(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057873
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】刺繍枠及びミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 39/00 20060101AFI20220404BHJP
D05C 9/04 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
D05B39/00
D05C9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166336
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】長村 崇平
(72)【発明者】
【氏名】日比野 晃大
(72)【発明者】
【氏名】飯田 充弘
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA15
3B150CB04
3B150CE23
3B150EB03
3B150EB09
3B150EB13
(57)【要約】
【課題】支持部材により基枠に対して対向枠が回動可能に支持され、基枠と、対向枠との間に配置された被縫製物を保持する刺繍枠であって、従来よりも刺繍枠に対する被縫製物の配置の自由度を向上した刺繍枠及びミシンを提供すること。
【解決手段】刺繍枠5は、基枠51、対向枠52、装着部55、及び支持部材60を備える。支持部材60は、対向枠52を基枠51に対して支持する。支持部材60は、支持部64、第一部分41、第二部分42、及び第三部分43を備える。第一部分41は、開口511に対し上方側に延びる第一傾斜部分611を有し、支持部64よりも後方において、基枠51又は装着部55と連結する。第二部分42は、支持部64に対し上後方側に延びる第二傾斜部分621を有し、支持部64と連結する。第三部分43は、支持部64よりも上方で、第一部分41と第二部分42とを連結する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が形成された基枠と、
前記基枠に対し第一方向に配置され、前記基枠との間に配置された被縫製物を保持可能な対向枠と、
前記開口に対し、前記第一方向と交差する第二方向において前記基枠と連結し、ミシンに取り外し可能に装着される装着部と、
前記対向枠を前記基枠に対して支持する支持部材であって、
前記対向枠を支持する支持部と、
前記開口に対し、前記第一方向側且つ前記第二方向側に延びる第一傾斜部分を有し、前記支持部よりも前記第二方向において、前記基枠又は前記装着部と連結する第一部分と、
前記支持部に対し、前記第一方向側且つ前記第二方向側に延びる第二傾斜部分を有し、前記支持部と連結する第二部分と、
前記支持部よりも前記第一方向において、前記第一部分と、前記第二部分とを連結する第三部分と
を有する前記支持部材と
を備えることを特徴とした刺繍枠。
【請求項2】
前記第一部分と前記第三部分との連結部分は、前記装着部よりも前記第二方向にあることを特徴とする請求項1に記載の刺繍枠。
【請求項3】
前記第一方向と、前記第二方向とに交差する第四方向において、前記第一部分の前記第二方向とは反対側の第三方向の端部は、前記支持部から離れた位置にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の刺繍枠。
【請求項4】
前記第一方向と、前記第二方向とに交差する第四方向において、前記第一傾斜部分の前記第二方向とは反対側の第三方向の端部は、前記第二傾斜部分の前記第三方向の端部から離れた位置にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の刺繍枠。
【請求項5】
前記第四方向において、前記第一部分の前記第三方向の前記端部は、前記支持部から5mm以上離れた位置にあることを特徴とする請求項3又は4に記載の刺繍枠。
【請求項6】
前記第四方向において、前記第一部分の前記第三方向の前記端部は、前記支持部から、前記装着部の前記第四方向の長さの1/20以上離れた位置にあることを特徴とする請求項3又は4に記載の刺繍枠。
【請求項7】
前記第三部分は、前記第二部分の前記第二方向の端部から前記第二方向に延びる部分を有することを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項8】
前記第三部分は、前記第一部分の前記第二方向の端部から、前記第一方向と、前記第二方向とに交差する第四方向に延びる部分を有することを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項9】
一対の前記第一部分を備え、
前記第二部分は、前記第一方向と、前記第二方向とに交差する第四方向において前記一対の第一部分の間に配置されることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項10】
一対の前記第二部分を備え、
前記一対の第二部分は、前記第四方向において前記一対の第一部分の間に配置されることを特徴とする請求項9に記載の刺繍枠。
【請求項11】
一対の前記第二部分を備え、
前記第一部分は、前記第一方向と、前記第二方向とに交差する第四方向において前記一対の第二部分の間に配置されることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項12】
一対の前記第一部分を備え、
前記一対の第一部分は、前記第四方向において前記一対の第二部分の間に配置されることを特徴とする請求項11に記載の刺繍枠。
【請求項13】
前記対向枠に装着された磁石を更に備え、
前記支持部及び前記対向枠の一方は、前記第一方向に長い長孔を有し、
前記支持部及び前記対向枠の他方は、前記長孔に挿通される軸を有し、
前記支持部は前記対向枠を前記基枠に対して回動可能に支持し、
前記基枠は磁性体を有し、
前記対向枠は、前記対向枠に装着された前記磁石により、前記基枠と共に前記被縫製物を挟持することを特徴とする請求項1から12の何れかの記載の刺繍枠。
【請求項14】
針棒を有し、前記針棒を上下動させて被縫製物に縫目を形成する縫製部と、
ホルダを有し、前記ホルダを前記針棒に対し移動させる移動部と、
前記被縫製物を保持する刺繍枠であって、
開口が形成された基枠と、
前記基枠に対し第一方向に配置され、前記基枠との間に配置された前記被縫製物を保持可能な対向枠と、
前記開口に対し、前記第一方向と交差する第二方向において前記基枠と連結し、前記ホルダに装着される装着部と、
前記対向枠を前記基枠に対して支持する支持部材であって、
前記対向枠を支持する支持部と、
前記開口に対し、前記第一方向側且つ前記第二方向側に延びる第一傾斜部分を有し、前記支持部よりも前記第二方向において、前記基枠又は前記装着部と連結し、前記第一傾斜部分の前記第二方向の端部が前記ホルダよりも前記第二方向に位置する第一部分と、
前記支持部に対し、前記第一方向側且つ前記第二方向側に延びる第二傾斜部分を有し、前記支持部と連結する第二部分と、
前記支持部よりも前記第一方向において、前記第一部分と、前記第二部分とを連結する第三部分と
を有する前記支持部材と
を有する前記刺繍枠と
を備えることを特徴としたミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍枠及びミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
刺繍ミシンに装着可能な刺繍枠が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の刺繍枠は、基枠、対向枠、及び支持部材を備える。支持部材は、支持部材の一端側で対向枠を支持し、支持部材の他端側で基枠に対して回動可能に基枠に支持される。対向枠は、基枠に対して回動可能である。刺繍枠は、基枠と、対向枠とで被縫製物を挟持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記刺繍枠に挟持された被縫製物の一部は、支持部材と基枠との間に配置される。支持部材と基枠との間に配置される被縫製物の長さと厚みとによっては、基枠に対して対向枠を閉じることができず、基枠と、対向枠とで被縫製物を保持できない。このため被縫製物の大きさに対する刺繍模様の配置は、支持部材と基枠との間の空間に応じて制限を受ける。
【0005】
本発明は、支持部材により基枠に対して対向枠が支持され、基枠と、対向枠との間に配置された被縫製物を保持する刺繍枠であって、従来よりも刺繍枠に対する被縫製物の配置の自由度を向上した刺繍枠及びミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る刺繍枠は、開口が形成された基枠と、前記基枠に対し第一方向に配置され、前記基枠との間に配置された被縫製物を保持可能な対向枠と、前記開口に対し、前記第一方向と交差する第二方向において前記基枠と連結し、ミシンに取り外し可能に装着される装着部と、前記対向枠を前記基枠に対して支持する支持部材であって、前記対向枠を支持する支持部と、前記開口に対し、前記第一方向側且つ前記第二方向側に延びる第一傾斜部分を有し、前記支持部よりも前記第二方向において、前記基枠又は前記装着部と連結する第一部分と、前記支持部に対し、前記第一方向側且つ前記第二方向側に延びる第二傾斜部分を有し、前記支持部と連結する第二部分と、前記支持部よりも前記第一方向において、前記第一部分と、前記第二部分とを連結する第三部分とを有する前記支持部材とを備える。
【0007】
第一態様の刺繍枠は、支持部材が支持部、第一部分、第二部分、及び第三部分を備える。刺繍枠は、第二方向において、第一部分と、第二部分との間に被縫製物の端部の一部を従来よりも多く配置可能である。故に刺繍枠は、従来よりも刺繍枠に対する被縫製物の配置の自由度を向上できる。刺繍枠がミシンに装着された場合の、第二方向における縫製可能な領域は、ミシンが装着部を移動可能な範囲と、装着部に対する基枠の開口の位置に応じて決まる。このため、第二方向における縫製可能な領域を広くするには、装着部と基枠の開口とが近い方が好ましい。第一部分が第一方向のみに延びる場合、又は第二方向とは反対側且つ第一方向に延びる場合、第一部分と、第二部分との間の空間を確保する分、装着部と基枠の開口との距離が長くなる。これに対し、本態様の刺繍枠は、第一部分が第一方向且つ第二方向に延びるので、第一部分と、第二部分との間の空間を確保しつつ、装着部と基枠の開口との距離が長くなることを回避できる。
【0008】
本発明の第二態様に係るミシンは、針棒を有し、前記針棒を上下動させて被縫製物に縫目を形成する縫製部と、ホルダを有し、前記ホルダを前記針棒に対し移動させる移動部と、前記被縫製物を保持する刺繍枠であって、開口が形成された基枠と、前記基枠に対し第一方向に配置され、前記基枠との間に配置された前記被縫製物を保持可能な対向枠と、前記開口に対し、前記第一方向と交差する第二方向において前記基枠と連結し、前記ホルダに装着される装着部と、前記対向枠を前記基枠に対して支持する支持部材であって、前記対向枠を支持する支持部と、前記開口に対し、前記第一方向側且つ前記第二方向側に延びる第一傾斜部分を有し、前記支持部よりも前記第二方向において、前記基枠又は前記装着部と連結し、前記第一傾斜部分の前記第二方向の端部が前記ホルダよりも前記第二方向に位置する第一部分と、前記支持部に対し、前記第一方向側且つ前記第二方向側に延びる第二傾斜部分を有し、前記支持部と連結する第二部分と、前記支持部よりも前記第一方向において、前記第一部分と、前記第二部分とを連結する第三部分とを有する前記支持部材とを有する前記刺繍枠とを備える。
【0009】
第二態様のミシンは、支持部材が支持部、第一部分、第二部分、及び第三部分を有する刺繍枠を備える。ミシンは第一態様の刺繍枠の同様の効果を奏する。更にミシンは、第一部分の第二方向の端部がホルダよりも第二方向に位置するので、ホルダに対し第一方向となる空間を、被縫製物の端部の一部を配置するのに有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】刺繍枠5が装着されたミシン1の右側面図である。
【
図2】ホルダ25に装着された刺繍枠ユニット30の斜視図である。
【
図3】枠取付部材31に対して、刺繍枠5を取り外した状態の刺繍枠ユニット30の斜視図である。
【
図4】(A)は四つの押え部材70が基枠51から取り外された状態の刺繍枠5の平面図であり、(B)は四つの押え部材70が基枠51に対して配置された状態の刺繍枠5の平面図である。
【
図5】
図4(B)のB-B線における矢視方向断面図に対応する拡大図である。
【
図6】
図4(B)のC-C線における矢視方向断面拡大図である。
【
図7】(A)は基枠51に対して対向枠52が下降位置且つ閉位置にある時の、
図4(A)のA-A線における矢視方向断面図に対応する図であり、(B)は、基枠51に対して対向枠52が上昇位置且つ閉位置にある時の、
図4(A)のA-A線における矢視方向断面図に対応する図であり、(C)は、基枠51に対して対向枠52が上昇位置且つ開位置にある時の、
図4(A)のA-A線における矢視方向断面図に対応する図である。
【
図8】基枠51と対向枠52の間に被縫製物Cを配置した状態の、刺繍枠5の斜視図である。
【
図11】(A)は作用点部75が待機位置にある状態の
図4(A)のE-E線における押え部材70の矢視方向断面図であり、(B)は作用点部75が作用位置にある状態の
図4(A)のE-E線における押え部材70の矢視方向断面図である。
【
図12】(A)は作用点部75が待機位置にある状態の
図8(A)のG-G線における押え部材70の矢視方向断面図であり、(B)は作用点部75が作用位置にある状態の
図8(A)のG-G線における押え部材70の矢視方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の第一及び第二実施形態を説明する。
図1及び
図2を参照して、多針ミシン(以下、単にミシンという)1、及び刺繍枠5の物理的構成について説明する。以下の説明では、
図1の上側、下側、左側、右側を各々、ミシン1及び刺繍枠5の上側、下側、前側、後ろ側とする。本実施形態において図面中の機械的要素は、実際のスケールを適宜縮尺して示す。
【0012】
図1に示すように、ミシン1は、支持部2と、脚柱部3と、アーム部4とを備える。支持部2は、ミシン1全体を支持する。脚柱部3は、支持部2の後端部から上方へ立設される。アーム部4は、脚柱部3の上端部から前方に延びる。アーム部4の先端にある頭部7には、針棒ケース21が左右方向に移動可能に装着される。針棒ケース21の内部には、上下方向に伸びる10本の針棒22が左右方向に等間隔で配置される。縫製部11は、10本の針棒22のうち、縫製位置にある1本の針棒22を、主軸モータ(図示略)を駆動源として駆動することによって上下方向に摺動させる。針棒22の下端には、縫針23が装着可能である。押え足24は、針棒22の上下方向の摺動と連動して、間欠的に被縫製物C(
図8参照)を下方へ押圧する。被縫製物Cは、例えば、加工布、皮、及び樹脂シート等のシート状である。
【0013】
図1に示すように、アーム部4には、操作部6が設けられる。アーム部4の下方には、脚柱部3の下端部から前方へ延びる筒状のシリンダベッド10が設けられる。シリンダベッド10の上面には、平面視矩形の針板16がある。針板16には、縫針23が挿通する針穴27が設けられる。シリンダベッド10の先端部の内部には、釜(図示略)が設けられる。釜は、下糸(図示略)が巻回されたボビン(図示略)を収納する。シリンダベッド10の内部には、釜駆動機構(図示略)がある。釜駆動機構は、釜を回転駆動する。アーム部4の下方には更に、移動部20のホルダ25、Yキャリッジ26、及びXキャリッジ28(
図2参照)が設けられる。
図2に示すように、移動部20のホルダ25は、枠取付部材31を介して、刺繍枠5を支持する。移動部20は、ホルダ25に装着された刺繍枠5を、固有のXY座標系(刺繍座標系)で示される位置に移動可能である。
図1に示すように、アーム部4の上面の後ろ側には、左右一対の糸駒台12が設けられる。各糸駒台12には、複数の糸立棒14が設けられる。糸立棒14は、糸駒13を支持する。上糸15は、糸駒台12に設置された糸駒13から供給される。上糸15は、糸道経路を経由して、針棒22の下端に装着された各縫針23の目孔(図示略)に供給される。糸道経路は、糸案内17と、糸調子器18と、天秤19とを含む。
【0014】
図1及び
図2を参照して、刺繍枠5に保持された被縫製物Cに縫目を形成する動作について説明する。被縫製物Cを保持した刺繍枠5は、枠取付部材31を介して移動部20のホルダ25に支持される。針棒ケース21が左右に移動することで、10本の針棒22のうち1本が縫製に用いる針棒22として選択される。移動部20によって、刺繍枠5が所定の位置に移動される。縫製部11は、主軸モータを駆動源として、選択された針棒22及びそれに対応する天秤19が上下駆動される。また、主軸モータの回転によって釜駆動機構が駆動され、釜が回転駆動される。このように、縫針23と天秤19と釜とが同期して駆動され、被縫製物Cに縫目が形成される。
【0015】
図2から
図12を参照して、刺繍枠ユニット30について説明する。
図1から
図3に示すように、刺繍枠ユニット30は、ミシン1に取り外し可能に装着される部材である。刺繍枠ユニット30は、刺繍枠5と、枠取付部材31とを備える。刺繍枠5は、基枠51、対向枠52、押え部材70、装着部55、及び支持部材60を備え、基枠51と、対向枠52との間に磁力で被縫製物Cを保持可能である。枠取付部材31は、ミシン1のホルダ25に取り外し可能に装着される。枠取付部材31は、刺繍枠5を取り外し可能に装着する。つまり本実施形態のミシン1は、枠取付部材31を介して、刺繍枠5を装着可能である。
図1及び
図2は、刺繍枠5が枠取付部材31に装着された状態を示す。
図3は、刺繍枠5が枠取付部材31から取り外された状態を示す。以下では、刺繍枠5が枠取付部材31を介してミシン1に装着される時の刺繍枠5の姿勢を基準に、刺繍枠5の構成を説明する。
【0016】
図4に示すように、刺繍枠5は、左右方向の中心線(
図4(A)のA-A線、
図4(B)のB-B線)に対して略左右対称である。基枠51は、平面視上下方向に貫通する開口511が形成された矩形枠状である。基枠51は、少なくとも基枠51の上面の内、磁石80と対向する位置に磁性体を有する。磁性体は、例えば、ステンレス等の金属である。本例の基枠51は、全体が磁性体で形成される。基枠51と対向枠52との間に被縫製物Cが配置された状態では、被縫製物Cは基枠51の上面に載置される。基枠51は、左右一対の屈曲部58を備える。一対の屈曲部58は各々、基枠51の左右両端部が上側に折り曲げられた部位である。基枠51の後端部は、後述の装着部55の取付部材130の前端部に連結する。本例では、基枠51と、取付部材130とがステンレス等の磁性体により一体に形成される。
【0017】
対向枠52は、基枠51に対し上方に配置され、刺繍枠5は、基枠51と対向枠52との間に配置された被縫製物Cを保持できる。後述するように、対向枠52は基枠51に対し回動可能に支持されているが、以下では、対向枠52が基枠51に対して閉じた状態を基準に、対向枠52の構成を説明する。対向枠52は、平面視、上下方向に貫通する開口521が形成された矩形枠状である。基枠51と対向枠52が上下に重ねられた状態で、開口511と、開口521とは互いに平面形状が一致する。
図4(A)に示すように、本例の対向枠52には、上下方向に貫通する二組の一対の孔522、及び二組の一対の孔523が形成される。一方の組の一対の孔522は、対向枠52の左辺部に前後方向に並ぶ。他方の組の一対の孔522は、対向枠52の右辺部に前後方向に並ぶ。各孔522は、平面視前後方向に長い矩形状である。同様に一方の組の一対の孔523は、対向枠52の前辺部に左右方向に並ぶ。他方の組の一対の孔523は、対向枠52の後辺部に左右方向に並ぶ。各孔523は、左右方向に長い矩形状である。
【0018】
対向枠52は、上面520、四つの角部524、壁部525、左右一対の仕切り部526、前後一対の仕切り部527、左右一対の案内部528、前側案内部529、後側案内部530、及び挿通部59を備える。四つの角部524は各々、対向枠52の四隅に配置された平板状であり、上下方向において基枠51と対向する。壁部525は、対向枠52の内周側端部において、対向枠52の上面520から上方に突出する。左右一対の仕切り部526は各々、対向枠52の左辺部の前後方向の中心部と、右辺部の前後方向の中心部とにおいて、左右方向に延びる、上面520よりも上方に突出する凸部である。前後方向において、各仕切り部526は、対応する一対の孔522の間に設けられる。前後一対の仕切り部527は各々、対向枠52の前辺部の左右方向の中心部と、後辺部の左右方向の中心部とにおいて前後方向に延びる、上面520よりも上方に突出する凸部である。左右方向において、各仕切り部527は、対応する一対の孔523の間に設けられる。
【0019】
左右一対の案内部528は各々、対向枠52の左右両端部おいて前後方向に延びる。前側案内部529は、対向枠52の前端部において左右方向に延びる。左右一対の案内部528及び前側案内部529は、開口521から離れる側程上方に傾斜する。後側案内部530は、対向枠52の後端部において左右方向に延び、対向枠52の上面520から上方に立設する。左辺部の一対の孔522は、左右方向において左側の案内部528と壁部525との間に形成される。右辺部の一対の孔522は、左右方向において右側の案内部528と壁部525との間に形成される。前辺部の一対の孔523は、前側案内部529と、壁部525との間に形成される。後辺部の一対の孔523は、後側案内部530と、壁部525との間に形成される。
【0020】
挿通部59は、後側案内部530に設けられ、左右方向に貫通し、上下方向に長い長孔591を有する。
図5に示すように、挿通部59は、基枠51に対して左右方向、前後方向に対向枠52を位置決めする。
【0021】
図4に示すように、四つの押え部材70は、基枠51との間に配置された被縫製物Cを磁力で基枠51側に押える。四つの押え部材70の形状は、互い同じであるので、基枠51の右前の角部524を含む位置に配置される押え部材70について、基枠51に対して配置される場合を基準に押え部材70の構成を説明し、他の三つの押え部材70の説明は省略する。押え部材70は、本体部71及びレバー81を備える。本体部71は、平面視Y字状であり、一対の収容部79、一対の磁石80、及び支持部72を備える。一対の収容部79は各々、
図4(A)のE-E線に対して対称に設けられる、箱状である。E-E線に対し左方の収容部79は、左右方向に長い直方体状であり、E-E線に対し右方の収容部79は、前後方向に長い直方体状である。
図10に示すように、各収容部79は、上部791及び挿通部792を備える。挿通部792は上部791の下面793から下方に突出した部分である。
図9に示すように、背面視において挿通部792の輪郭は、上部791輪郭の内側に配置される。挿通部792の下面は、基枠51に対向する対向面82である。各収容部79の対向面82には、収容部79の長手方向に延びる一対のスリット83が形成される。一対のスリット83は、収容部79の短手方向に互いに離隔して並ぶ。
【0022】
押え部材70が基枠51に配置される場合、一対の収容部79の挿通部792は各々、押え部材70に対向枠52の対応する角部524に隣接する孔522、523に挿通される。上部791の下面793は、対向枠52の上面520に当接する。E-E線に対し左方の収容部79は、前後方向において、前側案内部529と、壁部525との間に配置され、左右方向において、対向枠52の前辺部の仕切り部527と、対向枠52の右前部の角部524との間に配置される。E-E線に対し右方の収容部79は、左右方向において、右側案内部528と、壁部525との間に配置され、前後方向において、対向枠52の右辺部の仕切り部526と、対向枠52の右前部の角部524との間に配置される。
【0023】
図6に示すように、一対の磁石80は各々、直方体状の磁石であり対応する収容部79の上部791と挿通部792とに亘って収容される。押え部材70は、磁石80による磁束を導くヨークを備えてもよい。磁石80は収容部79の対向面82に挿通された、上下方向に延びる螺子84により、収容部79に固定される。
【0024】
図4(A)に示すように、支持部72は、E-E線を中心として、E-E線に沿って延びる。支持部72は、E-E線に対し左方の収容部79の右端と、E-E線に対し右方の収容部79の前端との各々に連結する。
図9及び
図10に示すように、支持部72は、当接部78、一対の支持板部85、回動軸76、付勢部材77、及び凸部86を備える。当接部78は、本体部71の内、磁石80に対し対向面82とは反対側、つまり、上側に設けられる。上下方向において、当接部78の上面は、一対の収容部79の上面よりも上方にある。一対の支持板部85は各々、回動軸76(回動中心R)の延設方向Pにおける、当接部78の両端部と、回動軸76の延設方向Pにおける当接部78の中心との間から下方に延びる。一対の支持板部85は各々、右前部側程、当接部78から下方に突出する量が小さい。一対の支持板部85には各々厚み方向に貫通し、回動軸76が挿通される孔が形成される。回動軸76は、E-E線とは垂直且つ、基枠51の延設面に平行な方向(延設方向P)に延びる。回動軸76は、レバー81の回動中心Rを軸芯とする円柱状である。回動軸76には付勢部材77が挿通される。付勢部材77は、例えば、ねじりバネである。凸部86は、当接部78の下面の内、回動軸76の延設方向Pの中心部から下方に突出する。凸部86は、当接部78と、レバー81との間に、ユーザの指等の操作体が侵入することを防ぐ。
【0025】
レバー81は、
図4(A)E-E線に沿って延びる板状の部材である。
図9から
図12に示すように、レバー81は、一対の支持部74、作用点部75、及び操作部73を備える。レバー81には厚み方向に貫通する孔88が形成される。一対の支持部74は、本体部71の当接部78の下方に回動軸76の軸芯である回動中心R周りに回動可能に支持される。一対の支持部74は、レバー81の延設方向Jにおいて、作用点部75と操作部73との間に設けられた、レバー81の回動軸76の延設方向Pの両端部を上方に折り曲げた部分である。レバー81の延設方向Jは、回動軸76の延設方向Pと直交する。一対の支持部74は各々、右前部側程、作用点部75と操作部73との間の部分87から上方に突出する量が小さい。一対の支持部74には回動軸76の延設方向Pに貫通し、回動軸76が挿通される孔が形成される。回動中心Rは一対の支持部74に設けられた孔を通る。レバー81の延設方向Jにおいて、回動中心Rから支持部74の操作部73側の端部までの距離は、回動中心Rから支持部74の作用点部75側の端部までの距離よりも長い。回動軸76の延設方向Pにおいて、一対の支持部74の間に、支持部72の一対の支持板部85が配置された状態で、回動軸76は一対の支持部74の孔と、一対の支持板部85との各々に挿通される。これによりレバー81は本体部71に回動可能に支持される。
【0026】
作用点部75は、レバー81の回動中心R(回動軸76)に対しレバー81の一端側(左後側)に設けられる。作用点部75は、押え部材70が基枠51に配置された場合に、対向面82よりも基枠51から離れる上側の待機位置と、待機位置よりも基枠51に近づく下側の作用位置とに揺動可能である。作用点部75は、レバー81の一端を上方に折り曲げられた部分の角部である。押え部材70が基枠51に配置される場合、作用点部75は、対向枠52が有する四つの角部524の内の対応する角部524に対向する。付勢部材77は、レバー81を作用点部75が作用位置から待機位置に揺動する方向に付勢する。故に外部からレバー81に力が加えられていない状態では、作用点部75は待機位置に位置する。
【0027】
図11に示すように、操作部73は、レバー81の延設方向Jにおいて、レバー81の回動中心R(回動軸76)に対し一端側と反対側のレバー81の他端側(右前側)に設けられる。レバー81の延設方向Jにおいて、操作部73は、当接部78よりもレバー81の回動中心R(回動軸76)に対し他端側に突出する。操作部73は、ユーザにより上側に移動された場合に、レバー81が回動軸76の回動中心Rを中心に回動し、作用点部75を作用位置から待機位置に移動できる。操作部73は、回動中心R(回動軸76)と操作部73との間の部分87に対し下側に屈曲する。
図11(A)に示すように、上下方向において、作用点部75が待機位置にある時、操作部73の下端部は対向面82よりも下側に位置する。
図4(B)に示すように、押え部材70が基枠51に対して配置された状態で、作用点部75が待機位置にある時、平面視において、操作部73は基枠51及び対向枠52に対し、開口511側とは反対側に位置する。
図9に示すように、孔88はレバー81の延設方向Jの略中心部に形成される。孔88は当接部78の下面の凸部86(
図10参照)と対向する。
【0028】
回動軸76の延設方向Pにおける、支持部72に対し左側の磁石80の延設範囲は範囲Q1であり、支持部72に対し後ろ側の磁石80の延設範囲は範囲Q2であり、レバー81の延設範囲は範囲Q3である。回動軸76の延設方向Pにおいて、範囲Q1からQ3は互いに異なり、範囲Q3は、範囲Q1と、Q2との間にある。つまり、レバー81は、回動軸76の延設方向Pにおいて、一対の磁石80の間に配置される。
【0029】
レバー81の回動中心R(回動軸76)に対し一端側から他端側まで延びるレバー81の延設方向Jにおける、操作部73の延設範囲は範囲K1であり、支持部74の延設範囲は範囲K2であり、磁石80の延設範囲は範囲K3である。レバー81の延設方向Jはレバー81の長手方向である。作用点部75は範囲K3内にある。故に、レバー81の延設方向Jにおいて、作用点部75と、操作部73と、支持部74との内、少なくとも操作部73と支持部74とは、磁石80とは異なる位置にある。
【0030】
図9及び
図11に示すように、本例のレバー81の延設方向Jにおいて、レバー81の回動中心R(回動軸76)に対し他端側のレバー81の端から、回動軸76までの第一距離B1は、レバー81の回動中心R(回動軸76)に対し一端側のレバー81の端から、回動軸76までの第二距離B2よりも長い。本例の第一距離B1は、第二距離B2の1.5倍以上である。
【0031】
図1から
図3に示すように、装着部55は、開口511に対し、後方において基枠51と連結し、ミシン1に取り外し可能に装着される。装着部55は、後述する所定の装着位置において、ミシン1が有する枠取付部材31によって取り外し可能に装着される。
図3に示すように、装着部55は、取付部材130、位置決め部材140、及び左右一対の連結部56を有する。取付部材130は、枠取付部材31によって支持される部位である。取付部材130は刺繍枠5の後部に設けられる。取付部材130は左右一対の挿通部134、及び凸部137を備える。左右一対の挿通部134は、取付部材130の左右方向の端部を上方に折り曲げることによって形成されており、左右方向に貫通する孔138を有する。凸部137は、取付部材130の後部の左右方向において中央付近において下方へ突出する。取付部材130に対する凸部137の左右方向における位置は、刺繍枠5に固有の位置に設定される。位置決め部材140は、枠取付部材31に対する取付部材130の装着位置を規定する部材である。位置決め部材140は、左右方向に延びる、可撓性を有する板バネ部材である。位置決め部材140は、左右一対の摘み部142を有する。左右一対の摘み部142は各々、位置決め部材140の左端及び右端に設けられる。一対の摘み部142は各々、ユーザの操作によって、位置決め部材140の上下方向の位置を移動させることができる部位である。
図2及び
図3に示すように、一対の摘み部142は各々、取付部材130の孔138に挿通される。左右一対の連結部56は各々、左右方向において、左右一対の挿通部134の間、且つ、前後方向において位置決め部材140の後方において、取付部材130から上方に延びる。
【0032】
図2から
図4に示すように、支持部材60は、対向枠52を基枠51に対して回動可能に支持する。支持部材60は、左右一対の第一部材61、左右一対の第二部材62、及び軸63を備える。以下では、左右一対の第一部材61及び左右一対の第二部材62の内、右側の第一部材61及び第二部材62の構成を説明し、左側の第一部材61及び第二部材62の構成は説明を省略する。
【0033】
図4に示すように、第一部材61は、平面視逆U字状に屈曲された板状である。
図2から
図4に示すように、第一部材61は、第一部分41、及び第三部分43を備える。第一部分41は、第一傾斜部分611と、連結部614とを有する。第一傾斜部分611は、基枠51の開口511に対し、上方側且つ後方側(つまり上斜め後方)に延びる。連結部614は、後述の支持部64よりも後方において、装着部55と連結する。連結部614は、第一部材61の右前端部であり、螺子601により装着部55の右側連結部56に固定される。第三部分43は、基枠51の延設面(水平面)に平行、且つ左右方向に延びる部分612と、基枠51の延設面に平行、且つ前後方向に延びる部分613とを備える。部分612は、第一部分41に連結する。部分613は、後述の第二部分42に連結する。つまり、第三部分43は、支持部64よりも上方において、第一部分41と、第二部分42とを連結する。本例の第一部分41と第三部分43との連結部分44は、第一傾斜部分611の後端、つまり、第一部材61の右後端である。
図1及び
図5に示すように、連結部分44は、装着部55よりも後方にある。刺繍枠5がミシン1に装着された状態では、連結部分44の後端部はホルダ25よりも後方に位置する。
【0034】
図6に示すように、第二部材62は、右側面視鈍角に屈曲した板状の部材である。
図2から
図4に示すように、第二部材62は、第二部分42及び支持部64を備える。第二部分42は、第二傾斜部分621及び連結部分622を有し、第二部分42の前端部は支持部64と連結する。第二傾斜部分621は、支持部64に対し、上方側且つ後方側(つまり上斜め後方)に延びる。
図1に示すように、第一傾斜部分611及び第二傾斜部分621は、右側面視、ミシン1の頭部7の後端部の形状と略平行に、基枠51に対して交差する方向に傾斜している。
図2から
図4に示すように、連結部分622は、第二部分42の後端から後方、且つ、基枠51の延設面に対して略平行に延びる。左右方向において連結部分622は第一部材61の部分613に対し、第一傾斜部分611側(右側)に配置され、連結部分622は、螺子602、603によって、部分613の右面に固定される。これにより、第二部材62は、第一部材61に固定される。一対の第二部分42は、左右方向において一対の第一部分41の間に配置される。
【0035】
支持部64は、第二部材62の前端部であり、対向枠52を支持する。左側の第二部材62の支持部64は左右方向に延びる軸65の左端と連結し、右側の支持部64は軸65の右端と連結する。
図7に示すように、軸65は、対向枠52の挿通部59に形成された長孔591に挿通される。支持部64は、対向枠52を、基枠51に対して、
図7(A)に示す下降位置と、
図7(B)に示す上昇位置とに上下方向に移動可能に支持する。
図7(A)に示すように、基枠51に対して対向枠52が下降位置に配置された場合、基枠51の上面と、対向枠52の下面とは、互いに当接する。
図7(B)に示すように、基枠51に対して対向枠52が上昇位置且つ閉位置に配置された場合、基枠51と、対向枠52とは互いに平行に配置され、且つ、基枠51の上面と、対向枠52の下面とは、互いに離隔する。更に支持部64は対向枠52を基枠51に対して、
図7(B)に示す閉位置と、
図7(C)に示す開位置とに回動可能に支持する。
【0036】
左右方向において、第一部分41の前端部は、支持部64から離れた位置にあることが好ましい。左右方向において、第一傾斜部分611の前端部は、第二傾斜部分621の前端部から離れた位置にあることが好ましい。左右方向において、第一部分41の前端部は、支持部64から5mm以上離れた位置にあることが好ましい。左右方向において、第一部分41の前端部は、支持部64から、装着部55の左右方向の長さの1/20以上離れた位置にあることが好ましい。
図4(B)に示すように、本例の刺繍枠5では、左右方向において、第一傾斜部分611と、第二傾斜部分621とは互いに離れており、略平行に前後方向に延びる。一例として、装着部55の左右方向の長さD4は、160(mm)であり、左右方向における第一部分41の前端部から支持部64までの距離D1は、5mm以上且つ装着部55の左右方向の長さの1/20以上の条件を満たす、22.2(mm)である。前後方向において第一傾斜部分611の前端部と、第一傾斜部分611に対応する支持部64とは、距離D2だけ離れている。第一傾斜部分611の前端部と、第一傾斜部分611に対応する支持部64とは、距離D2よりも長い距離D3だけ離れている。
図6に示すように、第一傾斜部分611、第二傾斜部分621、連結部分622、及び装着部55によって囲まれる空間Wは、右側面視平行四辺形状である。
【0037】
軸63は、第一部材61の後端部及び第二部材62の後端部、つまり、第一傾斜部分611の後端部、連結部分622の後端部、及び部分613の後端部に形成された孔に挿通され、第一部材61と第二部材62とを位置決めする。
【0038】
図2及び
図3に示すように、枠取付部材31は、取付部32及び切替プレート33を主に備える。取付部32には、刺繍枠5を装着可能である。取付部32は、取付部材34及び押圧部材35を主に備える。取付部材34は、左右方向に延びる板部材である。取付部材34は、枠取付部材31を
図2に示すミシン1のホルダ25に固定すると共に、切替プレート33の移動を案内する。押圧部材35は、平面視左右方向に長い矩形状である。刺繍枠5の取付部材130が装着位置に位置する場合、押圧部材35は取付部材130の上側に配置され、取付部材130を取付部材34側(下側)に付勢する。取付部材130が装着位置に位置する状態で、摘み部142が操作された場合、押圧部材35は更に、位置決め部材140を取り外し方向に付勢する。取り外し方向は、取付部材130を装着位置から移動させる際の取付部材130の移動方向である。本実施形態の取り外し方向は、装着方向と反対の方向であり、後ろから前に向かう方向である。押圧部材35は、貫通孔の各々に挿通された螺子によって、取付部材34に固定される。
【0039】
切替プレート33は、刺繍枠5の取付部材130を取付部32に装着する動作に連動して右方向に移動する移動部材であって、刺繍枠5の種類に応じて移動量が設定された部材である。切替プレート33は、付勢部材(図示略)によって、左方に付勢される。切替プレート33は、左後端部から上方にフック状に延設された係合部37を備える。係合部37は、回転型ポテンショメータ(図示略)が有する検出子と係合する。検出子(図示略)は、切替プレート33の移動量に応じて回転する。したがって、回転型ポテンショメータは、切替プレート33の移動量を、検出子の回転量に基づき検出可能である。ミシン1は、回転型ポテンショメータが検出した検出子の回転量に基づき、刺繍枠5の種類を検出可能である。
【0040】
図3及び
図4を参照して、ミシン1に刺繍枠5を装着する操作を説明する。ユーザは、取付部材34の孔(図示略)と、ホルダ25の孔(図示略)とに一対の摘み螺子39を挿通し、締付けることで、枠取付部材31をホルダ25に取り付ける。ミシン1に装着された枠取付部材31に刺繍枠5を装着する場合、ユーザはまず、刺繍枠5を装着方向(後方)に水平移動させる。凸部137は取付部材34に案内されながら所定の位置に収容される。このとき、取付部材34に対する凸部137の位置に応じて、切替プレート33が右方に移動する。ユーザは刺繍枠5を更に装着方向に水平移動させると、取付部材130の水平方向の移動が規制され、刺繍枠5の水平方向の位置が固定される。取付部材130は、押圧部材35によって上方から押さえられている為、取付部材130は、押圧部材35と取付部材34とで挟持される。取付部材130は、上下方向の位置が固定される。以上の動作によって、刺繍枠5がミシン1の枠取付部材31に装着される。ミシン1は、切替プレート33の移動量を検出子の回転量によって検出することによって、刺繍枠5の種類を検出可能である。
【0041】
刺繍枠5をミシン1に装着された枠取付部材31から取り外す場合は、ユーザは摘み部142を上方へ持ち上げる。摘み部142が上方に持ち上げられると、位置決め部材140が撓んで、押圧部材35から取り外し方向の力を受ける。取付部材130は水平方向に移動可能となり、ユーザは、押圧部材35から受ける取り外し方向の力を利用して、刺繍枠5を取り外し方向にスムーズに水平移動させることができる。即ち、ユーザは、刺繍枠5を装着位置から容易に取り外すことができる。
【0042】
図4、
図7、及び
図8を参照し、刺繍枠5に被縫製物Cを保持させる操作を説明する。ユーザが刺繍枠5に被縫製物Cを配置する場合、
図4(A)のように対向枠52から押え部材70が退避した状態で、ユーザは、対向枠52を
図7(A)の下降位置から、
図7(C)の上昇位置且つ開位置に移動させる。ユーザは、対向枠52と、基枠51との間に被縫製物Cを配置する。
図8に示すように、ユーザは、対向枠52と、基枠51との間に配置されない被縫製物Cの端部の内、開口511よりも後方にある端部を、右側面視において、支持部材60の第一傾斜部分611、第二傾斜部分621、連結部分622、及び装着部55によって囲まれる空間Wに適宜配置する。
図8では、開口511よりも後方にある被縫製物Cの端部が、蛇腹状に折りたたまれて空間Wに配置されているが、例えば、被縫製物Cの端部をロール状に丸めた状態で空間Wに配置されてもよい。空間Wを満たすように被縫製物Cの端部が空間Wに配置された場合、空間Wに配置された部分の被縫製物Cは、第一傾斜部分611、第二傾斜部分621、連結部分622、及び装着部55と当接する。このとき、空間Wの内の下方部分では、被縫製物Cの端部の後端部は、第一部分41の前端部と当接し、被縫製物Cの端部の前端部は、支持部64の後端と当接する。このため、
図4(B)に例示するように、空間Wの内の下方部分では、被縫製物Cは、前後方向において、曲線L1と曲線L2との間の範囲に配置される。曲線L1は、第一部分41の前端部と被縫製物Cとが当接する位置を通る。曲線L2は、支持部64の後端と被縫製物Cとが当接する位置を通る。曲線L1と曲線L2との前後方向の間隔は、第一部分41の前端部と支持部64との距離D2よりも長い。ユーザは、基枠51に対して対向枠52を閉じる。ユーザは四つの押え部材70の一対の収容部79の挿通部792を対応する孔522、523に挿通させ、押え部材70を基枠51に対して配置する。四つの押え部材70は、対向枠52の内の装着位置に応じて、仕切り部526、527、左右一対の案内部528、前側案内部529、及び後側案内部530に案内され、挿通部792が、対応する孔522、523に挿通される。刺繍枠5は、本体部71の少なくとも一部が対向枠52の孔522、523に挿通された押え部材70と、基枠51との間に被縫製物Cが配置された配置状態で、押え部材70は被縫製物Cを磁力で基枠51側に押える。
【0043】
ユーザは、押え部材70が基枠51に配置された状態から、押え部材70を取り外す場合、押え部材70の操作部73と当接部78とに、指等の操作体を掛け、操作部73を当接部78側(上側)に移動させる。操作部73は、押え部材70が基枠51に配置された状態で操作部73が上側に操作されることに応じて、付勢部材77の付勢力に抗して作用点部75を
図11(A)及び
図12(A)に示す待機位置から
図11(B)及び
図12(B)に示す作用位置に移動させる。操作部73は、ユーザにより上側に移動された場合に、レバー81の内の、回動中心R(回動軸76)と操作部73との間の部分87が当接部78に当接することで移動が規制され、移動を停止する。当接部78の下面の凸部86は、操作部73への操作に応じてレバー81が回動する過程でレバー81の孔88に挿通される。作用点部75は、押え部材70が基枠51に配置された配置状態で、対向枠52と対向し、操作部73が上側に操作されることに応じて、対向枠52と当接し、本体部71を上側に移動させる。より詳細には、作用点部75は、待機位置から作用位置に移動する途中で、角部524の内の対応する角部524に当接し、作用点部75を作用点として、てこの原理で支持部72を上方に持ち上げる。本例のレバー81は、第一距離B1が第二距離B2よりも長い。故にユーザは、比較的少ない力で支持部72を上方に持ち上げることができる。これにより、
図12(B)に示すように、操作部73は、磁石80の磁力に抗して本体部71の少なくとも一部、即ち、支持部72及び一対の収容部79の内の、支持部72に連結する部分を上側に移動させる。操作部73の上面は、レバー81が当接部78に当接した状態で、当接部78の上面と平行に、略面一となるように延びる。ユーザは、一対の収容部79の内、支持部72から離れる側の端部、つまり、支持部72に対し後方の収容部79の左後側の下端部91及び支持部72に対し左方の収容部79の左後側の下端部92(
図9及び
図11参照)を作用点として押え部材70を上方に持ち上げることで、本体部71を摘まんで押え部材70を取り外す場合に比べ少ない力で、基枠51から押え部材70を取り外すことができる。
【0044】
上記実施形態において、ミシン1、針棒22、縫製部11、移動部20、及びホルダ25は各々、本発明のミシン、針棒、縫製部、移動部、及びホルダの一例である。刺繍枠5、基枠51、開口511、対向枠52、支持部材60、第一部分41、第二部分42、第三部分43、装着部55、支持部64、磁石80、第一傾斜部分611、及び第二傾斜部分621は各々、本発明の刺繍枠、基枠、開口、対向枠、支持部材、第一部分、第二部分、第三部分、装着部、支持部、磁石、第一傾斜部分、及び第二傾斜部分の一例である。
【0045】
上記実施形態の刺繍枠5は、基枠51、対向枠52、装着部55、及び支持部材60を備える。基枠51には、開口511が形成される。対向枠52は、基枠51に対し上方に配置され、基枠51との間に配置された被縫製物Cを保持できる。装着部55は、開口511に対し、上方と交差する後方において基枠51と連結し、ミシン1に取り外し可能に装着される。支持部材60は、対向枠52を基枠51に対して回動可能に支持する。支持部材60は、支持部64、第一部分41、第二部分42、及び第三部分43を備える。支持部64は、対向枠52を支持する。第一部分41は、開口511に対し、上方側且つ後方側に延びる第一傾斜部分611を有し、支持部64よりも後方において、装着部55と連結する。第二部分42は、支持部64に対し、上方側且つ後方側に延びる第二傾斜部分621を有し、支持部64と連結する。第三部分43は、支持部64よりも上方において、第一部分41と、第二部分42とを連結する。刺繍枠5がミシン1に装着された状態では、第一傾斜部分611の後端部はホルダ25よりも後方に位置する。故に、刺繍枠5は、前後方向において、第一部分41と、第二部分42との間に被縫製物Cの端部の一部を従来よりも多く配置可能である。このため、ミシン1は刺繍枠5を利用することで、例えば、ベッドカバー等の比較的大きな被縫製物Cの中央部に刺繍縫製できる。故に刺繍枠5は、従来よりも刺繍枠に対する被縫製物Cの配置の自由度を向上できる。刺繍枠5がミシン1に装着された場合の、後方における縫製可能な領域は、ミシン1が装着部55を移動可能な範囲と、装着部55に対する基枠51の開口511の位置に応じて決まる。このため、前後方向における縫製可能な領域を広くするには、装着部55と基枠51の開口511とが近い方が好ましい。第一部分41が上方のみに延びる場合、又は後方とは反対側且つ上方に延びる場合、第一部分41と、第二部分42との間の空間を確保する分、装着部55と基枠51の開口511との距離が長くなる。これに対し、本態様の刺繍枠5は、第一部分41が上方且つ後方に延びるので、第一部分41と、第二部分42との間の空間を確保しつつ、装着部55と基枠51の開口511との距離が長くなることを回避できる。ミシン1は、第一部分41の後端部がホルダ25よりも上方且つ後方に位置するので、ホルダ25に対し上方となる空間を、被縫製物Cの端部の一部を配置するのに有効に活用できる。
【0046】
刺繍枠5の第一部分41と第三部分43との連結部分44は、装着部55よりも後方にある。刺繍枠5は、第一部分41の後端部は、装着部55よりも後方にない場合に比べ、第一部分41と、第二部分42との間の空間を確保しつつ、装着部55と基枠51の開口511との距離が長くなることを回避できる。
【0047】
左右方向において、第一部分41の前端部は、支持部64から離れた位置にある。第一部分41の前端部が、支持部64と重なる位置にある場合の、前後方向における第一部分41の前端部と支持部64との距離は距離D2である。上記実施形態の刺繍枠5の第一部分41の前端部と支持部64との距離D3は距離D2よりも長い。つまり、刺繍枠5は、左右方向において、第一部分41の前端部が、支持部64と重なる位置にある場合に比べ、第一部分41の前端部と支持部64との間の距離を、長くすることができる。これにより刺繍枠5は、第一部分41の前端部が、支持部64と重なる位置にある場合に比べ、第一部分41と、第二部分42との間の空間を確保しやすく、第一部分41と、第二部分42との間に被縫製物Cの端部の一部をより多く配置可能である。
【0048】
左右方向において、第一傾斜部分611の前端部は、第二傾斜部分621の前端部から離れた位置にある。刺繍枠5は、左右方向において、第一傾斜部分611の前端部が、第二傾斜部分621の前端部と重なる位置にある場合に比べ、第一傾斜部分611の前端部と第二傾斜部分621の前端部との間の距離を、長くすることができる。これにより刺繍枠5は、第一傾斜部分611の前端部が、第二傾斜部分621の前端部と重なる位置にある場合に比べ、第一傾斜部分611と、第二傾斜部分621との間の空間を確保しやすく、第一部分41と、第二部分42との間に被縫製物Cの端部の一部をより多く配置可能である。
【0049】
左右方向において、第一部分41の前端部は、支持部64から5mm以上離れた位置にある。刺繍枠5は、左右方向において、第一部分41の前端部が、支持部64から5mm未満の位置にある場合に比べ、第一部分41の前端部と支持部64との間の距離を、長くすることができる。これにより刺繍枠5は、左右方向において、第一部分41の前端部が、支持部64と重なる位置にある場合に比べ、第一部分41と、第二部分42との間において、被縫製物Cの端部を左右方向に屈曲させて配置させやすい。
【0050】
左右方向において、第一部分41の前端部は、支持部64から、装着部55の左右方向の長さの1/20以上離れた位置にある。刺繍枠5は、左右方向において、第一部分41の前端部が、支持部64から、装着部55の左右方向の長さの1/20未満離れた位置にある場合に比べ、第一部分41の前端部と支持部64との間の距離を、長くすることができる。これにより刺繍枠5は、第一部分41の前端部が、支持部64と重なる位置にある場合に比べ、第一部分41と、第二部分42との間において、被縫製物Cの端部を左右方向に屈曲させて配置させやすい。
【0051】
支持部材60は、第二傾斜部分621の後端部から後方に延びる連結部分622を有する。刺繍枠5は、支持部材60が第二部分42の後端部から後方に延びる部分を有しない場合に比べ、基枠51よりも上方の空間を有効に活用して、第一部分41と第二部分42との間に被縫製物Cの端部の一部を配置できる。
【0052】
第三部分43は、第一部分41の後端部から、左右方向に延びる部分を有する。刺繍枠5は、第三部分43が第一部分41の後端部から左右方向に延びる部分を有しない場合に比べ、基枠51よりも上方の空間を有効に活用して、第一部分41と第二部分42との間に被縫製物Cの端部の一部を配置できる。
【0053】
刺繍枠5は、一対の第一部分41を備え、第二部分42は、左右方向において一対の第一部分41の間に配置される。刺繍枠5の支持部材60は、第一部分41が一つである場合に比べ、安定して対向枠52を基枠51に対して回動可能に支持できる。
【0054】
刺繍枠5は、一対の第二部分42を備え、一対の第二部分42は、左右方向において一対の第一部分41の間に配置される。刺繍枠5の支持部材60は、第二部分42が一つである場合に比べ、安定して対向枠52を基枠51に対して回動可能に支持できる。
【0055】
本発明の刺繍枠及びミシンは、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。刺繍枠5、刺繍枠ユニット30、及びミシン1の構成は適宜変更してよい。ミシン1が備える針棒22の数は1以上であればよい。ミシン1は1種類以上の刺繍枠を装着可能であればよい。刺繍枠5は、ミシン1のホルダ25に直接装着される構成であってもよい。刺繍枠5が枠取付部材31を介してミシン1に取り付けられる場合、枠取付部材31の構成は適宜変更されてよい。
【0056】
刺繍枠5の大きさ、平面形状、及び厚み等は適宜変更されてもよい。基枠51と対向枠52との各々は内縁が円状、楕円状等、多角形状以外の形状でもよい。基枠51と対向枠52との各々の内縁が、多角形状である場合、三角形状、矩形状、及び五角形状等、正方形状以外の形状でもよい。
【0057】
支持部材60は、対向枠52を基枠51に対して支持できればよく、刺繍枠5の支持部材60の形状、構成、及び配置は適宜変更されてよい。例えば、支持部材60は、一対の第一部材61及び一対の第二部材62が一体に形成されてもよい。支持部材60は、対向枠52を基枠51に対して回動しないように支持してもよい。第一部分41における第一傾斜部分611の配置、長さ、及び延設方向等は適宜変更されてよい。同様に第二部分42における第二傾斜部分621の配置、長さ、及び延設方向等は適宜変更されてよい。例えば、第二部分42は、連結部分622を備えなくてもよいし、第二傾斜部分621の前端から下方又は前方に延びる部分を備えてもよい。第一部分41の前端部と、支持部64との左右方向の位置は互いに同じであってもよい。第一傾斜部分611の前端と、第二傾斜部分621の前端とは左右方向の位置は互いに同じであってもよい。第一傾斜部分611と、第二傾斜部分621とは互いに交差する方向に延びてもよい。第三部分43は左右方向に延びる部分612、前後方向に延びる部分613の少なくとも何れかを有さなくてもよく、例えば、第一部分41と第二部分42とが直接連結する部分であってもよい。第一傾斜部分611の後端と第二傾斜部分621の後端とは前後方向の位置が互いに同じであってもよい。第一部分41と第三部分43との連結部分44は、装着部55よりも前方にあってもよい。支持部材60は支持部64よりも後方において基枠51に連結してもよい。支持部64は、対向枠52を基枠51に対して回動不能に支持し、第二部材62が第一部材61に回動可能に支持されることで、支持部材60が、対向枠52を基枠51に対して回動可能に支持してもよい。支持部材60は対向枠52を基枠51に対して変位可能(接離可能)に支持すればよい。変位とは、対向枠52と、基枠51との相対位置が変更されることをいい、回動及び移動を含む概念である。詳細には、支持部材60は、対向枠52を基枠51に対して回動可能に支持してもよいし、対向枠52を基枠51に対して基枠51の厚み方向に移動可能に支持してもよいし、上記実施形態の刺繍枠5のように、対向枠52を基枠51に対して回動可能且つ基枠51の厚み方向に移動可能に支持してもよい。
【0058】
以下、刺繍枠5と支持部材60の構成が互いに異なる刺繍枠100、200の構成を順に説明する。
図13及び
図14では、上記実施形態の刺繍枠5と同様の構成には同じ符号を付与している。
図13に示すように、変形例の刺繍枠100は、刺繍枠5の支持部材60に変えて、支持部材160を備え、基枠51、対向枠52、及び
図13では図示しない押え部材70の構成は、上記実施形態の刺繍枠5と同様である。刺繍枠100の支持部材160は、平面視逆U字状の第一部材161、右側面視鈍角に屈曲した板状の第二部材162、及び第三部分163を備える。第一部材161は、左右両端部に、刺繍枠5と同様の一対の第一部分41を有する。第二部材162は、支持部164及び第二部分170を備える。支持部164は、対向枠52を基枠51に対して接離可能且つ回動可能に支持する。第一部分41は、開口511に対し、上後方に延びる第一傾斜部分611を有し、支持部164よりも後方において、装着部55と連結する。第二部分170は、支持部164に対し、上後方に延びる第二傾斜部分171と、第二傾斜部分171の後端から後方に延びる部分172とを有する。左右方向において、第二部分170は、一対の第一部分41の間に位置する。第二部分170の前端は支持部164と連結する。第三部分163は、支持部164よりも上方において、一対の第一部分41と、第二部分170とを連結する。
【0059】
図14に示すように、変形例の刺繍枠200は、刺繍枠5の支持部材60に替えて支持部材260を備える点で刺繍枠5の構成と互い異なる。変形例の刺繍枠200は、基枠51、対向枠52、及び押え部材70に替えて、基枠251、対向枠252、及び押え部材270を備える点で刺繍枠5と異なる。基枠251、対向枠252、及び押え部材270の構成は、基枠51、対向枠52、及び押え部材70と基本的に同じであるので、説明を省略し、以下、支持部材260を説明する。
図14に示すように、支持部材260は刺繍枠5と同様の一対の第一部材61及び一対の第二部材62を備える。支持部材260は更に軸263を備える。
第一部材61は第一部分41に対し、第三部分43が刺繍枠200の左右方向の中心Mから離れる側に配置される姿勢で、装着部55の連結部56に固定される。左右方向において第二部分42の連結部分622は部分613に対し中心M側に配置され、螺子602、603で部分613に固定される。左右方向において、一対の第一部分41は、一対の第二部分42の間に配置される。左右方向の大きさが刺繍枠5よりも大きい刺繍枠200では、刺繍枠5のように左右方向において一対の第二部分42が一対の第一部分41の間にある場合に比べ、一対の第二部分42が第一部分41の外側(中心Mから離れる側)になる方が対向枠52を安定して支持できる。
【0060】
刺繍枠5は磁石80の磁力により、基枠51との間に配置された被縫製物Cを保持しなくてもよい。例えば、刺繍枠5はクリップ等により、基枠51と、対向枠52との外周を適宜固定してもよいし、対向枠52の自重で被縫製物Cを基枠51側に押えてもよいし、対向枠52に設けたエアシリンダ等のアクチュエーターを駆動させて被縫製物Cを基枠51側に押さえてもよい。刺繍枠5は対向枠52に磁石80を取り外し不能に設けてもよい。刺繍枠5は押え部材70に替えて磁石80を対向枠52に対し取り外し可能に設けてもよい。刺繍枠5が押え部材70を備える場合、押え部材70の構成は、刺繍枠5の形状、大きさ等に応じて適宜変更してよい。基枠51に対し押え部材70が配置された状態で、押え部材70の作用点部75は、対向枠52に対向せず、被縫製物C又は基枠51に対向してもよい。基枠51に対し押え部材70が配置された状態で、押え部材70の作用点部75が、対向枠52の角部524に対向する場合、角部524は対向枠52の上面520よりも上方に突出していてもよい。このようにした場合、作用位置は、作用位置にある時の作用点部75の下端が、収容部79の対向面82よりも下方となる位置でなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1:ミシン、5、100、200:刺繍枠、11:縫製部、20:移動部、25:ホルダ、41:第一部分、42、170:第二部分、43、163:第三部分、51:基枠、52:対向枠、55:装着部、60、160、260:支持部材、64、164:支持部、70、270:押え部材、71:本体部、73:操作部、74:支持部、75:作用点部、76:回動軸、77:付勢部材、78:当接部、80:磁石、511:開口、611:第一傾斜部分、612、613:部分、621:第二傾斜部分