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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057833
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20220404BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 131
B41J2/175 113
B41J2/01 301
B41J2/175 121
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166286
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】白野 太一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA24
2C056KB05
2C056KB37
2C056KC02
2C056KC09
2C056KC13
2C056KD08
(57)【要約】
【課題】開閉カバーの開閉動作に連動して少なくとも一つのインクタンク内の第1インク室と第2インク室の連通路に設けられているバルブを開閉することで部品点数が少なく簡易な構成の画像記録装置を提供する
【解決手段】本発明の画像記録装置は、開位置と閉位置との間で移動可能な開閉カバーを備える筐体と、当該筐体内に配置され、液体を貯留するタンクと、当該タンク内の液体を消費する液体消費部と、を備える画像記録装置であって、上記タンクは、液体を貯留する第1液体貯留室と、当該第1液体貯留室の下方に設けられているとともに上記第1液体貯留室と連通路で連結されており、上記液体消費部に液体を供給する液体流出口を有する第2液体貯留室と、上記第1液体貯留室と連通されている液体注入口と、当該液体注入口に対して開閉可能なキャップと、上記連通路に対して密閉位置と開放位置との間で移動可能なバルブ部材と、を備え、上記開閉カバーの開閉と、上記バルブ部材の開閉とを連動させるリンク機構を備えている。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開位置と閉位置との間で移動可能な開閉カバーを備える筐体と、
当該筐体内に配置され、液体を貯留するタンクと、
当該タンク内の液体を消費する液体消費部と、を備える画像記録装置であって、
上記タンクは、
液体を貯留する第1液体貯留室と、
当該第1液体貯留室の下方に設けられているとともに上記第1液体貯留室と連通路で連結されており、上記液体消費部に液体を供給する液体流出口を有する第2液体貯留室と、
上記第1液体貯留室と連通されている液体注入口と、
当該液体注入口に対して開閉可能なキャップと、
上記連通路に対して密閉位置と開放位置との間で移動可能なバルブ部材と、を備え、
上記開閉カバーの開閉と、上記バルブ部材の開閉とを連動させるリンク機構を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
上記リンク機構は、上記開閉カバーが開位置のとき上記バルブ部材は密閉位置にあり、上記開閉カバーが閉位置のとき上記バルブ部材は開放位置にあるように連動させることを特徴とする請求項1に画像記録装置。
【請求項3】
上記リンク機構は、伸張状態と定常状態との間で伸縮する特性を有する弾性体で構成され、且つ上記第2液体貯留室の底壁に設けられている開口を密閉する密閉部材を備えており、
上記バルブ部材は、上記密閉部材の上記伸張状態と上記定常状態の状態変化に連動して上記連通路を開閉することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記バルブ部材は上記密閉部材と連結されており、上記バルブ部材は上記密閉部材が上記伸張状態のときに上記連通路を開放し、上記密閉部材が上記定常状態のときに上記連通路を密閉することを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記リンク機構は、上昇位置と下降位置との間で移動可能な状態変移部材を備えており、上記上昇位置にある上記状態変移部材が上記密閉部材の下方から上記密閉部材を押し上げることで上記密閉部材を上記伸張状態とし、上記状態変移部材が上記下降位置にあるとき上記密閉部材を上記定常状態にすることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記状態変移部材は、直線移動又は回転移動により上記上昇位置と上記下降位置との間を移動することを特徴とする請求項5に記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記リンク機構は、上記開閉カバーの開閉と連動して第1位置と第2位置との間で水平方向に移動するスライダ部材を備えており、上記状態変移部材は、上記スライダ部材の水平移動に連動して上記上昇位置と上記下降位置との間を移動することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
更に第1カム構造を備える固定部材を備え、
上記固定部材の上記第1カム構造と共働することにより上記状態変移部材を上記上昇位置と上記下降位置との間で移動させる第2カム構造を上記状態変移部材は備えており、
上記リンク機構は、上記開閉カバーの開閉と連動して第3位置と第4位置との間で水平方向に移動するとともに上記タンクと連結されているスライダ部材を備えており、
上記開閉カバーの開閉に連動して上記スライダ部材が上記第3位置と上記第4位置との間をスライドすることにより、上記状態変移部材は上記上昇位置と上記下降位置との間で移動することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項9】
上記バルブ部材は、上記密閉部材と固定連結されていることを特徴とする請求項3乃至請求項8のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項10】
上記開閉カバーは、上記閉位置にあるとき上記液体注入口と上記キャップとを被覆しており、上記開位置にあるとき上記液体注入口と上記キャップを露出することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項11】
上記開閉カバーは、回動基端側に設けられている回転軸を回動の中心として開閉可能であり、上記閉位置にあるときの上記開閉カバーの回動先端は、上記液体注入口と上記キャップの位置より上方にあることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクの充填や再充填が可能なインクタンクを備えた画像記録装置が存在している。図1(A)には、一例である画像記録装置300が記載されている。図1(A)に示されるように、インクジェット記録装置の一例である画像記録装置300は、概ね直方体形状である。画像記録装置300は、その上部に、用紙などの原稿に記録された画像をイメージセンサ(不図示)によって読み取って画像データを取得するスキャナ部を備えている。また、画像記録装置300の下部には、シートに画像を記録するプリンタ部を備えている。このプリンタ部は、液体消費部の一例としてのインクジェット記録方式の記録ヘッドを備えている。
【0003】
以下の説明では、インクタンク303の据え付けられた画像記録装置300が使用可能に水平面に設置された姿勢(図1の姿勢であって、「使用姿勢」と表記することがある。)を基準として上下方向が定義され、開閉カバー307が設けられている側を手前側(正面)として前後方向が定義され、画像記録装置300を手前側(正面)から見て左右方向が定義される。本実施形態では、使用姿勢において、上下方向が鉛直方向に相当し、前後方向及び左右方向が水平方向に相当する。
【0004】
図1(A)の画像記録装置300は、開閉可能な開閉カバー307が開位置にある。この画像記録装置300は、装置の前方左側にCMY(Cyan, Magenta, Yellow)3色のインクがそれぞれ1色ずつ収容される3つのインクタンク303が配置されている。この3つのインクタンク303のうち、最も左側のインクタンク303のキャップ304が開位置にあり、その他2つのインクタンク303のキャップ304は閉位置にある。一方、この画像記録装置300の前方右側にはBK(Black)インクが収容されるインクタンク303が配置されている。このBKインク用のインクタンク303のキャップ304は閉位置にある。開閉カバー307が開位置にあるとき、使用者はこれらのインクタンク303へのアクセス、すなわちインクの補給や補充等が可能になる。図1(B)は、前方左側に配置されている3つのインクタンク303の前部302の拡大図である。
【0005】
この画像記録装置300に搭載されているインクタンク303の概略構造を図2乃至図4を参照しつつ以下に説明する。図2は、インクタンク303を左側面から見た側面図である。図3は、このインクタンク303に使用されているリンク機構200のみを記載した斜視図である。図4(A)は、キャップ304が開位置にあることで、バルブが密閉された状態のインクタンク303を示す概略図であり、図4(B)は、キャップ304が閉位置にあることで、バルブが開放された状態のインクタンク303を示す概略図である。ただし図4には、第1インク室301の下方に設けられている第2インク室401は図示されていない。
【0006】
このインクタンク303は、注入筒305を密閉可能なキャップ304がインクタンク本体306に回動可能に装着されている。このキャップ304は図示しない弾性体(一例として、ラバー製のOリング)によって常に閉位置から開位置に向かって付勢されており、キャップ304を閉位置に保持する係合を解除すると、キャップ304は注入筒を密閉していた閉位置から開位置へと自ら回動する。更にキャップ304は、閉位置にあるときに下方に向かって延びる突部201を備えている。キャップ304が開位置にあるときは、この突部201は後述するスライダ部材202から離間しているが、キャップ304が閉位置にあるときは、この突部201はスライダ部材202を下方に向けて押圧する。
【0007】
次に、図3を参照しつつ、リンク機構200について説明する。リンク機構200は、キャップ304の動作と、後述するバルブ本体207の動作を連動させるために、キャップ304と、バルブ本体207とを連結する機構である。
【0008】
リンク機構200は、スライダ部材202、第2レバーアーム203、第1レバーアーム206、圧縮バネ204、複数のラバー製Oリング等から構成されている。
【0009】
スライダ部材202と、第2レバーアーム203と、圧縮バネ204は、インクタンク303の外側、すなわちインクタンク303の右側壁に配設されている。一方、第1レバーアーム206の回転軸205は、第1インク室301を形成する右側壁に設けられている貫通孔205Aを第1インク室301内からインクタンク303外に向けて貫通している。貫通孔205Aから第1インク室301内のインクが漏出しないように、貫通孔205Aには図示しないOリング等が設けられている。そして、この第1レバーアーム206は、インクタンク303の右側壁に配設されている第2レバーアーム203の回動動作に連動して回転軸205を回動の中心として第1インク室301内で回動可能である。
【0010】
バルブ本体207は、第1インク室301と第2インク室401を連通する連通路220をシールするシール部材209を備えており、第1レバーアーム206に対して回転可能に結合されている。そして、キャップ304の開閉動作に伴うスライダ部材202の移動、第2レバーアーム203の回転、更には第1レバーアーム206の回転に伴って、バルブ本体207は上下動し、その結果、シール部材209が弁座210に着座/離間することで第1インク室301と第2インク室401を連通する連通路220を開閉する。
【0011】
なお、このインクタンク303は、図示しない記録ヘッドにインクを供給するためのインク流出口360と、第2インク室401の内部をインクタンク303の外部に連通するための大気連通口370とを備えている。インク流出口360は第2インク室401に設けられている。一方、大気連通口370はインクタンク303の上部に設けられているが、この大気連通口370と第2インク室401の内部とを連通するための大気連通路371が第2インク室401まで延びている。
【0012】
また、このインクタンク303は、インクタンク本体306の前方側に視認部350を備えている。インクタンク本体306は光を透過する樹脂や半透明の樹脂で形成されているので、使用者はこの視認部350を見るだけで、インクタンク303内のインク残量を確認できる。この視認部350には、上限指示部351と下限指示部352とが設けられている。上限指示部351は、インクタンク303内に貯留が許容される最大容量のインクの液面高さを表示している。一方、下限指示部352は、使用者にインクタンク303内へのインクの注入を促す液面高さを表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】PCT特許公開第2019-078898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した従来のインクタンクにおいては、インクタンク毎にキャップの開閉動作に連動してインクタンク内の第1インク室と第2インク室の連通路に設けられているバルブを開閉することになり、インクタンク毎に複雑で部品点数の多いリンク機構が必要になる。このため、組立性も悪くコストも高くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、本発明の画像記録装置は、開位置と閉位置との間で移動可能な開閉カバーを備える筐体と、当該筐体内に配置され、液体を貯留するタンクと、当該タンク内の液体を消費する液体消費部と、を備える画像記録装置であって、上記タンクは、液体を貯留する第1液体貯留室と、当該第1液体貯留室の下方に設けられているとともに上記第1液体貯留室と連通路で連結されており、上記液体消費部に液体を供給する液体流出口を有する第2液体貯留室と、上記第1液体貯留室と連通されている液体注入口と、当該液体注入口に対して開閉可能なキャップと、上記連通路に対して密閉位置と開放位置との間で移動可能なバルブ部材と、を備え、上記開閉カバーの開閉と、上記バルブ部材の開閉とを連動させるリンク機構を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、開閉カバーの開閉動作に連動して少なくとも一つのインクタンク内の第1インク室と第2インク室の連通路に設けられているバルブを開閉することで部品点数が少なく簡易な構成の画像記録装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、画像記録装置の斜視図であり、(A)には開閉カバー307が開いた状態の画像記録装置300の斜視図が示されており、(B)には画像記録装置300の部分拡大図が示されている。
図2図2は、キャップ304が閉位置にある状態の従来のインクタンク303の左側面図である。
図3図3は、このインクタンク303に使用されているリンク機構200のみを抽出して記載した斜視図である。
図4図4は、従来のキャップ304、リンク機構の動作を簡略的に示した概略図であり、(A)にはキャップ304がリンク機構から離間した(バルブ部材が密閉された)状態の概略図が示されており、(B)には閉位置にあるキャップ304によりリンク機構が動作した(バルブ部材が開放された)状態の概略図が示されている。
図5図5は、本実施形態のインクタンクとバルブ機構の構造を簡略的に示した概略断面図である。
図6図6は、本実施形態のインクタンクと開閉カバーの構造及び動作を簡略的に示した概略断面図であり、(A)には開閉カバーが閉位置にあり、バルブが開放された状態の概略断面図が示されており、(B)には開閉カバーが開位置にあり、バルブが密閉された状態の概略断面図が示されている。
図7図7は、第2の実施形態のインクタンクと開閉カバーの構造及び動作を簡略的に示した概略断面図であり、(A)には開閉カバーが閉位置にあり、バルブが開放された状態の概略断面図が示されており、(B)には開閉カバーが開位置にあり、バルブが密閉された状態の概略断面図が示されている。
図8図8は、第3の実施形態のインクタンクと開閉カバーの構造及び動作を簡略的に示した概略断面図であり、(A)には開閉カバーが閉位置にあり、バルブが開放された状態の概略断面図が示されており、(B)には開閉カバーが開位置にあり、バルブが密閉された状態の概略断面図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0019】
以下に説明するインクタンク500は、画像記録装置の一例であるインクジェット記録装置に使用されるもので、このインクジェット記録装置は、液体消費部の一例であるインクジェット記録方式の記録ヘッドを備えている。
【0020】
本実施形態のインクタンク500は、画像記録装置の開閉カバーの開閉と連動してインクタンク500内に設けられているバルブを開閉する構造を備えている。以下に、図5及び図6を参照しつつ、本実施形態のインクタンク500の構造を説明する。
【0021】
図5は、本実施形態のインクタンク500と、バルブの構造を簡略的に示した概略断面図である。また、リンク機構の一部であるラバーキャップ508の構造も簡略的に示されている。
【0022】
図6は、本実施形態のインクタンクと開閉カバーの構造及び動作を簡略的に示した概略断面図であり、図6(A)には開閉カバーが閉位置にあり、バルブが開放された状態の概略断面図が示されており、図6(B)には開閉カバーが開位置にあり、バルブが密閉された状態の概略断面図が示されている。
【0023】
このインクタンク500は、一側面が開放されて構成される透明または光透過性を備える樹脂製のインクタンク本体509と、フィルムとから構成されている。インクタンク本体509の開放された一側面にはフィルムが溶着されている。図5は、上述した通り、インクタンク500の概略断面図、特にはほぼ中央部での概略断面図なので、フィルムは図示されていない。
【0024】
インクタンク本体509には、供給口503と、開口511と、第1インク室601と、第2インク室701と、図示しない大気連通路とが設けられている。
【0025】
供給口503は、使用者がインクを補給(供給)するための開口であり、インクタンク本体509の上面を貫通して設けられている。
【0026】
開口511は、後述するリンク機構の一部であるラバーキャップ508がインクタンク本体509に装着されるための開口であり、インクタンク本体509の底壁510を貫通して設けられている。
【0027】
第1インク室601は、供給口503と連通されており、この供給口503から供給されたインクを貯留する。更に、この第1インク室601は、供給口503と、後述する連通路531以外には密封された空間である。従って、使用姿勢にあるインクタンク500の供給口503がキャップ503Aで密封された場合、第1インク室601内に貯留されたインクの液面上の空気で満たされた空間は密封状態となる。
【0028】
第2インク室701は第1インク室601の下方に設けられており、第1インク室601から供給されるインクを図示しない記録ヘッドに供給するためのインク流出口(不図示)を備えている。更に、第2インク室701は、インクタンク500外部の大気を取り込むための大気連通口(不図示)をその端部に有する大気連通路(不図示)と連通されている。
【0029】
第1インク室601と第2インク室701とは、インクタンク本体509内の隔壁530によって区画されている。この隔壁530には、第1インク室601と第2インク室701とを連通する連通路531が設けられている。この連通路531は、後述するバルブにより開閉される。更にこの第2インク室701の底壁、すなわちインクタンク本体509の底壁510には、上述した通り、開口511が設けられている。
【0030】
次に、本実施形態のバルブを説明する。このバルブ(バルブ部材の一例)は、バルブ本体507と、シール部材512とから構成されている。シール部材512は、ラバー等で構成されているOリングである。バルブ本体507の垂直断面は略「I」字形状である。バルブ本体507は、第1インク室601と第2インク室701を連通する連通路531内に上下動可能に挿入されている。バルブ本体507は、上端側にシール部材512を固定するための固定部507Bが設けられている。図5に示されるとおり、バルブ本体507が後述するラバーキャップ508により上方に持ち上げられているときには、シール部材512は連通路531を開放している。すなわち、第1インク室601と第2インク室701とは、連通路531を介して連通されている。また、バルブ本体507の下端側には、後述するラバーキャップ508の第1固定部508Cに固定されるフランジ部507Aが設けられている。バルブは、図6(A)に示す開放位置と、図6(B)に示す密閉位置との間で上下方向に移動可能である。
【0031】
次に、本実施形態のリンク機構について説明する。
【0032】
このリンク機構は、開閉カバー501の動作と、バルブ本体507の動作を連動させるために、開閉カバー501と、バルブ本体507とを連結する機構である。
【0033】
本実施形態のリンク機構は、スライダ部材502と、連結部材506と、ラバーキャップ508と、から構成されている。
【0034】
スライダ部材502は、水平方向に延びる略L字形状の平板部材であり、平板部に2つの傾斜長穴502Aと、1つの長穴502Bとを備えている。傾斜長穴502Aは、上下方向且つ前後方向に傾斜した開口である。長穴502Bは、上下方向に延びた開口である。スライダ部材502は、図6(A)に示す後位置と、図6(B)に示すように、後位置よりも前方にスライド移動をしている前位置との間で水平方向にスライド移動可能である。
【0035】
連結部材(状態変移部材の一例)506は、略円筒形状の部材であり、上端側にフランジ部506Bを備え、下端側には2つの凸部506A(第2カム構造の一例)を備えている。この2つの凸部506Aは、スライダ部材502の2つの傾斜長穴502Aにそれぞれ挿入されて配置される。すなわち、傾斜長穴502Aがカムの役割を果たし、2つの凸部506Aがカムフォロワの役割を果たすように構成されている。フランジ部506Bは、後述するラバーキャップ508の第2固定部508D(図5参照)に固定される。連結部材506は、図6(A)に示す上昇位置と、図6(B)に示す下降位置との間で上下方向に移動可能である。
【0036】
ラバーキャップ(密閉部材の一例)508は、ゴムやエラストマ等の伸縮可能なラバーから構成されている略円錐台形状の部材である。ラバーキャップ508の下端側には、装着部508Aが設けられている。装着部508Aは、インクタンク500の円形状の開口511を上下から挟み込むようにして装着されることで、開口511を密閉できる。また、ラバーキャップ508の上端側には、バルブ本体507のフランジ部507Aを固定する第1固定部508Cと、連結部材506のフランジ部506Bを固定する第2固定部508Dとが設けられている。第1固定部508Cと第2固定部508Dとは、それぞれラバーキャップ508の外表面と内表面に独立して形成されているので、インクの連通や漏出は生じない。また、定常状態のラバーキャップ508は、図6(B)に示されるように、上下方向に縮んだ状態である。一方、伸張状態のラバーキャップ508は、図6(A)に示されるように、連結部材506により下方から上方に向けて押圧され伸びた状態である。
【0037】
開閉カバー501は、略平板形状の部材であり、画像記録装置の前方に回動可能に設けられている。開閉カバー501は、画像記録装置の前側を覆ってインクタンク500のキャップ503Aや供給口503を露出させない閉位置と、インクタンク500のキャップ503Aや供給口503を露出する開位置との間で回転軸501Aを回動の中心として回動可能である。また、開閉カバー501は、凸部501Bを備えており、この凸部501Bが、スライダ部材502の長穴502Bに挿入されて配置される。すなわち、長穴502Bがカムの役割を果たし、凸部501Bがカムフォロワの役割を果たすように構成されている。開閉カバー501は、図6(A)に示す閉位置と、図6(B)に示す開位置との間で回動可能である。
【0038】
次に、図5及び図6を参照しつつ、本実施形態の画像記録装置の開閉カバーの開閉と、インクタンク500内のバルブの開閉との連動動作を説明する。
【0039】
図6(A)に示されるように、開閉カバー501が閉位置にあるとき、スライダ部材502は後位置にある。この場合、連結部材506の2つの凸部506Aは、スライダ部材502の傾斜長穴502A内の上方に位置しているので、連結部材506は上昇位置にある。すると、ラバーキャップ508は連結部材506によって下方から上方に向けて押圧されているので伸張状態にあるが、インクタンク500の開口511は密閉されたままの状態が維持されている。バルブもバルブ本体507が連結部材506によって下方から上方に向けて押圧されているので、バルブは開放位置にある。すなわち、シール部材512は連通路531を開放した状態なので、第1インク室601と第2インク室701との間は、連通路531を介して連通した状態にある。
【0040】
図6(B)に示されるように、開閉カバー501が開位置にあるとき、スライダ部材502は前位置にある。この場合、連結部材506の2つの凸部506Aは、スライダ部材502の傾斜長穴502A内の下方に位置しているので、連結部材506は下降位置にある。すると、連結部材506からの押圧力がほぼ無くなるため、ラバーキャップ508は伸張状態から定常状態に戻ろうとする。このとき、ラバーキャップ508はバルブ本体507を下方に引っ張るため、シール部材512は連通路531を密閉した状態になる。シール部材512は連通路531を密閉した状態になったため、第1インク室601と第2インク室701との間の連通路531は遮断された状態となる。この場合もインクタンク500の開口511は密閉されたままの状態が維持されている。
【0041】
以上からの説明から明らかなように、本実施形態の画像記録装置では、開閉カバー501の開閉と連動してインクタンク500内に設けられているバルブを開閉する構造を備えている。
【0042】
[第2の実施形態]
第1の実施形態においては、開閉カバー501を開閉することによってスライダ部材502を水平方向に移動させていたが、図7に示す第2の実施形態の画像形成装置においては、開閉カバー801を開閉することによってインクタンク500自体を水平方向に移動させる構造である。第2の実施形態のリンク機構は、図6に示す画像形成装置のリンク機構とは異なる。ただし、連結部材506とラバーキャップ508は第1の実施形態と同一の構造である。
【0043】
以下に、図7を参照して、第2の実施形態の画像形成装置の構造を説明する。図7は、第2の実施形態のインクタンクと開閉カバーの構造及び動作を簡略的に示した概略断面図であり、図7(A)には開閉カバーが閉位置にあり、バルブが開放された状態の概略断面図が示されており、図7(B)には開閉カバーが開位置にあり、バルブが密閉された状態の概略断面図が示されている。
【0044】
第2の実施形態のリンク機構は、スライダ部材802と、固定カム部材803と、連結部材506と、ラバーキャップ508と、から構成されている。
【0045】
スライダ部材802は、略L字形状の平板部材であり、長穴802Bを備えている。このスライダ部材802の一端はインクタンク500に固定されており、インクタンク500とともにスライド可能に構成されている。
【0046】
固定カム部材803は、水平方向に延びる平板部材であり、平板部に2つの傾斜長穴(第1カム構造の一例)803Aを備えている。傾斜長穴803Aは、上下方向且つ前後方向に傾斜した開口である。この固定カム部材803は、画像形成装置内に固定配置されており、配置場所以外に移動することはできない。連結部材506の2つの凸部506Aは、固定カム部材803の2つの傾斜長穴803Aにそれぞれ挿入されて配置される。すなわち、傾斜長穴803Aがカムの役割を果たし、2つの凸部506Aがカムフォロワの役割を果たすように構成されている。
【0047】
開閉カバー801は、略平板形状の部材であり、画像記録装置の前方に回動可能に設けられている。開閉カバー801は、画像記録装置の前側を覆ってインクタンク500のキャップ503Aや供給口503を露出させない閉位置と、インクタンク500のキャップ503Aや供給口503を露出する開位置との間で回転軸801Aを回動の中心として回動可能である。また、開閉カバー801は、凸部801Bを備えており、この凸部801Bが、スライダ部材802の長穴802Bに挿入されて配置される。すなわち、長穴802Bがカムの役割を果たし、凸部801Bがカムフォロワの役割を果たすように構成されている。開閉カバー801は、図7(A)に示す閉位置と、図7(B)に示す開位置との間で回動可能である。
【0048】
図7(A)に示されるように、開閉カバー801が閉位置にあるとき、スライダ部材802は後位置にある。この場合、連結部材506の2つの凸部506Aは、固定カム部材803の傾斜長穴803A内の上方に位置しているので、連結部材506は上昇位置にある。すると、ラバーキャップ508は連結部材506によって下方から上方に向けて押圧されているので伸張状態にあるが、インクタンク500の開口511は密閉されたままの状態が維持されている。バルブもバルブ本体507が連結部材506によって下方から上方に向けて押圧されているので、バルブは開放位置にある。すなわち、シール部材512は連通路531を開放した状態なので、第1インク室601と第2インク室701との間は、連通路531を介して連通した状態にある。
【0049】
図7(B)に示されるように、開閉カバー801が開位置にあるとき、スライダ部材802は前位置にある。この場合、連結部材506の2つの凸部506Aは、固定カム部材803の傾斜長穴803A内の下方に位置しているので、連結部材506は下降位置にある。すると、ラバーキャップ508は連結部材506からの押圧力が弱くなるため定常状態になる。この場合もインクタンク500の開口511は密閉されたままの状態が維持されている。バルブもバルブ本体507が連結部材506からの押圧力が弱くなるため、バルブは密閉位置にある。すなわち、シール部材512は連通路531を密閉した状態なので、第1インク室601と第2インク室701との間は遮断された状態にある。
【0050】
[第3の実施形態]
第1の実施形態においては、開閉カバー501を開閉することによってスライダ部材502を水平方向に移動させ、更に連結部材506を上下動させることでバルブを開閉していたが、図8に示す第3の実施形態の画像形成装置においては、開閉カバー901を開閉することによってスライダ部材902を水平方向に移動させ、回動部材903を回動させることでバルブを開閉する構造である。ラバーキャップ908も第1の実施形態のラバーキャップ508と少し違う構造である。
【0051】
以下に、図8を参照して、第3の実施形態の画像形成装置の構造を説明する。図8は、第3の実施形態のインクタンクと開閉カバーの構造及び動作を簡略的に示した概略断面図であり、図8(A)には開閉カバーが閉位置にあり、バルブが開放された状態の概略断面図が示されており、図8(B)には開閉カバーが開位置にあり、バルブが密閉された状態の概略断面図が示されている。
【0052】
第3の実施形態のリンク機構は、スライダ部材902と、回動部材(状態変移部材の一例)903と、ラバーキャップ908と、から構成されている。ラバーキャップ908は、第1の実施形態のラバーキャップ508に比して、第2固定部508Dに相当する構造を備えていない。
【0053】
スライダ部材902は、水平方向に延びる略L字形状の平板部材であり、長穴902Bを備えている。また、平板上に凸部902Aを備えている。
【0054】
回動部材903は、略直方体形状の平板部材であり、回転軸903Aを回動の中心として回動可能である。回動部材903の略中央部には長穴903Bを備えている。また、スライダ部材902の凸部902Aは、回動部材903の長穴903Bに挿入されて配置される。すなわち、長穴903Bがカムの役割を果たし、凸部902Aがカムフォロワの役割を果たすように構成されている。回転軸903Aから最も遠い回動部材903の回動先端はラバーキャップ908を介してバルブ本体507の下方に配置されている。
【0055】
開閉カバー901は、略平板形状の部材であり、画像記録装置の前方に回動可能に設けられている。開閉カバー901は、画像記録装置の前側を覆ってインクタンク500のキャップ503Aや供給口503を露出させない閉位置と、インクタンク500のキャップ503Aや供給口503を露出する開位置との間で回転軸901Aを回動の中心として回動可能である。また、開閉カバー901は、凸部901Bを備えており、この凸部901Bが、スライダ部材902の長穴902Bに挿入されて配置される。すなわち、長穴902Bがカムの役割を果たし、凸部901Bがカムフォロワの役割を果たすように構成されている。開閉カバー901は、図8(A)に示す閉位置と、図8(B)に示す開位置との間で回動可能である。
【0056】
図8(A)に示されるように、開閉カバー901が閉位置にあるとき、スライダ部材902は後位置にある。この場合、スライダ部材902の凸部902Aは、回動部材903の長穴903B内の後方に位置しているので、回動部材903は上昇位置にある。すると、ラバーキャップ908は回動部材903の回動先端によって下方から上方に向けて押圧されているので伸張状態にある。バルブもバルブ本体507が回動部材903によって下方から上方に向けて押圧されているので、バルブは開放位置にある。すなわち、シール部材512は連通路531を開放した状態なので、第1インク室601と第2インク室701との間は、連通路531を介して連通した状態にある。
【0057】
図8(B)に示されるように、開閉カバー901が開位置にあるとき、スライダ部材902は前位置にある。この場合、スライダ部材902の凸部902Aは、回動部材903の長穴903B内の前方に位置しているので、回動部材903は下降位置にある。すると、回動部材903の回動先端はラバーキャップ908から離間するのでラバーキャップは定常状態にある。従って、バルブも密閉位置にある。すなわち、シール部材512は連通路531を密閉した状態なので、第1インク室601と第2インク室701との間は遮断された状態にある。
【0058】
上述の各実施形態においては、開閉カバーの開閉に連動して1つのインクタンク内のバルブが開閉する構造を説明した。しかし、1つの開閉カバーの開閉に連動して複数のインクタンク内のバルブが同時に開閉する構造であってもよい。すなわち、1つの開閉カバーと複数のリンク機構とを連結させ、1つの開閉カバーの開閉により各リンク機構が各インクタンク内のバルブを開閉する構造であればよい。一般に、カラー印刷のできる画像記録装置では、上述した通り、例えばCMYとBKの4色のインクがそれぞれ収容される4つのインクタンクが搭載されている。従って、画像記録装置300のように1枚の開閉カバーの開閉で4つのインクタンク内のバルブを同時に開閉する構造であっても良い。また、装置の左右にそれぞれCMY用のインクタンクを覆う第1開閉カバーと、BK用のインクタンクを覆う第2開閉カバーとを備えるような画像記録装置の場合には、各開閉カバーの開閉によりそれぞれの開閉カバーが覆うインクタンク内のバルブを開閉する構造であればよい。
【符号の説明】
【0059】
303,500…インクタンク
306,509…インクタンク本体
300…画像記録装置
301,601…第1インク室
401,701…第2インク室
301,501…開閉カバー
502,902…スライダ部材
506…連結部材
507…バルブ本体
508,908…ラバーキャップ
512…シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8