(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057734
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】電圧表示制御装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
G01R 19/165 20060101AFI20220404BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20220404BHJP
G01R 19/10 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G01R19/165 Q
B23Q17/00 E
G01R19/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166130
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慶
(72)【発明者】
【氏名】小島 輝久
【テーマコード(参考)】
2G035
3C029
【Fターム(参考)】
2G035AA13
2G035AA22
2G035AB08
2G035AC01
2G035AC08
2G035AC15
2G035AD41
2G035AD42
2G035AD44
2G035AD46
2G035AD48
2G035AD53
3C029FF05
(57)【要約】
【課題】交流電圧を通信周期よりも短い時間間隔で表示できる電圧表示制御装置及び工作機械を提供する。
【解決手段】電圧表示制御装置は、交流電圧の電圧値信号を生成する生成回路、電圧の表示処理を実行する表示制御回路、表示制御回路との間で所定周期毎に通信する中継回路を備える。中継回路は、所定周期の間に入力した各電圧値信号に対応した識別子を作成し、所定周期の開始時点と、開始時点後、最初に入力した第一電圧値信号の入力時点との間の第一時間を測定し、所定周期の間にて、連続入力した二つの第N電圧値信号及び第N+1電圧値信号の入力時点間の第二時間を測定し、第一電圧値信号に対応する第一識別子に紐づけて、第一時間及び第一電圧値信号を表示制御回路に送信し、第一電圧値信号の後に入力した第N+1電圧値信号に対応する第N+1識別子に紐づけて、第一時間、N個の第二時間及び第N+1電圧値信号を表示制御回路に送信する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧の電圧値を示す電圧値信号を所定のサンプリング周期で生成する生成回路と、
前記交流電圧の表示処理を実行する表示制御回路と、
該表示制御回路との間で前記サンプリング周期よりも長い所定周期毎に通信し、前記生成回路から入力した前記電圧値信号を前記表示制御回路に送信する中継回路と
を備え、
前記中継回路は、
前記所定周期の間に入力した各電圧値信号に対応した識別子を作成する作成部と、
前記所定周期の開始時点と、該開始時点後、最初に入力した第一電圧値信号の入力時点との間の第一時間を測定する第一測定部と、
前記所定周期の間にて、連続入力した二つの第N電圧値信号(Nは自然数)及び第N+1電圧値信号の入力時点間の第二時間を測定する第二測定部と、
前記第一電圧値信号に対応する第一識別子に紐づけて、前記第一時間及び前記第一電圧値信号を前記表示制御回路に送信する第一送信部と、
前記第一電圧値信号の後に入力した第N+1電圧値信号に対応する第N+1識別子に紐づけて、前記第一時間、N個の前記第二時間及び第N+1電圧値信号を前記表示制御回路に送信する第二送信部と
を有し、
前記表示制御回路は、前記中継回路から受信した情報に基づいて、前記所定周期よりも短い時間間隔で時系列に前記電圧値を表示する処理を実行する
電圧表示制御装置。
【請求項2】
前記表示制御回路は、
前記第一送信部からの情報を受信した場合、前記開始時点から前記第一時間が経過した時点における前記交流電圧の電圧値を表示する処理を実行する第一処理部と、
前記第二送信部からの情報を受信した場合、前記開始時点から前記第一時間及びN個の前記第二時間が経過した時点における前記交流電圧の電圧値を表示する処理を実行する第二処理部と
を備える請求項1に記載の電圧表示制御装置。
【請求項3】
前記中継回路は、前記所定周期の間に入力した前記電圧値信号の数Pが所定数Qを超過した場合(P及びQは自然数)、前記第一識別子から第P-Q識別子に紐付いた情報を送信せず、第P-Q+1識別子から第P識別子に紐付いた情報を送信する
請求項1又は2に記載の電圧表示制御装置。
【請求項4】
前記表示制御回路は、前記所定周期の間に入力した前記電圧値信号の数Pが所定数Qを超過した場合(P及びQは自然数)、前記第一識別子から第P-Q識別子に紐付いた情報の処理を実行せず、第P-Q+1識別子から第P識別子に紐付いた情報の処理を実行する
請求項1又は2に記載の電圧表示制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の電圧表示制御装置を備える工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、交流電源の電圧表示を制御する電圧表示制御装置及び該電圧表示制御装置を備える工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三相交流電源の二相間の電圧と所定電圧とを比較し、二相間の電圧に比例したパルス信号を出力して、電圧異常の有無を検出する検出装置がある。該検出装置が電圧の異常を検出した場合、電源に接続した駆動装置を停止し、安全を確保することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
安全性の向上の為に、検出装置による検出に加えて、電圧を画面に表示し、作業者による目視での監視を行うことが望ましい。目視での監視の為に、駆動装置は、例えば、電源電圧を検出する電圧検出回路と、表示画面とを備える。駆動装置は電圧検出回路の検出結果を出力する第一制御回路と、表示画面を制御する第二制御回路とを備える場合がある。第一制御回路と第二制御回路とは所定の通信周期で通信する。電圧検出装置は所定のサンプリング周期で電圧を示す信号を第二制御回路に送信する。通信周期はサンプリング周期よりも長いので、第二制御回路は交流電圧をサンプリング周期で表示できない。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、交流電圧を通信周期よりも短い時間間隔で表示できる電圧表示制御装置及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る電圧表示制御装置は、交流電圧の電圧値を示す電圧値信号を所定のサンプリング周期で生成する生成回路と、前記交流電圧の表示処理を実行する表示制御回路と、該表示制御回路との間で前記サンプリング周期よりも長い所定周期毎に通信し、前記生成回路から入力した前記電圧値信号を前記表示制御回路に送信する中継回路とを備え、前記中継回路は、前記所定周期の間に入力した各電圧値信号に対応した識別子を作成する作成部と、前記所定周期の開始時点と、該開始時点後、最初に入力した第一電圧値信号の入力時点との間の第一時間を測定する第一測定部と、前記所定周期の間にて、連続入力した二つの第N電圧値信号(Nは自然数)及び第N+1電圧値信号の入力時点間の第二時間を測定する第二測定部と、前記第一電圧値信号に対応する第一識別子に紐づけて、前記第一時間及び前記第一電圧値信号を前記表示制御回路に送信する第一送信部と、前記第一電圧値信号の後に入力した第N+1電圧値信号に対応する第N+1識別子に紐づけて、前記第一時間、N個の前記第二時間及び第N+1電圧値信号を前記表示制御回路に送信する第二送信部とを有し、前記表示制御回路は、前記中継回路から受信した情報に基づいて、前記所定周期よりも短い時間間隔で時系列に前記電圧値を表示する処理を実行する。
【0007】
本開示においては、中継回路は、所定周期、即ち通信周期の間に入力した第一電圧値信号に対応した第一識別子を作成し、第一識別子に紐づけて、第一時間及び第一電圧値信号を表示制御回路に送信する。また、第N+1電圧値信号(Nは自然数)に対応した第N+1識別子を作成し、第N+1識別子に紐づけて、第一時間、N個の第二時間及び第N+1電圧値信号を表示制御回路に送信する。表示制御回路は、中継回路から受信した情報に基づいて、所定周期よりも短い時間間隔で電圧値を時系列に表示する処理を実行する。
【0008】
本開示の一実施形態に係る電圧表示制御装置は、前記表示制御回路は、前記第一送信部からの情報を受信した場合、前記開始時点から前記第一時間が経過した時点における前記交流電圧の電圧値を表示する処理を実行する第一処理部と、前記第二送信部からの情報を受信した場合、前記開始時点から前記第一時間及びN個の前記第二時間が経過した時点における前記交流電圧の電圧値を表示する処理を実行する第二処理部とを備える。
【0009】
本開示においては、表示制御回路は、第一送信部及び第二送信部から受信した情報に基づいて、所定周期よりも短い時間間隔で交流電圧の電圧値を表示する。
【0010】
本開示の一実施形態に係る電圧表示制御装置は、前記中継回路は、前記所定周期の間に入力した前記電圧値信号の数Pが所定数Qを超過した場合(P及びQは自然数)、前記第一識別子から第P-Q識別子に紐付いた情報を送信せず、第P-Q+1識別子から第P識別子に紐付いた情報を送信する。
【0011】
本開示においては、中継回路は、所定周期の間に入力した前記電圧値信号の数Pが所定数Qを超過した場合、第一識別子から第P-Q識別子に紐付いた情報を送信しない。中継回路はP個の電圧値信号に関する情報を記憶できればよく、記憶容量を削減できる。
【0012】
本開示の一実施形態に係る電圧表示制御装置は、前記表示制御回路は、前記所定周期の間に入力した前記電圧値信号の数Pが所定数Qを超過した場合(P及びQは自然数)、前記第一識別子から第P-Q識別子に紐付いた情報の処理を実行せず、第P-Q+1識別子から第P識別子に紐付いた情報の処理を実行する。
【0013】
本開示においては、表示制御回路は、所定周期の間に入力した電圧値信号の数Pが所定数Qを超過した場合、第一識別子から第P-Q識別子に紐付いた情報を処理しない。表示制御回路における処理を削減することができる。
【0014】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、上述の電圧表示制御装置を備える。
【0015】
本開示においては、上述の電圧表示制御装置と同様な作用が生じる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一実施形態に係る電圧表示制御装置及び工作機械にあっては、中継回路は、所定周期、即ち通信周期の間に入力した第一電圧値信号に対応した第一識別子を作成し、第一識別子に紐づけて、第一時間及び第一電圧値信号を表示制御回路に送信する。また、第N+1電圧値信号に対応した第N+1識別子を作成し、第N+1識別子に紐づけて、第一時間、N個の第二時間及び第N+1電圧値信号を表示制御回路に送信する。表示制御回路は、中継回路から受信した情報に基づいて、所定周期よりも短い時間間隔で電圧値を時系列に表示する処理を実行する。故に表示制御回路は、通信周期よりも短いサンプリング周期で電圧値を時系列に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係る工作機械の略示斜視図である。
【
図2】工作機械用カバーを設けた工作機械を略示する斜視図である。
【
図3】三相交流電源、制御盤、表示制御回路、表示部等のブロック図である。
【
図5】変換回路における三相交流電圧のパルス波への変換を説明する説明図である。
【
図6】駆動制御回路及び表示制御回路のブロック図である。
【
図7】通信周期の開始時点W1及び終了時点W2、三つの電圧値信号の入力時点k1~k3、通信周期W、第一時間T1、第二時間T2a、第二時間T2bを説明する説明図である。
【
図8】第一領域、第二領域及び第三領域への記憶状態である第一状態、第二状態及び第三状態を示す模式図である。
【
図9】通信周期Wの間に、三つの電圧値信号が駆動制御回路に連続入力した場合に、表示制御回路が実行する電圧表示処理の説明図である。
【
図10】通信周期の開始時点W1及び終了時点W2、四つの電圧値信号の入力時点k1~k4、通信周期W、第一時間T1、第二時間T2a、第二時間T2b、第二時間T2cを説明する説明図である。
【
図11】第一領域、第二領域及び第三領域への記憶状態である第一状態、第二状態、第三状態及び第四状態を示す模式図である。
【
図12】通信周期Wの間に、四つの電圧値信号が駆動制御回路に連続入力した場合に、表示制御回路が実行する電圧表示処理の説明図である。
【
図13】実施の形態2に係る駆動制御回路及び表示制御回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る工作機械を示す図面に基づいて説明する。以下の説明では図に示す上下前後左右を使用する。
図1は工作機械100の略示斜視図、
図2は工作機械用カバー1を設けた工作機械100を略示する斜視図である。工作機械100は基台20、固定台21、Y方向移動装置22、X方向移動装置26、立柱28、Z方向移動装置30、主軸ヘッド32、工具交換装置10、主軸モータ35、ワーク保持部120等を備える。基台20は床面上に固定する。固定台21は前後方向に長い平面視矩形状の箱形をなし、基台20上に設ける。ワーク保持部120は固定台21の前部に設ける。固定台21は、Y方向移動装置22を固定する。Y方向移動装置22はY軸モータ23(
図3参照)及びY軸モータ23が駆動するボールねじ機構(図示略)を備える。
【0019】
Y方向移動装置22のボールねじ機構にX方向移動装置26が設けてある。X方向移動装置26はX軸モータ27(
図3参照)及びX軸モータ27が駆動するボールねじ機構(図示略)を備える。X方向移動装置26のボールねじ機構に立柱28が設けてある。X方向移動装置26及びY方向移動装置22は、立柱28をX方向(左右方向)及びY方向(前後方向)に移動可能に支持する。
【0020】
Z方向移動装置30は立柱28の前面に設ける。Z方向移動装置30はZ軸モータ31(
図3参照)及びZ軸モータ31が駆動するボールねじ機構(図示略)を備える。主軸ヘッド32はZ方向移動装置30に設ける。立柱28は、Z方向移動装置30を介して主軸ヘッド32をZ方向(上下方向)に移動可能に支持する。主軸モータ35は主軸ヘッド32の上部に設ける。主軸ヘッド32は、上下を軸方向とした主軸(図示略)を支持する。主軸モータ35は主軸を軸回りに回転する。工具交換装置10は、工具交換モータ12によって駆動し、主軸に装着する工具を交換する。
【0021】
図2に示すように、工作機械100は機械本体の大部分を囲む工作機械用カバー1を備える。工作機械用カバー1が基台20の上側に設けてある。工作機械用カバー1は、上下方向に延設し、工作機械100の機械本体の前後左右を夫々覆う矩形の前壁5、左壁6、右壁7及び後壁8を備える。また工作機械100の上側を覆い、左右方向及び前後方向に平行な略矩形の天井9を備える。後壁8には、各モータの駆動を制御する制御盤80が設けてある。
【0022】
前壁5の中央部には縦長矩形の開口51が設けてある。該開口51には、縦長矩形の右扉52及び左扉53が左右方向に移動可能に並設してある。開口51の右隣には、作業者が指令を入力するための操作盤54が設けてある。操作盤54の上に表示部55aが設けてある。工作機械100は表示制御回路55(
図3参照)を備える。表示制御回路55は、操作盤54からの入力、後述する駆動制御回路82(
図3参照)からの入力等に基づいて表示部55aに情報を表示する。
【0023】
図3は、三相交流電源40、制御盤80、表示制御回路55、表示部55a等のブロック図である。三相交流電源40はリレー85を介して、各駆動回路31a、35a、27a、23a、12aに接続する。駆動回路31aはZ軸モータ31に接続する。駆動回路35aは主軸モータ35に接続する。駆動回路27aはX軸モータ27に接続する。駆動回路23aはY軸モータ23に接続する。駆動回路12aは工具交換モータ12に接続する。駆動制御回路82は、リレー85及び各駆動回路31a、35a、27a、23a、12aの駆動を制御する。
【0024】
三相交流電源40は、R相及びS相間の電圧、S相及びT相間の電圧及びT相及びS相間の電圧を各駆動回路31a、35a、27a、23a、12aに入力する。三相交流電源40は、R相及びS相間の電圧と、S相及びT相間の電圧と、T相及びS相間の電圧とをパルス変換回路81に入力する。パルス変換回路81は、各入力電圧をパルス波に変換し、駆動制御回路82に入力する。駆動制御回路82は、パルス波に基づき電圧を表示する為の情報を生成する。駆動制御回路82は表示制御回路55と所定周期T経過する毎に通信する。表示制御回路55は、駆動制御回路82から受信した情報に基づき、表示部55aに電圧を表示する。パルス変換回路81、駆動制御回路82及び表示制御回路55は、電圧表示制御装置を構成する。
【0025】
図4は、パルス変換回路81のブロック図、
図5は、変換回路81cにおける三相交流電圧のパルス波への変換を説明する説明図である。パルス変換回路81は生成回路を構成する。パルス変換回路81は、整流降圧回路81a、保護回路81b、変換回路81c及びパルス波出力回路81dを備える。上述の如く、パルス変換回路81には、R相及びS相間の電圧と、S相及びT相間の電圧と、T相及びS相間の電圧とが入力するが、
図4は、R相及びS相間の電圧、S相及びT相間の電圧、T相及びS相間の電圧の内、何れか一つの電圧に対応した整流降圧回路81a、保護回路81b、変換回路81c及びパルス波出力回路81dのみを代表的に記載する。他の二つの電圧に対応した整流降圧回路、保護回路、変換回路及びパルス波出力回路は、整流降圧回路81a、保護回路81b、変換回路81c及びパルス波出力回路81dと同様な構成なので、記載を省略する。
【0026】
三相交流電源40は整流降圧回路81aに電圧を入力する。整流降圧回路81aは入力電圧を整流し、駆動制御回路82に対応した電圧まで下げる。整流降圧回路81aは電圧を保護回路81bに入力する。保護回路81bは、駆動制御回路82の故障を防止する為の回路である。例えば、保護回路81bへの入力電圧の大きさが予め設定した閾値よりも大きい場合、保護回路81bは電圧を出力しない。
【0027】
保護回路81bは、変換回路81cに電圧を出力する。変換回路81cは、入力電圧をパルス波に変換する。
図5に示す如く、変換回路81cは、三相交流電圧70、即ちアナログ電圧を所定のサンプリング周期k、例えば230~300μsでサンプリングする。サンプリングした電圧値をパルス波71、例えば電圧値の大きさに対応したデューティー比を有する矩形波に変換する。変換回路81cはパルス波71をパルス波出力回路81dに出力する。
【0028】
パルス波出力回路81dはフォトカプラを有する。入力したパルス波71によって、フォトカプラの発光素子は発光する。フォトカプラの受光素子は受光して光電変換し、駆動制御回路82に電圧値を示す電圧値信号72を出力する。電圧値信号72はパルス波であり、例えば電圧値の大きさに対応したデューティー比を有する矩形波である。
【0029】
図6は、駆動制御回路82及び表示制御回路55のブロック図である。駆動制御回路82は中継回路を構成する。同期信号が駆動制御回路82及び表示制御回路55に入力し、駆動制御回路82及び表示制御回路55は、同期信号の入力時、即ち通信周期W経過毎に通信する。通信周期Wはサンプリング周期kよりも長く、例えば1msである。電圧値信号72は駆動制御回路82に、サンプリング周期k経過毎に入力する。駆動制御回路82は、記憶部90、作成部91、計時部92、演算部93、通信インタフェース(通信I/F)94を備える。
【0030】
作成部91は、電圧値信号72の入力毎に電圧値信号72に対応した識別子を順次作成する。計時部92は、電圧値信号72の入力時点、通信周期の開始時点及び終了時点等を測定する。計時部92は、同期信号に基づいて、通信周期の開始時点及び終了時点等を測定する。
【0031】
演算部93は、計時部92にて測定した時点に基づき、種々の時間を演算し、また電圧値信号72が示す電圧値を演算する。記憶部90は、作成部にて作成した識別子に紐づけて、時間及び電圧値等の情報を記憶する。記憶部90は第一領域90a、第二領域90b及び第三領域90cを備え、各領域は、各識別子及び各識別子に紐づけた情報を記憶する。通信I/F94は、表示制御回路55に、各識別子及び各識別子に紐づけた情報を送信する。表示制御回路55は表示処理部56を備える。表示処理部56は駆動制御回路82から受信した情報に基づいて、表示部55aに交流電圧の電圧値を表示する処理を実行する。表示処理部56は第一処理部及び第二処理部を構成する。
【0032】
図7は、通信周期の開始時点W1及び終了時点W2、三つの電圧値信号の入力時点k1~k3、通信周期W、第一時間T1、第二時間T2a、第二時間T2bを説明する説明図である。入力時点k1、k2、k3において、入力時点k1が最も古い時点であり、入力時点k3が最も新しい時点である。駆動制御回路82に、開始時点W1及び終了時点W2の間、即ち通信周期Wの間に、三つの電圧値信号72が駆動制御回路82に連続入力した場合について、説明する。
【0033】
入力時点k1に入力した電圧値信号72を第一電圧値信号、入力時点k2に入力した電圧値信号72を第二電圧値信号、入力時点k3に入力した電圧値信号72を第三電圧値信号と称する。作成部91は、第一電圧値信号、第二電圧値信号及び第三電圧値信号に対応させて、順に、第一識別子、第二識別子及び第三識別子を作成する。
【0034】
演算部93は、計時部92にて計測した入力時点k1~k3、開始時点W1に基づいて、時点W1と時点k1の間の時間、即ち第一時間T1を演算し、時点k1と時点k2の間の時間、即ち第二時間T2aを演算し、時点k2と時点k3の間の時間、即ち第二時間T2bを演算する。計時部92及び演算部93は第一測定部及び第二測定部を構成する。
【0035】
図8は、第一領域90a、第二領域90b及び第三領域90cへの記憶状態である第一状態、第二状態及び第三状態を示す模式図である。同期信号の入力時後、即ち開始時点W1後に、最初の電圧値信号、即ち第一電圧値信号が駆動制御回路82に入力した場合、計時部92及び演算部93は第一時間T1を演算し、第一識別子に紐づけて、第一電圧値信号及び第一時間T1を第一領域90aに記憶する。尚、第一識別子に紐づけた第一電圧値信号及び第一時間T1を第一識別子情報と称する(
図8の第一状態参照)。
【0036】
第二電圧値信号が駆動制御回路82に入力した場合、記憶部90は第一識別子情報を第二領域90bに移動する。計時部92及び演算部93は第二時間T2aを演算し、第二識別子に紐づけて、第二電圧値信号、第一時間T1及び第二時間T2aを第一領域90aに記憶する。尚、第二識別子に紐づけた第二電圧値信号、第一時間T1及び第二時間T2aを第二識別子情報と称する(
図8の第二状態参照)。
【0037】
第三電圧値信号が駆動制御回路82に入力した場合、記憶部90は第一識別子情報を第三領域90cに移動し、第二識別子情報を第二領域90bに移動する。計時部92及び演算部93は第二時間T2bを演算し、第三識別子に紐づけて、第三電圧値信号、第一時間T1、第二時間T2a及び第二時間T2bを第一領域90aに記憶する。尚、第三識別子に紐づけた第三電圧値信号、第一時間T1、第二時間T2a及び第二時間T2bを第三識別子情報と称する(
図8の第三状態参照)。
【0038】
同期信号の入力時、即ち終了時点W2に、駆動制御回路82は、第一領域90a、第二領域90b及び第三領域90cに記憶した第一識別子情報、第二識別子情報及び第三識別子情報を通信I/F94を介して表示制御回路55に送信する。通信I/F94は第一送信部及び第二送信部を構成する。
【0039】
終了時点W2は新通信周期の開始時点W1でもあり、送信後、最初の電圧値信号、即ち第一電圧値信号が駆動制御回路82に入力した場合、新通信周期の第一状態になる。尚、旧通信周期の第三状態から新通信周期の第一状態になった場合、記憶部90は、旧通信周期にて第三領域90cに記憶した第一識別子情報を削除し、第二領域90bに記憶した第二識別子情報を第三領域90cに移動し、第一領域90aに記憶した第三識別子情報を第二領域に移動する。記憶部90は、旧通信周期に記憶した情報を、新通信周期にて順次移動して、削除するので、新通信周期の第三状態においては、記憶部90は新通信周期にて駆動制御回路82に入力した電圧値信号72に関する情報のみを記憶する。
【0040】
図9は、通信周期Wの間に、三つの電圧値信号72が駆動制御回路82に連続入力した場合に、表示制御回路55が実行する電圧表示処理の説明図である。
図9において、破線は表示部55aに表示する交流電圧波形を示し、黒丸は電圧値を示す。表示制御回路55は、駆動制御回路82から受信した第一識別子情報、第二識別子情報及び第三識別子情報に基づいて、時点k1、k2及びk3における電圧値を表示部55aに表示する。表示制御回路55は通信周期Wが経過する毎に、三つの電圧値を表示部55aに追加表示する。
【0041】
図10は、通信周期の開始時点W1及び終了時点W2、四つの電圧値信号の入力時点k1~k4、通信周期W、第一時間T1、第二時間T2a、第二時間T2b、第二時間T2cを説明する説明図である。入力時点k1、k2、k3、k4において、入力時点k1が最も古い時点であり、入力時点k4が最も新しい時点である。駆動制御回路82に、開始時点W1及び終了時点W2の間、即ち通信周期Wの間に、四つの電圧値信号72が駆動制御回路82に連続入力した場合について、説明する。尚、入力時点k1、k2、k3に入力した第一電圧値信号、第二電圧値信号及び第三電圧値信号についての説明は既述したので、省略する。
【0042】
入力時点k4に入力した電圧値信号72を第四電圧値信号と称する。作成部91は、第四電圧値信号に対応させて、第四識別子を作成する。演算部93は、計時部92にて計測した入力時点k3とk4の間の時間、即ち第二時間T2cを演算する。
【0043】
図11は、第一領域90a、第二領域90b及び第三領域90cへの記憶状態である第一状態、第二状態、第三状態及び第四状態を示す模式図である。第一状態、第二状態及び第三状態については、
図8に示す第一状態、第二状態及び第三状態と同じなので説明を省略する。
【0044】
第三状態において、第一領域90aは第三識別子情報を記憶し、第二領域90bは第二識別子情報を記憶し、第三領域90cは第一識別子情報を記憶する。第四電圧値信号が駆動制御回路82に入力した場合、記憶部90は第一識別子情報を削除し、第二識別子情報を第三領域90cに移動し、第三識別子情報を第二領域90bに移動する。計時部92及び演算部93は第二時間T2cを演算し、第四識別子に紐づけて、第四電圧値信号、第一時間T1、第二時間T2a、第二時間T2b及び第二時間T2cを第一領域90aに記憶する。尚、第四識別子に紐づけた第四電圧値信号、第一時間T1、第二時間T2a、第二時間T2b及び第二時間T2cを第四識別子情報と称する(
図11の第四状態参照)。
【0045】
同期信号の入力時、即ち終了時点W2に、駆動制御回路82は、第一領域90a、第二領域90b及び第三領域90cに記憶した第二識別子情報、第三識別子情報及び第四識別子情報を通信I/F94を介して表示制御回路55に送信する。
【0046】
図12は、通信周期Wの間に、四つの電圧値信号72が駆動制御回路82に連続入力した場合に、表示制御回路55が実行する電圧表示処理の説明図である。
図12において、白丸は削除した電圧値を示す。表示制御回路55は、駆動制御回路82から受信した第二識別子情報、第三識別子情報及び第四識別子情報に基づいて、時点k2、k3及びk4における電圧値を表示部55aに表示する。表示制御回路55は通信周期Wが経過する毎に、三つの電圧値を表示部55aに追加表示する。駆動制御回路82は第一識別子情報を削除したので、表示制御回路55は時点k1において電圧値を表示しない(
図12の白丸参照)。
【0047】
尚、通信周期Wの間に、五つの電圧値信号72が駆動制御回路82に連続入力した場合、駆動制御回路82は第一識別子情報及び第二識別子情報を削除するので、表示制御回路55は時点k1及びk2において電圧値を表示しない。即ち、通信周期Wの間に入力した電圧値信号の数Pが所定数Q、即ち、記憶部90に設定した識別子情報を記憶する領域の数を超過した場合、駆動制御回路82は第一識別子から第P-Q識別子に紐付いた情報を送信しない。尚、所定数Qは、記憶部90に設定した識別子情報を記憶する領域の数であるので、設定した領域の数が4個以上の場合、所定数Qも4以上となる。
【0048】
実施の形態1に係る工作機械にあっては、駆動制御回路82は、通信周期Wの間に入力した第一電圧値信号に対応した第一識別子を作成し、第一識別子に紐づけて、第一時間及び第一電圧値信号を表示制御回路に送信する。また、第二電圧値信号及び第三電圧値信号に対応した第二識別子及び第三識別子を作成し、第二識別子に紐づけて、第一時間T1、第二時間T2a及び第二電圧値信号を表示制御回路に送信し、第三識別子に紐づけて、第一時間T1、第二時間T2a、第二時間T2b及び第三電圧値信号を表示制御回路55に送信する。
【0049】
表示制御回路55は、駆動制御回路82から受信した情報に基づいて、所定周期よりも短い時間間隔T1、T2a、T2bで電圧値を時系列に表示する処理を実行する。
【0050】
また駆動制御回路82は、通信周期Wの間に入力した電圧値信号の数Pが所定数Q(記憶部90に設定した識別子情報を記憶する領域の数)を超過した場合、第一識別子から第P-Q識別子に紐付いた情報を送信しない。駆動制御回路82はP個の電圧値信号に関する情報を記憶できればよく、記憶容量を削減できる。
【0051】
また第一領域90a、第二領域90b及び第三領域90cに記憶した情報は、順次移動する、即ちシフトするので、情報を更新する場合に、第一領域90a、第二領域90b及び第三領域90cをリセットする必要がなく、処理を削減できる。
【0052】
通信周期Wは予め設定してある。第二時間はパルス変換回路81の仕様によって定まる。パルス変換回路81の特性に応じて、実際の第二時間T2a、T2b、T2cは、仕様によって定める第二時間よりも長いか又は短くなる。また通信周期Wと第二時間とは互いに独立しており、第一時間T1は定まらない。故に、通信周期Wの間に駆動制御回路82に入力する電圧値信号72の数は一定にならない。
【0053】
多くの場合、通信周期Wの間に駆動制御回路82に入力する電圧値信号72の数は、予め設定した通信周期W及びパルス変換回路81の仕様によって定まる第二時間に基づいて決定される。上述の実施の形態では三である。上述の理由から稀に四となる。故に、記憶部90に三つの領域、即ち第一領域90a、第二領域90b及び第三領域90cを設定し、各領域に記憶する情報を順次シフトすることによって、前記領域のリセット処理を削減し、記憶容量を削減し、且つ電圧表示の精度を維持できる。
【0054】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る工作機械を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2の構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図13は、駆動制御回路82及び表示制御回路55のブロック図である。
【0055】
駆動制御回路82は計数部95を備える。計数部95は駆動制御回路82に入力した電圧値信号72の数を計測する。表示制御回路55は記憶部57を備え、記憶部57は、予め所定数Q、即ち記憶部90に設定した識別子情報を記憶する領域の数を記憶する。本実施例においては3が設定してある。
【0056】
駆動制御回路82は表示制御回路55に、通信周期Wの間に入力した電圧値信号72に関する情報と、計数部95にて測定した数とを送信する。表示処理部56は、計数部95が測定した数Pが所定数Qを超過するか否か判定し、超過した場合、第一識別子からP-Q識別子に紐付いた情報を処理しない。超過していない場合、各識別子に紐付いた全ての情報を処理する。
【0057】
通信周期Wの間に、第一電圧値信号、第二電圧値信号及び第三電圧値信号が入力した場合、第一識別子情報、第二識別子情報、第三識別子情報、及び計数部95が測定した「3」を、駆動制御回路82は表示制御回路55に送信する。
【0058】
表示処理部56は、計数部95が測定した「3」は所定数Q、即ち3を超過しないので、第一識別子情報、第二識別子情報及び第三識別子情報を処理し、電圧値を表示部55aに表示する。
【0059】
通信周期Wの間に、第一電圧値信号、第二電圧値信号、第三電圧値信号、第四電圧値信号が入力した場合、第一識別子情報、第二識別子情報、第三識別子情報、第四識別子及び計数部95が測定した「4」を、駆動制御回路82は表示制御回路55に送信する。
【0060】
表示処理部56は、計数部95が測定した「4」は所定数Q、即ち3を超過するので、第一識別子からP-Q識別子に紐付いた情報を処理しない。即ち、第一識別子情報を処理しない。表示処理部56は、第二識別子情報、第三識別子情報及び第四識別子情報を処理し、電圧値を表示部55aに表示する。
【0061】
尚、通信周期Wの間に、第一電圧値信号~第五電圧値信号が駆動制御回路82に入力した場合、表示処理部56は、第一識別子からP-Q識別子に紐付いた情報を処理しない。即ち、第一識別子情報及び第二識別子情報を処理しない。表示処理部56は、第三識別子情報、第四識別子情報及び第五識別子情報を処理し、電圧値を表示部55aに表示する。通信周期Wの間に、六個以上の電圧値信号が駆動制御回路82に入力した場合も同様である。
【0062】
実施の形態2に係る工作機械100にあっては、表示制御回路55は、通信周期Wの間に入力した電圧値信号の数Pが所定数Qを超過した場合、第一識別子から第P-Q識別子に紐付いた情報を処理しない。故に表示制御回路55における処理を削減することができる。
【0063】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
55 表示制御回路(電圧表示制御装置)
56 表示処理部(第一処理部、第二処理部)
81 パルス変換回路(生成回路、電圧表示制御装置)
82 駆動制御回路(中継回路、電圧表示制御装置)
91 作成部
92 計時部(第一測定部、第二測定部)
93 演算部(第一測定部、第二測定部)
94 通信I/F(第一送信部、第二送信部)
100 工作機械