(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057776
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】タイトフレーム
(51)【国際特許分類】
E04D 3/36 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
E04D3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166201
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】593162095
【氏名又は名称】株式会社長谷川工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 周藏
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108BN06
2E108CC02
2E108DF07
2E108ER03
2E108FF04
2E108GG05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製作容易で高強度なタイトフレームを提供する。
【解決手段】左右の斜辺部1の上方側の側縁部に、突片5がこの斜辺部1と一体に形成されていると共に、この突片5は、斜辺部1に対して直角折曲状態に突設され、突片5の下方側に、斜辺部1とは切り離された切り離し片部6がこの突片5と一体に形成されていると共に、切り離し片部6は、突片5に対し直角折曲状態且つ斜辺部1に対し直角折曲状態にして突片5に一体に形成されていて、切り離し片部6の下面が、折板屋根材の嵌合係止面が面接係止可能な係止顎部4として構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の斜辺部の上方側に、折板屋根材の内面に設けられている嵌合係止面が係止する係止顎部が設けられているタイトフレームであって、左右の前記斜辺部の上方側の側縁部に、突片がこの斜辺部と一体に形成されていると共に、この突片は、前記斜辺部に対して直角折曲状態に突設され、この突片の下方側に、前記斜辺部とは切り離された切り離し片部がこの突片と一体に形成されていると共に、この切り離し片部は、前記突片に対し直角折曲状態且つ前記斜辺部に対し直角折曲状態にして前記突片に一体に形成されていて、この切り離し片部の下面が、前記折板屋根材の嵌合係止面が面接係止可能な前記係止顎部として構成されていることを特徴とするタイトフレーム。
【請求項2】
前記突片は、前記斜辺部の上方側の前後両側縁部にこの斜辺部と一体に形成されていると共に、この前後の突片は、夫々の下方側に前記切り離し片部が一体に形成され、この前後夫々の突片の前記切り離し片部は、互いに対向する方向に折曲されて前記突片に対し直角折曲状態且つ前記斜辺部に対し直角折曲状態となるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のタイトフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合式の折板屋根材を屋根下地材に固定するために用いられるタイトフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からタイトフレーム嵌合式と称される折板構造屋根が実施されている。
【0003】
このタイトフレーム嵌合式の折板構造屋根を簡単に説明すると、少なくとも山部の左右部に係止顎部が設けられたタイトフレームと、この係止顎部に引っ掛かり係止可能な嵌合係止面が傾斜部の内面に設けられた折板屋根材とを使用するもので、タイトフレームの上方から折板屋根材を被嵌して下方へ荷重を加えるだけで係止顎部に折板屋根材の嵌合係止面を引っ掛かり係止させることができ、この際にタイトフレームの頂部上で隣接する折板屋根材の端部のハゼ部同士を重ねてハゼ締めすることにより、隣接する折板屋根材同士が接合されると共に、係止顎部から嵌合係止面が係脱しないように保持されて折板屋根材がタイトフレームに固定される構成である。
【0004】
また、出願人は、タイトフレーム嵌合式の折板構造屋根に用いるタイトフレームとして、特許第5462839号(特許文献1)を取得している。
【0005】
この特許文献1を簡単に説明すると、タイトフレームの左右夫々の斜辺部に凹字状の切欠き孔が設けられ、この凹字状の切欠き孔のタイトフレーム頂部側を膨出させて下端に板片を有する膨出部が設けられ、この膨出部下端の板片を、下端縁を内側に向けて折曲して前記折板屋根材の嵌合係止面が係止する板片状の係止顎部が設けられ、前記タイトフレームに前記折板屋根材を嵌合係止した際に、前記係止顎部と前記折板屋根材の嵌合係止面とが面接係合して、タイトフレームに折板屋根材が嵌合係止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5462839号公報
【特許文献2】意匠登録第1384419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1は、係止顎部が折板屋根材の嵌合係止面と面接触係止する構成であるために、折板屋根材(嵌合係止面)が傷つきにくく、また、タイトフレームを構成する帯板材から係止顎部を一体に形成しているために、フレーム部材の山部頂上に、前記係止顎部を左右に有する嵌合頭部が溶接やカシメ等の止着手段により付設されている従来品(特許文献2)と比べて製作容易で簡易に設計実現可能であるなどのメリットを有するものであったが、タイトフレームの左右の斜辺部に孔を開けて係止顎部を形成する(切り出す)構成であったために、孔の開いたタイトフレームに強度低下の懸念があった。
【0008】
本発明は、上記特許文献1の問題点を見い出し、これを解決しようとするもので、特許文献1と同様のメリットを奏すると共に、タイトフレームの強度低下の懸念がない優れたタイトフレームを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
左右の斜辺部1の上方側に、折板屋根材2の内面に設けられている嵌合係止面3が係止する係止顎部4が設けられているタイトフレームAであって、左右の前記斜辺部1の上方側の側縁部に、突片5がこの斜辺部1と一体に形成されていると共に、この突片5は、前記斜辺部1に対して直角折曲状態に突設され、この突片5の下方側に、前記斜辺部1とは切り離された切り離し片部6がこの突片5と一体に形成されていると共に、この切り離し片部6は、前記突片5に対し直角折曲状態且つ前記斜辺部1に対し直角折曲状態にして前記突片5に一体に形成されていて、この切り離し片部6の下面が、前記折板屋根材2の嵌合係止面3が面接係止可能な前記係止顎部4として構成されていることを特徴とするタイトフレームに係るものである。
【0011】
また、前記突片5は、前記斜辺部1の上方側の前後両側縁部にこの斜辺部1と一体に形成されていると共に、この前後の突片5は、夫々の下方側に前記切り離し片部6が一体に形成され、この前後夫々の突片5の前記切り離し片部6は、互いに対向する方向に折曲されて前記突片5に対し直角折曲状態且つ前記斜辺部1に対し直角折曲状態となるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のタイトフレームに係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように構成したから、タイトフレームに折板屋根材を取り付けると、係止顎部と折板屋根材の嵌合係止面とが面接係止するため、強風などによる負圧が折板屋根材に作用しても係止顎部と嵌合係止面との係止状態が強固で折板屋根材がタイトフレームから離脱することがなく、また嵌合係止面が傷付きにくいので折板屋根材に傷みが生じにくく、しかも係止顎部をタイトフレームの斜辺部から一体に形成するので、この構成は容易に設計実現可能であると共に、タイトフレーム自体に孔を開ける構成でないために所期の強度が確実に発揮されるなど、極めて実用性に優れたタイトフレームとなる。
【0013】
また、請求項2記載の発明においては、左右の切り離し片部から成る係止顎部の嵌合係止面の面積が大きいために、この係止顎部と折板屋根材の嵌合係止面との面接係止強度が一層強固となると共に、嵌合係止面が一層傷付きにくくなる極めて実用性に優れた構成のタイトフレームとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本実施例の要部を示す部分拡大斜視図である。
【
図4】本実施例に、折板屋根材を取り付けようとする様子を示す説明正断面図である。
【
図5】本実施例の使用状態(折板屋根材を取り付けた状態)を示す説明正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の最適な実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0016】
本発明のタイトフレームAは、左右の斜辺部1の上方側に、折板屋根材2の内面に設けられている嵌合係止面3が係止する係止顎部4が設けられている。
【0017】
具体的には、左右の前記斜辺部1の上方側の側縁部に、突片5がこの斜辺部1と一体に形成されていると共に、この突片5は、前記斜辺部1に対して直角折曲状態に突設され、この突片5の下方側に、前記斜辺部1とは切り離された切り離し片部6がこの突片5と一体に形成されていると共に、この切り離し片部6は、前記突片5に対し直角折曲状態且つ前記斜辺部1に対し直角折曲状態にして前記突片5に一体に形成されていて、この切り離し片部6の下面が、前記折板屋根材2の嵌合係止面3が面接係止可能な前記係止顎部4として構成されている。
【0018】
即ち、タイトフレームAの斜辺部1から係止顎部4が一体に形成されている本発明は、製作容易であり簡易に設計実現可能である。
【0019】
また、斜辺部1に孔を開けることなく係止顎部4が設けられている本発明は、この斜辺部1の強度低下がなく、タイトフレームAが所期の強度を確実に発揮できる。
【実施例0020】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0021】
先ず、本実施例で使用する折板屋根材2を説明する。
【0022】
折板屋根材2は、塗装鋼板や亜鉛メッキ鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成したものであって、詳しく図示していないが、山部9と谷部10が交互に連続する形状に形成されている(
図4,
図5参照)。
【0023】
また、折板屋根材2は、その一側が谷部10の端から外方へ斜め上方に向かって突出する形状の傾斜部11と、この傾斜部11の上部に内方(谷部10側)に向かって屈曲した後に改めて外方へ斜め上方に向かって突出する形状の屈曲部12と、この屈曲部12の上端から外方に向かって略水平に突出する形状の頂部13と、この頂部13の端部から上方に向かって突出する下ハゼ部18とを有する形状に構成され、他側は、一側と略左右対称形状の傾斜部11と屈曲部12と頂部13とを有すると共に、頂部13の端部から上方に向かって突出し前記下ハゼ部18に上方から被嵌可能な上ハゼ部19を有する形状に形成されている。
【0024】
また、屈曲部12は、傾斜部11の上部から谷部10側に向かって屈曲されている板部の内面が、後述する係止顎部4に嵌合係止する嵌合係止面3として構成されていると共に、この嵌合係止面3より上方側の傾斜内面が、後述する傾斜外縁7に近接配設可能な傾斜面8として構成されている。
【0025】
次に、本実施例のタイトフレームAについて説明すると、
図1,
図2に示すように、一枚の金属製帯板材14が、山谷(凹凸)が連続する形状(図面は山が二つ連続する形状)に折曲形成されて成ると共に、左右の斜辺部1の上方側に、前記折板屋根材2の内面に設けられている前記嵌合係止面3が係止する係止顎部4が設けられている。
【0026】
具体的には、タイトフレームAを構成する帯板材14の、左右の前記斜辺部1の上方側を構成する部位の前後両側縁部に、突片5がこの斜辺部1(帯板材14)と一体に形成されている(突片5を有する形態に帯板材14が形成されている)と共に、この前後の突片5は、夫々が折縁E1を介して前記斜辺部1に対しタイトフレームAの谷側に直角折曲されて突設されている。
【0027】
また、この前後の突片5には、夫々の下方側に、前記斜辺部1とは切り離された切り離し片部6が一体に形成されていると共に、この前後の切り離し片部6は、夫々が折縁E2を介して前記突片5に対し互いに対向する方向に直角折曲されていて、前記突片5が前記斜辺部1に対しタイトフレームA谷側に直角折曲されていることにより、この前後の切り離し片部6が略面一な前後突き合わせ並設状態で且つ斜辺部1の外側(谷側)板面に対しても直角折曲状態で突設するように構成されている。
【0028】
そして、この前後に並設している切り離し片部6の下面が、前記折板屋根材2の嵌合係止面3が面接係止可能な前記係止顎部4として構成されている。
【0029】
さらに詳しく説明すると、本実施例の前記突片5は、
図3の展開平面図に示すように、前記切り離し片部6より上方側部が、下方側ほど徐々に前記斜辺部1の側縁部に対する突出度合いが大きくなる傾斜外縁7を有する平面視形状(平面視直角三角形状)に形成されていて、この傾斜外縁7が、前記折板屋根材2の嵌合係止面3の上方側に連設されている傾斜面8に近接して折板屋根材2に上方からの正圧が加わった際にこの傾斜面8を支持可能な支持縁として構成されていると共に、前記切り離し片部6は、前記帯板材14の長さ方向に沿った長さを有する平面視長方形状に形成されていて、この切り離し片部6の板面二枚分の面積の前記係止顎部4が形成されるように構成されている。
【0030】
このようにして構成される本実施例の係止顎部4は、例えば金属プレス加工等により簡易に設計実現可能である。
【0031】
図中符号15は前記タイトフレームAの山部の前後に垂下折曲形成された補強片、E3は補強片15の折縁、E4はタイトフレームAの山部頂面を山形状に折曲形成するための折縁、16は折板屋根材2の頂部13の裏面を支持する支持突起、17は屋根下地材である。
【0032】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。