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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057886
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】インシュレータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20220404BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20220404BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H02K3/46 C
H02K3/34 C
H02K3/52 E
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166376
(22)【出願日】2020-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 公興
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604PB03
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】1ノズル巻きと3ノズル巻きとの両方で、3相の巻回部が形成されるインシュレータを共通化する。
【解決手段】インシュレータの外周壁部は、外周壁部の中心軸の方向における一端から中心軸に沿って延びて形成されて巻回部から引き出された巻き線が通される複数のスリットを有する。外周壁部には、複数のスリットのうち外周壁部の周方向に隣り合い一端から延びる深さが異なる2つのスリットが連なることで段差部が設けられた、連結スリットが形成される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き線が巻回されて形成される巻回部が筒状のステータの周方向に沿って配置される3相モータに用いられ、前記ステータの中心軸の方向における端部に固定されるインシュレータであって、
筒状の外周壁部と、前記外周壁部の内周に設けられて前記巻き線が巻回される巻胴部と、を備え、
前記外周壁部は、前記外周壁部の中心軸の方向における一端から前記中心軸に沿って延びて形成されて前記巻回部から引き出された前記巻き線が通される複数のスリットを有し、
前記外周壁部には、前記複数のスリットのうち前記外周壁部の周方向に隣り合い前記一端から延びる深さが異なる2つのスリットが連なることで段差部が設けられた、連結スリットが形成される、インシュレータ。
【請求項2】
前記連結スリットは、前記2つのスリットのいずれか一方のスリットを1ノズル巻きの際に前記巻き線が通されるスリットとし、他方のスリットを3ノズル巻きの際に前記巻き線が通されるスリットとした、
請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項3】
前記連結スリットは、前記外周壁部の周方向に隣り合って形成された第1の連結スリットと第2の連結スリットを含む、
請求項1または2に記載のインシュレータ。
【請求項4】
前記第1の連結スリットは、第1スリットと、前記第1スリットよりも前記深さが小さい第2スリットと、を有し、
前記第2の連結スリットは、第3スリットと、前記第3スリットよりも前記深さが大きい第4スリットと、を有し、
前記外周壁部には、前記外周壁部の周方向における一方向に向かって、前記第1スリット、前記第2スリット、前記第3スリット、前記第4スリットの順に形成されている、
請求項3に記載のインシュレータ。
【請求項5】
前記第1スリットの前記深さは、前記第3スリットの前記深さよりも大きく、
前記第2スリットの前記深さは、前記第4スリットの前記深さよりも小さい、
請求項4に記載のインシュレータ。
【請求項6】
前記第1スリットと前記第3スリットは、3ノズル巻きの際に前記巻き線が通されるスリットであり、前記第2スリットと前記第4スリットは、1ノズル巻きの際に前記巻き線が通されるスリットである
請求項4または5に記載のインシュレータ。
【請求項7】
前記外周壁部には、前記第2スリット内における前記第1スリット側とは反対側に、前記第1スリット側よりも前記深さが大きくなるように形成されて前記巻き線が引っ掛けられる第1掛け止め部と、前記第3スリット内における前記第4スリット側とは反対側に、前記第4スリット側よりも前記深さが大きくなるように形成されて前記巻き線が引っ掛けられる第2掛け止め部との少なくとも一方の掛け止め部が形成されている、
請求項4~6のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項8】
前記第1の連結スリットには、前記外周壁部の周方向において、前記巻き線につながる電源線の始端側に隣接する前記巻回部が設けられる巻胴部に対して近い側に前記第1スリットが形成され、当該巻胴部に対して遠い側に前記第2スリットが形成され、
前記第1スリットの前記深さは、前記第2スリットの前記深さよりも大きい、
請求項4~7のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項9】
前記第2の連結スリットには、前記外周壁部の周方向において、前記巻き線につながる電源線の終端側に隣接する前記巻回部が設けられる巻胴部に対して近い側に前記第3スリットが形成され、当該巻胴部に対して遠い側に前記第4スリットが形成され、
前記第4スリットの前記深さは、前記第3スリットの前記深さよりも大きい、
請求項4~8のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項10】
前記巻胴部の個数は、9以上、かつ、3の倍数個である、
請求項1~9のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のインシュレータと、前記ステータと、前記ステータが発生する磁界で回転されるロータと、3相の前記巻回部を形成する前記巻き線と、を備えるモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インシュレータ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機のモータとしては、ロータと、ロータの外周側に配置されるステータと、ステータの軸方向の端部に設けられる筒状のインシュレータと、を備えるものが知られている。この種のモータでは、導線である巻き線がステータのティース部に巻かれて形成された巻胴部から巻き線が引き出され、インシュレータの周方向に沿って掛け渡された巻き線が、他のティース部に巻回されて巻回部が形成されている。
【0003】
インシュレータは、筒状の外周壁部と、ステータのティース部に対応して外周壁部の内周に設けられて巻き線が巻回される巻胴部と、を備える。インシュレータの外周壁部には、ステータとは反対側の一端からステータ側に向かって延びる複数のスリットが形成されており、巻回部から引き出された巻き線が、各スリットを通して外周壁部の内周側から外周側へ引き出されて、外周壁部の外周面に沿って掛け渡される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-141495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなモータとしては、ステータの周方向に沿って1相ずつ一定の順序で各相の巻回部が配置される3相モータがある。このような3相モータの製造工程では、ノズルから巻き線を供給し、ステータコアのステータコアティース部とインシュレータの巻胴部に跨って巻き線を巻回し、インシュレータの外周壁部に沿って巻き線を巻き付ける巻線機が用いられている。巻線機を用いて3相の各巻回部を形成する場合、互いに動作を同期させた3つのノズルを用いて3相の巻き線を同時に巻き付けて3相の巻回部を形成する方式(以下、3ノズル巻きと称する。)と、1つのノズルを用いて各相の巻き線を1相ずつ巻いて巻回部を順番に形成する方式(以下、1ノズル巻きと称する。)がある。
【0006】
図12は、9スロット型の3相モータにおいて、従来のインシュレータに3ノズル巻きで巻き付けられた各相の巻き線を示す展開図である。図13は、9スロット型の3相モータにおいて、従来のインシュレータに1ノズル巻きで巻き付けられた各相の巻き線を示す展開図である。図12及び図13では、インシュレータの内周側から見た展開図を示しており、図中における下方が、電源線(リード線)が配置されるリード側であり、図中における上方が、リード側とは反対側である反リード側であって、ステータ側とは反対側である。ここでは、9つのスロットなす各巻回部に、巻き線が反時計回り(CCW:Counter Clock Wise)に巻かれる。
【0007】
まず、従来のインシュレータに対して、3ノズル巻きで各相の巻き線を巻き付ける場合について説明する。図12に示すように、巻き線46によってU相、V相、W相の各相の巻回部45をそれぞれ形成しながら、各巻回部45から引き出した巻き線46が、インシュレータ101の外周壁部102の各スリット103に通されることで、外周壁部102の外周面に沿って、各相の巻き線46の渡り線部分49が掛け渡される。例えば、U相巻き線46-Uから延ばされたU相渡り線部分49-Uと、V相巻き線46-Vから延ばされたV相渡り線部分49-Vが交差しないように外周壁部102に掛け渡される。このようにインシュレータ101の外周壁部102には、各相の渡り線部分49が互いに間隔をあけて掛け渡されており、相の異なる巻き線46同士の絶縁距離が確保されている。これにより、3相モータを駆動する各相の電気信号へ異相のノイズが乗ることを抑制している。
【0008】
つぎに、上述のように3ノズル巻きで用いられる従来のインシュレータ101に対して、1ノズル巻きで各相の巻き線46を巻き付ける場合について説明する。図13では一例として、各相の巻き線をV相、W相、U相の順番に巻き付けた状態を示す。図13に示すように、1ノズル巻きで各相の巻き線46を巻き付けた場合、3相のうちの最後に巻かれるU相巻き線46-Uがスリット103に通されて外周壁部102の外周面に沿ってU相渡り線部分49-Uが形成されるときに、V相巻き線46-Vが延ばされて外周壁部102に掛け渡されたV相渡り線部分49-VにU相渡り線部分49-Uが乗り上げることで、異なる2つの相の渡り線部分が交差する交差部105が生じる問題がある。このような交差部105は、図示しないが、上述とは異なる順番で各相の巻き線46を巻き付けた場合にも、3相のうちの2つの相の渡り線部分49同士の間で生じる。
【0009】
したがって、3ノズル巻きで用いられるインシュレータに対して、1ノズル巻きで巻き線46を掛け渡したとき、渡り線部分49に交差部105が生じるので、各相の巻き線46同士の絶縁距離を確保できない。一方、3ノズル巻き専用のインシュレータと、1ノズル巻き専用のインシュレータとを別々に用意することで、1ノズル巻きにおいて交差部で生じることを回避することも考えられる。しかし、その場合、3ノズル巻き専用と1ノズル巻き専用とでインシュレータの成形金型が2種類必要になることで、製造コストが増大する問題がある。また、3ノズル巻き専用のインシュレータと1ノズル巻き専用のインシュレータの形状は殆ど変わらないため、使用すべきインシュレータを取り違える誤使用のリスクが生じる。また3相モータの製造工程において3ノズル巻きと1ノズル巻きとを切り替える必要がある場合には、段取り作業が煩雑になり、更に3相モータの製造コストがかさむ。
【0010】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、1ノズル巻きと3ノズル巻きでインシュレータを共通化することができるインシュレータ及びモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示するインシュレータの一態様は、巻き線が巻回されて形成される巻回部が筒状のステータの周方向に沿って配置される3相モータに用いられ、ステータの中心軸の方向における端部に固定されるインシュレータであって、筒状の外周壁部と、外周壁部の内周に設けられて巻き線が巻回される巻胴部と、を備え、外周壁部は、外周壁部の中心軸の方向における一端から中心軸に沿って延びて形成されて巻回部から引き出された巻き線が通される複数のスリットを有し、外周壁部には、複数のスリットのうち外周壁部の周方向に隣り合い一端から延びる深さが異なる2つのスリットが連なることで段差部が設けられた、連結スリットが形成される。
【発明の効果】
【0012】
本願の開示するインシュレータの一態様によれば、1ノズル巻きと3ノズル巻きとの両方で、3相の巻回部が形成されるインシュレータを共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例の3相モータを備える圧縮機を示す縦断面図である。
図2図2は、実施例の3相モータを上インシュレータ側から示す平面図である。
図3図3は、実施例におけるステータコアを示す下面図である。
図4図4は、実施例における下インシュレータを示す斜視図である。
図5図5は、実施例におけるステータを示す下面図である。
図6図6は、実施例における下インシュレータに対して、3ノズル巻きで巻き付けられた各相の巻き線を示す展開図である。
図7図7は、実施例における各相の巻き線の結線状態を示す結線図である。
図8図8は、実施例における下インシュレータの要部に3ノズル巻きで巻き付けられた巻き線を示す拡大図である。
図9図9は、実施例における下インシュレータに対して、1ノズル巻きで巻き付けられた各相の巻き線を示す展開図である。
図10図10は、実施例における下インシュレータの要部に1ノズル巻きで巻き付けられた巻き線を示す拡大図である。
図11図11は、実施例における下インシュレータの要部の変形例を示す拡大図である。
図12図12は、従来のインシュレータに3ノズル巻きで巻き付けられた各相の巻き線を示す展開図である。
図13図13は、従来のインシュレータに1ノズル巻きで巻き付けられた各相の巻き線を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示するインシュレータ及びモータの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示するインシュレータ及びモータが限定されるものではない。
【実施例0015】
図1は、実施例の3相モータを備える圧縮機を示す縦断面図である。図1に示すように、圧縮機1は、いわゆるロータリ圧縮機であり、容器2と、回転軸3と、圧縮部5と、3相モータ6と、を備えている。容器2は、金属材料によって形成されており、密閉された内部空間7を形成している。内部空間7は、概ね円柱状に形成されている。容器2は、水平面上に縦置きされたときに、内部空間7をなす円柱の中心軸が鉛直方向に平行になるように形成されている。容器2には、内部空間7の下部に油溜め8が形成されている。油溜め8には、圧縮部5を潤滑させる潤滑油である冷凍機油が貯留される。容器2には、冷媒を吸入するための吸入管11と、圧縮された冷媒を吐出する吐出管12と、が接続されている。回転軸としての回転軸3は、棒状に形成されており、一端が油溜め8に配置されるように、容器2の内部空間7に配置されている。回転軸3は、内部空間7をなす円柱の中心軸を中心に回転可能に容器2に支持されている。回転軸3は、回転することにより、油溜め8に貯留された冷凍機油を圧縮部5に供給する。
【0016】
圧縮部5は、内部空間7の下部に配置され、油溜め8の上方に配置されている。圧縮機1は、さらに、上マフラーカバー14と、下マフラーカバー15と、を備えている。上マフラーカバー14は、内部空間7のうちの圧縮部5の上部に配置されている。上マフラーカバー14は、内部に上マフラー室16を形成している。下マフラーカバー15は、内部空間7における圧縮部5の下部に設けられており、油溜め8の上部に配置されている。下マフラーカバー15は、内部に下マフラー室17を形成している。下マフラー室17は、圧縮部5に形成されている連通路(図示せず)を介して上マフラー室16に連通している。上マフラーカバー14と回転軸3との間には、圧縮冷媒吐出孔18が形成され、上マフラー室16は、圧縮冷媒吐出孔18を介して内部空間7に連通している。
【0017】
圧縮部5は、回転軸3が回転することにより、吸入管11から供給される冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を上マフラー室16と下マフラー室17とに供給する。その冷媒は、冷凍機油と相溶性を有している。3相モータ6は、内部空間7における圧縮部5の上部に配置されている。
【0018】
図2は、実施例における3相モータ6を上インシュレータ側から示す平面図である。図1及び図2に示すように、3相モータ6は、ロータ21と、ステータ22と、を備えている。ロータ21は、珪素鋼の薄板(磁性体)を複数積層して円柱状に形成されており、複数のリベット9により一体化されている。ロータ21の中心には回転軸3が挿通され、ロータ21が回転軸3に対して固定されている。ロータ21には、6個のスリット状の磁石埋め込み孔10aが、回転軸3を中心として6角形の各辺をなすように形成されている。各磁石埋め込み孔10aは、ロータ21の周方向に所定間隔をあけて形成されている。磁石埋め込み孔10aには、板状の永久磁石10bが埋め込まれている。
【0019】
ステータ22は、概ね円筒形に形成されており、ロータ21を囲むように配置されて、容器2に固定されている。ステータ22は、ステータコア23と、上インシュレータ24及び下インシュレータ25と、導線である複数の巻き線46と、を備えている。上インシュレータ24は、ステータコア23の上端部に固定されている。下インシュレータ25は、ステータコア23の下端部に固定されている。上インシュレータ24及び下インシュレータ25は、ステータコア23と巻き線46とを絶縁する絶縁部の一例である。
【0020】
図3は、実施例におけるステータコア23を示す下面図である。ステータコア23は、例えば、ケイ素鋼板に例示される軟磁性体で形成された複数の板が積層されて形成され、図3に示すように、ヨーク部31と複数のステータコアティース部32-1~32-9とを備えている。ヨーク部31は、概ね円筒形に形成されている。複数のステータコアティース部32-1~32-9のうちの第1ステータコアティース部32-1は、概ね柱体状に形成されている。第1ステータコアティース部32-1は、一端がヨーク部31の内周面に連続して形成され、すなわち、ヨーク部31の内周面から突出するように形成されている。複数のステータコアティース部32-1~32-9のうちの第1ステータコアティース部32-1と異なるステータコアティース部も、第1ステータコアティース部32-1と同様に、概ね柱体状に形成されており、ヨーク部31の内周面から突出している。複数のステータコアティース部32-1~32-9は、さらに、9スロットのステータの場合、ヨーク部31の内周面に40度ごとの等間隔に配置されて形成されている。
【0021】
図4は、実施例における下インシュレータ25を示す斜視図である。下インシュレータ25は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)に例示される絶縁体によって円筒状に形成されている。下インシュレータ25は、図4に示すように、外周壁部41と、巻き線46が巻回される巻胴部としての複数のインシュレータティース部42-1~42-9と、複数の鍔部43-1~43-9と、を有している。外周壁部41は、概ね円筒形に形成されている。外周壁部41には、外周壁部41の中心軸Cの方向(回転軸3の軸方向)における一端から中心軸Cに沿って延びる複数のスリット44が、外周壁部41の周方向に間隔をあけて形成されている。また、外周壁部41は、外周壁部41の中心軸Cの方向における他端が、ステータコア23に当接する。言い換えると、複数のスリット44は、外周壁部41におけるステータコア23とは反対側(反リード側)の一端から、ステータコア23側(リード側)に向かって延びて形成されている。後述する巻回部45から引き出された巻き線46が各スリット44を通されることで、外周壁部41の内周側から外周側へ引き出された巻き線46が外周壁部41の外周面に沿って掛け渡される、複数のスリット44の詳細については後述する。
【0022】
複数のインシュレータティース部42-1~42-9のうちの第1インシュレータティース部42-1は、断面が概ね半円である直柱体状に形成されている。第1インシュレータティース部42-1は、一端が外周壁部41の内周面に連続して形成され、すなわち、外周壁部41の内周面から突出するように形成されている。複数のインシュレータティース部42-1~42-9のうちの第1インシュレータティース部42-1と異なるインシュレータティース部も、直柱体状に形成され、第1インシュレータティース部42-1と同様に、外周壁部41の内周面から突出するように形成されている。複数のインシュレータティース部42-1~42-9は、外周壁部41の内周面に40度ごとの等間隔に配置されて形成されている。
【0023】
複数の鍔部43-1~43-9は、複数のインシュレータティース部42-1~42-9に対応し、それぞれ、概ね半円形の板状に形成されている。複数の鍔部43-1~43-9のうちの第1インシュレータティース部42-1に対応する第1鍔部43-1は、第1インシュレータティース部42-1の他端に連続して第1インシュレータティース部42-1と一体に形成されている。複数の鍔部43-1~43-9のうちの第1鍔部43-1と異なる鍔部も、第1鍔部43-1と同様に、複数のインシュレータティース部42-1~42-9の他端に連続してインシュレータティース部42-1~42-9のそれぞれと一体に形成されている。
【0024】
ここでは、下インシュレータ25について説明したが、上インシュレータ24も、下インシュレータ25と同様に形成されている。すなわち、上インシュレータ24は、絶縁体によって円筒状に形成されており、外周壁部41と、複数のインシュレータティース部42-1~42-9と、複数の鍔部43-1~43-9と、を有している。
【0025】
図5は、実施例におけるステータ22を示す下面図である。ステータコア23の複数のステータコアティース部32-1~32-9は、図5に示すように、複数の巻き線46がそれぞれ巻回されている。各ステータコアティース部32-1~32-9には、後述する図6に示すように、各巻き線46によって巻回部45がそれぞれ形成されている。図5において、9つのスロットをなす各巻回部45には、図中の時計回りの順番に1~9の符号を付けて示す。実施形態における3相モータ6は、6極9スロットの集中巻型のモータである(図2参照)。複数の巻き線46には、U相の巻回部45を形成する複数のU相巻き線46-U1~46-U3と、V相の巻回部45を形成する複数のV相巻き線46-V1~46-V3と、W相の巻回部45を形成する複数のW相巻き線46-W1~46-W3と、が含まれている。
【0026】
なお、本発明のモータは、9スロットに限定されるものではなく、スロットの個数、すなわち巻回部45の個数が、9以上、かつ、3の倍数個であればよい。言い換えると、下インシュレータ25(上インシュレータ24)のインシュレータティース部32の個数は、9以上、かつ、3の倍数個であればよい。
【0027】
U相巻き線は、複数の巻き線46を含んでいる。具体的には、U相巻き線として、第1U相巻き線46-U1と、第2U相巻き線46-U2と、第3U相巻き線46-U3と、を備えている。第1U相巻き線46-U1は、第4ステータコアティース部32-4に巻回されている。第2U相巻き線46-U2は、第7ステータコアティース部32-7に巻回されている。第3U相巻き線46-U3は、第1ステータコアティース部32-1に巻回されている。
【0028】
V相巻き線は、複数の巻き線46を含んでいる。具体的には、V相巻き線として、第1V相巻き線46-V1と、第2V相巻き線46-V2と、第3V相巻き線46-V3と、を備えている。第1V相巻き線46-V1は、第8ステータコアティース部32-8に巻回されている。第2V相巻き線46-V2は、第2ステータコアティース部32-2に巻回されている。第3V相巻き線46-V3は、第5ステータコアティース部32-5に巻回されている。
【0029】
W相巻き線は、複数の巻き線46を含んでいる。具体的には、W相巻き線として、第1W相巻き線46-W1と、第2W相巻き線46-W2と、第3W相巻き線46-W3と、を備えている。第1W相巻き線46-W1は、第6ステータコアティース部32-6に巻回されている。第2W相巻き線46-W2は、第9ステータコアティース部32-9に巻回されている。第3W相巻き線46-W3は、第3ステータコアティース部32-3に巻回されている。
【0030】
第1ステータコアティース部32-1は、下インシュレータ25の第1インシュレータティース部42-1と、上インシュレータ24の第1インシュレータティース部42-1と、これら各インシュレータ24、25との間に配置される絶縁フィルム(図示せず)と共に第3U相巻き線46-U3が巻回されている。このため、第3U相巻き線46-U3は、上インシュレータ24と下インシュレータ25とにより、第1ステータコアティース部32-1から適切に絶縁され、ステータコア23から適切に絶縁されている。さらに、第3U相巻き線46-U3は、下インシュレータ25の第1鍔部43-1と外周壁部41との間に挟まれるように巻回されており、上インシュレータ24の第1鍔部43-1と外周壁部41との間に挟まれるように巻回されている。このため、第3U相巻き線46-U3は、上インシュレータ24及び下インシュレータ25により、第1ステータコアティース部32-1からロータ21の側に外れる、いわゆる巻きこぼれが防止されている。
【0031】
複数の巻き線46のうちの第3U相巻き線46-U3と異なる他の巻き線46に関しても、上インシュレータ24及び下インシュレータ25により、ステータコア23から適切に絶縁され、巻きこぼれが防止されている。
【0032】
本実施例における下インシュレータ25は、3ノズル巻きと1ノズル巻きとの両方で巻き線46が巻き付けられることを前提として形成されている。まずここでは、3ノズル巻きで巻き線46が巻かれた状態の下インシュレータ25にについて説明する。1ノズル巻きで巻き線46が巻かれた状態の下インシュレータ25については後述する。
【0033】
図6は、実施例における下インシュレータ25に対して、3ノズル巻きで巻き付けられた各相の巻き線46を示す展開図である。図6は、下インシュレータ25の内周側から見た展開図である。図6における下方が、巻き線46とつながる電源線(リード線)が配置されるリード側であって、ステータ22側である。図6における上方が、リード側とは反対側である反リード側であって、ステータ22側とは反対側である。また、図6において、9つのスロットをなす各巻回部45には、図中の左端から右端に向かう順番に1~9の符号を付けて示す。圧縮機1の外部に配置される電源(図示せず)とつながる電源線の始端Sを丸印で示し、電源線の終端Eを三角印で示す。
【0034】
第1U相巻き線46-U1は、図6に示すように、第4ステータコアティース部32-4に反時計回り(CCW:Counter Clock Wise)に巻回されている。第2U相巻き線46-U2は、第7ステータコアティース部32-7に反時計回りに巻回されている。第3U相巻き線46-U3は、第1ステータコアティース部32-1に反時計回りに巻回されている。第1V相巻き線46-V1は、第8ステータコアティース部32-8に反時計回りに巻回されている。第2V相巻き線46-V2は、第2ステータコアティース部32-2に反時計回りに巻回されている。第3V相巻き線46-V3は、第5ステータコアティース部32-5に反時計回りに巻回されている。第1W相巻き線46-W1は、第6ステータコアティース部32-6に反時計回りに巻回されている。第2W相巻き線46-W2は、第9ステータコアティース部32-9に反時計回りに巻回されている。第3W相巻き線46-W3は、第3ステータコアティース部32-3に反時計回りに巻回されている。このように3相の各巻回部45の全てには、巻き線46が反時計回りに巻かれている。なお、本実施例は、3相の各巻回部45における巻き線46が反時計回りに巻かれる構造に限定するものではない。本実施例における下インシュレータ25の構造の要部については後述する。
【0035】
ステータ22は、U相中性線47-Uと、V相中性線47-Vと、W相中性線47-Wと、をさらに備えている。U相中性線47-U、V相中性線47-V、W相中性線47-Wは、電源線の終端E側の部分である。U相中性線47-U、V相中性線47-V及びW相中性線47-Wは、複数のステータコアティース部32-1~32-9よりも下インシュレータ25から遠い上インシュレータ24側に配置されている。なお、上インシュレータ24側には、電源線であるリード側も配置されるので、以下、本明細書では上インシュレータ24側をリード側とも称する。
【0036】
U相中性線47-Uは、一端が第2U相巻き線46-U2に電気的に接続されている。第2U相中性線47-U2は、その一端が第7ステータコアティース部32-7に配置されており、他端が第7ステータコアティース部32-7のリード側に配置されている。V相中性線47-Vは、一端が第2V相巻き線46-V2に電気的に接続されている。V相中性線47-Vは、その一端が第2ステータコアティース部32-2に配置されており、他端が第2ステータコアティース部32-2のリード側に配置されている。W相中性線47-Wは、一端が第1W相巻き線46-W1に電気的に接続されている。W相中性線47-Wは、その一端が第9ステータコアティース部32-9に配置されており、他端が第9ステータコアティース部32-9のリード側に配置されている。
【0037】
ステータ22は、U相電源線48-Uと、V相電源線48-Vと、W相電源線48-Wと、をさらに備えている。U相電源線48-Uは、始端Sである一端が第1ステータコアティース部32-1のリード側に配置されている。U相電源線48-Uの他端は、第1ステータコアティース部32-1に巻回された第3U相巻き線46-U3に電気的に接続されている。
【0038】
U相電源線48-Uは、第3U相巻き線46-U3から引き出された一部が、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周側に引き出された第1U相渡り線部分49-U1を含んでいる。第1U相渡り線部分49-U1は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿うように配置されている。また、第1U相渡り線部分49-U1は、スリット44を通って外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれ、第4ステータコアティース部32-4に巻回された第1U相巻き線46-U1に繋がっている。
【0039】
続いて、U相電源線48-Uは、第1U相巻き線46-U1から引き出された一部が、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周側に引き出された第2U相渡り線部分49-U2を含んでいる。第2U相渡り線部分49-U2は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿うように配置されている。また、第2U相渡り線部分49-U2は、スリット44を通って外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれ、第7ステータコアティース部32-7に巻回された第2U相巻き線46-U2に繋がっている。また、U相電源線48-Uは、第2U相巻き線46-U2から引き出されて終端Eに電気的に接続されたU相中性線47-Uを含んでいる。
【0040】
V相電源線48-Vは、始端Sである一端が第5ステータコアティース部32-5のリード側に配置されている。V相電源線48-Vの他端は、第5ステータコアティース部32-5に巻回された第3V相巻き線46-V3に電気的に接続されている。V相電源線48-Vは、第3V相巻き線46-V3から引き出された一部が、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周側に引き出された第1V相渡り線部分49-V1を含んでいる。第1V相渡り線部分49-V1は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿うように配置されている。また、第1V相渡り線部分49-V1は、スリット44を通って外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれ、第8ステータコアティース部32-8に巻回された第1V相巻き線46-V1に繋がっている。
【0041】
続いて、V相電源線48-Vは、第1V相巻き線46-V1から引き出された一部が、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周側に引き出された第2V相渡り線部分49-V2を含んでいる。第2V相渡り線部分49-V2は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿うように配置されている。また、第2V相渡り線部分49-V2は、スリット44を通って外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれ、第2ステータコアティース部32-2に巻回された第2V相巻き線46-V2に繋がっている。また、V相電源線48-Vは、第2V相巻き線46-V2から引き出されて終端Eに電気的に接続されたV相中性線47-Vを含んでいる。
【0042】
W相電源線48-Wは、始端Sである一端が第3ステータコアティース部32-3のリード側に配置されている。W相電源線48-Wの他端は、第3ステータコアティース部32-3に巻回された第3W相巻き線46-W3に電気的に接続されている。W相電源線48-Wは、第3W相巻き線46-W3から引き出された一部が、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周側に引き出された第1W相渡り線部分49-W1を含んでいる。第1W相渡り線部分49-W1は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿うように配置されている。また、第1W相渡り線部分49-W1は、スリット44を通って外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれ、第6ステータコアティース部32-6に巻回された第1W相巻き線46-W1に繋がっている。
【0043】
続いて、W相電源線48-Wは、第1W相巻き線46-W1から引き出された一部が、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周側に引き出された第2W相渡り線部分49-W2を含んでいる。第2W相渡り線部分49-W2は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿うように配置されている。また、第2W相渡り線部分49-W2は、スリット44を通って外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれ、第9ステータコアティース部32-9に巻回された第2W相巻き線46-W2に巻回されている。また、W相電源線48-Wは、第2W相巻き線46-W2から引き出されて終端Eに電気的に接続されたW相中性線47-Wを含んでいる。
【0044】
図7は、実施例における複数の巻き線46の結線状態を示す結線図である。実施形態における3相モータは、巻き線46が直列接続されたスター結線を有するモータである。図7においても、9つのスロットをなす各巻回部45には、図5及び図6と対応する1~9の符号を付けて示す。ステータ22は、図7に示すように、中性点51を備えている。中性点51には、U相中性線47-U、V相中性線47-V、W相中性線47-Wがそれぞれ電気的に接続されている。
【0045】
[ステータの製造方法]
ここでは、一例として、互いに動作を同期させた3つのノズルを有する巻線機を用いて、3ノズル巻きで巻き線46を巻き付けてステータ22を製造する場合について説明する。3つのノズルの動作を同期させた巻線機を用いることにより、上インシュレータ24及び下インシュレータ25が取り付けられたステータコア23に対して、U相導線、V相導線及びW相導線を所定の巻き方でそれぞれ同時に巻き付けて、各相の巻回部45が1つずつ、合計3つの巻回部45が同時に形成される。このように巻回部45を3つずつ形成し、合計9つの巻回部45を形成することにより、ステータ22が製造される。巻き線46である導線は、例えば、エナメル線(銅線をエナメルの被膜で被覆した電線)が用いられる。
【0046】
3ノズル巻き用の巻線機は、U相導線用ノズルと、V相導線用ノズルと、W相導線用ノズルと、を備えている。3ノズル巻き用の巻線機は、中心軸Cに対して軸対称となるよう、中心軸Cの周方向で120°毎に1つずつノズルが配置される。3ノズル巻き用の巻線機は、これら3つのノズル(V相導線用ノズル、W相導線用ノズル、U相導線用ノズル)を同期して中心軸Cに対して軸対称に移動させる。そして、U相導線用ノズルが所定の動作を行うようにU相導線用ノズルを移動させることで、U相導線をステータコア23に対して所定の位置に巻き付ける。同様に、V相導線用ノズルが所定の動作を行うようにV相導線用ノズルを移動させることで、V相導線をステータコア23に対して所定の位置に巻き付ける。W相導線用ノズルが所定の動作を行うようにW相導線用ノズルを移動させることで、W相導線をステータコア23に対して所定の位置に巻き付ける。
【0047】
巻線機には、まず、上インシュレータ24及び下インシュレータ25と、図示しない絶縁フィルムが取り付けられたステータコア23がセットされる。巻線機は、U相導線用ノズルを移動させることで、U相導線の一端である始端Sを第1ステータコアティース部32-1のリード側に配置してU相電源線48-Uとして始端Sから延ばす。同時に、巻線機は、V相導線用ノズルを移動させることで、V相導線の一端である始端Sを第5ステータコアティース部32-5のリード側に配置してV相電源線48-Vとして始端Sから延ばすと共に、W相導線用ノズルを移動させることで、W相導線の一端である始端Sを第3ステータコアティース部32-3のリード側に配置してW相電源線48-Wとして始端Sから延ばす。
【0048】
巻線機は、始端Sから延ばしたU相導線を第1ステータコアティース部32-1に反時計回りに巻回することにより、U相導線によって第3U相巻き線46-U3を形成する。このとき、巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、始端Sから延ばしたV相導線を第5ステータコアティース部32-5に反時計回りに巻回し、V相導線によって第3V相巻き線46-V3を形成する。巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、始端Sから延ばしたW相導線を第3ステータコアティース部32-3に反時計回りに巻回し、W相導線によって第3W相巻き線46-W3を形成する。
【0049】
次いで、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第3U相巻き線46-U3から延ばしたU相導線を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相導線を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相導線によって第1U相渡り線部分49-U1を形成する。続いて巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第1U相渡り線部分49-U1から延ばしたU相導線をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたU相導線を第4ステータコアティース部32-4に反時計回りに巻回することにより、U相導線によって第1U相巻き線46-U1を形成する。
【0050】
このとき、第3V相巻き線46-V3から延ばしたV相導線によって第1V相渡り線部分49-V1を形成すると同時に、第3W相巻き線46-W3から延びるW相導線によって第1W相渡り線部分49-W1を形成する。同様に、3ノズル巻きの巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第1V相渡り線部分49-V1から延ばしたV相導線をスリット44に通して第8ステータコアティース部32-8に反時計回りに巻回し、V相導線によって第1V相巻き線46-V1を形成する。巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第1W相渡り線部分49-W1から延ばしたW相導線をスリット44に通し、第6ステータコアティース部32-6に反時計回りに巻回し、W相導線によって第1W相巻き線46-W1を形成する。
【0051】
次いで、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第1U相巻き線46-U1から延びるU相導線を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相導線を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相導線によって第2U相渡り線部分49-U2を形成する。続いて巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第2U相渡り線部分49-U2から延ばしたU相導線をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたU相導線を第7ステータコアティース部32-7に反時計回りに巻回することにより、U相導線によって第2U相巻き線46-U2を形成する。
【0052】
このとき、巻線機は、V相導線用ノズルとW相導線用ノズルとをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第1V相巻き線46-V1から延びるV相導線によって第2V相渡り線部分49-V2を形成すると同時に、第1W相巻き線46-W1から延びるW相導線によって第2W相渡り線部分49-W2を形成する。同様に、巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第2V相渡り線部分49-V2から延ばしたV相導線をスリット44に通して第2ステータコアティース部32-2に反時計回りに巻回し、V相導線によって第2V相巻き線46-V2を形成する。巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第2W相渡り線部分49-W2から延ばしたW相導線をスリット44に通し、第9ステータコアティース部32-9に反時計回りに巻回し、W相導線によって第2W相巻き線46-W2を形成する。
【0053】
このようにステータ22が製造されることにより、外周壁部41の外周面にそれぞれ掛け渡された第1U相渡り線部分49-U1、第2U相渡り線部分49-U2、第1V相渡り線部分49-V1、第2V相渡り線部分49-V2、第1W相渡り線部分49-W1、第2W相渡り線部分49-W2は、外周壁部41の周方向に対して図6中で右上がりに傾斜し、かつ、互いに間隔をあけて外周面に掛け渡される。これにより、中心軸Cの軸方向に対して水平に渡り線を掛け渡す場合に比べ、各相の渡り線部分49同士の絶縁距離を確保することができる。
【0054】
最後に、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させることで、U相導線の他端である終端Eを第7ステータコアティース部32-7のリード側に配置してU相中性線47-Uを形成する。このとき、巻線機は、V相導線用ノズルとW相導線用ノズルとをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、V相導線の他端である終端Eを第2ステータコアティース部32-2のリード側に配置してV相中性線47-Vを形成すると共に、W相導線の他端である終端Eを第9ステータコアティース部32-9のリード側に配置してW相中性線47-Wを形成する。また、U相中性線47-Uの端とV相中性線47-Vの端とW相中性線47-Wの端は接続具(図示せず)によって電気的に接続される。
【0055】
以上、3つのノズルを備える巻線機を用いた3ノズル巻きで巻き線46を巻き付ける場合を説明したが、1つのノズルのみを備える巻線機を用いた1ノズル巻きで巻き線46を巻き付けることもできる。この場合には、U相導線、V相導線及びW相導線を1相ずつ所定の順番で各々巻き付けて、3相の巻回部45が1相ずつ形成される。このように3相の巻回部45を形成することにより、ステータ22が製造される。
【0056】
[圧縮機の動作]
圧縮機1は、図示しない冷凍サイクル装置の構成要素として設けられており、冷媒を圧縮して、冷凍サイクル装置の冷媒回路に冷媒を循環させるために使用される。3相モータ6は、複数のU相電源線48-U1~48-U3、複数のV相電源線48-V1~48-V3及び複数のW相電源線48-W1~48-W3に三相電圧がそれぞれ印加されることにより、回転磁界を発生させる。ロータ21は、ステータ22により生成された回転磁界によって回転する。3相モータ6は、ロータ21が回転することにより、回転軸3を回転させる。
【0057】
圧縮部5は、回転軸3が回転することで、吸入管11を介して低圧冷媒ガスを吸入し、その吸入された低圧冷媒ガスを圧縮することにより高圧冷媒ガスを生成し、高圧冷媒ガスを上マフラー室16と下マフラー室17とに供給する。下マフラーカバー15は、下マフラー室17に供給された高圧冷媒ガスの圧力の脈動を低減し、圧力脈動が低減された高圧冷媒ガスを上マフラー室16に供給する。上マフラーカバー14は、上マフラー室16に供給された高圧冷媒ガスの圧力の脈動を低減し、圧力脈動が低減された高圧冷媒ガスを内部空間7のうちの圧縮部5と3相モータ6との間の空間に圧縮冷媒吐出孔18を介して供給する。
【0058】
内部空間7のうちの圧縮部5と3相モータ6との間の空間に供給された高圧冷媒ガスは、3相モータ6に形成されている隙間を通過することにより、内部空間7のうちの3相モータ6より上の空間に供給される。内部空間7における3相モータ6よりも上の空間に供給された冷媒は、吐出管12を介して、冷凍サイクル装置のうちの圧縮機1の下流側に配置された装置に吐出される。
【0059】
[3相モータの特徴的な構造]
次に、実施例における3相モータ6の特徴的な構造について説明する。本実施例の特徴には、下インシュレータ25の外周壁部41に形成された複数のスリット44の構造が含まれる。以下、下インシュレータ25について説明するが、上インシュレータ24についても同様である。
【0060】
実施例の下インシュレータ25は、上述した3ノズル巻きで巻き線46を巻き付けことが可能であると共に、1ノズル巻きで巻き線46を巻き付けた場合であっても各相の巻き線46同士を交差することなく適切に巻き付けるために、複数のスリット44の一部が、3ノズル巻きの場合と1ノズル巻きの場合とで巻き線46が選択的に通される構造を有している。
【0061】
図4及び図6に示すように、下インシュレータ25の外周壁部41には、複数のスリット44のうち、外周壁部41の周方向に隣り合う2つのスリット44が連なった第1の連結スリット55、第2の連結スリット56、及び第3の連結スリット57が形成されている。
【0062】
第1の連結スリット55には、外周壁部41の一端41aから外周壁部41の中心軸Cに沿って延びる深さが異なる2つのスリット44(44A、44B)が連なって形成されるように段差部58が設けられている。同様に、第2の連結スリット56には、深さが異なる2つのスリット44(44C、44D)が連なることで段差部58が設けられている。第3の連結スリット57には、深さが異なる2つのスリット44(44E、44F)が連なることで段差部58が設けられている。なお、各連結スリットは、深さが異なる2つのスリット44、44が中心軸Cの周方向に連なっていればよい。例えば、1つの連結スリットを形成する2つのスリット44、44の間に、反リード側に突出するように渡り線46の掛け止め部が形成されていても良い。
【0063】
上述した1ノズル巻きと3ノズル巻きに応じて、第1の連結スリット55における2つのスリット44(44A、44B)のいずれか一方のスリット44に巻き線46が選択的に通されることにより、巻き線46が外周壁部41の外周面に沿って掛け渡される。第2の連結スリット56においても同様に、2つのスリット44(44C、44D)のいずれか一方のスリット44に巻き線46が選択的に通される。第3の連結スリット57においても同様に、2つのスリット44(44E、44F)のいずれか一方のスリット44に巻き線46が選択的に通される。すなわち、各連結スリットが備える2つのスリット44のいずれか一方のスリットを、1ノズル巻きの際に巻き線46が通されるスリットとし、他方のスリットを、3ノズル巻きの際に巻き線46が通されるスリットとしている。
【0064】
また、外周壁部41には、第1の連結スリット55と第2の連結スリット56が、外周壁部41の周方向に隣り合って形成されている。第1の連結スリット55は、第1スリット44Aと、第1スリット44Aよりもスリットの深さが小さい第2スリット44Bと、を有する。第2の連結スリット56は、第3スリット44Cと、第3スリット44Cよりも深さが大きい第4スリット44Dと、を有する。
【0065】
第1スリット44Aの深さは、第3スリット44Cの深さよりも大きい(図8参照)。第2スリット44Bの深さは、第4スリット44Dの深さよりも小さい。また、第3スリット44Cの深さは、第2スリット44Bの深さよりも小さい。第4スリット44Dの深さは、第1スリット44Aの深さよりも小さい。
【0066】
また、外周壁部41には、外周壁部41の周方向における一方向である、図中の左端側から右端側に向かって、第1の連結スリット55、第2の連結スリット56の順に形成されている。言い換えると、外周壁部41の周方向において、第1の連結スリット55が第1インシュレータティース部42-1の近傍に配置されており、第2の連結スリット56が第2インシュレータティース部42-2の近傍に配置されている。したがって、外周壁部41には、上述した一方向に向かって第1スリット44A、第2スリット44B、第3スリット44C、第4スリット44Dの順に形成されている。これにより、後述のように、3ノズル巻きと1ノズル巻きとで第1U相渡り線部分49-U1と第2V相渡り線部分49-V2の位置関係を逆転させることが可能となる。
【0067】
また、図6に示すように、外周壁部41の周方向における上述の一方向に沿って、第1スリット44A、第2スリット44B、第3スリット44Cの深さが順番に小さくなるように形成されている(図8参照)。これにより、外周壁部41の上下方向(回転軸3の軸方向)に対して巻き線46の渡り線部分49の間隔をあけて掛け渡すことが可能になり、各相の巻き線46同士の絶縁距離を確保することできる。
【0068】
また、下インシュレータ25の第1インシュレータティース部42-1には、第3U相巻き線46―U3につながるU相電源線48―Uの始端S側に隣接する巻回部45(第1ステータコアティース部32-1)が設けられている。外周壁部41の周方向において、第1の連結スリット55には、第1インシュレータティース部42-1に対して近い側に第1スリット44Aが形成されており、第1インシュレータティース部42-1に対して遠い側に第2スリット44Bが形成されている。このような配置において、第1インシュレータティース部42-1から第2インシュレータティース部42-2側に向かって上述の一方向へ、第3U相巻き線46-U3から第1U相渡り線部分49-U1が延ばされている。
【0069】
そして、上述のように第1スリット44Aの深さが、第2スリット44Bの深さよりも大きく形成されていることにより、第1スリット44Aに通された第1U相渡り線部分49-U1が第2スリット44Bに移動することを抑えられる。したがって、外周壁部41に掛け渡された巻き線46の移動や緩みが抑えられるので、各相の巻き線46同士の絶縁状態の信頼性を高められる。言い換えると、仮に、第1スリット44Aと第2スリット44Bの各深さが上述とは逆の場合、すなわち第1スリット44Aの深さが第2スリット44Bの深さよりも小さい場合には、第1スリット44Aに通された第1U相渡り線部分49-U1が、深さが小さい第1スリット44Aから、深さが大きい第2スリット44Bに移動しやすくなるので好ましくない。
【0070】
また、下インシュレータ25の第2インシュレータティース部42-2には、第2V相巻き線46-V2につながる電源線としてのV相中性線47-Vの終端E側に隣接する巻回部45(第2ステータコアティース部32-2)が設けられている。外周壁部41の周方向において、第2の連結スリット56には、第2インシュレータティース部42-2に対して近い側に第3スリット44Cが形成されており、第2インシュレータティース部42-2に対して遠い側に第4スリット44Dが形成されている。このような配置において、第1インシュレータティース部42-1から第2インシュレータティース部42-2側に向かって上述の一方向へ、第2V相巻き線46-V2までの第2V相渡り線部分49-V2が延ばされている。
【0071】
そして、上述のように第4スリット44Dの深さが、第3スリット44Cの深さよりも大きく形成されていることにより、後述する1ノズル巻きの場合(図9及び図10参照)において、第4スリット44Dに通された第2V相渡り線部分49-V2が第3スリット44Cに移動することを抑えられる。したがって、外周壁部41に掛け渡された巻き線46の移動や緩みが抑えられるので、各相の巻き線46同士の絶縁状態の信頼性を高められる。言い換えると、仮に、第3スリット44Cと第4スリット44Dの各深さが上述とは逆の場合、すなわち第4スリット44Dの深さが第3スリット44Cの深さよりも小さい場合には、第4スリット44Dに通された第2V相渡り線部分49-V2が、深さが小さい第4スリット44Dから、深さが大きい第3スリット44Cに移動しやすくなるので好ましくない。
【0072】
また、第3の連結スリット57は、第8インシュレータティース部42-8の近傍に配置されている。第3の連結スリット57は、第1の連結スリット55の形状と同様に、第5スリット44Eと、第5スリット44Eよりも深さが小さい第6スリット44Fと、を有する。外周壁部41には、上述した一方向に向かって第5スリット44E、第6スリット44Fの順に形成されている。
【0073】
[3ノズル巻きにおける巻き線の要部]
図8は、実施例における下インシュレータ25の要部に3ノズル巻きで巻き付けられた巻き線46を示す拡大図である。図6及び図8に示すように、3ノズル巻きの場合、第3U相巻き線46-U3から引き出された第1U相渡り線部分49-U1は、第1の連結スリット55の第1スリット44Aに通されて、外周壁部41の外周面に沿って掛け渡されている。また、第1V相巻き線46-V1(図6)から延ばされて外周壁部41の外周面に掛け渡された第2V相渡り線部分49-V2は、第2の連結スリット56の第3スリット44Cに通されて、第2V相巻き線46-V2に巻かれている。
【0074】
このように3ノズル巻きの場合には、第1の連結スリット55の第1スリット44Aと第2の連結スリット56の第3スリット44Cが使用されており、第1の連結スリット55の第2スリット44Bと第2の連結スリット56の第4スリット44Dが使用されない。
【0075】
また、図6に示すように、3ノズル巻きの場合には、第1V相巻き線46-V1から引き出された第2V相渡り線部分49-V2が、第3の連結スリット57の第6スリット44Fに通されて、外周壁部41の外周面に沿って掛け渡されている。したがって、3ノズル巻きの場合には、第3の連結スリット57において、第6スリット44Fが使用されており、第5スリット44Eが使用されない。3ノズル巻きの場合、第2V相渡り線部分49-V2が第6スリット44Fに通されることで、第3スリット44Cまで延ばされる第2V相渡り線部分49-V2の、外周壁部41の上下方向(回転軸3の軸方向)に対する変位量が少なくなるので、第2V相渡り線部分49-V2を第3スリット44Cの位置に向かってスムーズに掛け渡すことができる。
【0076】
[1ノズル巻きにおける巻き線の要部]
図9は、実施例における下インシュレータ25に対して、1ノズル巻きで巻き付けられた各相の巻き線46を示す展開図である。図10は、実施例における上インシュレータ24の要部に1ノズル巻きで巻き付けられた巻き線46を示す拡大図である。図9及び図10では一例として、各相の巻き線46をV相、W相、U相の順番に巻き付けた状態を示している。
【0077】
1ノズル巻きでは、1つのノズルを有する巻線機を用いて、3相(V相、W相、U相)の各相の導線を1相ずつ順番に下インシュレータ25に巻き付けている。1ノズル巻きで巻き線46を巻き付けてステータ22を製造する場合は、第1の連結スリット55、第2の連結スリット56及び第3の連結スリット57のそれぞれが有する隣り合う2つのスリット(44Aと44B、44Cと44D、44Eと44F)において選択的に使用されるスリットが異なる点と、各相の巻き線46を同時ではなく1相ずつ順番に巻き付けている点とを除いて、上述した3ノズル巻きと同様にして各相の巻き線46が巻かれている。
【0078】
ここで、図9を参照して、1つのノズルのみを備える巻線機を用いた1ノズル巻きで巻き線46を巻き付ける場合のステータ22の製造方法について、V相、W相、U相の順番で各相の導線を巻く場合を例に説明する。ここでは、3ノズル巻きの場合と共通の部分についての説明を省略する。
【0079】
まず、3相のうち最初に巻くV相導線について説明する。1ノズル巻き用の巻線機は、1つのノズルを移動させることで、V相導線の一端である始端Sを第5ステータコアティース部32-5のリード側に配置してV相電源線48-Vとして始端Sから延ばす。巻線機は、始端Sから延ばしたV相導線を第5ステータコアティース部32-5に反時計回りに巻回することにより、V相導線によって第3V相巻き線46-V3を形成する。次いで、巻線機は、ノズルを移動させて、第3V相巻き線46-V3から延ばしたV相導線を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたV相導線を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、V相導線によって第1V相渡り線部分49-V1を形成する。続いて巻線機は、ノズルを移動させて、第1V相渡り線部分49-V1から延ばしたV相導線をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたV相導線を第8ステータコアティース部32-8に反時計回りに巻回することにより、V相導線によって第1V相巻き線46-V1を形成する。
【0080】
次いで、巻線機は、ノズルを移動させて、第1V相巻き線46-V1から延びるV相導線を外周壁部41の連結スリット57のうちのスリット44Eに通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたV相導線を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、V相導線によって第2V相渡り線部分49-V2を形成する。続いて巻線機は、ノズルを移動させて、第2V相渡り線部分49-V2から延ばしたV相導線を連結スリット56のうちのスリット44Dに通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたV相導線を第2ステータコアティース部32-2に反時計回りに巻回することにより、V相導線によって第2V相巻き線46-V2を形成する。最後に、巻線機は、ノズルを移動させることで、V相導線の他端である終端Eを第2ステータコアティース部32-2のリード側に配置してV相中性線47-Vを形成する。
【0081】
3相のうちV相導線の次に巻き付けるW相導線についても、1つのノズルを移動させることで、V相導線と同様の手順で巻き付けられる。W相導線の巻き方について詳細な説明は省略する。
【0082】
最後に、3相のうち最後に巻くU相導線について説明する。1ノズル巻き用の巻線機は、1つのノズルを移動させることで、U相導線の一端である始端Sを第1ステータコアティース部32-1のリード側に配置してU相電源線48-Uとして始端Sから延ばす。巻線機は、始端Sから延ばしたU相導線を第1ステータコアティース部32-1に反時計回りに巻回することにより、U相導線によって第3U相巻き線46-U3を形成する。次いで、巻線機は、ノズルを移動させて、第3U相巻き線46-U3から延ばしたU相導線を外周壁部41の連結スリット55のうちのスリット44Bに通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相導線を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相導線によって第1U相渡り線部分49-U1を形成する。続いて巻線機は、ノズルを移動させて、第1U相渡り線部分49-U1から延ばしたU相導線をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたU相導線を第4ステータコアティース部32-4に反時計回りに巻回することにより、U相導線によって第1U相巻き線46-U1を形成する。
【0083】
次いで、巻線機は、ノズルを移動させて、第1U相巻き線46-U1から延びるU相導線を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相導線を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相導線によって第2U相渡り線部分49-U2を形成する。続いて巻線機は、ノズルを移動させて、第2U相渡り線部分49-U2から延ばしたU相導線をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたU相導線を第7ステータコアティース部32-7に反時計回りに巻回することにより、U相導線によって第2U相巻き線46-U2を形成する。最後に、巻線機は、ノズルを移動させることで、U相導線の他端である終端Eを第7ステータコアティース部32-7のリード側に配置してU相中性線47-Uを形成する。
【0084】
本実施例では、1ノズル巻きの場合にも3ノズル巻きと同様に、図9に示すように、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿って、3相の各渡り線部分49が互いに交差することなく掛け渡されており、各渡り線部分49同士の絶縁距離が確保されている。なお、V相、W相、U相の各相の巻き線46を入れ替えた場合にも、1ノズル巻きにおいて各相の巻き線を巻く順番を変更することで、各相の各渡り線部分49が互いに交差することなく、各渡り線部分49同士の絶縁距離が確保される。
【0085】
図9及び図10に示すように、1ノズル巻きによりV相、W相、U相の順番で巻き線46を巻き付けた場合、3相の巻き線46のうち最初に巻かれるV相導線のうち、第1V相巻き線46-V1(図6)から延ばされて外周壁部41の外周面に掛け渡された第2V相渡り線部分49-V2は、第2の連結スリット56の第4スリット44Dに通されて、第2V相巻き線46-V2に巻かれている。また、3相の巻き線46のうち最後に巻かれるU相導線のうち、第3U相巻き線46-U3から引き出された第1U相渡り線部分49-U1は、第1の連結スリット55の第2スリット44Bに通されて、外周壁部41の外周面に沿って掛け渡されている。
【0086】
したがって、図8図10(または図6図9)を比較すると、3ノズル巻きと1ノズル巻きとで、外周壁部41の上下方向(回転軸3の軸方向)における第1U相渡り線部分49-U1と第2V相渡り線部分49-V2の位置関係がそれぞれ逆転している。これは、上述したように第1スリット44Aの深さが第3スリット44Cの深さよりも大きく、第2スリット44Bの深さが第4スリット44Dの深さよりも小さいことにより、3ノズル巻きと1ノズル巻きとで第1U相渡り線部分49-U1と第2V相渡り線部分49-V2の位置関係を逆転させることが可能となるためである。これにより、1ノズル巻きでステータ22を製造する場合において、V相の巻き線46の第2V相渡り線部分49-V2よりも上方(反リード側)に、V相の後に巻かれるU相の巻き線46の第1U相渡り線部分49-U1を位置させることができるので、図13に示した従来のインシュレータ101のように1ノズル巻きの場合に第1U相渡り線部分49-U1と第2V相渡り線部分49-V2が交差することが避けられている。
【0087】
このように1ノズル巻きの場合には、第1の連結スリット55においては第2スリット44Bが、第2の連結スリット56においては第4スリット44Dが、それぞれ選択的に使用されており、3ノズル巻きの場合に使用された第1の連結スリット55の第1スリット44Aと第2の連結スリット56の第3スリット44Cは使用されない。
【0088】
すなわち、本実施例では、第1の連結スリット55が備える2つのスリット44(44A、44B)のうちの一方のスリットである第2スリット44Bを、1ノズル巻きの際に巻き線46が通されるスリットとし、他方のスリットである第1スリット44Aを、3ノズル巻きの際に巻き線46が通されるスリットとしている。同様に、第2の連結スリット56が備える2つのスリット44(44C、44D)のうちの一方のスリットである第4スリット44Dを、1ノズル巻きの際に巻き線46が通されるスリットとし、他方のスリットである第3スリット44Cを、3ノズル巻きの際に巻き線46が通されるスリットとしている。
【0089】
また、本実施例では、図9に示すように、1ノズル巻きの場合には、第1V相巻き線46-V1から引き出された第2V相渡り線部分49-V2が、第3の連結スリット57の第5スリット44Eに通されて、外周壁部41の外周面に沿って水平に掛け渡されている。したがって、1ノズル巻きの場合には、第3の連結スリット57において、第5スリット44Eが選択的に使用されており、第6スリット44Fは使用されない。1ノズル巻きの場合、第2V相渡り線部分49-V2が第5スリット44Eに通されることで、第4スリット44Dまで延ばされる第2V相渡り線部分49-V2の、外周壁部41の上下方向(回転軸3の軸方向)に対する変位量が少なくなるので、第2V相渡り線部分49-V2を第4スリット44Dの位置に向かってスムーズに掛け渡すことができる。尚、1ノズル巻きの場合においても、3ノズル巻きの場合と同様に、第2V相渡り線部49-V2が第3の連結スリット57の第6スリット44Fに通されるようにしてもよい。この場合でも、第2V相渡り線部49-V2を第2の連結スリット56の第4スリット44Dまで掛け渡すことが可能であるが、渡り線46の第2V相渡り線部49-V2が下方向(リード側)に傾斜して架け渡されることで、渡り線46を外周壁部41の外周側から内周側に第4スリット44Dを通して引き込む動作がやり難くなる。
【0090】
上述したように本実施例では、ステータ22の製造工程において3ノズル巻きと1ノズル巻きとを切り替える必要があっても、第1スリット44Aと第2スリット44Bのいずれか一方のスリットと、第3スリット44Cと第4スリット44Dのいずれか一方のスリットとを選択的に使用することにより、3ノズル巻きと1ノズル巻きで下インシュレータ25(上インシュレータ24)を共通化できる。
【0091】
図11は、実施例における下インシュレータ25の要部の変形例を示す拡大図である。図11に示すように、第1の連結スリット55には、巻き線46が引っ掛けられる第1掛け止め部59Aが、第2スリット44B内における第1スリット44A側とは反対側に、第1スリット44A側よりも深さが大きくなるように形成されている。また、第2の連結スリット56には、巻き線46が引っ掛けられる第2掛け止め部59Bが、第3スリット44C内における第4スリット44D側とは反対側に、第4スリット44D側よりも深さが大きくなるように形成されている。
【0092】
第1掛け止め部59A及び第2掛け止め部59Bは、段差部58の上端を、外周壁部41の周方向に対して下向きに傾斜させることで形成されている。なお、第1掛け止め部59A及び第2掛け止め部59Bは、上述の形状に限定されず、例えば、段差部58の上端に凹部(図示せず)が形成されてもよい。また、図示しないが、第3の連結スリット57の第6スリット44F内にも掛け止め部が形成されてもよい。
【0093】
これにより、第1の連結スリット55において第2スリット44Bに通された巻き線46が掛け止め部により第2スリット44Bに適切に引っ掛けられるので、巻き線46が第2スリット44Bから第1スリット44Aに移動することが抑えられる。同様に、第2の連結スリット56において第3スリット44Cに通された巻き線46が掛け止め部により第3スリット44Cに適切に引っ掛けられるので、巻き線46が第3スリット44Cから第4スリット44Dに移動することが抑えられる。その結果、外周壁部41に掛け渡された巻き線46の移動や緩みが抑えられるので、各相の巻き線46同士の絶縁状態の信頼性を高められる。
【0094】
[実施例の効果]
上述したように実施例の3相モータ6の下インシュレータ25(上インシュレータ24)の外周壁部41には、複数のスリット44のうち、外周壁部41の周方向に隣り合う2つのスリット(第1スリット44Aと第2スリット44B)が連なることで第1の連結スリット55が形成されている。第1の連結スリット55は、外周壁部41の一端から延びる深さが異なる2つのスリットの第1スリット44Aと第2スリット44Bが連なることで段差部58が設けられている。同様に外周壁部41には、外周壁部41の周方向に隣り合う2つのスリット(第3スリット44Cと第4スリット44D)が連なることで第2の連結スリット56が形成されている、第2の連結スリット56は、外周壁部41の一端から延びる深さが異なる2つのスリットの第3スリット44Cと第4スリット44Dが連なることで段差部58が設けられている。第1の連結スリット55は、2つのスリット(第1スリット44Aと第2スリット44B)のいずれか一方のスリット44に巻き線46が選択的に通されることにより、巻き線46が外周壁部41に沿って掛け渡される。また、第2の連結スリット56は、2つのスリット(第3スリット44Cと第4スリット44D)のいずれか一方のスリット44に巻き線46が選択的に通されることにより、巻き線46が外周壁部41に沿って掛け渡される。このように、各連結スリットが備える2つのスリット44のいずれか一方のスリット44を選択的に使用することで、1ノズル巻きと3ノズル巻きとの両方で、3相の巻回部45が形成される下インシュレータ25(上インシュレータ24)を共通化することができる。その結果、成形金型を汎用化したり、インシュレータの誤使用を防止したりして、3相モータ6の製造工程の段取り作業を簡素化し、3相モータ6の製造コストを低減できる。さらに、外周壁部41に掛け渡される各相の巻き線46同士の絶縁距離を適切に確保することもできる。
【0095】
また、実施例における下インシュレータ25(上インシュレータ24)において、第1の連結スリット55は、第1スリット44Aと、第1スリット44Aよりも深さが小さい第2スリット44Bと、を有する。第2の連結スリット56は、第3スリット44Cと、第3スリット44Cよりも深さが大きい第4スリット44Dと、を有する。第1スリット44Aの深さが第3スリット44Cの深さよりも大きく、第2スリット44Bの深さが第4スリット44Dの深さよりも小さい。外周壁部41には、外周壁部41の周方向における一方向に向かって、第1スリット44A、第2スリット44B、第3スリット44C、第4スリット44Dの順に形成されている。これにより、3ノズル巻きと1ノズル巻きとで第1U相渡り線部分49-U1と第2V相渡り線部分49-V2の位置関係を逆転させることが可能となり、従来のインシュレータ101のように1ノズル巻きの場合に第1U相渡り線部分49-U1と第2V相渡り線部分49-V2が交差することを避けられる。
【0096】
また、実施例における下インシュレータ25(上インシュレータ24)の外周壁部41には、第2スリット44B内における第1スリット44A側とは反対側に、第1スリット44A側よりも深さが大きくなるように形成されて巻き線46が引っ掛けられる第1掛け止め部59Aと、第3スリット44C内における第4スリット44D側とは反対側に、第4スリット44D側よりも深さが大きくなるように形成されて巻き線46が引っ掛けられる第2掛け止め部59Bとが形成されている。これにより、巻き線46が第2スリット44Bに適切に引っ掛けられるので、巻き線46が第2スリット44Bから第1スリット44Aに移動することが抑えられる。同様に、巻き線46が第3スリット44Cに適切に引っ掛けられるので、巻き線46が第3スリット44Cから第4スリット44Dに移動することが抑えられる。したがって、外周壁部41に掛け渡された巻き線46の移動や緩みが抑えられるので、各相の巻き線46同士の絶縁状態の信頼性を高められる。
【0097】
また、実施例における下インシュレータ25(上インシュレータ24)の第1の連結スリット55には、外周壁部41の周方向において、第1インシュレータティース部42-1に対して近い側に第1スリット44Aが形成されており、第1インシュレータティース部42-1に対して遠い側に第2スリット44Bが形成されている。第1スリット44Aの深さは、第2スリット44Bの深さよりも大きい。これにより、第1スリット44Aに通された第1U相渡り線部分49-U1が第2スリット44Bに移動することを抑えられる。したがって、外周壁部41に掛け渡された巻き線46の移動や緩みが抑えられるので、各相の巻き線46同士の絶縁状態の信頼性を高められる。
【0098】
また、実施例における下インシュレータ25(上インシュレータ24)の第2の連結スリット56には、外周壁部41の周方向において、第2インシュレータティース部42-2に対して近い側に第3スリット44Cが形成されており、第2インシュレータティース部42-2に対して遠い側に第4スリット44Dが形成されている。第4スリット44Dの深さは、第3スリット44Cの深さよりも大きい。これにより、1ノズル巻きの場合において、第4スリット44Dに通された第2V相渡り線部分49-V2が第3スリット44Cに移動することを抑えられる。したがって、外周壁部41に掛け渡された巻き線46の移動や緩みが抑えられるので、各相の巻き線46同士の絶縁状態の信頼性を高められる。
【0099】
なお、本実施例における3相モータは、ロータリ圧縮機に用いられたが、スクロール圧縮機等の他の圧縮機に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 圧縮機
6 3相モータ
21 ロータ
22 ステータ
24 上インシュレータ(インシュレータ)
25 下インシュレータ(インシュレータ)
32-1~32-9 ステータコアティース部(ティース部)
41 外周壁部
42-1~42-9 インシュレータティース部(巻胴部)
44 スリット
44A 第1スリット
44B 第2スリット
44C 第3スリット
44D 第4スリット
44E 第5スリット
44F 第6スリット
45 巻回部
46 巻き線
55 第1の連結スリット
56 第2の連結スリット
57 第3の連結スリット
58 段差部
59A 第1掛け止め部
59B 第2掛け止め部
C 中心軸
E 終端
S 始端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-01-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き線が巻回されて形成される巻回部が筒状のステータの周方向に沿って配置される3相モータに用いられ、前記ステータの中心軸の方向における端部に固定されるインシュレータであって、
筒状の外周壁部と、前記外周壁部の内周に設けられて前記巻き線が巻回される巻胴部と、を備え、
前記外周壁部は、前記外周壁部の中心軸の方向における一端から他端まで前記中心軸に沿って延びて形成されて前記巻回部から引き出された前記巻き線が通される複数のスリットを有し、
前記外周壁部には、前記複数のスリットのうち前記外周壁部の周方向に隣り合い前記一端から前記他端まで延びる深さが異なる2つのスリットが連なることで段差部が設けられた、連結スリットが形成され、
前記連結スリットは、前記外周壁部の周方向に隣り合って形成された第1の連結スリットと第2の連結スリットを含み、
前記第1の連結スリットは、第1スリットと、前記第1スリットよりも前記深さが小さい第2スリットと、を有し、
前記第2の連結スリットは、第3スリットと、前記第3スリットよりも前記深さが大きい第4スリットと、を有し、
前記外周壁部には、前記外周壁部の周方向における一方向に向かって、前記第1スリット、前記第2スリット、前記第3スリット、前記第4スリットの順に形成されている、インシュレータ。
【請求項2】
前記巻き線は、1ノズル巻き構造の場合に前記連結スリットが備える前記2つのスリットのうち、一方のスリットのみに通され、3ノズル巻き構造の場合に前記連結スリットが備える前記2つのスリットのうち、他方のスリットのみに通されている、
請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項3】
前記第1スリットの前記深さは、前記第3スリットの前記深さよりも大きく、
前記第2スリットの前記深さは、前記第4スリットの前記深さよりも小さい、
請求項1または2に記載のインシュレータ。
【請求項4】
前記巻き線は、3ノズル巻き構造の場合に前記第1スリットと前記第3スリットのみに通され、1ノズル巻き構造の場合に前記第2スリットと前記第4スリットのみに通されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項5】
前記外周壁部には、前記第2スリットの前記他端における前記第1スリット側とは反対側に、前記他端における前記第1スリット側よりも前記深さが大きくなるように前記第2スリットに形成されて前記巻き線が引っ掛けられる第1掛け止め部と、前記第3スリットの前記他端における前記第4スリット側とは反対側に、前記他端における前記第4スリット側よりも前記深さが大きくなるように前記第3スリットに形成されて前記巻き線が引っ掛けられる第2掛け止め部との少なくとも一方の掛け止め部が形成されている、
請求項のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項6】
前記第1の連結スリットには、前記外周壁部の周方向において、前記巻き線につながる電源線の始端側に隣接する前記巻回部が設けられる巻胴部に対して近い側に前記第1スリットが形成され、当該巻胴部に対して遠い側に前記第2スリットが形成され、
前記第1スリットの前記深さは、前記第2スリットの前記深さよりも大きい、
請求項のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項7】
前記第2の連結スリットには、前記外周壁部の周方向において、前記巻き線につながる電源線の終端側に隣接する前記巻回部が設けられる巻胴部に対して近い側に前記第3スリットが形成され、当該巻胴部に対して遠い側に前記第4スリットが形成され、
前記第4スリットの前記深さは、前記第3スリットの前記深さよりも大きい、
請求項のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項8】
前記巻胴部の個数は、9以上、かつ、3の倍数個である、
請求項1~のいずれか1項に記載のインシュレータ。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載のインシュレータと、前記ステータと、前記ステータが発生する磁界で回転されるロータと、3相の前記巻回部を形成する前記巻き線と、を備えるモータ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本願の開示するインシュレータの一態様は、巻き線が巻回されて形成される巻回部が筒状のステータの周方向に沿って配置される3相モータに用いられ、ステータの中心軸の方向における端部に固定されるインシュレータであって、筒状の外周壁部と、外周壁部の内周に設けられて巻き線が巻回される巻胴部と、を備え、外周壁部は、外周壁部の中心軸の方向における一端から他端まで中心軸に沿って延びて形成されて巻回部から引き出された巻き線が通される複数のスリットを有し、外周壁部には、複数のスリットのうち外周壁部の周方向に隣り合い一端から他端まで延びる深さが異なる2つのスリットが連なることで段差部が設けられた、連結スリットが形成される。連結スリットは、外周壁部の周方向に隣り合って形成された第1の連結スリットと第2の連結スリットを含む。第1の連結スリットは、第1スリットと、第1スリットよりも深さが小さい第2スリットと、を有する。第2の連結スリットは、第3スリットと、第3スリットよりも深さが大きい第4スリットと、を有する。外周壁部には、外周壁部の周方向における一方向に向かって、第1スリット、第2スリット、第3スリット、第4スリットの順に形成されている。