(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057799
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20220404BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220404BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20220404BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220404BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20220404BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20220404BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220404BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q11/00
A61K8/365
A61K8/34
A61K8/42
A61K8/31
A61K8/35
A61K8/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166240
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣野 綾菜
(72)【発明者】
【氏名】大島 由行
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB242
4C083AB271
4C083AB272
4C083AB282
4C083AB292
4C083AB322
4C083AB472
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC622
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC862
4C083AD042
4C083AD202
4C083AD212
4C083AD262
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD632
4C083AD662
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE31
4C083EE38
(57)【要約】
【課題】硝酸カリウムまたは乳酸アルミニウムの苦味・金属味を増強させるメントールおよび糖アルコールを含みながらも、使用時の苦味・金属味が抑制され、爽快感があり、使用感に優れた口腔用組成物を提供すること。
【解決手段】(A)硝酸カリウム、または乳酸アルミニウムの少なくとも一方を含有する口腔用組成物に、(B)糖アルコールを20~60質量%、(C)l-メントールを0.1~0.4質量%、(D)メンタンカルボキサミド誘導体、および(E)テルペン化合物、とを配合したことを特徴とする口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硝酸カリウム、または乳酸アルミニウムの少なくとも一方、
(B)糖アルコールを20~60質量%、
(C)l-メントールを0.1~0.4質量%、
(D)メンタンカルボキサミド誘導体、および
(E)テルペン化合物
を含有する口腔用組成物。
【請求項2】
前記(E)が、リモネン、カルボン、カンファー、1,8-シネオール、ゲラニアールからなる群より選択される2種以上である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記(E)の含有量が0.01~1質量%である、請求項2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記(D)の含有量が0.005~0.1質量%である、請求項1から3のいずれか1項に記載の口腔用組成物
【請求項5】
前記(D)がN-エチル-p-メンタン-3-カルボアミド、およびエチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテートらなる群より選択される1種以上である、請求項4に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
前記(E)が、(E-1)リモネンと、(E-2)カルボン、カンファー、1,8-シネオール、ゲラニアールからなる群より選択される1種と、からなる2種である、請求項3から6のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗知覚過敏成分を含有する口腔用組成物の使用感の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
象牙質知覚過敏症では、ブラッシング等の物理的磨耗、酸による化学的磨耗等により歯牙の象牙質が露出し、外部刺激が象牙質に存在する象牙細管を介して神経を刺激することで疼痛が生じる。このような知覚過敏症の改善には、例えば、乳酸アルミニウム等のアルミニウム塩から形成される粒子により象牙細管を封鎖する方法や、硝酸カリウム等のカリウム塩で神経を鈍麻させる方法が用いられる。
【0003】
上記乳酸アルミニウムや硝酸カリウムは苦味、金属味を有しているため、それを解決する手段として、α-オレフィンスルホン酸ナトリウムのオイル感で金属味を相殺する方法(特許文献1)や、脂肪族アルデヒド類及びラクトン類により苦みや金属味をマスキングする方法(特許文献2)が提案されている。
【0004】
また、象牙質知覚過敏症は、前述の原因に加え、加齢とともに歯茎が下がりそれに伴い象牙質が露出することによっても生じる事が知られており、中高年齢層の知覚過敏症によるQOL低下が課題となっている。また、加齢による唾液分泌量の減少により口腔内が乾燥することで露出した象牙質でのう蝕発生リスクが大きくなるため、これらの症状を予防するオーラルケア製品が所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-175943号公報
【特許文献2】特開2011-105690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、象牙質知覚過敏症の改善を目的として硝酸カリウムおよび乳酸アルミニウムを配合した口腔用組成物に、さらに口腔内乾燥を予防する目的で保湿性のある糖アルコール類を比較的高い濃度で配合した場合、糖アルコール類に起因する甘みにより、使用後における口腔内の爽快感が弱まり、それに伴い使用感が損なわれる。さらに、その口腔用組成物の使用感として重要である爽快感を付与するためにメントールを配合した場合、メントールの配合量に依存して硝酸カリウムおよび乳酸アルミニウムの苦味・金属味が増強されるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、驚くべきことに、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、糖アルコール類、およびメントールを含有する口腔用組成物において、メンタンカルボキサミド誘導体、および2種以上のテルペン化合物をさらに配合することで、硝酸カリウムまたは乳酸アルミニウムの苦味・金属味を抑制しつつ、使用時に爽快感を十分に得ることができることを見出した。
【0008】
本発明は、例えば以下に記載の発明を包含する。
項1.
(A)硝酸カリウム、または乳酸アルミニウムの少なくとも一方、 (B)糖アルコールを20~60質量%、
(C)l-メントールを0.1~0.4質量%、
(D)メンタンカルボキサミド誘導体、および
(E)テルペン化合物
を含有する口腔用組成物。
項2.
前記(E)が、リモネン、カルボン、カンファー、1,8-シネオール、ゲラニアールからなる群より選択される2種以上である、請求項1に記載の口腔用組成物。
項3.
前記(E)の含有量が0.01~1質量%である、請求項2に記載の口腔用組成物。
項4.
前記(D)の含有量が0.005~0.1質量%である、請求項1から3のいずれかに記載の口腔用組成物
項5.
前記(D)がN-エチル-p-メンタン-3-カルボアミド、およびエチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテートからなる群より選択される1種以上である、請求項4に記載の口腔用組成物。
項6.
前記(E)が、(E-1)リモネンと、(E-2)カルボン、カンファー、1,8-シネオール、ゲラニアールからなる群より選択される1種と、からなる2種である、請求項3から6のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、糖アルコール類を含有していながらも苦味・金属味が抑制され、メントールによる爽快感を十分に得ることができる口腔用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。なお、本発明は口腔用組成物、特に、硝酸カリウムまたは乳酸アルミニウム、糖アルコール、メントール、メンタンカルボキサミド誘導体、および2種以上のテルペン化合物を含む口腔用組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本発明は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0011】
本発明で用いられる硝酸カリウムは、組成物全量に対して0.1~10質量%程度含有させることができる。当該含有量の範囲の上限または下限は、例えば0.5、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、1~8質量%、2~7質量%、又は3~6質量%であることがより好ましい。
【0012】
本発明で用いられる乳酸アルミニウムは、組成物全量に対して0.1~10質量%程度含有させることができる。当該含有量の範囲の上限又は下限は、例えば、1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3、3.5、4、4.5,5、6、7、8、又は9質量%であってもよい。例えば、当該範囲は1~5質量%、又は2~4質量%であることがより好ましい。
【0013】
本発明で用いられる糖アルコールは、口腔用組成物に使用できるものであれば特に限定されないが、例えば、グリセリン、ソルビトール、ガラクチトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース等が挙げられ、特にグリセリン、又はソルビトールが好ましく、その含有量は組成物全量に対して20~60質量%、より好ましくは25~55質量%、さらに好ましくは30~50質量%である。当該含有量の範囲の上限又は下限は、例えば、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45。50、55、又は60質量%であってもよい。また、糖アルコールは、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。
【0014】
本発明で用いられるメントールは、口腔用組成物に清涼感を付与する観点から、l-メントールが好ましく、その含有量は組成物全量に対して0.1~0.4質量%、より好ましくは0.15~0.3質量%である。当該含有量の範囲の上限又は下限は、例えば、0.15、0.2、0.25、0.3、又は0.35質量%であってもよい。
【0015】
本発明で用いられるメンタンカルボキサミド誘導体は、N-エチル-p-メンタン-3-カルボアミド、又はエチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテートが好ましく、その含有量は組成物全量に対して、0.005~0.1質量%が好ましく、より好ましくは0.01~0.05質量%である。当該含有量の範囲の上限又は下限は、例えば、0.02、0.03、0.04、0.06、0.07、0.08、又は0.09質量%であってもよい。
【0016】
本発明で用いられるテルペン化合物は、テルペン炭化水素及びテルペン含酸素誘導体であり、テルペン炭化水素としてはリモネン、テルペン含酸素誘導体としてはカルボン、カンファー、1,8-シネオール、ゲラニアールを好ましく用いることができる。これらテルペン化合物の含有量は、組成物全量に対して0.01~1質量%が好ましく、より好ましくは0.05~0.5質量%、さらに好ましくは0.1~0.2質量%である。当該含有量の範囲の上限又は下限は、例えば、0.02、0.03、0.04、0.06、0.07、0.08、0.09、0.12、0.14、0.16、0.18、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.6、0.7、0.8、又は0.9質量%であってもよい。また、テルペン化合物は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。
【0017】
本発明の口腔用組成物は常法により製造することができる。また、本発明の口腔用組成物の形態としては、練歯磨剤、液体歯磨剤、洗口剤、ジェル剤、ペースト剤、軟膏剤、塗布剤、医薬部外品、化粧品として用いることができる。
【0018】
本発明の口腔用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に口腔用組成物に配合し得る公知の任意成分を、単独で又は2種以上組み合わせて、さらに配合してもよい。
【0019】
このような公知の任意成分としては、例えば、界面活性剤、研磨剤、増粘剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、安定化剤、矯味剤、収斂剤、他の薬効成分等が挙げられる。
【0020】
界面活性剤として、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルタウリン塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸モノグリセライド硫酸塩、アルキルスルホ酢酸塩等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシド、セバシン酸ジエチル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N-アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-アルキルアミノエチルグリシン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。
【0021】
研磨剤として、例えば、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、無水ケイ酸、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂等が挙げられる。これらの研磨剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0022】
防腐剤として、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。これらの防腐剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0023】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が挙げられる。これらのpH調製剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0024】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これらの安定化剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0025】
矯味剤としては、例えば、チャエキス、チャ乾留液、プロポリスエキス、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
収れん剤としては、例えば、重曹等が挙げられる。
【0027】
他の薬効剤としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ素化合物;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素;トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ビサボロール、グリセロリン酸、クロロフィル、グルコン酸銅、塩化ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物;酢酸ピリドキシン、アスコルビン酸またはその塩等のビタミン類;アロエ、イチョウ葉、アガリクス、ウーロン茶、カミツレ、カリン、ギムネマ、クマザサ、甜茶、杜仲茶、ドクダミ、ハトムギ、メグスリノキ、ヨモギ、緑茶、ルイボス、レモンバーム、ローズマリー、クラブミン、ラカンカ、シソ、クランベリー、ノコギリソウ、エルダー、リコリス、ハッカ、ユーカリ、ガラナ、カンゾウ、ボダイジュ、ホップ、カカオ、クワ葉、タイム、オウゴン等の植物抽出物が挙げられる。
【実施例0028】
以下に実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0029】
[口腔用組成物の使用感評価]
表1から表3に示す配合量にて、実施例1~6および比較例1~6の被検体を常法にて調製した。5人のモニターが、前記被検体をそれぞれ1g用いて歯磨きを行い、使用後の薬用感、嗜好性、苦味のマスキング効果について次の7段階の評価基準により評価した。
【0030】
[評価基準]
5:非常に良い、4:良い、3:どちらでもない、2:悪い、1:非常に悪い
各項目について、5人の評価値の平均値が4点以上を◎、3点以上4点未満を○、2点以上3点未満を△、2点未満を×とした。その結果を表2および表3に示した。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
表2の実施例1~6は、爽快性、苦味・金属味のマスキング効果のいずれについても、良好な結果を示した。
【0035】
以下に、本発明の口腔用組成物の処方例を示す。なお各処方の配合量(%)は特に記載のない限り質量%を示す。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】