(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057907
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】エッチング液、導電性パターン及びその製造方法、並びにタッチパネル
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20220404BHJP
C23F 1/30 20060101ALI20220404BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H01L21/306 F
C23F1/30
G06F3/041 660
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166411
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英範
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守正
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA10
4K057WA11
4K057WB01
4K057WG02
4K057WN01
5F043AA26
5F043BB18
5F043DD07
5F043DD13
5F043DD30
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】銀含有導電層をエッチングした際、LWRが小さい導電性パターンを形成可能であり、かつ、エッチング速度が速いエッチング液、導電性パターン及びその製造方法、並びにタッチパネルを提供する。
【解決手段】銀含有導電層をエッチングするためのエッチング液であって、硝酸イオンの含有量が、エッチング液の全量に対して、16.0質量%~35.0質量%の、エッチング液、導電性パターン及びその製造方法、並びにタッチパネル。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀含有導電層をエッチングするためのエッチング液であって、
硝酸イオンの含有量が、エッチング液の全量に対して、16.0質量%~35.0質量%の、エッチング液。
【請求項2】
前記硝酸イオンのイオン源が、硝酸鉄(III)を含む、請求項1に記載のエッチング液。
【請求項3】
前記硝酸イオンのイオン源が、硝酸鉄(III)である、請求項2に記載のエッチング液。
【請求項4】
前記硝酸イオンの含有量が、エッチング液の全量に対して、23.0質量%~33.0質量%である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項5】
前記銀含有導電層が、焼結した銀粒子を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項6】
前記銀含有導電層が、有機物を含む、請求項5に記載のエッチング液。
【請求項7】
前記銀含有導電層が、前記有機物として、分散剤及び分散助剤の少なくとも1つを含む、請求項6に記載のエッチング液。
【請求項8】
前記分散剤及び前記分散助剤の少なくとも1つを含む、請求項7に記載のエッチング液。
【請求項9】
前記分散剤が、酸基を含有する高分子化合物である、請求項7又は請求項8に記載のエッチング液。
【請求項10】
前記分散助剤が、ヒドロキシ基を含有する化合物である、請求項7~請求項9のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項11】
前記ヒドロキシ基を含有する化合物が、ポリグリセリン化合物である、請求項10に記載のエッチング液。
【請求項12】
基材と、銀含有導電層とを有する導電材料を準備する工程、
前記銀含有導電層の前記基材を有する側とは反対側の面に感光性樹脂層を形成する工程、
前記感光性樹脂層をパターン露光する工程、
前記パターン露光された前記感光性樹脂層を現像する工程、及び
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のエッチング液で、前記銀含有導電層をエッチングする工程
を含む導電性パターンの製造方法。
【請求項13】
前記エッチングする工程後に、前記感光性樹脂層を除去する工程を含む、請求項12に記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項14】
前記エッチング液の温度が、40℃以下である、請求項12又は請求項13に記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項15】
請求項12~請求項14のいずれか1項に記載の導電性パターンの製造方法により得られた導電性パターン。
【請求項16】
請求項15に記載の導電性パターンを備えたタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング液、導電性パターン及びその製造方法、並びにタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ディスプレイ、スマートフォン、タブレット等には、タッチパネルが広く用いられている。このようなタッチパネルには導電性パターンが備えられており、導電性パターンは、一般的に、エッチング液で金属導電層をエッチングすることにより形成されている。また、金属導電層としては、銀含有導電層が広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、硝酸イオンを含有するエッチング液を銀含有導電層のエッチングに用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等の技術を始めとして、銀含有導電層をエッチングするための技術が従来から検討されている。しかしながら、銀含有導電層をエッチングして得られる導電性パターンのLWR(Line Width Roughness;直線性)とエッチング速度とを向上させるための技術が十分でないのが現状である。
【0006】
本開示は、このような状況を鑑みてなされたものであり、本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、銀含有導電層をエッチングした際、LWRが小さい導電性パターンを形成可能であり、かつ、エッチング速度が速いエッチング液を提供することである。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、導電性パターンの製造方法を提供することである。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記導電性パターンの製造方法から得られた導電性パターンを提供することである。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記導電性パターンを備えたタッチパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> 銀含有導電層をエッチングするためのエッチング液であって、
硝酸イオンの含有量が、エッチング液の全量に対して、16.0質量%~35.0質量%の、エッチング液。
<2> 硝酸イオンのイオン源が、硝酸鉄(III)を含む、<1>に記載のエッチング液。
<3> 硝酸イオンのイオン源が、硝酸鉄(III)である、<2>に記載のエッチング液。
<4> 硝酸イオンの含有量が、エッチング液の全量に対して、23.0質量%~33.0質量%である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のエッチング液。
<5> 銀含有導電層が、焼結した銀粒子を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載のエッチング液。
<6> 銀含有導電層が、有機物を含む、<5>に記載のエッチング液。
<7> 銀含有導電層が、有機物として、分散剤及び分散助剤の少なくとも1つを含む、<6>に記載のエッチング液。
<8> 分散剤及び分散助剤の少なくとも1つを含む、<7>に記載のエッチング液。
<9> 分散剤が、酸基を含有する高分子化合物である、<7>又は<8>に記載のエッチング液。
<10> 分散助剤が、ヒドロキシ基を含有する化合物である、<7>~<9>のいずれか1つに記載のエッチング液。
<11> ヒドロキシ基を含有する化合物が、ポリグリセリン化合物である、<10>に記載のエッチング液。
<12> 基材と、銀含有導電層とを有する導電材料を準備する工程、
銀含有導電層の基材を有する側とは反対側の面に感光性樹脂層を形成する工程、
感光性樹脂層をパターン露光する工程、
パターン露光された感光性樹脂層を現像する工程、及び
硝酸イオンの含有量が、<1>~<11>のいずれか1つに記載のエッチング液で、銀含有導電層をエッチングする工程
を含む導電性パターンの製造方法。
<13> エッチングする工程後に、感光性樹脂層を除去する工程を含む、<12>に記載の導電性パターンの製造方法。
<14> エッチング液の温度が、40℃以下である、<12>又は<13>に記載の導電性パターンの製造方法。
<15> <12>~<14>のいずれか1つに記載の導電性パターンの製造方法により得られた導電性パターン。
<16> <15>に記載の導電性パターンを備えたタッチパネル。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、LWRが小さい導電性パターンを形成可能であり、かつ、エッチング速度が速いエッチング液が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、導電性パターンの製造方法が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、上記導電性パターンの製造方法から得られた導電性パターンが提供される。
本発明の他の実施形態によれば、上記導電性パターンを備えたタッチパネルが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係るエッチング液、導電性パターン及びその製造方法、並びにタッチパネルの詳細を説明する。
【0010】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「光」は、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線等の活性エネルギー線を包含する概念である。
本開示において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念として用いられる語である。
本開示において、重量平均分子量(Mw)は、特に断りのない限り、カラムとして、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、及びTSKgel G2000HxL(いずれも商品名、東ソー社製)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、示差屈折率(RI)検出器により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示おいて、酸価は、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量[mg]であり、本明細書においては、単位をmgKOH/gと記載する。酸価は、日本産業規格(JIS;Japanese Industrial Standards) K0070:1992に準拠した測定法により求められる。
本開示おいて、アミン価は、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンの総量を表し、試料1gを中和するのに必要な塩酸と当量の水酸化カリウムの質量[mg]であり、本明細書においては、単位をmgKOH/gと記載する。アミン価は、例えば、化合物中におけるアミン基の平均含有量から算出できる。アミン価は、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって当量点を求め、水酸化カリウムの当量に換算することにより求められる。
本開示において、「全固形分量」とは、全組成から溶媒を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、全組成から溶媒を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
本開示において、硝酸イオンの含有量を「硝酸イオン濃度」と呼ぶことがある。
【0011】
<エッチング液>
本開示に係るエッチング液は、銀含有導電層をエッチングするためのエッチング液であり、硝酸イオンの含有量が、エッチング液の全量に対して、16.0質量%~35.0質量%である。
【0012】
上述のように、タッチパネル等に備えらえる導電性パターンは、一般的に、エッチング液で金属導電層をエッチングすることにより形成されており、金属導電層として、銀含有導電層が広く用いられている。しかしながら、銀は酸化還元電位が高いため、エッチングの進行が遅い。例えば、特許文献1に記載のエッチング液では、硝酸イオン濃度が低く、銀含有導電層をエッチングするには不適である。また、硝酸イオン濃度を高めるだけでは、良好なLWRを得ることが難しい。
【0013】
これに対して、本開示に係るエッチング液は、硝酸イオンの含有量が16.0質量%~35.0質量%の範囲に制御されている。そのため、硝酸イオン濃度が高く、酸化されにくい銀であっても低い酸化電位で容易にエッチングすることができ、エッチング速度を高めることができる。更に、硝酸イオン濃度が過度に高くないため、エッチング速度を高めながらも、得られる導電パターンが硝酸イオンで過度に侵されることを抑制することができる。そのため、銀含有導電層をエッチングした際、LWRが小さい導電パターンを形成し、かつ、エッチング速度を高めることができる。
【0014】
[硝酸イオン含有量]
本開示に係るエッチング液は、硝酸イオンを含む水溶液であり、硝酸イオンの含有量は、エッチング液の全量に対して、16.0質量%~35.0質量%である。硝酸イオンの含有量を16.0質量%以上とすることにより、銀含有導電層をエッチングすることができる。
一方、硝酸イオンの含有量を35.0質量%以下とすることにより、LWRを小さくして良好な導電パターン形状を得ることができる。また、硝酸イオンのイオン源(例えば、後述のイオン源)をエッチング液に溶解することが容易となるため、溶解せずに残存するイオン源よる導電性パターンの浸食を防止して、LWRの悪化を容易に抑制することができる。
【0015】
硝酸イオンの含有量は、エッチング液の全量に対して、エッチング速度向上及び信頼性向上の観点から、23.0質量%~33.0質量%であることが好ましく、LWR向上及び信頼性向上の観点から、26.0質量%~31.5質量%であることがより好ましい。
【0016】
硝酸イオンの含有量は、イオンクロマトグラフィーにより、グラジエント溶離法で測定されるものである。
【0017】
[硝酸イオンのイオン源]
硝酸イオンのイオン源は、水に溶解して硝酸イオンを発生させることができるものであれば特に限定されない。硝酸イオンのイオン源としては、例えば、硝酸(濃硝酸、希硝酸);及び硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ウラニル、硝酸カルシウム、硝酸銀、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸鉛(II)、硝酸バリウム、硝酸コバルト(II)、硝酸ビスマス、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)、硝酸マンガン(II)、硝酸ナトリウム、硝酸パラジウム(II)、硝酸銅(II)、硝酸カドミウム、硝酸タリウム(I)、硝酸セリウム(III)、硝酸亜鉛、硝酸ニッケル(II)、硝酸ジルコニル、硝酸ホルミウム、硝酸アルミニウム、硝酸リチウム、硝酸水銀(II)、硝酸セシウム、硝酸ガドリニウム、硝酸プラセオジム(III)、硝酸エルビウム、硝酸ユウロピウム(III)、硝酸ルテチウム、硝酸ランタン(III)、硝酸インジウム(III)、硝酸イットリウム、硝酸ガリウム(II)、硝酸サマリウム、硝酸ネオジム、硝酸イッテルビウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸クロム(III)、硝酸スカンジウム、硝酸ルビジウム等の硝酸塩等が挙げられる。
エッチング速度をより容易に高める観点から、硝酸イオンのイオン源は、硝酸、硝酸鉄(II)及び硝酸鉄(III)からなる群から選択される1つ以上を含むことが好ましい。鉄(III)は、酸化還元電位の観点から、硝酸が銀を酸化する際の有効な触媒として作用する。そのため、エッチング速度をより更に容易に高める観点から、硝酸イオンのイオン源は、硝酸鉄(III)を含むことがより好ましく、硝酸鉄(III)であることが更に好ましい。
【0018】
より容易にエッチング性を高める観点から、硝酸イオンに対する水素イオンのモル比は、0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましく、0.05以下であることが更に好ましい。
水素イオンの含有量(mоl/l)は、pH計を用いてエッチング液の25℃におけるpHを測定し、下記式(1)により求めることができる。
水素イオンの含有量 = 10-pH 式(1)
【0019】
[他の成分]
エッチング液は、硝酸イオン及びそのイオン源に由来する対イオン以外の他の成分を含んでよい。他の成分として、後述の分散剤及び分散助剤、更に、バインダー樹脂、界面活性剤、成分安定剤、消泡剤等が挙げられる。他の成分はそれぞれ、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
また、バインダー樹脂として、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、メラミン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。
【0020】
[不純物]
エッチング液は、不純物の含有量が少ない方が好ましい。
不純物の具体例としては、金属元素を含むものとして、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ストロンチウム、これらのイオン及びフッ化ケイ素酸等が挙げられる。このような不純物の含有量は、エッチング液の全量に対して、10質量%以下とすることができ、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。エッチング液の不純物の含有量の下限は、エッチング液の全量に対して、質量基準で、1ppb以上又は0.1ppm以上とすることができる。
また、不純物の具体例としては、有機物として、例えば、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びヘキサンが挙げられる。このような不純物の含有量は、エッチング液の全量に対して、1.0質量%以下とすることができ、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。エッチング液の不純物の含有量の下限は、質量基準で、1ppb以上又は0.1ppm以上とすることができる。
【0021】
[エッチング液の製造方法]
エッチング液の製造方法は特に限定されず、上述の成分を水に溶解することにより製造してよい。水は、イオン交換水、蒸留水等の不純物が少ないものが好ましい。
【0022】
[銀含有導電層]
銀含有導電層は、銀を含み、銀としては、金属銀、及び銀と他金属との合金(以下、「銀合金」と呼ぶことがある)が含まれる。銀合金においては、銀合金中の銀元素の割合が50質量%よりも多いことが好ましい。
【0023】
銀含有導電層は、銀を含むものであれば特に限定されず、例えば、銀からなる導電層、銀合金からなる導電層、焼結した銀粒子を含む導電層(以下、「銀粒子導電層」と呼ぶことがある)等が挙げられる。銀粒子は、銀からなる粒子、銀合金からなる粒子、又はこれらの混合物であってよい。
以下、焼結した銀粒子及び焼結していない銀粒子について、区別することなく「銀粒子」と呼ぶことがある。また、焼結した銀粒子は、銀粒子間に間隙が存在するポーラス構造を有している。
【0024】
銀からなる導電層、及び銀合金からなる導電層は、例えば、スパッタリング法で形成したスパッタリング膜であってよい。
銀粒子導電層は、例えば、銀粒子を含む銀インク組成物の乾燥物を加熱処理して形成したものであってよい。
【0025】
銀含有導電層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜調節してよく、例えば、0.1μm~3.0μmであってよい。銀含有導電層の厚さは、例えば、触針式段差計、三次元表面構造解析顕微鏡等で測定することができる。市販の触針式段差計として、例えば、KLA-TENCOR社製の「SURFACE PROFILER P-10」が挙げられ、また、市販の三次元表面構造解析顕微鏡として、例えば、ZYGO Corporation製の「New View 5022」が挙げられる。
【0026】
より容易にエッチングする観点から、銀含有導電層は、銀粒子導電層であることが好ましい。銀粒子導電層では、焼結した銀粒子間の間隙にエッチング液が染み込むことにより、より速くエッチングすることができる。また、焼結した銀粒子は、スパッタリング膜と比較して柔軟であるため、例えば、タッチパネルに用いられるフレキシブル基板の電極(すなわち、導電性パターン)を形成するのに好適に用いることができる。
【0027】
(銀粒子)
銀粒子は特に限定されず、公知のものを用いることができる。銀粒子は、分散性向上の観点から、アルコキシアミン等の有機物で表面処理されたものであってよい。
【0028】
銀粒子の形状は特に限定されず、球状、楕円球状、針状、平板状等であってよい。銀粒子が球状又は楕円球状であると、銀粒子を焼結して得られた銀粒子導電層の折り曲げ耐性を容易に向上させることができる。このような銀粒子導電層は、例えば、タッチパネルに用いられるフレキシブル基板の電極(すなわち、導電性パターン)を形成するのに好適に用いることができる。
【0029】
銀粒子の平均粒径は特に限定されないが、分散性の観点から、1nm~400nmであることが好ましい。より好ましくは、2nm~200nmであり、特に好ましくは、5nm~100nmである。例えば、銀粒子導電層が銀インク組成物から形成される態様において、銀粒子の平均粒径は、後述のように、動的光散乱法により測定することができる。
【0030】
銀粒子の含有量は、銀粒子導電層の全量に対して、80質量%~99.9質量%であることが好ましく、85質量%~99質量%であることがより好ましい。
【0031】
銀粒子導電層は、有機物を含んでよい。有機物として、例えば、銀粒子の表面処理剤、分散剤、分散助剤等が挙げられる。このような有機物により、銀含有導電層における銀粒子の分散性が向上する。そのため、より均一な銀含有導電層を得ることができ、より均一にエッチングすることができる。
【0032】
銀粒子導電層は、LWRをより容易に向上させる観点から、有機物として、分散剤及び分散助剤の少なくとも1つを含むことが好ましい。LWRが向上するメカニズムは定かではないが、エッチングの際、銀粒子導電層に含まれる分散成分(「分散剤及び分散助剤の少なくとも1つ」を意味する)が、エッチング液に溶出しながらエッチングが進行することで、エッチングパターンのエッジ部分の局所的な浸食が抑制され易いためであると推察される。更に、エッチング液も、分散剤及び分散助剤の少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、上記浸食抑制の効果がより高まると推察され、LWRを向上させることがより容易となる。本開示の範囲は、上記推察により何ら限定されない。
【0033】
エッチング液が分散剤及び分散助剤の少なくとも1つを含む態様において、エッチング液に含まれ得る分散剤及び分散助剤は、銀含有導電層に含まれ得る分散剤及び分散助剤と同じ化合物群を意味し、分散能の有無とは無関係である。
また、銀含有導電層に含まれ得る分散剤及び分散助剤と同じ化合物群から選択される少なくとも1つの化合物を含むエッチング液は、その化合物が分散能を発揮することを意図してエッチング液に含まれたか否かによらず、本開示に係るエッチング液の範囲内である。
【0034】
(分散剤)
分散剤は特に限定されず、例えば、酸基又はアミン基の少なくとも1つを含む化合物であってよく、例えば、高分子化合物(例えば、グラフトポリマー)であってよい。LWRをより容易に向上させる観点から、分散剤は、酸基を有する高分子化合物であることが好ましい。酸基の種類は特に限定されず、例えば、カルボキシル基、リン酸由来の官能基であってよい。
【0035】
分散剤が酸基を有する場合、分散剤の酸価は特に限定されないが、例えば、5mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましく、10mgKOH/g~180mgKOH/gであることがより好ましく、20mgKOH/g~160mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0036】
分散剤がアミン基を有する場合、分散剤のアミン価は特に限定されないが、例えば、5mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましく、10mgKOH/g~180mgKOH/gであることがより好ましく、20mgKOH/g~160mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0037】
分散剤が酸基及びアミン基を有する場合、分散剤の酸価はアミン価より大きいことが好ましい。
分散剤の酸価とアミン価との差の絶対値は特に限定されないが、5mgKOH/g以上であることが好ましく、10mgKOH/g以上であることがより好ましく、20mgKOH/g以上であることが更に好ましい。上記絶対値も特に限定されず、例えば、100mgKOH/g以下であってよい。
【0038】
分散剤が高分子化合物である場合、分散剤の重量平均分子量は特に限定されず、例えば、2,000~100,000であってよく、3,000~80,000であることが好ましく、5,000~60,000であることがより好ましく、6,000~40,000であることが更に好ましい。
【0039】
分散剤として、市販品を用いることができる。酸基を有する高分子化合物である分散剤の市販品として、例えば、DisperBYK-101(酸価:30mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、DisperBYK-102(酸価:101mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、DisperBYK-103(酸価:101mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、DisperBYK-110(酸価:53mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、DisperBYK-111(酸価:129mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、DisperBYK-170(酸価:11mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、DisperBYK-190(酸価:10mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、DisperBYK-194N(酸価:75mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、DisperBYK-2015(酸価:10mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、DisperBYK-2090(酸価:60mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、DisperBYK-2096(酸価:40mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)(以上、BYKケミー社製);ソルスパース16009、ソルスパース36000(酸価:45mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ソルスパース41000(酸価:50mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ソルスパース21000(酸価:72mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ソルスパース26000(酸価:50mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ソルスパース36600(酸価:23mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ソルスパース39000(酸価:33mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ソルスパース4100、ソルスパース41090(酸価:23mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ソルスパース43000(酸価:8mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ソルスパース44000(酸価:12mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ソルスパース46000、ソルスパース53095(酸価:47mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ソルスパース54000(酸価:47mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)
(ソルスパース分散剤;以上、ゼネカ社製);TEGO Dispers 610(酸価:約140mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、TEGO Dispers 610S(酸価:約120mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、TEGO Dispers 630(酸価:約50mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、TEGO Dispers 651(酸価:約1mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、TEGO Dispers 655(酸価:約100mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、TEGO Dispers 750W(酸価:約15mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、TEGO Dispers 755W(酸価:約15mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)(以上、エボニック社製);ディスパロン DA-375(酸価:14mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、ディスパロン DA-1200(以上、楠本化成社製);フローレン WK-13E、フローレン G-700(酸価:60mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、フローレン G-900、フローレン GW-1500(酸価:55mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)、フローレン GW-1640(酸価:20mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)(以上、共栄化学工業社製);ジョンクリル611(酸価:53mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g、重量平均分子量:8100)(BASF社製)が挙げられる。
また、グラフトポリマーとしては、例えば、上記のDisperBYK-190及びソルスパース44000が挙げられる。
【0040】
アミン基を有する高分子化合物である分散剤の市販品として、例えば、DisperBYK-161(酸価:0mgKOH/g、アミン価:11mgKOH/g)、DisperBYK-162(酸価:0mgKOH/g、アミン価:13mgKOH/g)、DisperBYK-163(酸価:0mgKOH/g、アミン価:10mgKOH/g)、DisperBYK-164(酸価:0mgKOH/g、アミン価:18mgKOH/g)、DisperBYK-166(酸価:0mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、DisperBYK-167(酸価:0mgKOH/g、アミン価:13mgKOH/g)、DisperBYK-168(酸価:0mgKOH/g、アミン価:10mgKOH/g)、DisperBYK-182(酸価:0mgKOH/g、アミン価:13mgKOH/g)(以上、BYKケミー社製);EFKA 4046(酸価:0mgKOH/g、アミン価:17mgKOH/g~21mgKOH/g)、EFKA 4060(酸価:0mgKOH/g、アミン価:6mgKOH/g~10mgKOH/g)、EFKA 4080(酸価:0mgKOH/g、アミン価:3.6mgKOH/g~4.1mgKOH/g)、EFKA 4800(酸価:0mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g~43mgKOH/g)、EFKA 7462(酸価:0mgKOH/g、アミン価:8mgKOH/g)(以上、エフカアディティブ社製);ソルスパース13240(塩基性分散剤)、ソルスパース13940(塩基性分散剤)、ソルスパース28000(塩基性分散剤)、ソルスパース71000(酸価:0mgKOH/g、アミン価:77.4mgKOH/g)、(ソルスパース分散剤;以上、ゼネカ社製);ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン等のアルキルアミン;3-メトキシプロピルアミン、2-メトキシエチルアミン等の炭素数が5以下であるアルコキシアミンが挙げられる。
【0041】
酸基及びアミン基を有する高分子化合物である分散剤の市販品として、例えば、DisperBYK-106(酸価:132mgKOH/g、アミン価:74mgKOH/g)
(BYKケミー社製);EFKA 4010(酸価:10mgKOH/g~15mgKOH/g、アミン価:4mgKOH/g~8mgKOH/g)(以上、エフカアディティブ社製);ソルスパース24000(酸価:24mgKOH/g、アミン価:47mgKOH/g)、ソルスパース32000(酸価:15mgKOH/g、アミン価:180mgKOH/g)(ソルスパース分散剤;以上、ゼネカ社製);ディスパロン DA-234(酸価:16mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、ディスパロン DA-325(酸価:14mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)(以上、楠本化成社製)が挙げられる。
酸基及びアミン基を有し、かつ、酸価がアミン価より大きい高分子化合物である分散剤の市販品として、上記のDisperBYK-106及びEFKA 4010が挙げられる。
【0042】
分散剤は、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
銀粒子導電層が分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、銀粒子導電層の全量に対して、0.1質量%~7.0質量%であることが好ましく、0.2質量%~5.0質量%であることがより好ましい。
エッチング液が分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、エッチング液の全量に対して、0.01質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.05質量%~1.0質量%であることがより好ましく、0.1質量%~0.5質量%であることが更に好ましい。
【0044】
(分散助剤)
分散助剤は特に限定されないが、LWRをより容易に向上させる観点から、ヒドロキシ基を含有する化合物であることが好ましい。更に、得られる導電性パターンの信頼性(電気抵抗値の経時安定性)及びLWRの更なる向上の観点から、分散助剤は、ポリグリセリン化合物であることがより好ましい。LWRが向上するメカニズムは定かでないが、LWRの向上には、ポリグリセリン化合物が有する界面活性効果も寄与していると推察される。本開示の範囲は、上記推察により何ら限定されない。
【0045】
ポリグリセリン化合物は、ポリグリセリン骨格(複数個のグリセリン分子が縮合した構造)を有するものである限り、特に限定されない。ポリグリセリン化合物としては、例えば、ポリグリセリン、ポリグリセリンエステル、ポリグリセリンエーテル等が挙げられる。
【0046】
ポリグリセリンエステルとして、例えば、下記式(2)で表される化合物等が挙げられる。
R1COO-(C3H6O2)n-H (2)
[式(2)中、R1は、ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。nは、1~20の整数である]
【0047】
式(2)の括弧内のC3H6O2は、下記式(3)及び式(4)で示されるいずれかの構造を有する。
-CH2-CHOH-CH2O- (3)
-CH(CH2OH)CH2O- (4)
【0048】
式(2)中、nは、平均重合度を示し、1~20である。エッチング時間及びLWRの観点から、nは、2~18であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。平均重合度は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS;Gas Chromatography Mass Spectrometry)により、mの分布を求めて計算することで算出することができる。例えば、平均重合度は、日本分析工業社製の加熱脱着装置「型式 JTD-505III」と島津製作所社製のガスクロマトグラフ質量分析計「QP2010Ultra」とを組み合わせて測定してよい。
【0049】
ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の直鎖状アルキル基としては、例えば、下記の「炭素数8~22の直鎖状アルキル基」の1個以上の水素原子がヒドロキシ基で置換された基を挙げることができる。炭素数8~22の直鎖状アルキル基としては、例えば、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ラウリル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-パルミチル基、n-ヘプタデシル基、n-ステアリル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、n-ヘンエイコシル基、n-ドコシル基等が挙げられる。これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の直鎖状アルケニル基としては、例えば、下記の「炭素数8~22の直鎖状アルケニル基」の1個以上の水素原子がヒドロキシ基で置換された基を挙げることができる。炭素数8~22の直鎖状アルケニル基としては、例えば、n-オクテニル基、n-ノネニル基、n-デセニル基、n-ウンデセニル基、n-ドデセニル基、n-トリデセニル基、n-テトラデセニル基、n-ペンタデセニル基、n-ヘキサデセニル基、n-ヘプタデセニル基、n-オレイル基、n-ノナデセニル基、n-エイコセニル基、n-ヘンエイコセニル基、n-ドコセニル基等が挙げられる。これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の分岐鎖状アルキル基としては、例えば、下記の「炭素数8~22の分岐鎖状アルキル基」の1個以上の水素原子がヒドロキシ基で置換された基を挙げることができる。炭素数8~22の分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソオクチル基、s-オクチル基、t-オクチル基、イソノニル基、s-ノニル基、t-ノニル基、イソデシル基、s-デシル基、t-デシル基、イソウンデシル基、s-ウンデシル基、t-ウンデシル基、イソラウリル基、s-ラウリル基、t-ラウリル基、イソトリデシル基、s-トリデシル基、t-トリデシル基、イソテトラデシル基、s-テトラデシル基、t-テトラデシル基、イソペンタデシル基、s-ペンタデシル基、t-ペンタデシル基、イソパルミチル基、2-ヘキシルデシル基、s-パルミチル基、t-パルミチル基、イソヘプタデシル基、s-ヘプタデシル基、t-ヘプタデシル基、イソステアリル基、s-ステアリル基、t-ステアリル基、イソノナデシル基、s-ノナデシル基、t-ノナデシル基、2-オクチルラウリル基、イソエイコシル基、s-エイコシル基、t-エイコシル基、イソヘンエイコシル基、s-ヘンエイコシル基、t-ヘンエイコシル基、イソドコシル基、s-ドコシル基、t-ドコシル基等が挙げられる。これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の分岐鎖状アルケニル基としては、例えば、下記の「炭素数8~22の分岐鎖状アルケニル基」の1個以上の水素原子がヒドロキシ基で置換された基を挙げることができる。炭素数8~22の分岐鎖状アルケニル基としては、例えば、イソオクテニル基、s-オクテニル基、t-オクテニル基、イソノネニル基、s-ノネニル基、t-ノネニル基、イソデセニル基、s-デセニル基、t-デセニル基、イソウンデセニル基、s-ウンデセニル基、t-ウンデセニル基、イソドデセニル基、s-ドデセニル基、t-ドデセニル基、イソトリデセニル基、s-トリデセニル基、t-トリデセニル基、イソテトラデセニル基、s-テトラデセニル基、t-テトラデセニル基、イソペンタデセニル基、s-ペンタデセニル基、t-ペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、s-ヘキサデセニル基、t-ヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、s-ヘプタデセニル基、t-ヘプタデセニル基、イソオレイル基、s-オレイル基、t-オレイル基、イソノナデセニル基、s-ノナデセニル基、t-ノナデセニル基、イソエイコセニル基、s-エイコセニル基、t-エイコセニル基、イソヘンエイコセニル基、s-ヘンエイコセニル基、t-ヘンエイコセニル基、イソドコセニル基、s-ドコセニル基、t-ドコセニル基等が挙げられる。これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
ポリグリセリンエステルとして、例えば、モノステアリン酸ポリグリセリル(例えば、ステアリン酸テトラグリセリル、ステアリン酸デカグリセリル)、トリステアリン酸ポリグリセリル、テトラステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル(例えば、オレイン酸デカグリセリル)、ペンタオイン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル(例えば、ラウリン酸ポリグリセリル-10)、モノカプリン酸ポリグリセリル、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル、セスキステアリン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリル、セスキオレイン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸テトラグリセリル、モノイソステアリン酸ヘキサグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル等が挙げられる。
【0054】
ポリグリセリンエーテルとして、例えば、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
R2O-(C3H6O2)m-H (5)
[式(5)中、R2は、ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。mは、1~20の整数である]
【0055】
式(5)で表されるポリグリセリンエーテルとしては、例えば、(ポリ)グリセリンモノアルキルエーテル、(ポリ)グリセリンモノアルケニルエーテルが挙げられる。
【0056】
式(5)の括弧内のC3H6O2は、下記式(3)及び式(4)で示されるいずれかの構造を有する。
-CH2-CHOH-CH2O- (3)
-CH(CH2OH)CH2O- (4)
【0057】
式(5)中、mは、平均重合度を示し、1~20である。エッチング時間及びLWRの観点から、mは、2~18であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。平均重合度は、ポリグリセリンエステルについて上述したものと同様の方法で求めることができる。
【0058】
ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の直鎖状アルキル基としては、例えば、ポリグリセリンエステルについて上述した「炭素数8~22の直鎖状アルキル基」の1個以上の水素原子がヒドロキシ基で置換された基を挙げることができる。
【0059】
ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の直鎖状アルケニル基としては、例えば、ポリグリセリンエステルについて上述した「炭素数8~22の直鎖状アルケニル基」の1個以上の水素原子がヒドロキシ基で置換された基を挙げることができる。
【0060】
ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の分岐鎖状アルキル基としては、例えば、ポリグリセリンエステルについて上述した「炭素数8~22の分岐鎖状アルキル基」の1個以上の水素原子がヒドロキシ基で置換された基を挙げることができる。
【0061】
ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数8~22の分岐鎖状アルケニル基としては、例えば、ポリグリセリンエステルについて上述した「炭素数8~22の分岐鎖状アルケニル基」の1個以上の水素原子がヒドロキシ基で置換された基を挙げることができる。
【0062】
分散助剤の重量平均分子量は特に限定されず、例えば、300~3000であることが好ましく、300~2000であることがより好ましく、300~1500であることが更に好ましく、300以上1000未満であることが最も好ましい。
【0063】
分散助剤として、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、PGLE ML10(ポリグリセリンエステル:ラウリン酸ポリグリセリル-10)、PGLAL(ポリグリセリンエーテル:ポリグリセリル-4ラウリルエーテル)(以上、ダイセル社製);ポエム J-4081V(ステアリン酸テトラグリセリル)、ポエム J-0021(ラウリン酸デカグリセリル)、ポエム J-0081HV(ステアリン酸デカグリセリル)、ポエム J-0381V(オレイン酸デカグリセリル)、ポエム PR-100(ポリリシノレイン酸ポリグリセリル)、ポエム PR-300(ポリリシノレイン酸ポリグリセリル)(以上、理研ビタミン社製)等が挙げられる。
【0064】
分散助剤は、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
銀粒子導電層が分散助剤を含有する場合、分散助剤の含有量は、銀粒子導電層の全量に対して、0.1質量%~7.0質量%であることが好ましく、0.2質量%~5.0質量%であることがより好ましい。
エッチング液が分散助剤を含有する場合、分散助剤の含有量は、エッチング液の全量に対して、0.01質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.05質量%~1.0質量%であることがより好ましく、0.1質量%~0.5質量%であることが更に好ましい。
【0066】
(銀含有導電層の形成方法)
銀含有導電層の形成方法については、本開示に係る導電性パターンの製造方法において、後に詳細に説明する。
【0067】
<導電性パターンの製造方法>
本開示に係るエッチング液は、銀含有導電層をエッチングして得られる導電性パターンの製造に好適に用いることができる。そのような導電性パターンの製造方法は特に限定されないが、以下に説明する本開示に係る導電性パターンの製造方法により、導電性パターンを好ましく製造することができる。
【0068】
本開示に係る導電性パターンの製造方法は、
基材と、銀含有導電層とを有する導電材料を準備する工程(以下、「導電材料準備工程」と呼ぶことがある)、
銀含有導電層の基材を有する側とは反対側の面に感光性樹脂層を形成する工程(以下、「感光性樹脂層形成工程」と呼ぶことがある)、
感光性樹脂層をパターン露光する工程(以下、「露光工程」と呼ぶことがある)、
パターン露光された感光性樹脂層を現像する工程(以下、「現像工程」と呼ぶことがある)、及び
硝酸イオンの含有量が、エッチング液の全量に対して、16.0質量%~35.0質量%であるエッチング液で、銀含有導電層をエッチングする工程(以下、「エッチング工程」と呼ぶことがある)
を含む。
【0069】
[導電材料準備工程]
導電材料準備工程は、基材と、銀含有導電層とを有する導電材料を準備する工程である。
【0070】
(基材)
基材は特に限定されず、基材の形状及び材質を適宜選択してよい。例えば、基材は、ガラス基材、又は樹脂基材であってよい。基材がフレキシブルである場合、基材は、柔軟性の観点から、樹脂基材であることが好ましい。
【0071】
基材は、銀含有導電層以外の他の電極パターン(例えば、タッチセンサーに備えられる電極パターン)又は他の導電層(以下、「他の電極パターン」、「他の導電層」と呼ぶことがある)が予め形成されたものであってよい。また、本開示に係る導電性パターンの製造方法において、銀含有導電層に加えて、このような他の電極パターン又は他の導電層もエッチング対象としてよい。他の電極パターン及び他の導電層の材質としては、ITO(Indium Tin Oxide)、銀ナノワイヤー、表面を黒化処理した銀、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide、ZnO:Al)、GZO(Gallium doped Zinc Oxide、ZnO:Ga)等が挙げられる。
【0072】
樹脂基材の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ABS(Acrylonitril-Butadiene-Styrene)樹脂、AS(Acrylonitril-Styrene)樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリシクロオレフィン等が挙げられる。
【0073】
(銀含有導電層)
銀含有導電層は、上述したものを用いることができる。
【0074】
銀含有導電層の形成方法は特に限定されない。
銀からなる導電層、又は銀合金からなる導電層を形成する場合、例えば、スパッタリング法により成膜してよい。
銀粒子導電層を形成する場合、例えば、銀粒子を含む銀インク組成物の乾燥物を加熱することにより行ってよい。以下、銀インク組成物を用いて銀粒子導電層を形成する態様について説明する。
【0075】
(銀インク組成物)
銀インク組成物は、銀粒子を含む。銀粒子の平均粒径は特に限定されないが、分散性の観点から、1nm~400nmであることが好ましい。平均粒径は、動的光散乱法により測定される体積基準のメディアン径(D50)であり、市販の動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば、堀場製作所社製の「LB-550」)を用いて測定することができる。
また、銀インク組成物は、分散剤及び分散助剤の少なくとも1つを含むことが好ましい。
銀粒子、分散剤及び分散助剤のその他の詳細は、銀粒子導電層について上述したものと同様であるが、それらの含有量については、「銀粒子導電層の全量に対して」を「銀インク組成物の全固形分量に対して」と読み替えるものとする。
【0076】
銀インク組成物は、銀粒子、分散剤及び分散助剤以外の他の成分として、他の樹脂成分、界面活性剤、増粘剤、表面張力調整剤、防錆剤、溶媒等を含んでよい。
【0077】
防錆剤としては、例えば、特開2020-91322号公報の段落[0061]~段落[0079]に記載の複素環化合物(例えば、イミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、及びベンゾチアゾール化合物)が挙げられる。
【0078】
溶媒は特に限定されず、銀粒子の処理材、分散剤及び分散助剤の種類等を考慮して適宜選択してよく、水、有機溶剤、又はこれらの混合物であってよい。
【0079】
有機溶剤は特に限定されず、例えば、ヘキサン、トリエチルアミン、エチルエーテル、n-オクタン、シクロヘキサン、n-アミルアセテート、酢酸イソブチル、メチルイソプロピルケトン、アミルベンゼン、酢酸ブチル、四塩化炭素、エチルベンゼン、p-キシレン、トルエン、メチルプロピルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、ジオキサン、ピリジン、イソブタノール、n-ブタノール、ニトロエタン、イソプロピルアルコール、m-クレゾール、アセトニトリル、n-プロパノール、フルフリルアルコール、ニトロメタン、エタノール、クレゾール、エチレングリコール、メタノール、フェノール、p-クレゾール、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール2-ペンタノン、2-ヘプタノン、酢酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、酢酸-2-ブトキシエチル、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル、酢酸-2-メトキシエチル、2-ヘキシルオキシエタノール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、テトラヒドロナフタレン、ジヒドロテルピネオール、1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0080】
溶媒は、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
銀インク組成物が溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、銀インク組成物の全量に対して、例えば、30質量%~80質量%であってよい。
【0082】
銀インク組成物として、市販品を用いることができ、分散剤及び分散助剤の少なくとも1つを含む市販品を用いてよい。銀インク組成物の市販品としては、例えば、バンドー化学社製の「Flow Metal SR7500」、「Flow Metal SR7000」、「Flow Metal SR6000」等が挙げられる。また、銀インク組成物として、分散剤及び分散助剤の少なくとも1つを市販品に含有させて調製したものを用いてもよい。
【0083】
銀インク組成物の製造方法は特に限定されず、上述の成分を混合することにより製造してよい。
【0084】
(銀インク組成物の付与)
銀インク組成物を基材に付与する方法は特に限定されず、例えば、バーコーター法、ドクターブレード法、スプレー塗装法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。付与回数は、1回であってよく、複数回であってもよい。付与部分は、基材の表面全面であってよく、導電性パターンを作製する基材の表面の一部であってもよい。
【0085】
銀インク組成物を付与して形成した銀インク膜の好適な厚さは、付与方法及び銀インク組成物の全固形分量にもよるが、例えば、0.1μm~20μmであることが好ましく、0.2μm~10μmであることがより好ましい。これにより、基材を湾曲させた際に剥離しにくい導電性パターンをより容易に形成することができ、また、電極パターンの幅方向の浸食を抑制しながら、その厚さ方向にエッチングを進行させることがより容易となる。更に、所望の抵抗値を導電性パターンに付与することがより容易となる。銀インク膜の厚さは、例えば、触針式段差計、三次元表面構造解析顕微鏡等で測定することができる。市販の触針式段差計として、例えば、KLA-TENCOR社製の「SURFACE PROFILER P-10」が挙げられ、また、市販の三次元表面構造解析顕微鏡として、例えば、ZYGO Corporation製の「New View 5022」が挙げられる。
【0086】
銀インク組成物を付与して形成した銀インク膜は、必要に応じて、乾燥させてよい。乾燥条件は特に限定されず、基材の種類等も考慮して適宜調節してよい。乾燥温度は、例えば、50℃~150℃であってよい。乾燥雰囲気は、例えば、空気であってよく、一般には空気である。
【0087】
(加熱処理)
銀インク膜加熱処理を施すことにより、銀粒子を焼結させて、銀粒子導電層を得る。銀インク組成物が分散成分(「分散剤及び分散助剤の少なくとも1つ」を意味する)を含む場合、得られる銀粒子導電層のポーラス構造部分に、分散成分の少なくとも一部が残存する。
【0088】
加熱条件は特に限定されない。加熱炉として、種々のものを使用することができ、例えば、バッチ式加熱炉、ローラー式加熱炉、ベルト式加熱炉等が挙げられる。中でも、連続的に加熱することができるベルト式加熱炉が生産性の面で好ましい。加熱温度は、100℃~130℃であることが好ましく、110℃~120℃であることがより好ましい。加熱時間は、短時間加熱から長時間加熱まで、銀インク膜が導電性を有する銀粒子導電層となる時間であれば特に限定されないが、基材の耐熱性の観点からは、短時間加熱が好ましい。加熱雰囲気は特に限定はされず、空気中、非酸化雰囲気中、還元雰囲気中、真空中等のいずれであってもよい。上記非酸化性雰囲気は、酸素を含まない、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素等のいずれかのガスを含む雰囲気、または、これらのガスを複数種含む混合ガス雰囲気である。また、上記非酸化性雰囲気のガスに、還元性ガス、例えば、水素ガス等を混合して還元雰囲気としてもよい。
【0089】
[感光性樹脂層形成工程]
感光性樹脂層形成工程は、銀含有導電層の基材を有する側とは反対側の面に感光性樹脂層を形成する工程である。感光性樹脂層を形成する方法は特に限定されず、例えば、感光性樹脂組成物を銀含有導電層上に付与する方法、感光性樹脂層を含む感光性転写部材を銀含有導電層に貼り合せる方法等が挙げられる。前者の付与は、例えば、塗布等によって行ってよく、銀インク組成物について上述したものと同様の付与方法を用いてよい。以下、感光性転写部材を用いる方法を例に、感光性樹脂層形成工程を具体的に説明する。
【0090】
(感光性転写部材)
感光性転写部材として、例えば、仮支持体、中間層及び感光性樹脂層をこの順に有するものが挙げられる。中間層とは、仮支持体と感光性樹脂層との間にある全ての層を意味し、少なくとも熱可塑性樹脂層を有していてよい。各層の厚さは特に限定されず、感光性樹脂層の厚さは、例えば、5μm未満であってよく、仮支持体と中間層との合計の厚さは、例えば、35μm以下であってよい。
【0091】
-仮支持体-
仮支持体とは、剥離可能な支持体であり、感光性樹脂層をパターン露光する場合において、仮支持体を介して感光性樹脂層を露光し得る観点から光透過性を有することが好ましい。
光透過性を有するとは、パターン露光に使用する光の主波長の透過率が50%以上であることを意味し、パターン露光に使用する光の主波長の透過率は、露光感度向上の観点から、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。透過率の測定方法としては、大塚電子社製MCPD Seriesを用いて測定する方法が挙げられる。
仮支持体としては、例えば、ガラス基板、樹脂フィルム、紙等が挙げられ、強度及び可撓性等の観点から、樹脂フィルムが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。中でも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0092】
仮支持体の厚さは、感光性転写部材の解像性がさらに良好となる理由から、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。下限としては、搬送性及び支持性の観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
仮支持体の厚さは、以下の方法により測定することができる。
仮支持体の厚さ方向の断面観察像において、無作為に選択した10箇所で測定される仮支持体の厚さの算術平均値を求め、得られる値を仮支持体の厚さとする。仮支持体の厚さ方向の断面観察像は、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)を用いて得ることができる。
【0093】
仮支持体のヘーズは、感光性転写部材の解像性がさらに良好となる理由から、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましく、0.3以下であることが更に好ましい。下限としては、特に限定されないが、0.0超が挙げられる。
仮支持体のヘーズは、ヘーズメーター(装置名:NDH2000、日本電色工業社製)を用いて全光ヘーズとして測定できる。
【0094】
仮支持体は、中間層とは反対側の面に粒子含有層を有することが好ましい。粒子含有層に含まれる粒子の平均粒子径は、30nm~600nmであることが好ましく、30nm~200nmであることがより好ましく、40nm~100nmであることが更に好ましい。粒子含有層に含まれる粒子の平均粒子径が30nm以上であると、感光性転写部材の高速でのラミネート性がさらに良好となり、粒子含有層に含まれる粒子の平均粒子径が600nm以下であると、感光性転写部材の解像性がより優れる。
【0095】
粒子含有層に含まれる粒子の平均粒子径は、以下の方法で測定することができる。
仮支持体の厚さ方向の断面観察像において、粒子を含む層を粒子含有層と特定する。
次に、透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)を用いて、倍率20000倍、加速電圧100kVの条件で、粒子含有層の断面の任意の5か所を撮影し、断面写真を得る。得られた断面写真における全ての粒子の直径を測定し、その平均値(算術平均粒径)を求め、粒子の平均粒子径とする。なお、明らかに大きな凝集物(異物、ゴミ等)はカウントしないものとする。
【0096】
粒子含有層に含有される粒子としては、例えば、無機粒子、有機粒子等が挙げられる。
無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)粒子、酸化チタン(チタニア)粒子、酸化ジルコニウム(ジルコニア)粒子、酸化マグネシウム(マグネシア)粒子、酸化アルミニウム(アルミナ)粒子等が挙げられ、中でも、シリカ粒子が特に好ましい。
有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂粒子、ポリエステル粒子、ポリウレタン粒子、ポリカーボネート粒子、ポリオレフィン粒子、ポリスチレン粒子等が挙げられる。
【0097】
粒子含有層は、粒子を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
粒子含有層における粒子の含有量は、表面粗さの制御容易性、及び搬送時のシワ発生抑制性の観点から、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~5質量%であることが特に好ましい。
また、粒子含有層における粒子は、粒子含有層の内部に存在しても、一部が粒子含有層の表面に露出していてもよい。例えば、仮支持体の中間層とは反対側の面に、粒子含有層を有する場合、仮支持体における反対側の面に粒子が露出していてもよい。
【0098】
粒子含有層に含有される粒子以外の材質としては、特に制限はなく、例えば、上述する仮支持体の材質と同様のものを含むことができる。粒子含有層は、樹脂を含むことが好ましく、アクリル樹脂を含むことが特に好ましい。粒子含有層は、樹脂を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
【0099】
粒子含有層の厚さは、感光性転写部材の解像性及び高速でのラミネート性がさらに良好となる理由から、5nm~300nmが好ましく、10nm~100nmがより好ましく、30nm~70nmが特に好ましい。なお、粒子含有層は1層であっても、2層であってもよい。粒子含有層が2層以上の場合は、粒子含有層の好ましい厚さは、粒子含有層1層毎の好ましい厚さである。
粒子含有層の厚さは、上述した仮支持体の厚さと同様の方法により測定することができる。
【0100】
粒子含有層を有する仮支持体の市販品としては、例えば、ルミラー(登録商標、以下同じ)12QS62、ルミラー16KS40、16FB40(いずれも東レ社製)等が挙げられる。
【0101】
また、仮支持体として使用するフィルムには、シワ等の変形、傷等がないことが好ましい。
仮支持体を介するパターン露光時のパターン形成性、及び仮支持体の透明性の観点から、仮支持体に含まれる微粒子や異物や欠陥の数は少ない方が好ましい。直径1μm以上の微粒子、異物及び欠陥の数は、50個/10mm2以下であることが好ましく、10個/10mm2以下であることがより好ましく、3個/10mm2以下であることが更に好ましく、0個/10mm2であることが特に好ましい。
【0102】
仮支持体の好ましい態様としては、例えば、特開2014-85643号公報の段落[0017]~段落[0018]、特開2016-27363号公報の段落[0019]~段落[0026]、国際公開第2012/081680号の段落[0041]~段落[0057]、国際公開第2018/179370号の段落[0029]~段落[0040]に記載があり、これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0103】
-中間層-
感光性転写部材は、仮支持体と感光性樹脂層との間に、中間層を有してよい。
中間層の厚さは、仮支持体及び中間層の合計の厚さが35μm以下になるように設定される厚さであることが好ましく、感光性転写部材の現像速度に優れ、解像性がさらに良好となる理由から、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。下限としては、感光性転写部材が高速でのラミネート性がさらに良好となる理由から、2μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましい。
【0104】
仮支持体及び中間層の合計の厚さは35μm以下であってよく、34μm以下が好ましく、32μm以下がより好ましい。下限としては、感光性転写部材の高速でのラミネート性がさらに良好となる理由から、10μm以上が好ましい。
【0105】
後述する感光性樹脂層の厚さ(以下、「厚さA」と略す。)に対する、仮支持体及び中間層の合計の厚さ(以下、「厚さB」と略す。)の比率(厚さB/厚さA)は、感光性転写部材の解像性が更に良好となる理由から、6.0~12.0であることが好ましく、7.0~11.5であることがより好ましく、8.0~10.5であることが更に好ましい。
中間層及び感光性樹脂層の厚さは、上述した仮支持体の厚さと同様の方法により測定することができる。
【0106】
--熱可塑性樹脂層--
中間層は、少なくとも熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。
熱可塑性樹脂層は、感光性を有しないことが好ましく、光重合開始剤を有しないことが好ましい。
【0107】
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂を有することが好ましい。
熱可塑性樹脂は、熱により可塑化する樹脂であれば特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。中でも、現像性及び転写性の観点から、熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂であることが好ましい。
ここで、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸により形成された構成単位、(メタ)アクリル酸エステルにより形成された構成単位及び(メタ)アクリル酸アミドにより形成された構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位を有する樹脂を指し、上記構成単位の含有量が、樹脂の全量に対し、50質量%以上であることが好ましい。
【0108】
熱可塑性樹脂としては、現像速度が良好となる理由から、酸基を有する重合体を含むことが好ましい。
酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、中でも、カルボキシ基が好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂としての酸基を有する重合体は、現像速度が良好となる理由から、酸価60mgKOH/g以上であることが好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂であることがより好ましい。
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、特に制限はなく、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。例えば、特開2011-95716号公報の段落[0025]に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落[0033]~段落[0052]に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2016-224162号公報の段落[0053]~段落[0068]に記載のバインダーポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂等が好ましく挙げられる。
上記カルボキシ基含有アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有するモノマーの共重合比は、アクリル樹脂の全量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、12質量%~30質量%であることが更に好ましい。
【0109】
熱可塑性樹脂の酸価は、アルカリ現像性の観点から、60mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましく、60mgKOH/g~180mgKOH/gであることがより好ましい。
【0110】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、2,000以上が好ましく、1万~10万がより好ましく、2万~7万が更に好ましい。
【0111】
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
熱可塑性樹脂の含有量は、解像性及び高速でのラミネート性がさらに良好となる観点から、熱可塑性樹脂層の全量に対し、10質量%~99質量%であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、30質量%~80質量%であることが更に好ましい。
【0112】
熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、感光性転写部材の高速でのラミネート性がさらに優れる理由から、100℃以下であることが好ましい。
ガラス転移温度の測定方法としては、以下の通りである。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)に記載の方法に順じて行った。ガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される重合体のTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し,DTA(Differential Thermal Analysis)曲線又はDSC(Differential Scanning Calorimetry)曲線を描かせる。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。分析装置には示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、DSC6200)を用いた。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度の下限としては、ロール状に巻き取って保存する場合にロール端面から樹脂組成物が染み出す現象、いわゆるエッジフュージョン、を抑制する理由から、40℃以上が好ましい。
【0113】
熱可塑性樹脂層は、感光性転写部材の高速でのラミネート性がさらに優れる理由から、可塑剤を有することが好ましい。
可塑剤は、熱可塑性樹脂よりも分子量又は重量平均分子量が小さいことが好ましい。
可塑剤の分子量としては、200~2,000が好ましい。
可塑剤は、熱可塑性樹脂と相溶して可塑性を発現する化合物であれば特に限定されないが、可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物であることがより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造又はポリプロピレンオキシ構造であることがより好ましい。
【0114】
また、上記可塑剤としては、(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましく、相溶性、解像性及び基材への密着性の観点から、熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂であり、かつ上記可塑剤が、(メタ)アクリレート化合物を含有することがより好ましい。
上記可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、後述する感光性樹脂層における重合性化合物に含まれる(メタ)アクリレート化合物が好ましく挙げられ、多官能(メタ)アクリレート化合物、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物等も好適に用いることができる。
特に、保存安定性の観点から、熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層の両方にそれぞれ同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。同じ(メタ)アクリレート化合物を、熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層の両方にそれぞれ含むことで、層間の成分拡散が抑制され、保存安定性が向上する。
上記可塑剤として(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、解像性の観点から、露光後の露光部においても上記(メタ)アクリレート化合物が熱可塑性樹脂層中において重合しないことが好ましい。
【0115】
熱可塑性樹脂層は、可塑剤を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂層が可塑剤を含有する場合、可塑剤の含有量は、感光性転写部材の高速でのラミネート性がより優れる点から、熱可塑性樹脂層の全量に対し、1質量%~70質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましい。
【0116】
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂及び可塑剤以外に、酸反応性色素又は塩基反応性色素(以下、「色素B」と略す。)、光酸発生剤又は光塩基発生剤、界面活性剤、増感剤、重合禁止剤、防錆剤等のその他の成分を有していてもよい。
【0117】
(色素B)
熱可塑性樹脂層は、酸反応性色素又は塩基反応性色素(色素B)を有することが好ましい。色素Bは、酸又は塩基により最大吸収波長が変化する色素を表す。色素Bは、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であることが好ましい。
ここで、色素が「酸又は塩基により最大吸収波長が変化する」とは、発色状態にある色素が酸又は塩基より消色する態様、消色状態にある色素が酸又は塩基により発色する態様、発色状態にある色素が酸又は塩基により他の色相の発色状態に変化する態様のいずれの態様を指すものであってもよい。
露光部及び非露光部の視認性、及び解像性の観点から、色素Bは、酸により最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、色素Bが、酸により最大吸収波長が変化する色素であり、かつ、後述する光酸発生剤を併用する態様が特に好ましい。
【0118】
色素Bの発色機構の例としては、熱可塑性樹脂層に光酸発生剤又は光塩基発生剤を添加して、露光した後に上記光酸発生剤等から発生する酸又は塩基によって、酸反応性色素又は塩基反応性色素(例えばロイコ色素)が発色する態様等が挙げられる。
【0119】
極大吸収波長の測定方法は、大気の雰囲気下で、25℃にて分光光度計(装置名:UV3100、島津製作所社製)を用いて、400nm~780nmの範囲で透過スペクトルを測定し、光の強度が極小となる波長(極大吸収波長)を測定するものとする。
【0120】
色素Bとしては、例えば、ロイコ化合物、ジアリールメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素、アントラキノン系色素等が挙げられ、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ロイコ化合物が好ましい。
色素Bの好ましい態様については、国際公開第2019/022089号の段落[0023]~段落[0039]に記載の特定潜在色素と同様のものが挙げられる。
色素Bの具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業社製)、オイルブルー#603(オリエント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業社製)、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシアニリノ-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシステアリルアミノ-4-p-N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ-フェニルイミノナフトキノン、1-フェニル-3-メチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン、1-β-ナフチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン等の染料やp,p’,p”-ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ化合物が挙げられる。
【0121】
色素Bは、1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
熱可塑性樹脂層が色素Bを含有する場合、色素Bの含有量は、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全量に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%~6質量%であることがより好ましい。
【0122】
(光酸発生剤又は光塩基発生剤)
熱可塑性樹脂層は、露光部と非露光部の視認性を向上する理由から、色素Bと併用して光酸発生剤又は光塩基発生剤を含むことが好ましい。より好ましい態様は、酸反応性色素と光酸発生剤とを含む態様である。
【0123】
光酸発生剤又は光塩基発生剤としては、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の活性光線を照射することにより酸又は塩基を発生することができる化合物である。
光酸発生剤又は光塩基発生剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300nm~450nmの活性光線に感応し、酸又は塩基を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤又は光塩基発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸又は塩基を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
【0124】
光酸発生剤としては、イオン性光酸発生剤及び非イオン性光酸発生剤を挙げることができる。
イオン性光酸発生剤の例として、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、第四級アンモニウム塩類等を挙げることができる。これらのうち、オニウム塩化合物が好ましく、トリアリールスルホニウム塩類及びジアリールヨードニウム塩類が特に好ましい。
イオン性光酸発生剤としては、特開2014-85643号公報の段落[0114]~段落[0133]に記載のイオン性光酸発生剤も好ましく用いることができる。
非イオン性光酸発生剤の例としては、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物等を挙げることができる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物及びイミドスルホネート化合物の具体例としては、特開2011-221494号公報の段落[0083]~段落[0088]に記載の化合物が例示できる。
これらの中でも、感度、解像性、及び、密着性の観点から、光酸発生剤がオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。
【0125】
オキシムスルホネート化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落[0084]~段落[0088]に記載されたものを好適に用いることができる。
【0126】
熱可塑性樹脂層は、光酸発生剤又は光塩基発生剤を1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
【0127】
(界面活性剤)
熱可塑性樹脂層は、厚さ均一性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤の詳細は、感光性樹脂層について後述するものと同様であるが、その含有量については、「感光性樹脂層の全量に対して」を「熱可塑性樹脂層の全量に対して」と読み替えるものとする。
【0128】
また、熱可塑性樹脂層には、上述した以外のその他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、特に制限はなく、公知の添加剤を用いることができる。
更に、熱可塑性樹脂層の好ましい態様については、特開2014-85643号公報の段落[0189]~段落[0193]を参照することもできる。
【0129】
熱可塑性樹脂層の厚さは、感光性転写部材の現像速度に優れ、解像性がさらに良好となる理由から、18μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましく、6μm以下であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂層が厚すぎると現像に時間がかかるため、形成されたパターンとパターンの間に残渣が残り、解像性が低下することがある。下限としては、感光性転写部材の高速でのラミネート性がさらに優れる理由から、0.5μm以上であることが好ましい。
熱可塑性樹脂層の厚さは、上述した仮支持体の厚さと同様の方法により測定することができる。
【0130】
70℃において、熱可塑性樹脂層の粘度は、上述した感光性樹脂層の粘度よりも低いことが好ましい。70℃において、熱可塑性樹脂層の粘度が、感光性樹脂層の粘度よりも低いと、感光性樹脂層が変形することなく熱可塑性樹脂層が変形して基材に追従できるので、解像性及び高速でのラミネート性がより優れる。
70℃における、熱可塑性樹脂層の粘度、及び後述する感光性樹脂層の粘度は、レオメータを用いて、以下の方法により測定した値を採用する。
まず、感光性転写部材から熱可塑性樹脂層又は感光性樹脂層を試料として取り出す。
次に、ペルチェプレート上に試料を配置し、20mmfのパラレルプレート及びペルチェプレートのGapを0.25~0.40mmに設定する。90℃±5℃で試料を溶解又は軟化させた後、降温速度5℃/minで50℃まで冷却し、Gap一定モードで温度50~100℃、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、歪み0.5%の条件で試料を昇温させ、粘度を測定する。
熱可塑性樹脂層の粘度(以下、「粘度C」と略す。)と感光性樹脂層の粘度(以下、「粘度A」と略す。)との比率(粘度A/粘度C)は1以上が好ましく、1~10がより好ましく、1~5が更に好ましい。
【0131】
--水溶性樹脂層--
中間層は、水溶性樹脂層を有していることが好ましく、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層とが混合することを抑止する理由から、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層との間に水溶性樹脂層を有していることがより好ましい。
【0132】
水溶性樹脂層は、水溶性樹脂を含有することが好ましい。
ここで、水溶性とは、22℃においてpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及び、これらの共重合体等の樹脂を用いて構成することができる。
感光性転写部材を作製する際に、熱可塑性樹脂層と後述する水溶性樹脂層との成分が混合することを抑制する観点から、水溶性樹脂は、熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂と異なる樹脂であることが好ましい。
中でも、水溶性樹脂としては、酸素遮断性、及び隣接する層との成分混合を抑制する観点から、ポリビニルアルコールを含有することが好ましく、ポリビニルアルコール、及び、ポリビニルピロリドンを含有することが特に好ましい。
水溶性樹脂層は、上記樹脂を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
【0133】
水溶性樹脂層における水溶性樹脂の含有量は、特に制限はないが、酸素遮断性、及び隣接する層との成分混合を抑制する観点から、水溶性樹脂層の全量に対し、60質量%~100質量%であることが好ましく、80質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
水溶性樹脂層には、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。
【0134】
水溶性樹脂層の厚さは、仮支持体及び中間層の合計の厚さが35μm以下になるように設定される厚さであることが好ましく、高速でのラミネート性がさらに良好となる理由から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。下限としては、特に限定されないが、0.1μm以上が好ましい。
水溶性樹脂層の厚さは、上述した仮支持体の厚さと同様の方法により測定することができる。
【0135】
-感光性樹脂層-
感光性転写部材は、感光性樹脂層を有する。
感光性樹脂層の厚さは5μm未満であることが好ましく、感光性転写部材の現像速度に優れ、解像性がさらに良好となる理由から、4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。下限としては、特に限定されないが、0.1μm以上が挙げられる。
【0136】
感光性樹脂層は、特に制限はなく、公知の感光性樹脂層を用いることができるが、高速でのラミネート性がより優れることから、ネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。
ここで、ネガ型感光性樹脂層とは、露光により現像液に対する溶解性が低下する感光性樹脂層のこという。
【0137】
感光性樹脂層は、パターン形成性の観点から、重合性化合物、酸基を有する重合体及び光重合開始剤を有することが好ましい。
感光性樹脂層としては、例えば、特開2016-224162号公報に記載の感光性樹脂組成物(1)による感光性樹脂層、及び/又は感光性樹脂組成物(2)による感光性樹脂層を用いてもよい。
【0138】
--重合性化合物--
感光性樹脂層は、重合性化合物を含有することが好ましい。
重合性化合物は、ネガ型感光性樹脂層の感光性(すなわち、光硬化性)及び硬化膜の強度に寄与する成分である。
重合性化合物としては、エチレン性不飽和化合物が好ましく、2官能以上のエチレン性不飽和化合物であることがより好ましい。
ここで、エチレン性不飽和化合物とは、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であり、2官能以上のエチレン性不飽和化合物とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0139】
2官能エチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。具体的には、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業社製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業社製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業社製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業社製)等が挙げられる。
また、2官能エチレン性不飽和化合物としては、ビスフェノール構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物も好適に用いられる。
ビスフェノール構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物としては、特開2016-224162号公報の段落[0072]~段落[0080]に記載の化合物が挙げられる。
具体的には、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(BPE-500、新中村化学工業社製)等が好ましく挙げられる。
【0140】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0141】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0142】
エチレン性不飽和化合物としては、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬社製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業社製A-9300-1CL等)、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬社製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業社製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業社製A-GLY-9E等)、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成社製)、アロニックスM-520(東亞合成社製)、アロニックスM-270(東亞合成社製)、又は、アロニックスM-510(東亞合成社製)等が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(好ましくは3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物)も用いることができ、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル社製)、UA-32P(新中村化学工業社製)、UA-1100H(新中村化学工業社製)等が挙げられる。
また、エチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落[0025]~段落[0030]に記載の酸基を有する重合性化合物を用いてもよい。
【0143】
重合性化合物の重量平均分子量(Mw)としては、200~3,000が好ましく、280~2,200がより好ましく、300~2,200が更に好ましい。
【0144】
重合性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
感光性樹脂層が重合性化合物を含有する場合、重合性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全量に対し、10質量%~70質量%が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましく、20質量%~50質量%が更に好ましい。
【0145】
--酸基を有する重合体--
感光性樹脂層は、酸基を有する重合体を含有することが好ましい。
感光性樹脂層に含まれる酸基を有する重合体の好ましい形態は、上述の熱可塑性樹脂層が有する熱可塑性樹脂として例示した酸基を有する重合体と同様のものが挙げられる。
【0146】
感光性樹脂層は、酸基を有する重合体を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
感光性樹脂層が酸基を有する重合体を含有する場合、酸基を有する重合体の含有量は、感光性の観点から、感光性樹脂層の全量に対し、10質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが更に好ましい。
【0147】
--光重合開始剤--
感光性樹脂層は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、紫外線、可視光線等の活性光線を受けて、重合性化合物の重合を開始する。
光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0148】
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、及び光カチオン重合開始剤が挙げられ、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤、及びN-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤が挙げられる。
【0149】
更に、感光性樹脂層における光重合開始剤としては、感光性及び解像性の観点から、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0150】
また、光重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落[0031]~段落[0042]、及び、特開2015-014783号公報の段落[0064~段落[0081]に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0151】
光重合開始剤の市販品としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)〔商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製〕、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)〔商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-02、BASF社製〕、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン〔商品名:IRGACURE(登録商標) 379EG、BASF社製〕、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン〔商品名:IRGACURE(登録商標) 907、BASF社製〕、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン〔商品名:IRGACURE(登録商標) 127、BASF社製〕、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1〔商品名:IRGACURE(登録商標) 369、BASF社製〕、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン〔商品名:IRGACURE(登録商標) 1173、BASF社製〕、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔商品名:IRGACURE(登録商標) 184、BASF社製〕、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン〔商品名:IRGACURE 651、BASF社製〕等、オキシムエステル系の〔商品名:Lunar(登録商標) 6、DKSHジャパン社製〕;並びに2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、商品名:B-CIM、Hampford社製)、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業社製)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-305、常州強力電子新材料社製)、1,2-プロパンジオン,3-シクロヘキシル-1-[9-エチル-6-(2-フラニルカルボニル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,2-(O-アセチルオキシム)(商品名:TR-PBG-326、常州強力電子新材料社製)、3-シクロヘキシル-1-(6-(2-(ベンゾイルオキシイミノ)ヘキサノイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-プロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-391、常州強力電子新材料社製)等が挙げられる。
【0152】
感光性樹脂層は、光重合開始剤を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
感光性樹脂層が光重合開始剤を含有する場合、光重合開始剤の含有量は、特に制限はないが、感光性樹脂層の全量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。
また、光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂層の全量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0153】
--界面活性剤--
感光性樹脂層は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落[0017]、及び特開2009-237362号公報の段落[0060]~段落[0071]に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0154】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0155】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、及びDS-21(以上、DIC社製);フロラード FC430、FC431、及びFC171(以上、住友スリーエム社製);サーフロン S-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、及びKH-40(以上、AGC社製);PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、及びPF7002(以上、OMNOVA社製);並びにフタージェント 710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F、251、212M、250、209F、222F、208G、710LA、710FS、730LM、650AC、及び681(以上、NEOS社製)等が挙げられる。
【0156】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC社製のメガファック DSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファック DS-21が挙げられる。
【0157】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。
【0158】
フッ素系界面活性剤としては、ブロックポリマーも使用できる。
【0159】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく使用できる。
【0160】
フッ素系界面活性剤としては、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する含フッ素重合体も使用できる。メガファック RS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0161】
フッ素系界面活性剤としては、環境適性向上の観点から、パーフルオロオクタン酸(PFOA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物の代替材料に由来する界面活性剤を使用することが好ましい。
【0162】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等);ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル;プルロニック L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、及び25R2(以上、BASF社製);テトロニック 304、701、704、901、904、及び150R1(以上、BASF社製);ソルスパース 20000(以上、日本ルーブリゾール社製);NCW-101、NCW-1001、及びNCW-1002(以上、富士フイルム和光純薬社製);パイオニン D-6112、D-6112-W、及びD-6315(以上、竹本油脂社製);オルフィン E1010、サーフィノール104、400、及び440(以上、日信化学工業社製)等が挙げられる。
【0163】
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、並びに側鎖及び末端の少なくとも一方に有機基を導入した変性シロキサンポリマーが挙げられる。
【0164】
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、DOWSIL 8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング社製);X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KP-341、KF-6001、及びKF-6002(以上、信越シリコーン株式会社製);F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、及びTSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製);並びにBYK307、BYK323、及びBYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0165】
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0166】
感光性樹脂層が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、感光性樹脂層の全量に対して、0.01質量%~3.0質量%であることが好ましく、0.01質量%~1.0質量%であることがより好ましく、0.05質量%~0.80質量%であることが更に好ましい。
【0167】
--その他の添加剤--
感光性樹脂層は、上記成分以外にも、必要に応じて公知の添加剤を含むことができる。
その他の添加剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、重合禁止剤、可塑剤、増感剤、水素供与体、ヘテロ環状化合物、発色剤、消色剤、溶媒等が挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落[0018]に記載された熱重合防止剤を用いることができる。中でも、フェノチアジン、フェノキサジン又は4-メトキシフェノールを好適に用いることができる。
感光性樹脂層が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、感光性樹脂層の全量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましく、0.01質量%~0.8質量%が更に好ましい。
増感剤としては、公知の増感剤、染料、又は顔料等が挙げられる。
可塑剤及びヘテロ環状化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落[0097]~段落[0103]及び段落[0111]~段落[0118]に記載されたものが挙げられる。
発色剤としては、例えば、特開2007-178459号公報の段落[0417]に記載された発色剤を用いることができ、ロイコクリスタルバイオレット、クリスタルバイオレットラクトン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩等がより好ましく用いられる。
感光性樹脂層が発色剤を含有する場合、発色剤の含有量は、露光部と非露光部の視認性及び解像性の観点から、感光性樹脂層の全量に対し、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましく、0.1質量%~1質量%であることが特に好ましい。
【0168】
また、感光性樹脂層には、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、着色剤、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤等の公知の添加剤を更に加えることができる。
その他の成分の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落[0165]~段落[0184]にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0169】
-カバーフィルム-
感光性転写部材は、感光性転写部材が有する感光性樹脂層の中間層とは反対側の表面に、カバーフィルムを有することが好ましい。
カバーフィルムとしては、樹脂フィルム、紙等が挙げられ、強度及び可撓性等の観点から、樹脂フィルムが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。中でも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0170】
カバーフィルムの厚さは、特に限定されず、例えば、1μm~2mmのものが好ましく挙げられる。
【0171】
-その他の層-
感光性転写部材は、上述した以外の層(以下、「その他の層」と略す。)を有していてもよい。その他の層としては、コントラストエンハンスメント層、易剥離層、BARC層等を挙げることができる。
コントラストエンハンスメント層の好ましい態様については国際公開第2018/179640号の段落[0134]に記載があり、内容は本明細書に組み込まれる。
【0172】
-感光性転写部材の製造方法-
感光性転写部材の製造方法は、特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。
具体的には、上述した各層の構成成分と溶媒とを混合して熱可塑性樹脂組成物等の組成物を調製し、仮支持体又はカバーフィルム上に、上記組成物を塗布することにより、仮支持体と、少なくとも熱可塑性樹脂層を有する中間層と、感光性樹脂層とをこの順に有する感光性転写部材を得ることができる。
中でも、感光性転写部材の製造方法としては、熱可塑性樹脂組成物を仮支持体上に塗布及び乾燥し熱可塑性樹脂層を形成する工程、水溶性樹脂組成物を熱可塑性樹脂層上に塗布及び乾燥し水溶性樹脂層を形成する工程、並びに、感光性樹脂組成物を水溶性樹脂層上に塗布及び乾燥し感光性樹脂層を形成する工程を含む方法が好ましく挙げられる。
また、感光性転写部材の製造方法は、感光性樹脂層を形成する工程の後に、感光性樹脂層上にカバーフィルムを設ける工程を更に含むことが好ましい。
【0173】
(貼り合せ工程)
感光性樹脂層形成工程は、感光性転写部材が有する感光性樹脂層の中間層とは反対側の表面を、銀含有導電層に接触させて貼り合せる工程(以下、「貼り合せ工程」と呼ぶことがある)を含むことが好ましい。これにより、銀含有導電層上に感光性樹脂層を形成することができる。感光性転写部材がカバーフィルムを有する場合には、感光性樹脂層の中間層とは反対側の表面とは、カバーフィルムを剥がしたときに露出する感光性樹脂層の表面のことをいう。
【0174】
貼り合せ工程においては、銀含有導電層と、感光性転写部材が有する感光性樹脂層の中間層とは反対側の表面と、が接触するように圧着させることが好ましい。このような態様であると、露光及び現像後のパターン形成された感光性樹脂層を、銀含有導電層をエッチングする際のエッチングレジストとして好適に用いることができる。
基材と感光性転写部材とを圧着する方法としては、特に制限はなく、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を用いることができる。
【0175】
感光性転写部材の基材への貼り合せは、感光性転写部材が有する感光性樹脂層の中間層とは反対側の表面を、基材に重ね、ロール等による加圧及び加熱することに行われることが好ましい。貼り合せには、ラミネーター、真空ラミネーター、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネーターを使用することができる。ある態様において、導電性パタ―ンの製造は、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。その場合、基材は、樹脂フィルムであることが好ましい。ロールツーロール方式により、例えば、タッチセンサー等の導電性パターンを好ましく製造することができる。
以下、ロールツーロール方式について説明する。
ロールツーロール方式とは、基材として、巻き取り及び巻き出しが可能な基材を用い、導電性パターンの製造方法に含まれるいずれかの工程の前に、基材又は基材を含む構造体を巻き出す工程(「巻き出し工程」ともいう)と、いずれかの工程の後に、基材又は基材を含む構造体を巻き取る工程(「巻き取り工程」ともいう)と、を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは、全ての工程)を、基材又は基材を含む構造体を搬送しながら行う方式をいう。
巻き出し工程における巻き出し方法、及び巻き取り工程における巻取り方法としては、特に制限されず、ロールツーロール方式を適用する製造方法において、公知の方法を用いればよい。
【0176】
[露光工程]
露光工程は、感光性樹脂層をパターン露光する工程である。
【0177】
本開示においてパターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に制限されない。本開示に係る導電性パターンの製造方法により製造される導電性パターンを有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積をできるだけ小さくする観点から、導電性パターンの少なくとも一部(特にタッチパネルの電極パターン及び取り出し配線の部分)は20μm以下の細線であることが好ましく、10μm以下の細線であることが更に好ましい。そのため、このような細線が得られるように、感光性樹脂層をパターン露光することが好ましい。
【0178】
露光に使用する光源、露光量及び露光方法の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落[0146]~段落[0147]に記載があり、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0179】
[現像工程]
現像工程は、パターン露光された感光性樹脂層を現像する工程である。現像により、パターン状の樹脂層が得られる。
【0180】
感光性転写部材を用いる態様において、感光性転写部材が水溶性樹脂層を有する場合、現像工程においては、非露光部の熱可塑性樹脂層及び水溶性樹脂層も、非露光部の感光性樹脂層と共に除去される。更に、現像工程においては、露光部の熱可塑性樹脂層及び水溶性樹脂層も現像液に溶解あるいは分散する形で除去されてもよい。
【0181】
現像工程における現像は、現像液を用いて行うことができる。現像液及び現像方式としては特に制限はなく、公知の現像液及び現像方式を使用することができる。本開示において好適に用いられる現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落[0194]に記載の現像液が挙げられ、好適に用いられる現像方式としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落[0195]に記載の現像方式が挙げられる。
【0182】
[エッチング工程]
エッチング工程は、硝酸イオンの含有量が、エッチング液の全量に対して、16.0質量%~35.0質量%であるエッチング液で、銀含有導電層をエッチングする工程である。現像により感光性樹脂層が除去された部分について、銀含有導電層をエッチング液により除去することにより、導電性パターンを形成することができる。
【0183】
エッチングの具体的な方法は特に限定されず、例えば、基材全体をエッチング液に浸漬する方法、エッチング液を基材にスプレーする方法等を採用することができる。
【0184】
エッチング温度は特に限定されないが、LWRをより向上させる観点から、40℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましい。エッチング温度の下限は特に限定されず、例えば、15℃であってよい。
【0185】
例えば、上述のように基材に予め他の導電層が形成されており、上記他の導電層上に銀含有導電層が設けられている態様において、感光性樹脂層をパターニング露光して現像した後、銀含有導電層と共に上記他の導電層をエッチングすることで、銀含有導電層と上記他の導電層とが積層した導電性パターンを得ることができる。
また、例えば、上述のように基材に予め他の電極パターンが形成されており、上記他の電極パターン上に銀含有導電層が設けられている態様において、上記他の電極パターンと同じパターンニングを施すように感光性樹脂層をパターニング露光して現像した後、銀含有導電層をエッチングすることで、銀含有導電層と上記他の導電層とが積層した導電性パターンを得ることができる。
【0186】
[除去工程]
本開示に係る導電性パターンの製造方法は、エッチング工程後に、銀含有導電層上に残存するパターン状の樹脂層を除去する工程(以下、「除去工程」と呼ぶことがある)を含んでよい。
【0187】
上記樹脂層を除去する方法としては特に制限はないが、薬品処理により除去する方法を挙げることができ、以下の除去液を用いる方法が特に好ましい。
除去液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ成分、又は、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、第4級アンモニウム塩化合物等の有機アルカリ成分を水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又はこれらの混合溶液に溶解させた除去液が挙げられる。
【0188】
例えば、除去液を使用し、スプレー法、シャワー法、パドル法等により上記樹脂層を除去してよい。また、例えば、好ましくは30℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃にて撹拌中の除去液に上記樹脂層を有する基板を1分~30分間浸漬することにより上記樹脂層を除去してよい。
【0189】
[その他の工程]
本開示に係る導電性パターンの製造方法は、上述した以外の任意の工程(その他の工程)を含んでよい。例えば、感光性転写部材がカバーフィルムを有する場合には、上記感光性転写部材のカバーフィルムを剥離する工程、国際公開第2019/22089号の段落[0172]に記載の可視光線反射率を低下させる工程、国際公開第2019/22089号の段落[0172]に記載の絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程等が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
【0190】
<導電性パターンを備えたタッチパネル>
本開示に係る導電性パターンの製造方法により得られた導電性パターンは、種々の用途に用いることができ、とりわけ、タッチパネルに好適に用いることができる。このような導電性パターンを備えたタッチパネルは、例えば、ディスプレイ、スマートフォン、タブレット等に好適に用いることができる。このようなタッチパネル及びその製造方法として、特開2015-196369号公報に記載のものを例示することができ、その内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例0191】
以下、実施例を挙げて本開示をより具体的に説明する。但し、本開示は、これらの実施例に限定されない。
【0192】
<エッチング液の調製>
表1~表3に示す組成(質量部)で下記原料を混合して溶解し、実施例1~実施例25、比較例2及び比較例3の硝酸イオンを含有するエッチング液を調製した。なお、実施例19~実施例25のエッチング液は、実施例5のものと同一である。
比較例1は、硝酸鉄(III)九水和物をイオン交換水に完全溶解することができなかった。
(原料)
・硝酸鉄(III)九水和物(富士フイルム和光純薬工業社製、特級試薬)
・塩化鉄(III)六水和物(富士フイルム和光純薬工業社製、特級試薬)
・分散助剤A(ダイセル社製、商品名:PGLE ML10、ポリグリセリンエステル:ラウリン酸ポリグリセリル-10)
・分散助剤B(ダイセル社製、商品名:PGLAL、ポリグリセリンエーテル:ポリグリセリル-4ラウリルエーテル)
・分散助剤C(理研ビタミン社製、商品名:ポエム J-4081V、ポリグリセリンエステル:ステアリン酸テトラグリセリル)
・分散助剤D(理研ビタミン社製、商品名:ポエム J-0081HV、ポリグリセリンエステル:ステアリン酸デカグリセリル)
・分散助剤E(理研ビタミン社製、商品名:ポエム J-0021、ポリグリセリンエステル:ラウリン酸デカグリセリル)
・分散剤F(ソルスパース44000(ルーブリゾール社製、酸基を有する高分子化合物、酸価:12mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)を等質量の「10%アンモニア水」(商品名、富士フイルム和光純薬社製)で溶解し、固形分を50質量%に調整したもの)
・分散剤G(ジョンクリル611(BASF社製、酸基を有する高分子化合物、酸価:53mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g、重量平均分子量:8100)を等質量の「10%アンモニア水」(商品名、富士フイルム和光純薬社製)で溶解し、固形分を50質量%に調整したもの)
・分散剤H(富士フイルム和光純薬社製、3-メトキシプロピルアミン)
・イオン交換水
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
表1~表3中、硝酸イオンの含有量は、以下の条件で、イオンクロマトグラフィーにより、グラジエント溶離法で測定したものである。なお、比較例1については、硝酸鉄(III)九水和物がイオン交換水に完全溶解したと仮定した場合の計算値である。
(測定条件)
・ホールピペットとメスフラスコを用いて、表1~表3に示す倍率でエッチング液を希釈して希釈液を調製
・装置:Thermo Fisher Sientific社製「ICS-2100」
・汚れ除去用ガードカラム:Thermo Fisher Sientific社製「IonPac AG11HC 4.0mmf×50mm」
・カラム:Thermo Fisher Sientific社製「IonPac AS11HC 4.0mmf×250mm」
・希釈液の注入量:20ml
・カラム温度:35℃
・溶離液:KOH
・溶離液濃度:1mM(0分)→1mM(8分)→15mM(18分)→30mM(28分)→60mM(38分)
・検出器:電気伝導度検出器(Dionex Thermo Sientific Fisher社製のサプレッサー「AERS500」使用)
・硝酸イオン濃度が既知である標本サンプルで作製した検量線と比較して、硝酸イオン濃度を決定。
【0197】
<銀含有導電層を有する導電材料の準備>
[銀粒子導電層を有する導電材料(バーコーター法);実施例1~実施例23、比較例1~比較例3]
バンドー化学社製の「Flow Metal SR7500」100gに、2-メチルペンタン-2,4-ジオール(和光純薬工業社製、試薬一級)を1.0g、2-ヘキシルオキシエタノール(和光純薬工業社製、試薬一級)を1.0g、及び分散助剤Bを0.25g加えて混合することにより、銀インク組成物を調製した。タッチセンサーに備えられる電極パターン(透明電極)が設けられた基材上に、銀インク組成物をメイヤーバーで塗布し、80℃で3分間乾燥した後、120℃で25分間加熱を行なった。このようにして、基材、電極パターン、及び銀粒子導電層をこの順に有する導電材料を作製した。銀粒子導電層の厚さは、実施例1~実施例21が0.5μm、実施例22が0.3μm、実施例23が1.5μmであった。なお、厚さは、KLA-TENCOR社製の触針式段差計「SURFACE PROFILER P-10」により測定したものである。銀含有導電層の厚さの測定について、以下、同様である。
【0198】
[銀粒子導電層を有する導電材料(インクジェット法);実施例24]
上記バーコーター法で用いたものと同じ銀インク組成物、及び電極パターンが設けられた基材を準備し、インクジェットプリンター(富士フイルム Dimatix社製の「DMP-2831」)及びカートリッジ(富士フイルム社製の「DMC-11610」、インク滴:10pl)を用いて、銀インク組成物を基材上に塗布した。塗布した銀インク組成物を80℃で3分間乾燥した後、120℃で25分間加熱を行なった。このようにして、基材、電極パターン、及び銀粒子導電層をこの順に有する導電材料を作製した。銀粒子導電層の厚さは、0.5μmであった。
【0199】
[銀合金からなる導電層を有する導電材料(スパッタリング法);実施例25]
上記バーコーター法で用いたものと同じ電極パターンが設けられた基材を準備し、真空チャンバー内に上記基材をセットし、銀合金スパッタリングターゲット(原子比率が、Ag:Ga=98.5:1.5)、及び希ガスとしてArガスを用いて、DCマグネトロンスパッタリング(到達真空度:0.27×mPa以下、スパッタリングパワー:200W、極間距離:55mm、基材温度:室温)により、銀合金からなる導電層を成膜した。このようにして、基材、電極パターン、及び銀合金からなる導電層をこの順に有する導電材料を作製した。銀合金からなる導電層の厚さは、0.5μmであった。
【0200】
<感光性転写部材の準備>
以下の合成例において、以下の略語はそれぞれ以下の化合物を表す。
St:スチレン(富士フイルム和光純薬社製)
MAA:メタクリル酸(富士フイルム和光純薬社製)
MMA:メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)
BzMA:ベンジルメタクリレート(富士フイルム和光純薬社製)
AA:アクリル酸(東京化成社製)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工社製)
MEK:メチルエチルケトン(三協化学社製)
V-601:ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(富士フイルム和光純薬社製)
【0201】
(重合体A-1)
3つ口フラスコにPGMEA(116.5部)を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。St(52.0部)、MMA(19.0部)、MAA(29.0部)、V-601(4.0部)、及びPGMEA(116.5部)を加えた溶液を、90℃±2℃に維持した3つ口フラスコ溶液中に2時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃±2℃にて2時間撹拌することで、重合体A-1(固形分濃度30.0質量%)を得た。
【0202】
(重合体A-2)
モノマーの種類を下記表4に示す通りに変更した以外は、重合体A-1と同様にして、重合体A-2(固形分濃度30.0質量%)を得た。
なお、表4のモノマーの量の単位は質量%であり、Tgは上述の方法で測定したものである。
【0203】
【0204】
[感光性樹脂組成物の調製]
以下の成分を混合し、感光性樹脂組成物の調製を行った。
-感光性樹脂組成物の組成-
・重合体A-1:21.87質量部
・LCV(ロイコクリスタルバイオレット、山田化学工業社製、ラジカルにより発色する色素):0.053質量部
・B-CIM(光ラジカル重合開始剤、2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、Hampford社製):0.89質量部
・EAB-F(光ラジカル重合開始剤(増感剤)、4,4‘-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、東京化成社製):0.05部
・NKエステルBPE-500(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、新中村化学工業(株)製):4.85部
・アロニックスM-270(ポリプロピレングリコールジアクリレート、東亞合成社製):0.51部
・フェノチアジン(富士フイルム和光純薬社製):0.025部
・1-フェニル-3-ピラゾリドン(富士フイルム和光純薬社製):0.001部
・メガファックF-552(DIC社製):0.02部
・メチルエチルケトン(三協化学社製):30.87部
・PGMEA(昭和電工社製):33.92部
・テトラヒドロフラン(三菱ケミカル社製):6.93部
【0205】
[水溶性樹脂組成物の調製]
以下の成分を混合し、水溶性樹脂組成物の調製を行った。
-水溶性樹脂組成物の組成-
・イオン交換水:38.12質量部
・メタノール(三菱ガス化学社製):57.17質量部
・クラレポバールPVA-205(ポリビニルアルコール、クラレ社製):3.22質量部
・ポリビニルピロリドンK-30(日本触媒社製):1.49質量部
メガファックF-444(フッ素系界面活性剤、DIC社製):0.0015質量部
【0206】
[熱可塑性樹脂組成物の調製]
以下の成分を混合し、熱可塑性樹脂組成物の調製を行った。
-熱可塑性樹脂組成物の組成-
・重合体A-2(熱可塑性樹脂):42.85質量部
・下記に示す構造を有する化合物(酸により発色する色素):0.08質量部
・下記に示す構造を有する化合物(光酸発生剤、特開2013-47765号公報の段落[0227]に記載の化合物、同公報の段落[0227]に記載の方法に従って合成した):0.32質量部
・NKエステルA-DCP(可塑剤、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業社製):4.63質量部
・8UX-015A(可塑剤、多官能ウレタンアクリレート化合物、大成ファインケミカル社製):2.31質量部
・アロニックスTO-2349(可塑剤、カルボキシ基を有する多官能アクリレート化合物、東亞合成社製):0.77質量部
・メガファックF-552(界面活性剤、DIC社製):0.03質量部
・メチルエチルケトン(三協化学社製):39.5質量部
・PGMEA(昭和電工社製):9.51質量部
【0207】
(酸により発色する色素)
【0208】
【0209】
(光酸発生剤)
【0210】
【0211】
[感光性転写部材の作製]
仮支持体(東レ社製 ルミラー16KS40、ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ:16μm、ヘーズ:0.12%)の巻き外面の平滑面に、スリット状ノズルを用いて、乾燥後に塗布幅が1.0m、厚さ4.0μmとなるように熱可塑性組成物を塗布し、80℃の乾燥ゾーンを40秒間かけて通過させて熱可塑性樹脂層を形成した。
その後、熱可塑性樹脂層の上に、スリット状ノズルを用いて、乾燥後に塗布幅が1.0m、厚さ1.1μmとなるように水溶性樹脂組成物を塗布し、80℃の乾燥ゾーンを40秒間かけて通過させて、水溶性樹脂層を形成した。
更に、水溶性樹脂層の上に、スリット状ノズルを用いて、乾燥後に塗布幅が1.0m、厚さ3.0μmとなるように感光性樹脂組成物を塗布し、80℃の乾燥ゾーンを40秒間かけて通過させて、ネガ型感光性樹脂層を形成した。
次いで、ネガ型感光性樹脂層の上にカバーフィルムとしてPETフィルム(東レ社製、ルミラー16KS40)を圧着した。このようにして、仮支持体、中間層(熱可塑性樹脂層、水溶性樹脂層)、及び感光性樹脂層をこの順に有する感光性転写部材を作製した。
【0212】
<エッチング時間の評価>
上述のようにして準備した実施例1~実施例25、及び比較例1~比較例3の銀含有導電層を有する導電材料を用い、以下の要領でエッチング時間を評価した。
感光性転写部材からカバーフィルムを剥がし、感光性転写部材が有する感光性樹脂層の中間層とは反対側の表面を、上記銀含有導電層を有する導電材料の銀含有導電層に接触させて、ロール温度100℃、線圧1.0MPa、線速度4.0m/分のラミネート条件で、導電材料にラミネートした。50℃及び0.5MPaの条件で、2時間オートクレーブ処理し、露光せずに仮支持体を剥離して現像した。現像は、23℃の1.0%炭酸カリウム水溶液を用いて、シャワー現像で30秒行った。現像後、純水でリンスを行ない、エアーナイフで水切りを行った。次に、表5に記載の温度に設定したエッチング液に導電性材料を浸漬し、銀含有導電層を完全に除去するのに必要な時間を求め、その1.5倍の時間をエッチング時間とした。エッチング時間は短い方が好ましく、実用レベルは90秒以内である。比較例2及び比較例3は、90秒を超えてもエッチングパターンを形成することができなかった。
【0213】
<導電性パターンの形成~LWRの評価~>
上述のようにして準備した実施例1~実施例25、及び比較例1~比較例3の銀含有導電層を有する導電材料を用い、以下の要領でLWRを評価した。
感光性転写部材からカバーフィルムを剥がし、感光性転写部材が有する感光性樹脂層の中間層とは反対側の表面を銀含有導電層に接触させて、ロール温度100℃、線圧1.0MPa、線速度4.0m/分のラミネート条件で、導電材料にラミネートした。50℃及び0.5MPaの条件で、2時間オートクレーブ処理し、仮支持体を剥離せずに、線幅9μmのラインアンドスペースパターン(Duty比 1:1)を有するマスクを介して、超高圧水銀灯を用いて、90mJ/cm2の露光量で、感光性樹脂層を露光した。露光から3時間後、仮支持体を剥離して現像した。現像は、23℃の1.0%炭酸カリウム水溶液を用いて、シャワー現像で30秒行ない、現像後、純水でリンスした。次いで、エッチング液に導電性材料を表5に示すエッチング時間浸漬した後、純水でリンスした。次に、45℃の剥離溶液(水酸化カリウム、1-メトキシ-2-プロパノール、及び水を、2.5:25.0:72.5の質量比で混合した溶液)に30秒浸漬して、感光性樹脂層を除去した後、純水でリンスを行ない、乾燥した。このようにして、導電性パターンを作製した。
【0214】
得られた導電性パターンから、ラインを無作為に選択し、そのラインの長手方向40μmの範囲に亘って、無作為に選択した50点の線幅を測定し、その測定ばらつきについて標準偏差を求め、3σを算出した。このような3σの算出を5回行い、3σの平均値をLWRとした。評価基準は以下の通りである。LWRは小さいほど良好な性能を有している。実用レベルはA~Fである。
-評価基準-
A:LWRが0.180μm未満である。
B:LWRが0.180μm以上0.200μm未満である。
C:LWRが0.200μm以上0.220μm未満である。
D:LWRが0.220μm以上0.240μm未満である。
E:LWRが0.240μm以上0.280μm未満である。
F:LWRが0.280μm以上0.320μm未満である。
G:LWRが0.320μm以上である。
【0215】
<導電性パターンの形成~信頼性の評価~>
上述のようにして準備した実施例1~実施例25、及び比較例1~比較例3の銀含有導電層を有する導電材料を用い、以下の要領で信頼性を評価した。
感光性転写部材からカバーフィルムを剥がし、感光性転写部材が有する感光性樹脂層の中間層とは反対側の表面を銀含有導電層に接触させて、ロール温度100℃、線圧1.0MPa、線速度4.0m/分のラミネート条件で、導電材料にラミネートした。50℃及び0.5MPaの条件で、2時間オートクレーブ処理し、仮支持体を剥離せずに、線幅200μmで長さ3cmのパターンを有するマスクを介して、超高圧水銀灯を用いて、90mJ/cm2の露光量で、感光性樹脂層を露光した。露光から3時間後、仮支持体を剥離して現像した。現像は、23℃の1.0%炭酸カリウム水溶液を用いて、シャワー現像で30秒行ない、現像後、純水でリンスした。次いで、エッチング液に導電性材料を表5に示すエッチング時間浸漬した後、純水でリンスした。次に、45℃の剥離溶液(水酸化カリウム、1-メトキシ-2-プロパノール、及び水を、2.5:25.0:72.5の質量比で混合した溶液)に30秒浸漬して、感光性樹脂層を除去した後、純水でリンスを行ない、乾燥した。このようにして、導電性パターンを作製した。
【0216】
得られた導電性パターンの抵抗値をテスター(日置電機社製の抵抗計「RM3548」)を用い測定した。導電性パターンを、85℃及び85%RH(Relative Humidity、相対湿度)で500時間保存した後、取り出して乾燥し、同様にして抵抗値を測定し、下記式(6)により評価値を求めた。このような評価値の算出を10回行い、評価値の平均値を信頼性とした。
評価値=(85℃及び85%RHで500時間保存した後の抵抗値)/(保存前の抵抗値) 式(6)
評価基準は以下の通りである。信頼性が1に近いほど抵抗値が安定していて、良好な性能を有しており、実用レベルはA~Cである。
-評価基準-
A:信頼性が0.95超1.05未満である。
B:信頼性が0.93超0.95以下、又は1.05以上1.07未満である。
C:信頼性が0.90超0.93以下、又は1.07以上1.10未満である。
D:信頼性が0.90以下、又は1.10以上である。
【0217】
以上の評価結果を表5に示す。
【0218】
【0219】
実施例1~実施例25のエッチング液は、表5に示すように、LWRが小さい導電性パターンを形成可能であり、かつ、エッチング速度が速かった。
【0220】
実施例2~実施例7は、硝酸イオンの含有量が23.0質量%~33.0質量%であるため、硝酸イオンの含有量が16.9質量%の実施例1と比較して、エッチング速度をより向上させることができ、更に、硝酸イオンの含有量が34.0質量%である実施例8と比較して、より高い信頼性を得ることができた。このように、実施例2~実施例7は、より高いレベルでエッチング速度及び信頼性を両立することができた。
【0221】
実施例5及び実施例24は、銀含有導電層として、焼結した銀粒子を含み、更に分散助剤を含む銀粒子導電層をエッチングしているため、銀合金からなる導電層をエッチングした実施例25と比較して、より速くエッチングすることができた。
【0222】
実施例9~実施例18のエッチング液は、分散剤又は分散助剤を含んでいるため、LWRがより優れていた。中でも、実施例9~実施例15は、分散助剤として、ポリグリセリン化合物を含んでいるため、LWRが特に優れていた。
【0223】
実施例4~実施例6は、硝酸イオンの含有量が26.0質量%~31.5質量%であるため、信頼性がより優れていた。
【0224】
実施例1~実施例19、及び実施例22~実施例25は、40℃以下の温度でエッチングを行っているため、LWRがより優れていた。
【0225】
一方、比較例1は、硝酸鉄(III)九水和物が過剰であるため、イオン交換水に完全溶解することができなかった。
【0226】
比較例2は、硝酸イオンの含有量が少ないため、エッチング速度が遅く、90秒を超えてもエッチングパターンを形成することができなかった。
【0227】
比較例3は、硝酸イオンを含まないため、エッチング速度が遅く、90秒を超えてもエッチングパターンを形成することができなかった。