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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057838
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】インクタンク及び画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 131
B41J2/175 115
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166291
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中澤 史朗
(72)【発明者】
【氏名】刑部 吉記
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】芦田 七海
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA18
2C056EB55
2C056KB05
2C056KC13
2C056KC17
2C056KC30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インクの漏出を防止できる、内部にバルブを有するインクタンクを提供する。
【解決手段】液体消費部に供給する液体を貯留する第1液体貯留室と、第1液体貯留室と連通路で連結されており、液体消費部に液体を供給する液体流出口を有する第2液体貯留室と、第1液体貯留室液体を供給可能な開口を備える注入部と、注入部に対して開位置と閉位置とに移動可能なキャップと、注入部の開口に対して上下動可能に挿入され、閉位置のキャップにより下方に移動されることで開口を密封する第1のシール部材を有し、第1の流路と第2の流路とを独立して内包する注入筒と、第1液体貯留室と上記第2液体貯留室間の連通口に上下動可能に挿入され、閉位置の上記キャップにより下方に移動された注入筒により下方に押圧されて、連通路を開放する第2のシール部材を有するバルブ本体と、バルブ本体に上方に向かって付勢する付勢力を付与する付勢部材と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体消費部を有する装置に液体を供給するインクタンクであって、
上記液体消費部に供給する液体を貯留する第1液体貯留室と、
当該第1液体貯留室と連通路で連通されており、上記液体消費部に液体を供給する液体流出口を有する第2液体貯留室と、
上記第1液体貯留室に液体を供給可能な開口を備える注入部と、
当該注入部に対して開位置と閉位置とに移動可能なキャップと、
上記注入部の開口に対して上下動可能に挿入されており、上記閉位置の上記キャップにより下方に移動されるスライド部材と、
上記第1液体貯留室と上記第2液体貯留室間の連通路に上下動可能に挿入されており、上記閉位置の上記キャップにより下方に移動された上記スライド部材とともに下方に移動することで上記連通路を開放する第1のシール部材を有するバルブ本体と、
上記バルブ本体を常に上方に向かって付勢する付勢部材と、
を備えていることを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
上記スライド部材は、上記開口を密封可能な第2のシール部材を備えており、 上記キャップが上記開位置にあるとき、上記付勢部材により上記バルブ本体が上昇することで上記第1のシール部材が上記連通路を密閉し、
上記バルブ本体の上昇とともに上記スライド部材が上方に移動されることで上記第2のシール部材が上記開口を開放することを特徴とする請求項1に記載のインクタンク。
【請求項3】
上記スライド部材は、上記キャップが上記開位置にあるとき、当該インクタンクの外部に配置される一端から当該インクタンクの内部に配置される他端側に向かって伸びる独立した2つの流路を備えており、前記一端には各流路とそれぞれ連通する一端側開口が2つ設けられ、上記他端側には、各流路とそれぞれ連通する他端側開口が2つ設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクタンク。
【請求項4】
上記スライド部材は、上記開口の密封状態を常に維持する第3のシール部材を備えるとともに上記開口に上下動可能に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のインクタンク。
【請求項5】
上記スライド部材は、上記キャップが上記開位置にあるとき、当該インクタンク外に配置される一端から当該インクタンク内に配置される他端側に向かって伸びる独立した2つの流路を備えており、前記一端には各流路とそれぞれ連通する一端側開口が2つ設けられ、上記他端側には、各流路とそれぞれ連通する他端側開口が2つ設けられていることを特徴とする請求項4に記載のインクタンク。
【請求項6】
上記キャップは、上記キャップが上記閉位置にあるとき、上記一端側開口を密封可能な密封部を備えていることを特徴とする請求項3又は請求項5に記載のインクタンク。
【請求項7】
上記スライド部材と上記バルブ本体は、それぞれ独立した別部材で構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のインクタンク。
【請求項8】
液体消費部と、
当該液体消費部に液体を供給する請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のインクタンクと、
を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンク及びそのインクタンクを備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクの充填や再充填が可能なインクタンクを備えた画像記録装置が存在している。図1(A)には、一例である画像記録装置300が記載されている。図1(A)に示されるように、インクジェット記録装置の一例である画像記録装置300は、概ね直方体形状である。画像記録装置300は、その上部に、用紙などの原稿に記録された画像をイメージセンサ(不図示)によって読み取って画像データを取得するスキャナ部を備えている。また、画像記録装置300の下部には、シートに画像を記録するプリンタ部を備えている。このプリンタ部は、液体消費部の一例としてのインクジェット記録方式の記録ヘッドを備えている。
【0003】
以下の説明では、インクタンク303の据え付けられた画像記録装置300が使用可能に水平面に設置された姿勢(図1の姿勢であって、「使用姿勢」と表記することがある。)を基準として上下方向が定義され、開閉カバー307が設けられている側を手前側(正面)として前後方向が定義され、画像記録装置300を手前側(正面)から見て左右方向が定義される。本実施形態では、使用姿勢において、上下方向が鉛直方向に相当し、前後方向及び左右方向が水平方向に相当する。
【0004】
図1(A)の画像記録装置300は、開閉可能な開閉カバー307が開位置にある。この画像記録装置300は、装置の前方左側にCMY(Cyan, Magenta, Yellow)3色のインクがそれぞれ1色ずつ収容される3つのインクタンク303が配置されている。この3つのインクタンク303のうち、最も左側のインクタンク303のキャップ304が開位置にあり、その他2つのインクタンク303のキャップ304は閉位置にある。一方、この画像記録装置300の前方右側にはBK(Black)インクが収容されるインクタンク303が配置されている。このBK用のインクタンク303のキャップ304は閉位置にある。開閉カバー307が開位置にあるとき、使用者はこれらのインクタンク303へのアクセス、すなわちインクの補給や補充等が可能になる。図1(B)は、前方左側に配置されている3つのインクタンク303の前部302の拡大図である。
【0005】
次に、図2乃至図4を参照しつつ、画像記録装置300に搭載されている従来のインクタンク303の概略構造を説明する。図2は、インクタンク303の左側面図である。図3は、このインクタンク303に使用されているリンク機構200のみを取り出して記載した斜視図である。図4(A)は、キャップ304が開位置にあることで、バルブ本体207のシール部材209が第1インク室301と第2インク室401を連通する連通路220を密閉した状態のインクタンク303を示す概略図であり、図4(B)は、キャップ304が閉位置にあることで、バルブ本体207のシール部材209が第1インク室301と第2インク室401を連通する連通路220を開放した状態のインクタンク303を示す概略図である。ただし図4には、第1インク室301の下方に設けられている第2インク室401は図示されていない。
【0006】
このインクタンク303は、注入筒305を密閉可能なキャップ304がインクタンク本体306に回動可能に装着されている。このキャップ304は図示しない弾性体(一例として、ラバー製のOリング)によって常には閉位置から開位置に向かって付勢されており、キャップ304を閉位置に保持する係合を解除すると、キャップ304は注入筒を密閉していた閉位置から開位置へと自ら回動する。更にキャップ304は、閉位置にあるときに下方に向かって延びる突部201を備えている。キャップ304が開位置にあるときは、この突部201は後述するスライダ部材202から離間しているが、キャップ304が閉位置にあるときは、この突部201はスライダ部材202を下方に向けて押圧する。
【0007】
次に、図3を参照しつつ、リンク機構200について説明する。リンク機構200は、キャップ304の動作と、後述するバルブ本体207の動作を連動させるために、キャップ304と、バルブ本体207とを連結する機構である。
【0008】
リンク機構200は、スライダ部材202、第2レバーアーム203、第1レバーアーム206、圧縮バネ204、複数のラバー製Oリング等から構成されている。
【0009】
スライダ部材202と、第2レバーアーム203と、圧縮バネ204は、インクタンク303の外側、すなわちインクタンク303の右側壁に配設されている。一方、第1レバーアーム206の回転軸205は、第1インク室301を形成する右側壁に設けられている貫通孔205Aを第1インク室301内からインクタンク303外に向けて貫通している。貫通孔205Aから第1インク室301内のインクが漏出しないように、貫通孔205Aには図示しないOリング等が設けられている。そして、この第1レバーアーム206は、インクタンク303の右側壁に配設されている第2レバーアーム203の回動動作に連動して回転軸205を回動の中心として第1インク室301内で回動可能である。
【0010】
バルブ本体207は、第1インク室301と第2インク室401を連通する連通路220をシールするシール部材209を備えており、第1レバーアーム206に対して回転可能に結合されている。そして、キャップ304の開閉動作に伴うスライダ部材202の移動、第2レバーアーム203の回転、更には第1レバーアーム206の回転に伴って、バルブ本体207は上下動し、その結果、シール部材209が弁座210に着座/離間することで第1インク室301と第2インク室401を連通する連通路220を開閉する。
【0011】
なお、このインクタンク303は、図示しない記録ヘッドにインクを供給するためのインク流出口360と、第2インク室401の内部をインクタンク303の外部に連通するための大気連通口370とを備えている。インク流出口360は第2インク室401に設けられている。一方、大気連通口370はインクタンク303の上部に設けられているが、この大気連通口370と第2インク室401の内部とを連通するための大気連通路371が第2インク室401まで延びている。
【0012】
また、このインクタンク303は、インクタンク本体306の前方側に視認部350を備えている。インクタンク本体306は光を透過する樹脂や半透明の樹脂で形成されているので、使用者はこの視認部350を見るだけで、インクタンク303内のインク残量を確認できる。この視認部350には、上限指示部351と下限指示部352とが設けられている。上限指示部351は、インクタンク303内に貯留が許容される最大容量のインクの液面高さを表示している。一方、下限指示部352は、使用者にインクタンク303内へのインクの注入を促す液面高さを表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】PCT特許公開第2019-078898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このインクタンク構造においては、上述した通り、リンク機構はインクタンク内に設けられている部品と、インクタンク外に設けられている部品とを連結しなければならない。具体的には、第1インク室内に設けられている第1レバーアーム206の回転軸205にインクタンク外に配置されている第2レバーアームを連結する必要がある。このため、第1インク室301を形成する樹脂製の右側壁には、回転軸205が貫通するための貫通孔205Aが設けられており、回転軸205はこの貫通孔205Aを介して第1インク室301内からインクタンク外に向かって延びている。また、回転軸205及び貫通孔205Aは下限指示部352より下方に配置されている。従って、このインクタンク303に貯留され得る最大量のインクが貯留されたとき、すなわち、インクの液面が上限指示部351にあるとき、その回転軸205及び貫通孔205Aはインク液面の下方に位置することになる。このため、その回転軸205及び貫通孔205AがOリング等のシール部材で密閉されていたとしても、シール部材の経年劣化や変形等により、インクタンク303内のインクが貫通孔205Aからインクタンク外に漏出する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかるインクタンクは、液体消費部に供給する液体を貯留する第1液体貯留室と、当該第1液体貯留室と連通路で連通されており、上記液体消費部に液体を供給する液体流出口を有する第2液体貯留室と、上記第1液体貯留室に液体を供給可能な開口を備える注入部と、当該注入部に対して開位置と閉位置とに移動可能なキャップと、上記注入部の開口に対して上下動可能に挿入されており、上記閉位置の上記キャップにより下方に移動されるスライド部材と、上記第1液体貯留室と上記第2液体貯留室間の連通路に上下動可能に挿入されており、上記閉位置の上記キャップにより下方に移動された上記スライド部材とともに下方に移動することで上記連通路を開放する第1のシール部材を有するバルブ本体と、上記バルブ本体を常に上方に向かって付勢する付勢部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構造で液体の漏出を防止できるインクタンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、画像記録装置の斜視図であり、(A)には開閉カバー307が開いた状態の画像記録装置300の斜視図が示されており、(B)には画像記録装置300の部分拡大図が示されている。
図2図2は、キャップ304が閉位置にある状態の従来のインクタンク303の左側面図である。
図3図3は、従来のインクタンク303に使用されているリンク機構200のみを抽出して記載した斜視図である。
図4図4は、従来のインクタンク303の動作を簡略的に示した概略図であり、(A)には、開位置にあるキャップ304がリンク機構から離間することでバルブ本体207が連通路220を密閉した状態の概略図が示されており、(B)には、閉位置にあるキャップ304がリンク機構を作動させることによりバルブ本体207が連通路220を開放した状態の概略図が示されている。
図5図5は、本実施形態のインクタンク500に用いられる注入筒510の斜視図である。
図6図6は、図5に示した注入筒510を上方から見た平面図である。
図7図7は、図6に示した注入筒510をVI-VI線で切断して側方から見た断面図である。
図8図8は、本実施形態のインクタンク500の動作を簡略化して示した概略図であり、(A)には、閉位置にあるキャップ502がバルブ本体520を下方に押し下げることによりバルブ本体520が連通路531を開放した状態の概略図が示されており、(B)には、開位置にあるキャップ502が注入筒510から離間することでバルブ本体520が連通路531を密閉した状態の概略図が示されている。
図9図9は、本実施形態の変形例であるインクタンク800の動作を簡略化して示した概略図であり、(A)には、閉位置にあるキャップ802が注入筒810を下方に押し下げた状態の概略図が示されており、(B)には、開位置にあるキャップ802が注入筒810から離間した状態の概略図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図5乃至図8を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0019】
上述した通り、図5は、本実施形態のインクタンク500に用いられる注入筒510の斜視図である。図6は、図5に示した注入筒510を上方から見た平面図である。図7は、図6に示した注入筒510をVI-VI線で切断して側方から見た断面図である。図8は、本実施形態のインクタンク500の動作を簡略化して示した概略図であり、(A)には、閉位置にあるキャップ502がバルブ本体520を下方に押し下げることによりバルブ本体520が連通路531を開放した状態の概略図が示されており、(B)には、開位置にあるキャップ502が注入筒510から離間することでバルブ本体520が連通路531を密閉した状態の概略図が示されている。
【0020】
以下に説明するインクタンク500は、画像記録装置の一例であるインクジェット記録装置に使用されるもので、このインクジェット記録装置は、液体消費部の一例であるインクジェット記録方式の記録ヘッドを備えている。
【0021】
図8に示されるとおり、このインクタンク500は、概略直方体形状を有するインクタンク本体506の注入部501に対してキャップ502が回動開閉可能に装着されている。キャップ502の内側天面には、キャップ502が閉位置にあるとき、後述する注入筒510の上端開口511A、511B(図5図6参照)を密閉する密封部502Aが設けられている。また、キャップ502の内側側面には、注入部501の外表面に設けられている被係合部501Aと係合する係合部502Bが設けられている。キャップ502の係合部502Bと注入部501の被係合部501Aとが係合した状態で、キャップ502は閉位置に保持される。
【0022】
インクタンク本体506は、注入部501、第1インク室601、第2インク室701を備えている。また、注入部501内には、開口508が設けられ、この開口508を貫通するように後述する注入筒510が第1インク室601内に挿入されている。また、インクタンク本体506内は、水平方向に延びる隔壁530によって第1インク室601と第2インク室701とに区画されている。第2インク室701は第1インク室601の下方に配置されており、第1インク室601と第2インク室701とは、隔壁530に設けられている連通路531によって連通されている。更に、インクタンク本体506は、インク流出口と、大気連通路及び大気連通口と、を備えている。記録ヘッドへ第2インク室701内のインクを供給するためのインク流出口は第2インク室701に設けられている。また、第2インク室701内部にインクタンク500外部の空気を取り込むための大気連通口をその端部に有する大気連通路もインクタンク本体506に設けられている。図8では、インク流出口と、大気連通路及び大気連通口は図示されていない。
【0023】
次に、注入筒510(スライド部材の一例)の構造を、図5乃至図7を参照しつつ詳細に説明する。注入筒510はその内部にそれぞれ独立した2つの流路513,514を備えた円筒形状の筒部511と、筒部511の周囲に筒部511の径より大きな径を持つフランジ部512と、を備えている。更に、Oリング等で構成されているシール部材(第2のシール部材の一例)504に筒部511が挿入されることで、フランジ部512の下面側にシール部材504が配置されている。筒部511の上方端部(一端の一例)には、各流路513,514とそれぞれ連通する2つの上端開口511A,511B(一端側開口の一例)が設けられている。また、筒部511の下方端部(他端の一例)にも、各流路513,514とそれぞれ連通する2つの下方開口511C,511D(下端側開口の一例)が設けられている。インクタンク500にインクを注入する場合、使用者はインクを収容したインクボトル(不図示)の供給口を注入筒510の上方端部と連結する。すると、インクボトル内のインクは1つの流路(例えば、流路513)に対応する1つの上端開口511Aから侵入してこの流路に対応する一つの下方開口511Cからインクタンク500内に流出する。一方、インクタンク500内の空気は、他方の流路(例えば、流路514)に対応する1つの下方開口511Dから他方の流路内に侵入し、この他方の流路に対応する上端開口511Bからインクボトル内に放出される。その結果、インクボトル内のインクとインクタンク500内の空気とが置換されることで、インクボトル内のインクはインクタンク500内に供給される。
【0024】
次に、バルブ本体520の構造を説明する。バルブ本体520は、ラバー等の弾性体からなるシール部材(第1のシール部材の一例:Oリング等)521と、シール部材521を位置決めするための第1フランジ部522と、後述する圧縮バネ523を位置決めするとともに圧縮バネ523が付与する圧力をバルブ本体520に伝達するための第2フランジ部524とを備えている。また、バルブ本体520は、インクタンク500の第1インク室601と第2インク室701とを区画する隔壁530の連通路531を貫通している。バルブ本体520は、連通路531を貫通した状態で上下動可能に設けられている。
【0025】
シール部材521は、隔壁530の連通路531を第2インク室701の側から開閉する。シール部材521は、第1フランジ部522の上面側に配置されて位置決めされており、第1フランジ部522よりも下方には移動できない。
【0026】
圧縮バネ523は第2フランジ部524と第2インク室701の底壁710との間に設けられており、第2フランジ部524を介してバルブ本体520を上方に向かって押し上げる力を付与している。圧縮バネ523の一端部が配置される第2インク室701の底壁710には、圧縮バネ523の移動を防止するためのバネ座711が設けられている。
【0027】
次に、図8を参照して、本実施形態のインクタンク500の動作を説明する。図8(A)からも明らかなとおり、キャップ502がインクタンク500の注入部501に対して閉位置にあるとき、すなわち、キャップ502の係合部502Bが注入部501の被係合部501Aに係合されているとき、キャップ502は注入筒510を下方に押圧することで、注入筒510の下端に当接しているバルブ本体520も圧縮バネ523に抗して下方に押圧される。このとき、注入筒510のシール部材504は、開口508を密封している。また、キャップ502の裏天面に設けられている密封部502Aも注入筒510の上端開口511A,511Bを密閉している。一方、バルブ本体520のシール部材521は、第1インク室601と第2インク室701を区画する隔壁530の連通路531を開放している。従って、第1インク室601と第2インク室701とは連通された状態にある。記録シートへの画像記録等により記録ヘッドでインクが消費された場合には、図示しない大気連通口及び大気連通路から第2インク室701内に空気を取り込むとともに、第2インク室701内のインクを図示しないインク流出口から記録ヘッドに向けて供給する。
【0028】
一方、図8(B)からも明らかなとおり、キャップ502がインクタンク500の注入部501に対して開位置にあるとき、すなわち、使用者がインクタンク500にインクを補給しようとするとき、使用者はキャップ502の係合部502Bと注入部501の被係合部501Aとの係合を解除する。このとき、キャップ502は注入筒510から離間するため、注入筒510を下方に押圧できなくなる。すると、注入筒510の下端に当接しているバルブ本体520も圧縮バネ523で上方に持ち上げられる。このとき、注入筒510のシール部材504は、開口508を開放している。また、キャップ502の裏天面に設けられている密封部502Aも注入筒510の上端開口511A,511Bを開放している。一方、バルブ本体520のシール部材521は、第1インク室601と第2インク室701を区画する隔壁530の連通路531を密封している。従って、第1インク室601と第2インク室701間の連通が遮断された状態にある。キャップ502が開位置にあるので、使用者は、上述した通り、インクタンク500内にインクを補給することができる。
【0029】
以上の説明から明らかなとおり、本発明のインクタンク500においては、従来のインクタンク303のようにインクタンクの内外を連結する回転軸や複雑なリンク機構を使用することなく簡易な構造でインクタンク内部のバルブの開閉を行うことのできるインクタンクを提供できる。このインクタンクの構造によれば、従来のインクタンク303のように回転軸205が貫通する貫通孔205Aをインクタンク303の側壁に設ける必要がないので、インクの漏出も低減できる。
【0030】
[変型例]
図9は、図8に示すインクタンク500の変形例であるインクタンク800の一部分を を示す図である。図9(A)には、閉位置にあるキャップ802が注入筒810を下方に押し下げた状態の概略図が示されており、図9(B)には、開位置にあるキャップ802が注入筒810から離間した状態の概略図が示されている。
【0031】
インクタンク800は、インクタンク500のキャップ502、注入部501、シール部材504そして注入筒510の構造以外はインクタンク500と同様である。従って、ここではインクタンク800がインクタンク500と異なる構造の部分のみを説明する。図9に図示はされていないが、インクタンク800の注入部801の外周面にもインクタンク500の注入部501の外周面に設けられている被係合部501Aと同様な被係合部(不図示)が設けられており、キャップ802の内側側面にもインクタンク500のキャップ502の内側側面に設けられている係合部502Bと同様な係合部(不図示)が設けられている。
【0032】
キャップ802の内側天面には、密封部802Aが設けられている。キャップ802が閉位置にあるとき、密封部802Aは注入筒810の2つの上端開口(不図示)を密閉する。注入部801には、注入筒810が上下動可能に挿入されている連通筒部801Bが設けられている。この連通筒部801Bの内周面には、Oリング等からなるシール部材(第3のシール部材の一例)804が固定配置されている。従って、注入筒810が連通筒部801B内を上下動する際にも、注入筒810が備えるインク流路及び大気流路以外では、インクタンク800の外部と、第1タンク室とは連通されていない。従って、キャップ802が閉位置にあって注入筒810の2つの上端開口(不図示)が密封部802Aによって密封されれば、第1インク室は密閉状態になり、密閉効率が良くなる。キャップ802の開閉に連動して注入筒810も上下動し、更には注入筒810の下方に配置されている図示しないバルブ本体も上下動する。この構造であっても、インクタンク500と同様の効果が得られる。
【0033】
また上述した実施形態においては、スライド部材とバルブ本体はそれぞれ独立した別体として記載されているが、両者が一体として構成されていてもよい。
【0034】
更に、スライド部材は2つの流路を備えていなくても良い。この場合、図9に示す変形例のインクタンク800においては、第1インク室にインクを注入可能な別のインク注入口を備えることになる。このインク注入口も第1インク室を密閉/開放できる構成になる。
【符号の説明】
【0035】
207,520…バルブ本体
303,500,800…インクタンク
304,502,802…キャップ
301,601…第1インク室(第1液体貯留室)
401,701…第2インク室(第2液体貯留室)
510,810…注入筒(スライド部材)
523…付勢部材(圧縮バネ)
図1
図2
図3
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図7
図8
図9