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特開2022-57804有効成分の抽出方法、有効成分の調整方法、除菌剤、消臭剤、香料、化粧品、害虫忌避剤、および栄養補助食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057804
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】有効成分の抽出方法、有効成分の調整方法、除菌剤、消臭剤、香料、化粧品、害虫忌避剤、および栄養補助食品
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/752 20060101AFI20220404BHJP
   A61P 31/02 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220404BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20220404BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20220404BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220404BHJP
   A01N 65/00 20090101ALI20220404BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220404BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20220404BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61K36/752
A61P31/02
A61K8/9789
A61Q15/00
A61Q13/00 100
A23L33/105
A01N65/00 F
A01N65/00 G
A01P3/00
A01P17/00
A01N25/04 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166246
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】595030712
【氏名又は名称】徳田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 薫
(72)【発明者】
【氏名】徳田 美幸
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
4H011
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD48
4B018MF02
4B018MF14
4C083AA111
4C083CC17
4C083FF01
4C083KK02
4C088AB62
4C088CA05
4C088CA30
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB35
4H011AA01
4H011AC06
4H011BB22
4H011DA16
4H011DC01
4H011DC05
(57)【要約】
【課題】効率的に植物から有効成分を抽出することが可能となる有効成分の抽出方法、有効成分の調整方法、除菌剤、消臭剤、香料、化粧品、害虫忌避剤、栄養補助食品を提供する。
【解決手段】植物から液体の有効成分を抽出する液体の有効成分の抽出方法であって、植物と水を所定のミキサー2により混合する混合工程10と、水と混合した植物を破砕する破砕工程20と、破砕した植物から液体の有効成分を抽出する抽出工程30と、抽出した液体の有効成分の脱水を行う脱水工程40と、を含む。脱水工程40は負圧で行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物から有効成分を抽出する有効成分の抽出方法であって、
前記植物から有効成分を、水を介して抽出することを特徴とする有効成分の抽出方法。
【請求項2】
前記有効成分の抽出は、負圧の状態として行うことを特徴とする請求項1に記載の有効成分の抽出方法。
【請求項3】
前記有効成分の抽出は、前記有効成分から異物を除去して精製し行うことを特徴とする請求項2に記載の有効成分の抽出方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分のpHが所定値となるように調整することを特徴とする有効成分の調整方法。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分をエマルジョン化することを特徴とする有効成分の調整方法。
【請求項6】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分に超音波を照射することを特徴とする有効成分の調整方法。
【請求項7】
前記超音波を照射することにより前記有効成分に含まれる界面活性剤成分のエマルジョン化処理を行うことを特徴とする請求項6に記載の有効成分の調整方法。
【請求項8】
前記有効成分に前記植物由来の界面活性剤成分を添加することを特徴とする請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法。
【請求項9】
請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする除菌剤。
【請求項10】
請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする消臭剤。
【請求項11】
請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする香料。
【請求項12】
請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする化粧品。
【請求項13】
請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする害虫忌避剤。
【請求項14】
請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする栄養補助食品。
【請求項15】
植物から有効成分を抽出する有効成分の抽出方法であって、
前記植物と水を混合する混合工程と、
前記水と混合した植物から有効成分を抽出する抽出工程と、を含むことを特徴とする有効成分の抽出方法。
【請求項16】
前記有効成分の脱水を行う脱水工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の有効成分の抽出方法。
【請求項17】
前記脱水工程は、前記水を蒸発させて行うことを特徴とする請求項16に記載の有効成分の抽出方法。
【請求項18】
前記脱水工程における前記水の蒸発は、負圧の状態として行うことを特徴とする請求項17に記載の有効成分の抽出方法。
【請求項19】
前記有効成分から異物を除去して精製する精製工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の有効成分の抽出方法。
【請求項20】
前記植物は、残留農薬が所定値以下の植物から選択されることを特徴とする請求項15に記載の有効成分の抽出方法。
【請求項21】
請求項15~請求項20のいずれか一項に記載の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分のpHが所定値となるように調整するpH調整工程を含むことを特徴とする有効成分の調整方法。
【請求項22】
請求項15~請求項20のいずれか一項に記載の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分のエマルジョン化処理を行う処理工程を含むことを特徴とする有効成分の調整方法。
【請求項23】
請求項15~請求項20のいずれか一項に記載の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分に超音波を照射して処理を行う処理工程を含むことを特徴とする有効成分の調整方法。
【請求項24】
前記処理工程は、前記超音波を照射することにより前記有効成分に含まれる界面活性剤成分のエマルジョン化処理を行うことを特徴とする請求項23に記載の有効成分の調整方法。
【請求項25】
請求項21~請求項24のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする除菌剤。
【請求項26】
請求項21~請求項24のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする消臭剤。
【請求項27】
請求項21~請求項24のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする香料。
【請求項28】
請求項21~請求項24のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする化粧品。
【請求項29】
請求項21~請求項24のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする害虫忌避剤。
【請求項30】
請求項21~請求項24のいずれか一項に記載の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする栄養補助食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分の抽出方法、有効成分の調整方法、除菌剤、消臭剤、香料、化粧品、害虫忌避剤、および栄養補助食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から植物から抽出された油分(精油)やエキス等の有効成分が広く利用されている。例えば、グレープフルーツの種子からの抽出された有効成分(グレープフルーツ種子抽出液、以下、GSEとする場合がある)に含まれる油分(精油)は、天然の抗生物質とも言われ、他の植物からの抽出した精油に比べて、その効果は突出している。すでに、様々なGSE製品が市場に存在していており、その使用目的は、微生物の感染を回避するための除菌等がある。GSEは、アルコールや、塩素系の除菌剤と異なり、ケミカル成分を使わず、人畜無害でしかも揮発性が無いため除菌力が持続すると言うことが特徴である。
【0003】
このようなGSEに関する技術は、例えば、特許文献1に開示された技術を参照することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-202632号公報特開2010-202632特開2002-112840
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、GSEは、抽出方法や、精製方法によっては、その効果や、コストは大きく異なるものとなる。すなわち、コストが高ければ、いくら人畜無害で持続性が有っても、普及させることができない。
【0006】
例えば、GSEの生成方法は、グレープフルーツの種子を破砕して含有された液体を絞り出し、それを濾過して、不純物を除去、さらに加温して水分を飛ばして濃縮(加熱濃縮)するという手法が一般的である(単純抽出)。
【0007】
しかしながら、グレープフルーツの種子は、水分の絶対量が少なく、同時に抽出する油(GSE)のキャリアー効果が弱い。このため、アルコール等の有機溶剤を混入して、アルコール中にグレープフルーツの種子を溶かし入れ破砕、抽出し、最後にアルコールを飛ばす手法も用いられるケースも多い(溶剤抽出)。
【0008】
ところが、現状のこのような単純抽出も溶剤抽出もそれぞれに問題を抱えている。
【0009】
すなわち、単純抽出の場合は、抽出量が少なすぎて原料のロスが大きく、また加熱濃縮においては精油の破壊を防止する為、低温で行うが、時間効率が悪く脱水レベルもかなり低い。このため、最終精油の純度が低い上に、手間と時間で精油コストが高いものとなる。
【0010】
また、溶剤抽出については、効率的に精油の抽出を行うことができるが、最終工程の溶剤除去が完全ではなく、微量の溶剤が残留する。精油の純度をより高めるために、加温により、水分や溶剤を飛ばす方法を取るが、GSEの破壊を防ぐために80℃以上の加温を避けるため、効率が悪いと言うのが現状である。
【0011】
さらに、溶剤抽出は、溶剤が残留するためハラール地域での使用が厳しいと言う問題もある。
【0012】
GSEから抽出した精油は、溶剤や塩素系除菌剤と異なり、人畜無害、また環境に優しく、その効果は揮発性が無いことや、有機物環境化においても、効果は失活しないため効果が長時間継続される特徴を持つ。
【0013】
よって、より効率的な抽出や、精製法を提供することにより、コストをさげ、あらゆる場面で使用出来る除菌剤等を提供することが、微生物の感染リスクを抑制させ、社会に貢献出来るものと考えられる。
【0014】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、効率的に植物から有効成分を抽出することが可能となる有効成分の抽出方法、有効成分の調整方法、除菌剤、消臭剤、香料、化粧品、害虫忌避剤、栄養補助食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る有効成分の抽出方法は、植物から有効成分を抽出する有効成分の抽出方法であって、前記植物から有効成分を、水を介して抽出することを特徴とする。
前記有効成分の抽出は、負圧の状態として行うことができる。
前記有効成分の抽出は、前記有効成分から異物を除去して精製し行うことができる。
上記目的を達成するために、本発明に係る有効成分の調整方法は、上記の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分のpHが所定値となるように調整することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る有効成分の調整方法は、上記の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分をエマルジョン化することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る有効成分の調整方法は、上記の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分に超音波を照射することを特徴とする。
前記超音波を照射することにより前記有効成分に含まれる界面活性剤成分のエマルジョン化処理を行うことができる。
前記有効成分に前記植物由来の界面活性剤成分を添加することができる。
上記目的を達成するために、本発明に係る除菌剤は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る消臭剤は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る香料は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る化粧品は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る害虫忌避剤は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る栄養補助食品は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る有効成分の抽出方法は、植物から有効成分を抽出する有効成分の抽出方法であって、前記植物と水を混合する混合工程と、前記水と混合した植物から有効成分を抽出する抽出工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、前記植物と水を混合する混合工程と、前記水と混合した植物から有効成分を抽出することとしたので、抽出の際の水分の含有量が多くなり、キャリアー効果が大きくなる等、効率的に植物から有効成分を抽出することが可能となる。
【0017】
前記有効成分の脱水を行う脱水工程を含むこととすれば、有効成分を濃縮することができる。
【0018】
前記脱水工程は、前記水を蒸発させて行うことができる。
【0019】
前記脱水工程における前記水の蒸発は、負圧の状態として行うこととすれば、水の沸点を下げることができるので、水の蒸発を低い温度で行うことができ、温度により有効成分が分解し破壊されることを少なくすることができる。
【0020】
前記有効成分から異物を除去して精製する精製工程を含むことができる。
前記植物は、例えば、残留農薬が所定値以下の植物から選択することができる。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明に係る有効成分の調整方法は、上記の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分のpHが所定値となるように調整するpH調整工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、上記のpH調整工程を含むこととしたので、抽出された有効成分をpHにより管理し調整することができる。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明に係る有効成分の調整方法は、上記の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分のエマルジョン化処理を行う処理工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、上記の処理工程を含むこととしたので、有効成分に油分と水分が含まれる場合にあってもエマルジョン化処理を行うことにより有効成分を均一に分散させることが可能となる。
上記目的を達成するために、本発明に係る有効成分の調整方法は、上記の有効成分の抽出方法により抽出された有効成分に超音波を照射して処理を行う処理工程を含むことを特徴とする。
すなわち、前記処理工程は、前記超音波を照射することにより、前記有効成分に含まれる界面活性剤成分のエマルジョン化処理を行うことができる。
【0023】
上記目的を達成するために、本発明に係る除菌剤は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る消臭剤は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明に係る香料は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る化粧品は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
【0025】
上記目的を達成するために、本発明に係る害虫忌避剤は、上記の有効成分の調整方法により調整された液体の有効成分を含有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る栄養補助食品は、上記の有効成分の調整方法により調整された有効成分を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、効率的に植物から有効成分を抽出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る有効成分の抽出方法を実施するための抽出システムを示す図である。
図2】抽出システムによる有効成分の抽出方法を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の実施形態に係る有効成分の調整方法を実施するための調整システムを示す図である。
図4】調整システムによる有効成分の調整方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[有効成分の抽出方法]
以下、本発明の実施形態に係る有効成分の抽出方法について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る有効成分の抽出方法を実現するための抽出システムを示す図である。
【0029】
図1を参照して抽出システム1の概要を説明すると、抽出システム1は、ミキサー2、破砕器3、第1の加圧濾過器4、脱水器5、攪拌器6、加熱器7、および第2の加圧濾過器8を有しており、これら機器を動作させることにより植物から液体の有効成分(液体の有効成分は、以下単に有効成分とする場合がある)を水を介して抽出(水抽出)する抽出方法を実施することができる。すなわち、本実施形態の液体の有効成分の抽出方法は、図2に示すように、混合工程10、破砕工程20、抽出工程30、脱水工程40、および精製工程50を含み液体の有効成分の水抽出を行うことができる。
【0030】
すなわち、混合工程10は、植物と水をミキサー(混合器)2に投入してミキサー2を作動させて混合する工程である。ミキサー2の内部には、破砕器3が設けられている。破砕器3は、回転軸に切刃を設けた構成となっている。破砕機3は、ピンミル、グローミル(グラインダー)、ハンマーミル、シャークミル、クラッシャー、カッターミキサー、ロータリーカッター等とすることができる。すなわち、ミキサー2は、破砕器3を複合的に備えており、破砕器3の回転軸を回転させることにより、植物と水を混合しながら植物を破砕することができる。混合工程10は、水と混合した植物を破砕する破砕工程20を含んでいる。
【0031】
ここで、ミキサー2において混合される植物は、例えばグレープフルーツまたはグレープフルーツの種を含むことができる。また、植物は、グレープフルーツの他、檜、茶葉、竹、生姜、ワサビ、キノコ、薔薇、藻類、オリーブ等やこれらの実、種を含むことができる。特にグレーフルーツの種子から抽出される液体の有効成分(GSE、GSEは、以下「グレープフルーツの種子から抽出される油分(精油)を含む抽出物」、「グレープフルーツ種子抽出液」とする場合がある)に含まれる油分(精油)は、除菌力が非常に強くより好ましい実施形態となる。
【0032】
更に、植物は、特に品種は問わないが、残留農薬が所定値以下の植物から選択されることが好ましい。植物は、残量農薬が含有されていない植物とすることが更に好ましい。すなわち、農薬は種子に濃縮されることが多く、植物の選定を誤ると抽出した有効成分が使用できなくなることもある。一般的にアジア産の植物は残留農薬が多く、南米産は少なくとされている。したがって、植物は、南米産とすることがより好ましい。
【0033】
また、投入される水(投入される水は、以下単に水とする場合がある)は、混合工程10および破砕工程20において、キャリアーとなるものであり、所定の濾過器により濾過され精製された精製水、蒸留処理された蒸留水、イオン交換されたイオン交換水、純水等を含むことができる。
【0034】
混合工程10および破砕工程20において、投入される水の植物に対する重量比は、例えば植物がグレープフルーツの種子である場合には、0.01~0.3とすることができ、更に、水の植物に対する重量比は、植物がグレープフルーツの種子である場合には、0.03~0.25とすることが好ましく、0.05~0.2とすることが更に一層好ましい。
【0035】
抽出工程30は、破砕工程20により破砕した植物から液体の有効成分を抽出する工程である。植物から抽出される液体の有効成分は、植物性の油分(例えば、グレープフルーツの種の油分(精油))やエキス等を含む。
【0036】
すなわち、抽出工程30においては、破砕工程20により破砕した植物をフィルタープレス等の加圧濾過器4により加圧しながら濾過することにより固体成分と液体の有効成分に分離し液体の有効成分を投入された水とともに抽出することができる。
【0037】
抽出工程30における濾過は、篩目の目開きを60~170メッシュとした篩で行い、篩上を固体成分とし、篩下を液体の有効成分とすることができる。更に、濾過は、篩目の目開きを70~140メッシュとした篩で行うことが好ましく、80~120メッシュ(更に、100メッシュとすることが好ましい)とする篩で行うことが更に一層好ましい。
【0038】
脱水工程40は、加圧濾過器4により濾過された液体の有効成分の脱水を脱水器5により行う工程である。脱水工程40は、抽出工程30で抽出された液体の有効成分を含む抽出物を加熱することにより、抽出物に含まれる水を蒸発させて行うことができる。
【0039】
脱水工程40における水の蒸発は、密閉された脱水器5内を負圧の状態より詳しくは液体の有効成分を含む抽出物を負圧の状態として行うことができる。脱水器5は、準真空を形成することができる準真空装置として機能するものである。
【0040】
すなわち、脱水器5内の圧力より詳しくは液体の有効成分を含む抽出物の圧力は、植物をグレープフルーツの種子とし、液体の有効成分をグレープフルーツの種子から抽出される油分(精油)を含む抽出物(GSE)とした場合、-70~-120kPaとして、脱水器5内を準真空とすることが好ましい。更に、脱水器5内より詳しくは液体の有効成分を含む抽出物の圧力は、-80~-110kPaとすることが好ましく、-90~-100kPaとすることが更に一層好ましい。
【0041】
ここで、脱水器5は、内部に攪拌器6を複合的に備えている。すなわち、液体の有効成分を含む抽出物の加熱は、抽出物を攪拌器6により攪拌しながら行うことができる。攪拌器6は、回転軸に攪拌羽根を設けた構成となっている。また、液体の有効成分を含む抽出物の加熱は、グレープフルーツの種子から抽出される油分(精油)を含む抽出物(GSE)の場合、脱水器6内の温度が30~50℃の範囲となるように行うことができる。
【0042】
つまり、脱水器5内を上記のような準真空にすることにより、水の沸点が下がるため、30~50℃で水分のみを低温蒸発させることができる。グレープフルーツの種子から抽出される油分(精油)を含む抽出物(GSE)を含む植物の抽出物は有機質であることが多く80℃程度の温度で有効成分が分解し破壊されてしまう。よって通常の水の沸点である100℃での分離や抽出は厳しいと言う問題を抱えている。グレープフルーツ種子抽出液(GSE)に含まれる油分(精油)等の沸点は、水よりも高いため、上記のように30~50℃で水を低温蒸発させることで、油分(精油)の成分を破壊することなく効率的に回収することが可能となる。
【0043】
液体の有効成分を含む抽出物の加熱は、脱水器5の外部に加熱器7を設けて行うことができ、加熱器7により脱水器5を介して間接的に行うことができる。
【0044】
なお、脱水器5は、配管5a、逆止弁5b、真空ポンプ5cを備えている。配管5aは、加熱により蒸発した水分を、脱水器5から脱気するためのものであり、脱水器5の上部側と連通するように設けられている。逆止弁5bは、配管5a内の蒸発した水分を外部に排出しかつ外部の空気の配管5aへの流入を阻止するための弁である。真空ポンプ5cは、逆止弁5bの下流側に設けられており、蒸発した水分を負圧を保ちながら連続して吸引し外部に排出することができる。
【0045】
精製工程50は、脱気した液体の有効成分を含む抽出物を更にフィルタープレス等の加圧濾過器8により加圧しながら濾過することにより有効成分を含む抽出物から固体状の異物を除去して液体の有効成分を精製する工程である。
【0046】
精製工程50における濾過は、篩目の目開きを270~400メッシュとした篩で行い、篩上を異物とし、篩下を精製された液体の有効成分とすることができる。更に、濾過は、篩目の目開きを325~400メッシュとした篩で行うことが好ましい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る有効成分の抽出方法によれば、水抽出より詳しくは水と混合した植物から有効成分を抽出することとしたので、抽出の際の水分の含有量が多くなり、キャリアー効果が大きくなる等、効率的に植物から有効成分を抽出することが可能となる。
【0048】
また、有効成分の脱水を行う脱水工程を含むこととしたので、有効成分を濃縮することができる。
【0049】
更に、脱水工程30における水分の蒸発は、負圧の状態として行うこととしたので、水の沸点を下げることができる。すなわち、水分の蒸発を低い温度で行うことができ、温度による有効成分が分解し破壊されることを少なくすることができる。
【0050】
[有効成分の調整方法]
以下、本発明の実施形態に係る有効成分の調整方法について図面を参照して詳細に説明する。図3は、本発明の実施形態に係る有効成分の調整方法を実現するための調整システムを示す図である。
【0051】
図3を参照して調整システム100の概要を説明すると、調整システム100は、エマルジョン化槽101およびpH測定器102を有しており、これら機器により上記の有効成分の抽出方法により抽出された液体の有効成分のエマルジョン化処理を行いつつそのpHを所定値となるように調整することができる。すなわち、本実施形態の液体の有効成分の調整方法は、図4に示すように、希釈工程110、エマルジョン化処理工程120、およびpH調整工程130を含んでいる(本有効成分の調整方法においても液体の有効成分には、上記の有効成分の抽出方法と同様にグレーフルーツの種子から抽出される液体の有効成分(GSE)を含むことは勿論である)。
【0052】
すなわち、希釈工程110は、上記の抽出方法により抽出された液体の有効成分に対し更に水を投入して混合することにより、抽出された液体の有効成分を希釈する工程である。例えば、植物から抽出した油分(精油)を除菌剤として使用する場合には、100ppmから3000ppm程度の範囲で除菌部位(手、まな板、ドアノブ、マスク、嘔吐物、空間等)に応じて水で希釈を行うこととなる。
【0053】
ここで、水は、上記の抽出方法と同様に、所定の濾過器により濾過され精製された精製水、蒸留処理された蒸留水、イオン交換されたイオン交換水、純水等を含むことができる。
【0054】
エマルジョン化処理工程120は、希釈工程110で更に投入した水と混合された液体の有効成分のエマルジョン化処理を行う処理工程である。すなわち、抽出された液体の有効成分は油分(精油)を含むことが多く、単純に水を投入して希釈をしても、水と油分が分離するため分散性が悪い。このため、油分(精油)の一次加工を行いエマルジョン化(乳化)処理が必要となる。
【0055】
液体の有効成分のエマルジョン化処理は、液体の有効成分に超音波発生器により超音波を照射して超音波拡散により有効成分に含まれる界面活性剤成分のエマルジョン化処理を行うことができる(超音波発生器はエマルジョン化槽101内に備えられる)。すなわち、エマルジョン化処理の際には合成界面活性剤を使用すれば簡単だが、その時点で天然物からの概念が外れ、安全性にも問題が発生する。このため、本発明品は、上記の希釈工程110において、抽出した液体の有効成分に同有効成分の重量の2倍から10倍程度の水を加えて希釈した後、超音波を照射して超音波撹拌を行う。抽出した有効成分に含まれる油分(精油)には植物中の天然界面活性剤成分も若干含有されており、この超音波拡散を行う一次加工により、その界面活性剤成分の働きを引き出し、水とのエマルジョン化処理が可能となる。
【0056】
このように、有効成分に界面活性効果を与える理由としては、溶媒(水)との分散性の向上とそれらを塗布して被写体(微生物、皮膚、食品、昆虫、その他)に接触させたときに、被写体の表面での表面張力を失わせ被写体を均一に覆ってしまうことである。表面張力を失わせることで、被写体に対しての影響(除菌、防虫、美容、体内吸収、その他)を最大に上げることができる。
【0057】
なお、エマルジョン化処理工程120において、抽出された液体の有効成分に他の植物由来の界面活性剤成分を更に添加して超音波を照射することとしてもよい。
【0058】
pH調整工程130は、エマルジョン化処理工程120によりエマルジョン化処理された液体の有効成分のpHが所定値となるように調整する工程である。すなわち、希釈工程110において投入される水の量は、抽出した有効成分に含まれる油分(精油)は天然物の為、植物の原産地や、刈り入れ時期により精油品質(有効成分濃度)にバラツキがある。このため、pH管理により決定させる。有効成分は強酸性であることが多く、pHが高いほど有効成分は低いと判断できる。よって、一次加工の水の希釈倍率は最低の基準phを設定(例えば、GSEは、pHは3程度)し、その基準値になるように水を投入して希釈を行う。この作業を行うことにより、最終二次加工は目的(用途別濃度)に応じた共通の希釈倍率で品質(有効成分濃度、色合い)を安定させることが可能となる。
【0059】
以上のような調整方法により調整された液体の有効成分は、除菌剤、消臭剤、香料、化粧品、栄養補助食品として利用することができる。
【0060】
すなわち、本発明により、上記の液体の有効成分の調整方法により調整された液体の有効成分を含有する除菌剤、消臭剤、香料、化粧品、害虫忌避剤、栄養補助食品を提供することができる。上述したように、有効成分に界面活性効果を与えているため、被写体(微生物、皮膚、食品、昆虫、その他)に有効成分を接触させたときに、被写体の表面での表面張力を失わせ被写体を均一に覆い、その表面張力を失わせることができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る有効成分の調整方法によれば、上記のpH調整工程130を含むこととしたので、抽出された有効成分をpHにより管理し調整することができる。
【0062】
また、有効成分をエマルジョン化処理するエマルジョン化処理工程120を含むこととしたので、有効成分に油分と水分が含まれる場合にあってもエマルジョン化処理することにより有効成分を均一に分散させることが可能となる。
【0063】
なお、上記からも明らかなように、本実施形態に係る有効成分の抽出方法により、目的に応じた各種植物からの有効成分抽出を効率的に行い、環境に優しい天然系機能性原料を提供することができる。すなわち、抽出の際のランニングコストは水と電力のみの使用に係るコストであり、かつ電力は最大限に抑える手法である。従来は、有機溶剤抽出が、一般的に効率が良いとされていたが、有機溶剤は可燃物であり、連続的な抽出の際は、安全性を担保できない。また、作業場での保管についても、危険物としての法律に準拠した管理が必要となるが、本抽出方法によれば、このような問題の発生も少ない。本実施形態の有効成分の抽出方法および調整方法により、安全性が担保される水抽出を効率的に行う手法を提供することができる。
【符号の説明】
【0064】
1:抽出システム
2:混合器
3:破砕器
4:加圧濾過器
5:脱水器
5a:配管
5b:逆止弁
5c:真空ポンプ
6:攪拌器
7:加熱器
8:加圧濾過器
10:混合工程
20:破砕工程
30:抽出工程
40:脱水工程
50:精製工程
100:調整システム
101:エマルジョン化槽
102:pH測定器
110:希釈工程
120:エマルジョン化処理工程
130:pH調整工程
図1
図2
図3
図4