(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058017
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】水用配管洗浄方法及びそれに用いる水用配管洗浄具
(51)【国際特許分類】
E03B 7/00 20060101AFI20220404BHJP
B08B 9/04 20060101ALI20220404BHJP
B08B 3/02 20060101ALN20220404BHJP
【FI】
E03B7/00 Z
B08B9/04
B08B3/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166578
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】519115462
【氏名又は名称】林 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】林 和宏
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
【Fターム(参考)】
3B116AA13
3B116AB52
3B116AB54
3B116BB34
3B116BB47
3B116BB55
3B201AA13
3B201AB52
3B201BB34
3B201BB47
3B201BB55
3B201BB93
(57)【要約】
【課題】 供給する洗浄水の供給圧力が水道水程度の低水圧であっても、屈曲したトラップ部やその奥の水用配管部分の内面を簡単かつ効果的に洗浄できる方法を提供する。
【解決手段】 洗浄水供給管の管本体の流路中心軸線周りにストランド形態をなす線状金属弾性体を複数設け、その洗浄水流出口に洗浄ノズルを設けた洗浄具を使用する。洗浄ノズルは、洗浄水の噴射孔を複数開口するとともに、前端側が凸湾曲面となるように形成されたガイド面を有する物を使用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の流入口又は流出口として機能する水流通口を一端に開口するとともに、複数の方向転換用湾曲部を有した屈曲部が管路途中に設けられた水用配管の内面を洗浄する方法であって、
一端に洗浄水流入口が形成され、他端に洗浄水流出口が形成されるとともに、管壁部が可撓性樹脂材料からなる管本体と、前記管本体の前記管壁部に一体化される形で前記管本体の流路中心軸線周りに複数設けられ、各々前記流路中心軸線方向に沿うストランド形態をなし、前記管本体のキンクを抑制しつつ該管本体とともに弾性湾曲変形可能とされた線状金属弾性体とを有する洗浄水供給管と、前記洗浄水供給管の前記洗浄水流出口に取り付けられ、該洗浄水供給管に供給される洗浄水の噴射孔を複数開口し、前端側が凸湾曲面となるように形成されたガイド面を有する洗浄ノズルと、を備えた洗浄具を用い、
前記水流通口から前記洗浄ノズルを前記水用配管内に前記洗浄水供給管とともに挿入し、さらに前記洗浄水供給管を弾性湾曲変形させつつ前記屈曲部の奥へ前記洗浄ノズルを手動にて押し込むことにより、前記線状金属弾性体の弾性復帰力に基づき前記洗浄ノズルの前記ガイド面を前記屈曲部の内面に押し付けつつ、前記洗浄ノズルを前記屈曲部の内面に沿って移動させることにより複数の前記方向転換用湾曲部を順次通過させ、前記洗浄水供給管に対し前記洗浄水流入口から前記洗浄水を供給することにより、前記洗浄ノズルから水用配管の内面に前記洗浄水を噴射して洗浄することを特徴とする水用配管洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄水供給管への前記洗浄水の供給圧力が0.05MPa以上1MPa以下である請求項1記載の水用配管洗浄方法。
【請求項3】
表面にキャビテーションポイントが複数形成されたキャビテーション処理部を流路内に配したキャビテーションノズルに対し前記洗浄水を流通し、前記キャビテーションポイントと接触させてキャビテーション処理を行ない、キャビテーション処理済み洗浄水を得るととともに、前記洗浄水供給管に該キャビテーション処理済み洗浄水を供給することにより前記水用配管の内面洗浄を行なう請求項1又は請求項2に記載の水用配管洗浄方法。
【請求項4】
一端に洗浄水流入口が形成され、他端に洗浄水流出口が形成されるとともに、管壁部が可撓性樹脂材料からなる管本体と、前記管本体の前記管壁部に一体化される形で、前記管本体の流路中心軸線周りに複数設けられ、各々前記流路中心軸線方向に沿うストランド形態をなし、前記管本体のキンクを抑制しつつ該管本体とともに湾曲変形可能とされた線状金属弾性体とを有する洗浄水供給管と、
前記洗浄水供給管の前記洗浄水流出口に取り付けられ、該洗浄水供給管に供給される洗浄水の噴射孔を複数開口し、前端側が凸湾曲面となるように形成されたガイド面を有する洗浄ノズルと、を備えたことを特徴とする水用配管洗浄具。
【請求項5】
前記洗浄水供給管は、前記管本体の外径が8mm以上25mm以下、肉厚が1mm以上6mm以下であり、前記線状金属弾性体は、断面外径が0.1mm以上1mm以下のばね用鋼線からなり、前記管本体の流路中心軸線周りに等角度間隔で3本以上10本以下に設けられる請求項4記載の水用配管洗浄具。
【請求項6】
前記洗浄ノズルの前記ガイド面は、前記洗浄水供給管の内径よりも大寸法をなし、かつ前記洗浄水供給管の内径よりも大きい曲率半径を有した凸湾曲面状に形成されている請求項4又は請求項5に記載の水用配管洗浄具。
【請求項7】
前記洗浄ノズルは前記ガイド面が球状面又は回転楕円体状面に形成されている請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の水用配管洗浄具。
【請求項8】
前記洗浄ノズルは、前記ガイド面が半球面状の主部と、該主部の外周縁から前記洗浄水供給管の前記洗浄水流出口に向けて連続的に縮径する縮径部とを有する請求項7記載の水用配管洗浄具。
【請求項9】
前記縮径部は前記主部と同一半径の球状面とされてなる請求項8記載の水用配管洗浄具。
【請求項10】
前記洗浄ノズルの前記ガイド面の少なくとも一部がフッ素樹脂からなる低摩擦部として構成されてなる請求項4ないし請求項9のいずれか1項に記載の水用配管洗浄具。
【請求項11】
前記洗浄ノズルの前記ガイド面のうち先端を含む一部が前記低摩擦部として構成される一方、前記ガイド面の残余の部分が前記低摩擦部に接合される金属部として構成され、前記噴射孔が前記金属部に開口形成されている請求項10記載の水用配管洗浄具。
【請求項12】
表面にキャビテーションポイントが複数形成されたキャビテーション処理部を流路内に配したキャビテーションノズルが、前記洗浄水供給管の前記洗浄水流入口に設けられている請求項4ないし請求項11のいずれか1項に記載の水用配管洗浄具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水用配管洗浄方法及びそれに用いる洗浄具に関し、特にS字管などの屈曲した水用配管に好適な洗浄方法及び洗浄具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、キッチンや手洗い場のシンクには排水口本体が形成され、この排水口本体に開口する接続口には排水管が接続される。また、接続口と排水管との間には、配管からの臭気の立ち上がりを防ぐためのトラップが接続されている。トラップはシンクの下方のキャビネット内に配置され、ベルトラップあるいはS字トラップ等の形式があるが、占有スペースが少なくコンパクトであることから、S字トラップが防臭手段として使用されることが多くなっている。
【0003】
ところで、マンション等の集合住宅等においては、例えばS字トラップに接続された排水管の高圧洗浄が定期的に行われる。従来、この高圧洗浄は、キャビネットを開けてキャビネット内のS字トラップを排水管から取り外した後、排水管に洗浄ホースを差し込んで行う必要があったため、その作業が大変で能率が悪いという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、洗浄ホースを差し込むための挿入部をS字トラップに設けることが提案されている。また、特許文献2には、排水口本体と、S字トラップ部よりも奥の排水管部分とを直結するバイパス路を設けたトラップ構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-088821号公報
【特許文献2】特開2006-348684号公報
【特許文献3】特開2017-227275号公報
【特許文献4】特開2002-005345号公報
【特許文献5】特開2004-144180号公報
【特許文献6】特許5812775号公報
【特許文献7】特開昭63-82637号公報
【特許文献8】米国特許公開2005-274425号公報
【特許文献9】WO2013-011570号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】スーパー工業株式会社 インターネットホームページ(https://www.super-ace.co.jp/tv/video/70/)
【非特許文献2】トータルメンテ インターネットホームページ(https://www.total516.jp/products/detail/458)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2が開示するのは、洗浄ホースの挿通を容易にするための構造的な改良をS字トラップに施す方式であるから、そうした構造を持たない旧来のS字トラップの洗浄には何ら貢献することがない。また、それを差し引いて考えたとしても、特許文献1の構造では、屈曲したS字トラップに倣わせて洗浄ホースを挿入しようとしても、摩擦や配管の継ぎ目に洗浄ホースが引っ掛かり、トラップのさらに奥の配管部分を洗浄するのが難しい問題がある。また、特許文献2の方式は、S字トラップをバイパスする形で洗浄ホースが挿入される構造になっているので、S字トラップ自体の内面洗浄は実施できない問題がある。
【0008】
一方、可撓性に富む洗浄ホースを用いてS字トラップ内を洗浄する方式として、洗浄ホースの先端に取り付けられたノズルに後方噴射用の水噴射孔を形成し、高圧水流の後方噴射に伴う推進力を用いて屈曲した配管内に洗浄ホースを導く方法も実施されている(非特許文献1)。しかし、この方式により、摩擦や管継ぎ目との引っ掛かり等に打ち勝って、屈曲した管内部で洗浄ホースを推進させるには、40気圧~200気圧もの高圧が必要であり(非特許文献2参照)、専用の高圧ポンプが必要となるなど汎用性に欠ける問題がある。また、同様の洗浄ホースを用い、一般家庭用等の水道水圧(例えば0.5~5気圧程度)にて水を流通しながら手で洗浄ホースを屈曲した配管内に押し込もうとしても、配管内面に沿って変形する洗浄ホースに復帰力を生じさせる水圧が確保されないため、途中で洗浄ホースが大きく座屈してしまい、S字トラップ等の屈曲の度合いが特に大きい配管部分を洗浄ホースが通過できない問題を生ずる。
【0009】
なお、ホースの曲げ曲率が大きくなった時のキンクを防止するために、壁部に補強材を埋め込んだホースが多数提案されている(特許文献3~8)。しかし、補強材が樹脂製であるもの(特許文献3)、あるいは金属を用いていても剛性が低い編み込み形態であるもの(特許文献4、5)については、上記の水道水圧では内面側からの突っ張り力が不足するため、手での押し込みにより屈曲の大きい配管部分に洗浄ホースを通過させることは絶望的である。また、特許文献6~特許文献8のホースあるいはチューブも金属線を補強材として用いているが、いずれも手指の操作により曲げ変形させることが可能であるとともに、金属線の働きによって、ホースが曲げた形状を維持できるように構成されており、剛性及び弾性に乏しいため事情に何ら変わりはない。
【0010】
本発明の課題は、水用配管に設けられるトラップ部等の屈曲部に洗浄ホースを手で押し込むだけで通過させることができるようにし、ひいては、供給する洗浄水の供給圧力が水道水程度の低水圧であっても、屈曲部やその奥の水用配管部分の内面を簡単かつ効果的に洗浄できる方法と、それに使用可能な水用配管洗浄具とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の水用配管洗浄方法は、水の流入口又は流出口として機能する水流通口を一端に開口するとともに、複数の方向転換用湾曲部を有した屈曲部が管路途中に設けられた水用配管の内面を洗浄する方法であって、上記の課題を解決するために一端に洗浄水流入口が形成され、他端に洗浄水流出口が形成されるとともに、管壁部が可撓性樹脂材料からなる管本体と、管本体の管壁部に一体化される形で管本体の流路中心軸線周りに複数設けられ、各々流路中心軸線方向に沿うストランド形態をなし、管本体のキンクを抑制しつつ該管本体とともに弾性湾曲変形可能とされた線状金属弾性体とを有する洗浄水供給管と、洗浄水供給管の洗浄水流出口に取り付けられ、該洗浄水供給管に供給される洗浄水の噴射孔を複数開口し、前端側が凸湾曲面となるように形成されたガイド面を有する洗浄ノズルと、を備えた洗浄具を用い、水流通口から洗浄ノズルを水用配管内に洗浄水供給管とともに挿入し、さらに洗浄水供給管を弾性湾曲変形させつつ屈曲部の奥へ洗浄ノズルを手動にて押し込むことにより、線状金属弾性体の弾性復帰力に基づき洗浄ノズルのガイド面を屈曲部の内面に押し付けつつ、洗浄ノズルを屈曲部の内面に沿って移動させることにより複数の方向転換用湾曲部を順次通過させ、洗浄水供給管に対し洗浄水流入口から洗浄水を供給することにより、洗浄ノズルから水用配管の内面に洗浄水を噴射して洗浄することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の水用配管洗浄具は、一端に洗浄水流入口が形成され、他端に洗浄水流出口が形成されるとともに、管壁部が可撓性樹脂材料からなる管本体と、管本体の管壁部に一体化される形で、管本体の流路中心軸線周りに複数設けられ、各々流路中心軸線方向に沿うストランド形態(直線状形態)をなし、管本体のキンクを抑制しつつ該管本体とともに湾曲変形可能とされた線状金属弾性体とを有する洗浄水供給管と、洗浄水供給管の洗浄水流出口に取り付けられ、該洗浄水供給管に供給される洗浄水の噴射孔を複数開口し、前端側が凸湾曲面となるように形成されたガイド面を有する洗浄ノズルと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の水用配管洗浄具は、洗浄水供給管の先端(洗浄水流出口)側に洗浄ノズルを取り付けた構造を有する。洗浄水供給管の管本体は、可撓性樹脂材料からなる管壁部に線状金属弾性体が埋設される。線状金属弾性体はストランド形態とされ、本体の流路中心軸線周りに複数設けられることで、管本体のキンクを抑制しつつ該管本体とともに弾性湾曲変形可能なっている。また、線状金属弾性体に基づく弾性力は、水流通口から洗浄ノズルを水用配管内に洗浄水供給管とともに挿入し、さらに洗浄水供給管を弾性湾曲変形させつつ屈曲部の奥へ洗浄ノズルを手動にて押し込んだとき、線状金属弾性体の弾性復帰力に基づき洗浄ノズルのガイド面が屈曲部の内面に押し付けられるように調整される。
【0014】
ストランド形態の線状金属弾性体が複数埋設されることで、洗浄水供給管は、洗浄水圧による内側からの突っ張り力がそれほど大きくなくても、洗浄水供給管の長手方向における曲げ剛性が高まり、屈曲部に向けて洗浄水供給管を手で押し込んだときに大きな座屈が生じにくくなる。また、長手方向における曲げ剛性が高められることで湾曲変形に伴う洗浄水供給管の弾性復帰力が大きくなり、洗浄ノズルのガイド面が屈曲部の内面に押し付けられた状態を維持できるようになる。さらに、洗浄ノズルのガイド面が凸湾曲面状に形成されているので、曲率の大きい屈曲部や管継ぎ目部分に洗浄ノズルが引っ掛かかりにくくなる。よって、水用配管に設けられる屈曲した屈曲部に対し洗浄水供給管は手で押し込むだけで簡単に通過できるようになり、ひいては、供給する洗浄水の供給圧力が例えば水道水程度の低水圧であっても、屈曲部やその奥の水用配管部分の内面を簡単かつ効果的に洗浄することができる。
【0015】
洗浄水供給管への洗浄水の供給圧力は特に限定されるものではないが、一般的な高圧水流方式に対する本発明の優位性が発揮されるのは、0.05MPa以上1MPa以下の比較的低水圧の領域であり、特に、0.05MPa以上0.5MPa以下の水圧領域は、一般家庭用の水道水圧を利用でき、特殊な高圧ポンプ等の補助が不要となるので本発明をより手軽に活用することができる。
【0016】
また、本発明においては、表面にキャビテーションポイントが複数形成されたキャビテーション処理部を流路内に配したキャビテーションノズルに対し洗浄水を流通し、キャビテーションポイントと接触させてキャビテーション処理を行ない、キャビテーション処理済み洗浄水を得るととともに、洗浄水供給管に該キャビテーション処理済み洗浄水を供給することにより水用配管の内面洗浄を行なうようにしてもよい。キャビテーション処理された洗浄水は、水用配管内面に付着あるいは堆積した汚れやぬめりの層に対する浸透性が未処理の洗浄水と比較して向上し、洗浄水圧が比較的低い場合であっても良好な洗浄効果を得やすくなる利点がある。このようなキャビテーションノズルとしては、特許文献9等に開示された周知の構造のものを採用できる。また、該キャビテーションノズルは、例えば、上記洗浄水供給管の洗浄水流入口に設けることができる。
【0017】
次に、本発明の洗浄具の、より具体的な構成について説明する。
管本体の外径及び肉厚は、一般的な配管洗浄ホース等と同程度の寸法にて選定でき、例えば外径が8mm以上25mm以下、肉厚が1mm以上6mm以下である。また、線状金属弾性体は、断面外径が0.1mm以上1mm以下のばね用鋼線にて構成できる。断面外径が0.1mm未満のばね用鋼線は、洗浄水供給管を湾曲変形させた際の弾性復帰力を十分に確保するのに必要となる鋼線の本数が多くなりすぎ、洗浄水供給管の製造工程の煩雑化を招く。一方、断面外径が1mmを超えるばね用鋼線は剛性が大きすぎ、洗浄水供給管を湾曲変形させる際に必要となる押し込み力が過大となる問題がある。
【0018】
このような線状金属弾性体は、洗浄水供給管にキンクを生じさせずに均等に湾曲変形させる観点から、管本体の流路中心軸線周りに複数本配置することが望ましく、より望ましくは管本体の流路中心軸線周りに等角度間隔で3本以上10本以下に設けるのがよい。
【0019】
洗浄ノズルと洗浄水供給管との接続位置は、水用配管内面の管継ぎ目や段差部に対する引っ掛かりが特に生じやすい。そこで、洗浄ノズルのガイド面は、洗浄水供給管の内径よりも大寸法をなし、かつ洗浄水供給管の内径よりも大きい曲率半径を有した凸湾曲面状に形成しておくことで、洗浄ノズルは上記のような段差等もより簡単に乗り越えることができるようになる。水用配管の内面に沿って洗浄ノズルをよりスムーズに進入させるには、洗浄ノズルのガイド面を、例えば球状面又は回転楕円体状面に形成しておくことが望ましい。洗浄ノズルは、ガイド面が半球面状の主部と、該主部の外周縁から洗浄水供給管の洗浄水流出口に向けて連続的に縮径する縮径部とを有するように構成しておけば、水用配管内面の管継ぎ目や段差部を洗浄ノズルがよりスムーズに乗り越えるができるので好適である。該縮径部は、例えば主部と同一半径の球状面に形成できる。
【0020】
洗浄ノズルのガイド面は、その少なくとも一部をフッ素樹脂からなる低摩擦部として構成することができる。これにより、水用配管の内面に沿って洗浄ノズルをよりスムーズに移動させることができ、水用配管内面の管継ぎ目や段差部等もより簡単に乗り越えることができる。フッ素樹脂は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFEあるいはテフロン(登録商標))を好適に使用できる。洗浄ノズルはガイド面を含む全体をフッ素樹脂により形成してもよいが、洗浄ノズルのガイド面のうち先端を含む一部を低摩擦部として構成し、ガイド面の残余の部分が低摩擦部に接合される金属部として構成しておくと、洗浄ノズルの機械的強度を高めることができる。この場合、噴射孔は金属部に開口形成することができる。なお、フッ素樹脂からなる低摩擦部を金属部に対し交換可能に構成しておくと、低摩擦部の摩耗が進んだ場合に新しい低摩擦部と交換することで、金属部を再利用することができ、経済的である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の効果については、課題を解決するための手段の欄に詳細に記載したので、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の水用配管洗浄具の一構成例を示す図。
【
図3】洗浄水供給管における線状金属弾性体の配置の第一変形例を示す断面図。
【
図5】
図1の洗浄具に使用される洗浄ノズルの詳細構造を示す図。
【
図6】
図1の洗浄具に使用されるキャビテーションノズルの詳細構造を示す図。
【
図8】
図1の洗浄具を排水管に挿入した状態で示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照して説明する。
図1は、本発明の水用配管洗浄具の一構成例を示すものである。水用配管洗浄具1は、一端に洗浄水流入口2Aが形成され、他端に洗浄水流出口2Bが形成された洗浄水供給管2と、洗浄水供給管2の洗浄水流出口2Bに取り付けられた洗浄ノズル3とを備える。また、洗浄水供給管2の洗浄水流入口2Aにはキャビテーションノズル11が取り付けられている。キャビテーションノズル11の管継手部11Fには中継接続管(本実施形態ではフレキシブル管)12が接続されており、該中継接続管12が管継手部12Fを介して水道蛇口13に接続されている。水道蛇口13からの水道水が洗浄水として、例えば0.05MPa以上0.5MPa以下の水道水圧にて、中継接続管12を経てキャビテーションノズル11に供給され、ここでキャビテーション処理が施される。洗浄水供給管2には、このキャビテーション処理済みの洗浄水が供給される。
【0024】
図2に示すように、洗浄水供給管2は、管壁部が可撓性樹脂材料からなる管本体2Wと、管本体2Wの管壁部に一体化される線状金属弾性体2Eとを有する。線状金属弾性体2Eは管本体2Wの流路中心軸線周りに複数設けられ、各々流路中心軸線方向に沿うストランド形態をなし、管本体2Wのキンクを抑制しつつ該管本体2Wとともに湾曲変形可能とされている。
【0025】
管本体2Wを構成する可撓性樹脂材料は、例えばポリアミド樹脂(例えば、ナイロン(商標名)など)、ポリウレタン樹脂、あるいはポリ塩化ビニル樹脂である。可撓性樹脂材料からなる管本体2Wの外側を、金属繊維の編み込みにより形成した補強層で覆うようにしてもよい。管本体2Wの外径及び肉厚は、一般的な配管洗浄ホース等と同程度の寸法にて選定でき、例えば外径が8mm以上25mm以下、肉厚が1mm以上6mm以下である。本実施形態では、管本体2Wはポリウレタン樹脂にて構成され、外径が12mm、肉厚は3mmである。
【0026】
また、線状金属弾性体2Eは、断面外径が0.1mm以上1mm以下のばね用鋼線からなる。線状金属弾性体2Eの断面外径は、より望ましくは0.2mm以上0.7mm以下であるのがよい。ばね用鋼線は、例えば硬鋼線(例えばJIS:G3506に規定されたもの、代表的な材質としてSWRH82A)、ピアノ線(例えばJIS:G3502に規定されたもの、代表的な材質としてSWRS82A)、ばね用ステンレス鋼線(JIS:G4314に規定されたもの)にて構成できる。本実施形態では、線状金属弾性体2Eは、断面外径が0.5mmのピアノ線であり、管本体2Wと一体押出成形されることにより、管本体2Wの厚さ方向のほぼ中間の位置に、流路中心軸線(管本体2Wの中心軸線)の周りに等角度間隔で4本埋設されている。なお、管本体2Wに対する線状金属弾性体2Eの配設数はこれに限られるものではない。
図3は線状金属弾性体2Eの配設数を3とした場合の例を示す断面図であり、
図4は同じく6とした場合の例を示す断面図である。
【0027】
次に、
図5は、洗浄ノズル3の詳細構造を示すものである。洗浄ノズル3は、洗浄水供給管2に供給される洗浄水Wの噴射孔3Bを複数開口し、前端側が凸湾曲面とされたガイド面3Gが形成されている。洗浄ノズル3のガイド面3Gは、洗浄水供給管2の内径よりも大寸法をなし、かつ洗浄水供給管2の内径よりも大きい曲率半径を有した凸湾曲状、本実施形態では球状面(回転楕円体状面であってもよい)とされている。
【0028】
図8に示すように、洗浄ノズル3のガイド面3Gは、半球面状の主部3Jと、該主部3Jの外周縁から洗浄水供給管2の洗浄水流出口2Bに向けて連続的に縮径する縮径部3Kとを有する。縮径部3Kは、本実施形態では主部3Jと同一半径の球状面に形成され、その後端からは洗浄水供給管2を接続するための管継手部3Fが突出形成されている。管継手部3Fは、本実施形態では周知のタケノコ型ホース継手とされている。
【0029】
図5に示すように、洗浄ノズル3のガイド面3Gのうち流路軸線Oの方向における前端側が、フッ素樹脂(本実施形態ではテフロン(登録商標))からなる低摩擦部3LFにより形成されている。本実施形態において低摩擦部3LFは、ガイド面3Gを形成する球状面の中心よりも前方にて、流路軸線Oと直交する仮想的な平面によりガイド面3Gを前後に分割したときの前方部分を形成する球セグメントとして形成されている。一方、主部3J及び縮径部3Kは低摩擦部3LFの後方部分を形成する球セグメントを含む。該球体セグメントに上記の管継手部3Fが一体化され、金属部(例えば、真鍮等の銅合金あるいはステンレス鋼)として構成されている。低摩擦部3LFは平面状の底面中心に雌ねじ孔3TBが開口しており、主部3Jの前端面から突出する雄ねじ部3TAが上記雌ねじ孔3TBに螺合することにより、低摩擦部3LFは主部3Jに交換可能に取り付けられている。
【0030】
一方、主部3Jには、管継手部3Fの後端に開口する形で流路軸線Oに沿って洗浄水の主流路3Pが孔設されている。この主流路3Pの前端側には、複数の分配通路3Nが、流路軸線Oを中心とする形で放射状に形成されており、各々主部3J及び縮径部3Kの表面に噴射孔3Bを開口している。なお、
図13に示すように、洗浄ノズル3の全体を、低摩擦部をなすフッ素樹脂にて構成してもよいし、排水管内面からの摩擦等が大きな問題にならない場合は、洗浄ノズル3の全体を金属で構成してもよい。
【0031】
図6は、キャビテーションノズル11の構造の一例を示すものである。キャビテーションノズル11は金属または樹脂製のケーシング部11Mと、このケーシング部11Mに組み込まれるキャビテーション処理部100とを有する。ケーシング部11Mの後端からは洗浄水供給管を接続するための管継手部11Fが突出形成されている。管継手部11Fは、本実施形態ではタケノコ型のホース継手とされている。また、ケーシング部11Mの前端側(図面下側)には、キャビテーション処理部100の収容部11Rが開口形成されており、管継手部11Fの洗浄水の流路軸線Oに沿って形成された主流路11Pの前端側が収容部11Rに後端側に連通している。
【0032】
キャビテーション処理部100は、樹脂成型体等で形成された円柱状の本体102を備え、該本体102を軸線方向に貫通する形で処理流路109が孔設されている。
図7に示すように、処理流路109の内面からはねじ部材110が突出形成されており、該ねじ部材110の両側に開口する処理流路109の空隙部分21が洗浄水の流通路となる。ねじ部材110では、ねじ部材110の外周面と接触しながら流通する洗浄水は、そのねじ谷部が高流速のキャビテーションポイントとなることで、溶存酸素を微細気泡として減圧析出する。気泡の析出は、洗浄水がねじ谷部との接触しているときの減圧状態でのみ進行し、ねじ谷部を通過後は減圧状態が消失するため、気泡成長は速やかに停止する。そのため、キャビテーション処理後に洗浄水中に生成している微細気泡の平均径は数nm程度であると推定されており、この微細気泡の介在により水の浸透性が改善されると考えられている。
【0033】
以下、
図8~
図12を参照し、洗浄具1による排水管の洗浄方法について説明する。
図9に示すように、洗浄対象となるのは、台所や洗面台のシンク等に開口する排水管Pである。排水管Pは、水流通口となる排水流入口FEを一端に開口するとともに、複数の方向転換用湾曲部TV1,TV2を有した、屈曲部をなすトラップ部TPが管路途中に設けられている。本実施形態では、トラップ部TPがS字管として構成されている場合を例にとる。
【0034】
図9の左に示すように、排水流入口FEから、洗浄ノズル3を排水管内に洗浄水供給管2とともに挿入する。そして、
図9の右に示すように、洗浄水供給管2を弾性湾曲変形させつつトラップ部TPの奥へ洗浄ノズル3を手動にて押し込む。湾曲変形した洗浄水供給管2は、線状金属弾性体2E(
図2)の弾性復帰力に基づき洗浄ノズル3のガイド面3Gがトラップ部TPの内面に押し付けられながら、排水管Pの内面上を移動する。
【0035】
この状態で、
図10の左に示すように、洗浄水供給管2の手動による押し込みを継続し、洗浄ノズル3が最初の方向転換用湾曲部TV1に差し掛かると、洗浄水供給管2の弾性復帰力により排水管Pの内面に向け付勢されているので、洗浄ノズル3は方向転換用湾曲部TV1の内面に沿って上向きに方向転換する形で移動する。洗浄ノズル3は、ガイド面3Gが凸湾曲面(球面)になっていること、及び前端側が低摩擦部3LF(
図5)となっていることで、排水管Pの内面上をスムーズに滑り移動することができる。
【0036】
そして、
図10の右に示すように、次の方向転換用湾曲部TV2との継ぎ目部TJに差し掛かる。
図2のごとく、洗浄水供給管2は複数のストランド状の線状金属弾性体2Eにより補強されていることから剛性が適度に高い。その結果、継ぎ目部TJの段差に洗浄ノズル3に引っかかった状態で手による押し込み力が多少大きく作用しても、洗浄水供給管2に座屈モード変形が生じにくく、段差を乗り越えて上方に滑り移動を継続する。
図5のように、洗浄ノズル3のガイド面3Gが、半球面状の主部3Jと、該主部3Jの外周縁から洗浄水供給管2の洗浄水流出口2Bに向けて連続的に縮径する縮径部3Kとを有することで、ガイド面3Gの継ぎ目部TJの段差への引っ掛かりがより生じにくくなっている。
【0037】
洗浄水供給管2の押し込みをさらに継続することにより、継ぎ目部TJを通過した洗浄ノズル3は、次の方向転換用湾曲部TV2内に入り込み、
図11の左に示すようにその頂部内面に当たって止まる。このとき、U字型に湾曲した洗浄水供給管2の両端側には2つの直線部L1,L2が生じている。洗浄ノズル3をさらに進ませるために、手による押し込み力を増大させると、これら2つの直線部L1,L2には軸線方向の強い圧縮力が作用する。
【0038】
しかし、洗浄ノズル3側は、球状のガイド面が方向転換用湾曲部TV2の内面に対し、その頂点位置から少しずれて当たっているために、該頂点位置に向けた接線方向に滑り分力CLが発生する。
図11の右に示すように、この滑り分力CLは直線部L2の曲げモード変形を誘起する向きに作用するため、直線部L2は軸線方向の圧縮応力が座屈点に達する前に湾曲変形し、
図12の左に示すように、洗浄ノズル3は方向転換用湾曲部TV2の頂点を乗り越えて下向きに方向転換しながら前進できるようになる。この間、S字に屈曲した洗浄水供給管2の弾性復帰力により洗浄ノズル3は排水管Pの内面に押し当てられた状態が維持され、
図12の右に示すように、トラップ部TPを通過してその奥の排水管部分へと進入する。
【0039】
図11の左の状態では、2つの直線部L1,L2のうち、長さの大きい排水流入口FE側の直線部L1の方が座屈モード変形は起きやすい。洗浄ノズル3が滑り分力CLを生じにくい形状であった場合、手による押し込み力を相当強めても洗浄ノズル3に十分な滑り分力CLが生じない結果、洗浄ノズル3は方向転換用湾曲部TV2の頂点付近に当たって止まった状態が継続されることとなる。そして、洗浄水供給管2の剛性が低いと、直線部L2に曲げモード変形が生ずる前に直線部L1が座屈モード変形してしまい、洗浄ノズル3は方向転換用湾曲部TV2の頂点を乗り越えて進むことができなくなる。
【0040】
しかしながら、
図2のごとく、洗浄水供給管2は複数のストランド状の線状金属弾性体2Eにより補強されていることで座屈に対する耐性が高められており、また、洗浄ノズル3に形成された湾曲形態(球面状)のガイド面により滑り分力CLが生じやすくなっていることから、直線部L2には直線部L1が座屈する前に上記の曲げモード変形が確実に誘導され、洗浄ノズル3は方向転換用湾曲部TV2の頂点をスムーズに乗り越えて移動することができる。洗浄ノズル3の前端側が低摩擦部3LF(
図5)となっていることで、この効果はさらに高められている。
【0041】
上記洗浄ノズル3を移動させる間、
図8に示すように、洗浄水供給管2に対し洗浄水流入口2Aから洗浄水Wを供給しておけば、洗浄ノズル3の噴射孔3Bからは洗浄水Wが噴射され、排水管Pの内面に付着した汚れやぬめり等が除去される。上記のように洗浄水供給管2は、手による押し込み力でトラップ部を乗り越えて奥に進めることができるので、高圧水流による推進力は不要となる。さらに、本実施形態では洗浄具1にキャビテーションノズル11を設けており、排水管内面と汚れ層との間にも浸透しやすいキャビテーション処理済みの洗浄水Wとして噴射されるので、低水圧での洗浄能力がさらに向上している。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、洗浄ノズル3に対し、周方向に配列する複数の噴射孔3Bを複数列開口させているが、噴射孔3Bの形成形態はこれに限定されるものではない。例えば、
図3において噴射孔3Bは主部3J及び縮径部3Kに開口しているところ、その全てを主部3J又は縮径部3Kに開口させるようにしてもよい。
【0043】
また、洗浄対象となる水用配管の屈曲部はS字形状のものに限らず、例えば環状に屈曲するもの、あるいは直角に屈曲するエルボが2以上隣接形成されたもの(例えばコの字状に屈曲する配管形態)などであってもよい。さらに、洗浄対象となる水用配管は排水管に限らず、給水あるいは給湯配管(例えば、浴槽壁部に開口する給湯管あるいは追炊き用の給排水管など)であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 水用配管洗浄具
2 洗浄水供給管
2A 洗浄水流入口
2B 洗浄水流出口
2E 線状金属弾性体
2W 管本体
3 洗浄ノズル
3B 噴射孔
3F 管継手部
3G ガイド面
3J 主部
3K 縮径部
3LF 低摩擦部
3N 分配通路
3P 主流路
3TA 雄ねじ部
3TB 雌ねじ孔
11 キャビテーションノズル
11F 管継手部
11M ケーシング部
11R 収容部
12 中継接続管
12F 管継手部
13 水道蛇口
21 空隙部分
100 キャビテーション処理部
102 本体
109 処理流路
110 ねじ部材
CL 分力
FE 排水流入口
L1,L2 直線部
O 流路軸線
P 排水管(水用配管)
TJ 継ぎ目部
TP トラップ部
TV1,TV2 方向転換用湾曲部
W 洗浄水