(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057874
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】刺繍枠及び押え部材
(51)【国際特許分類】
D05B 39/00 20060101AFI20220404BHJP
D05C 9/04 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
D05B39/00
D05C9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166337
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】飯田 充弘
(72)【発明者】
【氏名】長村 崇平
(72)【発明者】
【氏名】日比野 晃大
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA15
3B150CB04
3B150CE02
3B150CE25
3B150CE27
3B150EB03
3B150EB09
3B150EB13
3B150GD14
3B150HA10
(57)【要約】
【課題】基枠と押え部材との間に配置された被縫製物を押え部材が有する磁石の磁力で保持可能であり、且つ、基枠から押え部材を取り外す作業が従来よりも容易な刺繍枠及び押え部材を提供すること。
【解決手段】刺繍枠5は、磁性体を有する基枠51と、基枠51との間に配置された被縫製物を磁力で基枠51側に押える押え部材70とを備える。押え部材70は、磁石80を有する本体部71と、本体部71に回動可能に支持される支持部、作用点部、及び操作部73を有するレバー81とを有する。作用点部は、レバー81の一端側に設けられ、待機位置と、待機位置よりも基枠51に近づく側の作用位置とに揺動可能である。操作部73は、レバー81の他端側に設けられ、操作されることに応じて、作用点部75を作用位置に移動させて、本体部71の少なくとも一部を基枠51から離れる側に移動させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を有する基枠と、
前記基枠との間に配置された被縫製物を磁力で前記基枠側に押える押え部材であって、
前記基枠に対向する対向面と、磁石とを有する本体部と、
レバーであって、
前記本体部に回動中心周りに回動可能に支持される支持部と、
前記回動中心に対し前記レバーの一端側に設けられ、前記押え部材が前記基枠に配置された場合に、前記対向面よりも前記基枠から離れる第一側の待機位置と、前記待機位置よりも前記基枠に近づく第二側の作用位置とに揺動可能な作用点部と、
前記回動中心に対し前記一端側と反対側の前記レバーの他端側に設けられた操作部であって、前記押え部材が前記基枠に配置された状態で前記操作部が前記第一側に操作されることに応じて、前記作用点部を前記待機位置から前記作用位置に移動させて、前記磁石の磁力に抗して前記本体部の少なくとも一部を前記第一側に移動させる前記操作部と
を有する前記レバーと
を有する前記押え部材と
を備えることを特徴とする刺繍枠。
【請求項2】
前記作用点部が前記作用位置にある場合、前記作用点部は前記対向面よりも前記第二側にあることを特徴とする請求項1に記載の刺繍枠。
【請求項3】
前記支持部の前記一端側から前記他端側まで延びる前記レバーの延設方向において、前記作用点部と、前記操作部と、前記回動中心との内、少なくとも前記操作部と前記回動中心とは、前記磁石とは異なる位置にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の刺繍枠。
【請求項4】
前記回動中心に対し前記他端側の前記レバーの端から、前記回動中心までの第一距離は、前記回動中心に対し前記一端側の前記レバーの端から、前記回動中心までの第二距離よりも長いことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項5】
孔が形成され、前記基枠に対向する対向枠を更に備え、
前記本体部の少なくとも一部が前記対向枠の前記孔に挿通された前記押え部材と、前記基枠との間に前記被縫製物が配置された配置状態で、前記押え部材は前記被縫製物を磁力で前記基枠側に押え、
前記作用点部は、前記配置状態で、前記対向枠と対向し、前記操作部が前記第一側に操作されることに応じて、前記対向枠と当接し、前記本体部を前記第一側に移動させることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項6】
前記基枠に対して前記対向枠を位置決めする位置決め部材を備え、
前記位置決め部材は、前記基枠に連結し、前記対向枠を前記基枠に対し回動可能に支持することを特徴とする請求項5に記載の刺繍枠。
【請求項7】
前記レバーを前記作用点部が前記作用位置から前記待機位置に揺動する方向に付勢する付勢部材を更に備え、
前記操作部は、前記操作部が前記第一側に操作されることに応じて、前記付勢部材の付勢力に抗して前記作用点部を前記待機位置から前記作用位置に移動させることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項8】
前記本体部は、前記磁石に対し前記対向面とは反対側に当接部を備え、
前記操作部は、前記当接部よりも前記回動中心に対し前記他端側に突出し、前記第一側に移動された場合に、前記レバーの内の、前記回動中心と前記操作部との間の部分が前記当接部に当接することで移動が規制されることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項9】
前記操作部は、前記回動中心と前記操作部との間の前記部分に対し前記第二側に屈曲し、
前記操作部の前記第一側の面は、前記レバーが前記当接部に当接した状態で、前記当接部の前記面と平行に延びることを特徴とする請求項8に記載の刺繍枠。
【請求項10】
前記作用点部が前記待機位置にある時、前記操作部の前記第二側の端部は前記対向面よりも前記第二側に位置することを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項11】
前記本体部は、一対の前記磁石を有し、
前記レバーは、前記回動中心の延設方向において、前記一対の磁石の間に配置されることを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項12】
前記回動中心の延設方向において、前記磁石と前記作用点部と前記操作部とは同一直線上に配置されることを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の刺繍枠。
【請求項13】
磁性体を有する基枠との間に配置された被縫製物を磁力で前記基枠側に押える押え部材であって、
前記基枠に対向する対向面と、磁石とを有する本体部と、
レバーであって、
前記本体部に回動中心周りに回動可能に支持される支持部と、
前記回動中心に対し前記レバーの一端側に設けられ、前記押え部材が前記基枠に配置された場合に、前記対向面よりも前記基枠から離れる第一側の待機位置と、前記待機位置よりも前記基枠に近づく第二側の作用位置とに揺動可能な作用点部と、
前記回動中心に対し前記一端側と反対側の前記レバーの他端側に設けられた操作部であって、前記押え部材が前記基枠に配置された状態で前記操作部が前記第一側に操作されることに応じて、前記作用点部を前記待機位置から前記作用位置に移動させて、前記磁石の磁力に抗して前記本体部の少なくとも一部を前記第一側に移動させる前記操作部と
を有する前記レバーと
を備えることを特徴とする押え部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍枠及び押え部材に関する。
【背景技術】
【0002】
刺繍ミシンに装着可能な刺繍枠が知られている(例えば特許文献1参照)。従来の刺繍枠は、枠体と保持具とを備える。保持具は、磁石を有し、磁力を介して枠体に着脱できる。刺繍枠は枠体と保持具との間で被縫製物を挟持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁力で被縫製物を挟持する刺繍枠は、刺繍縫製時に刺繍枠に対して被縫製物がずれないように強い磁力を有する保持具を備えることが望ましい。しかし、保持具の磁力が強ければ強いほど、枠体から保持具を取り外すのには強い力が必要である。
【0005】
本発明は、基枠と押え部材との間に配置された被縫製物を押え部材が有する磁石の磁力で保持可能であり、且つ、基枠から押え部材を取り外す作業が従来よりも容易な刺繍枠及び押え部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る刺繍枠は、磁性体を有する基枠と、前記基枠との間に配置された被縫製物を磁力で前記基枠側に押える押え部材であって、前記基枠に対向する対向面と、磁石とを有する本体部と、レバーであって、前記本体部に回動中心周りに回動可能に支持される支持部と、前記回動中心に対し前記レバーの一端側に設けられ、前記押え部材が前記基枠に配置された場合に、前記対向面よりも前記基枠から離れる第一側の待機位置と、前記待機位置よりも前記基枠に近づく第二側の作用位置とに揺動可能な作用点部と、前記回動中心に対し前記一端側と反対側の前記レバーの他端側に設けられた操作部であって、前記押え部材が前記基枠に配置された状態で前記操作部が前記第一側に操作されることに応じて、前記作用点部を前記待機位置から前記作用位置に移動させて、前記磁石の磁力に抗して前記本体部の少なくとも一部を前記第一側に移動させる前記操作部とを有する前記レバーとを有する前記押え部材とを備える。
【0007】
第一態様の刺繍枠は、基枠と押え部材とを有し、押え部材が基枠と押え部材との間に配置された被縫製物を磁力で基枠側に押えることで、基枠と押え部材とで被縫製物を狭持できる。被縫製物を刺繍枠から取り外す場合、ユーザは操作部を第一側に移動させる。これにより、作用点部は待機位置から作用位置に移動され、作用部点が本体部と基枠との間に挟持された被縫製物を介して、又は被縫製物を介することなく基枠を第二側に押圧することで、本体部は磁石の磁力に抗して第一側に移動される。故に刺繍枠は、基枠と押え部材との間に配置された被縫製物を押え部材が有する磁石の磁力で保持可能であり、且つ、基枠から押え部材を取り外す作業が従来よりも容易である。
【0008】
本発明の第二態様に係る押え部材は、磁性体を有する基枠との間に配置された被縫製物を磁力で前記基枠側に押える押え部材であって、前記基枠に対向する対向面と、磁石とを有する本体部と、レバーであって、前記本体部に回動中心周りに回動可能に支持される支持部と、前記回動中心に対し前記レバーの一端側に設けられ、前記押え部材が前記基枠に配置された場合に、前記対向面よりも前記基枠から離れる第一側の待機位置と、前記待機位置よりも前記基枠に近づく第二側の作用位置とに揺動可能な作用点部と、前記回動中心に対し前記一端側と反対側の前記レバーの他端側に設けられた操作部であって、前記押え部材が前記基枠に配置された状態で前記操作部が前記第一側に操作されることに応じて、前記作用点部を前記待機位置から前記作用位置に移動させて、前記磁石の磁力に抗して前記本体部の少なくとも一部を前記第一側に移動させる前記操作部とを有する前記レバーとを備える。
【0009】
第二態様の押え部材は、基枠と押え部材との間に配置された被縫製物を磁力で基枠側に押える。押え部材が被縫製物を基枠側に押さえるのを解除する場合、ユーザは操作部を第一側に移動させる。これにより、作用点部は待機位置から作用位置に移動され、磁石の磁力に抗して本体部は第一側に移動される。故に押え部材では、基枠と押え部材との間に配置された被縫製物を押え部材が有する磁石の磁力で保持可能であり、且つ、基枠から押え部材を取り外す作業が従来よりも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】刺繍枠5が装着されたミシン1の右側面図である。
【
図2】ホルダ25に装着された刺繍枠ユニット30の斜視図である。
【
図3】枠取付部材31に対して、刺繍枠5を取り外した状態の刺繍枠ユニット30の斜視図である。
【
図4】(A)は四つの押え部材70が基枠51から取り外された状態の刺繍枠5の平面図であり、(B)は四つの押え部材70が基枠51に対して配置された状態の刺繍枠5の平面図である。
【
図5】
図4(B)のB-B線における矢視方向断面図に対応する拡大図である。
【
図6】
図4(B)のC-C線における矢視方向断面拡大図である。
【
図7】(A)は基枠51に対して対向枠52が下降位置且つ閉位置にある時の、
図4(A)のA-A線における矢視方向断面図に対応する図であり、(B)は、基枠51に対して対向枠52が上昇位置且つ閉位置にある時の、
図4(A)のA-A線における矢視方向断面図に対応する図であり、(C)は、基枠51に対して対向枠52が上昇位置且つ開位置にある時の、
図4(A)のA-A線における矢視方向断面図に対応する図である。
【
図8】基枠51と対向枠52の間に被縫製物Cを配置した状態の、刺繍枠5の斜視図である。
【
図11】(A)は作用点部75が待機位置にある状態の
図4(A)のE-E線における押え部材70の矢視方向断面図であり、(B)は作用点部75が作用位置にある状態の
図4(A)のE-E線における押え部材70の矢視方向断面図である。
【
図12】(A)は作用点部75が待機位置にある状態の
図8(A)のG-G線における押え部材70の矢視方向断面図であり、(B)は作用点部75が作用位置にある状態の
図8(A)のG-G線における押え部材70の矢視方向断面図である。
【
図14】(A)は変形例の押え部材370の斜視図であり、(B)は変形例の押え部材470の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の第一及び第二実施形態を説明する。
図1及び
図2を参照して、多針ミシン(以下、単にミシンという)1、及び刺繍枠5の物理的構成について説明する。以下の説明では、
図1の上側、下側、左側、右側を各々、ミシン1及び刺繍枠5の上側、下側、前側、後ろ側とする。本実施形態において図面中の機械的要素は、実際のスケールを適宜縮尺して示す。
【0012】
図1に示すように、ミシン1は、支持部2と、脚柱部3と、アーム部4とを備える。支持部2は、ミシン1全体を支持する。脚柱部3は、支持部2の後端部から上方へ立設される。アーム部4は、脚柱部3の上端部から前方に延びる。アーム部4の先端にある頭部7には、針棒ケース21が左右方向に移動可能に装着される。針棒ケース21の内部には、上下方向に伸びる10本の針棒22が左右方向に等間隔で配置される。縫製部11は、10本の針棒22のうち、縫製位置にある1本の針棒22を、主軸モータ(図示略)を駆動源として駆動することによって上下方向に摺動させる。針棒22の下端には、縫針23が装着可能である。押え足24は、針棒22の上下方向の摺動と連動して、間欠的に被縫製物C(
図8参照)を下方へ押圧する。被縫製物Cは、例えば、加工布、皮、及び樹脂シート等のシート状である。
【0013】
図1に示すように、アーム部4には、操作部6が設けられる。アーム部4の下方には、脚柱部3の下端部から前方へ延びる筒状のシリンダベッド10が設けられる。シリンダベッド10の上面には、平面視矩形の針板16がある。針板16には、縫針23が挿通する針穴27が設けられる。シリンダベッド10の先端部の内部には、釜(図示略)が設けられる。釜は、下糸(図示略)が巻回されたボビン(図示略)を収納する。シリンダベッド10の内部には、釜駆動機構(図示略)がある。釜駆動機構は、釜を回転駆動する。アーム部4の下方には更に、移動部20のホルダ25、Yキャリッジ26、及びXキャリッジ28(
図2参照)が設けられる。
図2に示すように、移動部20のホルダ25は、枠取付部材31を介して、刺繍枠5を支持する。移動部20は、ホルダ25に装着された刺繍枠5を、固有のXY座標系(刺繍座標系)で示される位置に移動可能である。
図1に示すように、アーム部4の上面の後ろ側には、左右一対の糸駒台12が設けられる。各糸駒台12には、複数の糸立棒14が設けられる。糸立棒14は、糸駒13を支持する。上糸15は、糸駒台12に設置された糸駒13から供給される。上糸15は、糸道経路を経由して、針棒22の下端に装着された各縫針23の目孔(図示略)に供給される。糸道経路は、糸案内17と、糸調子器18と、天秤19とを含む。
【0014】
図1及び
図2を参照して、刺繍枠5に保持された被縫製物Cに縫目を形成する動作について説明する。被縫製物Cを保持した刺繍枠5は、枠取付部材31を介して移動部20のホルダ25に支持される。針棒ケース21が左右に移動することで、10本の針棒22のうち1本が縫製に用いる針棒22として選択される。移動部20によって、刺繍枠5が所定の位置に移動される。縫製部11は、主軸モータを駆動源として、選択された針棒22及びそれに対応する天秤19が上下駆動される。また、主軸モータの回転によって釜駆動機構が駆動され、釜が回転駆動される。このように、縫針23と天秤19と釜とが同期して駆動され、被縫製物Cに縫目が形成される。
【0015】
図2から
図12を参照して、刺繍枠ユニット30について説明する。
図1から
図3に示すように、刺繍枠ユニット30は、ミシン1に取り外し可能に装着される部材である。刺繍枠ユニット30は、刺繍枠5と、枠取付部材31とを備える。刺繍枠5は、基枠51、対向枠52、押え部材70、装着部55、及び支持部材60を備え、基枠51と、対向枠52との間に磁力で被縫製物Cを保持可能である。枠取付部材31は、ミシン1のホルダ25に取り外し可能に装着される。枠取付部材31は、刺繍枠5を取り外し可能に装着する。つまり本実施形態のミシン1は、枠取付部材31を介して、刺繍枠5を装着可能である。
図1及び
図2は、刺繍枠5が枠取付部材31に装着された状態を示す。
図3は、刺繍枠5が枠取付部材31から取り外された状態を示す。以下では、刺繍枠5が枠取付部材31を介してミシン1に装着される時の刺繍枠5の姿勢を基準に、刺繍枠5の構成を説明する。
【0016】
図4に示すように、刺繍枠5は、左右方向の中心線(
図4(A)のA-A線、
図4(B)のB-B線)に対して略左右対称である。基枠51は、平面視上下方向に貫通する開口511が形成された矩形枠状である。基枠51は、少なくとも基枠51の上面の内、磁石80と対向する位置に磁性体を有する。磁性体は、例えば、ステンレス等の金属である。本例の基枠51は、全体が磁性体で形成される。基枠51と対向枠52との間に被縫製物Cが配置された状態では、被縫製物Cは基枠51の上面に載置される。基枠51は、左右一対の屈曲部58を備える。一対の屈曲部58は各々、基枠51の左右両端部が上側に折り曲げられた部位である。基枠51の後端部は、後述の装着部55の取付部材130の前端部に連結する。本例では、基枠51と、取付部材130とがステンレス等の磁性体により一体に形成される。
【0017】
対向枠52は、基枠51に対し上方に配置され、刺繍枠5は、基枠51と対向枠52との間に配置された被縫製物Cを保持できる。後述するように、対向枠52は基枠51に対し回動可能に支持されているが、以下では、対向枠52が基枠51に対して閉じた状態を基準に、対向枠52の構成を説明する。対向枠52は、平面視、上下方向に貫通する開口521が形成された矩形枠状である。基枠51と対向枠52が上下に重ねられた状態で、開口511と、開口521とは互いに平面形状が一致する。
図4(A)に示すように、本例の対向枠52には、上下方向に貫通する二組の一対の孔522、及び二組の一対の孔523が形成される。一方の組の一対の孔522は、対向枠52の左辺部に前後方向に並ぶ。他方の組の一対の孔522は、対向枠52の右辺部に前後方向に並ぶ。各孔522は、平面視前後方向に長い矩形状である。同様に一方の組の一対の孔523は、対向枠52の前辺部に左右方向に並ぶ。他方の組の一対の孔523は、対向枠52の後辺部に左右方向に並ぶ。各孔523は、左右方向に長い矩形状である。
【0018】
対向枠52は、上面520、四つの角部524、壁部525、左右一対の仕切り部526、前後一対の仕切り部527、左右一対の案内部528、前側案内部529、後側案内部530、及び挿通部59を備える。四つの角部524は各々、対向枠52の四隅に配置された平板状であり、上下方向において基枠51と対向する。壁部525は、対向枠52の内周側端部において、対向枠52の上面520から上方に突出する。左右一対の仕切り部526は各々、対向枠52の左辺部の前後方向の中心部と、右辺部の前後方向の中心部とにおいて、左右方向に延びる、上面520よりも上方に突出する凸部である。前後方向において、各仕切り部526は、対応する一対の孔522の間に設けられる。前後一対の仕切り部527は各々、対向枠52の前辺部の左右方向の中心部と、後辺部の左右方向の中心部とにおいて前後方向に延びる、上面520よりも上方に突出する凸部である。左右方向において、各仕切り部527は、対応する一対の孔523の間に設けられる。
【0019】
左右一対の案内部528は各々、対向枠52の左右両端部おいて前後方向に延びる。前側案内部529は、対向枠52の前端部において左右方向に延びる。左右一対の案内部528及び前側案内部529は、開口521から離れる側程上方に傾斜する。後側案内部530は、対向枠52の後端部において左右方向に延び、対向枠52の上面520から上方に立設する。左辺部の一対の孔522は、左右方向において左側の案内部528と壁部525との間に形成される。右辺部の一対の孔522は、左右方向において右側の案内部528と壁部525との間に形成される。前辺部の一対の孔523は、前側案内部529と、壁部525との間に形成される。後辺部の一対の孔523は、後側案内部530と、壁部525との間に形成される。
【0020】
挿通部59は、後側案内部530に設けられ、左右方向に貫通し、上下方向に長い長孔591を有する。
図5に示すように、挿通部59は、基枠51に対して左右方向、前後方向に対向枠52を位置決めする。
【0021】
図4に示すように、四つの押え部材70は、基枠51との間に配置された被縫製物Cを磁力で基枠51側に押える。四つの押え部材70の形状は、互い同じであるので、基枠51の右前の角部524を含む位置に配置される押え部材70について、基枠51に対して配置される場合を基準に押え部材70の構成を説明し、他の三つの押え部材70の説明は省略する。押え部材70は、本体部71及びレバー81を備える。本体部71は、平面視Y字状であり、一対の収容部79、一対の磁石80、及び支持部72を備える。一対の収容部79は各々、
図4(A)のE-E線に対して対称に設けられる、箱状である。E-E線に対し左方の収容部79は、左右方向に長い直方体状であり、E-E線に対し右方の収容部79は、前後方向に長い直方体状である。
図10に示すように、各収容部79は、上部791及び挿通部792を備える。挿通部792は上部791の下面793から下方に突出した部分である。
図9に示すように、背面視において挿通部792の輪郭は、上部791輪郭の内側に配置される。挿通部792の下面は、基枠51に対向する対向面82である。各収容部79の対向面82には、収容部79の長手方向に延びる一対のスリット83が形成される。一対のスリット83は、収容部79の短手方向に互いに離隔して並ぶ。
【0022】
押え部材70が基枠51に配置される場合、一対の収容部79の挿通部792は各々、押え部材70に対向枠52の対応する角部524に隣接する孔522、523に挿通される。上部791の下面793は、対向枠52の上面520に当接する。E-E線に対し左方の収容部79は、前後方向において、前側案内部529と、壁部525との間に配置され、左右方向において、対向枠52の前辺部の仕切り部527と、対向枠52の右前部の角部524との間に配置される。E-E線に対し右方の収容部79は、左右方向において、右側案内部528と、壁部525との間に配置され、前後方向において、対向枠52の右辺部の仕切り部526と、対向枠52の右前部の角部524との間に配置される。
【0023】
図6に示すように、一対の磁石80は各々、直方体状の磁石であり対応する収容部79の上部791と挿通部792とに亘って収容される。押え部材70は、磁石80による磁束を導くヨークを備えてもよい。磁石80は収容部79の対向面82に挿通された、上下方向に延びる螺子84により、収容部79に固定される。
【0024】
図4(A)に示すように、支持部72は、E-E線を中心として、E-E線に沿って延びる。支持部72は、E-E線に対し左方の収容部79の右端と、E-E線に対し右方の収容部79の前端との各々に連結する。
図9及び
図10に示すように、支持部72は、当接部78、一対の支持板部85、回動軸76、付勢部材77、及び凸部86を備える。当接部78は、本体部71の内、磁石80に対し対向面82とは反対側、つまり、上側に設けられる。上下方向において、当接部78の上面は、一対の収容部79の上面よりも上方にある。一対の支持板部85は各々、回動軸76(回動中心R)の延設方向Pにおける、当接部78の両端部と、回動軸76の延設方向Pにおける当接部78の中心との間から下方に延びる。一対の支持板部85は各々、右前部側程、当接部78から下方に突出する量が小さい。一対の支持板部85には各々厚み方向に貫通し、回動軸76が挿通される孔が形成される。回動軸76は、E-E線とは垂直且つ、基枠51の延設面に平行な方向(延設方向P)に延びる。回動軸76は、レバー81の回動中心Rを軸芯とする円柱状である。回動軸76には付勢部材77が挿通される。付勢部材77は、例えば、ねじりバネである。凸部86は、当接部78の下面の内、回動軸76の延設方向Pの中心部から下方に突出する。凸部86は、当接部78と、レバー81との間に、ユーザの指等の操作体が侵入することを防ぐ。
【0025】
レバー81は、
図4(A)E-E線に沿って延びる板状の部材である。
図9から
図12に示すように、レバー81は、一対の支持部74、作用点部75、及び操作部73を備える。レバー81には厚み方向に貫通する孔88が形成される。一対の支持部74は、本体部71の当接部78の下方に回動軸76の軸芯である回動中心R周りに回動可能に支持される。一対の支持部74は、レバー81の延設方向Jにおいて、作用点部75と操作部73との間に設けられた、レバー81の回動軸76の延設方向Pの両端部を上方に折り曲げた部分である。レバー81の延設方向Jは、回動軸76の延設方向Pと直交する。一対の支持部74は各々、右前部側程、作用点部75と操作部73との間の部分87から上方に突出する量が小さい。一対の支持部74には回動軸76の延設方向Pに貫通し、回動軸76が挿通される孔が形成される。回動中心Rは一対の支持部74に設けられた孔を通る。レバー81の延設方向Jにおいて、回動中心Rから支持部74の操作部73側の端部までの距離は、回動中心Rから支持部74の作用点部75側の端部までの距離よりも長い。回動軸76の延設方向Pにおいて、一対の支持部74の間に、支持部72の一対の支持板部85が配置された状態で、回動軸76は一対の支持部74の孔と、一対の支持板部85との各々に挿通される。これによりレバー81は本体部71に回動可能に支持される。
【0026】
作用点部75は、レバー81の回動中心R(回動軸76)に対しレバー81の一端側(左後側)に設けられる。作用点部75は、押え部材70が基枠51に配置された場合に、対向面82よりも基枠51から離れる上側の待機位置と、待機位置よりも基枠51に近づく下側の作用位置とに揺動可能である。作用点部75は、レバー81の一端を上方に折り曲げられた部分の角部である。押え部材70が基枠51に配置される場合、作用点部75は、対向枠52が有する四つの角部524の内の対応する角部524に対向する。付勢部材77は、レバー81を作用点部75が作用位置から待機位置に揺動する方向に付勢する。故に外部からレバー81に力が加えられていない状態では、作用点部75は待機位置に位置する。
【0027】
図11に示すように、操作部73は、レバー81の延設方向Jにおいて、レバー81の回動中心R(回動軸76)に対し一端側と反対側のレバー81の他端側(右前側)に設けられる。レバー81の延設方向Jにおいて、操作部73は、当接部78よりもレバー81の回動中心R(回動軸76)に対し他端側に突出する。操作部73は、ユーザにより上側に移動された場合に、レバー81が回動軸76の回動中心Rを中心に回動し、作用点部75を作用位置から待機位置に移動できる。操作部73は、回動中心R(回動軸76)と操作部73との間の部分87に対し下側に屈曲する。
図11(A)に示すように、上下方向において、作用点部75が待機位置にある時、操作部73の下端部は対向面82よりも下側に位置する。
図4(B)に示すように、押え部材70が基枠51に対して配置された状態で、作用点部75が待機位置にある時、平面視において、操作部73は基枠51及び対向枠52に対し、開口511側とは反対側に位置する。
図9に示すように、孔88はレバー81の延設方向Jの略中心部に形成される。孔88は当接部78の下面の凸部86(
図10参照)と対向する。
【0028】
回動軸76の延設方向Pにおける、支持部72に対し左側の磁石80の延設範囲は範囲Q1であり、支持部72に対し後ろ側の磁石80の延設範囲は範囲Q2であり、レバー81の延設範囲は範囲Q3である。回動軸76の延設方向Pにおいて、範囲Q1からQ3は互いに異なり、範囲Q3は、範囲Q1と、Q2との間にある。つまり、レバー81は、回動軸76の延設方向Pにおいて、一対の磁石80の間に配置される。
【0029】
レバー81の回動中心R(回動軸76)に対し一端側から他端側まで延びるレバー81の延設方向Jにおける、操作部73の延設範囲は範囲K1であり、支持部74の延設範囲は範囲K2であり、磁石80の延設範囲は範囲K3である。レバー81の延設方向Jはレバー81の長手方向である。作用点部75は範囲K3内にある。故に、レバー81の延設方向Jにおいて、作用点部75と、操作部73と、支持部74との内、少なくとも操作部73と支持部74とは、磁石80とは異なる位置にある。
【0030】
図9及び
図11に示すように、本例のレバー81の延設方向Jにおいて、レバー81の回動中心R(回動軸76)に対し他端側のレバー81の端から、回動軸76までの第一距離B1は、レバー81の回動中心R(回動軸76)に対し一端側のレバー81の端から、回動軸76までの第二距離B2よりも長い。本例の第一距離B1は、第二距離B2の1.5倍以上である。
【0031】
図1から
図3に示すように、装着部55は、開口511に対し、後方において基枠51と連結し、ミシン1に取り外し可能に装着される。装着部55は、後述する所定の装着位置において、ミシン1が有する枠取付部材31によって取り外し可能に装着される。
図3に示すように、装着部55は、取付部材130、位置決め部材140、及び左右一対の連結部56を有する。取付部材130は、枠取付部材31によって支持される部位である。取付部材130は刺繍枠5の後部に設けられる。取付部材130は左右一対の挿通部134、及び凸部137を備える。左右一対の挿通部134は、取付部材130の左右方向の端部を上方に折り曲げることによって形成されており、左右方向に貫通する孔138を有する。凸部137は、取付部材130の後部の左右方向において中央付近において下方へ突出する。取付部材130に対する凸部137の左右方向における位置は、刺繍枠5に固有の位置に設定される。位置決め部材140は、枠取付部材31に対する取付部材130の装着位置を規定する部材である。位置決め部材140は、左右方向に延びる、可撓性を有する板バネ部材である。位置決め部材140は、左右一対の摘み部142を有する。左右一対の摘み部142は各々、位置決め部材140の左端及び右端に設けられる。一対の摘み部142は各々、ユーザの操作によって、位置決め部材140の上下方向の位置を移動させることができる部位である。
図2及び
図3に示すように、一対の摘み部142は各々、取付部材130の孔138に挿通される。左右一対の連結部56は各々、左右方向において、左右一対の挿通部134の間、且つ、前後方向において位置決め部材140の後方において、取付部材130から上方に延びる。
【0032】
図2から
図4に示すように、支持部材60は、対向枠52を基枠51に対して回動可能に支持する。支持部材60は、左右一対の第一部材61、左右一対の第二部材62、及び軸63を備える。以下では、左右一対の第一部材61及び左右一対の第二部材62の内、右側の第一部材61及び第二部材62の構成を説明し、左側の第一部材61及び第二部材62の構成は説明を省略する。
【0033】
図4に示すように、第一部材61は、平面視逆U字状に屈曲された板状である。
図2から
図4に示すように、第一部材61は、第一部分41、及び第三部分43を備える。第一部分41は、第一傾斜部分611と、連結部614とを有する。第一傾斜部分611は、基枠51の開口511に対し、上方側且つ後方側(つまり上斜め後方)に延びる。連結部614は、後述の支持部64よりも後方において、装着部55と連結する。連結部614は、第一部材61の右前端部であり、螺子601により装着部55の右側連結部56に固定される。第三部分43は、基枠51の延設面(水平面)に平行、且つ左右方向に延びる部分612と、基枠51の延設面に平行、且つ前後方向に延びる部分613とを備える。部分612は、第一部分41に連結する。部分613は、後述の第二部分42に連結する。つまり、第三部分43は、支持部64よりも上方において、第一部分41と、第二部分42とを連結する。本例の第一部分41と第三部分43との連結部分44は、第一傾斜部分611の後端、つまり、第一部材61の右後端である。
図1及び
図5に示すように、連結部分44は、装着部55よりも後方にある。刺繍枠5がミシン1に装着された状態では、連結部分44の後端部はホルダ25よりも後方に位置する。
【0034】
図6に示すように、第二部材62は、右側面視鈍角に屈曲した板状の部材である。
図2から
図4に示すように、第二部材62は、第二部分42及び支持部64を備える。第二部分42は、第二傾斜部分621及び連結部分622を有し、第二部分42の前端部は支持部64と連結する。第二傾斜部分621は、支持部64に対し、上方側且つ後方側(つまり上斜め後方)に延びる。
図1に示すように、第一傾斜部分611及び第二傾斜部分621は、右側面視、ミシン1の頭部7の後端部の形状と略平行に、基枠51に対して交差する方向に傾斜している。
図2から
図4に示すように、連結部分622は、第二部分42の後端から後方、且つ、基枠51の延設面に対して略平行に延びる。左右方向において連結部分622は第一部材61の部分613に対し、第一傾斜部分611側(右側)に配置され、連結部分622は、螺子602、603によって、部分613の右面に固定される。これにより、第二部材62は、第一部材61に固定される。一対の第二部分42は、左右方向において一対の第一部分41の間に配置される。
【0035】
支持部64は、第二部材62の前端部であり、対向枠52を支持する。左側の第二部材62の支持部64は左右方向に延びる軸65の左端と連結し、右側の支持部64は軸65の右端と連結する。
図7に示すように、軸65は、対向枠52の挿通部59に形成された長孔591に挿通される。支持部64は、対向枠52を、基枠51に対して、
図7(A)に示す下降位置と、
図7(B)に示す上昇位置とに上下方向に移動可能に支持する。
図7(A)に示すように、基枠51に対して対向枠52が下降位置に配置された場合、基枠51の上面と、対向枠52の下面とは、互いに当接する。
図7(B)に示すように、基枠51に対して対向枠52が上昇位置且つ閉位置に配置された場合、基枠51と、対向枠52とは互いに平行に配置され、且つ、基枠51の上面と、対向枠52の下面とは、互いに離隔する。更に支持部64は対向枠52を基枠51に対して、
図7(B)に示す閉位置と、
図7(C)に示す開位置とに回動可能に支持する。
【0036】
左右方向において、第一部分41の前端部は、支持部64から離れた位置にあることが好ましい。左右方向において、第一傾斜部分611の前端部は、第二傾斜部分621の前端部から離れた位置にあることが好ましい。左右方向において、第一部分41の前端部は、支持部64から5mm以上離れた位置にあることが好ましい。左右方向において、第一部分41の前端部は、支持部64から、装着部55の左右方向の長さの1/20以上離れた位置にあることが好ましい。
図4(B)に示すように、本例の刺繍枠5では、左右方向において、第一傾斜部分611と、第二傾斜部分621とは互いに離れており、略平行に前後方向に延びる。一例として、装着部55の左右方向の長さD4は、160(mm)であり、左右方向における第一部分41の前端部から支持部64までの距離D1は、5mm以上且つ装着部55の左右方向の長さの1/20以上の条件を満たす、22.2(mm)である。前後方向において第一傾斜部分611の前端部と、第一傾斜部分611に対応する支持部64とは、距離D2だけ離れている。第一傾斜部分611の前端部と、第一傾斜部分611に対応する支持部64とは、距離D2よりも長い距離D3だけ離れている。
図6に示すように、第一傾斜部分611、第二傾斜部分621、連結部分622、及び装着部55によって囲まれる空間Wは、右側面視平行四辺形状である。
【0037】
軸63は、第一部材61の後端部及び第二部材62の後端部、つまり、第一傾斜部分611の後端部、連結部分622の後端部、及び部分613の後端部に形成された孔に挿通され、第一部材61と第二部材62とを位置決めする。
【0038】
図2及び
図3に示すように、枠取付部材31は、取付部32及び切替プレート33を主に備える。取付部32には、刺繍枠5を装着可能である。取付部32は、取付部材34及び押圧部材35を主に備える。取付部材34は、左右方向に延びる板部材である。取付部材34は、枠取付部材31を
図2に示すミシン1のホルダ25に固定すると共に、切替プレート33の移動を案内する。押圧部材35は、平面視左右方向に長い矩形状である。刺繍枠5の取付部材130が装着位置に位置する場合、押圧部材35は取付部材130の上側に配置され、取付部材130を取付部材34側(下側)に付勢する。取付部材130が装着位置に位置する状態で、摘み部142が操作された場合、押圧部材35は更に、位置決め部材140を取り外し方向に付勢する。取り外し方向は、取付部材130を装着位置から移動させる際の取付部材130の移動方向である。本実施形態の取り外し方向は、装着方向と反対の方向であり、後ろから前に向かう方向である。押圧部材35は、貫通孔の各々に挿通された螺子によって、取付部材34に固定される。
【0039】
切替プレート33は、刺繍枠5の取付部材130を取付部32に装着する動作に連動して右方向に移動する移動部材であって、刺繍枠5の種類に応じて移動量が設定された部材である。切替プレート33は、付勢部材(図示略)によって、左方に付勢される。切替プレート33は、左後端部から上方にフック状に延設された係合部37を備える。係合部37は、回転型ポテンショメータ(図示略)が有する検出子と係合する。検出子(図示略)は、切替プレート33の移動量に応じて回転する。したがって、回転型ポテンショメータは、切替プレート33の移動量を、検出子の回転量に基づき検出可能である。ミシン1は、回転型ポテンショメータが検出した検出子の回転量に基づき、刺繍枠5の種類を検出可能である。
【0040】
図3及び
図4を参照して、ミシン1に刺繍枠5を装着する操作を説明する。ユーザは、取付部材34の孔(図示略)と、ホルダ25の孔(図示略)とに一対の摘み螺子39を挿通し、締付けることで、枠取付部材31をホルダ25に取り付ける。ミシン1に装着された枠取付部材31に刺繍枠5を装着する場合、ユーザはまず、刺繍枠5を装着方向(後方)に水平移動させる。凸部137は取付部材34に案内されながら所定の位置に収容される。このとき、取付部材34に対する凸部137の位置に応じて、切替プレート33が右方に移動する。ユーザは刺繍枠5を更に装着方向に水平移動させると、取付部材130の水平方向の移動が規制され、刺繍枠5の水平方向の位置が固定される。取付部材130は、押圧部材35によって上方から押さえられている為、取付部材130は、押圧部材35と取付部材34とで挟持される。取付部材130は、上下方向の位置が固定される。以上の動作によって、刺繍枠5がミシン1の枠取付部材31に装着される。ミシン1は、切替プレート33の移動量を検出子の回転量によって検出することによって、刺繍枠5の種類を検出可能である。
【0041】
刺繍枠5をミシン1に装着された枠取付部材31から取り外す場合は、ユーザは摘み部142を上方へ持ち上げる。摘み部142が上方に持ち上げられると、位置決め部材140が撓んで、押圧部材35から取り外し方向の力を受ける。取付部材130は水平方向に移動可能となり、ユーザは、押圧部材35から受ける取り外し方向の力を利用して、刺繍枠5を取り外し方向にスムーズに水平移動させることができる。即ち、ユーザは、刺繍枠5を装着位置から容易に取り外すことができる。
【0042】
図4、
図7、及び
図8を参照し、刺繍枠5に被縫製物Cを保持させる操作を説明する。ユーザが刺繍枠5に被縫製物Cを配置する場合、
図4(A)のように対向枠52から押え部材70が退避した状態で、ユーザは、対向枠52を
図7(A)の下降位置から、
図7(C)の上昇位置且つ開位置に移動させる。ユーザは、対向枠52と、基枠51との間に被縫製物Cを配置する。
図8に示すように、ユーザは、対向枠52と、基枠51との間に配置されない被縫製物Cの端部の内、開口511よりも後方にある端部を、右側面視において、支持部材60の第一傾斜部分611、第二傾斜部分621、連結部分622、及び装着部55によって囲まれる空間Wに適宜配置する。
図8では、開口511よりも後方にある被縫製物Cの端部が、蛇腹状に折りたたまれて空間Wに配置されているが、例えば、被縫製物Cの端部をロール状に丸めた状態で空間Wに配置されてもよい。空間Wを満たすように被縫製物Cの端部が空間Wに配置された場合、空間Wに配置された部分の被縫製物Cは、第一傾斜部分611、第二傾斜部分621、連結部分622、及び装着部55と当接する。このとき、空間Wの内の下方部分では、被縫製物Cの端部の後端部は、第一部分41の前端部と当接し、被縫製物Cの端部の前端部は、支持部64の後端と当接する。このため、
図4(B)に例示するように、空間Wの内の下方部分では、被縫製物Cは、前後方向において、曲線L1と曲線L2との間の範囲に配置される。曲線L1は、第一部分41の前端部と被縫製物Cとが当接する位置を通る。曲線L2は、支持部64の後端と被縫製物Cとが当接する位置を通る。曲線L1と曲線L2との前後方向の間隔は、第一部分41の前端部と支持部64との距離D2よりも長い。ユーザは、基枠51に対して対向枠52を閉じる。ユーザは四つの押え部材70の一対の収容部79の挿通部792を対応する孔522、523に挿通させ、押え部材70を基枠51に対して配置する。四つの押え部材70は、対向枠52の内の装着位置に応じて、仕切り部526、527、左右一対の案内部528、前側案内部529、及び後側案内部530に案内され、挿通部792が、対応する孔522、523に挿通される。刺繍枠5は、本体部71の少なくとも一部が対向枠52の孔522、523に挿通された押え部材70と、基枠51との間に被縫製物Cが配置された配置状態で、押え部材70は被縫製物Cを磁力で基枠51側に押える。
【0043】
ユーザは、押え部材70が基枠51に配置された状態から、押え部材70を取り外す場合、押え部材70の操作部73と当接部78とに、指等の操作体を掛け、操作部73を当接部78側(上側)に移動させる。操作部73は、押え部材70が基枠51に配置された状態で操作部73が上側に操作されることに応じて、付勢部材77の付勢力に抗して作用点部75を
図11(A)及び
図12(A)に示す待機位置から
図11(B)及び
図12(B)に示す作用位置に移動させる。操作部73は、ユーザにより上側に移動された場合に、レバー81の内の、回動中心R(回動軸76)と操作部73との間の部分87が当接部78に当接することで移動が規制され、移動を停止する。当接部78の下面の凸部86は、操作部73への操作に応じてレバー81が回動する過程でレバー81の孔88に挿通される。作用点部75は、押え部材70が基枠51に配置された配置状態で、対向枠52と対向し、操作部73が上側に操作されることに応じて、対向枠52と当接し、本体部71を上側に移動させる。より詳細には、作用点部75は、待機位置から作用位置に移動する途中で、角部524の内の対応する角部524に当接し、作用点部75を作用点として、てこの原理で支持部72を上方に持ち上げる。本例のレバー81は、第一距離B1が第二距離B2よりも長い。故にユーザは、比較的少ない力で支持部72を上方に持ち上げることができる。これにより、
図12(B)に示すように、操作部73は、磁石80の磁力に抗して本体部71の少なくとも一部、即ち、支持部72及び一対の収容部79の内の、支持部72に連結する部分を上側に移動させる。操作部73の上面は、レバー81が当接部78に当接した状態で、当接部78の上面と平行に、略面一となるように延びる。ユーザは、一対の収容部79の内、支持部72から離れる側の端部、つまり、支持部72に対し後方の収容部79の左後側の下端部91及び支持部72に対し左方の収容部79の左後側の下端部92(
図9及び
図11参照)を作用点として押え部材70を上方に持ち上げることで、本体部71を摘まんで押え部材70を取り外す場合に比べ少ない力で、基枠51から押え部材70を取り外すことができる。
【0044】
上記実施形態において、刺繍枠5、基枠51、押え部材70、本体部71、レバー81、対向面82、磁石80、支持部74、作用点部75、操作部73、及び回動軸76は各々、本発明の刺繍枠、基枠、押え部材、本体部、レバー、対向面、磁石、支持部、作用点部、操作部、及び回動軸の一例である。支持部材60は、本発明の位置決め部材の一例である。
【0045】
上記実施形態の刺繍枠5は、磁性体を有する基枠51と、基枠51との間に配置された被縫製物Cを磁力で基枠51側に押える押え部材70とを備える。押え部材70は、基枠51に対向する対向面82と、磁石80とを有する本体部71と、レバー81とを有する。レバー81は、支持部74、作用点部75、及び操作部73を備える。支持部74は、本体部71に回動軸76周りに回動可能に支持される。作用点部75は、レバー81の回動中心Rに対しレバー81の一端側に設けられ、押え部材70が基枠51に配置された場合に、対向面82よりも基枠51から離れる上側の待機位置と、待機位置よりも基枠51に近づく下側の作用位置とに揺動可能である。操作部73は、レバー81の回動中心Rに対し一端側と反対側のレバー81の他端側に設けられる。操作部73は、押え部材70が基枠51に配置された状態で操作部73が上側に操作されることに応じて、作用点部75を待機位置から作用位置に移動させて、磁石80の磁力に抗して本体部71の少なくとも一部を上側に移動させる。刺繍枠5は、基枠51と押え部材70とを有し、押え部材70が基枠51と押え部材70との間に配置された被縫製物Cを磁力で基枠51側に押えることで、基枠51と押え部材70とで被縫製物Cを狭持できる。被縫製物Cを刺繍枠5から取り外す場合、ユーザは操作部73を上側に移動させる。これにより、作用点部75は待機位置から作用位置に移動され、作用部点が本体部71と基枠51との間に挟持された被縫製物Cを介して、もしくは被縫製物Cを介することなく基枠51を下側に押圧することで本体部71は磁石80の磁力に抗して上側に移動される。刺繍枠5は、基枠51と押え部材70との間に配置された被縫製物Cを押え部材70が有する磁石80の磁力で保持可能であり、且つ、基枠51から押え部材70を取り外す作業が従来よりも容易である。
【0046】
刺繍枠5では、作用点部75が作用位置にある場合、作用点部75は対向面82よりも下側にある。刺繍枠5は、作用点部75が作用位置にある場合、作用点部75は対向面82よりも下側にあるので、比較的簡単な構成により、操作部73が上側に操作されることに応じて、磁石80の磁力に抗して本体部71を上側に移動させることができる。
【0047】
刺繍枠5では、支持部74の一端側から他端側まで延びるレバー81の延設方向Jにおいて、作用点部75と、操作部73と、回動中心Rとの内、少なくとも操作部73と回動中心Rとは、磁石80とは異なる位置にある。刺繍枠5では、レバー81の延設方向Jにおいて、支持部74も磁石80とは異なる位置にある。刺繍枠5は、レバー81の延設方向Jにおいて、操作部73と回動中心Rとの少なくとも何れかが磁石80と重なる位置にある場合に比べ弱い力で基枠51から押え部材70を取り外すことができる。
【0048】
刺繍枠5では、レバー81の回動中心Rに対し他端側のレバー81の端から、回動中心Rまでの第一距離B1は、レバー81の回動中心Rに対し一端側のレバー81の端から、回動中心Rまでの第二距離B2よりも長い。刺繍枠5は、てこの原理により、比較的少ない力で、作用点部75を待機位置から作用位置に移動させることができる。
【0049】
刺繍枠5は、孔が形成され、基枠51に対向する対向枠52を備える。本体部71の少なくとも一部が対向枠52の孔に挿通された押え部材70と、基枠51との間に被縫製物Cが配置された配置状態で、押え部材70は被縫製物Cを磁力で基枠51側に押える。作用点部75は、配置状態で、対向枠52と対向し、操作部73が上側に操作されることに応じて、対向枠52と当接し、本体部71を上側に移動させる。作用点部75は、配置状態で、対向枠52と対向し、操作部73が上側に操作されることに応じて、対向枠52と当接する。このため、刺繍枠5は、刺繍枠5から被縫製物Cを取り外す際に、作用点部75が被縫製物Cに当接せず、作用点部75が被縫製物Cを傷めることを回避できる。
【0050】
刺繍枠5は、基枠51に対して対向枠52を位置決めする支持部材60を備える。支持部材60は、基枠51に連結し、対向枠52を基枠51に対し回動可能に支持する。刺繍枠5は、対向枠52を有しない刺繍枠5に比べ、基枠51に対する押え部材70の位置決めをしやすい。刺繍枠5は、位置決め部材が、基枠51に連結せず、対向枠52を基枠51に対し回動可能に支持しない刺繍枠5に比べ、基枠51に対して対向枠52を位置決めする作業が容易である。
【0051】
刺繍枠5は、レバー81を作用点部75が作用位置から待機位置に揺動する方向に付勢する付勢部材77を備える。操作部73は、操作部73が上側に操作されることに応じて、付勢部材77の付勢力に抗して作用点部75を待機位置から作用位置に移動させる。刺繍枠5は、作用点部75を作用位置から待機位置に移動させるユーザの手間を省くことができる。
【0052】
押え部材70の本体部71は、磁石80に対し対向面82とは反対側に当接部78を備える。操作部73は、当接部78よりもレバー81の回動中心Rに対し他端側に突出し、上側に移動された場合に、レバー81の回動中心Rと操作部73との間の部分87が当接部78に当接することで移動が規制される。ユーザは、刺繍枠5から被縫製物Cを取り外す場合、当接部78と操作部73とを摘まみ、操作部73を上側、つまり、当接部78と操作部73との距離が小さくなる方向に力を加える。作用点部75が作用位置に移動すると、本体部71の内、当接部78が上側に移動される。ユーザは、本体部71の内、レバー81の回動中心Rに対し作用点部75側の端部を支点として、当接部78を更に上側に移動させることで、比較的少ない力で、押え部材70を基枠51から離隔させることができる。
【0053】
操作部73は、レバー81の回動中心Rと操作部73との間の部分87に対し下側に屈曲する。操作部73の上面は、レバー81が当接部78に当接した状態で、当接部78の面と平行に延びる。刺繍枠5は、ユーザが操作部73を上側に操作する際の操作性を向上させることができる。
【0054】
操作部73は、作用点部75が待機位置にある時、上下方向において、操作部73の下端部は対向面82よりも下側に位置する。刺繍枠5は、レバー81の支持部74から他端側の操作部73の端までの距離を伸ばしつつ、本体部71の上下方向の大きさを比較的小さくできる。
【0055】
本体部71は、一対の磁石80を有する。レバー81は、回動軸76の延設方向Pにおいて、一対の磁石80の間に配置される。刺繍枠5は、操作部73が上側に操作されることで、一対の磁石80の磁力に抗して、本体部71の一部を上側に移動させることができる。刺繍枠5は、回動軸76の延設方向Pにおいて、レバー81が一対の磁石80の間に配置されない場合に比べ、被縫製物Cを刺繍枠5から取り外す際の、回動軸76の延設方向Pにおける押え部材70のバランスをとりやすい。
【0056】
本発明の刺繍枠及び押え部材は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。刺繍枠5、刺繍枠ユニット30、及びミシン1の構成は適宜変更してよい。ミシン1が備える針棒22の数は1以上であればよい。ミシン1は1種類以上の刺繍枠を装着可能であればよい。刺繍枠5は、ミシン1のホルダ25に直接装着される構成であってもよい。刺繍枠5が枠取付部材31を介してミシン1に取り付けられる場合、枠取付部材31の構成は適宜変更されてよい。
【0057】
刺繍枠5の大きさ、平面形状、及び厚み等は適宜変更されてもよい。基枠51と対向枠52との各々は内縁が円状、楕円状等、多角形状以外の形状でもよい。基枠51と対向枠52との各々の内縁が、多角形状である場合、三角形状、矩形状、及び五角形状等、正方形状以外の形状でもよい。
【0058】
刺繍枠5は、対向枠52及び支持部材60を備えなくてもよい。この場合、刺繍枠5は、基枠51に配置された被縫製物Cに直接押え部材70を配置することで、基枠51と押え部材70とで被縫製物Cを狭持してもよい。刺繍枠5が対向枠52を備える場合、刺繍枠5は支持部材60を省略してもよいし、支持部材60の構成を変更してもよい。刺繍枠5が支持部材60を省略する場合、基枠51に配置された被縫製物Cに対向枠52を適宜配置する。このときユーザは、例えば、基枠51の左右一対の屈曲部58を、基枠51に対する対向枠52の左右方向の位置を決めるのに利用してもよい。基枠51は一対の屈曲部58と同様の前後一対の屈曲部を備えてもよく、このときユーザは、例えば、基枠51の左右一対の屈曲部58及び前後一対の屈曲部を、基枠51に対する対向枠52の左右方向、前後方向の位置を決める位置決め部材として利用してもよい。
【0059】
以下、刺繍枠5において支持部材60を省略した刺繍枠150を説明する。
図13では、上記実施形態の刺繍枠5と同様の構成には同じ符号を付与している。
図13に示すように、変形例の刺繍枠150は、刺繍枠5の支持部材60を備えず、基枠151、対向枠152、装着部155、及び四つの押え部材70を備える。基枠151は、後端部において、装着部155と連結する。基枠151の基本的な構成は基枠51と同様であり、開口511が形成され、左右両端部に屈曲部58を有する。基枠151の後端部には、刺繍枠5では対向枠52に設けられていた挿通部59を備える。挿通部59は、左右方向に貫通する長孔591(
図5参照)を有する。対向枠152の基本的な構成は対向枠52と同様であり、対向枠152には上下方向に貫通する二組の一対の孔522、及び二組の一対の孔523が形成される。対向枠152は、上面520、四つの角部524、壁部525、左右一対の仕切り部526、前後一対の仕切り部527、左右一対の案内部528、前側案内部529、及び後側案内部531を備える。後側案内部531は、対向枠152の後端部において左右方向に延び、対向枠152の上面520から上方に立設し、平面視後方から前方に凹む凹部532を備える。凹部532には、基枠151の挿通部59が配置される。後側案内部531は、挿通部59の長孔591に挿通される、左右方向に延びる軸165の両端を保持する。これにより、対向枠152は、基枠151に対し、前後方向及び左右方向に位置決めされ、基枠151に対し、回動可能に支持される。
【0060】
押え部材70の構成は、刺繍枠5の形状、大きさ等に応じて適宜変更してよい。押え部材70は一以上の磁石80を備えればよく、磁石80の形状、大きさ、数、及び配置は適宜変更されてよい。基枠51に対し押え部材70が配置された状態で、押え部材70の作用点部75は、対向枠52に対向せず、被縫製物C又は基枠51に対向してもよい。基枠51に対し押え部材70が配置された状態で、押え部材70の作用点部75が、対向枠52の角部524に対向する場合、角部524は対向枠52の上面520よりも上方に突出していてもよい。このようにした場合、作用位置は、作用位置にある時の作用点部75の下端が、収容部79の対向面82よりも下方となる位置でなくてもよい。操作部73はレバー81の延設方向Jにおいて、当接部78から突出しなくてもよい。作用点部75が待機位置にある時、操作部73の下端部は、上下方向において、対向面82と同じ位置、又は対向面82よりも上側に位置してもよい。操作部73は、レバー81の回動中心Rと操作部73との間の部分87に対し上側に屈曲してもよいし、部分87に対し屈曲しなくてもよい。操作部73の上面は、レバー81が当接部78に当接した状態で、当接部78の上面と平行に延びてもよいし、当接部78の上面と交差する方向に延びてもよい。押え部材70は当接部78を省略してもよい。レバー81の延設方向Jにおいて、操作部73、回動中心R(回動軸76)、支持部74は各々、磁石80と同じ位置にあってもよいし、操作部73及び支持部74に加え、作用点部75も磁石80と互いに異なる位置にあってもよい。範囲Q1と範囲Q3とは一部又は全部が互いに重なってもよい。範囲Q2と範囲Q3とは一部又は全部が互いに重なっていてもよい。つまり、レバー81は、回動軸76の延設方向Pにおいて、磁石80と重なる位置に配置されてもよい。第一距離B1と、第二距離B2とは互いに同じであってもよいし、第一距離B1は、第二距離B2よりも短くてもよい。押え部材70は付勢部材77を省略してもよい。押え部材70が複数の磁石80を備える場合、回動軸76の延設方向Pにおいてレバー81は複数の磁石80の間に配置されなくてもよい。押え部材70の本体部71は、支持部74にてレバー81を回動中心R周りに回動可能に支持できればよく、レバー81を回動可能に支持するための構成は適宜変更されてよい。例えば、本体部71は回動軸76を備えなくてもよく、この場合、例えば、支持部74は回動中心Rを中心とし、回動中心Rに沿って延びる円柱状、円筒状、又は多角柱状の凸部を備え、本体部71は凸部を本体部71に設けられた凸部に内接する円状の孔に挿通させることで、本体部71はレバー81を回動中心R周りに回動可能に支持してもよい。
【0061】
以下、押え部材70と構成が互いに異なる押え部材370、470の構成を順に説明する。
図14(A)、
図14(B)では、上記実施形態の押え部材70と同様の構成には同じ符号を付与している。
図14(A)に示すように、押え部材370は、本体部371及び押え部材70と同様のレバー81を備える。本体部371は、平面視I字状であり、本体部371は、収容部379、磁石80、及び支持部372を備える。収容部379は、左右方向に長い直方体状である。収容部379は、磁石80を収容する。支持部372は、収容部379の右端に連結する。支持部372は、支持部72と同様の当接部78、一対の支持板部(図示略)、回動軸76、付勢部材77、及び凸部86を備える。回動軸76の延設方向Pにおいて、磁石80と作用点部75と操作部73とは延設範囲の一部が重なる位置に配置される。つまり、磁石80と作用点部75と操作部73とは、平面視において、レバー81の延設方向Jに延びる同一直線F上にある。故に押え部材370は、被縫製物Cを刺繍枠5から取り外す際の、回動軸76の延設方向Pにおける押え部材370のバランスをとりやすい。
【0062】
図14(B)に示すように、押え部材470は、本体部471及び押え部材70と同様のレバー81を備える。本体部471は、平面視T字状であり、本体部371は、前後一対の収容部479、一対の磁石80、及び支持部472を備える。前後一対の収容部479は各々、前後方向に長い直方体状である。各収容部479は、磁石80を収容する。支持部472は、前側の収容部479の後端と、後側の収容部479の前端とに連結する。支持部472は、支持部72と同様の当接部78、一対の支持板部(図示略)、回動軸76、付勢部材77、及び凸部86を備える。回動軸76の延設方向Pにおいて、レバー81は、一対の磁石80の間に配置される。押え部材470は、押え部材70と同様に、回動軸76の延設方向Pにおいて、レバー81が一対の磁石80の間に配置されない場合に比べ、被縫製物Cを刺繍枠5から取り外す際の、回動軸76の延設方向Pにおける押え部材470のバランスをとりやすい。
【符号の説明】
【0063】
5、150:刺繍枠、51:基枠、52:対向枠、55:装着部、60:支持部材、70、370、470:押え部材、71、371、472:本体部、73:操作部、74:支持部、75:作用点部、76:回動軸、77:付勢部材、78:当接部、80:磁石