製造方法のように、木質化粧基材の側面に保護樹脂を塗布して該側面上に保護樹脂膜を形成する場合、上述のように、1つの側面対に対して切削加工処理と塗布処理とを連続して行うようにすると、一方の側面対に対する塗布処理の後、他方の側面対の切削加工処理を行う際に、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に保護樹脂が付着し、切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がある。
【0018】
これに対し、第1の発明では、木質化粧基材の側面の該当部分に保護樹脂を塗布して保護樹脂膜を形成するのではなく、湿気硬化型樹脂組成物を溶剤で希釈した浸透性塗料を塗布して内部に浸透させることにより、木質化粧基材の側面の内部に樹脂含浸層を形成することとしている。また、第1塗布工程で塗布された浸透性塗料が浸透した後に、第2切削工程を行うこととしているため、従来の製造方法のように、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に塗料が付着して切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がない。
【0019】
以上のように、第1の発明によれば、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造設備の大型化を招くことなく製造可能な製造方法を提供することができる。
【0020】
第2の発明は、第1の発明において、上記湿気硬化型樹脂組成物は、ポリオールを主剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートの少なくとも一方を硬化剤として含むものであり、上記浸透性塗料は、25℃での粘度が60mPa・s以下になるように、上記湿気硬化型樹脂組成物を上記希釈剤で希釈したものであることを特徴とするものである。
【0021】
第2の発明では、浸透性塗料が、ポリオールを主剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートの少なくとも一方を硬化剤とする湿気硬化型樹脂組成物を含んでいる。そのため、木質化粧基材に浸透した浸透性塗料の溶剤の揮発後、主剤と硬化剤とが反応してなるウレタンプレポリマーが空気中の水分や木質化粧基材に含有されている水分と反応してウレア結合を生成することにより、浸透性塗料が硬化する。これにより、木質化粧基材の四周側面の面取部に連続する端面の表層は、ウレタン樹脂が含浸した防水性に優れた樹脂含浸層となる。よって、第2の発明によれば、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を容易に製造することができる。
【0022】
また、第2の発明では、上記湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈して、25℃での粘度が60mPa・s以下になるように調製した浸透性塗料を用いている。このような浸透性塗料は、浸透速度が速く、瞬時に木質化粧基材に浸透する。そのため、第1塗布工程後、浸透性塗料の浸透を待つことなく、すぐに第2切削工程を行うことができる。つまり、化粧板の製造ラインに、第1塗布工程後、塗料を浸透させる時間を稼ぐために加工を施すことなく木質化粧基材を単に搬送する区間を設ける必要がない。従って、第2の発明によれば、第1及び第2塗布工程を加えても、化粧板の製造ラインの長尺化を抑制することができるため、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造設備の大型化を招くことなく製造することができる。
【0023】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記第1塗布工程では、上記化粧面に上記浸透性塗料が付着しないように、上記浸透性塗料を上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布し、上記第2塗布工程では、上記化粧面に上記浸透性塗料が付着しないように、上記浸透性塗料を上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布することを特徴とするものである。
【0024】
ところで、水拭き時に界面活性剤を含む水が木質化粧基材の内部に浸透して膨れるのを抑制する観点からは、木質化粧基材の面取部の外表面全体に浸透性塗料を塗布して面取部全体の表層を、防水性を有する樹脂含浸層に形成することが好ましい。
【0025】
しかしながら、木質化粧基材の面取部の外表面全体にロールコーターやスポンジコーター等で浸透性塗料を塗布しようとすると、木質化粧基材の化粧面にも塗料が付着して化粧面を汚してしまう虞がある。
【0026】
これに対し、第3の発明では、化粧面に浸透性塗料が付着しないように、第1及び第2側面対の各面取部に連続する端面と該端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料を塗布し、浸透性塗料が化粧面に至る前に完全に内部に浸透するようにしている。そのため、木質化粧基材の化粧面を汚すことなく木質化粧基材の面取部の表層も樹脂含浸層に形成することができる。
【0027】
なお、第3の発明では、木質化粧基材の面取部の外表面に浸透性の低い塗料を塗布して外表面上に保護樹脂膜を形成するのではなく、第1及び第2側面対の面取部に連続する端面及び該端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料を塗布して浸透させることにより、面取部の表層(内部)にも樹脂含浸層を形成することとしている。塗布された浸透性塗料は、端面はもとより、面取部においても完全に浸透しているので、第1塗布工程後に、第2切削工程を行うこととしても、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に塗料が付着して切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がない。また、木質化粧基材の面取部の外表面にロールコーターやスポンジコーター等で浸透性塗料を塗布しないため、浸透性塗料が化粧面まで食み出ることがなく、木質化粧基材の化粧面を汚すことがない。さらに、木質化粧基材の面取部の外表面上に着色塗膜を形成する場合、面取部の外表面上に保護樹脂膜を形成するのではなく、面取部の表層を浸透性塗料が完全に含浸した樹脂含浸層に形成しているため、着色塗膜の密着性を低下させることなく、容易に且つきれいに着色塗膜を形成することができる。
【0028】
第4の発明は、第3の発明において、上記第1塗布工程では、上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布された上記浸透性塗料が上記面取部の外表面全体に濡れ拡がりながら内部に浸透するように、上記化粧面を下向きにした状態で上記浸透性塗料を上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布し、上記第2塗布工程では、上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布された上記浸透性塗料が上記面取部の外表面全体に濡れ拡がりながら内部に浸透するように、上記化粧面を下向きにした状態で上記浸透性塗料を上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布することを特徴とするものである。
【0029】
第4の発明では、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材の化粧面を下向きにした状態で第1及び第2側面対の各面取部に連続する端面と該端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料を塗布することとしている。そのため、上記端面及び該端面に連続する面取部の外表面の一部に塗布された浸透性塗料は、面取部の外表面において下方へ垂れて面取部の外表面全体に濡れ拡がる一方、化粧面に至る前に内部に浸透することとなる。これにより、第4の発明では、木質化粧基材の第1及び第2側面対の各端面の表層だけでなく、面取部の表層も樹脂含浸層に形成することができる。よって、第4の発明によれば、防水性により優れ、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れがより生じ難い化粧板を製造することができる。
【0030】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、上記第1及び第2塗布工程では、上記各端面及び該各端面に連続する上記面取部の外表面の一部に上記浸透性塗料を塗布して浸透させる塗布浸透処理を複数回ずつ行うことを特徴とするものである。
【0031】
ところで、第1及び第2塗布工程において、希釈剤で希釈した低粘度の浸透性塗料を一度に多量に塗布すると、浸透性塗料が木質化粧基材の内部深くまで浸透してしまい、端面及び面取部の表層に樹脂(シール剤)を集中させることができない。また、低粘度の浸透性塗料を一度に多量に塗布すると、塗布された浸透性塗料が面取部を超えて化粧面に食み出し、木質化粧基材の化粧面を汚してしまう虞がある。
【0032】
これに対し、第5の発明では、第1及び第2塗布工程において、1度に多量に浸透性塗料を塗布するのではなく、複数回に分けて浸透性塗料を塗布浸透させることとしている。そのため、第5の発明によれば、木質化粧基材の化粧面を汚すことなく、木質化粧基材の面取部に連続する端面及び面取部の表層に樹脂(シール剤)を集中させることができる。よって、より防水性に優れた化粧板を製造することができる。
【0033】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、上記第2塗布工程の後に実行され、上記第1及び第2塗布工程において塗布されて浸透した上記浸透性塗料の溶剤を加熱することによって揮発させる加熱工程を備えていることを特徴とするものである。
【0034】
第6の発明では、木質化粧基材の四周側面に切削加工を施し、浸透性塗料を塗布した後に、浸透性塗料の溶剤を加熱することによって揮発させることとしている。従って、第6の発明によれば、浸透性塗料に溶剤が含まれていても、加熱により溶剤が揮発するため、最終製品である化粧板に含まれる揮発性化学物質の総量を著しく増大させることなく化粧板を製造することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明の化粧板の製造方法によると、木質化粧基材の互いに対向する2つの側面対のうちの一方の第1側面対に切削加工を施した後、他方の第2側面対に切削加工を施す前に、第1側面対の面取部に連続する端面に、湿気硬化型樹脂を溶剤で希釈した浸透性塗料を塗布すると共に、第2側面対に切削加工を施す前に、塗布した浸透性塗料を内部に浸透させるようにしたため、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板を製造設備の大型化を招くことなく製造可能な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の実施形態1の化粧板の平面図である。
図2図2は、図1の化粧板のA-A’断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態1の化粧板の製造方法の木質化粧基材形成工程から第2塗布工程が終了するまでの木質化粧基材の平面形状の変化を説明するための説明図である。
図4図4は、本発明の実施形態1の化粧板の製造方法の木質化粧基材形成工程から第2塗布工程が終了するまでの木質化粧基材の断面形状の変化を説明するための説明図である。
図5図5は、雌実が形成された木質化粧基材の側面の表側端面に浸透性塗料を塗布した直後の側面及び断面の様子を上段に示し、浸透性塗料が浸透、硬化後の側面及び断面の様子を下段に示す図である。
図6図6は、雄実が形成された木質化粧基材の側面の表側端面に浸透性塗料を塗布した直後の側面及び断面の様子を上段に示し、浸透性塗料が浸透、硬化後の側面及び断面の様子を下段に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0038】
《発明の実施形態1》
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る化粧板1を示し、この化粧板1は、例えば床材等として使用される。化粧板1は、木質化粧基材10と、塗膜層20とを備えている。
【0039】
〈木質基材〉
木質化粧基材10は、木質基材11と表面化粧材12とを積層して接着剤で接着一体化することによって構成されている。
【0040】
木質基材11は、表面側の第1基材11aと裏面側の第2基材11bとを積層して接着剤で接着一体化することによって構成されている。本実施形態1では、第1基材11aは、密度が0.35~0.85g/cmの木質繊維板(中密度繊維板(MDF)又はハードボード)で構成され、第2基材11bは、合板で構成されている。木質基材11は、平面視において950mm×1850mmの長方形状に形成されている。
【0041】
なお、木質基材11は、少なくとも後述する表側端面17b,18bにおいて木質繊維板が露出するものであれば、いかなる材料によって構成されるものであってもよい。また、木質基材11は、第1基材11aと第2基材11bとで構成されず、木質繊維板のみで形成されるものであってもよい。また、木質基材11は、第1基材11aと第2基材11bとの間に他の材料からなる層を有するものであってもよく、第2基材11bのさらに裏面側に樹脂不織布や樹脂系発泡板材が接着一体化されるものであってもよい。さらに、第1基材11aと第2基材11bとが同じ素材(木質繊維板)で構成されて接着一体化されていてもよい。
【0042】
表面化粧材12は、薄板又はシート状に形成され、木質基材11の表面(第1基材11aの表面)を覆うように接着剤で接着されている。表面化粧材12は、例えば、オレフィン樹脂等の防水性を有する樹脂製の化粧シートによって構成されている。表面化粧材12の厚みは、0.15~0.6mm程度に形成されている。本実施形態1では、表面化粧材12の表面が、木質化粧基材10の化粧面13となる。
【0043】
なお、表面化粧材12の材質及び厚みに特に制限はなく、樹脂製の化粧シートの他、コート紙、樹脂含浸紙等の化粧紙、不織布、織布、木質薄化粧突き板等であってもよい。紙の場合、例えば、0.05~0.3mm程度のもの、木質薄化粧突板であれば、0.15~0.3mm程度のものが好適に用いられる。
【0044】
木質化粧基材10の化粧面13と周囲側面(長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15)との間には、面取部16が形成されている。
【0045】
面取部16は、木質化粧基材10の化粧面13と各側面14,15との間の角部を斜め(又は円弧状)に切り欠くことによって形成されている。そのため、面取部16の外表面16aは、化粧面13及び各側面14,15に対して傾斜している。面取部16の大きさに特に制限はないが、面取部16の水平方向及び垂直方向の幅は、それぞれ0.5~1.0mm程度に形成されている。本実施形態1では、面取部16は、木質化粧基材10の表面化粧材12と木質基材11の第1基材11aとに亘って形成されている。つまり、本実施形態1では、木質化粧基材10は、面取部16の外表面16aにおいて木質繊維板が露出するように面取り加工が施されている。
【0046】
木質化粧基材10の各側面14,15には雌実17又は雄実18が形成されている。木質化粧基材10の短辺方向に対向する長辺側面対(第1側面対)14,14の一方には雌実17が形成され、他方には雌実17に嵌合可能な雄実18が形成されている。また、木質化粧基材10の長辺方向に対向する短辺側面対(第2側面対)15,15の一方には雌実17が形成され、他方には雌実17に嵌合可能な雄実18が形成されている。
【0047】
上記長辺側面14及び短辺側面15の雌実17は、同様に構成されている。雌実17は、木質化粧基材10の長辺側面14及び短辺側面15の厚み方向(表裏方向)の中間部分が凹溝部17aになるように木質化粧基材10の側辺部を切り欠くことによって形成されている。また、本実施形態1では、雌実17は、凹溝部17aより裏面側の部分が、凹溝部17aより表面側の部分よりも外側に突出するように形成された所謂あご実に構成されている。そのため、雌実17では、面取部16の外表面16aに連続し、化粧面13に対して垂直な表側端面(端面)17bが、裏面19に対して垂直に連続する裏側端面17cよりも内側に位置している。
【0048】
なお、本実施形態1では、凹溝部17a及び裏側端面17cは、第2基材11bに形成され、表側端面17bは、第1基材11aから第2基材11bに亘って形成されている。つまり、本実施形態1では、木質化粧基材10は、雌実17の表側端面17bにおいて木質繊維板が露出するように実加工が施されている。
【0049】
上記長辺側面14及び短辺側面15の雄実18は、同様に構成されている。雄実18は、木質化粧基材10の長辺側面14及び短辺側面15の表裏方向の中間部分が凸条部18aになるように木質化粧基材10の側辺部を切り欠くことによって形成されている。また、本実施形態1では、雄実18は、あご実に構成された雌実17に対応するように、凸条部18aより裏面側の凹み部分が、凸条部18aより表面側の凹み部分よりも内側に位置するように形成されている。そのため、雄実18では、面取部16の外表面16aに連続し、化粧面13に対して垂直な表側端面(端面)18bが、裏面19に対して垂直に連続する裏側端面18cよりも外側に位置している。
【0050】
なお、本実施形態1では、凸条部18a及び裏側端面18cは、第2基材11bに形成され、表側端面17bは、第1基材11aから第2基材11bに亘って形成されている。つまり、本実施形態1では、木質化粧基材10は、雄実18の表側端面18bにおいて木質繊維板が露出するように実加工が施されている。
【0051】
このように、本実施形態では、隣り合う化粧板1の側辺部が嵌合するように、木質化粧基材10に、雌実17と雄実18とを形成する所謂本実加工を施している。しかしながら、隣り合う化粧板1の側辺部を嵌合させる構造はこれに限らない。例えば、木質化粧基材10の長辺側面14及び短辺側面15の一方では木質化粧基材10の厚み方向の表側の部分を切り欠き、他方では木質化粧基材10の厚み方向の裏側の部分を切り欠くことにより、所謂合決り構造としてもよい。
【0052】
また、木質化粧基材10の各側面14,15の木質繊維板(第1基材11a)が露出する表側端面(端面)17b,18bの表層には、後述する浸透性塗料30を塗布して浸透させることにより、樹脂含浸層31が形成されている。
【0053】
〈塗膜層〉
塗膜層20は、着色層21と透明樹脂層22とを有している。
【0054】
着色層21は、着色塗料によって形成された塗膜層である。着色層21は、木質化粧基材10の木質繊維板(第1基材11a)が露出する面取部16の外表面16aを覆うように、外表面16a上に形成されている。
【0055】
なお、着色層21の形成に使用する着色塗料は特に限定されるものではないが、水性のアクリル系樹脂に顔料粉末を均一分散させた水性着色剤を含むシール性(造膜性)を有する塗料を用いることができる。
【0056】
透明樹脂層22は、透明塗料によって形成された透明の塗膜層である。透明樹脂層22は、木質化粧基材10の化粧面13及び面取部16の外表面16aを覆うように、化粧面13及び着色層21上に形成されている。
【0057】
なお、透明樹脂層22の形成に使用する透明塗料は特に限定されるものではないが、揮発性有機化合物(VOC)の問題がなく、また、化粧板1を床材として用いる場合に、耐傷性、耐磨耗性が良い塗料として、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等の無溶剤紫外線硬化型塗料を用いるのが好適である。
【0058】
-製造方法-
次に、上記化粧板1の製造方法について説明する。この製造方法は、(1)木質化粧基材形成工程、(2)第1切削工程、(3)第1塗布工程、(4)第2切削工程、(5)第2塗布工程、(6)加熱工程、(7)着色層形成工程、(8)透明樹脂層形成工程を有する。各工程は、ベルトコンベア等の搬送装置(図示省略)によって所定方向に搬送される木質基材11又は木質化粧基材10に対して行われる。
【0059】
本実施形態1では、図3に示すように、(2)第1切削工程及び(3)第1塗布工程は、長辺側面対14,14に加工処理を施す長辺加工工程であり、(4)第2切削工程及び(5)第2塗布工程は、木質化粧基材10の短辺側面対15,15に加工処理を施す短辺加工工程である。本実施形態1では、搬送装置(図示省略)によって木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で長辺方向に搬送しながら長辺加工工程を行った後、木質化粧基材10の搬送方向を短辺方向に変更し、木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で短辺方向に搬送しながら短辺加工工程を行う。
【0060】
なお、以下で説明する工程の順序は、一例にすぎず、本発明に係る製造方法はこれに限られない。
【0061】
(1)木質化粧基材形成工程
まず、木質基材11の表面に化粧を施すことによって木質化粧基材10を形成する木質化粧基材形成工程を行う。本実施形態1では、木質基材11の表面に樹脂製の化粧シートからなる表面化粧材12を積層して接着剤で一体化することによって木質化粧基材10を形成する。
【0062】
(2)第1切削工程
次に、木質化粧基材10の長辺側面対14,14に切削加工を施す第1切削工程を行う。第1切削工程は、図示しない搬送装置によって木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で長辺方向に搬送しながら行われる(図3の長辺加工時の図を参照)。
【0063】
本実施形態1では、第1切削工程では、実加工工程と面取り加工工程とを行う。なお、実加工と面取り加工とは同時に行ってもよく、順に行ってもよい。第1切削工程では、刃に対して木質化粧基材10が位置ずれしないように固定する固定治具を備えた切削加工装置が用いられる。
【0064】
第1切削工程の実加工工程では、搬送装置によって搬送される木質化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、木質化粧基材10の長辺側面対14,14の一方を凹溝部17aが形成されるように切り欠き、他方を凸条部18aが形成されるように切り欠く。このようにして、木質化粧基材10の長辺側面対14,14の一方に雌実17を形成し、他方に雄実18を形成する(図3の長辺加工時の図及び図4の長辺加工時のA-A’断面図を参照)。なお、実加工工程では、上述のような切削加工により、木質化粧基材10の長辺側面対14,14の表側端面17b,18bにおいて木質繊維板が露出するように雌実17と雄実18とが形成される。
【0065】
第1切削工程の面取り加工工程では、引き続き搬送装置によって搬送される木質化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、木質化粧基材10の化粧面13と各長辺側面14との間の各角部を斜め(又は円弧状)に切り欠く。このようにして、木質化粧基材10の化粧面13と各長辺側面14との間に面取部16を形成する(図3の長辺加工時の図及び図4の長辺加工時のA-A’断面図を参照)。なお、面取り加工工程では、上述のような切削加工により、木質化粧基材10の長辺側面対14,14の面取部16の外表面16aにおいて木質繊維板が露出するように面取部16が形成される。
【0066】
以上のように、本実施形態1では、木質化粧基材10は、化粧面13が下向きの状態で固定治具によって位置ずれしないように固定された状態で搬送されながら、下端基準で(化粧面13を基準として)切削加工が施される。そのため、木質化粧基材10には、厚みの誤差に関係なく、化粧面13側から面取部16、雌実17及び雄実18の切削加工を精度良く行うことができる。
【0067】
(3)第1塗布工程
第1切削工程の後、即ち、長辺側面対14,14に対する切削加工の後、長辺側面対14,14に浸透性塗料30を塗布して浸透させる第1塗布工程を行う。第1塗布工程は、図示しない搬送装置によって木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で長辺方向に搬送しながら、切削加工装置の固定治具で木質化粧基材10が位置ずれしないように固定した状態で行われる(図3の長辺加工時の図を参照)。
【0068】
第1塗布工程では、切削加工装置の固定治具で木質化粧基材10が位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、塗布装置を用いて木質化粧基材10の長辺側面対14,14の木質繊維板が露出する表側端面17b,18bに浸透性塗料30を塗布する(図5の上図及び図6の上図を参照)。なお、本実施形態1では、長辺側面対14,14の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも余剰の浸透性塗料30が付着するような分量の浸透性塗料30を表側端面17b,18bに塗布する。
【0069】
第1塗布工程は、例えば、長辺方向に搬送される木質化粧基材10の両側に設置された塗布ロール対を有し、各塗布ロールの外周面に浸透性塗料30を定量供給するように構成された塗布装置を用いて行う。具体的には、長辺方向に搬送される木質化粧基材10の両側において、各塗布ロールが外周面を長辺側面対14,14の表側端面17b,18bに当接させながら木質化粧基材10の搬送に伴って垂直回転軸周りに回転することにより、各塗布ロールの外周面の浸透性塗料30が表側端面17b,18bに塗布(転写)される。なお、このとき、余剰の浸透性塗料30が長辺側面対14,14の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも付着する。このようにして、第1塗布工程では、長辺側面対14,14の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部に浸透性塗料30が塗布(転写)される。
【0070】
なお、塗布手段は、塗布ロールを有する上記塗布装置に限定されず、公知の塗布装置を適宜用いることができるが、浸透性塗料30を塗布する塗布器具として、表側端面17b,18bに当接させても変形しない硬質材で構成されたものを用いることが好ましい。
【0071】
本実施形態1では、湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈することによって低粘度に調整したものを浸透性塗料30として用いている。また、湿気硬化型樹脂組成物として分子量1000~5000のポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とを使用し、希釈剤として酢酸ブチルを使用している。例えば、ポリオールの溶液100に対し、10~300のHDIを添加し、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下(より好ましくは、40mPa・s以上60mPa・s以下)になるように、酢酸ブチルで希釈することによって浸透性塗料30を生成する。
【0072】
なお、上記浸透性塗料30として、塗布してから1~2秒、好ましくは1秒以内に概ね木質化粧基材10の内部に浸透する粘度の浸透性塗料30を用いれば、その後の加工処理を問題なく行えることが種々の実験により確認できている。ところで、浸透速度を上げるためには、できる限り希釈剤の添加量を増やし、浸透性塗料30の粘度を低下させるのが好ましいが、希釈剤の添加量が増えすぎると、含まれる湿気硬化型樹脂組成物の量が相対的に減るため、防水性の観点からは好ましくない。このような観点より、浸透性塗料30は、上述のように、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下(より好ましくは、40mPa・s以上60mPa・s以下)になるように希釈するのが好ましい。
【0073】
このように、25℃での粘度が60mPa・s以下の低粘度の浸透性塗料30を、木質化粧基材10の長辺側面対14,14の表側端面17b,18bに塗布すると、浸透性塗料30は、瞬間的に表側端面17b,18bから内部に浸透する。浸透性塗料30が浸透した表側端面17b,18bの表層は、浸透性塗料30の溶剤が揮発した後、イソシアネート系化合物(HDI)が空気中の水分及び木質化粧基材10に含まれる水分を吸収することにより硬化し、樹脂含浸層31となる(図5の下図及び図6の下図を参照)。
【0074】
なお、本実施形態1では、長辺側面対14,14の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも余剰の浸透性塗料30が付着するような分量の浸透性塗料30を表側端面17b,18bに塗布する。つまり、面取部16の外表面16aの一部にも浸透性塗料30が塗布される。面取部16の外表面16aの一部に塗布された浸透性塗料30も速やかに浸透するため、外表面16aに残らない。そして、面取部16の浸透性塗料30が浸透した部分の表層も、樹脂含浸層31となる(図5の下図及び図6の下図を参照)。
【0075】
なお、湿気硬化型樹脂組成物としては、上述のポリオールとHDIの組み合わせの他、HDIのみ、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)のみ、HDIとMDI、ポリオールとMDI、ポリオールとHDIとMDI等を用いることができる。また、希釈剤としては、酢酸ブチルの他、ウレタンシンナー等のHDIやMDIの溶解性に優れた揮発性の高い溶剤を用いることができる。
(4)第2切削工程
第1塗布工程の後、木質化粧基材10の搬送方向を短辺方向に変更して、木質化粧基材10の短辺側面対15,15に切削加工を施す第2切削工程を行う。第2切削工程は、図示しない搬送装置によって木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で短辺方向に搬送しながら行われる(図4の長辺加工時の図を参照)。
【0076】
第2切削工程では、第1切削工程と同様に、実加工工程と面取り加工工程とを行う。なお、実加工と面取り加工とは同時に行ってもよく、順に行ってもよい。第2切削工程でも、刃に対して木質化粧基材10が位置ずれしないように固定する固定治具を備えた切削加工装置が用いられる。
【0077】
第2切削工程の実加工工程では、搬送装置によって搬送される木質化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、木質化粧基材10の短辺側面対15,15の一方を凹溝部17aが形成されるように切り欠き、他方を凸条部18aが形成されるように切り欠く。このようにして、木質化粧基材10の短辺側面対15,15の一方に雌実17を形成し、他方に雄実18を形成する(図3の短辺加工時の図及び図4の短辺加工時のB-B’断面図を参照)。なお、実加工工程では、上述のような切削加工により、木質化粧基材10の短辺側面対15,15の表側端面17b,18bにおいて木質繊維板が露出するように雌実17と雄実18とが形成される。
【0078】
第2切削工程の面取り加工工程では、引き続き搬送装置によって搬送される木質化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、木質化粧基材10の化粧面13と各短辺側面15との間の各角部を斜め(又は円弧状)に切り欠く。このようにして、木質化粧基材10の化粧面13と各短辺側面15との間に面取部16を形成する(図3の短辺加工時の図及び図4の短辺加工時のB-B’断面図を参照)。なお、面取り加工工程では、上述のような切削加工により、木質化粧基材10の短辺側面対15,15の面取部16の外表面16aにおいて木質繊維板が露出するように面取部16が形成される。
【0079】
以上のように、第2切削工程においても、第1切削工程と同様に、木質化粧基材10は、化粧面13が下向きの状態で固定治具によって位置ずれしないように固定された状態で搬送されながら、下端基準で(化粧面13を基準として)切削加工が施される。そのため、木質化粧基材10には、厚みの誤差に関係なく、化粧面13側から面取部16、雌実17及び雄実18の切削加工を精度良く行うことができる。
【0080】
(5)第2塗布工程
第2切削工程の後、即ち、短辺側面対15,15に対する切削加工の後、短辺側面対15,15に浸透性塗料30を塗布して浸透させる第2塗布工程を行う。第2塗布工程は、図示しない搬送装置によって木質化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で短辺方向に搬送しながら、切削加工装置の固定治具で木質化粧基材10が位置ずれしないように固定した状態で行われる(図3の短辺加工時の図を参照)。
【0081】
第2塗布工程では、切削加工装置の固定治具で木質化粧基材10が位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、塗布装置を用いて木質化粧基材10の短辺側面対15,15の木質繊維板が露出する表側端面17b,18bに浸透性塗料30を塗布する(図5の上図及び図6の上図を参照)。なお、本実施形態1では、短辺側面対15,15の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも余剰の浸透性塗料30が付着するような分量の浸透性塗料30を表側端面17b,18bに塗布する。
【0082】
第2塗布工程は、例えば、短辺方向に搬送される木質化粧基材10の両側に設置された塗布ロール対を有し、各塗布ロールの外周面に浸透性塗料30を定量供給するように構成された塗布装置を用いて行う。具体的には、短辺方向に搬送される木質化粧基材10の両側において、各塗布ロールが外周面を短辺側面対15,15の表側端面17b,18bに当接させながら木質化粧基材10の搬送に伴って垂直回転軸周りに回転することにより、各塗布ロールの外周面の浸透性塗料30が表側端面17b,18bに塗布(転写)される。なお、このとき、余剰の浸透性塗料30が短辺側面対15,15の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも付着する。このようにして、第2塗布工程では、短辺側面対15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部に浸透性塗料30が塗布(転写)される。
【0083】
なお、第1塗布工程と同様に、塗布手段は、塗布ロールを有する上記塗布装置に限定されず、スポンジコーター等の公知の塗布装置を適宜用いることができる。また、塗布する浸透性塗料30は、第1塗布工程の浸透性塗料30と同様のものを用いる。
【0084】
第2塗布工程においても、低粘度の浸透性塗料30を木質化粧基材10の短辺側面対15,15の表側端面17b,18bに塗布することにより、浸透性塗料30は、瞬間的に表側端面17b,18bから内部に浸透する。浸透性塗料30が浸透した表側端面17b,18bの表層は、その後の工程で浸透性塗料30が硬化することにより、樹脂含浸層31に形成される(図5の下図及び図6の下図を参照)。
【0085】
また、第2塗布工程においても、短辺側面対15,15の表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部にも余剰の浸透性塗料30が付着するような分量の浸透性塗料30を表側端面17b,18bに塗布する。つまり、面取部16の外表面16aの一部にも浸透性塗料30が塗布される。面取部16の外表面16aの一部に塗布された浸透性塗料30も速やかに浸透するため、外表面16aに残らない。そして、面取部16の浸透性塗料30が浸透した部分の表層も、樹脂含浸層31となる(図5の下図及び図6の下図を参照)。
【0086】
(6)加熱工程
第2塗布工程の後、即ち、短辺側面対15,15の加工処理後、木質化粧基材10を加熱して浸透性塗料30の溶剤を揮発させる加熱工程を行う。加熱手段は、特に限定されず、公知の加熱手段を用いることができる。また、加熱工程では、木質化粧基材10全体を加熱してもよく、木質化粧基材10において浸透性塗料30が浸透した四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部の表層を局所的に加熱してもよい。
【0087】
このように、加熱工程において、木質化粧基材10に浸透した浸透性塗料30の溶剤を揮発させることにより、最終製品である化粧板1に含まれる揮発性化学物質の総量を低減する。なお、加熱工程は、後述する着色層形成工程において着色層21を加熱して硬化させる硬化工程と共に行ってもよい。
【0088】
(7)着色層形成工程
加熱工程の後、木質化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aに着色塗装を施す着色工程を行う。着色工程では、例えば、ゴムロールコーターを用いることができる。着色層形成工程では、木質化粧基材10の四周の面取部16の木質繊維板が露出する外表面16aに着色塗料を塗布する着色塗料塗布工程と、着色塗料塗布工程において木質化粧基材10の化粧面13に付着した着色塗料を除去する着色塗料除去工程と、硬化工程とを行う。
【0089】
具体的には、着色塗料塗布工程では、着色塗料が定量供給されるゴムロールが、木質化粧基材10の面取部16の外表面16aに当接しながら回転軸周りに正回転(木質化粧基材10とゴムロールの当接部で木質化粧基材10の搬送方向とゴムロールの回転方向が一致する回転)する。これにより、ゴムロールの着色塗料が面取部16の外表面16aに塗布(転写)される。
【0090】
着色塗料除去工程では、ゴムロールが、木質化粧基材10の化粧面13に当接しながら回転軸周りに逆回転(木質化粧基材10とゴムロールの当接部で木質化粧基材10の搬送方向とゴムロールの回転方向が逆向きになる回転)する。これにより、木質化粧基材10の化粧面13に付着した水系の着色塗料がゴムロールに吸収され、化粧面13から除去される。
【0091】
その後、木質化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aに塗布された着色塗料を加熱することによって硬化させる硬化工程が行われる。硬化工程によって着色塗料が硬化することにより、四周の面取部16の外表面16a上に、着色層21(塗膜層)が形成される。
【0092】
(8)透明樹脂層形成工程
着色層形成工程の後、木質化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16aを一体的に覆う透明樹脂層22を形成する透明樹脂層形成工程を行う。透明樹脂層形成工程では、例えば、ロールコーターやフローコーターを用いることができる。透明樹脂層形成工程では、木質化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16aに透明塗料を塗布する透明塗料塗布工程と、透明塗料塗布工程において木質化粧基材10の化粧面13及び面取部16の外表面16aに塗布された透明塗料を硬化させる硬化工程とを行う。
【0093】
具体的には、透明塗料塗布工程では、ロールコーターを用いることにより、搬送装置によって所定方向に搬送される木質化粧基材10の化粧面13及び面取部16の外表面16aに透明塗料が塗布される。
【0094】
本実施形態1では、紫外線硬化樹脂塗料を透明塗料として用いる。そのため、硬化工程では、紫外線照射装置を用いて、木質化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16aに塗布された透明塗料に紫外線を照射する。これにより、透明塗料が硬化して、木質化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16a上に、これらの面を一体的に覆う透明樹脂層22が形成される。
【0095】
以上の工程を経過することにより、上記化粧板1が得られる。
【0096】
なお、第1及び第2塗布工程で木質化粧基材10の四周の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部に塗布されて内部に浸透した浸透性塗料30は、ポリオールとHDIとが反応することにより、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを形成する。このウレタンプレポリマーが、化粧板1の製造後、空気中の水分や木質化粧基材10に含有されている水分と反応してウレア結合を生成することにより、浸透性塗料30が硬化する。このように浸透性塗料30が硬化することにより、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部の表層は、ウレタン樹脂が含浸した防水性に優れた樹脂含浸層31となる。
【0097】
-実施形態1の効果-
上記実施形態1では、少なくとも一部(第1基材11a)が木質繊維板によって構成された木質化粧基材10の2つの側面対14,14,15,15に対し、面取部16及び表側端面17b,18bにおいて木質繊維板が露出するように切削加工が施される。木質繊維板は、合板等に比べて精密に切削加工を施すことができる。そのため、上記実施形態1によれば、第1及び第2切削工程において面取部16及び表側端面17b,18bを精密に加工することができる。
【0098】
一方、木質化粧基材の四周の表側端面17b,18bにおいて比較的吸水性が高く界面活性剤によって膨れが生じ易い木質繊維板が露出したままでは、界面活性剤を含む水で化粧板を水拭きした際に、水分と共に界面活性剤が表側端面17b,18bから吸収されて化粧板に膨れが生じる虞がある。
【0099】
これに対し、上記実施形態1では、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材10の長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15の面取部16に連続する表側端面17b,18bに湿気硬化型樹脂組成物を含む浸透性塗料を塗布して浸透させ、化粧板1の製造後に、空気中の水分や木質化粧基材10に含まれる水分によって湿気硬化型樹脂を硬化させることにより、各表側端面17b,18bの表層が防水性を有する樹脂含浸層31に形成されるようにしている。そのため、化粧板1の化粧面13を、界面活性剤を含む水で水拭きすることにより、界面活性剤を含む水が化粧板1の化粧面13から側面14,14,15,15に至っても、木質繊維板が露出する木質化粧基材10の表側端面17b,18bの表層が上記樹脂含浸層31に形成されているため、界面活性剤を含む水が表側端面17b,18bから内部に浸透しない。よって、本実施形態1によれば、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板1を製造することができる。
【0100】
また、上記実施形態1では、木質化粧基材10の2つの側面対14,14,15,15の一方の長辺側面対14,14に切削加工処理及び塗布処理を施した後、処理面を変更し、他方の短辺側面対15,15に切削加工処理及び塗布処理を施すこととした。そのため、木質化粧基材10の搬送方向の変更が1回で済むため、化粧板1の製造設備の大型化を招くことなく化粧板1を製造することができる。
【0101】
ところで、第1及び第2切削工程において面取り加工や実加工を精度良く行うには、刃に対して木質化粧基材10が位置ずれしないように固定治具等でしっかりと押さえる必要がある。また、第1及び第2塗布工程において木質化粧基材10の面取部16に連続する端面に精度良く塗布処理を施す場合にも、塗布装置に対して木質化粧基材が位置ずれしないように固定治具等でしっかりと押さえる必要がある。
【0102】
本実施形態1では、1つの側面対(長辺側面対14,14又は短辺側面対15,15)に対し、切削加工処理と塗布処理とを連続して行う(第1切削工程と第1塗布工程とを連続して行い、第2切削工程と第2塗布工程とを連続して行う)こととしている。そのため、切削工程と塗布処理工程とで別々に固定治具を用意する必要がなく、同一の治具を用いて木質化粧基材10をしっかりと押さえて切削加工処理と塗布処理とを精度良く行うことができる。よって、化粧板1の製造設備の小型化を図ることができる。
【0103】
また、従来の化粧板の製造方法のように、木質化粧基材の側面に保護樹脂を塗布して該側面上に保護樹脂膜を形成する場合、上述のように、1つの側面対に対して切削加工処理と塗布処理とを連続して行うようにすると、一方の側面対に対する塗布処理の後、他方の側面対の切削加工処理を行う際に、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に保護樹脂が付着し、切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がある。
【0104】
これに対し、本実施形態1では、木質化粧基材10の側面14,15の該当部分に保護樹脂を塗布して保護樹脂膜を形成するのではなく、湿気硬化型樹脂組成物を溶剤で希釈した浸透性塗料30を塗布して内部に浸透させることにより、木質化粧基材10の側面14,15の内部に樹脂含浸層31を形成することとしている。また、第1塗布工程で塗布された浸透性塗料30が浸透した後に、第2切削工程を行うこととしているため、従来の製造方法のように、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に塗料が付着して切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がない。
【0105】
以上のように、本実施形態1によれば、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れが生じ難い化粧板1を製造設備の大型化を招くことなく製造可能な製造方法を提供することができる。
【0106】
また、本実施形態1では、浸透性塗料30が、ポリオールを主剤、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を硬化剤とする湿気硬化型樹脂組成物を含んでいる。そのため、木質化粧基材10に浸透した浸透性塗料30の溶剤の揮発後、主剤と硬化剤とが反応してなるウレタンプレポリマーが空気中の水分や木質化粧基材に含有されている水分と反応してウレア結合を生成することにより、浸透性塗料30が硬化する。これにより、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15の面取部16に連続する表側端面17b,18bの表層は、ウレタン樹脂が含浸した防水性に優れた樹脂含浸層31となる。よって、本実施形態1によれば、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板1を容易に製造することができる。
【0107】
また、本実施形態1では、上記湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈して、25℃での粘度が60mPa・s以下になるように調製した浸透性塗料30を用いている。このような浸透性塗料30は、浸透速度が速く、瞬時に木質化粧基材10に浸透する。そのため、第1塗布工程後、浸透性塗料30の浸透を待つことなく、すぐに第2切削工程を行うことができる。つまり、化粧板1の製造ラインに、第1塗布工程後、塗料を浸透させる時間を稼ぐために加工を施すことなく木質化粧基材10を単に搬送する区間を設ける必要がない。従って、本実施形態1によれば、第1及び第2塗布工程を加えても、化粧板1の製造ラインの長尺化を抑制することができるため、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板1を製造設備の大型化を招くことなく製造することができる。
【0108】
ところで、水拭き時に界面活性剤を含む水が木質化粧基材10の内部に浸透して膨れるのを抑制する観点からは、木質化粧基材10の木質繊維板基材が露出する面取部16の外表面16a全体に浸透性塗料30を塗布して面取部16全体の表層を、防水性を有する樹脂含浸層31に形成することが好ましい。
【0109】
しかしながら、木質化粧基材10の面取部16の外表面16a全体にロールコーターやスポンジコーター等で浸透性塗料を塗布しようとすると、木質化粧基材10の化粧面13にも塗料が付着して化粧面13を汚してしまう虞がある。
【0110】
これに対し、本実施形態1では、第1及び第2塗布工程において、化粧面13に浸透性塗料30が付着しないように、長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部に浸透性塗料30を塗布し、浸透性塗料30が化粧面13に至る前に完全に内部に浸透するようにしている。そのため、木質化粧基材10の化粧面13を汚すことなく木質化粧基材10の面取部16の外表面16aの表層も樹脂含浸層31に形成することができる。
【0111】
なお、本実施形態1では、木質化粧基材10の面取部16の外表面16aに浸透性の低い塗料を塗布して外表面16a上に保護樹脂膜を形成するのではなく、長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15の各面取部16に連続する表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部に浸透性塗料30を塗布して面取部16の外表面16aまで浸透させることにより、面取部16の表層(内部)にも樹脂含浸層31を形成することとしている。塗布された浸透性塗料30は、表側端面17b,18bはもとより、面取部16においても完全に浸透しているので、第1塗布工程後に、第2切削工程を行うこととしても、刃を含む切削加工設備や搬送設備等に塗料が付着して切削加工や搬送に悪影響を及ぼす虞がない。また、木質化粧基材10の面取部16の外表面16aにロールコーターやスポンジコーター等で浸透性塗料30を塗布しないため、浸透性塗料30が化粧面13まで食み出ることがなく、木質化粧基材10の化粧面13を汚すことがない。さらに、木質化粧基材10の面取部16の外表面16a上に保護樹脂膜を形成するのではなく、面取部16の表層を浸透性塗料30が完全に含浸した樹脂含浸層31に形成しているため、第1及び第2塗布工程の後に行われる着色層形成工程において、木質化粧基材10の面取部16の外表面16a上に着色塗膜の密着性を低下させることなく、容易に且つきれいに着色層21を形成することができる。
【0112】
また、本実施形態1では、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15に切削加工を施し、表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の一部に浸透性塗料30を塗布した後に、浸透性塗料30の溶剤を加熱することによって揮発させることとしている。従って、本実施形態1によれば、浸透性塗料30に溶剤が含まれていても、加熱により溶剤が揮発するため、最終製品である化粧板1に含まれる揮発性化学物質の総量を著しく増大させることなく化粧板1を製造することができる。
【0113】
また、本実施形態1では、浸透性塗料30の溶剤を加熱することによって揮発させた後に、木質化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aに、着色塗装を施して着色層21を形成することとしている。このような製造方法によれば、露出面に着色塗装が施された意匠性に優れた化粧板1を製造することができる。
【0114】
また、本実施形態1では、着色工程の後に、木質化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16を少なくとも一体的に覆う透明樹脂層22を形成することとしている。このような製造方法によれば、より防水性に優れ、水拭きしても膨れが生じ難い化粧板1を製造することができる。
【0115】
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、木質化粧基材10の長辺側面対14,14を先に切削加工処理及び塗布処理が施される第1側面対、短辺側面対15,15を後で切削加工処理及び塗布処理が施される第2側面対としていた。しかしながら、本発明に係る木質化粧基材の第1側面対と第2側面対は、上記実施形態1と逆であってもよい。即ち、木質化粧基材10の短辺側面対15,15を先に切削加工処理及び塗布処理が施される第1側面対、長辺側面対14,14を後で切削加工処理及び塗布処理が施される第2側面対としてもよい。
【0116】
また、上記実施形態1では、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の一部に浸透性塗料30を塗布して浸透させていたが、本発明の実施形態はこれに限られない。第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18bのみに浸透性塗料30を塗布して浸透させることとしてもよく、また、木質化粧基材10の四周側面14,14,15,15の外表面全体に浸透性塗料30を塗布して浸透させてもよい。なお、いずれの場合も、面取部16の外表面16aに浸透性塗料30を塗布する場合には、浸透性塗料30が木質化粧基材10の化粧面13に付着しないように浸透性塗料30の粘度、塗布量を調整して塗布する。
【0117】
また、上記実施形態1では、第1及び第2塗布工程では、木質化粧基材10の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の一部に浸透性塗料30を塗布して浸透させる塗布浸透処理を1回のみ行うこととしていたが、本発明の実施形態はこれに限られない。本発明に係る化粧板の製造方法は、第1及び第2塗布工程において、塗布浸透処理を複数回ずつ行うものであってもよい。例えば、木質化粧基材10の搬送方向に順に並ぶ複数の塗布器具(塗布ロール対等)を備えた塗布装置を用いることにより、塗布浸透処理を複数回連続して行うことができる。なお、一の塗布器具によって塗布された浸透性塗料30が完全に浸透した後に(浸透性塗料30が表側端面17b,18b上に残っていない状態で)、次の塗布器具によって浸透性塗料30が塗布されるように、所定の間隔を空けて複数の塗布器具を配置する。
【0118】
ところで、第1及び第2塗布工程において、希釈剤で希釈した低粘度の浸透性塗料30を一度に多量に塗布すると、浸透性塗料30が木質化粧基材10の内部深くまで浸透してしまい、表側端面17b,18b及び面取部16の外表面16aの表層に樹脂(シール剤)を集中させることができない。また、低粘度の浸透性塗料30を一度に多量に塗布すると、塗布された浸透性塗料30が面取部16を超えて化粧面13に食み出し、木質化粧基材10の化粧面13を汚してしまう虞がある。
【0119】
これに対し、上述のように、第1及び第2塗布工程において、1度に多量に浸透性塗料30を塗布するのではなく、複数回に分けて浸透性塗料30を塗布浸透させることとしている。そのため、上記構成によれば、木質化粧基材10の化粧面13を汚すことなく、木質化粧基材10の面取部16に連続する表側端面17b,18b及び面取部16の表層に樹脂(シール剤)を集中させることができる。よって、より防水性に優れた化粧板1を製造することができる。
【0120】
また、上記実施形態1では、第1及び第2塗布工程において塗布浸透処理を1度しか行わないため、防水性の観点からは、25℃での粘度が40~60mPa・s程度に希釈された浸透性塗料30を用いることが好ましいが、塗布浸透処理を複数回行うのであれば、25℃での粘度が20~40mPa・s程度に希釈した浸透性塗料30を用いても、25℃での粘度が40~60mPa・sの1度塗りと同等の防水性を有する樹脂含浸層31を形成することが可能である。
【0121】
また、上記実施形態1では、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材10の化粧面13を下向きにした状態で長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15の表側端面17b,18bと面取部16の外表面16aの一部に浸透性塗料30を塗布することとしている。そのため、表側端面17b,18b及び面取部16の外表面16aの一部に塗布された浸透性塗料30は、面取部16の外表面16aにおいて下方へ垂れる。この作用を利用して、第1及び第2塗布工程において、木質化粧基材10の表側端面17b,18b及び面取部16の一部に塗布された浸透性塗料30が、面取部16の外表面16a全体に濡れ拡がる一方、化粧面13に至る前に内部に浸透するように塗布量及び粘度を調整して浸透性塗料30を塗布することとしてもよい。そのような場合、木質化粧基材10の表側端面17b,18bの表層だけでなく、面取部16全体の表層も樹脂含浸層31に形成される。よって、上記構成によれば、防水性により優れ、界面活性剤を含む水で水拭きしても膨れがより生じ難い化粧板1を製造することができる。
【0122】
また、上記実施形態1では、着色層形成工程と透明樹脂層形成工程とを行って着色層21と透明樹脂層22とを形成することとしていたが、着色層形成工程は省略して着色層21を形成しないこととしてもよい。
【0123】
また、上記実施形態1では、着色層形成工程において、木質化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aのみに着色層21を形成することとしていたが、着色層21は、化粧面13と面取部16の外表面16aの両方に形成してもよい。
【0124】
また、上記実施形態1では、透明樹脂層形成工程において、木質化粧基材10の化粧面13及び面取部16を一体的に覆うように透明樹脂層22を形成していたが、透明樹脂層22は、化粧面13及び面取部16だけでなく表側端面17b,18bの面取部16に連続する一部まで一体的に覆うものであってもよい。
【0125】
また、上記実施形態1では、化粧板1を床材として用いることとしていたが、化粧板1の用途は床材に限られない。その他、例えば、壁材等に用いることも勿論可能である。
【実施例0126】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0127】
まず、以下の手順で浸透性塗料I~Vを精製した。なお、粘度の測定は、対象溶液をビーカーに入れ、ビスコテスターの3号カップ及び3号ローターを使用して測定した。
・浸透性塗料I(低粘度)
ポリオールとHDIを重量比1:1で配合した樹脂液に、25℃での粘度が40mPa・sとなるまで酢酸ブチル(希釈剤)を添加して希釈した。
・浸透性塗料II(低粘度)
ポリオールとHDIを重量比1:2で配合した樹脂液に、25℃での粘度が60mPa・sとなるまで酢酸ブチル(希釈剤)を添加して希釈した。
・浸透性塗料III(低粘度)
HDIのみからなる樹脂液に、25℃での粘度が40mPa・sとなるまで酢酸ブチル(希釈剤)を添加して希釈した。
・浸透性塗料IV(中粘度)
ポリオールとHDIを重量比1:1で配合した樹脂液に、25℃での粘度が80mPa・sとなるまで酢酸ブチル(希釈剤)を添加して希釈した。
・浸透性塗料V(高粘度)
ポリオールとHDIを重量比1:1で配合した樹脂液に、25℃での粘度が500mPa・sとなるまで酢酸ブチル(希釈剤)を添加して希釈した。
【0128】
次に、950mm×1850mmの大きさで厚さ11.7mmの矩形の木質基材11(実施形態1と同様、木質繊維板からなる第1基材11aと、合板からなる第2基材11bとで構成)の表面に水性ビニル系接着剤で0.3mmの厚みのオレフィン樹脂製シートからなる表面化粧材12を貼着して木質化粧基材10を形成し、これを155mm×920mmの大きさにカットすることにより、複数のカット片を得た。
【0129】
複数のカット片に対し、異なる処理(実施例1~4、比較例1~4)を行い、その過程を観察すると共に、実施例1~4及び比較例1,4において試験体1~6を得た。また、試験体1~6に対し、以下の手順で耐薬品性試験を行い、結果を観察した。
【0130】
(耐薬品性試験)
同種の試験体を、雄実と雌実を嵌合させることによって継ぎ合わせ、2cm程度の大きさに丸めた脱脂綿を継ぎ目に置き、該脱脂綿に界面活性剤を含む洗剤を1cc滴下し、乾燥しないようにプリンカップを被せて6時間放置した。6時間経過後、プリンカップと脱脂綿を取り除き、さらに24時間放置した。24時間経過後、化粧面の意匠性を観察した。
【0131】
なお、上記洗剤として、酸性の洗剤である大日本除虫菊株式会社製のサンポール(登録商標)と、アルカリ性の洗剤である花王株式会社製のマイペット(登録商標)とをそれぞれ用いた。以下では、いずれの洗剤を用いても問題が無かった場合、試験結果は「良好」とし、いずれかで問題があった場合、試験結果は「不良」として説明する。
【0132】
(実施例1)
実施例1では、カット片の化粧面が下向きの状態でカット片の長辺側面対に本実加工を施す(一方に雌実、他方に雄実を形成する)と共に、カット片の化粧面と各長辺側面との間に面取部を形成した(第1切削工程)後、カット片の長辺側面対の面取部に連続する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の一部に浸透性塗料Iを塗布して内部に浸透させた(第1塗布工程)。なお、第1切削工程では、木質繊維板が表側端面及び面取部の外表面に露出するように本実加工と面取り加工とを行い、第1塗布工程では、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の一部に浸透性塗料Iを塗布して浸透させる塗布浸透処理を1回だけ行った。
【0133】
次に、カット片の短辺側面対に本実加工を施すと共に、カット片の化粧面と各短辺側面との間に面取部を形成した(第2切削工程)後、カット片の短辺側面対の面取部に連続する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の一部に浸透性塗料Iを塗布して内部に浸透させた(第2塗布工程)。なお、第2切削工程では、木質繊維板が表側端面及び面取部に露出するように本実加工と面取り加工とを行い、第2塗布工程では、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の一部に浸透性塗料Iを塗布して浸透させる塗布浸透処理を1回だけ行った。
【0134】
次に、カット片の面取部に水性のアクリル系樹脂に顔料粉末を均一分散させた水性着色塗料をゴムロールコーターで塗布し(着色塗料塗布工程)、カット片の化粧面に付着した着色塗料を逆回転するゴムロールコーターで除去し(着色塗料除去工程)、カット片の木質繊維板が露出する面取部に着色層を形成した(着色層形成工程)。
【0135】
次に、カット片の化粧面及び面取部の外表面上に、アクリル系透明樹脂で透明樹脂層を形成し(透明樹脂層形成工程)、試験体1を得た。
【0136】
試験体1に対し、耐薬品性試験を行った。
【0137】
実施例1では、低粘度の浸透性塗料Iを用いたため、第1及び第2塗布工程において、浸透性塗料Iは、塗布した瞬間(例えば、0.5秒以内)に表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透し、表側端面及び面取部の外表面に残存しなかった。また、浸透性塗料Iが表側端面及び面取部の外表面に残存していないため、第1塗布工程後の第2切削工程において、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着することがなく、第2切削工程を円滑に行うことができた。また、第1及び第2塗布工程では、面取部の外表面に塗布された浸透性塗料Iが完全に浸透したため、面取部の外表面上に樹脂層が形成されず、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。また、実施例1では、第1及び第2塗布工程において、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料Iを塗布して浸透させることにより、表側端面及び面取部の一部の表層に樹脂含浸層が形成され、着色工程において、木質繊維板が露出する面取部に着色層が形成され、さらに透明樹脂層形成工程により、カット片の化粧面及び面取部の外表面上に、アクリル系透明樹脂で透明樹脂層が形成されたため、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透せず、試験体1(特に、木質繊維板で形成された表面側の第1基材)に膨れが生じなかった。つまり、耐薬品試験の結果は良好であった。
【0138】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で用いた浸透性塗料Iの代わりに浸透性塗料IIを用いる他は、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程、第2塗布工程、着色層形成工程、透明樹脂層形成工程を順に行い、試験体2を得た。そして、試験体2に対し、耐薬品性試験を行った。
【0139】
実施例2においても、低粘度の浸透性塗料IIを用いたため、第1及び第2塗布工程において、浸透性塗料IIは、塗布した瞬間に表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透し、表側端面及び面取部の外表面に残存しなかった。また、浸透性塗料IIが表側端面及び面取部の外表面に残存していないため、第1塗布工程後の第2切削工程において、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着することがなく、第2切削工程を円滑に行うことができた。また、第1及び第2塗布工程では、面取部の外表面に塗布された浸透性塗料IIが完全に浸透したため、面取部の外表面上に樹脂層が形成されず、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。また、実施例2においても、第1及び第2塗布工程において、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料IIを塗布して浸透させることにより、表側端面及び面取部の表層に樹脂含浸層が形成され、着色工程において、木質繊維板が露出する面取部に着色層が形成され、さらに透明樹脂層形成工程により、カット片の化粧面及び面取部の外表面上に、アクリル系透明樹脂で透明樹脂層が形成されたため、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透せず、試験体2(特に、木質繊維板で形成された表面側の第1基材)に膨れが生じなかった。つまり、耐薬品試験の結果は良好であった。
【0140】
(実施例3)
実施例3は、実施例1では、第1及び第2塗布工程において1回しか行わなかった塗布浸透処理を、2回ずつ行う(1回目の塗布後、1秒後に2回目の塗布を行う)こととした他は、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程、第2塗布工程、着色層形成工程、透明樹脂層形成工程を順に行い、試験体3を得た。そして、試験体3に対し、耐薬品性試験を行った。
【0141】
実施例3においても、低粘度の浸透性塗料Iを用いたため、第1及び第2塗布工程において、浸透性塗料Iは、塗布した瞬間に表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透し、表側端面及び面取部の外表面に残存しなかった。また、浸透性塗料Iが表側端面及び面取部の外表面に残存していないため、第1塗布工程後の第2切削工程において、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着することがなく、第2切削工程を円滑に行うことができた。また、第1及び第2塗布工程では、面取部の外表面に塗布された浸透性塗料Iが完全に浸透したため、面取部の外表面上に樹脂層が形成されず、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。また、実施例3においても、第1及び第2塗布工程において、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料Iを塗布して浸透させることにより、表側端面及び面取部の表層に樹脂含浸層が形成され、着色工程において、木質繊維板が露出する面取部に着色層が形成され、さらに透明樹脂層形成工程により、カット片の化粧面及び面取部の外表面上に、アクリル系透明樹脂で透明樹脂層が形成されたため、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透せず、試験体3(特に、MDFで形成された表面側の第1基材)に膨れが生じなかった。つまり、耐薬品試験の結果は良好であった。
【0142】
(実施例4)
実施例4は、第1及び第2塗布工程において、カット片の各表側端面に対し、面取部の外表面が広範囲に濡れる程度の多めの量の浸透性塗料Iを塗布する他は、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程、第2塗布工程、着色層形成工程、透明樹脂層形成工程を順に行い、試験体4を得た。そして、試験体4に対し、耐薬品性試験を行った。
【0143】
実施例4においても、低粘度の浸透性塗料Iを用いたため、第1及び第2塗布工程において、多めに塗った場合においても、浸透性塗料Iは、塗布した瞬間に表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透し、表側端面及び面取部の外表面に残存しなかった。また、実施例1に比べて、浸透性塗料Iを多めに塗布したため、浸透性塗料Iがカット片の面取部の外表面を化粧面側へ垂れながら浸透し、カット片の面取部全体が濡れ色になると共に、表面化粧材との境界まで表面化粧材を汚染することなく、浸透性塗料Iを塗布浸透させることができた。また、浸透性塗料Iが表側端面及び面取部の外表面に残存していないため、第1塗布工程後の第2切削工程において、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着することがなく、第2切削工程を円滑に行うことができた。また、第1及び第2塗布工程では、面取部において完全に浸透するように浸透性塗料Iを塗布したため、面取部の外表面上に樹脂層が形成されず、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。また、実施例4では、第1及び第2塗布工程において、木質繊維板が露出する表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部に浸透性塗料Iを塗布して表面化粧材との境界まで浸透させることにより、表側端面及び面取部全体の表層に樹脂含浸層が形成され、また、着色工程において、木質繊維板が露出する面取部に着色層が形成され、さらに透明樹脂層形成工程により、カット片の化粧面及び面取部の外表面上に、アクリル系透明樹脂で透明樹脂層が形成されたため、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透せず、試験体4(特に、木質繊維板で形成された表面側の第1基材)に膨れが生じなかった。つまり、耐薬品試験の結果は良好であった。
【0144】
(比較例1)
比較例1では、実施例1で行った第1及び第2塗布工程を行わず、実施例1と同様の第1切削工程、第2切削工程、着色層形成工程、透明樹脂層形成工程を順に行い、試験体5を得た。そして、試験体5に対し、耐薬品性試験を行った。
【0145】
比較例1では、第1及び第2塗布工程を行わなかったため、第2切削工程を円滑に行うことができ、また、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。また、比較例1では、第1及び第2塗布工程を行わなかったため、木質繊維板が露出する表側端面の表層に樹脂含浸層が形成されず、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透し、試験体5(特に、MDFで形成された表面側の第1基材)に膨れが生じた。つまり、耐薬品試験の結果は不良であった。
【0146】
(比較例2)
比較例2では、実施例1で用いた浸透性塗料Iの代わりに高粘度の浸透性塗料Vを用いて、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程を行ったところ、第1塗布工程において、浸透性塗料Vは、粘度が高いため、表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透せず、表側端面及び面取部の外表面に残存したままであった。また、第1塗布工程後、浸透性塗料Vが表側端面及び面取部の外表面に残存したまま、第2切削工程を行ったため、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着し、第2切削工程を円滑に行うことができなかった。
【0147】
(比較例3)
比較例3では、実施例1で用いた浸透性塗料Iの代わりに中粘度の浸透性塗料IVを用いて、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程を行ったところ、第1塗布工程において、浸透性塗料IVは、浸透性塗料Iに比べて粘度が高いため、表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に速やかに浸透せず、5秒程度の時間を要した。また、第1塗布工程において、浸透性塗料IVが速やかに浸透せず、表側端面及び面取部の外表面に残存している間に、切削加工で生じた屑が付着し、第2切削工程を円滑に行うことができなかった。
【0148】
(比較例4)
比較例4では、実施例1で用いた浸透性塗料Iの代わりに浸透性塗料IIIを用いて、実施例1と同様に、第1切削工程、第1塗布工程、第2切削工程、第2塗布工程、着色層形成工程、透明樹脂層形成工程を順に行い、試験体6を得た。そして、試験体6に対し、耐薬品性試験を行った。
【0149】
比較例4においても、低粘度の浸透性塗料IIIを用いたため、第1及び第2塗布工程において、浸透性塗料IIIは、塗布した瞬間に表側端面及び該表側端面に連続する面取部の外表面の一部から内部に浸透し、表側端面及び面取部の外表面に残存しなかった。また、浸透性塗料IIIが表側端面及び面取部の外表面に残存していないため、第1塗布工程後の第2切削工程において、切削加工装置及びその周辺の物に浸透性塗料が付着することがなく、第2切削工程を円滑に行うことができた。また、第1及び第2塗布工程では、面取部の外表面に塗布された浸透性塗料IIIが完全に浸透したため、面取部の外表面上に樹脂層が形成されず、着色層形成工程において面取部の外表面上に着色層をきれいに形成でき、剥がれる等の問題が生じなかった。一方、比較例4では、耐薬品試験において洗剤が四周側面から内部に浸透し、試験体6(特に、木質繊維板で形成された表面側の第1基材)に膨れが生じた。つまり、耐薬品試験の結果は不良であった。
【0150】
以上のような実施例1~4と比較例1~4により、第1及び第2塗布工程を行うことが好ましいこと、第1及び第2塗布工程においてHDIだけでなくポリオールを湿気硬化型樹脂組成物として含む低濃度(25℃での粘度が60mPa・s以下)の浸透性塗料I又はIIを用いることが好ましいこと、面取部の外表面に浸透性塗料が付着しないように第1及び第2塗布工程を行うことが好ましいこと等がわかる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、化粧板の製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0152】
1 化粧板
10 木質化粧基材
13 表面
14 長辺側面
15 短辺側面
16 面取部
17 雌実(実部)
17b 表側端面(端面)
18 雄実(実部)
18b 表側端面(端面)
21 着色層
22 透明樹脂層
30 浸透性塗料
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧加工が施された化粧面を有する化粧板の製造方法であって、
少なくとも一部が木質繊維板によって構成されて化粧加工が施された化粧面を有する矩形板状の木質化粧基材の上記化粧面を挟むように対向する2つの側面対の一方の第1側面対に、上記化粧面に連続する面取部と該面取部に連続する実部とを、切削によって少なくとも上記面取部に連続する端面において上記木質繊維板が露出するように形成する第1切削工程と、
上記第1側面対の上記端面に、湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈した浸透性塗料を塗布して浸透させる第1塗布工程と、
上記第1塗布工程において上記端面に塗布された上記浸透性塗料が内部に浸透した後、硬化する前に、上記2つの側面対の他方の第2側面対に、上記化粧面に連続する面取部と該面取部に連続する実部とを、切削によって少なくとも上記面取部に連続する端面において上記木質繊維板が露出するように形成する第2切削工程と、
上記第2側面対の上記端面に、上記浸透性塗料を塗布して内部に浸透させる第2塗布工程とを備え
上記第1切削工程と上記第1塗布工程とは、上記第1切削工程の固定治具を用いて連続してなされ、
上記第2切削工程と上記第2塗布工程とは、上記第2切削工程の固定治具を用いて連続してなされ
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧板の製造方法において、
上記湿気硬化型樹脂組成物は、ポリオールを主剤、ジフェニルメタンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートの少なくとも一方を硬化剤として含むものであり、
上記浸透性塗料は、25℃での粘度が60mPa・s以下になるように、上記湿気硬化型樹脂組成物を上記希釈剤で希釈したものである
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化粧板の製造方法において、
上記第1塗布工程では、上記化粧面に上記浸透性塗料が付着しないように、上記浸透性塗料を上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布し、
上記第2塗布工程では、上記化粧面に上記浸透性塗料が付着しないように、上記浸透性塗料を上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布する
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の化粧板の製造方法において、
上記第1塗布工程では、上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布された上記浸透性塗料が上記面取部の外表面全体に濡れ拡がりながら内部に浸透するように、上記化粧面を下向きにした状態で上記浸透性塗料を上記第1側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布し、
上記第2塗布工程では、上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布された上記浸透性塗料が上記面取部の外表面全体に濡れ拡がりながら内部に浸透するように、上記化粧面を下向きにした状態で上記浸透性塗料を上記第2側面対の上記端面及び該端面に連続する上記面取部の外表面の一部に塗布する
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の化粧板の製造方法において、
上記第1及び第2塗布工程では、上記各端面及び該各端面に連続する上記面取部の外表面の一部に上記浸透性塗料を塗布して浸透させる塗布浸透処理を複数回ずつ行う
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の化粧板の製造方法において、
上記第2塗布工程の後に実行され、上記第1及び第2塗布工程において塗布されて浸透した上記浸透性塗料の溶剤を加熱することによって揮発させる加熱工程を備えている
ことを特徴とする化粧板の製造方法。