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  • 特開-タンク及び画像記録装置 図1
  • 特開-タンク及び画像記録装置 図2
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  • 特開-タンク及び画像記録装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057837
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】タンク及び画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
B41J2/175 113
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166290
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白野 太一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056KC02
2C056KC09
(57)【要約】
【課題】タンク毎にフィルム面に貼着されている樹脂板を不要にすることにより、組み立て工数を削減するとともに製造コストも低減できるタンクを提供する。
【解決手段】液体消費部を有する装置に液体を供給するタンクであって、当該タンクは、第1側面が開放された凹形状の筐体と、上記筐体の上記第1側面の周囲に溶着されることで上記第1側面を被覆するフィルムと、上記筐体と上記フィルムとで形成される空間内に突出している凸部の表面から上記第1側面に向かって延びる被溶着部と、を備え、上記フィルムは上記被溶着部にも溶着されている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体消費部を有する装置に液体を供給するタンクであって、
当該タンクは、
第1側面が開放された凹形状の筐体と、
上記筐体の上記第1側面の周囲に溶着されることで上記第1側面を被覆するフィルムと、上記筐体と上記フィルムとで形成される空間内に突出している凸部の表面から上記第1側面に向かって延びる被溶着部と、
を備え、上記フィルムは上記被溶着部にも溶着されていることを特徴とするタンク。
【請求項2】
上記凸部は、上記第1側面以外から上記空間内に突出していることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
上記凸部は、上記第1側面と対向する側面から上記空間内に突出していることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項4】
上記凸部の表面から上記第1側面に向かって延びる上記被溶着部は、2つのリブから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項5】
上記2つのリブのうち、少なくとも一つのリブが水平方向に延びていることを特徴とする請求項4に記載のタンク。
【請求項6】
上記2つのリブのうち、少なくとも一つのリブが鉛直方向に延びていることを特徴とする請求項4に記載のタンク。
【請求項7】
上記2つのリブのうち、少なくとも一つのリブが鉛直方向成分及び水平方向成分を持つ方向に延びていることを特徴とする請求項4に記載のタンク。
【請求項8】
上記2つのリブは交差していることを特徴とする請求項4に記載のタンク。
【請求項9】
液体消費部と、
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のタンクと、
を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンク及びそのインクタンクを備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクの充填や再充填が可能なインクタンクを備えた画像記録装置が存在している。図1(A)には、一例である画像記録装置300が記載されている。図1(A)に示されるように、インクジェット記録装置の一例である画像記録装置300は、概ね直方体形状である。画像記録装置300は、その上部に、用紙などの原稿に記録された画像をイメージセンサ(不図示)によって読み取って画像データを取得するスキャナ部を備えている。また、画像記録装置300の下部には、シートに画像を記録するプリンタ部を備えている。このプリンタ部は、液体消費部の一例としてのインクジェット記録方式の記録ヘッドを備えている。
【0003】
以下の説明では、インクタンク303の据え付けられた画像記録装置300が使用可能に水平面に設置された姿勢(図1の姿勢であって、「使用姿勢」と表記することがある。)を基準として上下方向が定義され、開閉カバー307が設けられている側を手前側(正面)として前後方向が定義され、画像記録装置300を手前側(正面)から見て左右方向が定義される。本実施形態では、使用姿勢において、上下方向が鉛直方向に相当し、前後方向及び左右方向が水平方向に相当する。
【0004】
図1(A)の画像記録装置300は、開閉可能な開閉カバー307が開位置にある。この画像記録装置300は、装置の前方左側にCMY(Cyan, Magenta, Yellow)3色のインクがそれぞれ1色ずつ収容される3つのインクタンク303が配置されている。この3つのインクタンク303のうち、最も左側のインクタンク303のキャップ304が開位置にあり、その他2つのインクタンク303のキャップ304は閉位置にある。一方、この画像記録装置300の前方右側にはBK(Black)インクが収容されるインクタンク303が配置されている。このBKタンク303のキャップ304は閉位置にある。開閉カバー307が開位置にあるとき、使用者はこれらのインクタンク303へのアクセス、すなわちインクの補給や補充等が可能になる。図1(B)は、前方左側に配置されている3つのインクタンク303の前部302の拡大図である。
【0005】
この画像記録装置300に搭載されているインクタンク303の概略構造を図2乃至図4を参照しつつ以下に説明する。図2は、インクタンク303の左側面図である。図3は、インクタンク303の第1インク室301部分のみの概略斜視図である。図4(A)は、図3に概略斜視図で示されているインクタンク303を鉛直方向に延びるIVA-IVA線で切断したときに前方から見たときの概略断面図である。なお、図2に示されているインクタンク303においては、図4(A)に記載されている樹脂板120は図示されていない。また、図3に示されているインクタンク303においては、図4(A)に記載されているフィルム110及び樹脂板120は図示されていない。
【0006】
このインクタンク303は、インクを貯留するインク室としての第1インク室301と第2インク室401を形成する一つの側面がフィルム110で構成されている。その理由としては、フィルム110を使用せずに樹脂製のインクタンクを成形するのは技術的に難易度が高いからである。また、樹脂製のインクタンク本体306にフィルム110を一枚溶着するだけなので、複数のフィルムを溶着する場合に比して溶着の失敗が少なくなることで、インクタンク製造時の歩留まりが高くなるからである。
【0007】
ところで、一般にインク室の一側面全てを一枚のフィルムで構成すると、インク室にある程度の容量のインクを貯留した場合にフィルムが撓んで外方に向かって膨らんでしまう。膨らんだフィルムは、隣接しているインクタンクのインク本体やその他の部品と当接し、落下による振動などでフィルムが破れてインク漏れにつながる虞がある。更にインクが漏出すると、画像記録装置自身が使用不能になるという問題もある。
【0008】
このインクタンク303では、インクタンク本体306における第1インク室301や第2インク室401の周囲にのみフィルム110が溶着された構造を採用しているため、フィルム110は撓んで膨らみやすい構造になっている。そこで、このインクタンク303においては、図4(A)に示されているように、フィルム110の更なる外側面にフィルム110よりも剛性の高い厚手の樹脂板120を貼着することで、フィルム110の膨らみや撓みを低減している。なお、厚手の樹脂板120は、インクタンク本体306における第1インク室301の周囲に貼着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】PCT特許公開第2019-078898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、全てのインクタンク303にこのような樹脂板120を貼着するとなると、部品点数が増えるとともに組み立て工数も増え、更には製造コストも高くなるという問題がある。
【0011】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、厚手の樹脂板が不要となるタンクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明のタンクは、液体消費部を有する装置に据え置かれ、当該液体消費部に供給する液体を貯留するタンクであって、当該タンクは、第1側面が開放された凹形状の筐体と、上記筐体の上記第1側面の周囲に溶着されることで上記第1側面を被覆するフィルムと、で液体収容部を形成しており、上記フィルムは、上記液体収容部内に突出している凸部の表面から上記第1側面に向かって延びる被溶着部にも溶着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるタンクによれば、フィルム面に貼着するための厚手の樹脂板が不要になるため、組み立て工数も製造コストも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、画像記録装置の斜視図であり、(A)には開閉カバー307が開いた状態の画像記録装置300の斜視図が示されており、(B)には画像記録装置300の部分拡大図が示されている。
図2図2は、インクタンク303の左側面図である。
図3図3は、フィルム110と樹脂板120を外した状態のインクタンク303の第1インク室301部分のみの概略斜視図である。
図4図4は、インクタンクの概略断面図であり、図3に概略斜視図で示されているインクタンク303を鉛直方向のIVA-IVA線で切断して側方から見たときの概略断面図が示されている。
図5図5は、インクタンクの概略断面図であり、本実施形態のインクタンク500を図4のインクタンクと同様の箇所で切断して側方から見たときの概略断面図が示されている。
図6図6は、凸部740に設けられている各種被溶着部の斜視図である。(A)には水平方向に延び、且つ上下方向に分かれた2つの被溶着部520が示されており、(B)には上下方向に延び、且つ水平方向に分かれた2つの被溶着部521が示されており、(C)には上下方向及び水平方向に傾斜した2つの被溶着部522が示されており、(D)には、上下方向及び水平方向に延びる十字形状の被溶着部523が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態にかかるインクタンク500について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0016】
以下に説明するインクタンク500は、画像記録装置の一例であるインクジェット記録装置に使用されるもので、このインクジェット記録装置は、液体消費部の一例であるインクジェット記録方式の記録ヘッドを備えている。
【0017】
本実施形態のインクタンク500の構造が、従来のインクタンク303と異なるのは、主に凸部340の構造と、樹脂板120を削減したことであるので、それらについて以下に詳述するとともに、従来と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0018】
図5は、本実施形態のインクタンク500を図4と同様の箇所で切断して前方から見たときの概略断面図が示されている。第1インク室701内には、インクタンク500の右側面から第1インク室701内に向かって突出する凸部740が設けられている。更に、この凸部740には、フィルム510が溶着されるためのリブ(以下、被溶着部と称す)520が一体的に設けられている。すなわち、樹脂製のインクタンク本体501を金型で成型するとき、この被溶着部520もインク本体501内に凸部740と一体に成型される。また、インクタンク本体501の左側面の周囲と、凸部740の表面740Aから延びる被溶着部520の先端部位とは略同一平面内にある。従って、フィルム510がインクタンク本体501の一側面に溶着されるとき、フィルム510はインクタンク本体501の周囲のみならず、凸部740から延びる被溶着部520にも溶着される。その結果、フィルム510の溶着可能な部位が増加するので、第1インク室701や図示しない第2インク室からなるインク室にある程度の容量のインクが貯留されたとしても、フィルム510が撓んで外方に向かって膨らむ可能性が低減される。その結果、厚手の樹脂板等のフィルムの膨らみや撓みを低減するための別部材が不要となる。更に溶着面積が増加することで溶着強度が向上するため、フィルムが剥がれにくくなる。
【0019】
また、従来のインクタンクのように、フィルムが形成する面をインクタンクの第1面とし、この第1面と対向する樹脂製の平面を第2面としたとき、この第2面から被溶着部を伸ばした従来の構造においては、被溶着部の長さは第1面と第2面間の長さと略同一なので、本実施形態における凸部740の表面740Aから延びる被溶着部520に比べ、被溶着部の長さが長くなる。被溶着部が長くなると、金型から取り外す際の離型性が悪くなるため、成型不良につながり、インクタンク製造時の歩留まりが悪くなる。更に、被溶着部が長くなればなるほどフィルムを溶着する際の被溶着面が傾斜する可能性が大きくなり、正確な位置での溶着が困難になる。換言すれば、短い被溶着部の方が、フィルムが溶着される際に正確な位置で溶着できることになる。
【0020】
しかしながら、本実施形態の被溶着部520は、インク室内に設けられている凸部740の表面740Aから延びているので、被溶着部520の長さを短くすることができる。被溶着部520を短くできるので、成型不良が少なくなるとともにインクタンク製造時の歩留まりがよくなり、更には、正確な位置でのフィルム溶着が可能となる。
【0021】
[変形例]
上記実施形態では、図6(A)に示されているとおり、2つの被溶着部520は、凸部740の表面上で水平方向に延び、且つ上下方向に分かれて構成されていた。しかしながら、図6(B)に示されているとおり、2つの被溶着部521は上下方向に延び、且つ水平方向に分かれて構成されていてもよい。
【0022】
また、図6(C)に示されているとおり、2つの被溶着部522は上下方向及び水平方向に傾斜して構成されていてもよい。更に、図6(D)に示されているとおり、被溶着部523は、上下方向及び水平方向に延びる1つの被溶着部である十字形状に構成されていてもよい。
【0023】
この他にも、フィルムが被溶着部に溶着されるとき、被溶着部が多い方がフィルムの膨らみや撓みが少なくなるので、被溶着部は3つ以上あっても良い。更に、溶着面積が広ければ1つの溶着部であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
303,500…インクタンク
306,501…インクタンク本体
110,510…フィルム
120…樹脂板
300…画像記録装置
301,701…第1インク室
340,740…凸部
401…第2インク室
520,521,522,523…被溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6