(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058068
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】接眼レンズ系、光学機器、及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 25/00 20060101AFI20220404BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G02B25/00
G02B13/18
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191219
(22)【出願日】2020-11-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2020166444
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505083036
【氏名又は名称】ビクター ハッセルブラッド アクチボラーグ
【氏名又は名称原語表記】VICTOR HASSELBLAD AB
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】明石 誉貴
(72)【発明者】
【氏名】大畑 篤
(72)【発明者】
【氏名】中辻 達也
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA14
2H087KA23
2H087LA12
2H087PA04
2H087PA05
2H087PA17
2H087PB04
2H087PB05
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA14
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA32
2H087QA34
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA34
2H087RA42
2H087UA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い視野角を持ち、光学性能が高い接眼レンズ系を提供する。
【解決手段】接眼レンズ系100は、物体側から正の第1レンズG1、負の第2レンズG2、正の第3レンズG3、正又は負の第4レンズG4、正の第5レンズG5を備え、第1レンズはアイポイント側に凸面を向けた両凸レンズ又はメニスカスレンズ、第2レンズはアイポイント側に凸面を向けた樹脂製のメニスカスレンズ、第3レンズは、アイポイント側に凸面を向けた両凸レンズ又はメニスカスレンズ、第4レンズはアイポイント側に凸面を向けた非球面に変曲点を有する樹脂製のメニスカスレンズ、第5レンズはアイポイント側に凸面を向けた両凸レンズ又はメニスカスレンズであって、全系の焦点距離をf、接眼レンズの光軸上の距離をTLとして、f/TL<0.9を満足し、少なくとも3枚の正の屈折力を有するレンズの屈折率ndnが、ndn>1.8を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接眼レンズ系であって、
観察物体側からアイポイント側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正又は負の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズとを備え、
前記第1レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備え、
前記第2レンズは、アイポイント側に凸面を向けた負の屈折力を有する1枚の樹脂レンズのメニスカスレンズを備え、
前記第3レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備え、
前記第4レンズは、アイポイント側に凸面を向けた非球面に変曲点を有し、正又は負の屈折力を有する1枚の樹脂レンズのメニスカスレンズを備え、
前記第5レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備え、
全系の焦点距離をf、前記第1レンズの観察物体側の面から前記第5レンズのアイポイント側の面までの光軸上の距離をTLとして、条件式
f / TL < 0.9
を満足し、
前記接眼レンズ系が備える任意の正の屈折力を有するレンズのd線を基準とした屈折率をndnとしたとき、少なくとも3枚の正の屈折力を有するレンズのndnが条件式
ndn > 1.8
を満足する接眼レンズ系。
【請求項2】
最終光学面から最大像高のマージナル光線と光軸との交点までの距離をアイポイントとした場合において前記アイポイント側の接眼レンズカバー部材の前記アイポイント側に向いた面から前記アイポイントまでの距離をEey_P、最大物体高をY、最大物体高の射出瞳上の射出角度をEXAとして、条件式
Y / TAN(EXA) < 16.5
Eey_P ≧ 20
を満足する請求項1に記載の接眼レンズ系。
【請求項3】
前記第2レンズ及び前記第4レンズは、樹脂非球面レンズであり、
前記第2レンズの樹脂非球面レンズの焦点距離をf_2pl、前記第4レンズの樹脂非球面レンズの焦点距離をf_4plとして、条件式
| f_2pl / f | < 3.5
| f_4pl / f | > 1.5
を満足する請求項1又は2に記載の接眼レンズ系。
【請求項4】
前記第3レンズの焦点距離をf3、前記第5レンズの焦点距離をf5として、条件式
0.3 < f3 / f5 < 2
を満足する請求項1から3のいずれか一項に記載の接眼レンズ系。
【請求項5】
入射瞳位置をEPD、最大物体高をYとして、条件式
| EPD / Y | > 1.2
を満足する請求項1から4のいずれか一項に記載の接眼レンズ系。
【請求項6】
前記第1レンズのアイポイント側の面の最大物体高の光線有効半径をH12、前記第1レンズのアイポイント側の面の近軸曲率半径をR12として、条件式
| H12 / R12 | < 0.96
を満足する請求項1から5のいずれか一項に記載の接眼レンズ系。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の接眼レンズ系を備える光学機器。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の接眼レンズ系を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接眼レンズ系、光学機器、及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、光学機器に使用可能な接眼レンズが記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特許第6429538号公報
[特許文献2]特許第6615068号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の一態様に係る接眼レンズ系は、観察物体側からアイポイント側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正又は負の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズとを備える。前記第1レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備える。第2レンズは、アイポイント側に凸面を向けた負の屈折力を有する1枚の樹脂レンズのメニスカスレンズを備える。第3レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備える。第4レンズは、アイポイント側に凸面を向けた非球面に変曲点を有し、正又は負の屈折力を有する1枚の樹脂レンズのメニスカスレンズを備える。第5レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備える。全系の焦点距離をf、前記第1レンズの観察物体側の面から前記第5レンズのアイポイント側の面までの光軸上の距離をTLとして、条件式
f / TL < 0.9
を満足する。
接眼レンズ系が備える任意の正の屈折力を有するレンズのd線を基準とした屈折率をndnとしたとき、少なくとも3枚の正の屈折力を有するレンズのndnが条件式
ndn > 1.8
を満足する。
【0004】
最終光学面から最大像高のマージナル光線と光軸との交点までの距離をアイポイントとした場合において前記アイポイント側の接眼レンズカバー部材の前記アイポイント側に向いた面から前記アイポイントまでの距離をEey_P、最大物体高をY、最大物体高の射出瞳上の射出角度をEXAとして、条件式
Y / TAN(EXA) < 16.5
Eey_P ≧ 20
を満足してよい。
【0005】
前記第2レンズ及び前記第4レンズは、樹脂非球面レンズであり、
前記第2レンズの樹脂非球面レンズの焦点距離をf_2pl、前記第4レンズの樹脂非球面レンズの焦点距離をf_4plとして、条件式
| f_2pl / f | < 3.5
| f_4pl / f | > 1.5
を満足してよい。
【0006】
第3レンズの焦点距離をf3、前記第5レンズの焦点距離をf5として、条件式
0.3 < f3 / f5 < 2
を満足してよい。
【0007】
入射瞳位置をEPD、最大物体高をYとして、条件式
| EPD / Y | > 1.2
を満足してよい。
【0008】
第1レンズのアイポイント側の面の最大物体高の光線有効半径をH12、第1レンズのアイポイント側の面の近軸曲率半径をR12として、条件式
| H12 / R12 | < 0.96
を満足してよい。
【0009】
本発明の一態様に係る光学機器は、上記の接眼レンズ系を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る撮像装置は、上記の接眼レンズ系を備える。
【0011】
上記の接眼レンズ系によれば、高い視野角を持ち光学性能が高い接眼レンズ系を提供することができる。
【0012】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施例における接眼レンズ系100のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。
【
図2】接眼レンズ系100が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。
【
図3】第2実施例における接眼レンズ系200のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。
【
図4】接眼レンズ系200が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。
【
図5】第3実施例における接眼レンズ系300のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。
【
図6】接眼レンズ系300の無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。
【
図7】第4実施例における接眼レンズ系400のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。
【
図8】接眼レンズ系400の無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。
【
図9】第1参考例における接眼レンズ系500のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。
【
図10】接眼レンズ系500が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。
【
図11】第2参考例における接眼レンズ系600のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。
【
図12】接眼レンズ系600が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。
【
図13】第3参考例における接眼レンズ系700のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。
【
図14】接眼レンズ系700が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。
【
図15】第5実施例における接眼レンズ系800のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。
【
図16】接眼レンズ系800が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。
【
図17】撮像装置2000の外観斜視図の一例を示す。
【
図18】撮像装置2000の機能ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。以下の実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0015】
特許請求の範囲、明細書、図面、及び要約書には、著作権による保護の対象となる事項が含まれる。著作権者は、これらの書類の何人による複製に対しても、特許庁のファイル又はレコードに表示される通りであれば異議を唱えない。ただし、それ以外の場合、一切の著作権を留保する。
【0016】
本明細書等において「~から構成され」、「~からなり」、「~からなる」という用語が用いられる場合、列挙された構成要素に加えて、実質的に屈折力を有さないレンズ、絞り、カバー部材及びフィルタ等の、実質的に屈折力を有するレンズ以外の光学要素、及び/又は、レンズフランジ、及び可動絞り機構等の機構要素を含み得る。例えば、「Xから構成され」、「Xからなり」、「Xからなる」という用語が用いられる場合、Xに加えて、実質的に屈折力を有するレンズ以外の光学要素、及び/又は、機構要素を含み得る。
【0017】
本明細書において、接眼レンズ系の具体的な実施形態に具体的な数値を適用した実施例及び参考例が説明される。まず、接眼レンズ系の各実施例及び参考例の説明で用いられる記号等の意味を説明する。
【0018】
接眼レンズ系のレンズデータとして、面番号、曲率半径、面間隔、屈折率及びアッベ数を含む表が開示される。レンズデータの表において、面番号の欄には、光軸方向に沿って観察物体から第1面としアイポイントに向かうに従い1つずつ番号を増加させたときの面番号が示される。Rの欄には、各面の曲率半径が示される。Dの欄には、各面とそのアイポイント側に隣接する面との光軸上の面間隔が示される。Ndの欄には、各光学要素のd線(波長587.6nm(ナノメートル))に対する屈折率が示される。Vdの欄には、各光学要素のd線基準のアッベ数が示される。ここで、曲率半径の符号は、面形状がアイポイントとは反対側に凸の場合を正とし、アイポイント側に凸の場合を負とする。曲率半径における「INF」は、当該面が平面であることを示す。
【0019】
レンズデータには、観察物体も含めて示す。面番号の欄の「STO」はアイポイントEPを表す。
【0020】
レンズデータにおいて、非球面の面番号には*印を付すとともに、曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を示す。また、非球面を有するレンズ系の実施例については、非球面の面番号と、各非球面に関する非球面係数、及び、円錐定数を含む非球面データの表を付す。非球面データの表において、非球面係数の数値の「E±n」(n:自然数)は、10を底とする指数表現を表す。すなわち、「E±n」は、「×10±n」を表す。例えば、「0.12345E-05」は、「0.12345×10-5」を表す。非球面形状は、「zd」をレンズ面の頂点からの光軸方向における距離(サグ量)、「h」を光軸方向に垂直な方向における距離(高さ)、「c」をレンズの頂点における近軸曲率(曲率半径の逆数)、「κ」を円錐定数(コーニック定数)、「Am」をm次の非球面係数とすると、次の式によって定義される。
zd=ch2/(1+(1-(1+κ)c2h2)1/2)+ΣAm×hm
なお、Σはmについての和を示す。
【0021】
また、各実施例及び参考例の接眼レンズ系の諸元データの表を付す。諸元データの表において、「f」は焦点距離、「TL」はレンズ全長、「Y」は物体最大高、「EXA」は射出角度、「Eye_P」はアイポイント、「EPD」は入射瞳位置を示す。その他、実施例及び参考例に応じて、諸元データが他のデータを場合がある。
【0022】
レンズデータ、及びレンズ系の諸元データの表において、角度の単位としては「度」を用い、長さの単位としては「mm」を用いる。しかし、レンズ系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため、他の任意の単位を用いることもできる。
【0023】
なお、接眼レンズ系が光学機器に用いられる場合、保護用のカバー部材等の光学要素を備えることが好ましい。しかし、接眼レンズ系として、係る光学要素を備える形態も備えない形態も採用できる。係る光学要素を備える接眼レンズ系と光学要素を備えない接眼レンズ系とは等価なレンズ系といえる。
【0024】
「Gi」はレンズを示す。「Gi」において文字Gに続くiは、各実施例及び参考例においてレンズ系が備えるレンズを識別することを目的とした自然数である。「Gi」で表されるレンズは、1又は複数のレンズを備えて構成される。各実施例及び参考例の説明において、記号Giが割り当てられたレンズと、他の実施例及び参考例における同じ記号Giが割り当てられたレンズとが同じレンズ構成のレンズであることを意味するものではない。
【0025】
図1から
図8、
図15及び
図16に関連して、この発明に係る接眼レンズ系の実施例が開示されている。第1実施例から第5実施例に開示されているように、一実施形態の接眼レンズ系は、観察物体側からアイポイント側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正又は負の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズとを備える。前記第1レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備える。前記第2レンズは、アイポイント側に凸面を向けた負の屈折力を有する1枚の樹脂レンズのメニスカスレンズを備える。前記第3レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚のメニスカスレンズを備える。前記第4レンズは、アイポイント側に凸面を向けた非球面に変曲点を有し、正又は負の屈折力を有する1枚の樹脂レンズのメニスカスレンズを備える。前記第5レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備える。全系の焦点距離をf、前記第1レンズの前記メニスカスレンズの観察物体側の面から前記第5レンズの前記メニスカスレンズのアイポイント側の面までの光軸上の距離をTLとして、条件式
f / TL < 0.9 ・・・(1)
を満足する。接眼レンズが備える任意の正の屈折力を有するレンズのd線を基準とした屈折率をndnとしたとき、少なくとも3枚の正の屈折力を有するレンズのndnが条件式
ndn > 1.8 ・・・(2)
を満足する。
【0026】
条件式(1)は、全体の焦点距離と接眼レンズ系全長の関係を規定している。条件式(1)は、高視野角を達成するための条件となる。焦点距離が長くなって条件式(1)の上限以上になると、レンズの直径が大きくなり、レンズ全体が大型化し、製造コストが増大する。また、高視野角の達成が難しくなる。一方、レンズ全長が短くなり条件式(1)の上限以上になると、全系の屈折力が強くなり、収差補正が難しくなり、偏心誤差による性能劣化も大きくなる。
【0027】
さらに、条件式(1-1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
f / TL < 0.77 ・・・(1-1)
【0028】
条件式(2)は、正の屈折力を持つレンズの屈折率を規定している。条件式(2)は視野角に関する条件であり、条件式(2)を満足することで視野角を大きくすることができる。
【0029】
最終光学面から最大像高のマージナル光線と光軸との交点までの距離をアイポイントとした場合において前記アイポイント側の接眼レンズカバー部材の前記アイポイント側に向いた面から前記アイポイントまでの距離をEey_P、最大物体高をY、最大物体高の射出瞳上の射出角度をEXAとして、条件式
Y / TAN(EXA) < 16.5 ・・・(3)
Eey_P ≧ 20 ・・・(4)
を満足する。
【0030】
条件式(3)は、最大物体高と最大物体高の射出瞳上の射出角度を規定している。条件式(3)を満足することで、視野角を大きくすることができる。これにより、接眼レンズ系を映像の表示装置に適用した場合には、映像に対する没入感が得られる。一方、条件式(3)の上限以上になると、アイポイントが長く取れ、映像全体を瞬時に確認できるようになるが、没入感を得るのが容易でなくなる。
【0031】
さらに、条件式(3-1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
Y / TAN(EXA) < 15.5 ・・・(3-1)
【0032】
第2レンズ及び第4レンズは、樹脂非球面レンズであり、第2レンズの樹脂非球面レンズの焦点距離をf_2pl、第4レンズの樹脂非球面レンズの焦点距離をf_4plとして、条件式
| f_2pl / f | < 3.5 ・・・(5)
| f_4pl / f | > 1.5 ・・・(6)
を満足する。
【0033】
条件式(5)及び(6)は、第2レンズ及び第4レンズに配置された樹脂非球面レンズの焦点距離とレンズ全体の焦点距離の関係を規定している。条件式(5)及び(6)を満足することで、像面湾曲や非点収差を良好に補正することができる。
【0034】
第3レンズの焦点距離をf3、第5レンズの焦点距離をf5として、条件式
0.3 < f3 / f5 < 2 ・・・(7)
を満足する。
【0035】
条件式(7)は、第3レンズと第5レンズの焦点距離の関係を規定している。条件式(7)を満足することで、広視野角化に必要な屈折力を第3レンズと第5レンズとで分担することができ、軸上収差補正を良好に行うことができる。条件式(7)を満足しない場合、広視野角化に必要な屈折力がどちらかのレンズに偏ってしまい、屈折力が強いレンズにおいて収差補正が容易でなくなるとともに、偏芯誤差による性能劣化が大きくなる。
【0036】
さらに、条件式(7-1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
0.3 < f3 / f5 < 1.3 ・・・(7-1)
【0037】
入射瞳位置をEPD、最大物体高をYとして、条件式
| EPD / Y | > 1.2 ・・・(8)
を満足する。
【0038】
条件式(8)は、入射瞳位置と最大物体高の関係を規定している。条件式(8)を満足することで、軸外収差の発生を良好に補正することができる。一方、条件式(8)を満足しないと、最大物体高に対して射出瞳位置が小さくなりすぎるため、軸外光線の入射角が大きくなってしまい、軸外収差が発生し易くなる。また、光の射出角度が大きくなり、接眼レンズ系を表示装置に適用する場合は表示色の変化を招く。
【0039】
さらに、条件式(8-1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
| EPD / Y | > 1.5 ・・・(8-1)
【0040】
第1レンズのアイポイント側の面の最大物体高の光線有効半径をH12、第1レンズのアイポイント側の面の近軸曲率半径をR12として、条件式
| H12 / R12 | < 0.96 ・・・(9)
を満足する。
【0041】
条件式(9)は、第1レンズのアイポイント側の面の最大物体高の光線有効半径と近軸曲率半径の関係を規定している。条件式(9)の以上になるると、製造難易度があがりコストアップの要因となる。
【0042】
さらに、条件式(9-1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
| H12 / R12 | < 0.66 ・・・(9-1)
【0043】
上記の接眼レンズ系によれば、視野角が高く光学性能が高い接眼レンズ系を提供することができる。そのため、映像を表示する表示装置に上記の接眼レンズ系を適用することにより、没入感の高い映像を提供し得る。
【0044】
図1は、第1実施例における接眼レンズ系100のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。物体Oは接眼レンズ系100を通じて観察される観察物体である。物体Oは、例えば表示素子等である。カバー部材Pは、例えば保護硝子プレートである。接眼レンズ系100は、カバー部材P及び物体Oとともに光学系を形成する。
【0045】
接眼レンズ系100は、光軸に沿って、観察物体側からアイポイントEP側へ順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズG1と、負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する第3レンズG3と、負の屈折力を有する第4レンズG4と、正の屈折力を有する第5レンズG5とから構成される。
【0046】
第1レンズG1は、正の屈折力を有する両凸レンズから構成される。第1レンズG1が非球面の面を有することによって、歪曲収差の補正に有利になる。また、光の入射角度を抑えることで、周辺減光の低下を抑えることができる。第1レンズG1は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第1レンズG1の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0047】
第2レンズG2は、観察物体側に凹面を向けた負の樹脂レンズのメニスカスレンズから構成される。第2レンズG2と第1レンズG1との組み合わせによって色収差を良好に補正している。また、第2レンズG2を樹脂非球面レンズから構成することで、小型化及び低コスト化に寄与する。
【0048】
第3レンズG3は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。第3レンズG3は、アイポイントEPへと光線を無理なく向かわせることに寄与する。
【0049】
第4レンズG4は、観察物体側に凹面を向けた負の樹脂レンズのメニスカスレンズから構成される。第4レンズG4は、第3レンズG3及び第5レンズG5で発生し得る収差を良好に補正する役割を果たしている。また、第4レンズG4を樹脂非球面レンズから構成することによって収差のみを補正することに重点をおいて設計することができるので、パワーを弱くし偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0050】
第5レンズG5は、正の屈折率を有する凸レンズから構成される。第5レンズG5より前段のレンズで発生し得る球面収差を抑えることができる。また、第3レンズG3とのパワーの差を小さくすることによって、パワーを分担し偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0051】
表1は、接眼レンズ系100のレンズデータを示す。表2は、接眼レンズ系100の非球面データを示す表である。
【0052】
【0053】
【0054】
表3は、接眼レンズ系100の諸元データを示す。表3は、接眼レンズ系100の-1diopter合焦時の焦点距離f、レンズ全長TL、物体最大高Y、射出角度EXA、アイポイントEye_P、第2レンズG2の焦点距離f2_pl、第4レンズG4の焦点距離f4_pl、第3レンズG3の焦点距離f3、第5レンズG5の焦点距離f5、入射瞳位置EPD、及び第1レンズのアイポイント側の面の光線有効半径H12を示す。
【0055】
【0056】
図2は、接眼レンズ系100が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差図において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はe線(546.07nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差図において、実線はe線のサジタル像面、破線はe線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差図において、実線はe線の値を示す。各収差図から、接眼レンズ系100は諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることが明らかである。
【0057】
図3は、第2実施例における接眼レンズ系200のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。物体Oは接眼レンズ系200を通じて観察される観察物体である。物体Oは、例えば表示素子等である。カバー部材Pは、例えば保護硝子プレートである。接眼レンズ系200は、カバー部材P及び物体Oとともに光学系を形成する。
【0058】
接眼レンズ系200は、光軸に沿って物体側からアイポイント側へ順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズG1と、負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する第3レンズG3と、負の屈折力を有する第4レンズG4と、正の屈折力を有する第5レンズG5とから構成される。
【0059】
第1レンズG1は、正の屈折力を有する両凸レンズから構成される。第1レンズG1が非球面の面を有することによって、歪曲収差の補正に有利になる。また、光の入射角度を抑えることで、周辺減光の低下を抑えることができる。第1レンズG1は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第1レンズG1の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0060】
第2レンズG2は、観察物体側に凹面を向けた負の樹脂レンズのメニスカスレンズから構成される。第2レンズG2と第1レンズG1との組み合わせによって色収差を良好に補正している。また、第2レンズG2を樹脂非球面レンズから構成することで、小型化及び低コスト化に寄与する。
【0061】
第3レンズG3は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。第3レンズG3は、アイポイントEPへと構成を無理なく向かわせる事に寄与する。
【0062】
第4レンズG4は、観察物体側に凹面を向けた負の樹脂レンズのメニスカスレンズから構成される。第4レンズG4は、第3レンズG3及び第5レンズG5で発生し得る収差を良好に補正する役割を果たしている。また、第4レンズG4を樹脂非球面レンズから構成することによって、収差のみを補正することに重点をおいて設計することができるので、パワーを弱くし偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0063】
第5レンズG5は、正の屈折率を有する凸レンズから構成される。第5レンズG5より前段のレンズで発生し得る球面収差を抑えることができる。また、第3レンズG3とのパワーの差を小さくすることによって、第3レンズG3とパワーを分担し偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0064】
表4は、接眼レンズ系200のレンズデータを示す。表5は、接眼レンズ系200の非球面データを示す表である。
【0065】
【0066】
【0067】
表6は、接眼レンズ系200の諸元データを示す。具体的には、表6は、接眼レンズ系200の-1diopter合焦時の焦点距離f、レンズ全長TL、物体最大高Y、射出角度EXA、アイポイントEye_P、第2レンズG2の焦点距離f2_pl、第4レンズG4の焦点距離f4_pl、第3レンズG3の焦点距離f3、第5レンズG5の焦点距離f5、入射瞳位置EPD、及び第1レンズのアイポイント側の面の光線有効半径H12を示す。
【0068】
【0069】
図4は、接眼レンズ系200が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差図において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はe線(546.07nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差図において、実線はe線のサジタル像面、破線はe線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差図において、実線はe線の値を示す。各収差図から、接眼レンズ系200は諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることが明らかである。
【0070】
図5は、第3実施例における接眼レンズ系300のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。物体Oは接眼レンズ系300を通じて観察される観察物体である。物体Oは、例えば表示素子等である。カバー部材Pは、例えば保護硝子プレートである。接眼レンズ系300は、カバー部材P及び物体Oとともに光学系を形成する。
【0071】
接眼レンズ系300は、光軸に沿って、観察物体側からアイポイントEP側へ順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズG1と、負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する第3レンズG3と、負の屈折力を有する第4レンズG4と、正の屈折力を有する第5レンズG5とから構成される。
【0072】
第1レンズG1は、観察物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズから構成される。第1レンズG1をメニスカス形状にすることで、歪曲収差の補正に有利となる。第1レンズG1は、少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第1レンズG1の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0073】
第2レンズG2は、観察物体側に凹面を向けた負の樹脂レンズのメニスカスレンズから構成される。第2レンズG2と第1レンズG1との組み合わせによって色収差を良好に補正している。また、第2レンズG2を樹脂非球面レンズから構成することで、小型化及び低コスト化に寄与する。
【0074】
第3レンズG3は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。第3レンズG3は、アイポイントEPへと光線を無理なく向かわせることに寄与する。
【0075】
第4レンズG4は、観察物体側に凹面を向けた負の樹脂レンズの両凹レンズから構成される。第4レンズG4と第5レンズG5との組み合わせによって色収差を良好に補正することができる。第4レンズG4に樹脂非球面レンズを配置することにより、パワーを弱くし偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0076】
第5レンズG5は、正の屈折率を有する凸レンズから構成される。第5レンズG5より前段のレンズで発生し得る球面収差を抑えることができる。また、第3レンズG3とのパワーの差を小さくすることによって、パワーを分担し偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0077】
表7は、接眼レンズ系300のレンズデータを示す。表8は、接眼レンズ系300の非球面データを示す表である。
【0078】
【0079】
【0080】
表9は、接眼レンズ系300の諸元データを示す。具体的には、表9は、接眼レンズ系300の-1diopter合焦時の焦点距離f、レンズ全長TL、物体最大高Y、射出角度EXA、アイポイントEye_P、第2レンズG2の焦点距離f2_pl、第4レンズG4の焦点距離f4_pl、第3レンズG3の焦点距離f3、第5レンズG5の焦点距離f5、入射瞳位置EPD、及び第1レンズのアイポイント側の面の光線有効半径H12を示す。
【0081】
【0082】
図6は、接眼レンズ系300の無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差図において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はe線(546.07nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差図において、実線はe線のサジタル像面、破線はe線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差図において、実線はe線の値を示す。各収差図から、接眼レンズ系300は諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることが明らかである。
【0083】
図7は、第4実施例における接眼レンズ系400のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。物体Oは接眼レンズ系400を通じて観察される観察物体である。物体Oは、例えば表示素子等である。カバー部材Pは、例えば保護硝子プレートである。接眼レンズ系400は、カバー部材P及び物体Oとともに光学系を形成する。
【0084】
接眼レンズ系400は、光軸に沿って、観察物体側からアイポイントEP側へ順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズG1と、負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する第3レンズG3と、正の屈折力を有する第4レンズG4と、正の屈折力を有する第5レンズG5とから構成される。
【0085】
第1レンズG1は、正の屈折力を有する両凸レンズから構成される。第1レンズG1の少なくとも一面を非球面とすることで、歪曲収差の補正に有利になる。また、光の入射角度を抑えることで、周辺減光の低下を抑えることに貢献している。第1レンズG1は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第1レンズG1が少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0086】
第2レンズG2は、観察物体側に凹面を向けた負の樹脂レンズのメニスカスレンズから構成される。第2レンズG2と第1レンズG1との組み合わせによって色収差を良好に補正している。また、第2レンズG2を樹脂非球面レンズから構成することで、小型化及び低コスト化に寄与する。
【0087】
第3レンズG3は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。第3レンズG3は、アイポイントEPへと光線を無理なく向かわせることに寄与する。
【0088】
第4レンズG4は、観察物体側に凹面を向けた正の樹脂レンズのメニスカスレンズから構成される。第3レンズG3及び第5レンズG5で発生し得る収差を良好に補正する役割を果たしている。また、第4レンズG4を樹脂非球面レンズから構成することによって、主として収差のみを補正することに重点をおいて設計することができるため、パワーを弱くし偏芯誤差感度の軽減に寄与する。
【0089】
第5レンズG5は、正の屈折率を有する凸レンズから構成される。第5レンズG5より前段のレンズで発生し得る球面収差を抑えることができる。また、第3レンズG3とのパワーの差を小さくすることによって、パワーを分担し偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0090】
表10は、接眼レンズ系400のレンズデータを示す。表11は、接眼レンズ系400の非球面データを示す表である。
【0091】
【0092】
【0093】
表12は、接眼レンズ系400の諸元データを示す。具体的には、表12は、接眼レンズ系400の-1diopter合焦時の焦点距離f、レンズ全長TL、物体最大高Y、射出角度EXA、アイポイントEye_P、第2レンズG2の焦点距離f2_pl、第4レンズG4の焦点距離f4_pl、第3レンズG3の焦点距離f3、第5レンズG5の焦点距離f5、入射瞳位置EPD、及び第1レンズのアイポイント側の面の光線有効半径H12を示す。
【0094】
【0095】
図8は、接眼レンズ系400の無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差図において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はe線(546.07nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差図において、実線はe線のサジタル像面、破線はe線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差図において、実線はe線の値を示す。各収差図から、接眼レンズ系400は諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることが明らかである。
【0096】
図15は、第5実施例における接眼レンズ系800のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。物体Oは接眼レンズ系800を通じて観察される観察物体である。物体Oは、例えば表示素子等である。カバー部材Pは、例えば保護硝子プレートである。接眼レンズ系800は、カバー部材P及び物体Oとともに光学系を形成する。
【0097】
接眼レンズ系800は、光軸に沿って、観察物体側からアイポイントEP側へ順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズG1と、負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する第3レンズG3と、負の屈折力を有する第4レンズG4と、正の屈折力を有する第5レンズG5とから構成される。
【0098】
第1レンズG1は、正の屈折力を有する両凸レンズから構成される。第1レンズG1が非球面の面を有することによって、歪曲収差の補正に有利になる。また、レンズのパワーを維持したまま、アイポイント側の曲率半径を大きくする事により、製造難易度を低くし、低コスト化に寄与している。
【0099】
第2レンズG2は、観察物体側に凹面を向けた負の樹脂レンズのメニスカスレンズから構成される。第2レンズG2と第1レンズG1との組み合わせによって色収差を良好に補正している。また、第2レンズG2を樹脂非球面レンズから構成することで、小型化及び低コスト化に寄与する。
【0100】
第3レンズG3は、正の屈折力を有する両凸レンズから構成される。第1レンズG1と第3レンズG3との間のパワーの差を小さくすることによって、パワーを分担し偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0101】
第4レンズG4は、観察物体側に凹面を向けた負の樹脂レンズのメニスカスレンズから構成される。第4レンズG4は、第3レンズG3及び第5レンズG5で発生し得る収差を良好に補正する役割を果たしている。
【0102】
第5レンズG5は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。第5レンズG5より前段のレンズで発生し得る球面収差を抑えることができる。また、高屈折率のガラス材料を使用することで各光線に対して適切に収差補正をし、高視野角化を実現できる。
【0103】
表13は、接眼レンズ系800のレンズデータを示す。表14は、接眼レンズ系800の非球面データを示す表である。
【0104】
【0105】
【0106】
表15は、接眼レンズ系800の諸元データを示す。表15は、接眼レンズ系800の-1diopter合焦時の焦点距離f、レンズ全長TL、物体最大高Y、射出角度EXA、アイポイントEye_P、第2レンズG2の焦点距離f2_pl、第4レンズG4の焦点距離f4_pl、第3レンズG3の焦点距離f3、第5レンズG5の焦点距離f5、入射瞳位置EPD、及び第1レンズの観察側の面の光線有効半径H12を示す。
【0107】
【0108】
図16は、接眼レンズ系800の無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差図において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はe線(546.07nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差図において、実線はe線のサジタル像面、破線はe線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差図において、実線はe線の値を示す。各収差図から、接眼レンズ系800は諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることが明らかである。
【0109】
表16は、第1実施例から第5実施例の接眼レンズ系における、条件式(1)、(3)~(9)の各数式で計算される数値を示す。
【0110】
【0111】
上述したレンズ系が備える構成は任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用され得る。例えば、上記実施例による接眼レンズ系は条件式(1)~(9)、(1-1)、(3-1)、(8-1)及び(9-1)を満足するものとしているが、条件式(1)~(9)、(1-1)、(3-1)、(8-1)及び(9-1)のいずれか1つを満足するものであってもよく、これらの条件式の任意の組合せを満足するものであってもよい。
【0112】
以上に説明したとおり、第1実施例から第5実施例に係る接眼レンズ系が備えるレンズ構成によれば、視野角が高く光学性能が高い接眼レンズ系を提供することができる。上記の接眼レンズ系を映像を表示する表示装置や観察装置等の光学装置に適用した場合、没入感の高い映像を提供し得る。
【0113】
例えば光学装置の一例としての電子ビューファインダには、画像表示素子に表示した画像を拡大観察するための接眼レンズ系が設けられる。例えば撮像装置用の電子ビューファインダとしては、撮像装置の高機能化等に伴い、視野角が広く画像を大きく映し出し、かつ高い光学性能を持つ電子ビューファインダが求められている。特許文献1に記載の接眼レンズは、高解像力とされるレンズ系が記載されている。しかしながら、第2レンズの物体側のレンズ面の曲率半径と、第3レンズの観察側のレンズ面の曲率半径との差が小さく、高視野角化と小型化を両立させる場合、光学性能を維持できなくなるという課題がある。特許文献2には、約40度の視野角を持つとされるレンズ系が開示されている。しかしながら、没入感を得るには、より視野角を広くする必要があり、高視野角化と小型化の両立に課題がある。これに対し、上記実施形態に係る接眼レンズ系によれば、係る課題を軽減できる。
【0114】
次に、
図9から
図14に関連して、他の発明に係る接眼レンズ系の実施例を参考例として用いて、他の発明に係る実施形態を説明する。他の発明に係る接眼レンズ系は、下記項目A1から項目A5に記載の構成を備えてよい。
【0115】
[項目A1]
接眼レンズ系であって、
観察物体側からアイポイント側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズとを備え、
前記第1レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する、両凸レンズ又はメニスカスレンズを備え、
前記第2レンズは、アイポイント側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズを備え、
前記第3レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズを備え、
前記第4レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズを備え、
全系の焦点距離をf、前記第1レンズの観察物体側の面から前記第4レンズのアイポイント側の面までの光軸上の距離をTLとして、条件式
f / TL < 0.9
を満足し、
前記接眼レンズ系が備える任意の正の屈折力を有するレンズのd線を基準とした屈折率をndnとしたとき、少なくとも3 枚の正の屈折力のレンズが条件式
ndn > 1.8
を満足する接眼レンズ系。
[項目A2]
最終光学面から最大像高のマージナル光線と光軸との交点までの距離をアイポイントとした場合において前記アイポイント側の接眼レンズカバー部材の前記アイポイント側に向いた面から前記アイポイントまでの距離をEey_P、最大物体高をY、最大物体高の射出瞳上の射出角度をEXAとして、条件式
Y / TAN(EXA) < 16.5
Eey_P ≧ 20
を満足する項目A1に記載の接眼レンズ系。
[項目A3]
少なくとも2枚の非球面レンズを含む項目A1又は項目A2に記載の接眼レンズ系。
[項目A4]
前記第1レンズ及び前記第3レンズは非球面レンズであり、
前記第1レンズ群の非球面レンズの焦点距離をf1、前記第3レンズ群の非球面レンズの焦点距離をf3として、条件式
f1/f < 2
f3/f < 4
を満足する項目A1から項目A3のいずれか一項に記載の接眼レンズ系。
[項目A5]
前記第3レンズの焦点距離をf3、前記第4レンズの焦点距離をf4として、条件式
0.2 < f3/f4 < 2
を満足する項目A1から項目A4のいずれか一項に記載の接眼レンズ系。
[項目A6]
入射瞳位置をEPD、最大物体高をYとして、条件式
| EPD / Y | > 3.5
を満足する項目A1から項目A5のいずれか一項に記載の接眼レンズ系。
【0116】
上記のように、他の発明に係る接眼レンズ系は、観察物体側からアイポイント側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズとを備えてよい。第1レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する、両凸レンズ又はメニスカスレンズを備えてよい。第2レンズは、アイポイント側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズを備えてよい。第3レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズを備えてよい。第4レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズを備えてよい。全系の焦点距離をf、前記第1レンズの観察物体側の面から前記第4レンズのアイポイント側の面までの光軸上の距離をTLとして、条件式
f / TL < 0.9 ・・・(a1)
を満足してよい。
接眼レンズ系が備える任意の正の屈折力を有するレンズのd線を基準とした屈折率をndnとしたとき、少なくとも3 枚の正の屈折力のレンズが条件式
ndn > 1.8 ・・・(a2)
を満足してよい。
【0117】
条件式(a1)は、全体の焦点距離と接眼レンズ系全長の関係を規定している。条件式(a1)は、高視野角を達成するための条件となる。焦点距離が長くなって条件式(a1)の上限以上になると、レンズの直径が大きくなり、レンズ全体が大型化し、製造コストが増大する。また、高視野角の達成が難しくなる。一方、レンズ全長が短くなり条件式(a1)の上限以上になると、全系の屈折力が強くなり、収差補正が難しくなり、偏心誤差による性能劣化も大きくなる。
【0118】
さらに、条件式(a1-1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
f / TL < 0.76 ・・・(a1-1)
【0119】
条件式(a2)は、正の屈折力を持つレンズの屈折率を規定している。条件式(a2)は視野角に関する条件であり、条件式(a2)を満足することで視野角を大きくすることができる。
【0120】
最終光学面から最大像高のマージナル光線と光軸との交点までの距離をアイポイントとした場合においてアイポイント側の接眼レンズカバー部材の前記アイポイント側に向いた面からアイポイントまでの距離をEey_P、最大物体高をY、最大物体高の射出瞳上の射出角度をEXAとして、条件式
Y / TAN(EXA) < 16.5 ・・・(a3)
Eey_P ≧ 20 ・・・(a4)
を満足してよい。
【0121】
条件式(a3)は、最大物体高と最大物体高の射出瞳上の射出角度を規定している。条件式(3)を満足することで、視野角を大きくすることができる。これにより、接眼レンズ系を映像の表示装置に適用した場合には、映像に対する没入感が得られる。一方、条件式(a3)の上限以上になると、アイポイントが長く取れ、映像全体を瞬時に確認できるようになるが、没入感を得るのが容易でなくなる。
【0122】
さらに、条件式(a3-1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
Y / TAN(EXA) < 15 ・・・(a3-1)
【0123】
接眼レンズ系は、少なくとも2枚の非球面レンズを含んでよい。
【0124】
第1レンズ及び第3レンズは非球面レンズであってよい。第1レンズ群の非球面レンズの焦点距離をf1、前記第3レンズ群の非球面レンズの焦点距離をf3として、条件式
f1/f < 2 ・・・(a5)
f3/f < 4 ・・・(a6)
を満足してよい。
【0125】
条件式(a5)、(a6)は、第1レンズ及び第3レンズに配置された両面非球面レンズの焦点距離とレンズ全体の焦点距離の関係を規定している。条件式(a5)及び(a6)を満足することで、像面湾曲や非点収差を良好に補正することができる。
【0126】
第3レンズの焦点距離をf3、第4レンズの焦点距離をf4として、条件式
0.2 < f3/f4 < 2 ・・・(a7)
を満足してよい。
【0127】
条件式(a7)は、第3レンズと第4レンズの焦点距離の関係を規定している。条件式(a7)を満足することで、広視野角化に必要な屈折力を第3レンズと第4レンズとで分担することができ、軸上収差補正を良好に行うことができる。条件式(a7)を満足しない場合、広視野角化に必要な屈折力がどちらかのレンズに偏ってしまい、屈折力が強いレンズにおいて収差補正が難しくなるとともに、偏芯誤差による性能劣化が大きくなる。
【0128】
さらに、条件式(a7-1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
0.7 < f3/f4 < 1 ・・・(a7-1)
【0129】
入射瞳位置をEPD、最大物体高をYとして、条件式
| EPD / Y | > 3.5 ・・・(a8)
を満足してよい。
【0130】
条件式(a8)は、入射瞳位置と最大物体高の関係を規定している。条件式(a8)を満足することで、軸外収差の発生を良好に補正している。一方、条件式(a8)を満足しないと、最大物体高に対して射出瞳位置が小さくなりすぎるため、軸外光線の入射角が大きくなってしまい、軸外収差が発生し易くなる。また、光の射出角度が大きくなり、接眼レンズ系を表示装置に適用する場合は表示色の変化を招く。
【0131】
さらに、条件式(a8-1)を満足することで上述の効果がより顕著となる。
| EPD / Y | > 3 ・・・(a8-1)
【0132】
以上に説明したように、他の発明に係る一実施形態よれば、視野角が高く光学性能が高い接眼レンズ系を提供することができる。
【0133】
図9は、第1参考例における接眼レンズ系500のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。物体Oは接眼レンズ系500を通じて観察される観察物体である。物体Oは、例えば表示素子等である。カバー部材Pは、例えば保護硝子プレートである。接眼レンズ系500は、カバー部材P及び物体Oとともに光学系を形成する。
【0134】
接眼レンズ系500は、光軸に沿って観察物体側からアイポイントEP側へ順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズG1と、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズとから構成される。
【0135】
第1レンズG1は、正の屈折力を有するメニスカスレンズから構成される。第1レンズG1が非球面化することによって、歪曲収差の補正に有利になる。また、光の入射角度を抑えることで、周辺減光の低下を抑えることができる。第1レンズG1は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第1レンズG1の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0136】
第2レンズG2は、観察物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズから構成される。第2レンズG2と第1レンズG1との組み合わせによって色収差を良好に補正している。
【0137】
第3レンズG3は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。第3レンズG3は、アイポイントEPへと光線を無理なく向かわせることに寄与する。第3レンズG3は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第3レンズG3の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0138】
第4レンズG4は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。これにより、第4レンズG4より前段のレンズにて発生した球面収差の発生を抑えることができる。第4レンズG4は、少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第4レンズG4の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。また、第4レンズG4と第3レンズG3とのパワーの差を小さくすることによって、パワーを分担し偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0139】
表17は、接眼レンズ系500のレンズデータを示す。表18は、接眼レンズ系500の非球面データを示す表である。
【0140】
【0141】
【0142】
表19は、接眼レンズ系500の諸元データを示す。具体的には、表19は、接眼レンズ系500の-1diopter合焦時の焦点距離f、レンズ全長TL、物体最大高Y、射出角度EXA、アイポイントEye_P、第1レンズG1の焦点距離f1_pl、第3レンズG3の焦点距離f3、第4レンズの焦点距離f4、及び入射瞳位置EPDを示す。
【0143】
【0144】
図10は、接眼レンズ系500が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差図において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はe線(546.07nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差図において、実線はe線のサジタル像面、破線はe線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差図において、実線はe線の値を示す。各収差図から、接眼レンズ系500は諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることが明らかである。
【0145】
図11は、第2参考例における接眼レンズ系600のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。物体Oは接眼レンズ系600を通じて観察される観察物体である。物体Oは、例えば表示素子等である。カバー部材Pは、例えば保護硝子プレートである。接眼レンズ系600は、カバー部材P及び物体Oとともに光学系を形成する。
【0146】
接眼レンズ系600は、光軸に沿って観察物体側からアイポイントEP側へ順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズG1と、負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する第3レンズG3と、正の屈折力を有する第4レンズG4とから構成される。
【0147】
第1レンズG1は、正の屈折力を有する両凸レンズから構成される。これにより、接眼レンズ系600の小型化と高視野角化に有利となる。また、光の入射角度を抑えることで、周辺減光の低下を抑えることができる。第1レンズG1は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第1レンズG1の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0148】
第2レンズG2は、観察物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズから構成される。第2レンズG2と第1レンズG1との組み合わせによって色収差を良好に補正している。
【0149】
第3レンズG3は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。第3レンズG3は、アイポイントEPへ光線を無理なく向かわせることに寄与する。第3レンズG3は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第3レンズG3の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0150】
第4レンズG4は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。これにより、第4レンズG4より前段のレンズにて発生した球面収差の発生を抑えることができる。第4レンズG4は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第4レンズG4の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易となる。また、第4レンズG4と第3レンズG3とのパワーの差を小さくすることにより、パワーを分担し偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0151】
表20は、接眼レンズ系600のレンズデータを示す。表21は、接眼レンズ系600の非球面データを示す表である。
【0152】
【0153】
【0154】
表22は、接眼レンズ系600の諸元データを示す。具体的には、表22は、接眼レンズ系600の-1diopter合焦時の焦点距離f、レンズ全長TL、物体最大高Y、射出角度EXA、アイポイントEye_P、第1レンズG1の焦点距離f1_pl、第3レンズG3の焦点距離f3、第4レンズの焦点距離f4、及び入射瞳位置EPDを示す。
【0155】
【0156】
図12は、接眼レンズ系600が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差図において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はe線(546.07nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差図において、実線はe線のサジタル像面、破線はe線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差図において、実線はe線の値を示す。各収差図から、接眼レンズ系600は諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることが明らかである。
【0157】
図13は、第3参考例における接眼レンズ系700のレンズ構成を、カバー部材P、アイポイントEP及び物体Oとともに示す。物体Oは接眼レンズ系700を通じて観察される観察物体である。物体Oは、例えば表示素子等である。カバー部材Pは、例えば保護硝子プレートである。接眼レンズ系700は、カバー部材P及び物体Oとともに光学系を形成する。
【0158】
接眼レンズ系700は、光軸に沿って観察物体側からアイポイントEP側へ順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズG1と、負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する第3レンズG3と、正の屈折力を有する第4レンズG4とから構成される。
【0159】
第1レンズG1は、観察物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズから構成される。第1レンズG1をメニスカス形状にすることで、歪曲収差の補正に有利となる。第1レンズG1は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第1レンズG1の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0160】
第2レンズG2は、観察物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズから構成される。第2レンズG2と第1レンズG1との組み合わせによって色収差を良好に補正している。
【0161】
第3レンズG3は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。第3レンズG3は、アイポイントEPへ光線を無理なく向かわせることに寄与する。第3レンズG3は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第3レンズG3の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0162】
第4レンズG4は、観察物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズから構成される。これにより、第4レンズG4より前段のレンズにて発生した球面収差の発生を抑えることができる。第4レンズG4は少なくとも1面以上の非球面を有することが好ましい。第4レンズG4の少なくとも1面を非球面とすることで、高次の非点収差、球面収差、及び歪曲収差の補正が容易となる。また、第4レンズG4と第3レンズG3とのパワーの差を小さくすることにより、パワーを分担し偏芯誤差感度を軽減することができる。
【0163】
表23は、接眼レンズ系700のレンズデータを示す。表24は、接眼レンズ系700の非球面データを示す表である。
【0164】
【0165】
【0166】
表25は、接眼レンズ系700の諸元データを示す。具体的には、表25は、接眼レンズ系700の-1diopter合焦時の焦点距離f、レンズ全長TL、物体最大高Y、射出角度EXA、アイポイントEye_P、第1レンズG1の焦点距離f1_pl、第3レンズG3の焦点距離f3、第4レンズの焦点距離f4、及び入射瞳位置EPDを示す。
【0167】
【0168】
図14は、接眼レンズ系700が無限遠物体に合焦した状態での球面収差、非点収差、及び歪曲収差を示す。球面収差図において、一点鎖線はC線(656.27nm)、実線はe線(546.07nm)、破線はg線(435.84nm)の値を示す。非点収差図において、実線はe線のサジタル像面、破線はe線のメリディオナル像面の値を示す。歪曲収差図において、実線はe線の値を示す。各収差図から、接眼レンズ系700は諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることが明らかである。
【0169】
表26は、第1参考例から第3参考例の接眼レンズ系における、条件式(a1)、(a3)~(a8)の各数式で計算される数値を示す。
【0170】
【0171】
上述した接眼レンズ系が備える構成は任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用され得る。例えば、上記参考例による接眼レンズ系は条件式(a1)~(a8)、(a1-1)、(a3-1)、(a7-1)及び(a8-1)を満足するものとしているが、条件式(a1)~(a8)、(a1-1)、(a3-1)、(a7-1)及び(a8-1)のいずれか1つを満足するものであってもよく、これらの条件式の任意の組合せを満足するものであってもよい。
【0172】
以上に説明したとおり、第1参考例から第3参考例に係る接眼レンズ系が備えるレンズ構成によれば、視野角が高く光学性能が高い接眼レンズ系を提供することができる。上記の接眼レンズ系を映像を表示する表示装置や観察装置等の光学装置に適用した場合、没入感の高い映像を提供し得る。
【0173】
例えば光学装置の一例としての電子ビューファインダには、画像表示素子に表示した画像を拡大観察するための接眼レンズ系が設けられる。例えば撮像装置用の電子ビューファインダとしては、撮像装置の高機能化等に伴い、視野角が広く画像を大きく映し出し、かつ高い光学性能を持つ電子ビューファインダが求められている。上記特許文献1に記載の接眼レンズは、高解像力とされるレンズ系が記載されている。しかしながら、負レンズにプラスチックレンズを用いて軸外収差を補正しているために、屈折力が不足し小型化と広視野角化の両立に課題がある。上記特許文献2には、約40度の視野角を持つとされるレンズ系が開示されている。しかしながら、表示装置に適用した場合において没入感を得るには、より視野角を広くする必要があり、高視野角化と小型化の両立に課題がある。これに対し、上記参考例に係る接眼レンズ系によれば、係る課題を軽減できる。
【0174】
以上、実施形態並びに実施例及び参考例を挙げて説明したが、この上記の実施形態並びに実施例及び参考例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、及びアッベ数は、上記各実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0175】
上記の第1実施例から第5実施例及び第1参考例から第3参考例に関連して説明した上記実施形態に係る接眼レンズ系は、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置用の接眼レンズ系に適用できる。例えば、上記実施形態に係る接眼レンズ系は、撮像装置の電子ビューファインダ等の表示装置として適用できる。上記実施形態に係る接眼レンズ系を備える表示装置は、撮像装置に一体に組み込まれてよい。上記実施形態に係る接眼レンズ系を備える表示装置は、撮像装置と着脱可能に設けられてよい。
【0176】
図17は、上記実施形態に係るレンズ系を備える撮像装置2000の外観斜視図の一例を示す。
図18は、撮像装置2000の機能ブロックを示す図である。
【0177】
撮像装置2000は、撮像部2100と、レンズ部2200とを備える。撮像部2100は、イメージセンサ2120と、制御部2110と、メモリ2130と、指示部2162と、表示部2160と、通信部2170と、表示装置2180とを有する。表示装置2180は、例えば電子ビューファインダーである。表示装置2180は、上述した実施形態に係る接眼レンズ系を含む光学系を備える。表示装置2180は、接眼レンズ系を備える光学機器の一例である。
【0178】
イメージセンサ2120は、CCD又はCMOSにより構成されてよい。イメージセンサ2120は、レンズ部2200が有する撮像レンズ系2210を介して光を受光する。イメージセンサ2120は、撮像レンズ系2210を介して結像された光学像の画像データを制御部2110に出力する。
【0179】
制御部2110は、CPU又はMPUなどのマイクロプロセッサ、MCUなどのマイクロコントローラなどにより構成されてよい。メモリ2130は、コンピュータ可読可能な記録媒体でよく、SRAM、DRAM、EPROM、EEPROM、及びUSBメモリなどのフラッシュメモリの少なくとも1つを含んでよい。制御部2110は回路に対応する。メモリ2130は、制御部2110がイメージセンサ2120などを制御するのに必要なプログラム等を格納する。メモリ2130は、撮像装置2000の筐体の内部に設けられてよい。メモリ2130は、撮像装置2000の筐体から取り外し可能に設けられてよい。
【0180】
指示部2162は、撮像装置2000に対する指示をユーザから受け付けるユーザインタフェースである。表示部2160は、イメージセンサ2120により撮像され、制御部2110により処理された画像、撮像装置2000の各種設定情報などを表示する。表示部2160は、タッチパネルで構成されてよい。
【0181】
制御部2110は、イメージセンサ2120を制御する。制御部2110は、指示部2162等を通じて取得したユーザの指示を示す情報に基づいて、イメージセンサ2120に制御命令を出力することにより、イメージセンサ2120に撮像動作の制御を含む制御を実行する。制御部2110は、イメージセンサ2120により撮像された画像を取得する。制御部2110は、イメージセンサ2120から順次に取得した画像を表示装置2180に表示させる。制御部2110は、ユーザの指示に応じてイメージセンサ2120から取得した画像に画像処理を施してメモリ2130に格納する。
【0182】
通信部2170は、外部との通信を担う。通信部2170は、制御部2110が生成した情報を通信ネットワークを通じて外部に送信する。通信部2170は、通信ネットワークを通じて外部から受信した情報を制御部2110に提供する。
【0183】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0184】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0185】
100、200、300、400、500、600、700、800 接眼レンズ系
2000 撮像装置、2100 撮像部、2110 制御部、2120 イメージセンサ、2130 メモリ、2160 表示部、2162 指示部、2170 通信部、2180 表示装置、2200 レンズ部、2210 撮像レンズ系
【手続補正書】
【提出日】2021-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接眼レンズ系であって、
観察物体側からアイポイント側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正又は負の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズとからなり、
前記第1レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備え、
前記第2レンズは、アイポイント側に凸面を向けた負の屈折力を有する1枚の樹脂レンズのメニスカスレンズを備え、
前記第3レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備え、
前記第4レンズは、アイポイント側に凸面を向けた非球面に変曲点を有し、正又は負の屈折力を有する1枚の樹脂レンズのメニスカスレンズを備え、
前記第5レンズは、アイポイント側に凸面を向けた正の屈折力を有する1枚の両凸レンズ又はメニスカスレンズを備え、
全系の焦点距離をf、前記第1レンズの観察物体側の面から前記第5レンズのアイポイント側の面までの光軸上の距離をTLとして、条件式
f / TL < 0.9
を満足し、
前記接眼レンズ系が備える任意の正の屈折力を有するレンズのd線を基準とした屈折率をndnとしたとき、少なくとも3枚の正の屈折力を有するレンズのndnが条件式
ndn > 1.8
を満足する接眼レンズ系。
【請求項2】
最終光学面から最大像高のマージナル光線と光軸との交点までの距離をアイポイントとした場合において前記アイポイント側の接眼レンズカバー部材の前記アイポイント側に向いた面から前記アイポイントまでの距離をEey_P、最大物体高をY、最大物体高の射出瞳上の射出角度をEXAとして、条件式
Y / TAN(EXA) < 16.5
Eey_P ≧ 20
を満足する請求項1に記載の接眼レンズ系。
【請求項3】
前記第2レンズ及び前記第4レンズは、樹脂非球面レンズであり、
前記第2レンズの樹脂非球面レンズの焦点距離をf_2pl、前記第4レンズの樹脂非球面レンズの焦点距離をf_4plとして、条件式
| f_2pl / f | < 3.5
| f_4pl / f | > 1.5
を満足する請求項1又は2に記載の接眼レンズ系。
【請求項4】
前記第3レンズの焦点距離をf3、前記第5レンズの焦点距離をf5として、条件式
0.3 < f3 / f5 < 2
を満足する請求項1から3のいずれか一項に記載の接眼レンズ系。
【請求項5】
入射瞳位置をEPD、最大物体高をYとして、条件式
| EPD / Y | > 1.2
を満足する請求項1から4のいずれか一項に記載の接眼レンズ系。
【請求項6】
前記第1レンズのアイポイント側の面の最大物体高の光線有効半径をH12、前記第1レンズのアイポイント側の面の近軸曲率半径をR12として、条件式
| H12 / R12 | < 0.96
を満足する請求項1から5のいずれか一項に記載の接眼レンズ系。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の接眼レンズ系を備える光学機器。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の接眼レンズ系を備える撮像装置。