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特開2022-57596鉄筋コンクリート部材、およびその製作方法
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  • 特開-鉄筋コンクリート部材、およびその製作方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057596
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート部材、およびその製作方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/20 20060101AFI20220404BHJP
   E04C 5/02 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
E04C3/20
E04C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165927
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】正木 徹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 修
(72)【発明者】
【氏名】山路 徹
(72)【発明者】
【氏名】与那嶺 一秀
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮一
(72)【発明者】
【氏名】網野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】竹中 寛
(72)【発明者】
【氏名】末岡 英二
【テーマコード(参考)】
2E163
2E164
【Fターム(参考)】
2E163FD11
2E163FD43
2E163FF11
2E163FF21
2E164AA02
2E164AA11
(57)【要約】
【課題】側方に突出した横鉄筋を備えた新規の鉄筋コンクリート部材を実現する。
【解決手段】鉄筋コンクリート部材(10)は、コンクリート側面(31)から側方に突出した少なくとも1つの横鉄筋(2)と、前記コンクリート側面(31)の少なくとも一部に配置されたコーティング層(1)と、を備え、前記コーティング層(1)は、前記横鉄筋(2)の下側外周面に密接している構成である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート側面から側方に突出した少なくとも1つの横鉄筋と、前記コンクリート側面の少なくとも一部に配置されたコーティング層と、を備えた鉄筋コンクリート部材であって、
前記コーティング層は、前記横鉄筋の下側外周面に密接していることを特徴とする、鉄筋コンクリート部材。
【請求項2】
前記コーティング層が、密接する前記横鉄筋の短手方向断面における外周長の3分の1以上の下側外周範囲と接していることを特徴とする、請求項1に記載の鉄筋コンクリート部材。
【請求項3】
前記コーティング層が、密接する前記横鉄筋の外周面の鉛直方向の最下点から、少なくとも下方5mmまでの範囲のコンクリート側面を覆うように配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の鉄筋コンクリート部材。
【請求項4】
前記コーティング層が、合成樹脂塗料からなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート部材。
【請求項5】
横鉄筋の少なくとも一方の端が、コンクリート側面から突出するように配筋してコンクリートを打設する打設ステップと、
前記コンクリート側面の少なくとも一部に、コーティング層を配置する配置ステップと、
を有し、
前記コーティング層が、前記横鉄筋の下側外周面に密接するように配置されることを特徴とする、鉄筋コンクリート部材の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄筋コンクリート部材、およびその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの表面に有機材料を塗布するコンクリートの表面処理方法がある。例えば、特許文献1には、耐久性等の向上のために、湿気硬化型ウレタンプレポリマーをコンクリートの表面に塗布してコンクリートの表面から内部空隙中に浸透させ、硬化させる、コンクリートの表面処理方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、コンクリート構造物に穿孔し、該穿孔穴から空隙に注入剤としてエポキシ樹脂を注入し、穿孔穴を該エポキシ樹脂で充填硬化させるコンクリート構造物の注入材注入工法が開示されている。
【0004】
また、側方に突出した横鉄筋を備えたプレキャストコンクリート部材においては、製作時に生じたコンクリートのブリーディング等の影響によって、横鉄筋の下部に空隙が形成される場合がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-145783号公報(2005年6月9日公開)
【特許文献2】特開2015-30987号公報(2015年2月16日公開)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】荒木大智ら,土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)公演概要集,p.451-452,2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プレキャストコンクリート部材等の鉄筋コンクリート部材が、海洋環境下に長期間放置された場合、鉄筋とコンクリートとの接合部分からの塩化物イオンの浸透により、コンクリート内部の鉄筋の腐食が発生するという問題が生じる。特に、ブリーディング等の影響によって空隙が形成され易い部分、すなわち、横鉄筋の下側領域はコンクリートの組成が粗くなるため、海洋環境下に曝された際に、海水の浸透に伴う塩化物イオンが浸透し易くなり、鉄筋の腐食が促進されることになる。
【0008】
しかしながら、特許文献1および2に開示された技術は、横鉄筋の下のブリーディングに着目したものではない。
【0009】
そこで、本発明の一態様は、側方に突出した横鉄筋を備えた新規の鉄筋コンクリート部材を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鉄筋コンクリート部材は、コンクリート側面から側方に突出した少なくとも1つの横鉄筋と、前記コンクリート側面の少なくとも一部に配置されたコーティング層と、を備えた鉄筋コンクリート部材であって、前記コーティング層は、前記横鉄筋の下側外周面に密接している構成である。
【0011】
前記の構成によれば、横鉄筋の下側外周面に密接するコーティング層を備えることにより、ブリーディング等の影響によって空隙が形成され易い部分、すなわち、横鉄筋の下側領域に、コンクリート側面から、水分および塩化物イオンが侵入することを防ぐことができる。これにより、塩化物イオンへの曝露による内部の鉄筋の腐食を防止することができる。その結果、コンクリート側面から側方に突出した横鉄筋を備えた鉄筋コンクリート部材の塩化物イオンに対する耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、前記コーティング層が、密接する前記横鉄筋の短手方向断面における外周長の3分の1以上の下側外周範囲と接している構成となっていることが好ましい。
【0013】
前記の構成によれば、横鉄筋の短手方向断面における外周の下側3分の1以上の範囲にわたってコンクリート側面にコーティング層が配置されるので、ブリーディング等の影響によって空隙が形成され易い横鉄筋の下側領域を、コーティング層によって十分に保護することができる。これにより、塩化物イオンへの曝露による内部の鉄筋の腐食を防止することができる。
【0014】
また、前記コーティング層が、密接する前記横鉄筋の外周面の鉛直方向の最下点から、少なくとも下方5mmまでの範囲のコンクリート側面を覆うように配置されていることが好ましい。
【0015】
前記の構成によれば、横鉄筋の下側外周面から、コーティング層で覆われていない非保護面までの距離を十分に保つことができる。これにより、水分および塩化物イオンが浸透し易い横鉄筋の下側領域に、水分および塩化物イオンが非保護面から侵入した場合であっても、これらの浸透経路が内部の鉄筋と離れているため、内部の鉄筋の腐食をより確実に防止することができる。
【0016】
また、前記コーティング層が、合成樹脂塗料からなることが好ましい。
【0017】
前記の構成によれば、合成樹脂塗料からなる塗膜は、水分および塩化物イオンに対して高い遮断性を備えているので、水分および塩化物イオンの侵入を確実に防止することができる。
【0018】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鉄筋コンクリート部材の製作方法は、横鉄筋の少なくとも一方の端が、コンクリート側面から突出するように配筋してコンクリートを打設する打設ステップと、前記コンクリート側面の少なくとも一部に、コーティング層を配置する配置ステップと、を有し、前記コーティング層が、前記横鉄筋の下側外周面に密接するように配置される構成である。
【0019】
前記の構成によれば、横鉄筋の下側外周面に密接するコーティング層を備えることにより、ブリーディング等の影響によって空隙が形成され易い横鉄筋の下側領域に、コンクリート側面から、水分および塩化物イオンが侵入することを防ぐことができる。これにより、塩化物イオンへの曝露による内部の鉄筋の腐食を防止することができる。その結果、コンクリート側面から側方に突出した横鉄筋を備えた鉄筋コンクリート部材であって、塩化物イオンに対する耐久性が向上した鉄筋コンクリート部材を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、側方に突出した横鉄筋を備えた新規の鉄筋コンクリート部材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る鉄筋コンクリート部材の構成の一例を示す模式図である。
図2】従来技術を示す図であり、鉄筋コンクリート部材における塩化物イオンの浸透性に及ぼすブリーディングの影響について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、先に説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない場合がある。
【0023】
まず、鉄筋コンクリート部材における塩化物イオンの浸透性に及ぼすブリーディングの影響について図2に基づき説明する。
【0024】
図2は、従来技術を示す図であり、(A)は、海水曝露試験に用いた鉄筋コンクリート試験体100の概略斜視図である。鉄筋コンクリート試験体100は、図2の(A)に示される3次元座標空間に配置される。XY平面は、水平方向に配置され、XY平面に直交する法線方向のうち、天頂へ向かう方向をZ軸負方向と定める。
【0025】
鉄筋コンクリート試験体100は、コンクリート側面31から側方(水平方向)に突出した横鉄筋2を備えている。図2の(B)は、図2の(A)におけるYZ平面の断面を示す断面図である。図2の(B)に示すように、鉄筋コンクリート試験体100には、ブリーディング等によって横鉄筋2の下部に空隙4が形成されていることがわかる。YZ平面におけるZ軸方向の空隙4の幅は、通常1mm程度である。
【0026】
2個の鉄筋コンクリート試験体100について、海水曝露試験を行い、電子プローブマイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer;EPMA)による面分析を行った。図2の(C-1)および(D-1)は、横鉄筋下部の分析断面写真であり、(C-2)および(D-2)は、横鉄筋下部の各分析断面について、塩化物イオンのEPMA面分析結果を示す。
【0027】
海水曝露試験では、図2の(A)に示す矢印I方向に沿って鉄筋コンクリート試験体100に向けて海水をかけることで、鉄筋コンクリート試験体100を海水に曝露させた。海水に曝露後6ヶ月経過後の鉄筋コンクリート試験体100を図2の(A)におけるD-D’矢視線を通り且つXZ平面に平行な断面で切断して、その切断面のうち、横鉄筋2の下部からコンクリート底部までの分析断面について、EPMA面分析を行った。
【0028】
その結果、図2の(C-2)および(D-2)に示すように、鉄筋コンクリート試験体100では、横鉄筋の下部に形成された空隙に沿って、X軸正方向(つまり、コンクリート側面31からコンクリート内部に向かう方向)およびZ軸正方向(つまり、横鉄筋2の下部からコンクリート底部に向かう方向)に、コンクリート内部まで塩化物イオンが浸透していることがわかる。そして、鉄筋コンクリート部材における塩化物イオンの浸透性に及ぼすブリーディングの影響は横鉄筋の下部付近の特にコンクリート側面31付近でより大きくなることがわかる。このため、横鉄筋とコンクリートとの接合部分から浸透する塩化物イオンに対する耐久性を向上させるためには、横鉄筋の下部に形成された空隙からの水分および塩化物イオンの浸透を防ぐ必要がある。
【0029】
(鉄筋コンクリート部材10の構成)
以下、本発明の一実施形態について、図1に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る鉄筋コンクリート部材10の構成の一例を示す模式図である。
【0030】
鉄筋コンクリート部材10は、図1に示される3次元座標空間に配置される。XY平面は、水平方向に配置され、XY平面に直交する法線方向のうち、天頂へ向かう方向をZ軸負方向と定める。図1の(A)は、横鉄筋2の長手方向に平行な方向の断面図(XZ平面)であり、図1の(B)は、X軸負方向から見たコンクリート側面31の側面図(YZ平面)である。
【0031】
なお、図1では、説明の都合上、鉄筋コンクリート部材10が備えている鉄筋の内の1本の横鉄筋2のみを図示している。しかし、鉄筋コンクリート部材10は、必要に応じて複数本の横鉄筋および縦鉄筋を備えていてもよい。
【0032】
ここで、本明細書では、鉄筋コンクリート部材10の作製過程においてコンクリートが固化する以前に水平方向に配筋されている鉄筋を、説明の都合上「横鉄筋」と称している。例えば、図1の(A)に示す鉄筋コンクリート部材10がプレキャスト部材である場合に、プレキャスト部材を製作する際に横向きに製作し、コンクリート固化後の鉄筋コンクリート部材10を、Y軸を回転軸として90°回転させることによって横鉄筋2が垂直方向に突出した状態、つまり鉛直方向鉄筋として使用する場合もあり得る。しかし、このような場合であっても、鉄筋コンクリート部材10の垂直方向に突出した鉄筋は、鉄筋コンクリート部材10としての作製過程においてコンクリートが固化する以前には水平方向に配筋されていたものでコンクリート打設時に鉄筋下側にブリーディングによる空隙が発生するので、本明細書中で規定される「横鉄筋」の範疇に入る。
【0033】
また、鉄筋コンクリート部材10は、工場内で製作されるプレキャスト部材であってもよく、工事現場で鉄筋を配筋しコンクリートを打設して製作する構造物であってもよい。製作時に水平方向に配筋された鉄筋を備えた構造体であれば、鉄筋コンクリート部材10が製作される場所は特に問わない。
【0034】
図1の(A)に示すように、鉄筋コンクリート部材10は、コンクリート部分3のコンクリート側面31(地際部31ともいう)から側方(図1におけるX軸負方向)に突出した横鉄筋2と、コンクリート側面31の少なくとも一部に配置されたコーティング層1とを備えている。コーティング層1は、横鉄筋2の下側外周面に密接している。なお、本明細書において、「密接」とは、横鉄筋2の下側領域にコンクリート側面31から水分および塩化物イオンが侵入しないように、横鉄筋2の下側外周面とコーティング層1とが、略隙間なく接していることを意味する。
【0035】
なお、横鉄筋2の下側外周面とは、横鉄筋2の露出基部の外周面のうち、鉛直方向(z軸方向)の最下点を中心点とした所定の範囲を意図する。
【0036】
横鉄筋2の下側外周面に密接するコーティング層1を備えることにより、ブリーディング等の影響によって空隙が形成され易い横鉄筋2の下側領域に、コンクリート側面31から、水分および塩化物イオンが侵入することを防ぐことができる。
【0037】
(コーティング層1)
図1の(B)に示すように、コーティング層1は、横鉄筋2の短手方向断面における外周長の3分の1以上の下側外周範囲と接していることが好ましく、2分の1以上の下側外周範囲と接していることがより好ましい。
【0038】
換言すれば、上述の「横鉄筋2の下側外周面」について言及される横鉄筋2の露出基部の外周面のうちの「所定の範囲」とは、好ましい態様において、鉛直方向(z軸方向)の最下点を中心点とした上記外周長の3分の1以上の範囲であり、より好ましくは、2分の1以上の範囲である。これにより、ブリーディング等の影響によって空隙が形成され易い横鉄筋2の下側領域を、コーティング層1によって十分に保護することができ、水分および塩化物イオンが当該領域から侵入することを十分に防ぐことができる。
【0039】
コーティング層1と横鉄筋2の外周との接触範囲の上限は特に限定されず、コーティング層1は、横鉄筋2の短手方向断面の全周と接するように設けられていてもよい。
【0040】
また、コーティング層1は、横鉄筋2の外周面の鉛直方向の最下点から、少なくとも下方5mmまでの範囲のコンクリート側面31を覆うように配置されていることが好ましく、少なくとも10mmまでの範囲のコンクリート側面31を覆うように配置されていることがより好ましい。
【0041】
換言すれば、横鉄筋2の外周面の鉛直方向の最下点から、コーティング層1の配置領域の鉛直方向の最下点までの距離Aは、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましい。これにより、横鉄筋2の下側外周面から、コーティング層1で覆われていない非保護面までの距離を十分に保つことができる。したがって、図1の(A)の矢印Sが示すように、横鉄筋2の下側領域において、水分および塩化物イオンが非保護面から侵入した場合であっても、これらの浸透経路(S)が内部の鉄筋と離れているため、内部の鉄筋の腐食をより確実に防止することができる。
【0042】
コーティング層1は、水分および塩化物イオンの浸透を遮断し得る合成樹脂塗料を、コンクリート側面31上に塗布し、硬化させることにより、積層することができる。上記合成樹脂塗料としては、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等が挙げられる。これらの合成樹脂塗料は、1種を単独で使用してもよく、複数種類を混合して併用してもよい。
【0043】
エポキシ樹脂塗料としては、コンクリート面に塗布される公知のエポキシ樹脂塗料を用いることができ、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤とを組み合わせた樹脂塗料、および、変性エポキシ樹脂塗料等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、芳香族型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。また、硬化剤としては、特に限定されず、エポキシ樹脂と組み合わせて使用される公知の硬化剤が挙げられる。
その他の合成樹脂塗料についても同様に、コンクリート面に塗布される公知のものを用いることができ、樹脂と硬化剤との組合せについては限定されない。
【0044】
コーティング層1を形成する合成樹脂塗料の塗布量は、固形分換算値として、240g/m以上であることが好ましい。コンクリート側面31上に、上記塗布量の合成樹脂塗料を塗布し、所定の厚みとなるように塗り広げ、硬化させることにより、水分および塩化物イオンの浸透に対し、優れた遮断効果が得られる。
【0045】
コーティング層1を形成する合成樹脂塗料の塗布量の上限値は、特に限定されないが、施工の観点からは、固形分換算値として、350g/m以下であることが好ましい。
【0046】
(横鉄筋2およびコンクリート部分3)
鉄筋コンクリート部材10が備えている横鉄筋2および、鉄筋コンクリート部材10のコンクリート部分3に使用する材料については、特に制限されない。横鉄筋2の太さ、コンクリートの組成等は、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
(鉄筋コンクリート部材10の製作方法)
本発明の一態様に係る鉄筋コンクリート部材10の製作方法は、横鉄筋2の少なくとも一方の端が、コンクリート側面31から突出するように配筋してコンクリートを打設する打設ステップと、前記コンクリート側面31の少なくとも一部に、コーティング層1を配置する配置ステップと、を有し、コーティング層1が、横鉄筋2の下側外周面に密接するように配置される構成である。
【0048】
打設ステップでは、横鉄筋2の少なくとも一方の端がコンクリート側面31から突出するように配筋してコンクリートを打設する。コンクリートを打設する方法については、公知の方法に従って行うことができる。
【0049】
配置ステップでは、必要に応じて型枠の脱型を行い、得られたコンクリート体のコンクリート側面31の少なくとも一部に、コーティング層1を配置する。
【0050】
コーティング層1の配置方法は、特に限定されず、コーティング層1を構成する合成樹脂塗料を、横鉄筋2の下側外周面に密接するように塗布し、硬化させればよい。合成樹脂塗料は、所定の塗布量を、一度に塗布し、硬化させてもよい。あるいは、所定の塗布量を複数回に分けて、塗布と硬化とを繰り返し行って積層してもよい。
【0051】
コーティング層1、横鉄筋2およびコンクリート部分3の各構成については、上述の鉄筋コンクリート部材10の構成において説明した内容と同じであるため、その説明を省略する。
【0052】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 コーティング層
2 横鉄筋
3 コンクリート部分
4 空隙
10 鉄筋コンクリート部材
31 コンクリート側面
図1
図2