(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057862
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】制動制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20220404BHJP
B60T 8/1755 20060101ALI20220404BHJP
B60L 7/12 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B60T8/17 C
B60T8/1755 Z
B60L7/12 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166319
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 勇作
【テーマコード(参考)】
3D246
5H125
【Fターム(参考)】
3D246AA08
3D246AA09
3D246DA01
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3D246DA03
3D246EA05
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3D246JB11
3D246JB27
3D246JB51
3D246JB53
5H125AA01
5H125AC12
5H125CA01
5H125CB02
5H125CB08
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】車両の制動装置が備える制動制御装置に関して、車速の検出精度が低下する状況であっても、すり替え制御の精度が低下することを抑制する。
【解決手段】制動制御装置10は、車両90に付与する回生制動力および摩擦制動力を調整する。制動制御装置10は、走行中の車両90が停止するまでに移動する距離を停車距離として取得する停車距離取得部12を備えている。制動制御装置10は、停車距離がすり替え判定値よりも小さくなった場合に、車両90に付与している制動力のうち回生制動力を摩擦制動力にすり替えるすり替え制御を開始する制動調整部11を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制動装置に適用され、前記車両に付与する回生制動力および摩擦制動力を調整する制動制御装置であって、
走行中の前記車両が停止するまでに移動する距離を停車距離として取得する停車距離取得部と、
前記停車距離がすり替え制御開始閾値よりも小さくなった場合に、前記車両に付与している制動力のうち回生制動力を摩擦制動力にすり替えるすり替え制御を開始する制動調整部と、を備える
制動制御装置。
【請求項2】
前記制動調整部は、前記停車距離が停止前制御開始閾値よりも小さくなった場合、前記車両に付与する制動力を調整して前記車両の車体挙動を抑制する停止前ブレーキ制御を開始し、
前記すり替え制御開始閾値は、前記停止前制御開始閾値よりも小さい値である
請求項1に記載の制動制御装置。
【請求項3】
前記制動調整部は、前記停止前ブレーキ制御において前記車両に付与している制動力を減少させるに際し、前記回生制動力を減少させる
請求項2に記載の制動制御装置。
【請求項4】
前記車両に関する複数の制御モードのうち1つの制御モードを選択する選択部を備え、
前記制動調整部は、前記選択部により前記制御モードのうち第一の制御モードが選択されている場合には、前記第一の制御モードに対応する前記すり替え制御開始閾値に基づいて前記すり替え制御を開始し、該すり替え制御開始閾値を第一のすり替え制御開始閾値とすると、前記選択部により前記制御モードのうち前記第一の制御モードとは異なる第二の制御モードが選択されている場合には、前記第二の制御モードに対応するすり替え制御開始閾値であり前記第一のすり替え制御開始閾値とは異なる第二のすり替え制御開始閾値に基づいて前記すり替え制御を開始する
請求項1~3のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両が停止する際に制動力の制御を行う制御装置が開示されている。制御装置は、減速中の車両の車速に基づいて、制御を行う時期を規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、車速の算出に車輪速センサからの検出信号を用いることがある。車輪速センサからの検出信号は、車輪の回転速度に応じた間隔で発生するパルスを含んでいる。検出信号に含まれるパルスの間隔は、車輪の回転が止まる直前において大きくなる。パルスの間隔が大きくなると、車輪の回転が止まる直前であっても車輪が止まっていると判断されることがある。また、車速の算出に車両の動力源である電動モータの回転角センサからの検出信号を用いることもある。この場合には、動力源から車輪までの伝達経路上におけるシャフトのねじれ等による影響で、車輪の回転が停止する直前を検出することが難しいという事情がある。すなわち、車輪速センサからの検出信号または電動モータの回転角センサからの検出信号を車速の算出に用いる場合には、車輪の回転が停止する直前を検出することが難しい。このため、車両が低速で走行している場合には、実際の車速が「0」ではない時点で車速が「0」として算出されるというような車速の検出精度の低下が発生するおそれがある。
【0005】
このように車速の検出精度が低下して実際の車速とは異なる値として車速が算出されると、特許文献1のように車速に基づいて制動力の制御を行う制御装置では、制御を開始する時期が本来想定されている時期に対して前後するという問題がある。制動の際に付与する制動力が回生制動力である場合には、制御を開始する時期が遅れてしまうと回生エネルギを回収する効率が低下することもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための制動制御装置は、車両の制動装置に適用され、前記車両に付与する回生制動力および摩擦制動力を調整する制動制御装置であって、走行中の前記車両が停止するまでに移動する距離を停車距離として取得する停車距離取得部と、前記停車距離がすり替え制御開始閾値よりも小さくなった場合に、前記車両に付与している制動力のうち回生制動力を摩擦制動力にすり替えるすり替え制御を開始する制動調整部と、を備えることをその要旨とする。
【0007】
上記構成では、停車距離に基づいて制動力のすり替えを開始するようにしている。このため、車速の検出精度が低下する状況であるとしても、すり替え制御において規定している意図した時期と、すり替え制御の実際の開始時期とのずれが生じにくくなる。たとえば、車速が低速になるほど車速の検出精度が低下するが、上記構成によれば、車両が停止する間際のように車速が低速であっても上記時期のずれが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】制動装置に適用される制動制御装置の一実施形態と、同制動装置を備える車両と、を示すブロック図。
【
図2】車両が停止する際に同制動制御装置が実行する停止前ブレーキ制御に関して、制動力の目標値の推移を説明する図。
【
図3】同制動制御装置がすり替え制御を実行する際の処理の流れを示すフローチャート。
【
図4】同制動制御装置が実行する停止前ブレーキ制御の処理の流れを示すフローチャート。
【
図5】同制動制御装置が実行する比率設定処理の流れを示すフローチャート。
【
図6】車両が停止する際に同制動制御装置によって制御される制動力の目標値の推移を示すタイミングチャート。
【
図7】車両が停止する際に同制動制御装置によって制御される制動力の目標値の推移を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、制動制御装置の一実施形態について、
図1~
図7を参照して説明する。
図1に示す制動装置20は、摩擦制動装置21および回生制動装置23を備えている。制動装置20は、電動駐車制動装置22を備えていてもよい。制動装置20は、摩擦制動装置21、回生制動装置23および電動駐車制動装置22を制御する制動制御装置10を備えている。制動装置20は、車両90に搭載されている。
【0010】
摩擦制動装置21は、車両90の車輪と一体回転する回転体に摩擦材を押し付けることによって、摩擦材を押し付ける力に応じた制動力を車輪に付与することができる。摩擦制動装置21の一例は、液圧発生装置によって発生させた液圧に応じて摩擦材を回転体に押し付けることで車輪に制動力を付与することのできる制動装置である。摩擦制動装置21の作動によって車輪に付与される制動力を摩擦制動力という。摩擦制動装置21は、前輪に付与する摩擦制動力と、後輪に付与する摩擦制動力とを各別に調整することができる。摩擦制動装置21は、各車輪に付与する摩擦制動力を各別に調整することができる構成を備えていてもよい。
【0011】
回生制動装置23は、前輪用のモータジェネレータと、後輪用のモータジェネレータとによって構成されている。車両90は、各モータジェネレータと、パワーコントロールユニットと、バッテリとを備えている。各モータジェネレータは、パワーコントロールユニットを介してバッテリに接続されている。パワーコントロールユニットは、インバータおよびコンバータを備えている。
【0012】
モータジェネレータを発電機として機能させることによって、モータジェネレータの時間当たりの発電量に応じた制動力が車輪に付与され、発電された電気がバッテリに蓄電される。前輪用のモータジェネレータを発電機として機能させることによって前輪に制動力を付与することができ、後輪用のモータジェネレータを発電機として機能させることによって後輪に制動力を付与することができる。回生制動装置23によって付与される制動力を回生制動力という。なお、モータジェネレータを電動機として機能させることによって、モータジェネレータから車輪に駆動力を伝達させることもできる。また、車両90の各車輪にインホイールモータが設けられている場合には、インホイールモータによって回生制動装置23が構成されていてもよい。このように回生制動装置23は、各車輪に付与する回生制動力を各別に調整することができるものでもよい。
【0013】
制動装置20では、摩擦制動力と回生制動力との協調制御を行うことができる。以下では、制動装置20によって車両90に付与される摩擦制動力と、制動装置20によって車両90に付与される回生制動力と、を併せて車両90に付与される総制動力ということもある。
【0014】
電動駐車制動装置22は、車両90の車輪のうち後輪に設けられている。電動駐車制動装置22は、前輪に設けられていてもよい。電動駐車制動装置22は、車両90を停車する際に車両90が停止している状態を保持するための制動力を付与することができる。電動駐車制動装置22は、駆動源である電動モータを備えている。電動駐車制動装置22は、電動モータの回転に伴って回転体と摩擦材との間隔を変更する。電動駐車制動装置22を構成する回転体および摩擦材は、摩擦制動装置21が備える回転体および摩擦材である。すなわち、電動駐車制動装置22は、電動モータを駆動させて摩擦材を回転体に押し付けることによって制動力を付与する制動装置である。電動駐車制動装置22の作動によって車輪に付与される制動力は、摩擦制動力である。
【0015】
制動装置20を搭載する車両90は、車両90の状態を検出するための各種センサを備えている。各種センサからの検出信号は、制動制御装置10に入力される。車両90は、モード選択部材50を備えている。モード選択部材50は、制動制御装置10に接続されている。車両90は、計測装置60を備えている。車両90は、支援制御装置70を備えていてもよい。計測装置60および支援制御装置70は、制動制御装置10と情報の送受信を行うことができる。
【0016】
また、車両90は、支援制御装置70の他にも、制動制御装置10と情報の送受信が可能な他の制御装置を備えていてもよい。他の制御装置の例は、車両90の動力源を制御する駆動制御装置、および車両90の操舵を制御する操舵制御装置等がある。
【0017】
図1に示すように、車両90は、各種センサの一つとして操作量センサ30を備えている。操作量センサ30は、車両90の運転者が操作する制動操作部材の操作量を検出する。制動操作部材は、車両90を制動する際に運転者によって操作される。制動操作部材の一例は、ブレーキペダルである。この場合には、操作量センサ30は、ブレーキペダルが踏み込まれる力を検出する踏力センサである。
【0018】
車両90は、各種センサの一つとして車輪速センサ40を備えている。車輪速センサ40は、車両90の各車輪に対応して取り付けられている。車輪速センサ40からの検出信号に基づいて、車両90の各車輪の速度が算出される。各車輪の速度に基づいて、車両90の速度である車速が算出される。
【0019】
モード選択部材50の一例は、押しボタンスイッチである。モード選択部材50は、トグルスイッチ等でもよい。モード選択部材50は、車両90の室内に配置されている。モード選択部材50は、車両90の運転者によって操作が可能である。運転者によってモード選択部材50が操作されると、制動制御装置10は、車両90の制動時の制御を燃費優先モードまたは快適性優先モードに切り換える。すなわち、運転者は、燃費優先モードまたは快適性優先モードを選択することができる。
【0020】
モード選択部材50の操作によって選択が可能な燃費優先モードは、車両90の制動時に回生制動力が付与されることに伴って発生する電力が多く蓄電されるように車両90に付与する総制動力を調整するモードである。モード選択部材50の操作によって選択が可能な快適性優先モードは、車両90の制動時に車体の揺れ、すなわちピッチング運動が軽減されるように車両90に付与する総制動力を調整するモードである。
【0021】
計測装置60は、車両90の周辺についての情報を取得する機能を有している。計測装置60は、車両90の周辺を撮像するカメラを備えている。計測装置60は、カメラによって撮像された画像を処理する情報処理部を備えている。たとえば、計測装置60は、撮像された画像を情報処理部で解析することによって、車両90を基点として車両90の周辺のうち特定の位置までの距離を計測することができる。計測装置60は、情報処理部によって得られた情報を制動制御装置10へ出力する。計測装置60は、カメラ以外の装置として、ミリ波レーダー、LIDAR、またはソナー等を備えていてもよい。計測装置60は、複数の装置を組み合わせて車両90の周辺情報を取得してもよい。
【0022】
計測装置60は、GPS衛星から送信される情報を受信する受信装置を備えていてもよい。計測装置60は、GPS衛星から受信した情報に基づいて、車両90の現在の位置を特定することもできる。
【0023】
支援制御装置70は、車両90を自動で運転させるための機能を備えている。計測装置60が取得した情報は、支援制御装置70にも入力される。支援制御装置70は、車両90の目標位置および当該目標位置までの走行経路を設定する。支援制御装置70は、計測装置60によって得られる情報を用いて目標位置および走行経路を設定する。支援制御装置70は、制動制御装置10、駆動制御装置、および操舵制御装置への指示を通じて、目標位置および走行経路に基づく車両90の自動走行を行わせることができる。なお、計測装置60によって取得された情報は、支援制御装置70を介して制動制御装置10に入力されてもよい。
【0024】
制動制御装置10、計測装置60が備える情報処理部、支援制御装置70および車両90が備える他の制御装置は、以下(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備える。プロセッサは、CPU並びに、RAMおよびROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。(b)各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備える。専用のハードウェア回路は、たとえば、特定用途向け集積回路すなわちASIC(Application Specific Integrated Circuit)、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)等である。(c)各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行する専用のハードウェア回路と、を備える。
【0025】
制動制御装置10は、機能部として、制動調整部11と停車距離取得部12と選択部13とを備えている。
選択部13は、モード選択部材50の状態に応じて、燃費優先モードまたは快適性優先モードを選択する。燃費優先モードは、車両に関する複数の制御モードのうち1つの制御モードである。快適性優先モードは、車両に関する複数の制御モードのうち1つの制御モードである。選択部13は、車両に関する複数の制御モードのうちいずれか1つの制御モードを選択する。つまり、燃費優先モードを、「第一の制御モード」と見た場合、快適性優先モードが、「第二の制御モード」に対応する。
【0026】
停車距離取得部12は、走行中の車両90が停止するまでに移動する距離を停車距離DISとして取得する。停車距離DISの最小値は「0」である。たとえば、停車距離取得部12は、車両90の制動が開始されると停車距離DISの取得を開始する。停車距離取得部12は、車両90の制動中に、所定の周期毎に繰り返し停車距離DISを取得して、前回取得した値を今回取得した値に更新する。
【0027】
停車距離取得部12が停車距離DISを取得する構成の一例について説明する。車両90が停止するまでの走行経路が設定されており支援制御装置70によって車両90の走行が制御されている場合には、車両90が停止する位置は、目標位置に相当する。この場合には、停車距離取得部12は、車両90の現在の位置から目標位置までの距離を停車距離DISとして取得することができる。
【0028】
他の例として、停車距離取得部12は、車両90が停止する位置を停車位置として推定して、停車位置までの距離を計測装置60によって測定することで、当該距離を停車距離DISとして取得することもできる。車両90が停止する位置は、車速および減速度等から推定することができる。また、停車距離取得部12は、車両90が停止する位置を停車位置として推定して、車両90の現在の位置から停車位置までの距離を算出することによって、当該距離を停車距離DISとして取得することもできる。あるいは、停車距離取得部12は、停車位置までの距離を算出した値を初期停車距離として記憶しておき、初期停車距離を算出した時点から車両90が実際に走行した距離を初期停車距離から減算することによって、停車距離DISを取得することもできる。
【0029】
制動調整部11は、摩擦制動装置21、回生制動装置23および電動駐車制動装置22を制御する機能を備えている。制動調整部11は、摩擦制動装置21、回生制動装置23および電動駐車制動装置22の制御に関する目標値を算出する。制動調整部11は、制動操作部材の操作量に基づいて、総制動力の目標値として要求制動力を算出する。支援制御装置70によって自動運転が実行中である場合には、制動調整部11は、支援制御装置70からの指令値に基づく値を要求制動力とする。制動調整部11は、総制動力のうち回生制動力が占める割合を設定して、各車輪に付与する摩擦制動力および回生制動力を調整する。総制動力のうち回生制動力が占める割合のことを回生比率ということもある。また、制動調整部11は、摩擦制動力のうち前輪に付与する前輪摩擦制動力が占める割合の設定も行う。制動調整部11は、回生制動力のうち前輪に付与する前輪回生制動力が占める割合の設定も行う。制動調整部11は、算出した目標値に基づいて、摩擦制動装置21、回生制動装置23および電動駐車制動装置22を制御することによって、各車輪に付与する制動力を各別に調整することができる。
【0030】
制動調整部11は、車両90の制動中に停止前ブレーキ制御を実行する。停止前ブレーキ制御が実行されると、車両90が停止する直前に、車両90に付与されている制動力が減少される。停止前ブレーキ制御は、車両に付与する制動力を調整して車両の車体挙動を抑制する制御である。停止前ブレーキ制御によって、車両90が停止する際の前後加速度の変化量を小さく抑えられる。制動調整部11は、停止前ブレーキ制御では、制動力プロファイルに従って車両90に付与する総制動力を調整する。
【0031】
制動調整部11は、停止前ブレーキ制御では、停止前ブレーキ制御の開始時点での回生比率を保持して制動力を調整する。たとえば、停止前ブレーキ制御の開始時点で回生制動力のみによって要求制動力が満たされている場合には、停止前ブレーキ制御によって減少される制動力は回生制動力である。また、停止前ブレーキ制御の開始時点で摩擦制動力のみによって要求制動力が満たされている場合には、停止前ブレーキ制御によって減少される制動力は摩擦制動力である。
【0032】
制動調整部11は、停止前ブレーキ制御では、停止前ブレーキ制御の開始時点での回生比率を変更して制動力を調整することもできる。たとえば、停止前ブレーキ制御の開始時点で回生制動力および摩擦制動力が付与されている場合には、停止前ブレーキ制御によって減少される制動力に関して、回生制動力の減少量を摩擦制動力の減少量よりも多くしてもよい。
【0033】
図2を用いて、停止前ブレーキ制御における制動力プロファイルの概要について説明する。
図2は、総制動力の目標値の推移として制動力プロファイルを示している。
図2に示す例では、車両90を停止させる時がタイミングt5である。なお、車両90における車輪の回転が止まっている状態のことを車両90が停止しているという。
【0034】
制動力プロファイルは、タイミングt5よりも前のタイミングt3からタイミングt4までの期間を、総制動力を徐々に減少させる期間としている。制動力プロファイルは、タイミングt4からタイミングt5までの期間を、総制動力を一定に維持させる期間としている。以下では、タイミングt4からタイミングt5までの期間のように、車両90の停止直前に車両90に付与する制動力を低い値に維持させる期間のことを、停車前保持期間ということもある。なお、時間当たりの総制動力の減少量および総制動力を一定に維持する期間の長さは、車速、減速度および車両90を停止させる位置までの距離等に応じて調整される。
【0035】
また、
図2に示すように、制動調整部11が設定するプロファイルでは、タイミングt5以降において総制動力を増加させるようにしている。これは、停止後の車両90が動くことを抑制して車両90が停止した状態を保持するためである。制動力プロファイルは、タイミングt5からタイミングt6までの期間を、総制動力を要求制動力まで増加させる期間としている。総制動力が要求制動力に達するタイミングt6以降では、総制動力が要求制動力に維持される。なお、増加後の総制動力が要求制動力と一致していることは必須ではない。
【0036】
ところで、制動中に総制動力を要求制動力よりも減少させる期間を設けると、車両90の制動距離が長くなることがある。そこで、停止前ブレーキ制御では、制動調整部11は、車両90が停止する直前に総制動力を減少させても総制動力を減少させない場合と比較して制動距離の差が小さくなるようにする。具体的には、制動調整部11は、総制動力の減少を開始する前に総制動力を一時的に増加させる。制動調整部11が設定するプロファイルでは、タイミングt3よりも前のタイミングt1からタイミングt2までの期間を、総制動力を徐々に増加させる期間としている。制動力プロファイルは、タイミングt2からタイミングt3までの期間を、総制動力を一定に維持させる期間としている。制動調整部11は、総制動力を要求制動力よりも増加させることに応じて制動距離が短くなることを考慮して、総制動力の増加量および増加を行う期間を算出して、制動力プロファイルの設定に反映させる。
【0037】
本実施形態では、制動調整部11は、停止前ブレーキ制御の実行中において総制動力を変更し始める時を、停車距離DISに基づいて制御する。制動調整部11は、タイミングt1に対応する停車距離DISの値を増加判定値th1として設定する。増加判定値th1は、総制動力の増加を開始する時を定めるための値である。制動調整部11は、タイミングt3に対応する停車距離DISの値を減少判定値th2として設定する。減少判定値th2は、総制動力の減少を開始する時を定めるための値である。制動調整部11は、タイミングt4に対応する停車距離DISの値を維持判定値th3として設定する。維持判定値th3は、総制動力の維持を開始する時を定めるための値である。換言すれば、維持判定値th3は、総制動力の減少を終了する時を定めるための値である。
【0038】
以上のように、制動調整部11は、停止前ブレーキ制御を実行する際には、制動力プロファイルに基づいて各判定値th1~th3を設定する。そして、制動調整部11は、停止前ブレーキ制御の実行中では、制動力プロファイルに従って総制動力が変更されるように、摩擦制動装置21の制御量および回生制動装置23の制御量を調整する。停止前ブレーキ制御において制動力を制御するためのプロファイルとして総制動力の目標値の推移を示す制動力プロファイルを例示したが、減速度の目標値の推移を示す減速度プロファイルに従って、減速度を実現するように制動力を制御することもできる。
【0039】
制動調整部11は、車両90の制動中に、すり替え制御を実行する。すり替え制御では、制動調整部11は、車輪に付与されている回生制動力を摩擦制動力にすり替える。具体的には、制動調整部11は、回生制動装置23を制御することによって回生制動力を減少させ、当該回生制動力の減少量によって総制動力を変化させることがないように、摩擦制動装置21を制御することによって摩擦制動力を増大させる。すなわち、すり替え制御とは、要求制動力のうち回生制動力が占める割合を変更する制御であるといえる。停止前ブレーキ制御によって制動力の減少を開始した後に実行するすり替え制御のことを第1すり替え制御という。停止前ブレーキ制御によって制動力の減少を開始する前に実行するすり替え制御のことを第2すり替え制御という。また、停止前ブレーキ制御を実行しない場合に行うすり替え制御のことを第3すり替え制御という。
【0040】
図3~
図5を用いて、停止前ブレーキ制御およびすり替え制御が制動調整部11によって実行される際の流れを説明する。
図3は、制動調整部11が実行する処理の流れを示す。本処理ルーチンは、車両90に制動力の付与が開始されてから車速が規定の開始判定値よりも低くなった場合に開始される。
【0041】
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS101では、制動調整部11は、停止前ブレーキ制御の実行条件が成立しているか否かを判定する。実行条件の一例について説明する。ここでは、制動調整部11は、車速が規定の開始判定値よりも低くなったときの減速度の目標値が所定値未満である場合には実行条件が成立していると判定する。一方で制動調整部11は、車速が規定の開始判定値よりも低くなったときの減速度の目標値が所定値以上である場合には実行条件が成立していないと判定する。すなわち、制動に伴って車速が低下した時点での減速度の目標値が大きい場合には実行条件が成立しない。
【0042】
停止前ブレーキ制御の実行条件が成立している場合には(S101:YES)、制動調整部11は、処理をステップS102に移行する。ステップS102では、制動調整部11は、停車距離DISの取得を開始する。制動調整部11は、停車距離取得部12から停車距離DISを取得する。制動調整部11は、所定の周期毎に繰り返し停車距離DISを取得して、前回取得した値を今回取得した値に更新する。制動調整部11は、車両90が停止するまで停車距離DISの取得を繰り返す。制動調整部11は、停車距離DISの取得を開始すると、処理をステップS103に移行する。
【0043】
ステップS103では、制動調整部11は、停止前ブレーキ制御における制動力プロファイルを設定する。制動調整部11は、この時点で取得している停車距離DISの値に基づいて、制動力プロファイルを設定する。制動調整部11は、制動力プロファイルを設定すると、処理をステップS104に移行する。
【0044】
ステップS104では、制動調整部11は、ステップS103の処理において設定した制動力プロファイルに基づいて、増加判定値th1、減少判定値th2および維持判定値th3を設定する。制動調整部11は、各判定値th1~th3を設定すると、処理をステップS105に移行する。
【0045】
ステップS105では、制動調整部11は、燃費優先モードが選択されているか否かを判定する。燃費優先モードが選択されている場合には(S105:YES)、制動調整部11は、処理をステップS106に移行する。
【0046】
ステップS106では、制動調整部11は、ステップS103において設定した制動力プロファイルを更新する。制動調整部11は、燃費優先モードに従った制動力の制御に適した制動力プロファイルを設定する。具体的には、すり替え制御を実行することによる回生制動力から摩擦制動力へのすり替えが停車前保持期間において完了できるように、停車前保持期間の長さを確保した制動力プロファイルを設定する。
【0047】
制動調整部11は、制動力プロファイルを更新すると、新たな制動力プロファイルに基づいて増加判定値th1、減少判定値th2および維持判定値th3を更新する。その後、制動調整部11は、処理をステップS107に移行する。なお、ステップS103において設定した制動力プロファイルによって停車前保持期間の長さを確保できるのであれば、制動力プロファイルの更新および各判定値th1~th3の更新を省略してもよい。
【0048】
ステップS107では、制動調整部11は、第1すり替え判定値exc1を設定する。第1すり替え判定値exc1は、第1すり替え制御の開始時期を定めるために設定される値である。第1すり替え判定値exc1は、後述するように停車距離DISと比較される。換言すれば、第1すり替え判定値exc1は、第1すり替え制御を開始するためのしきい値として設定される。第1すり替え判定値exc1は、すり替え制御開始閾値に対応する。燃費優先モードを第一の制御モードとした場合、第1すり替え判定値exc1が、第一のすり替え制御開始閾値に対応する。制動調整部11は、第1すり替え判定値exc1を、ステップS106の処理において設定した維持判定値th3の値と等しい値にする。その後、制動調整部11は、処理をステップS108に移行する。
【0049】
ステップS108では、制動調整部11は、停止前ブレーキ制御を開始する。制動調整部11は、ステップS108の処理において停止前ブレーキ制御を開始すると、処理をステップS109に移行する。ステップS108の処理において実行される停止前ブレーキ制御は、ステップS109以降の処理と平行して実行される。ここで、
図4を用いて停止前ブレーキ制御について説明する。
【0050】
図4は、制動調整部11が実行する停止前ブレーキ制御の処理の流れを示す。本処理ルーチンは、
図3に示す処理の中で実行が開始される。本処理ルーチンが開始されると、まずステップS201では、制動調整部11は、停車距離DISが増加判定値th1よりも小さいか否かを判定する。停車距離DISが増加判定値th1よりも小さい場合には(S201:YES)、制動調整部11は、処理をステップS202に移行する。一方で、停車距離DISが増加判定値th1以上である場合には(S201:NO)、制動調整部11は、停車距離DISが増加判定値th1よりも小さいか否かの判定を再び行う。すなわち、制動調整部11は、停車距離DISが増加判定値th1よりも小さくなるまでステップS201の処理を繰り返し実行する。
【0051】
ステップS202では、制動調整部11は、予め設定した制動力プロファイルに従って総制動力を要求制動力よりも増加させる。その後、制動調整部11は、処理をステップS203に移行する。
【0052】
ステップS203では、制動調整部11は、停車距離DISが減少判定値th2よりも小さいか否かを判定する。停車距離DISが減少判定値th2よりも小さい場合には(S203:YES)、制動調整部11は、処理をステップS204に移行する。一方で、停車距離DISが減少判定値th2以上である場合には(S203:NO)、制動調整部11は、停車距離DISが減少判定値th2よりも小さいか否かの判定を再び行う。すなわち、制動調整部11は、停車距離DISが減少判定値th2よりも小さくなるまでステップS203の処理を繰り返し実行する。
【0053】
ステップS204では、制動調整部11は、予め設定した制動力プロファイルに従って総制動力を減少させる。その後、制動調整部11は、処理をステップS205に移行する。
【0054】
ステップS205では、制動調整部11は、停車距離DISが維持判定値th3よりも小さいか否かを判定する。停車距離DISが維持判定値th3よりも小さい場合には(S205:YES)、制動調整部11は、処理をステップS206に移行する。一方で、停車距離DISが維持判定値th3以上である場合には(S205:NO)、制動調整部11は、停車距離DISが維持判定値th3よりも小さいか否かの判定を再び行う。すなわち、制動調整部11は、停車距離DISが維持判定値th3よりも小さくなるまでステップS205の処理を繰り返し実行する。
【0055】
ステップS206では、制動調整部11は、予め設定した制動力プロファイルに従って総制動力を維持させる。その後、制動調整部11は、処理をステップS207に移行する。
【0056】
ステップS207では、制動調整部11は、停車距離DISが「0」であるか否かを判定する。停車距離DISが「0」である場合には(S207:YES)、制動調整部11は、処理をステップS208に移行する。一方で、停車距離DISが「0」に達していない場合には(S207:NO)、制動調整部11は、停車距離DISが「0」であるか否かの判定を再び行う。すなわち、制動調整部11は、停車距離DISが「0」になるまでステップS207の処理を繰り返し実行する。ステップS208では、制動調整部11は、予め設定した制動力プロファイルに従って総制動力を増加させる。その後、制動調整部11は、本処理ルーチンを終了する。
【0057】
図3に戻り、制動調整部11は、ステップS109では、停車距離DISが第1すり替え判定値exc1よりも小さいか否かを判定する。停車距離DISが第1すり替え判定値exc1よりも小さい場合には(S109:YES)、制動調整部11は、処理をステップS110に移行する。一方で、停車距離DISが第1すり替え判定値exc1以上である場合には(S109:NO)、制動調整部11は、停車距離DISが第1すり替え判定値exc1よりも小さいか否かの判定を再び行う。すなわち、制動調整部11は、停車距離DISが第1すり替え判定値exc1よりも小さくなるまでステップS109の処理を繰り返し実行する。
【0058】
ステップS110では、制動調整部11は、比率設定処理を実行する。比率設定処理は、第1すり替え制御が実行される結果として車輪に付与される摩擦制動力について設定する処理である。
図5を用いて比率設定処理について説明する。
【0059】
図5は、制動調整部11が実行する比率設定処理の処理ルーチンを示す。本処理ルーチンは、
図3に示すステップS110の処理によって実行される。本処理ルーチンが開始されると、まずステップS301では、制動調整部11は、ブレーキ鳴きの発生が予測されるか否かを判定する。ブレーキ鳴きとは、摩擦制動装置21における摩擦材と回転体との接触に伴って発生する異音のことである。たとえば、車輪に付与する摩擦制動力が所定のしきい値よりも小さい状態が規定の期間以上継続する場合に、ブレーキ鳴きの発生を予測することができる。この場合における所定のしきい値とは、「0」よりも僅かに大きい値である。
【0060】
ブレーキ鳴きの発生が予測されない場合には(S301:NO)、制動調整部11は、処理をステップS302に移行する。ステップS302では、制動調整部11は、車両90に付与する摩擦制動力のうち前輪に付与する摩擦制動力が占める割合を配分比率として、配分比率に基本配分比率を適用する。基本配分比率は、摩擦制動力のみを付与して車両90を減速させる制動を開始する場合の配分比率に相当する。その後、制動調整部11は、処理をステップS304に移行する。
【0061】
一方で、ブレーキ鳴きの発生が予測される場合には(S301:YES)、制動調整部11は、処理をステップS303に移行する。ステップS303では、制動調整部11は、配分比率に偏重配分比率を適用する。偏重配分比率は、基本配分比率に従って摩擦制動力を付与する場合と比較して前輪に付与する摩擦制動力または後輪に付与する摩擦制動力が大きくなるように調整された配分比率である。偏重配分比率の一例は、車両90に付与する摩擦制動力のすべてが前輪に付与する摩擦制動力によって占められる配分比率である。偏重配分比率は、車両90に付与する摩擦制動力のすべてが後輪に付与する摩擦制動力によって占められる配分比率であってもよい。配分比率に偏重配分比率を適用すると、制動調整部11は、処理をステップS304に移行する。
【0062】
ステップS304では、制動調整部11は、すり替え後の摩擦制動力を発生させる装置として電動駐車制動装置22を使用可能であるか否かを判定する。たとえば、すり替え後の摩擦制動力の大きさを電動駐車制動装置22の作動によって実現することができる場合には、電動駐車制動装置22を使用可能であると判定することができる。また、電動駐車制動装置22によって摩擦制動力を付与したと仮定して電動駐車制動装置22にかかる負荷が許容できる場合には電動駐車制動装置22を使用可能であると判定することもできる。負荷の大きさは、すり替え後の摩擦制動力の目標値および車速等から推定することができる。
【0063】
電動駐車制動装置22を使用可能ではない場合には(S304:NO)、制動調整部11は、処理をステップS305に移行する。ステップS305では、制動調整部11は、EPB比率を「0」に設定する。EPB比率とは、車両90に付与する摩擦制動力のうち電動駐車制動装置22の作動によって付与される摩擦制動力が占める割合を示す。EPB比率が「0」であることは、すなわち電動駐車制動装置22の作動による摩擦制動力を発生させないことを意味する。制動調整部11は、EPB比率を設定すると、本処理ルーチンを終了する。
【0064】
一方、電動駐車制動装置22を使用可能である場合には(S304:YES)、制動調整部11は、処理をステップS306に移行する。ステップS306では、制動調整部11は、EPB比率を算出する。制動調整部11は、EPB比率を「100」として算出する。EPB比率が「100」であることは、摩擦制動装置21を作動させることによる摩擦制動力を発生させることなく、電動駐車制動装置22を作動させることによって、摩擦制動力の目標値に応じた摩擦制動力が車輪に付与されることを意味する。制動調整部11は、「0」~「100」の間の値としてEPB比率を算出することもできる。制動調整部11は、算出した値を用いてEPB比率を設定すると、本処理ルーチンを終了する。
【0065】
図3に戻り、制動調整部11は、ステップS110の処理において実行する比率設定処理が終了すると、処理をステップS111に移行する。
ステップS111では、制動調整部11は、第1すり替え制御を開始する。制動調整部11は、回生制動装置23、摩擦制動装置21および電動駐車制動装置22を制御することによって、車輪に付与されている回生制動力を摩擦制動力にすり替える。このとき、制動調整部11は、比率設定処理によって設定された配分比率およびEPB比率に従って摩擦制動力が付与されるように、摩擦制動装置21および電動駐車制動装置22を制御する。第1すり替え制御を開始した後、制動調整部11は、本処理ルーチンを終了する。
【0066】
制動調整部11は、ステップS105の処理において燃費優先モードが選択されていない場合、すなわち快適性優先モードが選択されている場合には(S105:NO)、処理をステップS112に移行する。
【0067】
ステップS112では、制動調整部11は、第2すり替え判定値exc2を設定する。第2すり替え判定値exc2は、第2すり替え制御の開始時期を定めるために設定される値である。第2すり替え判定値exc2は、後述するように停車距離DISと比較される。換言すれば、第2すり替え判定値exc2は、第2すり替え制御を開始するためのしきい値として設定される。第2すり替え判定値exc2は、すり替え制御開始閾値に対応する。快適性優先モードを第二の制御モードとした場合、第2すり替え判定値exc2が、第二のすり替え制御開始閾値に対応する。制動調整部11は、第2すり替え判定値exc2を、ステップS104の処理において設定した増加判定値th1よりも大きい値にする。たとえば、制動調整部11は、停車距離DISが減少判定値th2に達するよりも前にすり替えが完了するように第2すり替え判定値exc2を設定する。第2すり替え判定値exc2を設定すると、制動調整部11は、処理をステップS113に移行する。
【0068】
ステップS113では、制動調整部11は、停止前ブレーキ制御を開始する。制動調整部11は、ステップS113の処理において停止前ブレーキ制御を開始すると、処理をステップS114に移行する。ステップS113の処理において実行される停止前ブレーキ制御は、ステップS114以降の処理と平行して実行される。ステップS113において開始される停止前ブレーキ制御の処理の流れは、ステップS108において実行が開始される停止前ブレーキ制御の処理の流れと共通の内容であるため、説明を省略する。
【0069】
ステップS114では、制動調整部11は、停車距離DISが第2すり替え判定値exc2よりも小さいか否かを判定する。停車距離DISが第2すり替え判定値exc2よりも小さい場合には(S114:YES)、制動調整部11は、処理をステップS115に移行する。一方で、停車距離DISが第2すり替え判定値exc2以上である場合には(S114:NO)、制動調整部11は、停車距離DISが第2すり替え判定値exc2よりも小さいか否かの判定を再び行う。すなわち、制動調整部11は、停車距離DISが第2すり替え判定値exc2よりも小さくなるまでステップS114の処理を繰り返し実行する。
【0070】
ステップS115では、制動調整部11は、第2すり替え制御を開始する。制動調整部11は、回生制動装置23および摩擦制動装置21を制御することによって、車輪に付与されている回生制動力を摩擦制動力にすり替える。このとき、制動調整部11は、基本配分比率とは異なる配分比率に従って摩擦制動力が付与されるように、摩擦制動装置21を制御してもよい。第2すり替え制御を開始した後、制動調整部11は、本処理ルーチンを終了する。
【0071】
ステップS101の処理において停止前ブレーキ制御の実行条件が成立していない場合には(S101:NO)、制動調整部11は、処理をステップS116に移行する。
ステップS116では、制動調整部11は、停車予測時間Ti1の算出を開始する。停車予測時間Ti1は、車両90が停止するまでに要する時間を予測した値である。制動調整部11は、停車予測時間Ti1の算出を開始すると、所定の周期毎に繰り返し停車予測時間Ti1を算出して、前回算出した値を今回算出した値に更新する。制動調整部11は、停車予測時間Ti1の算出を開始すると、処理をステップS117に移行する。
【0072】
ステップS117では、制動調整部11は、すり替え所要時間Ti2を算出する。すり替え所要時間Ti2は、回生制動力から摩擦制動力へのすり替えが完了するまでに要する時間を予測した値である。制動調整部11は、すり替え所要時間Ti2を算出すると、処理をステップS118に移行する。
【0073】
ステップS118では、制動調整部11は、停車予測時間Ti1が、すり替え所要時間Ti2よりも小さいか否かを判定する。停車予測時間Ti1が、すり替え所要時間Ti2よりも小さい場合には(S118:YES)、制動調整部11は、処理をステップS119に移行する。一方で、停車予測時間Ti1が、すり替え所要時間Ti2以上である場合には(S118:NO)、制動調整部11は、停車予測時間Ti1が、すり替え所要時間Ti2よりも小さいか否かの判定を再び行う。すなわち、制動調整部11は、停車予測時間Ti1が、すり替え所要時間Ti2よりも小さくなるまでステップS118の処理を繰り返し実行する。
【0074】
ステップS119では、制動調整部11は、第3すり替え制御を開始する。制動調整部11は、回生制動装置23および摩擦制動装置21を制御することによって、車輪に付与されている回生制動力を摩擦制動力にすり替える。第3すり替え制御を開始した後、制動調整部11は、本処理ルーチンを終了する。
【0075】
本実施形態の作用および効果について説明する。
まず、燃費優先モードが選択されているときに停止前ブレーキ制御およびすり替え制御が実行される場合の例について説明する。
【0076】
図6は、制動によって車両90が停止する際に車両90に付与される制動力の推移を示す。
図6に示す例では、停止前ブレーキ制御の実行条件が成立している。
図6に示す例では、
図6の(a)に示すようにタイミングt11から要求制動力が増大している。タイミングt12以降では、要求制動力が一定に維持されている。要求制動力が増大することに伴って制動力が付与されるため、
図6の(d)に示すように、停車距離DISは、時間の経過に伴って減少している。
図6に示す例では、
図6の(d)に示すように停車距離DISが「0」に達するタイミングt17において車両90が停止している。また、制動力の付与に伴って、
図6の(e)に示すようにタイミングt11からタイミングt17までの期間では、前後加速度が負の値となっている。
【0077】
図6の(b)は、回生制動力の目標値を示している。
図6の(c)は、摩擦制動力の目標値を示している。
図6の(b)に示すように、制動力の付与が開始される時点では、回生制動力によって要求制動力が満たされるように、制動装置20が制御されている。
【0078】
制動力の付与に伴って停車距離DISが減少して、タイミングt13において停車距離DISが増加判定値th1よりも小さいと判定されると(S201:YES)、制動力の増加が開始される(S202)。ここでは、タイミングt13よりも前の回生比率を保持して制動力が増加される。すなわち、回生制動力が増加される。この結果、
図6の(b)に示すように、タイミングt13以降で回生制動力が徐々に増加される。制動力プロファイルに従って回生制動力が増加されて、タイミングt14以降では回生制動力が要求制動力よりも大きい値に維持されている。
【0079】
タイミングt15において停車距離DISが減少判定値th2よりも小さいと判定されると(S203:YES)、制動力の減少が開始される(S204)。ここでも回生比率を保持して制動力が減少される。すなわち、回生制動力が減少される。この結果、
図6の(b)に示すように、タイミングt15以降で回生制動力が徐々に減少される。回生制動力は、要求制動力よりも低い値まで減少される。これによって、
図6の(e)に示すように、タイミングt15以降において車両90の前後加速度を「0」に近づけることができる。
【0080】
タイミングt16において停車距離DISが維持判定値th3よりも小さいと判定されると(S205:YES)、制動力の維持が開始される(S206)。このとき、
図6に示す例では燃費優先モードが選択されていることで、維持判定値th3と同じ値として第1すり替え判定値exc1が設定されている(S107)。すなわち、タイミングt16においては、停車距離DISが第1すり替え判定値exc1よりも小さいと判定され(S109:YES)、第1すり替え制御が開始される(S111)。
【0081】
この結果、総制動力を維持して回生制動力が摩擦制動力にすり替えられる。より詳しくは、
図6の(b)に示すように、タイミングt16以降で回生制動力が徐々に減少される。さらに、
図6の(c)に示すように、摩擦制動力が徐々に増大される。こうして、回生制動力が摩擦制動力にすり替えられる。なお、このとき、ブレーキ鳴きの発生が予測されると(S301:YES)、偏重配分比率が適用される(S303)。この場合には、偏重配分比率に基づいて前輪の摩擦制動力および後輪の摩擦制動力が付与される。さらに、電動駐車制動装置22を使用可能であれば(S304:YES)、EPB比率が算出される(S306)。この場合には、摩擦制動力は、電動駐車制動装置22の作動によって付与される。
【0082】
タイミングt17において停車距離DISが「0」であると判定されると(S207:YES)、制動力の増加が開始される(S208)。この結果、
図6の(c)に示すように、タイミングt17以降で摩擦制動力が徐々に増加される。タイミングt18以降では、摩擦制動力が要求制動力に維持されている。
【0083】
制動制御装置10では、停車距離DISに基づいて第1すり替え制御を開始するか否かを判定するようにしている。このため、車速の検出精度が低下する状況であるとしても、すり替え制御において規定している意図した時期と、すり替え制御の実際の開始時期とのずれが生じにくくなる。たとえば、車速が低速になるほど車速の検出精度が低下するが、制動制御装置10によれば、車両90が停止する間際のように車速が低速であっても上記時期のずれが発生することを抑制できる。
【0084】
また、車速の検出精度が低く車両90が停止する直前であるか否かの検出が困難であると、車両90が停止位置に近づいた際に制動力を制御する精度が低下するおそれもある。とくに、車両90が停止する直前に回生制動装置23によって回生制動力を付与している場合には、車両90を停止させるまでに力行と回生とを繰り返し行うことになるおそれがある。これによって消費エネルギが大きくなることがある。この結果として燃費が悪化するおそれがある。
【0085】
制動制御装置10によれば、停車距離DISに基づいて車両90が停止直前であることを判定できる。このため、車両90が停止する直前に不要な加速が行われることを抑制できる。また、車両90が停車位置に到達するよりも前に制動力が過度に大きくなることも抑制できる。これによって、車両90が停止する際に車両90のピッチング運動が大きくなることを抑制できる。
【0086】
燃費優先モードが選択されている場合には、回生制動力から摩擦制動力へのすり替えが開始される時が、停止前ブレーキ制御によって制動力の減少が開始される時よりも後である。このため、
図6に示す例のタイミングt11からタイミングt17までの期間のように、車両90の制動の際に回生制動力を付与する期間を長く確保することができる。これによって、回生制動力の発生に伴って蓄電される電力を多くすることができる。
【0087】
制動制御装置10では、第1すり替え判定値exc1が維持判定値th3と同じ値に設定されている。すなわち、第1すり替え判定値exc1は、減少判定値th2よりも小さい値として設定されている。このため、停止前ブレーキ制御によって制動力の減少を開始する時と、すり替えを開始する時とが異なるようになる。さらに言えば、停止前ブレーキ制御による制動力の減少が完了して制動力が維持されている期間にすり替えが行われる。制動力を減少させながらすり替えを行う場合と比較して、制動力の目標値と実際の制動力との差が生じにくくなる。これによって、制動力を制御する精度が低下することを抑制できる。
【0088】
また、制動制御装置10によれば、回生制動力から摩擦制動力へのすり替えの結果として、車両90の停止前に摩擦制動力が付与されている。仮に車両90が停車位置に到達した時点から摩擦制動力の付与を開始すると液圧の応答遅れ等によって制動力が目標値に対して不足して車両90が動くおそれがある。これに対して制動制御装置10によれば、車両90が停車位置に到達する前から摩擦制動力が付与されていることで、車両90が停車位置に到達した後に車両90が動くことを抑制できる。
【0089】
制動制御装置10では、第1すり替え制御の開始時には、停止前ブレーキ制御によって回生制動力が減少された状態である。すなわち、すり替えの対象となる回生制動力の大きさが小さい。これによって、回生制動力を摩擦制動力にすり替える際の制動力の変化勾配を小さくすることが可能になる。時間当たりの制動力の変化量を大きくする必要がないため、制動力を制御する際の精度の低下を抑制できる。
【0090】
停止前ブレーキ制御によって制動力を減少させた後にすり替え制御を行う場合には、すり替えの対象となる制動力が小さくなっている。回生制動力に替えて付与する摩擦制動力の大きさが小さいと、ブレーキ鳴きが発生するおそれがある。この点、制動制御装置10によれば、ブレーキ鳴きの発生が予測される場合には、すり替え制御において摩擦制動力を付与する際に配分比率を基本配分比率とは異ならせることができる。これによって、ブレーキ鳴きが発生しうる制動力の領域を避けて摩擦制動力を付与することができる。
【0091】
制動制御装置10では、車両90が停止するよりも前に電動駐車制動装置22の作動によって摩擦制動力を付与することができる。仮に車両90が停止した後に電動駐車制動装置22を作動させるとすると、摩擦制動装置21の作動によって摩擦材が回転体に押し付けられている圧力を下げる場合がある。これに対して制動制御装置10によれば、車両90の停止前に摩擦制動装置21によって摩擦制動力を付与してから車両90の停止後に当該摩擦制動力を減少させるという制御を省略できる。これによって、摩擦制動装置21を作動する回数および摩擦制動装置21の作動時間を減らすことができる。
【0092】
制動制御装置10では、車両90が停止する直前に第1すり替え制御を実行することができる。すなわち、第1すり替え制御において電動駐車制動装置22が作動される時は、車両90が停止する直前であり、車速が小さく前後加速度が「0」に近い。このため、車両90の走行中に電動駐車制動装置22が作動されるものではあるが、電動駐車制動装置22に負荷がかかることを抑制できる。
【0093】
次に、快適性優先モードが選択されているときに停止前ブレーキ制御およびすり替え制御が実行される場合の例について説明する。
図7は、
図6に示す例と同様に、制動によって車両90が停止する際に車両90に付与される制動力の推移を示す。
図7の(a)に示すようにタイミングt21から要求制動力が増大している。
図7の(b)に示すように、要求制動力の増大に伴って回生制動力が付与されている。タイミングt22以降では、要求制動力が一定に維持されている。停止前ブレーキ制御が実行されることで、
図7の(d)に示すように、タイミングt25において、停車距離DISが増加判定値th1よりも小さいと判定されて、制動力の増加が開始されている。タイミングt27において停車距離DISが減少判定値th2よりも小さいと判定されて、制動力の減少が開始されている。タイミングt28において停車距離DISが維持判定値th3よりも小さいと判定されて、制動力の維持が開始されている。
【0094】
図7に示す例において
図6に示す例とは異なる点を説明する。
図7に示す例では、快適性優先モードが選択されている。このため、すり替え制御が開始される時期が異なっている。すなわち、
図7の(b)に示す回生制動力の推移および
図7の(c)に示す摩擦制動力の推移が、
図6の(b)および(c)に示す例とは異なっている。
【0095】
図7に示す例では快適性優先モードが選択されていることで、増加判定値th1よりも大きい値として第2すり替え判定値exc2が設定されている(S112)。このため、
図7に示す例では、停止前ブレーキ制御によって制動力の増加が行われるタイミングt25よりも前のタイミングt23において、停車距離DISが第2すり替え判定値exc2よりも小さいと判定されて(S114:YES)、第2すり替え制御が開始されている(S115)。
【0096】
この結果、
図7の(b)に示すように、タイミングt23以降で回生制動力が徐々に減少される。さらに、
図7の(c)に示すように、摩擦制動力が徐々に増大される。こうして、回生制動力が摩擦制動力にすり替えられる。タイミングt24において、すり替えが完了している。
【0097】
第2すり替え制御において配分比率を基本配分比率から変更した場合には、車両90に作用するアンチダイブ力およびアンチリフト力を調整することができる。アンチダイブ力およびアンチリフト力は、車両90のピッチング運動を抑制する力である。たとえば、後輪に付与する摩擦制動力を大きくすることでアンチリフト力を大きくすることができる。また、前輪に付与する摩擦制動力を大きくすることでアンチダイブ力を大きくすることができる。
【0098】
タイミングt24よりも後のタイミングt25において、停止前ブレーキ制御によって制動力の増加が開始される。ここでは、タイミングt25よりも前の回生比率を保持して制動力が増加される。タイミングt25よりも前のタイミングt24において回生制動力から摩擦制動力へのすり替えが完了しているため、摩擦制動力が増加される。この結果、
図7の(c)に示すように、タイミングt25以降で摩擦制動力が徐々に増加される。制動力プロファイルに従って摩擦制動力が増加されて、タイミングt26以降では摩擦制動力が要求制動力よりも大きい値に維持されている。
【0099】
タイミングt27において、停止前ブレーキ制御によって制動力の減少が開始される。ここでも回生比率を保持して制動力が減少される。すなわち、摩擦制動力が減少される。この結果、
図7の(c)に示すように、タイミングt27以降で摩擦制動力が徐々に減少される。摩擦制動力は、要求制動力よりも低い値まで減少される。これによって、
図7の(e)に示すように、タイミングt27以降において車両90の前後加速度を「0」に近づけることができる。
【0100】
タイミングt28において、停止前ブレーキ制御によって制動力の維持が開始される。この結果、
図7の(c)に示すように、タイミングt28以降では摩擦制動力が一定に維持されている。
【0101】
タイミングt29において停車距離DISが「0」であると判定されると(S207:YES)、制動力の増加が開始される(S208)。この結果、
図7の(c)に示すように、タイミングt29以降で摩擦制動力が徐々に増加される。タイミングt30以降では、摩擦制動力が要求制動力に維持されている。
【0102】
制動制御装置10では、快適性優先モードが選択されている場合にも、
図6に示した燃費優先モードが選択されている場合の例と同様に、停止前ブレーキ制御によって制動力の減少を開始する時とすり替え制御を開始する時とを異ならせることができる。
【0103】
さらに、制動制御装置10では、快適性優先モードが選択されている場合には、車両90が停止する前に発生している制動力が摩擦制動力である。車両90に作用するアンチリフト力およびアンチダイブ力は、摩擦制動力が付与されている場合の方が、当該摩擦制動力と同じ大きさの回生制動力が付与されている場合よりも大きくなる。このため、快適性優先モードが選択されている場合には、車両90に作用するアンチリフト力およびアンチダイブ力を大きくすることができる。これによって、車両90のピッチング運動が抑制されやすくなる。
【0104】
制動制御装置10では、回生制動力を長く付与することによって発電量を確保する燃費優先モードと、停止前に発生している制動力が摩擦制動力であることによってピッチング運動を抑制しやすい快適性優先モードと、を使い分けることができる。
【0105】
上記実施形態に記載した事項に関して、
図3のステップS108の処理によって実行される停止前ブレーキ制御は、回生制動力を減少させることによって車両に付与する制動力を減少させる第1停止前ブレーキ制御に対応する。
図3のステップS113の処理によって実行される停止前ブレーキ制御は、摩擦制動力を減少させることによって車両に付与する制動力を減少させる第2停止前ブレーキ制御に対応する。燃費優先モードは、第1すり替え制御および第1停止前ブレーキ制御が実行される第1モードに対応する。快適性優先モードは、第2すり替え制御および第2停止前ブレーキ制御が実行される第2モードに対応する。
【0106】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、制動制御装置10が実行する処理の流れとして、
図3のステップS103において制動力プロファイルを設定した後にステップS105において燃費優先モードか否かを判定する例を示した。これに替えて、燃費優先モードか否かを判定した後に、選択されているモードに応じて制動力プロファイルの設定および各判定値th1~th3の設定を行うようにしてもよい。
【0107】
・ステップS105の処理を省略してもよい。すなわち、停止前ブレーキ制御およびすり替え制御を実行する場合には、停止前ブレーキ制御による制動力の減少が開始された後にすり替え制御を開始するようにしてもよい。
【0108】
・上記実施形態では、ステップS107において第1すり替え判定値exc1を設定した後にステップS108において停止前ブレーキ制御を開始する例を示した。これに替えて、停止前ブレーキ制御を開始してから第1すり替え判定値exc1を設定するようにしてもよい。また同様に、停止前ブレーキ制御を開始してから第2すり替え判定値exc2を設定するようにしてもよい。
【0109】
・上記実施形態では、第1すり替え判定値exc1を維持判定値th3と同じ値とした。第1すり替え判定値exc1は、減少判定値th2よりも小さい値であればよい。第1すり替え判定値exc1が減少判定値th2よりも小さい値であれば、停止前ブレーキ制御による制動力の減少が開始された後に第1すり替え制御が開始されることになる。第1すり替え制御によるすり替えが開始される時が停止前ブレーキ制御による制動力の減少が開始される時とずれていれば、停止前ブレーキ制御による制動力の減少とすり替えとが同時に開始される場合と比較して、制動力を減少させながら回生制動力から摩擦制動力へのすり替えが行われる期間を短くできる場合がある。
【0110】
・上記実施形態では、第2すり替え判定値exc2を、増加判定値th1よりも大きい値にした。第2すり替え判定値exc2は、減少判定値th2よりも大きい値であればよい。第2すり替え判定値exc2が減少判定値th2よりも大きい値であれば、停止前ブレーキ制御による制動力の減少が開始される前に第2すり替え制御が開始されることになる。第2すり替え制御によるすり替えが開始される時が停止前ブレーキ制御による制動力の減少が開始される時とずれていれば、停止前ブレーキ制御による制動力の減少とすり替えとが同時に開始される場合と比較して、制動力を減少させながら回生制動力から摩擦制動力へのすり替えが行われる期間を短くできる場合がある。
【0111】
なお、すり替えを開始してからすり替えが完了するまでの期間には、停止前ブレーキ制御による制動力の増加が開始されてから要求制動力よりも大きい値に制動力を維持し始めるまでの期間が含まれていないことが好ましい。これによって、制動力減少制御によって制動力の増加を開始する時とすり替え制御を開始する時とを異ならせることができる。
【0112】
・上記実施形態では、停車予測時間Ti1がすり替え所要時間Ti2よりも小さくなった場合に第3すり替え制御を開始するようにしている。第3すり替え制御は、第1すり替え制御および第2すり替え制御と同様にすり替えを始める時を停車距離DISに基づいて設定するようにしてもよい。
【0113】
・
図5に示した比率設定処理のステップS303において設定する偏重配分比率は、基本配分比率と異なっていればよい。基本配分比率に従って摩擦制動力を付与する場合と比較して前輪に付与する摩擦制動力または後輪に付与する摩擦制動力が大きくなるように配分比率を調整することができれば、ブレーキ鳴きが発生しうる制動力の領域を避けて摩擦制動力を付与することができる。
【0114】
・比率設定処理におけるステップS301~S303の処理を省略してもよい。すなわち、第1すり替え制御では基本配分比率に従って摩擦制動力を付与するようにしてもよい。
【0115】
・比率設定処理におけるステップS304~S306の処理を省略してもよい。すなわち、第1すり替え制御では電動駐車制動装置22を作動させないようにしてもよい。
・
図3のステップS110の処理を省略して、比率設定処理を省略することもできる。
【0116】
・比率設定処理においてEPB比率を算出して摩擦制動力の付与に電動駐車制動装置22を使用する場合でも、まず摩擦制動装置21を作動させて摩擦制動力を付与してから、次に電動駐車制動装置22を作動させて電動駐車制動装置22による摩擦制動力を付与することもできる。
【0117】
・
図4に示した停止前ブレーキ制御の処理の流れは一例である。停車距離DISの大きさに応じて制動力を増減し始める時を定める構成に限らない。たとえば、車速に応じて制動力を増減し始める時を定めてもよい。この場合であっても、停止前ブレーキ制御において制動力の減少を開始する時と、すり替え制御を開始する時とがずれるようにするとよい。
【0118】
・上記実施形態における停止前ブレーキ制御では、総制動力を要求制動力よりも大きくする期間を設けているが、総制動力を要求制動力よりも大きくすることは必須の構成ではない。総制動力を要求制動力よりも大きくする処理を省略した場合には、減少判定値th2が停止前ブレーキ制御を開始するためのしきい値となる。この場合には、減少判定値th2が停止前制御開始閾値に対応する。
【0119】
これに対して上記実施形態のように総制動力を要求制動力よりも大きくする処理を行う場合には、増加判定値th1が停止前ブレーキ制御を開始するためのしきい値となる。この場合には、増加判定値th1が停止前制御開始閾値に対応する。
【0120】
・上記実施形態では、車両90の運転者が選択するモードによってすり替え制御を実行する時を変更した。モードの選択は、制動制御装置10が行うこともできる。たとえば、選択部13がモードを選択する機能を備えていてもよい。一例として、選択部13は、バッテリの残量が低下している場合に燃費優先モードを選択するようにしてもよい。モードの選択は、制動制御装置10に限らず、他の制御装置が行うこともできる。
【0121】
・上記実施形態では、第1モードとして燃費優先モードを例示して、第2モードとして快適性優先モードを例示した。第1モードおよび第2モードの内容はこれに限らない。たとえば、回生制動装置23における回転角センサの誤差の補正ができていない場合には、車両90が停止する直前のように車速が低い状態で回生制動を継続することが好ましくないことがある。このような場合には、車速が低くなった際に車両90に付与されている制動力が摩擦制動力であるようにするとよい。すなわち、上記実施形態における快適性優先モードのように、制動を開始してから比較的速い時期にすり替えを行う第2すり替え制御を実行する第2モードを選択するとよい。その他、摩擦材の温度が高い場合には、摩擦制動力を付与する期間を短くするために第1モードを選択することが好ましいことがある。また、バッテリの残量が多い場合には、回生制動力を付与する期間を短くして過度な充電を抑制するために第2モードを選択することが好ましいことがある。上記構成のように、摩擦制動装置21または回生制動装置23の状態に基づいて第1モードまたは第2モードを選択するようにしてもよい。
【0122】
・選択部13が選択可能なモード(制御モード)は、3つ以上であってもよい。この場合であっても、制御モード毎に、すり替え制御開始閾値を設定することが好ましい。
・上記実施形態における停止前ブレーキ制御およびすり替え制御は、車両90が前進している際の制動中に限らず、車両90が後退している際の制動中に適用することもできる。
【0123】
・上記実施形態では、停止前ブレーキ制御およびすり替え制御を実行する例を示したが、停止前ブレーキ制御の実行は必須ではない。停車距離DISに基づいてすり替え制御を開始する構成を備えていれば、車速の検出精度が低下する状況でも、すり替え制御において規定している意図した時期と、すり替え制御の実際の開始時期とのずれが生じにくくなる効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0124】
10…制動制御装置
11…制動調整部
12…停車距離取得部
13…選択部
20…制動装置
21…摩擦制動装置
22…電動駐車制動装置
23…回生制動装置
30…操作量センサ
40…車輪速センサ
50…モード選択部材
60…計測装置
70…支援制御装置
90…車両