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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057823
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】椅子の背もたれ
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/46 20060101AFI20220404BHJP
   A47C 3/026 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A47C7/46
A47C3/026
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166272
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 駿介
(72)【発明者】
【氏名】横山 剛士
【テーマコード(参考)】
3B084
3B091
【Fターム(参考)】
3B084HA02
3B084HA06
3B091AA04
3B091AB02
(57)【要約】
【課題】背シェル体を備えた背もたれにランバーサポート装置を設けるにおいて、操作性の向上等を図る。
【解決手段】背もたれ3は、シェル本体6と、その前に配置された背クッション7と、これらを覆う表皮材13とを備えており、背クッション7を後ろから支持パッド14で支えている。支持パッド14は、後ろ下向きの傾斜部49を有する昇降体20とその後端に背受けた摘み15を有する昇降操作部17によって昇降操作される。シェル本体6には、昇降体20をガイドするスリーブ体16が装着されている。摘み15は支持パッド14の下部の高さに位置しているため、操作に際して腕を不自然に曲げる必要はなく、支持パッド14を軽快に昇降操作できる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれの背面部を構成する背シェル体と、前記背シェル体の手前に配置された背クッションと、前記背クッションを介して着座者を後ろから支えるランバーサポート装置とを備えており、
前記ランバーサポート装置は、前記背クッションと背シェル体との間に上下動可能に配置された支持パッドと、前記支持パッドを前記背シェル体の後ろから高さ調節する昇降操作部とを有している構成であって、
前記背シェル体に、前記昇降操作部の一部が上下動自在に貫通した上下長手の長穴を、背面視において全体が前記支持パッドと重なる状態か、又は、背面視において前記パッドの下方に部分的にはみ出る状態に形成している、
椅子の背もたれ。
【請求項2】
前記昇降操作部は、前記背シェル体の後ろに露出して前記長穴の左右両側にはみ出た摘みを備えている、
請求項1に記載した椅子の背もたれ。
【請求項3】
前記背シェル体は、前記長穴が形成された上下長手のスリーブ体と、前記スリーブ体が装着されたシェル本体とを備えており、前記シェル本体には、前記スリーブ体が嵌入する上下長手の取り付け穴が開口している、
請求項1又は2に記載した椅子の背もたれ。
【請求項4】
前記昇降操作部は、前記スリーブ体の内部に上下動自在に配置された挿通部と、前記挿通部の手前に位置して前記シェル本体に直接に又はガイド体を介して前後動不能及び昇降自在に係合するガイド部とを有しており、
前記ガイド部は前記挿通部よりも左右に張り出した張り出し部を有しており、前記張り出し部は、前記シェル本体に設けた後向き開口縁と前記スリーブ体の後縁との間に形成された溝に係合している、
請求項2又は3に記載した椅子の背もたれ。
【請求項5】
前記シェル本体の背面は表皮材で覆われて、前記表皮材には前記スリーブ体が貫通する開口を形成しており、前記表皮材のうち前記開口の周囲の縁部が前記スリーブ体で後ろから覆われている、
請求項3又は4に記載した椅子の背もたれ。
【請求項6】
前記背シェル体に、前記昇降操作部の上下動を少なくとも前後2箇所でガイドする複数のガイド部が形成されており、前記複数のガイド部のうち少なくとも1つのガイド部に、前記支持パッド及び昇降操作部の高さを段階的又は無段階的に保持する係止手段が設けられている、
請求項1~5のうちのいずれかに記載した椅子の背もたれ。
【請求項7】
背もたれの背面部を構成する背シェル体と、前記背シェル体の手前に配置された背クッションと、前記背クッションを介して着座者を後ろから支えるランバーサポート装置とを備えており、
前記ランバーサポート装置は、前記背クッションと背シェル体との間に上下動可能に配置された支持パッドと、前記支持パッドを前記背シェル体の後ろから高さ調節する昇降操作部とを有している構成であって、
前記背シェル体に、前記昇降操作部の一部が上下動自在に貫通した上下長手の長穴と、前記昇降操作部の上下動を少なくとも前後2箇所でガイドする複数のガイド部とが形成されており、前記複数のガイド部のうち少なくとも1つのガイド部に、前記支持パッド及び昇降操作部の高さを段階的に又は無段階的に保持する係止手段が設けられている、
椅子の背もたれ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ランバーサポート装置を備えた椅子の背もたれに関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれにおいて、使用者の腰部を後ろから支持パッドで支えるランバーサポート装置を設けることは広く行われている。ランバーサポート装置は、支持パッドの高さが一定になっている固定式と、支持パッドの高さを調節できる昇降式とがあるが、昇降式のランバーサポート装置は操作部材を備えているため、操作部材をどのように配置するかが問題になり。
【0003】
操作部材の構造や配置態様は背もたれの構造と密接に関連しており、例えば特許文献1では、背板が後ろに露出しているタイプの背もたれにおいて、背板の左右両側部に上下長手のスリットを形成して、このスリットから操作用の摘みを露出させることが開示されている。
【0004】
他方、特許文献2には、背面を背シェル体で構成した背もたれにおいて、背シェル体の上下中途部に左右長手のスリットを形成し、このスリットから操作片を後ろに露出させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-191462号公報
【特許文献2】特開2019-103675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では支持パッドは左右方向に長い形態になっており、そこで、支持パッドの左右端部に操作用摘みを設けて、スリットを介して摘みを支持パッドに連結しているが、摘みは背もたれの左右両側部に配置されているため、着座した状態で昇降操作するには、両手を後ろに回ししつつ左右両側に広げた状態で摘みに手を掛けねばならず、このため、腕が不自然に曲がる傾向を呈して操作性が悪いと懸念される。
【0007】
また、摘みは支持パッドよりも高い位置に配置されているため、摘みをかなり高い高さまで上昇させねばならない為、着座した状態で操作することは困難であり、この点でも操作性が悪いと懸念される。
【0008】
他方、特許文献2では、操作部材はスリットから下方に延びているため、着座した状態において腕を広げることなく昇降操作することが可能であり、従って、操作しやすくてユーザーフレンドリーであると云える。
【0009】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、背シェル体を備えた背もたれにおいて、支持パッドの昇降動のスムース化や操作性の向上など、改良された形態を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の背もたれは、
「背もたれの背面部を構成する背シェル体と、前記背シェル体の手前に配置された背クッションと、前記背クッションを介して着座者を後ろから支えるランバーサポート装置とを備えており、
前記ランバーサポート装置は、前記背クッションと背シェル体との間に上下動可能に配置された支持パッドと、前記支持パッドを前記背シェル体の後ろから高さ調節する昇降操作部とを有している」
という基本構成である。
【0011】
そして、請求項1の発明では、上記基本構成において、
「前記背シェル体に、前記昇降操作部の一部が上下動自在に貫通した上下長手の長穴を、背面視において全体が前記支持パッドと重なる状態か、又は、背面視において前記パッドの下方に部分的にはみ出る状態に形成している」
という構成になっている。
【0012】
支持パッドは昇降するので、支持パッドと長穴との相対的な高さは変化するが、長穴は、支持パッドの昇降エリアに対して、背面視で重なるか又は下方にはみ出る状態であったらよい。
【0013】
請求項1の発明は様々に展開できる。その例として請求項2では、
「前記昇降操作部は、前記背シェル体の後ろに露出して前記長穴の左右両側にはみ出た摘みを備えている」
という構成になっている。
【0014】
請求項1又は2の展開例として、請求項3では、
「前記背シェル体は、前記長穴が形成された上下長手のスリーブ体と、前記スリーブ体が装着されたシェル本体とを備えており、前記シェル本体には、前記スリーブ体が嵌入する上下長手の取り付け穴が開口している」
という構成になっている。
【0015】
また、請求項2又は3の展開例として、請求項4では、
「前記昇降操作部は、前記スリーブ体の内部に上下動自在に配置された挿通部と、前記挿通部の手前に位置して前記シェル本体に直接に又はガイド体を介して前後動不能及び昇降自在に係合するガイド部とを有しており、
前記ガイド部は前記挿通部よりも左右に張り出した張り出し部を有しており、前記張り出し部は、前記シェル本体に設けた後向き開口縁と前記スリーブ体の後縁との間に形成された溝に係合している」
という構成になっている。
【0016】
更に、請求項3又4の展開例として、請求項5では、
「前記シェル本体の背面は表皮材で覆われて、前記表皮材には前記スリーブ体が貫通する開口を形成しており、前記表皮材のうち前記開口の周囲の縁部が前記スリーブ体で後ろから覆われている」
という構成になっている。
【0017】
また、請求項1~5のうちいずれかの展開例として、請求項6では、
「前記背シェル体に、前記昇降操作部の上下動を少なくとも前後2箇所でガイドする複数のガイド部が形成されており、前記複数のガイド部のうち少なくとも1つのガイド部に、前記支持パッド及び昇降操作部の高さを段階的又は無段階的に保持する係止手段が設けられている」
という構成になっている。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1と同じ基本構成において、
「前記背シェル体に、前記昇降操作部の一部が上下動自在に貫通した上下長手の長穴と、前記昇降操作部の上下動を少なくとも前後2箇所でガイドする複数のガイド部とが形成されており、前記複数のガイド部のうち少なくとも1つのガイド部に、前記支持パッド及び昇降操作部の高さを段階的に又は無段階的に保持する係止手段が設けられている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0019】
支持パッドは着座した人の腰部を支えるものであるため、着座した人は、支持パッドの昇降エリア程度の高さであると、特段の負担なく後ろ手にして操作部材を操作できる。そして、本願請求項1では、長穴は、支持パッドの昇降エリアと重なるか又は下方に部分的にはみ出る高さに形成されているため、操作部材の昇降操作を、腕を不自然に曲げることなく容易に行える。
【0020】
支持パッドが最も下降した状態で長穴が支持パッドよりも下方にはみ出ていると、昇降操作部の露出部(指掛け部)は支持パッドよりも下方に位置するため、腕を後ろ手にして殆ど曲げることなく力を掛けて昇降操作できる。従って、特に好適である。
【0021】
昇降操作部に関し、人が指を掛ける摘みは様々な形態を採用できるが、請求項2のように長穴の左右両側にはみ出た形態を採用すると、摘みをしっかりと掴んで力を掛けて上下動させることができるため、操作性を更に向上できる。また、昇降操作部のうち長穴に嵌まっている部分(挿通部)が前向きに抜けることを摘みによって阻止することも可能であるため、昇降操作部の構造を簡単化することも可能になる。
【0022】
背シェル体を1パーツ構造としてこれに長穴を直接形成することも可能であるが、請求項3のように、背シェル体をシェル本体とスリーブ体とで構成してスリーブ体に長穴を形成すると、スリーブ体をシェル本体とは別の素材で構成して昇降操作部の昇降を容易化したり、シェル本体の成形を容易にしつつ昇降操作部の取り付けやガイドを容易化したりすることができる。従って、現実的である。
【0023】
請求項4の構成を採用すると、昇降操作部の張り出し部(ガイド部、フランジ)はシェル本体とスリーブ体とで囲われるため、昇降操作部の前後方向の倒れを抑制してスムースに昇降させることができるが、シェル本体に対して後ろから嵌め込まれるスリーブ体がガイド手段を兼用するため、シェル本体の成形は容易である。従って、シェル本体の成形の容易性を損なうことなく、昇降操作部の昇降をスムース化できる。
【0024】
背シェル体を備えた椅子において、背面も表皮材で覆うことが行われている。すなわち、背もたれの全体を表皮材で張りぐるむことが行われている。このように構成すると、背もたれに高いファッション性を付与できる。そして、請求項5の発明は張りぐるみタイプに適用したものであるが、スリーブ体によって表皮材を押さえ保持できるため、表皮材を弛みのない状態に保持できる。
【0025】
また、昇降操作部の摘みが表皮材に当たると動きが悪くなったり表皮材が擦り切れやすくなったりするが、請求項5の発明では、昇降操作部の摘みが表皮材に当たることはないため、昇降動のスムース性悪化や表皮材の磨滅を防止できる。
【0026】
さて、支持パッドと背シェル体との間に間隔が空いていると、昇降操作部の前後長さが長くなるため、昇降操作部及び支持パッドの昇降にこじれが発生しやすくなる。すなわち、昇降操作部は、その後端部に指を掛けて昇降させるため、背シェル体は昇降に際して前後方向に回動する傾向を呈しており、前後長さが長いほど回動しやすくなってこじれが発生しやすい。
【0027】
この点,請求項6,7の構成を採用すると、昇降操作部は前後複数箇所において昇降がガイドされるため、支持パッドと摘み部との間の間隔が大きくても、昇降操作部の倒れを防止して支持パッドを軽快に昇降させることができる。また、係止手段によって支持パッドを所望の高さに保持できるが、係止手段はいずれかのガイド部に設けているため、それだけ構造を簡単化できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態を示す図で、(A)は表皮材を省略して手前から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は側面図である。
図2】(A)は背クッションを分離した斜視図、(B)はロアカバーを分離して後ろ下方から見た斜視図、(C)は補助カバーを分離した斜視図である。
図3】(A)はランバーサポート装置の斜視図、(B)は分離斜視図である。
図4】(A)はランバーサポート装置全体を前から見た分離斜視図、(B)は昇降操作部を手前から見た斜視図、(C)は案内部材の斜視図である。
図5】(A)はランバーサポート装置全体を後ろから見た分離斜視図、(B)は昇降操作部と支持パッドとの関係を示す分離斜視図、(C)は支持パッドが昇降操作部に取りついた状態での斜視図である。
図6】昇降体とシェル本体との分離斜視図である。
図7】中央部の縦断面図である。
図8】(A)は摘みの上下中間部で切断した平断面図、(B)は昇降操作部を示す分離斜視図である。
図9図7のIX-IX 視平断面図である。
図10】他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(1).実施形態の概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の椅子は事務用等に多用されている回転椅子であり、図1に示すように、脚装置1と座2と背もたれ3とを基本要素として備えている。脚装置1を構成する脚支柱の上端にベース4が取り付けられており、ベース4に後傾動自在に連結された傾動フレーム5に背もたれ3が取り付けられている。
【0030】
図1(B)に示すように、背もたれ3は、合成樹脂製の成形品であるシェル本体6とその前面に配置された背クッション7とを備えており、シェル本体6の下部後面に、上向きに反った三日月状のロアブラケット8とその上に位置したバックカバー9とが配置されており、更に、ロアブラケット8の左右両端部の後面にはサイドカバー10が取り付けられている。
【0031】
図2(C)に示すように、シェル本体6は前向きに開口した浅いトレー状に形成されて、内部には多数の補強リブが形成されており、補強リブの群の前に背クッション7が配置されているが、上半部と下端部とにはスペーサ板11,12が介在している。背クッション7は表皮材13で覆われているが、表皮材13は袋状に形成されてシェル本体6の背面も覆っており、ロアブラケット8及びバックカバー9は露出している。
【0032】
背クッション7とシェル本体6との間には、ランバーサポート装置を構成する支持パッド14が配置されており、シェル本体6の後ろには、ランバーサポート装置の昇降操作部を構成する摘み(レバー)15が配置されている。他方、シェル本体6には、背シェル体の一部を構成する上下長手のスリーブ体16が装着されて、スリーブ体16に上下長手の長穴17が形成されており、摘み15はスリーブ体16によって上下動自在にガイドされている。従って、シェル本体6とスリーブ体16とによって背シェル体が構成されている。
【0033】
(2).ランバーサポート装置
次に、ランバーサポート装置を説明する。図3~5に示すように、ランバーサポート装置は、既述の支持パッド14とこれを上下動させる昇降操作部19とを備えており、昇降操作部19は、前端上部に支持パッド14が取り付けられて下部後端に摘み15が取り付けられた昇降体20と、昇降体20の上部前端にビス21で固定されたスライダー22と、スライダー22が上下動自在に装着されたガイド体23と、ガイド体23の内部に配置されていると共にスライダー22と係合したキャッチ24とを備えている。
【0034】
例えば図3に示すように、支持パッド14は横長の卵形に形成されており、側面視及び平面視で前向きに膨れるように湾曲している。例えば図3(A)(B)に示すように、支持パッド14の後面には上下左右4か所に後ろ向きのガイド突起25が形成されて一方、シェル本体6の前面には、ガイド突起25が左右動不能で上下動自在に嵌まり込むガイド枠26が形成されている。
【0035】
そして、ガイド突起25の先端に、上下と後方に開口したガイド溝27が切り開き形成されている一方、例えば図6に示すように、ガイド枠26の内部に、ガイド突起25のガイド溝27がスライド自在に嵌合するガイドリブ28を形成している。
【0036】
図4(A)及び図5(A)に示すように、昇降体20の上部前端には四角形のヘッド部29が形成されており、ヘッド部29の中央部に角形のボス部30を前向きに突設している一方、スライダー22の後面にボス部30が嵌合する角形凹所30aを形成し、これらボス部30と角形凹所30aとを嵌合させた状態で、スライダー22をヘッド部29にビス21で固定している。
【0037】
図4(A)及び図5(A)に示すように、スライダー22は左右横長の角形に形成されており、左右両側部に位置決め突起31を形成している一方、キャッチ24は略ハ字の姿勢を成した一対の係合爪32を形成し、係合爪32の付け根部をスライダー22の位置決め突起31で左右から抱持している。更に、スライダー22の前面に形成した角形突起33をキャッチ24に形成した角形凹所30aに嵌合させている。
【0038】
従って、角形突起33と角形凹所30aとの嵌合によってキャッチ24を左右動不能及び下向き動不能に保持し、左右の位置決め突起31でキャッチ24の上部を左右から挟持することにより、キャッチ24を上向き動不能に保持している。
【0039】
更に、例えば図5(B)に示すように、支持パッド14のうち上端寄り部位の後面に、先端を上向き鉤状に形成した吊支突起34を形成している一方、キャッチ24の前端上部に、支持パッド14の吊支突起34が前から嵌まり込む吊支枠35を形成しており、これら吊支突起34と吊支枠35との嵌め合わせにより、支持パッド14が昇降体20と一体に昇降するようになっている。
【0040】
例えば図4(A),図5(A)に示すように、ガイド体23は正面視四角形に形成されており、内部には、スライダー22が上下動自在に嵌まるガイド凹所36が形成されている。図4(A)に示すように、ガイド凹所36の左右両側部にはフロントリブ38とリアリブ39とが形成されており、スライダー22は、これら前後リブ38,39で挟まれた状態で上下動自在に保持されている。また、図4(A)に矢印Xで示すように、スライダー22及びキャッチ24は、ガイド体23に上方から嵌め込まれている。
【0041】
そして、図4(A)に示すように、ガイド体23の下端に左右の下向きの鉤形爪40を形成する一方、図6に示すように、シェル本体6には、鉤形爪40が上から引っ掛かる上向きリブ41を形成することにより、ガイド体23の下端を前向き動不能に保持する一方、上端に設けたフランジ42をビス43でシェル本体6の固定部44(図8(B)参照)に固定している。図7に示すように、固定部44の後ろにはナット45(図3(A)も参照)を配置している。
【0042】
例えば図4(A)(C)に示すように、ガイド体23の左右内側面に、高さ調節のための係合突起48を多段に設けることによってラックを形成しており、キャッチ24の係合爪32を上下に隣り合った係合突起48の間の凹部に嵌め込むことにより、支持パッド14を所望の高さに保持している。係合爪32を弾性変形させることにより、高さ調節できる。図7に示すように、背クッション7と支持パッド14との間には、樹脂シート製の当て板46を介在させることができる。図3(A)に示すように、支持パッド14には、ガイド体23を左右両側に位置した側面視山形のリブ14aを突設している。
【0043】
図4(A)や図5に示すように、昇降体20は、ヘッド部29から下方に向かう傾斜部49と、傾斜部49の下端から後ろ向きに突出した断面角形のボス体50とを備えている。一方、スリーブ体16は、ボス体50が摺動自在に嵌まる上下長手の筒部51と、筒部51の後端から外向きに張り出したフランジ52とを備えており、図8(A)に示すように、筒部51は、シェル本体6に形成した開口53に嵌め込んでいる。表皮材13の縁部は、フランジ52で押さえ保持されている。
【0044】
例えば図7に示すように、シェル本体6は、着座した人の腰部が当たる部位が最も前に位置するように側面視で前向きに膨れた状態に湾曲しており、また、平面視では、前向きに凹んだ状態に湾曲している。そして、支持パッド14は、概ね側面視で前向きに張り出した部位に配置されており、また、スリーブ体16もシェル本体6の湾曲部に配置されている。
【0045】
そして、筒部51の前面とフランジ52の後面とは側面視で真っ直ぐな形態でかつ互いに平行になっている。そして、フランジ52を、上に向けて前後厚さが厚くなるように形成することにより、スリーブ体16を緩く後傾した姿勢に設定指定している。
【0046】
例えば図4に示すように、シェル本体6には、昇降体20の傾斜部49が昇降自在に遊嵌する前向き開口溝54を形成している。他方、例えば図4(A)や図7に示すように、スリーブ体16における筒部51の左右両側部と上端とに係合穴55を形成しており、図8(A)に示すように、前向き開口溝54の拡幅部54aに形成した係合爪56(図6も参照)を係合穴55に嵌合させることにより、スリーブ体16を後ろ向き不能に保持している。
【0047】
昇降体20のボス体50はスリーブ体16の後ろに露出したはみ出し部50aを備えており、はみ出し部50aに摘み15を後ろから嵌め込んで、下方から挿通/螺入したビス57で固定している。
【0048】
例えば図4に示すように、昇降体20のうち傾斜部49の下端に、ガイド部として、左右に突出したフランジ状の張り出し部58を設けており、張り出し部58の後面はスリーブ体16における筒部51の前面に当接又は密接させている一方、図6,7から理解できるように、張り出し部58の左右側面は、前向き開口溝54の左右内側面に当接又は密接している。
【0049】
この場合、図6,7に示すように、前向き開口溝54のうち拡幅部54aよりも下方の部位に前向き段部54bを形成する一方、図6,7,9に示すように後ろ向き段部54cを形成し、昇降体20の張り出し部58をスリーブ体16の前面と後ろ向き段部54cとで挟むことにより、昇降体20の上下動をガイドしている(昇降体20は、前後方向の倒れないようにガイドされる。)即ち、スリーブ体16と後ろ向き段部54cとで形成された溝に、昇降体20の張り出し部58が挿入されている。
【0050】
図6,7から理解できるように、張り出し部58の上下長さ(高さ)は、前向き開口溝54における拡幅部54aの上下長さ及び前向き段部54bの上下長さを足し合わせた寸法よりも僅かに小さい寸法になっている。従って、スリーブ体16を取り付けていない状態で、昇降体20を最下端に位置させた状態で張り出し部58を前向き開口溝54に挿入し、張り出し部58が前向き段部54bに当たってから上昇させると、張り出し部58が後ろ向き段部54cの後ろに位置するので、その状態でスリーブ体16を取り付けると、昇降体20は最下段まで下降できずに、張り出し部58がスリーブ体16と後ろ向き段部54cとで前後から挟まれた状態が保持される。
【0051】
(3).まとめ
以上の構成において、図7のとおり、支持パッド14が最下降した状態でスリーブ体16は背面視で支持パッド14と重なる部位に位置しており、従って、摘み15は支持パッド14の下端部と同じ高さに位置している。従って、着座した人が支持パッド14を昇降するために後ろ手で摘み15を操作するに当たっては、人は腕を殆ど曲げることなく自然な状態で摘み15を操作できる。従って、摘み15に軽快に上下動させて支持パッド14を昇降させることができる。
【0052】
支持パッド14と摘み15とは前後方向及び上下方向に離れているため、1箇所だけのガイドであると、摘み15の上下動に際して昇降体20が前後方向に倒れる傾向を呈するため、こじれが生じて昇降がスムースにできなくなるおそれがあるが、本実施形態では、昇降体20は、傾斜部49の下端の張り出し部58と下端のヘッド部29とが前後動不能で上下動可能に保持されているため、こじれを生じること無く軽快に昇降させることができる。
【0053】
スリーブ体16を使用することなく、シェル本体6に形成した長穴に昇降体20のボス体50を前から挿通することも可能であるが、本実施形態のようにスリーブ体16を使用してスリーブ体16に長穴17を形成すると、スリーブ体16を摩擦係数が小さい素材で形成することによって昇降体20の昇降をスムース化できる利点や、表皮材13をスリーブ体16で押さえ保持できる利点などがある。
【0054】
また、既述のとおり、昇降体20の張り出し部58はシェル本体6の後ろ向き段部54cとスリーブ体16とで形成された溝に嵌まっているため、前後の倒れを防止して(こじれを無くして)軽快に昇降操作できる。
【0055】
例えば図4(A)に示すように、ガイド枠23の下端は下フレーム23aで構成されている。そして、既述のとおり、昇降体20のスライダー22はガイド枠23に上方から挿通されているが、図7に示すように、スライダー22がガイド枠23の下フレーム23aに当たることにより、スライダー22の下降下限が規定されている。
【0056】
スライダー22がガイド枠23の下フレーム23aに当たって昇降体20の下降下限高さが規定されるが、この状態では、図7に示すように、昇降体20のボス体50はスリーブ体16の下端よりは少し上に位置しており、昇降体20の張り出し部58は前向き開口部54の後ろ向き段部54cに係合している。従って、ボス体50は前向き抜け不能に保持される。
【0057】
なお、ランバーサポート装置の組み立ては、例えば、次の手順で行うことができる。すなわち、スライダー22にキャッチ24を取り付けて、これをガイド枠23にセットしておく一方、スリーブ体16を取り外した状態で昇降体20の張り出し部58を前向き開口溝の下端部に前から挿入して上昇させ、スライダー22を昇降体20のヘッド29にピス21で固定し、次いで、摘み15を昇降体20のボス体50のはみ出し部50aにビス57で固定することと、支持パッド14をキャッチ24の吊支枠35に係合させると共に、支持パッド14のガイド突起25をシェル本体6のガイド枠26に嵌め込むこととを行う、という手順で組み立てることができる。摘み15の取付けと支持パッド14の取付けは、どちらを先に行ってもよい。
【0058】
本実施形態のように、支持パッド14にガイド突起25を設けると、支持パッド14の前後倒れが阻止されるため、支持パッド14の昇降をスムースに行える。特に、上部を昇降体20に取り付けると、上昇動はスムースに行えても下降動にこじれが生じやくなるが、ガイド突起25を設けると、昇降体20との取り付け高さ位置に関係なく、スムースに昇降させることができる。
【0059】
上記の実施形態ではスリーブ体16の長穴17が露出しているが、図10に他の実施形態として示すように、摘み15に長穴17を塞ぐ上下長手のカバー部15aを形成することも可能である。このようにすると、摘み15の上下動に伴って、カバー部15aも一緒に上下動するため、常に長孔17を塞いだ状態を維持することができ、手指や異物を挟んだり、あるいは塵や埃が侵入したりすることを防止することが可能である。
【0060】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、支持パッドは図示のような横長卵形には限らず、四角形や円形などの各種の形態を採用できる。また、昇降操作部には、必ずしも傾斜部を設ける必要はない。高さ調節手段としては、実施形態のように係合爪を利用した段階的な高さ調節に限らず、ダンパ等を使用した無段階的な高さ調節機構も採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明は、ランバーサポート装置を備えた背もたれに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0062】
3 背もたれ
6 シェル本体
7 背クッション
13 表皮材
15 摘み
16 スリーブ体
17 長穴
19 昇降操作部
20 昇降体
22 スライダー
23 ガイド部を構成するガイド体
24 キャッチ体
29 ヘッド
32 係合爪
48 係合突起
49 傾斜部
50 ボス体
51 筒部
52 フランジ
53 シェル本体の開口
54 前向き開口溝
54a 前向き開口溝の拡幅部
54b 前向き段部
54c 後ろ向き段部
58 張り出し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10