(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057643
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/60 20180101AFI20220404BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220404BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20220404BHJP
【FI】
G16H20/60
A61B5/00 A
G16Y20/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166009
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】有馬 寛
(72)【発明者】
【氏名】尾上 剛史
(72)【発明者】
【氏名】半田 朋子
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XB02
4C117XE24
4C117XG01
4C117XG05
4C117XH01
4C117XJ13
4C117XM01
4C117XM04
4C117XP12
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】ユーザが減量しやすい摂取カロリーを導出できる技術を提供する。
【解決手段】情報処理装置20において、取得部32は、測定装置10で測定されたユーザの単位期間あたりの基礎代謝量を取得する。導出部34は、取得された基礎代謝量にもとづいて、ユーザに推奨する単位期間あたりの摂取カロリーを導出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置で測定されたユーザの単位期間あたりの基礎代謝量を取得する取得部と、
取得された基礎代謝量にもとづいて、前記ユーザに推奨する単位期間あたりの摂取カロリーを導出する導出部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記導出部は、取得された基礎代謝量にもとづいて前記ユーザの単位期間あたりの消費カロリーを導出し、導出された消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を第1しきい値以上に決定し、決定された割合を満たすように当該摂取カロリーを導出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、減量開始時と減量中の所定の時期のそれぞれの前記ユーザの基礎代謝量を取得し、
前記導出部は、前記減量開始時と前記所定の時期のそれぞれで、消費カロリーを導出し、摂取カロリーの割合を決定し、摂取カロリーを導出し、
前記導出部は、前記所定の時期の基礎代謝量が前記減量開始時の基礎代謝量より所定割合以上減少した場合、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を前記第1しきい値より大きい第2しきい値以上に決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ユーザの目標体重減少率と前記減量開始時からの経過時間との関係を示す情報を記憶している記憶部をさらに備え、
前記取得部は、前記減量開始時と前記所定の時期のそれぞれの前記ユーザの体重を取得し、
前記導出部は、前記所定の時期の基礎代謝量が前記減量開始時の基礎代謝量より前記所定割合以上減少していない場合、前記記憶部に記憶された当該所定の時期に対応する前記ユーザの目標体重減少率と、取得された体重から導出される当該所定の時期の当該ユーザの体重減少率との比較結果に応じて、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記導出部は、前記所定の時期の基礎代謝量が前記減量開始時の基礎代謝量より前記所定割合以上減少していない場合、当該所定の時期の体重減少率が当該所定の時期に対応する目標体重減少率より大きく、かつ、前回決定された割合が100%より小さければ、100%を最大値として消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を前回決定された割合より大きく決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記導出部は、前記所定の時期の基礎代謝量が前記減量開始時の基礎代謝量より前記所定割合以上減少していない場合、当該所定の時期の体重減少率が当該所定の時期に対応する目標体重減少率より小さく、かつ、前回決定された割合が前記第1しきい値より大きければ、当該第1しきい値を最小値として消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を前回決定された割合より小さく決定する、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1しきい値は70%である、
ことを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1しきい値は70%であり、
前記第2しきい値は80%である、
ことを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記取得部は、間接熱量測定法により前記測定装置で測定された基礎代謝量を取得する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項10】
ユーザの単位期間あたりの基礎代謝量を測定する測定装置と、
情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記測定装置で測定された基礎代謝量を取得する取得部と、
取得された基礎代謝量にもとづいて、前記ユーザに推奨する単位期間あたりの摂取カロリーを導出する導出部と、
を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項11】
測定装置で測定されたユーザの単位期間あたりの基礎代謝量を取得するステップと、
取得された基礎代謝量にもとづいて、前記ユーザに推奨する単位期間あたりの摂取カロリーを導出するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、減量を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定者のダイエット期間における代謝の変化を示す代謝変化情報を取得し、取得した代謝変化情報に基づいて、被測定者を安全にダイエットさせるための誘導情報を生成して出力する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。誘導情報は、代謝が低下したことを知らせる情報を含む。これにより、被測定者は、代謝をさらに低下させてしまう食事制限などのダイエットを控えたり、代謝を向上させるための運動を行ったりできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
減量においては食事療法が重要であり、食事量の設定が減量成功の鍵となる。そこで、減量しやすい摂取カロリーをユーザに把握させることが望まれる。
【0005】
本開示はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、ユーザが減量しやすい摂取カロリーを導出できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の情報処理装置は、測定装置で測定されたユーザの単位期間あたりの基礎代謝量を取得する取得部と、取得された基礎代謝量にもとづいて、ユーザに推奨する単位期間あたりの摂取カロリーを導出する導出部と、を備える。
【0007】
本開示の別の態様は、情報処理システムである。この情報処理システムは、ユーザの単位期間あたりの基礎代謝量を測定する測定装置と、情報処理装置と、を備える。情報処理装置は、測定装置で測定された基礎代謝量を取得する取得部と、取得された基礎代謝量にもとづいて、ユーザに推奨する単位期間あたりの摂取カロリーを導出する導出部と、を有する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本開示の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ユーザが減量しやすい摂取カロリーを導出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】複数の被験者における減量開始時の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合と、減量開始時の基礎代謝量に対する1週間後の基礎代謝量の割合との関係を示す図である。
【
図2】複数の被験者における減量開始から1週間後の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合と、減量開始時の基礎代謝量に対する減量開始から2週間後の基礎代謝量の割合との関係を示す図である。
【
図3】実施の形態の情報処理システムのブロック図である。
【
図4】ユーザの目標体重減少率と減量開始からの経過時間との関係の一例を示す図である。
【
図5】
図1の情報処理装置の減量開始時の処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の情報処理装置の減量期間の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、減量について研究し、以下の知見を得た。肥満とは脂肪が過剰に蓄積した状態であり、BMI(Body Mass Index)が25kg/m2以上のものを指す。そして、肥満により2型糖尿病や動脈硬化性疾患などの健康障害が生じている状態を肥満症と呼ぶ。肥満症は生命に危険を及ぼす病態であり、医学的に減量が必要である。減量の際には、食事による摂取カロリーが運動と代謝による消費カロリーを下回るように食事療法、運動療法および行動療法を組み合わせることが基本となる。しかしながら、肥満症患者において減量を達成することは容易ではなく、仮に一時的に減量が達成されても元の肥満状態に戻ることがしばしばある。
【0012】
食事療法、運動療法および行動療法のなかでも食事療法が減量においては最も重要であり、食事量の設定と調節が減量成功の鍵となる。しかしながら、性差、年齢、運動量等の違いに起因する消費カロリーの個人差が存在するため、減量のための摂取カロリーの設定は必ずしも容易ではない。
【0013】
理論上、摂取カロリーと消費カロリーが同じであれば体重は増減せず、摂取カロリーが消費カロリーを下回れば体重は減少する。また、摂取カロリーは全て食事由来となるが、消費カロリーは約60%が基礎代謝量、約30%が身体活動、約10%が摂食による熱産生となる。すなわち、消費カロリーにおける基礎代謝量の占める割合は高く、減量のために摂取カロリーを設定する際には、基礎代謝量を把握することが大切である。
【0014】
肥満症治診療において摂取カロリーを決める際には、ハリスベネディクトの公式により計算される基礎代謝量の理論値や厚生労働省が提供する日本人の基礎代謝量の標準値を参考にすることが一般的である。しかし、基礎代謝量の理論値は実測値としばしば乖離する。加えて、生体はエネルギーバランスの恒常性を維持する目的で、摂取カロリーの増加に伴い体重が増加すると基礎代謝量は増加し、摂取カロリーの低下に伴い体重が減少すると基礎代謝量は減少する。以上より、減量に際しては正しい基礎代謝量を把握して摂取カロリーを設定するとともに、基礎代謝量の変動を考慮して摂取カロリーを調整することが望ましい。しかしながら、基礎代謝量の変動を考慮した減量方法は未だ確立されていない。
【0015】
本発明者らは、肥満治療を行った患者について、減量中の摂取カロリー、体重、基礎代謝量の変化とそれぞれの相関について検討した。消費カロリーは患者の基礎代謝量と活動量から計算した。解析により以下のことが示された。
【0016】
(1)減量開始時に設定した「摂取カロリー/消費カロリー」と、減量開始から1週間後の基礎代謝量の変化に有意な相関を認めた。
【0017】
図1は、複数の被験者における減量開始時の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合と、減量開始時の基礎代謝量に対する1週間後の基礎代謝量の割合との関係を示す。それぞれの被験者において、減量開始時に基礎代謝量は保たれている状態にある。それぞれの被験者は、減量開始時の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を減量開始から1週間後まで概ね維持している。この測定結果において、相関係数は0.49であり、p値は0.05未満である。よって、減量開始時における消費カロリーに対する摂取カロリーの割合と、減量開始時の基礎代謝量に対する1週間後の基礎代謝量の割合との間に有意な相関がある。
【0018】
(2)減量開始時に設定した「摂取カロリー/消費カロリー」と、減量開始から1週間後の体重変化に相関は認めなかった。
【0019】
(3)減量開始から1週間の間の体重変化と基礎代謝量の変化に相関は認めなかった。
【0020】
以上の解析結果より、基礎代謝量の変化は体重変化より摂取カロリーにより規定されることが分かった。
【0021】
図2は、複数の被験者における減量開始から1週間後の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合と、減量開始時の基礎代謝量に対する減量開始から2週間後の基礎代謝量の割合との関係を示す。それぞれの被験者は、減量開始から1週間後の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を減量開始から2週間後まで概ね維持している。この測定結果において、相関係数は0.60であり、p値は0.05未満である。よって、減量開始から1週間後の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合と、減量開始時の基礎代謝量に対する2週間後の基礎代謝量の割合との間に有意な相関がある。
【0022】
図2より、減量開始から1週間後、即ちすでに基礎代謝量と体重が減少している状態の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を40~60%程度とすると、減量開始から2週間後に基礎代謝量はさらに低下してしまう。一方、減量開始から1週間後の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を70%以上にすれば減量開始から2週間後に基礎代謝量の低下が軽度であり、摂取カロリーの割合を90~100%にすれば減量開始から2週間後の基礎代謝量が減量開始時の値まで回復することが判明した。
【0023】
すなわち、減量により体重が減少し基礎代謝量が下がった状態、つまりこれ以上の減量がしばしば難しくなる状態であるいわゆる停滞期になっても、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合が90~100%である消費カロリーに見合った摂取カロリーにすれば、基礎代謝量はやがて回復することが示された。
【0024】
一般的に、減量が進むと基礎代謝量が下がり減量しにくくなることが知られているが、これらの知見により、停滞期においても摂取カロリーを見直すことで基礎代謝量を回復させたり、基礎代謝量の低下を軽度にすることにより、持続可能な減量プログラムを提供することが可能となる。
【0025】
本発明者らは、これらの知見に基づいて、減量開始時と減量中の所定の時期のそれぞれで、間接熱量測定法によりユーザの基礎代謝量を測定し、測定した基礎代謝量にもとづいてユーザが摂取すべき摂取カロリーを導出することで、減量しやすくできることを見出した。実施の形態は、このような思索に基づいて案出されたもので、以下にその具体的な構成を説明する。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0027】
図3は、実施の形態の情報処理システム1のブロック図である。情報処理システム1は、減量支援システムとも呼べる。情報処理システム1を利用するユーザは、肥満症患者に限らず、体調を維持または改善するためにダイエットを行う肥満症ではないユーザも含む。情報処理システム1は、測定装置10および情報処理装置20を備える。
【0028】
測定装置10は、間接熱量測定法によりユーザの単位期間あたりの基礎代謝量を測定する呼気代謝測定装置である。以下、単位期間が1日である一例を説明する。測定装置10としては、たとえば、メタボリックアナライザー MedGem(Microlife社製)、または、LUMEN(Meta Flow社製)などの公知の装置を利用できる。測定装置10は、有線通信または無線通信により、測定した基礎代謝量の情報を情報処理装置20に出力する。測定装置10は情報処理装置20と通信可能でなくてもよく、この場合、ユーザが、測定装置10で測定された基礎代謝量を読み取り、読み取った値を情報処理装置20に入力すればよい。
【0029】
情報処理装置20は、ユーザにより所持される携帯端末であり、たとえばスマートフォンまたはタブレット端末であるが、ウェアラブル機器などでもよい。情報処理装置20は、必ずしも携帯可能な電子機器である必要はなく、据え置き型のパーソナルコンピュータなどであってもよい。
【0030】
情報処理装置20は、ユーザの減量開始時に測定された基礎代謝量にもとづいて1日あたりの摂取カロリーをユーザに提示し、その後、減量中の1回以上の所定の時期毎に、その時期に測定された基礎代謝量と体重にもとづいて1日あたりの摂取カロリーをユーザに新たに提示する。所定の時期は特に限定されず、1週間毎でもよいし、1ヶ月毎でもよいし、ユーザが指定した時期でもよい。隣り合う所定の時期の間隔は均等でなくてもよい。
【0031】
ユーザは、減量開始時に提示された1日あたりの摂取カロリーの食事を取ることで減量を行い、この摂取カロリーを新たな摂取カロリーが提示されるまで維持する。減量中の所定の時期に摂取カロリーが新たに提示された場合、ユーザは提示された摂取カロリーの食事に切り替えて減量を続ける。
【0032】
情報処理装置20は、表示部22、入力部24、処理部26および記憶部28を備える。表示部22は、液晶ディスプレイなどの表示装置である。入力部24は、たとえば、表示部22の表示面に設けられ、表示部22に表示されるアイコンやキーボードの文字などを選択するためのユーザのタッチ操作が入力されるタッチパネルを含む。入力部24は、タッチ操作による操作信号を処理部26に出力する。情報処理装置20がパーソナルコンピュータである場合、入力部24は、ユーザの操作が入力されるキーボード、マウスなどを含んでよい。
【0033】
処理部26は、受付部30、取得部32、導出部34および提示部36を備える。処理部26の構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0034】
(減量開始時の処理)
測定装置10は、減量開始時のユーザの基礎代謝量を測定し、測定した基礎代謝量の情報を情報処理装置20に出力する。なお、減量開始時とはユーザの任意で設定でき、ユーザが減量開始の指示を入力部24に入力した時が減量開始時となる。
【0035】
受付部30は、入力部24から出力された操作信号にもとづいて、ユーザの1日あたりの身体活動によるエネルギー消費量の入力操作を受け付け、受け付けたエネルギー消費量の情報を取得部32に出力する。ユーザは、たとえば国際標準化身体活動質問票の質問に対して予め回答し、その回答内容にもとづいて身体活動によるエネルギー消費量を推定できる。なお、表示部22が国際標準化身体活動質問票の質問を表示し、ユーザが回答を入力部24に入力し、入力部24に入力された回答の情報をもとに処理部26が身体活動によるエネルギー消費量を推定してもよい。
【0036】
受付部30は、減量開始時のユーザの体重の入力操作を受け付け、受け付けた体重の情報を記憶部28に記憶させる。
【0037】
取得部32は、測定装置10から出力された基礎代謝量と、受付部30から出力された身体活動によるエネルギー消費量とを取得し、取得した情報を導出部34に出力する。
【0038】
導出部34は、取得部32から出力された基礎代謝量と、身体活動によるエネルギー消費量と、1日あたりの食事誘発性熱産生とにもとづいて、ユーザの1日あたりの消費カロリーを導出する。食事誘発性熱産生は、所定値として記憶部28に記憶されていてもよいし、摂取カロリーを変数として摂取カロリーの10%に設定してもよい。導出部34は、基礎代謝量と、身体活動によるエネルギー消費量と、食事誘発性熱産生との和を消費カロリーとする。
【0039】
導出部34は、導出した消費カロリーに対する摂取カロリーの割合、すなわち「摂取カロリー/消費カロリー×100」を所定の第1しきい値以上に決定し、決定された割合を満たすように摂取カロリーを導出し、導出した摂取カロリーを提示部36に出力する。第1しきい値は、実験により適宜定めることができ、たとえば70%である。つまり導出部34は、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合が第1しきい値以上になるように当該摂取カロリーを導出する。
【0040】
減量開始時の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合は、予め第1しきい値に設定されてもよいし、ユーザの肥満症を治療する場合には医師などによりユーザの状態や目標体重に応じて75%、80%などに設定されてもよい。減量開始時の摂取カロリーの割合の上限は、例えば90%であってもよく、実験により適宜定めることができる。
【0041】
提示部36は、表示部22を介して、導出部34から出力された減量開始時の摂取カロリーをユーザに提示する。表示部22は、提示部36の制御にしたがい摂取カロリーを表示する。表示部22は、例えば、摂取カロリーに加え、その摂取カロリーを満たす朝食、昼食および夕食のメニューの例を表示してもよい。
【0042】
図1の測定結果から、減量開始時の消費カロリーに対する摂取カロリーの割合が70%以上であれば、減量開始から1週間後の基礎代謝量の低下を軽度に、即ち約10%以下に抑制しやすい。よって、減量の成功確率を高めやすい。
【0043】
また、図示は省略するが、
図1の被験者とは別の複数の被験者に対する測定結果では、6ヶ月で5~15%の減量に成功した13人の被験者の減量開始時の「摂取カロリー/消費カロリー×100」の平均値は、74.3%であった。よって、減量開始時における「摂取カロリー/消費カロリー×100」が70%以上であれば、減量が成功しやすいといえる。
【0044】
一方、
図1において、減量開始時の「摂取カロリー/消費カロリー×100」が70%未満では、減量開始から1週間後の基礎代謝量の低下が10%を超える可能性がある。基礎代謝量が減りすぎると、減量が進まず体重が停滞してしまうため、減量が成功しにくくなりやすい。
【0045】
(減量中の所定の時期での処理)
測定装置10、受付部30、取得部32、導出部34および提示部36は、減量中の所定の時期のそれぞれにおいて以下の処理を行う。
【0046】
提示部36は、所定の時期になると、基礎代謝量と体重を測定すべきことを表示部22を介してユーザに提示する。
【0047】
測定装置10は、所定の時期のユーザの基礎代謝量を測定し、測定した基礎代謝量の情報を情報処理装置20に出力する。
【0048】
受付部30は、所定の時期のユーザの体重の入力操作を受け付け、受け付けた体重の情報を取得部32に出力する。
【0049】
取得部32は、測定装置10から出力されたユーザの基礎代謝量と、受付部30から出力されたユーザの体重を取得し、取得した情報を導出部34に出力する。
【0050】
導出部34は、所定の時期の基礎代謝量が減量開始時の基礎代謝量より所定割合以上減少した場合、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を第2しきい値以上、かつ、100%以下に決定する。所定割合は、例えば10%である。第2しきい値は、第1しきい値より大きく、例えば80%である。所定割合と第2しきい値は、実験により適宜定めることができる。この場合、導出部34は、今回の摂取カロリーの割合を前回決定された摂取カロリーの割合より例えば10%大きく決定してもよい。
【0051】
たとえば、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合が70%で減量開始した場合、1週後の基礎代謝量が減量開始時の値より10%を超えて減少すると、ユーザが食事量を間違えているなどの可能性がある。なぜなら、
図2の結果から、減量開始時に摂取カロリーの割合が70%であれば、1週後の基礎代謝量の減少量は約10%以下になる確率が高いためである。
【0052】
基礎代謝量が減量開始時の値より減りすぎると、減量が進まず体重が停滞してしまう。実施の形態では、基礎代謝量が減りすぎた場合、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合が80~100%の範囲の値に決定されるので、基礎代謝量を増加させやすい。
【0053】
消費カロリーに対する摂取カロリーの割合が100%であれば、所定の時期の1週間後には基礎代謝量が減量開始時の値に概ね回復するので、その時点で食事カロリーの割合は100%未満になり、再び減量フェーズに入る。よって、ユーザの基礎代謝量の回復を促しながら、食事量を制限しすぎることなく、ユーザの負担を減らした減量が可能となる。
【0054】
一方、所定の時期の基礎代謝量が減量開始時の基礎代謝量より所定割合以上減少していない場合、次の処理が行われる。
【0055】
図4は、ユーザの目標体重減少率と減量開始からの経過時間との関係の一例を示す。この関係は、実験により予め定められる。この例では、減量開始から12週での目標体重減少率は8%であり、24週での目標体重減少率は10%である。24週での目標体重減少率は、減量の最終的な目標である。
【0056】
記憶部28は、ユーザの目標体重減少率と減量開始時からの経過時間との関係を示す情報を予め記憶している。記憶部28は、それぞれ異なる複数の関係を記憶していてもよい。複数の関係は、たとえば、減量開始から12週での目標体重減少率が4%であり、24週での目標体重減少率が5%である関係を含んでもよい。この場合、ユーザの減量目標に応じて、複数の関係の中から1つの関係がユーザ等により予め選択される。
【0057】
導出部34は、減量開始時と所定の時期のそれぞれのユーザの体重にもとづいて、所定の時期の体重減少率を導出する。
【0058】
導出部34は、所定の時期の基礎代謝量が減量開始時の基礎代謝量より所定割合以上減少していない場合、記憶部28に記憶された当該所定の時期に対応するユーザの目標体重減少率と、導出された当該所定の時期のユーザの体重減少率との比較結果に応じて、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を決定する。
【0059】
導出部34は、所定の時期の基礎代謝量が減量開始時の基礎代謝量より所定割合以上減少していない場合、当該所定の時期の体重減少率が当該所定の時期に対応する目標体重減少率以上であり、かつ、前回決定された摂取カロリーの割合が100%より小さければ、100%を最大値として消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を前回決定された割合より大きく決定する。この場合、導出部34は、今回の摂取カロリーの割合を前回決定された摂取カロリーの割合より例えば10%大きく決定してもよい。これにより、食事量の制限によるユーザの負担を低減できる。また、基礎代謝量の低下を抑制するか、または、回復させることができる。
【0060】
導出部34は、所定の時期の基礎代謝量が減量開始時の基礎代謝量より所定割合以上減少していない場合、当該所定の時期の体重減少率が当該所定の時期に対応する目標体重減少率より小さく、かつ、前回決定された割合が第1しきい値より大きければ、当該第1しきい値を最小値として消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を前回決定された割合より小さく決定する。この場合、導出部34は、今回の摂取カロリーの割合を前回決定された摂取カロリーの割合より例えば10%小さく決定してもよい。これにより、ユーザの体重減少率を目標体重減少率に近づけやすくできる。第1しきい値が最小値であるため、基礎代謝量が減りすぎることを抑制できる。
【0061】
導出部34は、所定の時期の基礎代謝量が減量開始時の基礎代謝量より所定割合以上減少していない場合、当該所定の時期の体重減少率が当該所定の時期に対応する目標体重減少率と等しければ、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を前回決定された割合に維持してもよい。これにより、ユーザに合った摂取カロリーの割合で減量を続けることができる。
【0062】
導出部34は、決定された割合を満たすように摂取カロリーを導出し、導出した摂取カロリーを提示部36に出力する。提示部36は、表示部22を介して、導出部34から出力された摂取カロリーをユーザに提示する。既述のように、ユーザは提示された摂取カロリーの食事に切り替えて減量を続ける。
【0063】
次に、以上の構成による情報処理装置20の全体的な動作を説明する。
図5は、
図1の情報処理装置20の減量開始時の処理を示すフローチャートである。
図5の処理は、ユーザが減量開始の指示を入力部24に入力すると実行される。
【0064】
取得部32は、測定装置10で測定された基礎代謝量を取得し(S10)、ユーザにより入力された身体活動によるエネルギー消費量を取得する(S12)。導出部34は、基礎代謝量、身体活動によるエネルギー消費量、食事誘発性熱産生をもとに消費カロリーを導出し(S14)、導出した消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を第1しきい値以上に決定し、決定された割合を満たすように摂取カロリーを導出する(S16)。提示部36は、導出された摂取カロリーをユーザに提示し(S18)、処理を終了する。
【0065】
図6は、
図1の情報処理装置20の減量期間の処理を示すフローチャートである。
図6の処理は、
図5の処理の後、ユーザの減量中において定期的に繰り返し実行される。
【0066】
所定の時期でなければ(S30のN)、処理を終了する。所定の時期であれば(S30のY)、取得部32は、測定装置10で測定された基礎代謝量を取得し(S32)、ユーザの体重を取得する(S34)。取得した基礎代謝量が、
図5のS10で取得された減量開始時の基礎代謝量から10%以上減少した場合(S36のY)、導出部34は、摂取カロリーの割合を80~100%の範囲の値に決定し(S38)、基礎代謝量、身体活動によるエネルギー消費量、食事誘発性熱産生をもとに消費カロリーを導出し(S50)、決定した割合を満たすように摂取カロリーを導出する(S52)。提示部36は、導出された摂取カロリーをユーザに提示し(S54)、処理を終了する。
【0067】
S36で、基礎代謝量が減量開始時の基礎代謝量から10%以上減少していない場合(S36のN)、導出部34は、体重減少率を導出し(S40)、取得部32は、記憶部28から目標体重減少率を取得する(S42)。体重減少率が目標体重減少率より低ければ(S44のY)、導出部34は、最小値を第1しきい値(70%)として摂取カロリーの割合を前回の割合より小さく決定し(S46)、S50に移る。体重減少率が目標の体重減少率以上であれば(S44のN)、導出部34は、最大値を100%として摂取カロリーの割合を前回の割合より大きく決定し(S48)、S50に移る。
【0068】
本実施の形態によれば、測定されたユーザの基礎代謝量に応じた減量しやすい摂取カロリーを導出できる。基礎代謝量が間接熱量測定法により測定されることで、減量に伴う基礎代謝量の変化を摂取カロリーに正確に反映できる。
【0069】
また、減量に伴い基礎代謝量が低下した状態でも消費カロリーに見合った摂取カロリーを設定できるので、基礎代謝量を回復させることができる。一般的には基礎代謝量の低下が減量を困難にし、リバウンドの原因の一つとなると考えられるが、このように基礎代謝量を回復させることができれば、長期間に渡って体重が減少した状態を維持することが可能となる。また、漫然と厳しい食事制限を行い続けるのではなく、目標体重に合わせた理想的な体重減少の速さを基にその都度最適な摂取カロリーの設定を行うため、減量時におけるユーザの精神的、肉体的な負担も軽減できる。
【0070】
以上、本開示を実施の形態にもとづいて説明した。本開示は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0071】
たとえば実施の形態では、提示部36は表示部22を介して各種情報をユーザに提示するが、これに加えて、または、これに替えて、図示しない音声出力部を介して音声で各種情報をユーザに提示してもよい。
【0072】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の情報処理装置は、測定装置で測定されたユーザの単位期間あたりの基礎代謝量を取得する取得部と、取得された基礎代謝量にもとづいて、前記ユーザに推奨する単位期間あたりの摂取カロリーを導出する導出部と、を備える。
【0073】
この態様によると、測定されたユーザの基礎代謝量に応じた減量しやすい摂取カロリーを導出できる。
【0074】
前記導出部は、取得された基礎代謝量にもとづいて前記ユーザの単位期間あたりの消費カロリーを導出し、導出された消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を第1しきい値以上に決定し、決定された割合を満たすように当該摂取カロリーを導出してもよい。この場合、減量しやすい摂取カロリーを導出できる。
【0075】
前記取得部は、減量開始時と減量中の所定の時期のそれぞれの前記ユーザの基礎代謝量を取得し、前記導出部は、前記減量開始時と前記所定の時期のそれぞれで、消費カロリーを導出し、摂取カロリーの割合を決定し、摂取カロリーを導出し、前記導出部は、前記所定の時期の基礎代謝量が前記減量開始時の基礎代謝量より所定割合以上減少した場合、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を前記第1しきい値より大きい第2しきい値以上に決定してもよい。この場合、減量により基礎代謝量が減りすぎても、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を増やすことで、ユーザの基礎代謝量を回復させることができる。よって、ユーザの負担を減らして、減量しやすくできる。
【0076】
前記ユーザの目標体重減少率と前記減量開始時からの経過時間との関係を示す情報を記憶している記憶部をさらに備え、前記取得部は、前記減量開始時と前記所定の時期のそれぞれの前記ユーザの体重を取得し、前記導出部は、前記所定の時期の基礎代謝量が前記減量開始時の基礎代謝量より前記所定割合以上減少していない場合、前記記憶部に記憶された当該所定の時期に対応する前記ユーザの目標体重減少率と、取得された体重から導出される当該所定の時期の当該ユーザの体重減少率との比較結果に応じて、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を決定してもよい。この場合、減量中の所定の時期で、ユーザの体重減少率と目標体重減少率との比較結果に応じた、ユーザに合った摂取カロリーを導出できる。
【0077】
前記導出部は、前記所定の時期の基礎代謝量が前記減量開始時の基礎代謝量より前記所定割合以上減少していない場合、当該所定の時期の体重減少率が当該所定の時期に対応する目標体重減少率より大きく、かつ、前回決定された割合が100%より小さければ、100%を最大値として消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を前回決定された割合より大きく決定してもよい。この場合、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を大きくすることで、食事量の制限によるユーザの負担を低減できる。
【0078】
前記導出部は、前記所定の時期の基礎代謝量が前記減量開始時の基礎代謝量より前記所定割合以上減少していない場合、当該所定の時期の体重減少率が当該所定の時期に対応する目標体重減少率より小さく、かつ、前回決定された割合が前記第1しきい値より大きければ、当該第1しきい値を最小値として消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を前回決定された割合より小さく決定してもよい。この場合、消費カロリーに対する摂取カロリーの割合を小さくすることで、体重減少率を目標体重減少率に近づけやすくできる。
【0079】
前記第1しきい値は70%であってもよい。この場合、減量の成功確率を高めやすい。
【0080】
前記第1しきい値は70%であり、前記第2しきい値は80%であってもよい。この場合、減量の成功確率を高めやすい。
【0081】
前記取得部は、間接熱量測定法により前記測定装置で測定された基礎代謝量を取得してもよい。この場合、減量に伴う基礎代謝量の変化を摂取カロリーに正確に反映できる。
【0082】
本開示の別の態様は、情報処理システムである。情報処理システムは、ユーザの単位期間あたりの基礎代謝量を測定する測定装置と、情報処理装置と、を備え、前記情報処理装置は、前記測定装置で測定された基礎代謝量を取得する取得部と、取得された基礎代謝量にもとづいて、前記ユーザに推奨する単位期間あたりの摂取カロリーを導出する導出部と、を有する。
【0083】
本開示の別の態様は、プログラムである。プログラムは、測定装置で測定されたユーザの単位期間あたりの基礎代謝量を取得するステップと、取得された基礎代謝量にもとづいて、前記ユーザに推奨する単位期間あたりの摂取カロリーを導出するステップと、をコンピュータに実行させる。
【符号の説明】
【0084】
1…情報処理システム、10…測定装置、20…情報処理装置、22…表示部、24…入力部、26…処理部、28…記憶部、30…受付部、32…取得部、34…導出部、36…提示部。