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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058016
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】タイヤ試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20220404BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166577
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】391046414
【氏名又は名称】国際計測器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】宮下 博至
(72)【発明者】
【氏名】村内 一宏
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 修一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA22
(57)【要約】
【課題】試験中に路面を移動させずに、試験タイヤを保持したキャリッジを路面に沿って走行させることにより、タイヤの台上試験を様々な路面状態で行うことを可能とする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置は、路面と、試験タイヤが装着された試験輪を回転可能に保持し、試験タイヤを路面に接地させた状態で路面に沿って走行可能なキャリッジと、を備えている。キャリッジは、試験輪を回転可能に支持する車軸部と、車軸部の向きを変えることによって試験輪のホイールアライメントを調整可能なアライメント部と、を備えている。アライメント部は、車軸部の高さを変えることによって試験輪に加わる荷重を調整可能な荷重調整部を備えている。荷重調整部は、上下に移動可能に支持された第1可動フレームと、第1可動フレームの上下の移動を案内するリニアガイドと、第1可動フレームを上下に駆動する第1駆動ユニットと、を備えている。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と、
試験タイヤが装着された試験輪を回転可能に保持し、前記試験タイヤを前記路面に接地させた状態で前記路面に沿って走行可能なキャリッジと、を備え、
前記キャリッジが、
前記試験輪を回転可能に支持する車軸部と、
前記車軸部の向きを変えることによって前記試験輪のホイールアライメントを調整可能なアライメント部と、を備え、
前記アライメント部が、前記車軸部の高さを変えることによって前記試験輪に加わる荷重を調整可能な荷重調整部を備え、
前記荷重調整部が、
上下に移動可能に支持された第1可動フレームと、
前記第1可動フレームの上下の移動を案内するリニアガイドと、
前記第1可動フレームを上下に駆動する第1駆動ユニットと、を備えた、
タイヤ試験装置。
【請求項2】
前記リニアガイドが、
レールと、
前記レール上を走行可能な第1走行部と、を備え、
前記レール及び前記第1走行部のいずれか一方が前記第1可動フレームに固定された、
請求項1に記載のタイヤ試験装置。
【請求項3】
前記キャリッジが、前記アライメント部を収容する小屋状のアライメント機構支持部を有するメインフレームを備えた、
請求項1又は請求項2に記載のタイヤ試験装置。
【請求項4】
前記レール及び前記第1走行部の他方が前記アライメント機構支持部に固定された、
請求項2を引用する請求項3に記載のタイヤ試験装置。
【請求項5】
前記アライメント部が、前記試験輪のキャンバー角を調整可能なキャンバー調整部を備え、
前記キャンバー調整部が、
前記キャリッジの走行方向と平行なEφ軸を中心に回転可能に支持された第2可動フレームと、
前記第2可動フレームを前記Eφ軸周りに回転駆動するφ駆動ユニットと、を備えた、
請求項1から請求項4のいずれかい一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項6】
前記キャンバー調整部が、
前記Eφ軸と同軸に配置された円柱状の第1ピボットと、
前記第1ピボットを回転可能に支持する第1軸受と、を備え、
前記第1ピボット及び前記第1軸受のいずれか一方が前記第2可動フレームに固定された、
請求項5に記載のタイヤ試験装置。
【請求項7】
前記第1ピボット及び前記第1軸受の他方が前記第1可動フレームに固定された、
請求項6に記載のタイヤ試験装置。
【請求項8】
前記キャンバー調整部が、前記第2可動フレームの回転を案内する曲線ガイドを備えた、
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項9】
前記曲線ガイドが、
前記Eφ軸と同心に配置された円弧状の曲線レールと、
前記レール上を走行可能な第2走行部と、を備え、
前記曲線レール及び前記第2走行部のいずれか一方が前記第2可動フレームに固定された、
請求項8に記載のタイヤ試験装置。
【請求項10】
前記アライメント部が、前記試験輪のスリップ角を調整可能なスリップ角調整部を備え、
前記スリップ角調整部が、
前記試験輪の回転軸であるEλ軸及び前記Eφ軸のそれぞれと直交するEθ軸を中心に回転可能に支持された第3可動フレームと、
前記第3可動フレーム前記Eθ軸周りに回転駆動するθ駆動ユニットと、を備えた、
請求項1から請求項9のいずれかい一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項11】
前記スリップ角調整部が、
前記Eθ軸と同軸に配置された円柱状の第2ピボットと、
前記第2ピボットを回転可能に支持する第2軸受と、を備え、
前記第2ピボット及び前記第2軸受のいずれか一方が前記第3可動フレームに固定された、
請求項10に記載のタイヤ試験装置。
【請求項12】
前記車軸部が、
スピンドルと、
前記スピンドルを回転可能に支持する第3軸受と、
前記スピンドルの先端部に同軸に取り付けられた、前記試験輪が取り付けられるホイールハブと、を備えた、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤの性能を評価する試験には、試験タイヤを例えば専用試験車のホイールリムに装着して実際の路面上を走行させて行う路上試験や室内に設置された試験装置を使用して行う室内試験(台上試験)がある。台上試験は、路上試験と比較して、繰り返し性に優れている。
【0003】
特許文献1には、タイヤの台上試験に使用される試験装置の例が記載されている。特許文献1に記載の試験装置は、外周面に模擬路面が設けられた回転ドラムを備え、試験タイヤを模擬路面に接地させた状態で、試験タイヤとドラムを回転させて試験を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-72215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤの性能は、路面の状態により影響を受けるため、様々な状態の路面に対して評価を行う必要がある。しかしながら、従来の台上試験用の試験装置は、試験時に模擬路面を高速で走行させるため、雨雪や砂利等で覆われた路面状態で試験を行うことが困難であった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、様々な路面状態の台上試験が可能なタイヤ試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、路面と、試験タイヤが装着された試験輪を回転可能に保持し、試験タイヤを路面に接地させた状態で路面に沿って走行可能なキャリッジと、を備え、キャリッジが、試験輪を回転可能に支持する車軸部と、車軸部の向きを変えることによって試験輪のホイールアライメントを調整可能なアライメント部と、を備え、アライメント部が、車軸部の高さを変えることによって試験輪に加わる荷重を調整可能な荷重調整部を備え、荷重調整部が、上下に移動可能に支持された第1可動フレームと、第1可動フレームの上下の移動を案内するリニアガイドと、第1可動フレームを上下に駆動する第1駆動ユニットと、を備えた、タイヤ試験装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、試験中に路面を移動させずに、試験タイヤを路面に沿って走行させることにより、タイヤの台上試験を様々な路面状態で行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の左側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の背面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の拡大図(左側面視)である。
図5】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の拡大図(平面視)である。
図6】ガイド機構の配置を示した図である。
図7】ガイド機構(A型)の断面図である。
図8】ガイド機構(B型)の断面図である。
図9】レール部材の接続部を示した図である。
図10】駆動システムの概略の論理構成を示したブロック図である。
図11】駆動システムの主要部の概略の機械構成を示した図である。
図12】駆動部及び駆動プーリー部の概略構造を示した図である。
図13】第1従動部の平面図である。
図14図13のA-A断面図である。
図15図13のB-B断面図である。
図16図13のC-C断面図である。
図17】第2従動部の断面図である。
図18】トルク付与部の断面図である。
図19】アライメント部40の概略構造を示す図である。
図20図19のA-A矢視図である。
図21図19のB-B矢視図である。
図22図19のC-C矢視図である。
図23図19のD-D矢視図である。
図24】スピンドル部の概略構造を示す図である。
図25】路面部の横断面図である。
図26】路面部の変形例の横断面図である。
図27】路面部の荷重検出部付近の平面図である。
図28】路面部の荷重検出部付近の側面図である。
図29】荷重検出部の正面図である。
図30】荷重検出部の側面図である。
図31】荷重検出部の平面図である。
図32】荷重検出部の可動部を取り外した状態を示す平面図である。
図33図18における領域Eの拡大図である。
図34】タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する手順を表すフローチャート。
図35】荷重プロファイル計算の手順を表すフローチャートである。
図36】荷重検出モジュール及び試験輪の回転軸の配置関係を示す平面図である。
図37】荷重プロファイルの表示例である。
図38】制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する事項には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。また、各図において、符号が共通する事項が複数表示される場合は、必ずしもそれらの複数の表示の全てに符号を付さず、それらの複数の表示の一部について符号の付与を適宜省略する。また、各図において、説明の便宜上、構成の一部を省略し又は断面で示している。
【0011】
図1~3は、順に、本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置1の左側面図、平面図及び背面図である。また、図4及び図5は、順に、タイヤ試験装置1の主要部を拡大した左側面図及び平面図である。
【0012】
平面図(図2及び図5)において、右から左に向かう方向をX軸方向、上から下に向かう方向をY軸方向、紙面に垂直に裏から表に向かう方向をZ軸方向と定義する。X軸方向及びY軸方向は互いに直交する水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。また、特に定める場合を除き、前後、左右、上下の各方向を、キャリッジ20の走行方向(X軸正方向)を向いたときの各方向として定義する。すなわち、X軸正方向を前、X軸負方向を後ろ、Y軸正方向を左、Y軸負方向を右、Z軸正方向を上、Z軸負方向を下という。
【0013】
タイヤ試験装置1は、X軸方向に細長い軌道部10及び路面部60と、軌道部10上をX軸方向に走行可能なキャリッジ20を備えている。図3に示されるように、路面部60は、軌道部10のベースフレーム11(以下「ベース11」と略記する。)の左側部分に載置されている。路面部60の上面には、キャリッジ20に装着された試験タイヤTが接地する路面63aが設けられている。本実施形態においては、試験条件に応じて路面部60を交換できるように、路面部60は軌道部10のベース11に取り外し可能に取り付けられている。なお、軌道部10のベース11と路面部60のフレーム61とを例えば溶接等により一体化してもよい。また、路面部60を基礎F(図3)上に直接設置して、路面部60を軌道部10から完全に分離させてもよい。
【0014】
図5に示されるように、軌道部10の前端部には、後述する駆動部14LB及び14RBに隣接して、1対の車止め13が設けられている。車止め13は、キャリッジ20がオーバーランしたときに、キャリッジ20と衝突して、キャリッジ20を強制的に停止させる装置である。各車止め13は、キャリッジ20との衝突時に発生する衝撃を緩和する1対の油圧式の緩衝装置を備えている。
【0015】
図3に示されるように、キャリッジ20には、試験輪W(すなわち、試験タイヤTが装着されたホイールリムWr)が取り付けられる。試験中、試験輪Wを路面63aに接地させた状態でキャリッジ20が走行し、試験輪Wは路面63a上を転動する。
【0016】
図3及び図5に示されるように、軌道部10は、キャリッジ20のX軸方向への移動を案内する複数(図示の実施例においては3つ)のガイド機構12A、12B及び12Cを備えている。ガイド機構12A、12B及び12Cは、軌道部10の左端部、幅方向(すなわちY軸方向)中央部及び右端部にそれぞれ設置されている。
【0017】
図6は、ガイド機構12Aの左側面図である。また、図7及び図8は、それぞれガイド機構12A及び12Bの断面図である。なお、ガイド機構12Cは、ガイド機構12Aと左右対称に構成されているため、ガイド機構12Cについての詳細な説明は省略する。
【0018】
各ガイド機構12A、12B及び12Cは、X軸方向に延びる軌道を形成する1本のレール121と、レール121上を走行可能な一つ以上(図示の実施例においては2つ)の走行部122A(図7)、122B(図8)又は122C(不図示。ガイド機構12Aの走行部122Aと左右対称に構成される。)を備えている。走行部122Aについて図6に示されるように、走行部122A、122B及び122Cは、2つのうちの一方がキャリッジ20の底面の前端部に取り付けられ、他方が後端部に取り付けられている。
【0019】
図7及び図8に示されるように、レール121は、軌道部10のベース11上に敷設されている。また、各走行部122A、122B及び122Cは、キャリッジ20のメインフレーム21の下面に取り付けられている。
【0020】
レール121は、頭部121hと、頭部121hよりも幅の広い底部121fと、頭部121hと底部121fとを連結する幅の狭い腹部121wを有する平底レールである。本実施形態のレール121は、例えば日本工業規格JIS E 1120:2007に準拠する熱処理レール(例えば、熱処理レール50N-HH340)に追加工が施されたものである。熱処理レールは、頭部に熱処理を施して、耐摩耗性を向上させた鉄道用レールである。
【0021】
図7に示されるように、ガイド機構12Aの走行部122Aは、キャリッジ20のメインフレーム21の下面に取り付けられたX軸方向に長いフレーム123と、フレーム123に取り付けられた複数のローラーユニット128Aを備えている。ローラーユニット128Aは、フレーム123に取り付けられた3本のロッド124a、124b及び124cと、各ロッド124a、124b及び124cにそれぞれ取り付けられた3つのローラー組立品125a、125b及び125cを備えている。各ローラーユニット128Aの3つのローラー組立品125a、125b及び125cは、X軸方向において同じ位置に配置されている。また、図6に示されるように、複数のローラーユニット128Aは、X軸方向に所定の間隔で並べられている。
【0022】
ローラー組立品125b及び125cは、ローラー組立品125aと同じ構成を有している(但し、ローラー組立品125cはローラー組立品125aとは大きさが異なる。)ため、これらを代表してローラー組立品125aについて説明し、ローラー組立品125b及び125cについての重複する説明は省略する。
【0023】
図7に示されるように、ローラー組立品125aは、レール121上を転動するローラー126aと、ローラー126aを回転可能に支持する1対の軸受127aを備えている。軸受127aは、ころがり軸受であり、図示の実施例においては玉軸受が使用されている。
【0024】
本実施形態においてはローラー126aの外周面126apは、円柱面状に形成されているが、回転軸方向にも(すなわち、図7に示される回転軸を含む縦断面においても)曲率を有する曲面(例えば、ローラー126aの中心点126agを中心とする球面)としてもよい。
【0025】
ローラー組立品125aの軸受127aは、例えば単列のラジアル軸受である。軸受127aは、ロッド124aと嵌合した内輪127a1と、ローラー126aの内周面と嵌合した外輪127a3と、内輪127a1と外輪127a3との間に介在する複数の転動体であるボール127a2を備えている。ボール127a2は、内輪127a1の外周面及び外輪127a3の内周面にそれぞれ形成された円環状溝の対によって定まる円軌道上を転動する。
【0026】
ローラー組立品125aは、外周面126apがレール121の頭部上面(頭頂面)121aに接触し、キャリッジ20の走行に伴って頭部上面121a上を転動するように配置されている。ローラー組立品125bは、外周面126bpがレール121の頭部下面121bの一方に接触して、頭部下面121b上を転動するように配置されている。また、ローラー組立品125cは、外周面126cpがレール121の頭部側面121cの一方に接触して、頭部側面121c上を転動するように配置されている。
【0027】
レール121は、ローラー組立品125a、125b及び125cとそれぞれ接触する頭部上面121a、頭部下面121b及び頭部側面121cについて、形状を平面に変更するとともに、平面度や平行度等の面精度を高める追加工(例えば、研削加工や研磨加工等)が施されている。
【0028】
上述したように、キャリッジ20の左右両端部にそれぞれ取り付けられたガイド機構12Aとガイド機構12Cとは、左右対称に構成されている。すなわち、ガイド機構12Cは、ガイド機構12Aと同一のものを左右逆向きに(すなわち、鉛直軸周りに180度回転させて)配置したものである。
【0029】
図8に示されるように、ガイド機構12Bの走行部122Bは、キャリッジ20のメインフレーム21の下面に取り付けられたフレーム123と、フレーム123に取り付けられた複数のローラーユニット128Bを備えている。ローラーユニット128Bは、2本のロッド124a及び124bと、2つのローラー組立品125a及び125bを備えている。また、ロッド124b及びローラー組立品125bは、ガイド機構12Aの走行部122Aではレール121の左側に配置されているのに対して、ガイド機構12Bの走行部122Bではレール121の右側に配置されている。すなわち、ガイド機構12Bの走行部122Bは、上述したガイド機構12Aの走行部122Aからローラー組立品125c及びロッド124cを省き、左右逆向きに配置したものである。なお、ガイド機構12Bの走行部122Bがローラー組立品125c及びロッド124cを備えていても良い。
【0030】
本実施形態では、レール121の左側に配置されたガイド機構12Aのローラー組立品125b及び125cによって、レール121に対してキャリッジ20が右(Y軸負方向)に移動することが阻止されている。また、レール121の右側に配置されたガイド機構12Bのローラー組立品125bとガイド機構12Cのローラー組立品125b及び125cによって、レール121に対してキャリッジ20が左(Y軸正方向)に移動することが阻止されている。従って、キャリッジ20は、レール121に対するY軸方向への移動が阻止されている。また、ガイド機構12A、12B及び12Cのローラー組立品125bによって、レール121に対してキャリッジ20が上(Z軸正方向)に移動することが阻止されている。このように、レール121に対するキャリッジ20のY軸方向及びZ軸正方向への移動を阻止することにより、レール121からのキャリッジ20の脱線が防止されている。
【0031】
本実施形態では、走行部122B(図8)が走行部122A(図7)と左右逆向きに配置されているが、走行部122Bを走行部122Aと左右同じ向きに配置してもよい。同様に、走行部122Cと走行部122Aを左右同じ向きに配置してもよい。但し、走行部122A、走行部122B及び走行部122Cのいずれか二つが互いに左右逆向きに配置(すなわち、レール121に対してローラー組立品125b及び125cが左右逆側に配置)される。
【0032】
キャリッジ20の左右(Y軸方向)の移動を阻止するために、少なくとも、互いに左右逆向きに配置された二つの走行部122A、122B又は122Cが、ローラー組立品125c及びロッド124を備えていればよい。
【0033】
キャリッジ20の上(Z軸正方向)への移動を阻止するために、少なくとも一つの走行部122A、122B又は122Cがローラー組立品125b及びロッド124bを備えていればよい。
【0034】
レール121の頭部下面121bが水平面となす角度が一定の角度(例えば5°)より大きい場合は、ローラー組立品125cの代わりにローラー組立品125bを使用することができる。
【0035】
ガイド機構12のレール121は、複数の短いレール部材が接続されたものでもよい。その場合、図9に示されるように、レール121の継目121jは、レール121の長さ方向(X軸方向)に対して垂直ではなく、平面視において斜めに(すなわち、継目121jがZX平面に対してある角度θをなして傾くように)形成してもよい。継目121jを斜めに形成することにより、温度変化によりレール121の伸縮が生じても、継目121jでのレール部材同士のスライドによりレール121のひずみが解放されるため、レール121の湾曲が防止される。
【0036】
斜めの継目121jを形成する場合、レール121の、継目121jよりも前方において頭部側面121cが継目121jと鈍角を成す側(すなわち、ガイド機構12Aにおいては左側であり、ガイド機構12B及び12Cにおいては右側)にローラー組立品125b及び125c(図9)が配置される。ローラー組立品125b及び125cをこのように配置することにより、レール121の継目121jにずれが生じても、ローラー組立品125b及び125cが継目121jの鋭角な端部121eと衝突して、大きな衝撃や損傷が発生することが防止される。
【0037】
なお、継目121jにおいて、接続する二つのレール部材の端面同士を接触させてもよく、端面間に所定の隙間を設けて非接触に突き合わせてもよい。また、本実施形態では、レール121の継目121jにおいて、接続される二つのレール部材の端面同士が単に突き合わされているのみで接合されていないが、溶接又は鑞付け等により継目121jにおいてレール部材を接合してもよい。
【0038】
なお、本実施形態のガイド機構12A、12B及び12Cに代えて、ガイドウェイ形循環式リニア軸受(所謂リニアガイド)を使用することもできる。玉循環リニア軸受は、平行な二つの直線軌道の隣接する端同士をそれぞれ半円軌道で連結した長円形の軌道を有している。このような直線軌道を有するリニア軸受を高速で(例えば、10km/h以上の速度で)走行させると、転動体が直線軌道から曲線軌道に移行する際に、転動体に急激に遠心力が発生する(すなわち、転動体及び曲線軌道の転動面に衝撃荷重が加わる)ため、転動体及び転動面が急速に摩耗し、又は損傷する。そのため、キャリッジ20を高速で走行させると、リニア軸受の寿命が短くなる又は破損するという問題がある。
【0039】
本実施形態のガイド機構12A、12B及び12Cにおいて使用される軸受127a~cは、転動体が常に一定の曲率の円軌道上を走行するため、転動体に作用する遠心力の急激な変動(すなわち衝撃荷重)は発生しない。そのため、例えば60km/hを超える早い周速でローラー126a~cを回転させても、軸受127a~cの著しい寿命の低下や破損は発生しない。従って、転動体の軌道の曲率が一定である円軌道を有するころがり軸受を使用してガイド機構12A~Cを構成することにより、キャリッジ20の高速走行(例えば10km/h以上の速度での走行)が可能になる。本実施形態のタイヤ試験装置1は、上述したガイド機構12A、12B及び12Cを採用したことにより、85km/hを超える速度でのキャリッジ20の走行が可能になっている。
【0040】
タイヤ試験装置1は、キャリッジ20及び試験輪Wを駆動する駆動システムDSを備えている。図10は、駆動システムDSの概略の論理構成を示すブロック図である。また、図11は、駆動システムDSの主要部の概略の機械構成を示した図である。なお、図10において、矢印は機械的動力(以下、単に「動力」という。)の伝達経路を表す。
【0041】
図10に示されるように、駆動システムDSは、動力を発生する発動部ASと、発動部ASが発生した動力を駆動対象であるキャリッジ20及び試験輪Wに伝える伝動部TSとを含む。なお、駆動システムDSは、試験輪W及び路面部60と共に、動力循環系を構成する。
【0042】
発動部ASは、軌道部10に取り付けられた左右2対の駆動部14(第1発動手段)と、キャリッジ20に取り付けられたトルク付与装置30(第2発動手段)を備えている。駆動部14は、主にキャリッジ20の走行速度及び試験輪Wの回転数の制御に使用され、トルク付与装置30は、主に試験輪Wに与えるトルクの制御に使用される。
【0043】
伝動部TSは、駆動部14が発生した動力をキャリッジ20に伝える第1伝動部TS1と、第1伝動部TS1によって伝達された動力の一部を取り出してトルク付与装置30に伝える第2伝動部TS2と、トルク付与装置30から出力された動力を試験輪Wに伝える第3伝動部TS3を含む。なお、トルク付与装置30も伝動部TSの一部を構成する。
【0044】
図4及び図5に示されるように、2対の駆動部14(左側の1対の駆動部14LA及び14LBと右側の1対の駆動部14RA及び14RB)は、軌道部10のベース11上の四隅付近に据え付けられている。駆動部14LA及び14RAは軌道部10の後端部に配置され、駆動部14LB及び14RBは軌道部10の前端部に配置されている。
【0045】
後述するように、右側の駆動部14RA及び14RBは、キャリッジ20を駆動して走行させるキャリッジ駆動手段としての機能と、キャリッジ20の走行速度に対応する回転数で試験輪Wを回転駆動させる試験輪駆動手段(回転数付与手段)としての機能を兼ね備えている。左側の駆動部14LA及び14LBは、キャリッジ駆動手段としての機能を有している。
【0046】
第1伝動部TS1は、ベルト機構15(15L、15R)及び従動部(第1従動部22及び第2従動部23)の各1対を含む。左側のベルト機構15Lは左側の1対の駆動部14LA及び14LBによって駆動され、右側のベルト機構15Rは右側の1対の駆動部14RA及び14RBによって駆動される。第1従動部22と第2従動部23はキャリッジ20のメインフレーム21に取り付けられている。第1従動部22は右側のベルト機構15Rに接続され、第2従動部23は左側のベルト機構15Lに接続されている。
【0047】
図12は、駆動部14及びベルト機構15の駆動プーリー部150の概略構造を示した図である。図13は、第1従動部22の平面図である。図14図15及び図16は、順に、図13のA-A断面図、B-B断面図及びC-C断面図である。また、図17は、第2従動部23の概略構造を示す断面図である。
【0048】
各ベルト機構15(15L、15R)は、1対の駆動プーリー部150と、ベルト151(151L、151R)と、第1従動部22に保持された3つの従動プーリー155A、155C及び156(図14)又は第2従動部23に保持された3つの従動プーリー155A、155B及び155C(図17)と、キャリッジ20のメインフレーム21にベルト151の両端部をそれぞれ固定する一対のベルトクランプ157(図3図5)を備えている。駆動プーリー部150は、軌道部10のベース11上に据え付けられ、対応する駆動部14に接続されている。
【0049】
ベルト151Rは、1対の駆動プーリー部150の駆動プーリー(152A、152B)と3つの従動プーリー155A、156及び155Cに巻き掛けられている。ベルト151Lは、1対の駆動プーリー部150の駆動プーリー(152A、152B)と、3つの従動プーリー155A、155B及び155Cに巻き掛けられている。
【0050】
駆動部14は、モーター141(第1モーター)とベルト機構142を備えている。モーター141は、例えば、回転部の慣性モーメントが0.01kg・m以下(より好適には、0.008kg・m以下)、定格出力が3kW乃至60kW(より実用的には、7kW乃至37kW)の超低慣性高出力型のACサーボモーターである。このような超低慣性かつ高出力のモーター141を使用することにより、キャリッジ20を短い走行距離(例えば、20~50m)で試験タイヤTの最高速度(例えば240km)まで加速することが可能になる。
【0051】
なお、モーター141には、回転部が標準的な大きさの慣性モーメントを有するモーターを使用してもよい。また、モーター141は、例えば、駆動制御にインバーターが使用される所謂インバーターモーター等の速度制御が可能な別の種類の電動機でもよい。
【0052】
ベルト機構142は、モーター141の軸141bに取り付けられた駆動プーリー142aと、従動プーリー142cと、駆動プーリー142aと従動プーリー142cに巻き掛けられたベルト142bを備えている。ベルト142bは、例えば、後述するベルト151と同じ構成の歯付ベルトである。ベルト142bの種類は、ベルト151と異なっていてもよい。
【0053】
ベルト機構142は、駆動プーリー142aよりも従動プーリー142cのピッチ円直径が大きい(すなわち、歯数が多い)ため、1よりも大きな減速比を有している。そのため、モーター141から出力された回転は、ベルト機構142によって減速される。なお、ベルト機構142の減速比は1以下でもよい。また、ベルト機構142に替えて(又は、加えて)、減速機を駆動部14に設けても良い。また、ベルト機構142や減速機を設けずに、モーター141の軸141bにベルト機構15の後述するシャフト153を直結させてもよい。
【0054】
駆動部14に隣接して、ベルト機構15の駆動プーリー部150が配置されている。駆動プーリー部150は、1対の軸受部154と、1対の軸受部154によって回転可能に支持されたシャフト153と、シャフト153に取り付けられた駆動プーリー152を備えている。ベルト機構142の従動プーリー142cもシャフト153に取り付けられていて、駆動部14の出力は、シャフト153及び駆動プーリー152を介して、駆動プーリー152に巻き掛けられたベルト151に伝えられる。
【0055】
ベルト151は、鋼線の心線を有する歯付ベルトである。なお、ベルト151には、例えば炭素繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などの所謂スーパー繊維から形成された心線を有するものを使用してもよい。カーボン心線などの軽量かつ高強度の心線を使用することにより、比較的に出力の低いモーターを使用してキャリッジ20を高い加速度で駆動する(あるいは、試験輪Wに高い駆動力/制動力を与える)ことが可能になり、タイヤ試験装置1の小型化が可能になる。また、同じ出力のモーターを使用する場合、所謂スーパー繊維から形成された心線を有する軽量のベルト151を使用することにより、タイヤ試験装置1の高性能化(具体的には、加速性能の向上)が可能になる。
【0056】
図3から図5に示されるように、各ベルト151の両端部は、それぞれによりキャリッジ20のメインフレーム21に固定されている。これにより、各ベルト151は、キャリッジ20を介してループを形成している。各ベルト機構15が作動すると、キャリッジ20は各ベルト151によって引っ張られて、X軸方向へ走行する。
【0057】
本実施形態においては、ループの下側においてベルトクランプ157によりベルト151がキャリッジ20に固定され、ループの上側においてベルト機構15と第1従動部22又は第2従動部23が接続している。高さが比較的に低いベルトクランプ157を第1従動部22又は第2従動部23よりも下方に配置することにより、ベルト機構15の高さを低くすることができる。なお、ループの上側においてベルト151がキャリッジ20に固定される構成としてもよい。
【0058】
図4に示されるように、ベルト機構15の1対の駆動プーリー152(152A、152B)は、キャリッジ20が走行可能な領域を間に挟んで配置され、ベース11上に保持された(すなわち、重心位置がベース11に対して固定された)固定プーリーである。また、第1従動部22又は第2従動部23に保持された従動プーリー155(155A、155B、155C)及び156は、キャリッジ20と共にX軸方向に移動可能な可動プーリーである。
【0059】
以下の説明においては、左右に1対が設けられた構成については、原則として左側の構成について説明し、右側の構成については、符号を角括弧で囲って併記し、重複する説明を省略する。
【0060】
本実施形態では、1対の駆動部14LAと14LB[14RAと14RB]は同位相で駆動される。また、左側の駆動部14LA及び14LBと右側の駆動部14RA及び14RBは、左右逆向きに配置されていて、互いに逆位相で駆動される。
【0061】
駆動プーリー152(図12)と従動プーリー155(図14図17)の有効径(すなわち、ピッチ円直径)又は歯数は、いずれも同一である。第1従動部22に保持された従動プーリー156(図14)のピッチ円直径又は歯数は、駆動プーリー152及び従動プーリー155よりも大きな(例えば、2倍の)値となっている。
【0062】
図5に示されるように、キャリッジ20は、メインフレーム21、第1従動部22、第2従動部23、ベルト機構24、ベルト機構25、伝動軸部26、ブレーキ装置27、ブレーキ装置28、トルク付与装置30、アライメント部40及びスピンドル部50(車軸部)を備えている。なお、図10に示されるように、第1従動部22及びベルト機構24により第2伝動部TS2が構成される。また、ベルト機構25、伝動軸部26及びスピンドル部50により第3伝動部TS3が構成される。
【0063】
図11に示されるように、スピンドル部50は、回転可能に支持されたスピンドル52を備えている。スピンドル52は、その一端に試験輪Wが同軸に(すなわち、中心線を共有するように)取り付けられる軸(すなわち、車軸)であり、トルク付与装置30から出力された動力によってスピンドル52と共に試験輪Wが回転駆動される。アライメント部40は、スピンドル部50の向きを変えることによって、試験輪Wのホイールアライメントの調整(アライメント調整)が可能な機構部である。
【0064】
図13から図16に示されるように、第1従動部22は、本体部221、軸受部222、軸受部223、シャフト224、駆動歯車225、シャフト226及び従動歯車227を備えている。
【0065】
図14に示されるように、本体部221は、Y軸方向に延びる2本のロッド221bと、内輪が各ロッド221bと嵌合した1対の軸受221cを備えている。ベルト機構15Rの従動プーリー155A及び155Cは、各軸受221cの外輪とそれぞれ嵌合している。この構成により、ベルト機構15Rの従動プーリー155A及び155Cは、本体部221によって回転可能に支持されている。
【0066】
図16に示されるように、本体部221は、軸受221aを備えている。軸受部222は、上下に並ぶ1対の軸受222a及び222bを備えている。また、軸受部223は、上下に並ぶ1対の軸受223a及び223bを備えている。
【0067】
シャフト224は、長さ方向の一端部において軸受221aにより、他端部において軸受223aにより、中間部において軸受222aにより、回転可能に支持されている。シャフト224には、ベルト機構15Rの従動プーリー156と駆動歯車225が取り付けられている。
【0068】
シャフト226は、シャフト224よりも短く、長さ方向の一端部において軸受222bにより、他端部において軸受223bにより、回転可能に支持されている。シャフト226には、駆動歯車225と噛み合う従動歯車227と、ベルト機構24の駆動プーリー241が取り付けられている。
【0069】
すなわち、第1従動部22を介して、従動プーリー156(ベルト機構15R)と駆動プーリー241(ベルト機構24)とが連結されている。ベルト機構15Rによって伝えられた動力の一部は、従動プーリー156を介してシャフト224に伝えられた後、駆動歯車225及び従動歯車227を介してシャフト226に伝えられ、更に、駆動プーリー241を介してベルト機構24に伝えられる。ベルト機構24に伝えられた動力は、試験輪Wの駆動に使用される。
【0070】
すなわち、右側の第1従動部22と、第1従動部22によって回転可能に支持された従動プーリー156(及び、従動プーリー155A、155C)は、ベルト機構15Rから動力の一部を取り出して、ベルト機構24に供給する機能を有している。
【0071】
ベルト機構15Rによって伝えられた動力の残りの部分は、ベルトクランプ157によってベルト151が固定されたキャリッジ20のメインフレーム21に伝えられ、キャリッジ20の駆動に使用される。
【0072】
すなわち、右側のベルト機構15Rは、キャリッジ20を駆動する手段(キャリッジ駆動手段)の一部を構成すると共に、試験輪Wを駆動する手段(試験輪駆動手段)の一部も構成する。また、右側のベルト機構15Rは、右側の第1従動部22と共に、駆動部14RA、14RBが発生した動力をキャリッジ20の駆動に使用される動力と試験輪Wの駆動に使用される動力とに分配する手段(動力分配手段)として機能する。
【0073】
本実施形態のベルト機構15Rは、入力側の駆動プーリー152よりも出力側の従動プーリー156のピッチ円直径が大きいため、1より大きな減速比を有している。なお、本発明はこの構成に限定されず、従動プーリー156のピッチ円直径を駆動プーリー152のピッチ円直径以上として、ベルト機構15Rの減速比を1以下としてもよい。
【0074】
また、第1従動部は、駆動歯車225及び従動歯車227を含むことにより、動力の回転方向を反転させる。
【0075】
図17に示されるように、第2従動部23(本体部231)は、Y軸方向に延びる3本のロッド231bと、内輪が各ロッド231bと嵌合した3本の軸受231cを備えている。3本のロッド231bは、X軸方向において等間隔で配置されている。本実施形態では、中央のロッド231bが残りの2本のロッド231bよりも高い位置に配置されているが、すべてのロッド231bを同じ高さに配置してもよい。
【0076】
各軸受231cの外輪には、ベルト機構15Lの3つの従動プーリー155(前から順に従動プーリー155A、155B及び155C)が嵌合している。この構成により、ベルト機構15Lの従動プーリー155A、155B及び155Cは、第2従動部23によって回転可能に支持されている。
【0077】
図4に示されるように、ベルト機構15のベルト151は、駆動プーリー152A、152Bによって折り返されることにより、上側の部分151aと下側の部分151bとに分かれている。上側の部分151aと下側の部分151bは、それぞれキャリッジ20の走行方向に張られて、互いに逆向きに駆動される。具体的には、キャリッジ20に固定されたベルト151の下側の部分151bが、キャリッジ20と共にキャリッジの走行方向に駆動され、上側の部分151aがキャリッジ20及び下側の部分151bと逆向きに駆動される。また、キャリッジ20に取り付けられた従動プーリー155及び156は、キャリッジ20と逆向きに走行するベルト151の上側の部分151aに巻き掛けられて、上側の部分151aによって駆動される。
【0078】
図10及び図11に示されるように、右側のベルト機構15Rによって伝達された動力の一部は、第2伝動部TS2によりトルク付与装置30へ伝達され、更に、第3伝動部TS3により試験輪Wへ伝達されて、試験輪Wの駆動に使用される。なお、第2伝動部TS2は、第1従動部22及びベルト機構24を含み、第3伝動部TS3は、ベルト機構25、伝動軸部26及びスピンドル部50を含む。上述したように、右側のベルト機構15Rによって伝達された動力の残りの部分は、ベルトクランプ157によってベルト151の先端部が固定されたキャリッジ20のメインフレーム21に伝えられ、キャリッジ20の駆動に使用される。上記のように構成されたベルト機構15R及び第1従動部22により、ベルト151によるキャリッジ20と試験輪Wの両方の駆動が可能になっている。
【0079】
なお、左側の第2従動部23は、ベルト機構15Lによって伝達される動力の一部を取り出してキャリッジ20に設けられた第2伝動部TS2に伝達するための構成(具体的には、軸受部222、223、シャフト224、226、駆動歯車225及び従動歯車227)を備えていない点において、右側の第1従動部22と異なっている。なお、左側の第2従動部23は必須の構成要素ではないが、左側の第2従動部23を設けることにより、キャリッジ20が左右のベルト機構15L、15Rから受ける力が釣り合い、キャリッジ20の走行が安定化する。
【0080】
上記のように、本実施形態では、共通の動力伝達装置(すなわち、ベルト機構15R)によって伝達された動力を使用してキャリッジ20及び試験輪Wを駆動する構成が採用されている。この構成により、キャリッジ20の走行速度に拘わらず、常にキャリッジ20の走行速度に対応した周速(回転数)で試験輪Wを回転駆動させることが可能になっている。また、本実施形態では、トルク付与装置30の作動量(つまりは、消費電力)を減らすために、トルク付与装置30が作動していないときには、キャリッジ20の走行速度と略同じ周速で試験輪Wが回転駆動されるように構成されている。
【0081】
ベルト機構24は、上述した第1従動部22のシャフト226(図16)に取り付けられた駆動プーリー241と、後述するトルク付与装置30の軸部314(図18)に取り付けられた従動プーリー242と、駆動プーリー241と従動プーリー242に巻き掛けられたベルト243を備えている。ベルト243は、例えば、上述したベルト151と同じ構成の歯付ベルトである。ベルト243の種類は、ベルト151と異なっていてもよい。
【0082】
図18は、トルク付与装置30の構造を示した図である。トルク付与装置30は、試験輪Wに与えるトルクを発生して、このトルクをベルト機構24によって伝達された回転運動に加えて出力する。言い換えれば、トルク付与装置30は、ベルト機構24により伝達された回転運動の位相を変化させることにより、試験輪Wにトルクを付与する(すなわち、路面63aと試験輪Wとの間に駆動力又は制動力を与える)ことができる。
【0083】
トルク付与装置30は、試験輪Wを駆動する動力を発生する第2発動手段として機能すると共に、駆動部14(第1発動手段)のモーター141(第1モーター)が発生する動力とトルク付与装置30の後述するモーター32(第2モーター)が発生する動力とを結合する動力結合手段としても機能する。
【0084】
駆動システムDSにトルク付与装置30を組み込むことにより、試験輪Wの回転数を制御するための動力源(駆動部14RA、14RB)とトルクを制御するための動力源(後述するモーター32)とで役割を分担することが可能になる。そして、これにより、より小容量の動力源を使用することが可能になると共に、試験輪Wに加わる回転数及びトルクをより高い精度で制御することが可能になる。また、トルク付与装置30をキャリッジ20に組み込むことにより、ベルト機構15Rに加わる負荷が低減するため、ベルト機構15Rの小型化(例えば、使用する歯付ベルトの本数の削減)や、より耐荷重の低い部材の使用が可能になる。
【0085】
トルク付与装置30は、回転フレーム31と、回転フレーム31内に取り付けられたモーター32(第2モーター)、減速機33及びシャフト34と、回転フレーム31を回転可能に支持する3つの軸受部351、352及び353と、スリップリング部37と、回転フレーム31の回転数を検出するロータリーエンコーダー38を備えている。
【0086】
本実施形態においては、モーター32には、回転部の慣性モーメントが0.01kg・m以下(より好適には、0.008kg・m以下)、定格出力が3kW乃至60kW(より実用的には、7kW乃至37kW)の超低慣性高出力型のACサーボモーターが使用されている。
【0087】
回転フレーム31は、直径が大きな略円筒状の第1筒部311(モーター収容部)、第2筒部312(連結筒)及び第3筒部313と、第1筒部311よりも直径が小さな略円筒状の軸部314及び315を有している。第1筒部311の一端部(図18における右端部)には、第2筒部312及び第3筒部313を介して、軸部314が同軸に結合している。また、第1筒部311の他端部(図18における左端部)には、軸部315が同軸に結合している。軸部314は軸受部351及び353により、軸部315は軸受部352により、それぞれ回転可能に支持されている。
【0088】
第1筒部311の中空部にはモーター32が収容されている。モーター32は、軸321が回転フレーム31と同軸に配置され、モーターケース320(すなわちステーター)が複数のスタッドボルト323により第1筒部311に固定されている。
【0089】
第2筒部312及び第3筒部313の中空部に減速機33が配置されている。減速機33の入力軸332にはモーター32の軸321が接続され、出力軸333にはシャフト34が接続されている。
【0090】
第2筒部312の一端部(図18における右端部)には、外周へ突出するフランジ312aが形成されている。第2筒部312の他端部(図18における左端部)には、外周へ突出するフランジ312bと内周へ突出する内フランジ312cが形成されている。
【0091】
モーター32のフランジ320aは、第2筒部312の内フランジ312cに固定されている。減速機33のギヤケース331は、第2筒部312の一端部(すなわち、フランジ312aの根元)に固定されている。すなわち、モーター32のモーターケース320と減速機33のギヤケース331とは、単一の短い筒状の部材である第2筒部312を介して、高い剛性で連結されている。これにより、モーター32の軸321及び減速機33の入力軸332には曲げモーメントは殆ど加わることがなく、軸321及び入力軸332のスムーズな(すなわち、低摩擦の)回転が確保され、試験輪Wに与えるトルクの制御の精度が向上している。
【0092】
軸部315の根元には、第1筒部311と同径のフランジ315aが形成されていて、このフランジ315aの外周部に第1筒部311の一端が固定されている。また、モーター32のフランジ320bは、第1筒部311のフランジ315aに固定されている。モーター32は、モーターケース320の長さ方向における両端部及び中央部において回転フレーム31に固定されているため、高い剛性で支持されている。
【0093】
軸部314の根元には、第3筒部313と同径のフランジ314aが形成されていて、このフランジ314aの外周部に第3筒部313の一端が固定されている。また、第3筒部313の他端は、第2筒部312のフランジ312aの外周部に固定されている。
【0094】
軸部314は、根本側のフランジ314aの近くを軸受部351により、先端部を軸受部353により、それぞれ回転可能に支持されている。軸受部351と軸受部353の間には、ベルト機構24の従動プーリー242が配置され、軸部314の外周に同軸に取り付けられている。ベルト機構24によって伝達された動力により、トルク付与装置30の回転部が回転駆動される。すなわち、軸部314(回転フレーム31)は、トルク付与装置30の入力軸となっている。
【0095】
軸部314の両端部(すなわち、軸受部351又は軸受部353により支持された部分)の内周には、1対の軸受314bが設けられている。シャフト34は、軸部314の中空部に通され、1対の軸受314bによって回転可能に支持されている。シャフト34の先端は軸部314の先端から外に突き出ている。軸部314から突き出たシャフト34の先端部にはベルト機構25の駆動プーリー251が同軸に取り付けられていて、シャフト34から出力される動力によってベルト機構25が駆動される。すなわち、シャフト34は、トルク付与装置30の出力軸となっている。
【0096】
モーター32から出力されるトルクは、減速機33によって増幅されて、シャフト34に伝達される。シャフト34からベルト機構25に出力される回転は、ベルト機構24によって駆動される回転フレーム31の回転に、モーター32及び減速機33によって作り出されるトルクを重ね合わせたものとなる。トルク付与装置30は、入力軸である回転フレーム31の軸部315に伝達された回転運動に、トルク付与装置30が発生したトルクを加えて、出力軸であるシャフト34から出力する。
【0097】
スリップリング部37は、複数対のスリップリング371とブラシ372、支持管373、軸受部374、支柱375及び支持アーム376を備えている。支持管373は、回転フレーム31の軸部315に同軸に連結されている。支持管373の先端部は、軸受部374によって回転可能に支持されている。支持アーム376は、支持管373と平行に配置され、その一端が回転フレーム31側に配置された支柱375に固定され、他端が軸受部374のフレームに固定されている。
【0098】
複数のスリップリング371は、軸方向に一定の間隔を空けて並べられ、支持管373の外周に取り付けられている。複数のブラシ372は、それぞれ対応するスリップリング371の外周面と向かい合って接触するように配置され、支持アーム376に取り付けられている。
【0099】
各スリップリング371にはそれぞれリード線(不図示)が接続されている。リード線は、支持管373の中空部に通され、回転フレーム31の軸部315の中空部に引き出されている。モーター32のケーブル325は軸部315の中空部に通され、ケーブル325に含まれる複数のワイヤが、それぞれ対応するスリップリング371のリード線と接続されている。また、ブラシ372はドライバー32a(図38)に接続されている。すなわち、モーター32とドライバー32aとは、スリップリング部37を介して接続されている。
【0100】
ロータリーエンコーダー38は、スリップリング部37の軸受部374に取り付けられている。また、ロータリーエンコーダー38の入力軸には、回転フレーム31と一体に回転する支持管373が接続されている。
【0101】
図11に示されるように、ベルト機構25は、トルク付与装置30の出力軸(シャフト34)に取り付けられた駆動プーリー251と、伝動軸部26の入力軸(伝動軸261)に取り付けられた従動プーリー252と、駆動プーリー251と従動プーリー252に巻き掛けられたベルト253を備え、トルク付与装置30から出力された動力を伝動軸部26に伝達する。ベルト253は、例えば、上述したベルト151と同じ構成の歯付ベルトである。ベルト253の種類は、ベルト151と異なっていてもよい。
【0102】
伝動軸部26は、伝動軸261と、伝動軸261を回転可能に支持する1対の軸受部262と、ディスクブレーキ263と、スライド式等速ジョイント265と、伝動軸266と、伝動軸266を回転可能に支持する軸受267を備えている。ディスクブレーキ263は、伝動軸261に取り付けられたディスクローター263aと、ディスクローター263aに摩擦を与えて制動を行うキャリパー263bを備えている。
【0103】
伝動軸261は、一端部にベルト機構25の従動プーリー252が取り付けられ、他端にディスクローター263aを介してスライド式等速ジョイント265の一端が接続されている。スライド式等速ジョイント265の他端は、伝動軸266を介して、スピンドル52と連結している。スライド式等速ジョイント265は、作動角(すなわち、入力軸と出力軸とのなす角度)によらず、回転変動無くスムーズに回転を伝達可能に構成されている。また、スライド式等速ジョイント265は、軸方向の長さ(伝達距離)も可変である。
【0104】
試験輪Wが取り付けられるスピンドル52は、アライメント部40によって、その角度及び位置が可変に支持されている。スライド式等速ジョイント265を介して伝動軸261とスピンドル52とを連結することにより、スピンドル52の角度や位置が変化しても、この変化にスライド式等速ジョイント265が柔軟に追従することができる。そのため、スピンドル52や伝動軸261に大きなひずみが加わらず、動力がスムーズに伝達される。
【0105】
図19、アライメント部40の概略構造を示す図である。また、図20図21図22及び図23は、順に、図19のA-A矢視図、B-B矢視図、C-C矢視図及びD-D矢視図である。
【0106】
アライメント部40は、荷重調整部42、キャンバー調整部44及びスリップ角調整部46を備えている。
【0107】
荷重調整部42は、スピンドル52及びスピンドル52に取り付けられた試験輪Wの高さ(より具体的には、路面63aから試験輪Wの中心Cまでの距離)を変更することにより、試験輪Wに加わる荷重(路面63aから受ける垂直荷重)を調整する機構である。荷重調整部42は、ベース11に対して上下(Z軸方向)に移動可能な昇降フレーム421(第1可動フレーム)と、昇降フレーム421の上下の移動を案内する複数(図示の実施例においては2対)のリニアガイド422と、昇降フレーム421を上下に駆動する1つ以上(図示の実施例においては1対)のZ軸駆動ユニット43を備えている。
【0108】
キャリッジ20のメインフレーム21の左側には、アライメント部40を収容する小屋状(或いは東屋状)のアライメント機構支持部214が設けられている。昇降フレーム421は、アライメント機構支持部214内に収容されている。リニアガイド422は、上下に延びるレール422aと、レール422a上を走行可能な1つ以上(図示の実施例においては2つ)の走行部422bを備えている。各リニアガイド422のレール422a及び走行部422bの一方がアライメント機構支持部214に取り付けられ、他方が昇降フレーム421に取り付けられている。
【0109】
Z軸駆動ユニット43(第1駆動ユニット)は、モーター431と、モーター431の回転運動をZ軸方向の直線運動に変換するボールねじ432(運動変換器)を備えている。ボールねじ432は、モーター431の軸に連結されたねじ軸432aと、ねじ軸432aと噛み合うナット432bと、ねじ軸432aを回転可能に支持する軸受432c及び432dを備えている。モーター431と2つの軸受432c及び432dは、アライメント機構支持部214に取り付けられ、ナット432bは昇降フレーム421に取り付けられている。
【0110】
モーター431によりボールねじ432を駆動すると、ナット432bと共に昇降フレーム421が上下に移動する。これに伴い、昇降フレーム421に支持されたキャンバー調整部44、スリップ角調整部46及びスピンドル部50を介して試験輪Wが昇降し、ボールねじ432の駆動量(すなわち、試験輪Wの高さ)に応じた荷重が試験輪Wに加わる。
【0111】
本実施形態では、モーター431にねじ軸432aが直結されているが、減速機又は例えばウォームギア等の回転を減速する歯車装置を介してモーター431とねじ軸432aとが連結した構成としてもよい。
【0112】
本実施形態では運動変換器として送りねじ機構が使用されているが、回転運動を直線運動に変換可能な別の種類の運動変換器を使用してもよい。
【0113】
本実施形態のモーター431はサーボモーターであるが、作動量の制御が可能な別の種類のモーターをモーター431として使用してもよい。
【0114】
キャンバー調整部44は、Eφ軸(試験輪Wの中心Cを通る前後に延びる軸)周りにスピンドル52を旋回させることにより、路面に対する試験輪Wの傾きであるキャンバー角を調整する機構である。キャンバー調整部44は、Eφ軸を中心に回転可能なφ回転フレーム441(第2可動フレーム)と、φ回転フレーム441を回転可能に支持する1対の軸受442と、φ回転フレーム441の回転を案内する一対の曲線ガイド443と、φ回転フレーム441を回転駆動する左右1対のφ駆動ユニット45(第2駆動ユニット)を備えている。
【0115】
図19に示されるように、本実施形態のφ回転フレーム441及び昇降フレーム421は、Y軸方向に見て門形(∩形)の形状を有している。φ回転フレーム441は、∩形の昇降フレーム421の空洞部に収容されている。φ回転フレーム441の正面及び背面には、それぞれEφ軸と同軸に外側へ(すなわち、試験輪Wから遠ざかる方向へ)突出する円柱状のピボット441aが設けられている。各ピボット441aは、昇降フレーム421に取り付けられた一対の軸受442によって、それぞれ回転可能に支持されている。φ回転フレーム441は、ピボット441aを支軸として、Eφ軸を中心に回転可能に支持されている。なお、軸受442がφ回転フレーム441に取り付けられ、ピボット441aが昇降フレーム421に取り付けられた構成としてもよい。また、φ回転フレーム441及び昇降フレーム421の形状は、本実施形態の形状に限定されず、スピンドル部50等を収容可能な空洞部を有する形状であればよい。
【0116】
曲線ガイド443は、Eφ軸と同心に配置された円弧状の曲線レール443aと、曲線レール443a上を走行可能な1つ以上(図示の実施例においては2つ)の走行部443bを備えている。曲線レール443a及び走行部443bの一方が昇降フレーム421に取り付けられ、他方がφ回転フレーム441に取り付けられている。
【0117】
φ駆動ユニット45は、φ回転フレーム441の正面及び背面にそれぞれ取り付けられた一対の平歯車453と、各平歯車453とそれぞれ噛み合う一対のピニオン452と、各ピニオン452を駆動する一対のモーター451を備えている。なお、平歯車453が昇降フレーム421に取り付けられ、モーター451がφ回転フレーム441に取り付けられた構成としてもよい。平歯車453は、Eφ軸を中心とする円弧状に形成された(すなわち、Eφ軸と同軸の)セグメント歯車である。なお、平歯車453は、図示の実施例においては内歯車であるが、外歯車であってもよい。
【0118】
モーター451は昇降フレーム421に取り付けられ、ピニオン452はモーター451の軸451sと結合している。なお、本実施形態のモーター451はサーボモーターであるが、作動量の制御が可能な別の種類のモーターをモーター451として使用してもよい。
【0119】
モーター451によりピニオン452が回転駆動されると、ピニオン452と噛み合った平歯車453と共にφ回転フレーム441が、昇降フレーム421に対して、Eφ軸の周りを回転する。これに伴い、スリップ角調整部46及びスピンドル部50を介してφ回転フレーム441に支持された試験輪WがEφ軸の周りに旋回し、キャンバー角が変化する。
【0120】
スリップ角調整部46は、スピンドル52のEθ軸(試験輪Wの中心Cを通る上下に延びる軸)周りの向きを変更することにより、キャリッジ20の走行方向(X軸方向)に対する試験輪W(より具体的には、車軸に垂直な車輪中心面)の傾きであるスリップ角を調整する機構である。図19に示されるように、スリップ角調整部46は、Eθ軸を中心に回転可能なθ回転フレーム461(第3可動フレーム)と、θ回転フレーム461を回転可能に支持する軸受462と、θ回転フレーム461を回転駆動するθ駆動ユニット47を備えている。
【0121】
θ回転フレーム461は、Y軸方向に見て門形(∩形)のφ回転フレーム441の空洞部に収容されている。θ回転フレーム461の上面には、Eθ軸と同軸に突出するピボット461aが設けられている。ピボット461aは、φ回転フレーム441の天板に取り付けられた軸受462によって回転可能に支持されている。θ回転フレーム461は、ピボット461aを支軸として、Eθ軸を中心に回転可能に支持されている。
【0122】
θ駆動ユニット47は、θ回転フレーム461に取り付けられた平歯車473と、平歯車473と噛み合う1つ以上(図示される実施例においては一対)のピニオン452と、各ピニオン452を回転駆動する1つ以上の(図示される実施例においては一対)のモーター471を備えている。平歯車473は、ピボット461aに同軸に結合している。モーター471はφ回転フレーム441に取り付けられ、ピニオン452はモーター471の軸に取り付けられている。
【0123】
図24は、スピンドル部50(車輪支持部)の概略構造を示す図である。スピンドル部50は、θ回転フレーム461の下端部に取り付けられている。スピンドル部50は、θ回転フレーム461に固定されたフレーム51と、フレーム51に取り付けられた複数(図示の実施例においては一対)の軸受53と、軸受53に回転可能に支持されたスピンドル52と、試験輪Wに加わる力を検出する6分力センサー54と、スピンドル52の先端部に6分力センサー54を介して同軸に取り付けられたホイールハブ55を備えている。6分力センサー54は、複数の圧電素子(不図示)を備えている。ホイールハブ55には、試験輪WのホイールリムWr(図1)が取り付けられる。
【0124】
スピンドル52の末端には、伝動軸部26の伝動軸266が接続されている。伝動軸266は、スピンドル部50のフレーム51に取り付けられた軸受267によって回転可能に支持されている。
【0125】
アライメント部40は、キャンバー角(φ角)やスリップ角(θ角)を変更しても試験輪Wの位置が移動しないように、Eθ軸、Eφ軸及びEλ軸の3軸が試験輪Wの中心Cの一点で交差するように構成されている。
【0126】
図25は、路面部60の横断面図である。路面部60は、フレーム61と、フレーム61に支持された本体部60aを備えている。本体部60aは、基盤62と、基盤62上に保持された舗装部63を備えている。基盤62の上面には、路面部60の延長方向(すなわち、キャリッジ20の走行方向であるX軸方向)に延びる凹部621が形成されている。舗装部63は、例えば、後述する模擬舗装材料を凹部621に充填して硬化させることにより形成されている。舗装部63の上面には、試験輪Wが接地する路面63aが形成されている。
【0127】
本実施形態では、本体部60aが、路面ユニット(路面63aの少なくとも一部を含む交換可能な構造体)である本体部ユニット600aから構成されていて、フレーム61上に着脱可能に取り付けられている。なお、路面ユニットは、本実施形態のように本体部60aをユニット化した形態(「本体部ユニット」という。)に限らず、舗装部63のみをユニット化した形態(「舗装部ユニット」という。)やフレーム61まで含めた路面部60全体をユニット化した形態(「路面部ユニット」という。)とすることもできる。
【0128】
本実施形態の本体部60aは、本体部60aを路面部60の延長方向において分割した複数の本体部ユニット600aから構成されていて、本体部ユニット600aの単位で交換可能になっている。なお、本体部60aの全体を単一の交換可能な路面ユニットとして形成してもよい。
【0129】
本実施形態のように、路面部60を本体部ユニット600a等の路面ユニットから構成することにより、路面ユニットを交換することによって、路面63aの少なくとも一部を交換することが可能になる。
【0130】
例えば、路面部60の延長方向(X軸方向)における中央部の本体部ユニット600aのみを交換して、中央部のみにおいて舗装部63の種類(例えば材質、構造、表面形状等)を変更することができる。また、本体部ユニット600a毎に舗装部63の種類を変えて、例えば、路面部60の延長方向において路面63aの摩擦係数が変化するようにしてもよい。
【0131】
基盤62の下面には、フレーム61の上面に設けられた凸部612と嵌合する凹部622が設けられている。凸部612と凹部622が嵌合するように本体部ユニット600aをフレーム61の上に載置して、両者をボルトやカムレバー等の固定手段(不図示)により固定することにより、本体部ユニット600aがフレーム61上に着脱可能に取り付けられている。
【0132】
また、本実施形態では、フレーム61も、フレーム61を路面部60の延長方向において分割した複数のフレームユニット610から形成されていて、フレームユニット610の単位で交換可能になっている。
【0133】
また、本実施形態では、フレームユニット610と本体部ユニット600aとは同じ長さに形成されていて、フレームユニット610に本体部ユニット600aを取り付けた路面部ユニット600の単位で交換することもできる。
【0134】
また、本実施形態では舗装部63は基盤62と一体に形成されているが、舗装部63を基盤62に対して着脱可能な構成としてもよい。例えば、舗装部63を路面部60の延長方向において分割した複数の舗装部ユニット630から舗装部63を構成し、舗装部ユニット630の単位で舗装部63を交換可能な構成としてもよい。この場合、舗装部ユニット630と基盤ユニット620とを同じ長さに形成し、基盤ユニット620に舗装部ユニット630を取り付けた複合ユニット(言い換えれば、舗装部63を着脱可能にした本体部ユニット600a)の単位で交換可能にしてもよい。また、フレームユニット610、基盤ユニット620及び舗装部ユニット630を組み立てて路面部ユニット600を製作し、路面部ユニット600の単位で交換可能にしてもよい。
【0135】
また、上述したように、本実施形態では、複数の路面部ユニット600が連結して路面部60を形成している。この構成により、路面部ユニット600の追加又は削除により、路面部60の延長又は短縮が可能となる。また、複数の路面ユニットを同一構造とすることにより、路面部60を効率的に製造することが可能になる。
【0136】
また、本実施形態では、路面部60と同様に、軌道部10も、延長方向において複数の軌道部ユニット100に分割されている。軌道部ユニット100の追加又は削除により、軌道部10の延長又は短縮も可能である。軌道部ユニット100は、路面部ユニット600と同じ長さに形成されている。そのため、軌道部10と路面部60の長さを揃えることができる。また、軌道部ユニット100と路面部ユニット600を一体化した複合ユニットの単位で、路面部60及び軌道部10の延長、短縮又は一部交換が可能な構成としてもよい。
【0137】
本実施形態の路面部60では、舗装部63として、アスファルト舗装道路を模擬した(すなわち、タイヤの摩耗量等のタイヤに与える影響が実際のアスファルト舗装道路と同程度になる)模擬舗装が形成されている。模擬舗装は、例えば炭化ケイ素やアルミナ等の耐摩耗性に優れたセラミックスを粉砕した(必要に応じて、更に研磨やエッチング等の加工を施した)骨材に、例えばウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の結合剤(バインダー)を添加した模擬舗装材料を成形して硬化させることによって形成される。このような模擬舗装材料を使用することにより、耐久性に優れ、路面状態が安定した(すなわち試験タイヤTの摩耗量等が安定した)模擬路面が得られる。タイヤの摩耗量は、例えば骨材の粒度や結合剤の添加量等により調整することができる。
【0138】
本実施形態の模擬舗装は単層構造であるが、例えば異なる材料から形成された複数の層が厚さ方向に積層した模擬舗装を使用してもよい。また、例えば骨材の種類や粒度、バインダーの種類や配合量等を調整して、敷石舗装、レンガ舗装又はコンクリート舗装等を模擬した模擬舗装を使用してもよい。
【0139】
また、実際の路面よりもタイヤに与えるダメージが大きく(又は小さく)なるように路面63aを形成してもよい。実際の路面よりもタイヤに与える影響が大きい路面63aを使用することにより、タイヤの加速劣化試験が可能になる。
【0140】
また、舗装部63を実際の舗装材料(例えばアスファルト舗装の表層に使用されるアスファルト混合物)から形成してもよい。また、路面を形成する最表層だけでなく、下層構造まで実際の舗装を再現又は模造した舗装部63を使用してもよい。
【0141】
本実施形態のタイヤ試験装置1は、試験中に路面63aが移動しないため、タイヤの性能に影響を与える異物(例えば、水、雪、泥水、土、砂、砂利、油又はこれらを模擬したもの等)を路面63a上に撒いた状態で試験を行うことができる。例えば、路面63a上に水を撒いた状態で試験を行うことにより、ウェット制動試験を行うことができる。
【0142】
ここで、路面部60の一変形例について説明する。図26は、路面部60の変形例である路面部60Aの横断面図である。路面部60Aは、基盤62に取り付けられた枠部67を備えている。枠部67は、コーキング等により基盤62と水密に接合され、基盤62や舗装部63と共に槽68を形成する。槽68には、タイヤの性能に影響を与える異物(例えば水、砂利、土、落ち葉等)が路面63aを覆うように入れられる。槽68を使用することにより、路面63a上に異物を厚く堆積させることが可能になる。なお、本変形例の枠部67は基盤62の上面に取り付けられているが、基盤62の側面に枠部67を取り付けても良い。また、舗装部63の上面に枠部67を取り付けてもよい。
【0143】
また、路面部60Aは、路面63aの温度を調整可能な温度調整手段64を備えている。本変形例の温度調整手段64は、基盤62に埋め込まれた流路64aと、路面63aの温度を検出する温度センサー64bと、温度調整装置64cを有している(図38)。温度センサー64bは、例えば熱電対やサーミスタ等を使用した接触式の温度センサーや赤外線センサー等の非接触式の温度センサーである。温度調整装置64cは、制御部72に接続され、制御部72からの指令に基づいて路面63aの温度を設定温度に調整する。具体的には、温度調整装置64cは、温度センサー64bの検出結果に基づいて熱媒(例えばオイルや不凍液を含有した水)の温度を調整して、この熱媒を流路64aに送出する。温度調整装置により温度が調整された熱媒を流路64aに流すことにより、路面63aを所定の温度に調整することができる。また、路面63aの温度を安定化させると共に熱の利用効率を高めるために、基盤62の表面は断熱材69によって被覆されている。
【0144】
温度調整手段64は、路面63aの温度を低温(例えば-40℃)から高温(例えば80℃)までの広い範囲で調整することができる。槽68に水を溜めて、路面63aの設定温度を氷点下に設定することにより、凍結路面を形成することができる。すなわち、本変形例の路面部60Aを使用することにより、氷上制動試験を行うことができる。また、槽68に雪を入れた状態で、雪上制動試験を行うことができる。
【0145】
流路64aは、路面63aと平行に基盤62内を等間隔で蛇行するように形成されている。また、基盤62は、延長方向に複数の区画(基盤ユニット620)に区分され、各区画に個別の流路64aが設けられている。この構成により、路面63a全体をより均一な温度に調整することが可能になる。
【0146】
次に、荷重検出部165について説明する。荷重検出部165は、タイヤ踏面に加わる荷重分布を検出可能な構成部分である。
【0147】
図27及び図28は、それぞれ路面部60の荷重検出部165及びその周辺を示した平面図及び左側面図である。また、図29-31は、順に、荷重検出部165の正面図、左側面図及び平面図である。
【0148】
図27及び図28に示されるように、路面部60の本体部60aの上面には、Y軸方向に細長い凹部60pが形成されている。荷重検出部165は、凹部60p内に収容され、凹部60pの底面に固定されている。
【0149】
図29-31に示されるように、荷重検出部165は、固定フレーム1658、可動フレーム1659、1対のリニアガイド1654、センサーアレイユニット1650、移動ユニット1655及びセンサー位置検出部1656を備えている。なお、図29において、リニアガイド1654及び後述する固定フレーム1658のレール支持部1658bの図示が省略されている。可動フレーム1659は、1対のリニアガイド1654によって、Y軸方向(すなわち、路面部60の幅方向)に移動可能に支持されている。センサーアレイユニット1650は、可動フレーム1659の上面に取り付けられている。センサーアレイユニット1650の詳細は後述する。
【0150】
図32は、荷重検出部165の可動部(すなわち、可動フレーム1659及びセンサーアレイユニット1650)を取り外した状態を示した平面図である。
【0151】
図30及び図32に示されるように、固定フレーム1658は、略矩形のベースプレート1658aと、ベースプレート1658aの上面に固定された1対のレール支持部1658bを備えている。1対のレール支持部1658bは、長さ方向をY軸方向に向けて、X軸方向に間隔を空けて並べられている。
【0152】
リニアガイド1654は、Y軸方向に延びるレール1654aと、レール1654a上を走行可能な複数(本実施形態では三つ)のキャリッジ1654b(以下「ランナー1654b」という。)を備えている。レール1654aは、レール支持部1658bの上面に取り付けられている。また、ランナー1654bは、可動フレーム1659の下面に取り付けられている。リニアガイド1654によって、可動フレーム1659のY軸方向の移動が案内される。
【0153】
移動ユニット1655は、1対のレール支持部1658b及びリニアガイド1654の間に配置されている。移動ユニット1655は、モーター1655mとボールねじ1655bを備えている。ボールねじ1655bは、ねじ軸1655ba、ナット1655bb、軸受部1655bc及び軸受部1655bdを備えている。本実施形態のモーター1655mはサーボモーターであるが、作動量の制御が可能な別の種類のモーターをモーター1655mとして使用してもよい。
【0154】
ねじ軸1655baは、1対の軸受部1655bc及び1655bdによって両端部において回転可能に支持されている。また、ねじ軸1655baの一端は、モーター1655mの軸に接続されている。ねじ軸1655baと噛み合うナット1655bbは、可動フレーム1659の下面に取り付けられている。モーター1655mによってねじ軸1655baを回転させると、ナット1655bbと共に可動フレーム1659及びセンサーアレイユニット1650がY軸方向に移動する。すなわち、モーター1655mの回転駆動により、センサーアレイユニット1650のY軸方向における位置を変更することができる。
【0155】
図32に示されるように、センサー位置検出部1656は、可動アーム1656a、複数(本実施形態では三つ)の近接センサー1656c及びセンサー取付部1656bを備えている。可動アーム1656aは、末端部が可動フレーム1659に固定されていて、可動フレーム1659と共にY軸方向に移動可能である。センサー取付部1656bは、固定フレーム1658に取り付けられている。
【0156】
複数の近接センサー1656cは、検出面1656cfをX軸正方向に向けて、Y軸方向に間隔を空けて(例えば等間隔に)並べられ、センサー取付部1656bに取り付けられている。
【0157】
可動アーム1656aの先端部には、近接センサー1656cに近接する近接部1656apが形成されている。本実施形態では、可動アーム1656aの先端部をクランク状に折り曲げることにより、近接部1656apが形成されている。近接部1656apは、複数の近接センサー1656cの検出面1656cfと同じ高さに配置されている。また、複数の近接センサー1656cの検出面1656cfは、近接部1656apのY軸方向における可動範囲内に間隔を空けて配置されている。
【0158】
図33は、図29において二点鎖線で囲まれた領域Eを拡大した図である。図29及び図33に示されるように、センサーアレイユニット1650は、フレーム1650aと複数(本実施形態では150個)の荷重検出モジュール1650mを備えている。フレーム1650aの上面の中央部には、Y軸方向に長い凹部1650apが形成されている。複数の荷重検出モジュール1650mは、凹部1650ap内に収容され、凹部1650apの底面に固定されている。
【0159】
複数の荷重検出モジュール1650mは、X軸方向及びY軸方向の2方向に格子点状に等間隔に(例えば、略隙間なく)並べられている。本実施形態では、150個の荷重検出モジュール1650mが、X軸方向に5列、Y軸方向に30列に並べられている。
【0160】
荷重検出モジュール1650mは、3分力センサー1651と、舗装部1652と、ボルト1653を備えている。3分力センサー1651は、中心軸がZ軸方向を向いた円柱状の圧電素子である。舗装部1652は、例えば舗装部63と同じ模擬舗装材料又は舗装材料から形成された、X軸方向及びY軸方向の長さが等しい直方体状の部材である。なお、3分力センサー1651及び舗装部1652の形状は、これらの形状に限定されない。例えば、3分力センサー1651の形状は直方体状でもよく、舗装部1652の形状は円柱状でもよい。
【0161】
円柱状の3分力センサー1651の中央には、Z軸方向に貫通する孔1651bが形成されている。また、舗装部1652の中央には、Z軸方向に延びるボルト穴1652bが形成されている。3分力センサー1651の孔1651bに通されて舗装部1652のボルト穴1652bに捻じ込まれたボルト1653によって、荷重検出モジュール1650mは、一体化され、フレーム1650aに固定されている。舗装部1652の上面は、同じ高さで水平に配置されて、路面1652aを形成する。荷重検出モジュール1650mが配列されたX軸及びY軸方向の領域が、センサーアレイユニット1650の検出領域となる。なお、センサーアレイユニット1650の検出領域の幅(すなわち、Y軸方向における長さ)Ly(図31)は、試験タイヤTのトレッド幅よりも十分に広く、試験タイヤTのタイヤ踏面全幅が路面1652aに接地できるようになっている。
【0162】
3分力センサー1651により、各荷重検出モジュール1650mの路面1652aに加わる(すなわち、タイヤ踏面に加わる)以下の3種類の力f、f及びfが検出される。
a)半径方向力f
b)接線力f
c)横力f
【0163】
荷重検出部165を使用することにより、試験タイヤTのタイヤ踏面から路面が受ける力(すなわち、タイヤ踏面に加わる力)の分布及びその時間変化を検出することができる。
【0164】
図38は、タイヤ試験装置1の制御システム1aの概略構成を示すブロック図である。制御システム1aは、装置全体の動作を制御する制御部72、各種計測を行う計測部74及び外部との入出力を行うインターフェース部76を備えている。
【0165】
制御部72には、各駆動部14のモーター141、トルク付与装置30のモーター32、荷重調整部42のモーター431、キャンバー調整部のモーター451、スリップ角調整部46のモーター471及び移動ユニット1655のモーター1655mが、ドライバー141a、32a、431a、451a、471a及び1655aをそれぞれ介して接続されている。また、制御部72には、温度調整装置64cが接続されている。
【0166】
制御部72と各ドライバー141a、32a、431a、451a及び471aとは、光ファイバによって通信可能に接続され、制御部72と各ドライバーとの間で高速のフィードバック制御が可能になっている。これにより、より高精度(時間軸において高分解能かつ高確度)の同期制御が可能になっている。
【0167】
計測部74には、スピンドル部50の6分力センサー54、荷重検出部165の3分力センサー1651及びセンサー位置検出部1656の近接センサー1656cが、アンプ54a、1651a及び1656caをそれぞれ介して接続されている。6分力センサー54、3分力センサー1651及び近接センサー1656cからの信号は、アンプ54a、1651a及び1656caによってそれぞれ増幅されたのち、計測部74においてデジタル信号に変換され、これにより計測データが生成される。計測データは制御部72に入力される。なお、図38において、3分力センサー1651、アンプ1651a、近接センサー1656c及びアンプ1656caは、それぞれ一つのみが図示されている。
【0168】
各モーター141、32、431、451、471及び1655mに内蔵されたロータリーエンコーダーREが検出した位相情報は、各ドライバー141a、32a、451a、471a及び1655aをそれぞれ介して、制御部72に入力される。
【0169】
インターフェース部76は、例えば、ユーザーとの間で入出力を行うためのユーザーインターフェース、LAN(Local Area Network)等の各種ネットワークと接続するためのネットワークインターフェース、外部機器と接続するためのUSB(Universal Serial Bus)やGPIB(General Purpose Interface Bus)等の各種通信インターフェースの一つ以上を備えている。また、ユーザーインターフェースは、例えば、各種操作スイッチ、表示器、LCD(liquid crystal display)等の各種ディスプレイ装置、マウスやタッチパッド等の各種ポインティングデバイス、タッチスクリーン、ビデオカメラ、プリンタ、スキャナ、ブザー、スピーカ、マイクロフォン、メモリーカードリーダライタ等の各種入出力装置の一つ以上を含む。
【0170】
制御部72は、インターフェース部76を介して入力された速度の設定データに基づいて、各駆動部14のモーター141の駆動を同期制御することにより、キャリッジ20を所定の速度で走行させることができる。なお、本実施形態では、4つの駆動部14の全てを同位相で駆動する(より正確には、左側の駆動部14LA及び14LBと右側の駆動部14RA及び14RBとは逆位相[逆回転]で駆動される)。
【0171】
また、制御部72は、インターフェース部76を介して取得した試験タイヤTに与えるべき前後力(制動力又は駆動力)の設定データに基づいてトルク付与装置30のモーター32の駆動を制御することにより、試験タイヤTに所定の前後力を与えることができる。また、制御部72は、前後力の設定データに替えてトルクの設定データ(又は加速度の設定データ)に基づいてトルク付与装置30を制御することにより、試験輪Wに所定のトルクを与えることもできる。
【0172】
制御部72は、キャリッジ20を所定の走行速度で走行させる(同時に、試験タイヤTを走行速度と略同じ周速で回転させる)駆動部14の制御と、試験タイヤTに前後力(又はトルク)を与えるためのトルク付与装置30の制御とを、同期信号に基づいて、同期して行うことができる。
【0173】
トルク付与装置30に発生させるトルクの波形としては、正弦波、正弦半波(ハーフサイン波)、鋸歯状波(のこぎり波)、三角波、台形波等の基本波形の他、路上試験において計測された前後力(又はトルク)波形、シミュレーション計算によって得られた前後力(又はトルク)波形又はその他の任意の合成波形(例えば、ファンクションジェネレータ等により生成された波形)を使用することができる。
【0174】
キャリッジ20の走行速度(又は試験輪Wの回転数)の制御についても、同様に、基本波形の他、路上試験において計測された車輪の回転数の波形、シミュレーション計算によって得られた速度変化の波形、又はその他の任意の合成波形(例えば、ファンクションジェネレータ等により生成された波形)を使用することができる。
【0175】
次に、移動ユニット1655により、センサーアレイユニット1650のY軸方向における位置を変更する手順について説明する。センサーアレイユニット1650は、図32に示される初期状態において、可動アーム1656aの近接部1656apが中央の近接センサー1656cの検出面1656cfと対向する位置に配置される。例えばタッチスクリーンに対するユーザー操作により、センサーアレイユニット1650を左(Y軸正方向)に移動するよう指示が出されると、制御部72は、センサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動するよう、ドライバー1655aに反時計回転の指令を送信する。反時計回転の指令を受け取ったドライバー1655aは、モーター1655mに反時計回転させる駆動電流を供給する。そして、モーター1655mが駆動電流によって反時計回りに駆動されると、モーター1655mの軸と共にねじ軸1655baが反時計回転し、ナット1655bb及び可動フレーム1659と共にセンサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動する。
【0176】
センサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動すると、可動アーム1656aの近接部1656apが中央の近接センサー1656cの検出面1656cfから離れて、中央の近接センサー1656cが近接を検出しなくなる。やがて、可動アーム1656aの近接部1656apが左(Y軸正方向側)の近接センサー1656cの検出面1656cfと対向する位置に到達する。このとき、左の近接センサー1656cは、近接を検出し、近接の検出を示す近接信号を出力する。アンプ1656caを介して近接信号を受け取った計測部74は、センサーアレイユニット1650が左側の定位置に到達したことを制御部72に通知する。計測部74からの通知を受けた制御部72は、ドライバー1655aに駆動停止の指令を送信する。駆動停止の指令を受け取ったドライバー1655aは、モーター1655mへの駆動電流の供給を中止する。これにより、モーター1655mの軸とねじ軸1655baの回転が停止し、ナット1655bb及びセンサーアレイユニット1650も停止して、センサーアレイユニット1650の移動が完了する。
【0177】
移動ユニット1655を搭載することにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のY軸方向における長さLy(図31)を短くして、荷重分布の計測に必要な荷重検出モジュール1650mの数を減らすことが可能になり、センサーアレイユニット1650の製造及び保守に必要なコストの削減が可能になる。
【0178】
次に、荷重検出部165を使用して、タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する方法について説明する。図34は、タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する方法の手順を表すフローチャートである。
【0179】
タイヤ試験装置1の電源スイッチがONにされると、制御部72は、まず初期化処理S1を行う。図1に示されるように、初期状態において、キャリッジ20は、その可動範囲のX軸負方向における末端付近に設定された初期位置(初期走行位置)PX0に配置される。また、昇降フレーム421(図19)は、その可動範囲の例えば上端付近に設定された初期位置PZ0に配置される。初期位置PZ0において、試験輪Wは路面63aから浮上し、試験輪Wの着脱やアライメント調整が可能になる。また、キャンバー調整部44及びスリップ角調整部46により、キャンバー及びスリップ角がそれぞれ設定された値に調整される。
【0180】
試験輪Wが路面63aから浮上した状態で、トルク付与装置30のモーター32が駆動され、試験輪Wの回転位置θが初期回転位置θW0に移動して、初期化処理S1が完了する。なお、トルク付与装置30自体(すなわち回転フレーム31)の回転位置θは、キャリッジ20の走行位置Pによって決まる。トルク付与装置30は、初期状態においては、常に初期回転位置θH0に配置される。
【0181】
初期化処理S1の完了後、例えばタッチスクリーンに対するユーザー操作により試験開始の指示が与えられると(S2:YES)、カウンタである測定セット数kが1にリセットされる(S3)。そして、試験輪Wは、荷重調整部42によって、降下されて路面63aに接地し、設定された荷重が与えられる(S4)。
【0182】
次に、1回目の測定セットS5が行われる。測定セットS5では、各駆動部14のモーター141が駆動され、キャリッジ20が設定された走行速度で走行すると共に、試験輪Wがキャリッジ20の走行速度と略同じ周速で回転する。また、トルク付与装置30のモーター32が駆動され、試験輪Wに設定されたトルクが与えられる。
【0183】
測定セットS5において、所定の時間間隔(例えば5ミリ秒間隔)で、荷重検出部165の3分力センサー1651及びスピンドル部50の6分力センサー54によって、路面1652a及び試験輪Wに加わる力がそれぞれ検出される。なお、3分力センサー1651及び6分力センサー54による検出の時間間隔は、試験条件(例えば、キャリッジ20の走行速度や必要な試験精度)に応じて適宜設定される。
【0184】
また、測定セットS5において、キャリッジ20の走行位置P及び試験輪Wの回転位置θが、所定の時間間隔(例えば、3分力センサー1651による検出と同じ時間間隔)で計算される。キャリッジ20の走行位置Pは、駆動部14のモーター141に内蔵されたロータリーエンコーダーRE(図38)の検出結果、ベルト機構142の減速比及びベルト機構15の駆動プーリー152のピッチ円直径から計算される。なお、本実施形態の説明において、キャリッジ20の走行位置Pは、キャリッジ20の走行方向(X軸方向)における試験輪Wの回転軸Ayの位置として定義される。
【0185】
試験輪Wの回転位置θは、トルク付与装置30のロータリーエンコーダー38及びモーター32に内蔵されたロータリーエンコーダーREの検出結果に基づいて計算される。具体的には、試験輪Wの回転位置θは、モーター32のロータリーエンコーダーREによって検出されるモーター32の軸321の回転位置θ(但し、初期状態における初期回転位置θM0を0[rad]とする。)に減速機33の減速比を乗じたもの(すなわち、回転フレーム31に対するシャフト34の回転位置θ)をロータリーエンコーダー38によって検出されるトルク付与装置30の回転フレーム31の回転位置θに加算することによって計算される。
【0186】
なお、トルク付与装置30からの出力の回転位置θ(例えば、スピンドル52や伝動軸261、266の回転位置)を検出するロータリーエンコーダー等の検出手段を設けて、この検出手段によって試験輪Wの回転位置θを直接検出する構成としてもよい。
【0187】
3分力センサー1651及び6分力センサー54の検出結果は、同じタイミングで検出された駆動部14のモーター141に内蔵されたロータリーエンコーダーREの検出結果(すなわち、キャリッジ20の走行位置P)及び試験輪Wの回転位置θの検出結果と対応付けられて、制御部72の記憶装置721(又は、例えばLANを介して制御部72に接続されたサーバー77等の制御部72によってアクセス可能な記憶手段)に保存される。なお、3分力センサー1651による検出結果については、試験輪Wがセンサーアレイユニット1650を通過する期間及びその前後の所定の期間のみを記録する構成としてもよい。これにより、保存されるデータ量を削減することができる。
【0188】
キャリッジ20が走行区間の終端に到達して停止すると、荷重調整部42によって、試験輪Wが路面63aから浮上する高さ(例えば、初期状態と同じ高さ)まで上げられる(S6)。そして、駆動部14が駆動され、キャリッジ20が初期位置PX0へ移動する(S7)。
【0189】
測定セット数kが規定回数nに達するまで、上記の処理S4からS9が繰り返される(S8)。測定セット数kが規定回数nに達していなければ(S8:NO)、トルク付与装置30のモーター32が駆動され、試験輪Wの回転位置θが回転位置θW0+k*Δθに移動し(S9)、カウンタkがインクリメントされる(S12)。すなわち、測定セット数kが一つ増える度に、初期位置PX0における試験輪Wの回転位置θが角度幅Δθずつ変更される。
【0190】
角度幅Δθは、例えば、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLx(図30)に対応する試験輪Wの中心角θC1(すなわち、試験輪Wが距離Lxを転動する際の回転角θC1)以下の値に設定される。例えば、角度幅Δθは、荷重検出モジュール1650mの配置間隔δ(図30)に対応する試験輪Wの中心角θC2と同じ値又は中心角θC2よりもわずかに小さな値に設定される。
【0191】
また、角度幅Δθを、例えば、2πを規定回数nで割った値に設定してもよい。この場合、n回の測定セットにより、試験輪Wの全周が隈無く測定される。
【0192】
規定回数nの測定セットが完了すると(S8:YES)、次に荷重プロファイル計算S10が行われる。
【0193】
図35は、荷重プロファイル計算S10の手順を表すフローチャートである。荷重プロファイル計算S10は、n回の測定セットS5によって取得された測定結果に基づいて、荷重プロファイルデータを計算する処理である。
【0194】
荷重プロファイルデータは、タイヤに加わる3種類の力(すなわち、半径方向力f、接線力f及び横力f)の値が、路面上の平面座標と対応づけられたデータである。
【0195】
荷重プロファイル計算S10においては、まず、各荷重検出モジュール1650mの座標の計算(S101)が行われる。なお、本実施形態においては、荷重検出モジュール1650mの上面中央の点の座標が、荷重検出モジュール1650mの座標として定義される。
【0196】
図36は、荷重検出モジュール1650m及び試験輪Wの回転軸Ayの位置関係を示した図である。上述したように、本実施形態では、150個の荷重検出モジュール1650mが、X軸方向に5列、Y軸方向に30列に並べられている。以下の説明において、荷重検出モジュール1650mのX軸方向における列の番号をp、Y軸方向における列の番号をqとし、荷重検出モジュール1650mの配置が正の整数の対[p,q](以下「番地[p,q]」という。)によって表される。
【0197】
また、荷重プロファイル計算S10においては、(x,y)座標系が使用される。(x,y)座標系は、番地[3,1]に配置された荷重検出モジュール1650mの上面中央を原点とする、(X,Y)座標系と平行な2次元の直交座標系である。すなわち、xy平面は、路面部60の路面63a、1652aが配置された平面である。また、本実施形態においては、(x,y)座標系の原点(すなわち、番地[3,1]の荷重検出モジュール1650mの位置)がセンサーアレイユニット1650の位置として定義される。また、以下の説明において、固定点を原点とする座標を絶対座標、可動点を原点とする座標を相対座標という。荷重プロファイル計算S10においては、各荷重検出モジュール1650mの絶対座標が計算される。
【0198】
本実施形態においては、荷重検出モジュール1650mは、x軸方向及びy軸方向において、それぞれ等間隔δで並べられている。従って、番地[p,q]のxy座標は、次式によって計算される。

x = (p-3)*δ
y = (q-1)*δ
【0199】
次に、試験輪Wの回転軸Ayのx座標(以下「座標xAy」という。)が計算される(S102)。座標xAyは、次式によって計算される。

Ay = P - S
但し、
: 試験輪Wの走行位置P(回転軸Ay)のX座標
: (x,y)座標系の原点のX座標
【0200】
すなわち、手順S102において、試験輪Wの回転軸Ayの座標が、XY座標系からxy座標系に変換される。
【0201】
次に、試験輪Wの走行位置P(回転軸Ay)を基準とする、荷重検出モジュール1650mの相対位置(相対座標)が計算される(S103)。荷重検出モジュール1650mの相対座標(x,y)は、次式によって計算される。本実施形態では、回転軸Ayに対する相対座標の荷重プロファイルデータが取得される。

= x - xAy
= y
【0202】
次に、全ての測定結果(すなわち、各荷重検出モジュール1650mによって測定された半径方向力f、接線力f及び横力f)を相対座標(x,y)毎に平均することによって、3種類の力f、f及びfの荷重プロファイルデータが算出される(S104)。処理S104においては、回帰分析(例えば、最小二乗法等の曲面フィッティング)によって得られる近似曲面として荷重プロファイルデータを計算してもよい。
【0203】
処理S104において、試験輪Wの回転位置θを考慮して(すなわち、回転位置θ毎に)、荷重プロファイルデータを計算してもよい。また、この場合、更に試験タイヤTのトレッドパターンの回転軸Ay周りの対称性を含めて荷重プロファイルデータを計算してもよい。具体的には、トレッドパターンの周方向の周期において同位相となる回転位置θ毎に荷重プロファイルデータを計算してもよい。
【0204】
また、本実施形態では、n回の測定セットにより、試験輪Wの1周分のみについて測定が行われるが、更に測定セットを増やして、複数周分について測定を行ってもよい。また、本実施形態では、初期位置PX0における試験輪Wの回転位置θを、荷重検出モジュール1650mの配置間隔δに対応する試験輪Wの中心角θC2ずつ変更しながら複数回の測定セットが行われるため、荷重プロファイルデータのx軸方向における分解能は荷重検出モジュール1650mの配置間隔δ程度となる。更に小さな角度(例えば、中心角θC2の1/10)ずつ回転位置θを変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、x軸方向における実質的な分解能を荷重検出モジュール1650mの配置間隔δよりも細かくすることができる。例えば、中心角θC2の1/m(但し、mは自然数。)ずつ回転位置θを変更しながら測定セットを繰り返した場合、x軸方向における実質的な分解能をδ/m程度まで小さくすることができる。
【0205】
本実施形態では、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLx(図30)が、タイヤ踏面のX軸方向における長さよりも短い。従って、試験輪Wをセンサーアレイユニット1650の上に一度転動させただけでは、タイヤ踏面の全体の荷重分布を取得することができない。
【0206】
そこで、本実施形態では、センサーアレイユニット1650上を転動する際の試験輪Wの回転位置θをずらしながら、タイヤ踏面の荷重分布を複数回に分けて計測する方法が採用される。これにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さを短くして、荷重分布の計測に必要な荷重検出モジュール1650mの数を減らすことが可能になり、センサーアレイユニット1650の製造及び保守に必要なコストの削減が可能になっている。
【0207】
また、移動ユニット1655により、センサーアレイユニット1650のY軸位置を所定間隔ずつ変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、y軸方向における実質的な分解能を小さくすることができる。この場合、移動ユニット1655のモーター1655mには、位置制御が可能なモーター(例えば、サーボモーターやステッピングモーター等)が使用される。例えば、センサーアレイユニット1650のY軸位置を1mmずつ変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、y軸方向における実質的な分解能を1mm程度まで小さくすることができる。
【0208】
次に、計算された荷重プロファイルデータに基づいて作成される荷重プロファイル画像が、インターフェース部76のディスプレイ装置に表示され、タイヤ踏面に加わる荷重分布が視覚化される(S11)。図37は、荷重プロファイル画像の表示例である。図37(a)は接線力f図37(b)は横力f図37(c)は半径方向力fの荷重プロファイル画像である。図37に示される荷重プロファイル画像は、各位置(x,y)における力の値を明度に変換したものである。なお、荷重プロファイル画像の形態は本実施形態のものに限定されず、例えば3次元CG画像等の別の形態としてもよい。
【0209】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、様々な変形が可能である。例えば本明細書中に例示的に明示された実施形態等の構成及び/又は本明細書中の記載から当業者に自明な実施形態等の構成を適宜組み合わせた構成も本願の実施形態に含まれる。
【0210】
タイヤ試験装置1は、上記の実施形態では2つのベルト機構15を備えているが、1つ又は3つ以上のベルト機構15を備えた構成としてもよい。
【0211】
ベルト機構15は、上記の実施形態では1対の駆動部14が発生した動力によって駆動されるが、一つ又は三つ以上の駆動部14によって駆動される構成としてもよい。
【0212】
上記の実施形態では、各ベルト機構15、24、25に歯付ベルト及び歯付プーリーが使用されているが、ベルト機構の一つ以上について歯付ベルトに替えて平ベルトやVベルト、あるいは幅方向に並ぶ複数のV字状のリブを有するVリブドベルトを使用してもよい。また、ガラス繊維を撚り合わせた心線を備えた汎用のベルトを使用してもよい。また、各ベルト機構に替えて、チェーン伝動機構やワイヤ伝動機構等の他の種類の巻掛け伝動機構や、ボールねじ機構、歯車伝動機構又は油圧機構等の他の種類の動力伝達機構を使用してもよい。
【0213】
上記の実施形態では、キャリッジ20を駆動する動力と、試験輪W(スピンドル52)を駆動する動力が、共通の駆動部14によって供給され、共通のベルト機構15によって伝達されるが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、キャリッジ20を駆動する動力と試験輪Wを駆動する動力を、個別の駆動部によって生成し、個別の動力伝達手段(例えば個別のベルト機構)によって伝達する構成としてもよい。この場合、キャリッジ20の走行速度と試験輪Wの周速を合わせるため、キャリッジ駆動用の駆動部と試験輪駆動用の駆動部の駆動を同期制御する必要がある。
【0214】
上記の実施形態では、キャリッジ20を駆動する機構(キャリッジ駆動手段)と試験輪Wを駆動する機構(試験輪駆動手段)の一部(駆動部14及びベルト機構15)を共通化することにより、シンプルな駆動システム及び制御システムが実現されている。キャリッジ駆動手段と試験輪駆動手段の共通化(特に駆動部14の共通化)は、トルク付与装置30を導入して、試験輪Wの速度制御とトルク制御の動力源を分離することにより、駆動部14が担う付加が低減したことで可能になっている。
【0215】
上記の実施形態では、右側の駆動部14RA及び14RBがキャリッジ駆動手段と回転運動供給手段を兼ねて、左側の駆動部14LA及び14LBがキャリッジ駆動手段として機能する構成が採用されているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、左側の駆動部14LA及び14LBがキャリッジ駆動手段と回転運動供給手段を兼ねて、右側の駆動部14RA及び14RBがキャリッジ駆動手段として機能する構成としてもよい。また、左側の駆動部14LA及び14LBと右側の駆動部14RA及び14RBの両方がキャリッジ駆動手段と回転運動供給手段を兼ねる構成としてもよい。この構成は、例えば、第1従動部22及び22Lの合計2本のシャフト223Bを連結する(言い換えれば、左右の第1従動部22及び22Lを連結する一本の長いシャフト223Bに置き換える)ことで実現される。
【0216】
上記の第3変形例では、測定セット毎に初期位置PZ0における試験輪Wの回転位置θを変更することにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLxよりも長いタイヤ踏面の荷重プロファイルの測定を可能にしている。しかし、センサーアレイユニット1650のX軸方向における位置を変更可能な手段を設けることにより、測定セット毎に初期位置PZ0における試験輪Wの回転位置θを変更せずに、長さLxよりも長いタイヤ踏面の荷重プロファイルの測定が可能になる。センサーアレイユニット1650のX軸方向における位置を変更可能な手段は、例えば、移動ユニット1655と同様に、位置制御可能なモーターと送りねじ機構(例えば、ボールねじ機構)によって構成することができる。
【0217】
上記の実施形態では、軌道部10のガイド機構12において、1対の単列の軸受127a等によりロッド124a等が支持されているが、本発明はこの構成に限定されず、例えば一つ以上の複列又は単列の軸受によってロッドが支持されてもよい。
【0218】
上記の実施形態では、軌道部10のガイド機構12において、熱処理レールが使用されているが、本発明はこの構成に限定されず、例えば普通レール(JIS E 1101:2001)や軽レール(JIS E 1103:1993)を使用してもよい。また、平底レールに限らず、双頭レール、牛頭レール、橋形レール等の他の形状のレールを使用してもよい。
【0219】
上記の実施形態では、駆動部14にモーター141(ACサーボモーター)が使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。ACサーボモーターの代わりに、速度制御又は位置制御が可能な別の種類のモーター(例えば、DCサーボモーターや、インバーター回路とACモーター又はブラシレスモーターとを組み合わせた所謂インバーターモーター等)を使用してもよい。
【0220】
上記の実施形態では、トルク付与装置30、荷重調整部42及びスリップ角調整部46に、それぞれACサーボモーターであるモーター32、451及び461が使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。ACサーボモーターの代わりに、位置制御が可能な別の種類のモーター(例えば、DCサーボモーターやステッピングモーター等)を使用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38