IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フルヤ金属の特許一覧

特開2022-58161スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体、その製造方法及びスパッタリングターゲットの回収方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058161
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体、その製造方法及びスパッタリングターゲットの回収方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20220404BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C23C14/34 C
B23K20/00 310L
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111783
(22)【出願日】2021-07-05
(62)【分割の表示】P 2021024010の分割
【原出願日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2020165872
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000136561
【氏名又は名称】株式会社フルヤ金属
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】丸子 智弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄
(72)【発明者】
【氏名】大友 将平
(72)【発明者】
【氏名】中村 紘暢
【テーマコード(参考)】
4E167
4K029
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AB03
4E167AB04
4E167AB05
4E167BA05
4E167BA09
4E167BA11
4E167BA13
4E167CB01
4K029BA02
4K029BA21
4K029BA43
4K029CA05
4K029DC03
4K029DC04
4K029DC05
4K029DC22
(57)【要約】
【課題】本開示は、曲げ強度の低いターゲットを用いた場合や、ターゲットとバッキングプレートとの線膨張係数の差が大きく異なる場合であっても、ターゲットの破損や剥離が抑制でき、不純物の揮発による汚染が抑制でき、ターゲット材として使われる高価な材料の損失を抑制しながら、ターゲット材の剥離回収を容易にすることができるスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体、その製造方法及びターゲットの回収方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、バッキングプレート1に厚さ2.0~15.0mmのターゲット2が接合されており、バッキングプレートは、プレート面3に深さ0.5~5.0mmの凹部4を有し、凹部にターゲットが嵌め込まれており、かつ、前記接合体は、ターゲットの外周側面5が、バッキングプレートの凹部内周側面6で絞められたカシメ構造を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッキングプレートに厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲットが接合されたスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体において、
前記バッキングプレートは、プレート面に深さ0.5~5.0mmの凹部を有し、
該凹部に前記スパッタリングターゲットが嵌め込まれており、かつ、
前記スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、前記スパッタリングターゲットの外周側面が、前記バッキングプレートの凹部内周側面で絞められたカシメ構造を有することを特徴とするスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項2】
前記スパッタリングターゲットの外周側面は凹凸部分を有し、
前記バッキングプレートの凹部内周側面は凹凸部分を有し、かつ、
前記外周側面の凹凸部分と前記凹部内周側面の凹凸部分とは、互いに嵌め込みあう構造となっていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項3】
前記バッキングプレートの凹部は、凹部開口面が凹部底面よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項4】
前記スパッタリングターゲットの底面が、前記バッキングプレートの前記凹部の凹部開口面よりも大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項5】
200~500℃において、前記バッキングプレートの線膨張係数が前記スパッタリングターゲットの線膨張係数より大きいことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項6】
前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に2.5mm以下の中間層を有し、該中間層は、Ni、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項7】
前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に10μm以下の中間層を有し、該中間層は、Ni、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる薄膜であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項8】
前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に1.0mm以下の中間層を有し、該中間層は、In、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項9】
前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に2層以上の中間層を有し、該中間層は、
2.5mm以下のNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせ、
10μm以下のNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる薄膜、または、
1.0mm以下のIn、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項10】
前記スパッタリングターゲットの材質がAl-Sc合金、Ru、Ru合金、Ir又はIr合金であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項11】
前記スパッタリングターゲットの材質がLi系酸化物、Co系酸化物、Ti系酸化物又はMg系酸化物であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項12】
前記バッキングプレートの材質がAl、Al合金、Cu、Cu合金、Fe又はFe合金であり、前記バッキングプレートの線膨張係数が30.0×10-6/℃以下であることを特徴とする請求項1~11のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項13】
前記スパッタリングターゲットの曲げ強度が500MPa以下であることを特徴とする請求項1~12のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項14】
前記バッキングプレートの凹部の平面の形状が円形又は正方形を含む長方形であり、前記バッキングプレートの凹部の直径又は辺の長さとスパッタリングターゲットの直径又は辺の長さとの関係が(数1)~(数5)を満たすことを特徴とする請求項1~13のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
(数1)DTG>DBP
(数2)DBP=DTG‐ΔD×C
(数3)ΔD=DBP×ΔT×CTEBP-DTG×ΔT×CTETG
(数4)DTG-ΔD×4.0≦DBP≦DTG-ΔD×0.5
(数5)CTEBP>CTETG
ただし、DBP、DTG、ΔD、C、T、ΔT、CTEBP及びCTETGはそれぞれ次のことを意味する。
BP:室温におけるバッキングプレートの凹部の直径又は辺(mm)
TG:室温におけるスパッタリングターゲットの直径又は辺(mm)
T:バッキングプレートを熱膨張させる温度(℃)(ただし、T>室温)
ΔT:T‐室温(℃)
CTEBP:温度Tにおけるバッキングプレートの線膨張係数(1/℃)
CTETG:温度Tにおけるスパッタリングターゲットの線膨張係数(1/℃)
C:係数(ただし、C=0.5~4.0)
ΔD:室温から温度Tまで昇温させたときのバッキングプレートとスパッタリングターゲットの熱膨張量の差(mm)
【請求項15】
厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲットとバッキングプレートを準備する工程1と、
前記バッキングプレートのプレート面に深さ0.5~5.0mmの凹部を形成する工程2と、
前記バッキングプレートを加熱して前記凹部を熱膨張させる工程3と、
熱膨張させた前記凹部に前記スパッタリングターゲットを嵌め込む工程4と、
前記バッキングプレートを冷却して、前記スパッタリングターゲットの外周側面が、前記バッキングプレートの凹部内周側面で絞められたカシメ構造を形成する工程5と、
を有することを特徴とするスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項16】
前記工程2と前記工程3の間又は前記工程3と前記工程4の間に、中間層となる材料を前記凹部に充填又はコーティングする工程6をさらに有することを特徴とする請求項15に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項17】
前記工程4と前記工程5の間に、前記スパッタリングターゲットの底面と前記バッキングプレートの前記凹部の底面とを拡散させるために、前記スパッタリングターゲットを押圧する工程7をさらに有することを特徴とする請求項15又は16に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項18】
少なくとも前記工程3、前記工程4及び前記工程5において、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方加圧焼結法(HIP)、放電プラズマ焼結法(SPS)及びホットプレートによる加熱法のうち少なくとも1つの方法を用いて行うことを特徴とする請求項15~17のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項19】
さらに前記工程7において、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方加圧焼結法(HIP)及び放電プラズマ焼結法(SPS)の少なくとも1つの方法を用いて行うことを特徴とする請求項17に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項20】
前記工程7において、10Pa以下の減圧雰囲気又は酸素濃度1000ppm以下の雰囲気とし、加熱温度を100~1000℃とし、かつ、押圧を0Pa以上80MPa以下の範囲とすることを特徴とする請求項17又は19に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項21】
前記工程5の後に、押圧又は加熱と押圧の工程及び冷却の工程を1組として1回行う又は2回以上繰り返し行うことを特徴とする請求項15~20のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項22】
請求項1~14のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を加熱して、前記バッキングプレートの前記凹部開口面が前記スパッタリングターゲットの底面よりも大きくなるまで熱膨脹させる工程Aと、
前記スパッタリングターゲットを前記バッキングプレートから取り外して、前記スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体から前記スパッタリングターゲットを回収する工程Bと、を有することを特徴とするスパッタリングターゲットの回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、HDD(ハードディスクドライブ)、半導体等の製造工程で使用されるスパッタリング装置に設置するための好適なスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体、その製造方法及びスパッタリングターゲットの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングターゲットをHDD、半導体等の製造工程で使用されるスパッタリング装置に設置するために、一般的には、バッキングプレートと呼ばれる部材にスパッタリングターゲットを接合したスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体が用いられる。スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体において、バッキングプレートを固定することによって、バッキングプレートを介してスパッタリングターゲットがスパッタリング装置に設置されることとなる。
【0003】
バッキングプレートは、スパッタリングターゲットを支持する部材であり、またプラズマに晒される事によるスパッタリングターゲットの温度の上昇を抑制するための冷却を担う部材であることから、銅系材料、アルミニウム系材料などの熱伝導の高い材料で形成される。また、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとは熱伝導のために密着性が維持されていなければならない。
【0004】
スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの接合は、一般的にボンディングと呼ばれる、インジウムやスズなどの低融点で真空における蒸気圧の低い材料をインサート材として使用する接合方法や、導電性を有する樹脂を用いて接合する方法が行われている。
【0005】
しかし、スパッタリングターゲットの温度が、インサート材として使用しているインジウムやスズなどの融点より上昇してしまうと、インジウムやスズが揮発することにより成膜した膜に不純物として混入することがあり、高純度が要求される用途においては致命的な問題となる。
【0006】
ボンディングの問題を解決するために、インサート材となる低融点金属を使用せずにスパッタリングターゲットとバッキングプレートに向かい合わせの圧力を掛け、温度を上げた状態で時間を掛けて拡散接合を行う技術がある(例えば、特許文献1~3を参照。)。
【0007】
特許文献1では、耐力15~20kgf/mmの耐力15~20kgf/mm耐力15~20kgf/mmタンタルからなるスパッタリングターゲットに対してバッキングプレートの耐力がスパッタリングターゲットの耐力よりも同じ又は高い材料とし、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとを拡散接合した組立体とすることにより、熱膨張と収縮によって生じるスパッタリングターゲットの反りの方向を制御していることが開示されている。
【0008】
特許文献2では、1000℃以上の融点を有するターゲット材と、該ターゲット材の融点よりも低い融点を有する金属または合金から選択される1種以上のインサート材と、バッキングプレートとを固相拡散接合することで100%接合率の高い密着性と高い接合強度が得られることが開示されている。
【0009】
特許文献3では、スパッタリングターゲットの全面を埋め込むサンドイッチ構造とした後に、熱間等静水圧圧縮(HIP)や単軸熱間圧縮(UHP)で400-600℃に加熱圧縮を施して拡散接合させ、その後、スパッタリングターゲットとバッキングプレートを削り出すことでアセンブリを作製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015-183258号公報
【特許文献2】特開平06-108246号公報
【特許文献3】特表2014-511436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載の発明のように、曲げ強度の低い材料で形成されたスパッタリングターゲットの場合、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの線膨張係数の差が大きく異なると、高温で拡散接合したのち冷却して熱収縮したときにスパッタリングターゲットが破損することがある。そのため、拡散接合を低温で行うこともあるが、拡散接合しないか十分な強度が得られない。
【0012】
また、線膨張係数の差が大きく異なるスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを、加熱と加圧によって拡散接合のみ行っても、スパッタリングターゲットの使用時において、温度の上昇下降を繰り返すと接合界面に疲労が蓄積して破壊し、剥離することがある。
【0013】
また、特許文献2に記載の発明では、スパッタリングターゲットの使用時において、温度がインサート材の融点まで上昇するとインサート材が溶融されてスパッタリングターゲットが剥離することもある。この様な傾向は、大型のターゲットを使用し、高純度を要求される半導体製造で発生しやすい。
【0014】
また、線膨張係数の差を緩和するためにスパッタリングターゲットとバッキングプレートの中間付近の線膨張係数を持つインサート材を入れるなどの応力を緩和させる手段もあるが、ボンディングによって金属接合したときや導電性樹脂を使用して接合したときと同様に、インサート材が揮発し、不純物の混入の問題が解決されない。
【0015】
また、特許文献3に記載の発明では、スパッタリングターゲットとバッキングプレートは強固な拡散接合が形成されるまで行われるため、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの線膨張係数の差が大きく、かつ、スパッタリングターゲットの材質によっては、スパッタリングターゲットの拡散接合工程において、スパッタリングターゲットの割れが発生することがある。
【0016】
そこで、本開示の目的は、曲げ強度の低いスパッタリングターゲットを用いた場合や、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの線膨張係数の差が大きく異なる場合であっても、スパッタリングターゲットの破損や剥離が抑制でき、また、不純物の揮発による汚染が抑制でき、さらには、ターゲット材として使われる高価な材料の損失を抑制しながら、ターゲット材の剥離回収を容易にすることができるスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体、その製造方法及びスパッタリングターゲットの回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、鋭意検討した結果、カシメと拡散接合を行うことにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、バッキングプレートに厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲットが接合されたスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体において、前記バッキングプレートは、プレート面に深さ0.5~5.0mmの凹部を有し、該凹部に前記スパッタリングターゲットが嵌め込まれており、かつ、前記スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、前記スパッタリングターゲットの外周側面が、前記バッキングプレートの凹部内周側面で絞められたカシメ構造を有することを特徴とする。
【0018】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記スパッタリングターゲットの外周側面は凹凸部分を有し、前記バッキングプレートの凹部内周側面は凹凸部分を有し、かつ、前記外周側面の凹凸部分と前記凹部内周側面の凹凸部分とは、互いに嵌め込みあう構造となっていることが好ましい。スパッタリングターゲットの外周側面とバッキングプレートの凹部内周側面とのカシメによる接合強度を向上させることに加え、スパッタリングターゲット及びバッキングプレートの厚さ方向に対してもカシメによる接合強度を向上させることができ、その結果、スパッタリングターゲットの使用時の接合強度を保ち、熱伝導を良好に保つことができる。
【0019】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記バッキングプレートの凹部は、凹部開口面が凹部底面よりも小さいことが好ましい。スパッタリングターゲットの外周側面とバッキングプレートの凹部内周側面とのカシメによる接合強度を向上させることに加え、スパッタリングターゲット及びバッキングプレートの厚さ方向に対してもカシメによる接合強度を向上させることができ、その結果、スパッタリングターゲットの使用時の接合強度を保ち、熱伝導を良好に保つことができる。
【0020】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では前記スパッタリングターゲットの底面が、前記バッキングプレートの凹部の凹部開口面よりも大きいことが好ましい。スパッタリングターゲットの外周側面とバッキングプレートの凹部内周側面とのカシメによる接合強度を向上させることによってスパッタリングターゲットの使用時の接合強度を保ち、熱伝導を良好に保つことができる。
【0021】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、200~500℃において、前記バッキングプレートの線膨張係数が前記スパッタリングターゲットの線膨張係数より大きいことが好ましい。加熱時においてバッキングプレートが膨張することにより、バッキングプレートの凹部にスパッタリングターゲットを充填することができるとともに、冷却時においてバッキングプレートが収縮してバッキングプレートの凹部内周側面によってスパッタリングターゲットの外周側面をカシメすることによりスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を形成することができる。
【0022】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に2.5mm以下の中間層を有し、該中間層は、Ni、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることが好ましい。中間層を設けることでスパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部底面との接合強度を向上させるとともに、密着性が向上して熱伝導を良好に保つことができる。また、バッキングプレートの凹部に中間層を設けていることから、スパッタリングターゲットで中間層は覆われるため、中間層の材質が揮発して不純物となって基板に付着することを抑制することができる。
【0023】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に10μm以下の中間層を有し、該中間層は、Ni、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる薄膜であることが好ましい。中間層を設けることでスパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部底面との接合強度を向上させるとともに、密着性が向上して熱伝導を良好に保つことができる。また、バッキングプレートの凹部に中間層を設けていることから、スパッタリングターゲットで中間層は覆われるため、中間層の材質が揮発して不純物となって基板に付着することを抑制することができる。
【0024】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に1.0mm以下の中間層を有し、該中間層は、In、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることが好ましい。中間層を設けることでスパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部底面との接合強度を向上させるとともに、密着性が向上して熱伝導を良好に保つことができる。また、バッキングプレートの凹部に中間層を設けていることから、スパッタリングターゲットで中間層は覆われるため、中間層の材質が揮発して不純物となって基板に付着することを抑制することができる。
【0025】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に2層以上の中間層を有し、該中間層は、2.5mm以下のNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせ、10μm以下のNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる薄膜、または、1.0mm以下のIn、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることが好ましい。中間層を2層以上設けることでスパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部底面との接合強度を向上させるとともに、密着性が向上して熱伝導を良好に保つことができる。また、バッキングプレートの凹部に中間層を設けていることから、スパッタリングターゲットで中間層は覆われるため、中間層の材質が揮発して不純物となって基板に付着することを抑制することができる。
【0026】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記スパッタリングターゲットの材質がAl-Sc合金、Ru、Ru合金、Ir又はIr合金であることが好ましい。1000℃以上の高融点材料でもスパッタリングターゲットの反りや割れを抑制しつつ、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合強度を向上させることができる。
【0027】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記スパッタリングターゲットの材質がLi系酸化物、Co系酸化物、Ti系酸化物又はMg系酸化物であることが好ましい。1000℃以上の高融点材料でもスパッタリングターゲットの反りや割れを抑制しつつ、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合強度を向上させることができる。
【0028】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記バッキングプレートの材質がAl、Al合金、Cu、Cu合金、Fe又はFe合金であり、前記バッキングプレートの線膨張係数が30.0×10-6/℃以下であることが好ましい。バッキングプレートの熱伝導性が良いものを用いることで、加熱時においてバッキングプレートが膨張し、バッキングプレートの凹部にスパッタリングターゲットを挿入することができるとともに、冷却時においてバッキングプレートが収縮し、バッキングプレートの凹部内周側面によってスパッタリングターゲットの外周側面をカシメすることにより接合体を形成することができる。
【0029】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記スパッタリングターゲットの曲げ強度が500MPa以下である形態を包含する。スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合体は、曲げ強さが弱いスパッタリングターゲットにも適用できる。
【0030】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記バッキングプレートの凹部の平面の形状が円形又は正方形を含む長方形であり、前記バッキングプレートの凹部の直径又は辺の長さとスパッタリングターゲットの直径又は辺の長さとの関係が(数1)~(数5)を満たすことが好ましい。
(数1)DTG>DBP
(数2)DBP=DTG‐ΔD×C
(数3)ΔD=DBP×ΔT×CTEBP-DTG×ΔT×CTETG
(数4)DTG-ΔD×4.0≦DBP≦DTG-ΔD×0.5
(数5)CTEBP>CTETG
ただし、DBP、DTG、ΔD、C、T、ΔT、CTEBP及びCTETGはそれぞれ次のことを意味する。
BP:室温におけるバッキングプレートの凹部の直径又は辺(mm)
TG:室温におけるスパッタリングターゲットの直径又は辺(mm)
T:バッキングプレートを熱膨張させる温度(℃)(ただし、T>室温)
ΔT:T‐室温(℃)
CTEBP:温度Tにおけるバッキングプレートの線膨張係数(1/℃)
CTETG:温度Tにおけるスパッタリングターゲットの線膨張係数(1/℃)
C:係数(ただし、C=0.5~4.0)
ΔD:室温から温度Tまで昇温させたときのバッキングプレートとスパッタリングターゲットの熱膨張量の差(mm)
スパッタリングターゲットの外周側面とバッキングプレートの凹部内周側面とのカシメによってスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを接合するときに、スパッタリングターゲットの割れや反りを抑制することができる。
【0031】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法は、厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲットとバッキングプレートを準備する工程1と、前記バッキングプレートのプレート面に深さ0.5~5.0mmの凹部を形成する工程2と、前記バッキングプレートを加熱して前記凹部を熱膨張させる工程3と、熱膨張させた前記凹部に前記スパッタリングターゲットを嵌め込む工程4と、前記バッキングプレートを冷却して、前記スパッタリングターゲットの外周側面が、前記バッキングプレートの凹部内周側面で絞められたカシメ構造を形成する工程5と、を有することを特徴とする。バッキングプレートの凹部内周側面によってスパッタリングターゲットの外周側面をカシメすることによりスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を製造することができる。
【0032】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法では、前記工程2と前記工程3の間又は前記工程3と前記工程4の間に、中間層となる材料を前記凹部に充填又はコーティングする工程6をさらに有することが好ましい。スパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部底面との接合強度を向上させ、密着性が向上して熱伝導を良好に保つことができるスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を製造することができる。
【0033】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法では、前記工程4と前記工程5の間に、前記スパッタリングターゲットの底面と前記バッキングプレートの前記凹部の底面とを拡散させるために、前記スパッタリングターゲットを押圧する工程7をさらに有することが好ましい。スパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部底面を拡散させることにより、スパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部底面とを全体にわたって接合させ、密着性が向上して熱伝導を効率よく行わせることができる。
【0034】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法では、少なくとも前記工程3、前記工程4及び前記工程5において、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方加圧焼結法(HIP)、放電プラズマ焼結法(SPS)及びホットプレートによる加熱法のうち少なくとも1つの方法を用いて行うことが好ましい。スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの接合をより確実に行い、密着性が向上して熱伝導を効率よく行うことができる。
【0035】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法では、前記工程7において、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方加圧焼結法(HIP)及び放電プラズマ焼結法(SPS)の少なくとも1つの方法を用いて行うことが好ましい。スパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部底面を拡散させることにより、スパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部底面とを全体にわたって接合させ、密着性が向上して熱伝導を効率よく行わせることができる。
【0036】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法では、前記工程7において、10Pa以下の減圧雰囲気又は酸素濃度1000ppm以下の雰囲気とし、加熱温度を100~1000℃とし、かつ、押圧を0Pa以上80MPa以下の範囲とすることが好ましい。スパッタリングターゲットの酸素含有量を抑制することができる。
【0037】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法では、前記工程5の後に、押圧又は加熱と押圧の工程及び冷却の工程を1組として1回行う又は2回以上繰り返し行うことが好ましい。スパッタリングターゲットの反りを抑制しつつ、スパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部の底面との接合強度をより向上させることができ、密着性が向上して熱伝導を効率よく行うことができる。
【0038】
本発明に係るスパッタリングターゲットの回収方法は、本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を加熱して、前記バッキングプレートの前記凹部開口面が前記スパッタリングターゲットの底面よりも大きくなるまで熱膨脹させる工程Aと、前記スパッタリングターゲットを前記バッキングプレートから取り外して、前記スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体から前記スパッタリングターゲットを回収する工程Bと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本開示は、曲げ強度の低いスパッタリングターゲットを用いた場合や、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの線膨張係数の差が大きく異なる場合であっても、スパッタリングターゲットの破損や剥離が抑制でき、また、不純物の揮発による汚染が抑制でき、さらには、ターゲット材として使われる高価な材料の損失を抑制しながら、ターゲット材の剥離回収を容易にすることができるスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体、その製造方法及びスパッタリングターゲットの回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本実施形態に係る円板状のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の平面概略図である。
図2】第1例のA‐A断面概略図である。
図3】本実施形態に係る長方形板状のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の平面概略図である。
図4】第2例のA‐A断面概略図である。
図5】第3例のA‐A断面概略図である。
図6】第4例のA‐A断面概略図である。
図7】第5例のA‐A断面概略図である。
図8】第6例のA‐A断面概略図である。
図9】第7例のA‐A断面概略図である。
図10】第8例のA‐A断面概略図である。
図11】本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造工程を説明するための第1の概略工程図である。
図12】本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造工程を説明するための第2の概略工程図である。
図13】本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造工程を説明するための第3の概略工程図である。
図14】本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造工程を説明するための第4の概略工程図である。
図15】第2例の製造方法の工程の一部を示す概略工程図である。
図16】第3例の製造方法の工程の一部を示す概略工程図である。
図17】第4例の製造方法の工程の一部を示す概略工程図である。
図18】第5例の製造方法の工程の一部を示す概略工程図である。
図19】第6例の製造方法の工程の一部を示す概略工程図である。
図20】実施例1におけるカシメ、拡散部位を示す画像である。
図21】実施例2におけるカシメ、拡散部位を示す画像である。
図22】比較例1における接合結果を示す画像である。
図23】比較例2における接合結果を示す画像である。
図24】比較例3における接合結果を示す画像である。
図25】比較例4における接合結果を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以降、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。図中、各接合体において、同一名称の部位には、形状によらず、同一の符号を付した。
【0042】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を説明する。本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体100は、円板形状のバッキングプレート1に円板形状の厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲット2が接合されたスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体において、バッキングプレート1は、プレート面3に深さ0.5~5.0mmの凹部4を有し、凹部4にスパッタリングターゲット2が嵌め込まれており、かつ、スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体100は、スパッタリングターゲット2の外周側面5が、バッキングプレート1の凹部内周側面6で絞められたカシメ構造を有する。ここで、カシメ構造は、凹部内周側面6が外周側面5を押圧した状態となっている構造をいう。この構造は、少なくとも、外周側面5と凹部内周側面6との静止摩擦を生じさせ、バッキングプレート1にスパッタリングターゲット2が固定されている。例えば、本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体100では、スパッタリングターゲット2の底面9が、バッキングプレート1の凹部4の凹部開口面21よりも大きいことが好ましく、カシメ構造を有することができる。凹部開口面21は、バッキングプレート1のプレート面3に接する面の延長面であって、凹部4の開口を覆う仮想面のことである。ここで、スパッタリングターゲット2の底面9とバッキングプレート1の凹部4の凹部開口面21とは、加工精度の範囲内において、相似形の関係を有することが好ましい。
【0043】
凹部4は、凹部底面7と凹部内周側面6とを有する。凹部底面7はプレート面3又はバッキングプレート1の裏面と平行な平坦面であることが好ましい。凹部4の深さが0.5mm未満であると、凹部4にスパッタリングターゲット2が嵌め込まれた状態であって、スパッタリングターゲット2の外周側面5をバッキングプレート1の凹部内周側面6でカシメによって接合したときに接合強度が不足し、スパッタリングターゲット2がバッキングプレート1から剥離しやすい。一方、凹部4の深さが5mmを超えると、スパッタリングターゲット2の外周側面5をバッキングプレート1の凹部内周側面6でカシメによって接合したときに凹部内周側面6からの押圧が強すぎて、スパッタリングターゲットに割れや反りが発生しやすい。バッキングプレート1のプレート面3及び裏面は、電荷集中が生じない範囲で凹凸又は傾斜を有していてもよいが、それぞれ平坦面でありかつ平行関係を有することが好ましい。
【0044】
スパッタリングターゲット2の厚さは、2.0~15.0mmである。スパッタリングターゲット2の厚さが、2.0mm未満であると、スパッタリングターゲット2の表面(スパッタ面ともいう。)がバッキングプレート1のプレート面3よりも低くなる場合があり、15.0mmを超えると、バッキングプレート1とスパッタリングターゲット2の接合強度が不足する場合がある。プレート面3とスパッタ面とは平行であることが好ましい。バッキングプレート1の厚さは、例えば、3.0~40.0mmである。
【0045】
図1及び図2では、円板形状のバッキングプレート1に円板形状のスパッタリングターゲット2が接合されている形態を示したが、図3に示すように長方形のバッキングプレート1に長方形のスパッタリングターゲット2が接合されている形態であってもよい。B‐B断面は、図2に示したA-A断面と同様の形状を有する。また、長方形の形状には正方形の形状が包含される。
【0046】
図4又は図5に示すように、本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体200,300では、スパッタリングターゲット2の外周側面5は凹凸部分8aを有し、バッキングプレート1の凹部内周側面6は凹凸部分8bを有し、かつ、外周側面5の凹凸部分8aと凹部内周側面6の凹凸部分8bとは、互いに嵌め込みあう構造となっていることが好ましい。スパッタリングターゲット2の外周側面5とバッキングプレート1の凹部内周側面6とのカシメによる接合強度を向上させることに加え、スパッタリングターゲット2及びバッキングプレート1の厚さ方向に対してもカシメによる接合強度を向上させることができる。その結果、スパッタリングターゲット2の使用時の接合強度を保ち、熱伝導を良好に保つことができる。また、スパッタリングターゲット2の外周側面の周方向及び厚さ方向とバッキングプレートの凹部内周側面の周方向及び厚さ方向のカシメによる接合強度が十分であれば、スパッタリングターゲットの底面9とバッキングプレートの凹部底面7との接合強度は意図的に弱めることもできるため、スパッタリングターゲットの使用後において、バッキングプレートからスパッタリングターゲットの剥離、回収を容易に行うことができる。
【0047】
図4に示すように外周側面5の凹凸部分8aの断面形状が、凹形状の三角形であるとき、凹部内周側面6の凹凸部分8bの断面形状は、凸形状の三角形とする。凹形状の三角形と凸形状の三角形とは表面が接面し合う関係であることが好ましい。また、図5に示すように外周側面5の凹凸部分8aの断面形状が、凹形状の四角形であるとき、凹部内周側面6の凹凸部分8bの断面形状は、凸形状の四角形とする。凹形状の四角形と凸形状の四角形とは表面が接面し合う関係であることが好ましい。上記形態のほか、凹形状の半円形と凸形状の半円形の形態、凹形状の半楕円形と凸形状の半楕円形の形態であってもよい。また、凹及び凸の関係は、スパッタリングターゲット側とバッキングプレート側において、逆の関係であってもよい。さらに、外周側面5の凹凸部分8a及び凹部内周側面6の凹凸部分8bは、それぞれの周方向の全周にわたって設けられた形態、又は、それぞれの周方向の一部分に設けられた形態のいずれであってもよい。さらに外周側面5の凹凸部分8a及び凹部内周側面6の凹凸部分8bは、凹部4の深さ方向に沿って2列以上設けてもよい。
【0048】
図6図8に示すように、本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体400,500,600では、バッキングプレート1の凹部4は、凹部開口面21が凹部底面7よりも小さいことが好ましい。スパッタリングターゲット2の外周側面5とバッキングプレート1の凹部内周側面6とのカシメによる接合強度を向上させることに加え、スパッタリングターゲット2及びバッキングプレート1の厚さ方向に対してもカシメによる接合強度を向上させることができる。その結果、スパッタリングターゲット2の使用時の接合強度を保ち、熱伝導を良好に保つことができる。また、スパッタリングターゲット2の外周側面5とバッキングプレート1の凹部内周側面6とのカシメによる接合強度が十分であれば、スパッタリングターゲット2の底面9とバッキングプレート1の凹部底面7との接合強度は意図的に弱めることもできるため、スパッタリングターゲット2の使用後において、バッキングプレート1からスパッタリングターゲット2の剥離、回収を容易に行うことができる。
【0049】
図6に示すように、外周側面5の断面形状が凹形状の三角形の凹部22を有するとき、凹部内周側面6の断面形状が凸形状の三角形の凸部23を有し、凸部23によって、凹部4の凹部開口面21が凹部底面7よりも小さくなっている。凹部22と凸部23とは表面が接面し合う関係であることが好ましい。図6では、凸部23によって、凹部内周側面6の断面形状が凹部4の深さ方向に沿って、全体が傾斜している形態を示した。また、図7では、図6の変形例として、凸部23によって、凹部内周側面6の断面形状が凹部4の深さ方向に沿って、一部が傾斜している形態を示した。また、図8に示すように、外周側面5の断面形状が凹形状の四角形の凹部22を有するとき、凹部内周側面6の断面形状が凸形状の四角形の凸部23を有し、凸部23によって、凹部4の凹部開口面21が凹部底面7よりも小さくなっている。凹部22と凸部23とは表面が接面し合う関係であることが好ましい。凹部22と凸部23とは、凹部開口面21が凹部底面7よりも小さいことを満たす限りにおいて、形状を種々変形してもよい。また、凹及び凸の関係は、スパッタリングターゲット側とバッキングプレート側において、逆の関係であってもよい。さらに、凹部22と凸部23とは、それぞれの周方向の全周にわたって設けられた形態、又は、それぞれの周方向の一部分に設けられた形態のいずれであってもよい。
【0050】
本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、200~500℃において、バッキングプレート1の線膨張係数がスパッタリングターゲット2の線膨張係数より大きいことが好ましい。200~500℃において、バッキングプレート1の線膨張係数がスパッタリングターゲット2の線膨張係数より小さいと、スパッタリングターゲット2の方がバッキングプレート1より加熱による膨張や冷却による収縮の範囲が大きくなり、バッキングプレート1によってスパッタリングターゲット2をカシメによって接合することが難しくなる場合がある。バッキングプレート1の線膨張係数がスパッタリングターゲット2の線膨張係数より大きいと、スパッタリングターゲット2よりバッキングプレート1の方がより膨張・収縮の幅が大きくなり、同じ温度で加熱したときにバッキングプレート1の凹部4の方がスパッタリングターゲット2より膨張し、同じ温度で冷却したときにバッキングプレート1の凹部4の方がスパッタリングターゲット2より収縮する。
【0051】
図9に示すように、本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体700では、スパッタリングターゲット2とバッキングプレート1の界面に2.5mm以下の中間層24を有し、中間層24は、Ni、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることが好ましい。中間層24によってスパッタリングターゲット2とバッキングプレート1の線膨張係数の差を緩和することで加熱による膨張や冷却による収縮の繰り返しによるスパッタリングターゲット2の破損や反りをより抑制することができる。また、中間層24を設けることでスパッタリングターゲット2の底面9とバッキングプレートの凹部底面7との接合強度を向上させるとともに、密着性が向上して熱伝導を良好に保つことができる。また、バッキングプレート1の凹部4に中間層24を設けていることから、スパッタリングターゲット2で中間層24は覆われるため、中間層24の材質が揮発して不純物となって基板に付着することを抑制することができる。中間層24についてNi、Cr、Al、Cuの元素を選択した理由は、密着性、熱伝導及び線膨張係数の観点から好適だからである。中間層24が板材である場合、板材が2.5mmより厚いとバッキングプレート1の凹部4をより深く設けなければならないため、バッキングプレート1の厚みを増やさなければならないことが発生する場合がある。中間層24が粉末層である場合、加熱によって、粉末の状態である形態、粉末が焼結した形態、又は粉末が加熱によって溶融した形態がある。なお、粉末が加熱によって溶融した形態は、中間層24が板材である形態と類似する。中間層24は、スパッタリングターゲット2の底面9とバッキングプレートの凹部底面7との間に設けることが好ましいが、これに加えてさらに、スパッタリングターゲット2の外周側面5とバッキングプレートの凹部4の凹部内周側面6との界面に設けてもよい。
【0052】
図9に示した形態と同様に、本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、スパッタリングターゲット2とバッキングプレート1の界面に10μm以下の中間層24を有し、中間層24は、Ni、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる薄膜であることが好ましい。中間層24によってスパッタリングターゲット2とバッキングプレート1の線膨張係数の差を緩和することで加熱による膨張や冷却による収縮の繰り返しによるスパッタリングターゲット2の破損や反りをより抑制することができる。中間層24の膜厚が10μmより厚くても中間層24を形成する時間を要するだけであり、中間層24としての効果は10μm以下のものとあまり効果が変わらない。また、中間層24を設けることでスパッタリングターゲット2の底面9とバッキングプレートの凹部底面7との接合強度を向上させるとともに、密着性が向上して熱伝導を良好に保つことができる。また、バッキングプレート1の凹部4に中間層24を設けていることから、スパッタリングターゲット2で中間層24は覆われるため、中間層24の材質が揮発して不純物となって基板に付着することを抑制することができる。中間層24についてNi、Cr、Al、Cuの元素を選択した理由は、密着性、熱伝導及び線膨張係数の観点から好適だからである。薄膜は、スパッタリングによる薄膜であることが好ましく、バッキングプレートの凹部底面7に成膜することが好ましい。また、厚さ10μm以下の箔でもよい。中間層24は、スパッタリングターゲット2の底面9とバッキングプレートの凹部底面7との間に設けることが好ましいが、これに加えてさらに、スパッタリングターゲット2の外周側面5とバッキングプレートの凹部4の凹部内周側面6との界面に設けてもよい。
【0053】
図9に示した形態と同様に、本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、スパッタリングターゲット2とバッキングプレート1の界面に1.0mm以下の中間層24を有し、中間層24は、In、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることが好ましい。中間層24によってスパッタリングターゲット2とバッキングプレート1の線膨張係数の差を緩和することで加熱による膨張や冷却による収縮の繰り返しによるスパッタリングターゲット2の破損や反りをより抑制することができる。また、中間層24を設けることでスパッタリングターゲット2の底面9とバッキングプレートの凹部底面7との接合強度を向上させるとともに、密着性が向上して熱伝導を良好に保つことができる。また、バッキングプレート1の凹部4に中間層24を設けていることから、スパッタリングターゲット2で中間層24は覆われるため、中間層24の材質が揮発して不純物となって基板に付着することを抑制することができる。中間層24についてIn、Znの元素を選択した理由は、密着性、熱伝導及び線膨張係数の観点から好適だからである。中間層24が板材である場合、板材が1.0mmより厚いとバッキングプレート1の凹部をより深く設けなければならないため、バッキングプレート1の厚みを増やさなければならないことが発生する場合がある。中間層24が粉末層である場合、加熱によって、粉末の状態である形態、粉末が焼結した形態、又は粉末が加熱によって溶融した形態がある。なお、粉末が加熱によって溶融した形態は、中間層24が板材である形態と類似する。中間層24は、スパッタリングターゲット2の底面9とバッキングプレートの凹部底面7との間に設けることが好ましいが、これに加えてさらに、スパッタリングターゲット2の外周側面5とバッキングプレートの凹部4の凹部内周側面6との界面に設けてもよい。
【0054】
図10に示すように、本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体800は、スパッタリングターゲット2とバッキングプレート1の界面に2層の中間層24を有し、中間層24aは、2.5mm以下のNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせ、10μm以下のNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる薄膜、または、1.0mm以下のIn、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせのいずれかからなり、中間層24bは、2.5mm以下のNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせ、10μm以下のNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる薄膜、または、1.0mm以下のIn、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせのいずれかからなることが好ましい。中間層24によってスパッタリングターゲット2とバッキングプレート1の線膨張係数の差を緩和することで加熱による膨張や冷却による収縮の繰り返しによるスパッタリングターゲット2の破損や反りをより抑制することができる。バッキングプレート1との界面に設置された中間層24aをNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金、In、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる各種形態の材料で形成する理由は、密着性、熱伝導及び線膨張係数の観点から好適だからである。また、スパッタリングターゲット2との界面に設置された中間層24bをNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金、In、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる各種形態の材料で形成する理由は、密着性、熱伝導及び線膨張係数の観点から好適だからである。なお、図10では中間層が2層の形態を示したが、上記で説明した中間層の効果が得られていれば、中間層が3層以上の形態でもよい。
【0055】
本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、スパッタリングターゲット2の材質がAl-Sc合金、Ru及びRu合金、Ir及びIr合金を用いることができる。また、Li系酸化物、Co系酸化物、Ti系酸化物、Mg系酸化物なども用いることもできる。1000℃以上の高融点材料でもスパッタリングターゲットの反りや割れを抑制しつつ、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合強度を向上させることができる。
【0056】
本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、バッキングプレート1の材質がAl及びAl合金、Cu及びCu合金、Fe及びFe合金であり、線膨張係数が30.0×10-6/℃以下であることが好ましい。線膨脹係数は、好ましくは28.5×10-6/℃以下であり、さらに好ましくは27.3×10-6/℃以下である。線膨張係数が30.0×10-6/℃より大きいと、バッキングプレート1の加熱による膨張や冷却による収縮が繰り返し発生することによってスパッタリングターゲットの割れや反りが発生してしまうため、線膨張係数が30.0×10-6/℃以下であることが好ましい。また、バッキングプレートの熱伝導性が良いものを用いることで、加熱時においてバッキングプレートが膨張し、バッキングプレートの凹部にスパッタリングターゲットを挿入することができるとともに、冷却時においてバッキングプレートが収縮し、バッキングプレートの凹部内周側面によってスパッタリングターゲットの外周側面をカシメすることにより接合体を形成することができる。線膨張係数の下限は、6.0×10-6/℃以上であることが好ましい。
【0057】
本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、スパッタリングターゲット2の曲げ強度が500MPa以下であるものにも適用することができる。本実施形態は、曲げ強さが弱いスパッタリングターゲットにも適用できる。なお、曲げ強度は、例えば、JIS R 1601:2008の規格に基づいて測定される。
【0058】
本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、バッキングプレート1の凹部4の平面の形状が円形又は正方形を含む長方形であり、バッキングプレート1の凹部4の直径又は辺の長さとスパッタリングターゲットの直径又は辺の長さとの関係が(数1)~(数5)を満たすことが好ましい。
(数1)DTG>DBP
(数2)DBP=DTG‐ΔD×C
(数3)ΔD=DBP×ΔT×CTEBP-DTG×ΔT×CTETG
(数4)DTG-ΔD×4.0≦DBP≦DTG-ΔD×0.5
(数5)CTEBP>CTETG
ただし、DBP、DTG、ΔD、C、T、ΔT、CTEBP及びCTETGはそれぞれ次のことを意味する。
BP:室温におけるバッキングプレートの凹部の直径又は辺(mm)
TG:室温におけるスパッタリングターゲットの直径又は辺(mm)
T:バッキングプレートを熱膨張させる温度(℃)(ただし、T>室温)
ΔT:T‐室温(℃)
CTEBP:温度Tにおけるバッキングプレートの線膨張係数(1/℃)
CTETG:温度Tにおけるスパッタリングターゲットの線膨張係数(1/℃)
C:係数(ただし、C=0.5~4.0)
ΔD:室温から温度Tまで昇温させたときのバッキングプレートとスパッタリングターゲットの熱膨張量の差(mm)
ここで、バッキングプレート1の凹部4の平面の形状が長方形であるとき、スパッタリングターゲット2の長辺とバッキングプレート1の凹部4の長辺を対応させ、スパッタリングターゲット2の短辺とバッキングプレート1の凹部4の短辺とを対応させる。(数1)に示されるごとく、室温では、スパッタリングターゲット2の方がバッキングプレート1の凹部4よりも大きく、スパッタリングターゲット2をバッキングプレート1の凹部4に入れることはできない。ここで、室温は25℃とする。バッキングプレート1の凹部4を室温からバッキングプレートを熱膨張させる温度Tまで昇温させると、凹部4の直径又は辺は、(DBP×ΔT×CTEBP)で求められる長さの熱膨張をする。また、スパッタリングターゲット2を室温から温度Tまで昇温させると、スパッタリングターゲット2の直径又は辺は、(DTG×ΔT×CTETG)で求められる長さの熱膨張をする。したがって、線膨脹係数について(数5)の関係が成立するとき、バッキングプレート1の凹部4とスパッタリングターゲット2の両方を温度Tまで昇温させると、ΔDの長さ分だけ、凹部4の直径又は辺がスパッタリングターゲット2の直径又は辺よりも熱膨張する。この熱膨張によって、凹部4の直径又は辺がスパッタリングターゲット2の直径又は辺と同じ又は大きくなれば、凹部4にスパッタリングターゲット2を嵌め込むことが可能となる。そして、室温まで降温させると、(数1)に示される関係によって、カシメ構造が形成される。本実施形態では、上記で説明した(1)バッキングプレート1の凹部4とスパッタリングターゲット2の両方を温度Tまで昇温させる形態のみならず、(2)バッキングプレート1の凹部4を温度Tまで昇温させ、スパッタリングターゲット2を温度Tよりも低い温度までしか昇温させない形態、及び(3)バッキングプレート1の凹部4を温度Tまで昇温させ、スパッタリングターゲット2を昇温させない形態を包含する。(3)の形態について、同様に検討すると、バッキングプレート1の凹部4を室温からバッキングプレートを熱膨張させる温度Tまで昇温させると、凹部4の直径又は辺は、(DBP×ΔT×CTEBP)で求められる長さの熱膨張をする。また、スパッタリングターゲット2は室温のままであるから、スパッタリングターゲット2の直径又は辺は、熱膨張しない。そうすると、バッキングプレート1の凹部4だけを温度Tまで昇温することによって熱膨脹させると、(DBP×ΔT×CTEBP)で求められる長さ分だけ、凹部4の直径又は辺がスパッタリングターゲット2の直径又は辺よりも熱膨張する。(DBP×ΔT×CTEBP)で求められる長さは、ΔDよりも大きい。したがって、この形態においても、凹部4にスパッタリングターゲット2を嵌め込むことが可能となる。そして、室温まで降温させると、(数1)に示される関係によって、カシメ構造が形成される。(2)の形態は、(1)の形態と(3)の形態の中間の形態であるから、同様にカシメ構造が形成される。前記の(1)の形態、(2)の形態及び(3)の形態において、カシメ構造を形成可能とするには、凹部4の熱膨脹によって、凹部4の直径又は辺の長さがスパッタリングターゲット2の直径又は辺の長さを逆転しなければならない。そこで、室温における凹部4の直径又は辺の長さを、室温におけるスパッタリングターゲット2の直径又は辺の長さと比較して、どれだけ小さく設定することができるかの関係を示したのが(数2)及び(数4)である。(数2)及び(数4)においてCは係数であるが、Cが0.5~4.0の範囲内であるとき、スパッタリングターゲットの外周側面とバッキングプレートの凹部内周側面とのカシメによってスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを接合するときに、スパッタリングターゲットの割れや反りを抑制することができ、良好な強さのカシメ構造を形成することができる。
【0059】
次に図11を参照しながら、図2に示したスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体100の製造方法の第一例について説明する。本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体100の製造方法は、厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲット2とバッキングプレート1を準備する工程1(図11では不図示。)と、バッキングプレート1のプレート面3に深さ0.5~5.0mmの凹部4を形成する工程2(図11の100aに図示。)と、バッキングプレート1を加熱して凹部4を熱膨張させる工程3(図11の100bに図示。)と、熱膨張させた凹部4にスパッタリングターゲット2を嵌め込む工程4(図11の100cに嵌め込み途中を図示。)と、バッキングプレート1を冷却して、スパッタリングターゲット2の外周側面5が、バッキングプレート1の凹部内周側面6で絞められたカシメ構造を形成する工程5(図11の100に図示。)と、を有する。このとき、工程2における凹部4の直径(円板形状のスパッタリングターゲットを嵌め込む場合)若しくは辺(平面が長方形状のスパッタリングターゲットを嵌め込む場合)の長さは、スパッタリングターゲットの直径若しくは辺の長さより少し小さめに設け、バッキングプレート1を加熱して膨張させたときに凹部4の凹部内周側面6がスパッタリングターゲット2の外周側面5よりも少し大きくなることでスパッタリングターゲット2をバッキングプレート1の凹部4に充填することができる。そして、工程5の冷却によってバッキングプレート1が収縮し、スパッタリングターゲット2の外周側面5がバッキングプレート1の凹部内周側面6によって締め付けられ、冷却時の収縮によるカシメによって接合することができる。工程3において、バッキングプレート1を加熱するが、スパッタリングターゲット2は一緒に加熱していない。なお、バッキングプレート1から熱伝導を受けてスパッタリングターゲット2が昇温することはあり得る。そして、工程5において、バッキングプレート1の冷却にともなってスパッタリングターゲット2が降温することはあり得る。バッキングプレート1の加熱は例えばホットプレートを用いることで行われる。
【0060】
次に図12を参照しながら、図2に示したスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体100の製造方法の第二例について説明する。バッキングプレート1とスパッタリングターゲット2とを両方加熱する方式である。加熱は、例えば、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方加圧焼結法(HIP)又は放電プラズマ焼結法(SPS)などによって行うことができる。本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体100の製造方法は、厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲット2とバッキングプレート1を準備する工程1(図12では不図示。)と、バッキングプレート1のプレート面3に深さ0.5~5.0mmの凹部4を形成する工程2(図12では不図示。)と、バッキングプレート1の凹部4の上方にスパッタリングターゲット2を載せる工程2‐1(図12の101aに図示。)と、バッキングプレート1を加熱して凹部4を熱膨張させる工程3(図12の101bに図示。)と、工程3において、スパッタリングターゲット2を加熱する工程3-1(図12の101bに図示。)と、熱膨張させた凹部4にスパッタリングターゲット2を嵌め込む工程4(図12の101cに図示。)と、スパッタリングターゲット2とバッキングプレート1を冷却して、スパッタリングターゲット2の外周側面5が、バッキングプレート1の凹部内周側面6で絞められたカシメ構造を形成する工程5(図12の100に図示。)と、を有する。このとき、工程2における凹部4の直径(円板形状のスパッタリングターゲットを嵌め込む場合)若しくは辺(長方形状のスパッタリングターゲットを嵌め込む場合)の長さは、スパッタリングターゲットの直径若しくは辺の長さより少し小さめに設け、バッキングプレート1を加熱して膨張させたときに凹部4の凹部内周側面6がスパッタリングターゲット2の外周側面5よりも少し大きくなることでスパッタリングターゲット2をバッキングプレート1の凹部4に充填することができる。そして、工程5の冷却によってバッキングプレート1がスパッタリングターゲット2よりも冷却時の収縮が大きくなり、スパッタリングターゲット2の外周側面5がバッキングプレート1の凹部内周側面6によって締め付けられ、冷却時の収縮によるカシメによって接合することができる。
【0061】
図13に示すように、本実施形態では、工程2と工程3の間又は工程3と工程4の間に、中間層24となる材料を凹部4に充填又はコーティングする工程6をさらに有していてもよい。具体的には、図13において、熱膨脹させる前のバッキングプレート1の凹部4に中間層24となる材料を充填する形態(図13の700aに図示。)、熱膨脹させたバッキングプレート1の凹部4に中間層24となる材料を充填する形態(図13の700bに図示。)がある。その後、バッキングプレート1の凹部4にスパッタリングターゲット2を嵌め込み(図13の700cに図示。)、バッキングプレート1を冷却して、スパッタリングターゲット2の外周側面5が、バッキングプレート1の凹部内周側面6で絞められたカシメ構造を形成する(図13の700に図示。)ことによって、図9に示した中間層を有するスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を製造することができる。
【0062】
また、図14に示すように、バッキングプレート1とスパッタリングターゲット2とを両方加熱する方式では、工程2と工程2-1の間に、中間層24となる材料を凹部4に充填又はコーティングする工程6をさらに有していてもよい(図14の701aに図示。)。その後、バッキングプレート1の凹部4を熱膨脹させ(図14の701bに図示。)、スパッタリングターゲット2を加熱し(図14の701bに図示。)、バッキングプレート1の凹部4にスパッタリングターゲット2を嵌め込み(図14の701cに図示。)、スパッタリングターゲット2とバッキングプレート1を冷却して、スパッタリングターゲット2の外周側面5が、バッキングプレート1の凹部内周側面6で絞められたカシメ構造を形成する(図14の700に図示。)ことによって、図9に示した中間層を有するスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を製造することができる。
【0063】
図10に示したスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体800のように、中間層24を2層設ける場合には、図13又は図14において中間層24を設ける際に、2層の中間層を積層状態で設けることで、スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体800を製造することができる。なお、図10では中間層が2層の形態を示したが、上記で説明した中間層の効果が得られていれば、中間層が3層以上の形態でもよい。
【0064】
本実施形態において、工程4と工程5の間に、スパッタリングターゲット2の底面9とバッキングプレート1の凹部底面7とを拡散させるために、スパッタリングターゲット2を押圧する工程7をさらに有することが好ましい。押圧によって、面と面とが密着するとスパッタリングターゲット2とバッキングプレート1との拡散、又はスパッタリングターゲット2と中間層24との拡散及び中間層24とバッキングプレート1との拡散をさせることができ、密着性が向上して熱伝導を良好に保つことができる。さらに、スパッタリングターゲット2を押圧することによって収縮時のスパッタリングターゲットの反りの防止にも役立つ。
【0065】
本実施形態では、少なくとも工程3、工程4及び工程5において、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方加圧焼結法(HIP)、放電プラズマ焼結法(SPS)及びホットプレートによる加熱法のうち少なくとも1つの方法を用いて行うことが好ましい。加熱と冷却を行うことができる装置であれば適用することができ、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方加圧焼結法(HIP)、放電プラズマ焼結法(SPS)及びホットプレートによる加熱法のうち少なくとも1つの方法を用いて行う。冷却には自然放冷が含まれる。
【0066】
本実施形態では、工程7において、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方加圧焼結法(HIP)及び放電プラズマ焼結法(SPS)の少なくとも1つの方法を用いて行うことが好ましい。加熱と押圧を同時に行うことができる装置であれば適用することができ、ホットプレス焼結法(HP),熱間等方加圧焼結法(HIP)、放電プラズマ焼結法(SPS)のいずれかを用いて行うことができる。
【0067】
また、本実施形態では、工程7において、10Pa以下の減圧雰囲気又は酸素濃度1000ppm以下の雰囲気とし、加熱温度を100~1000℃とし、かつ、押圧を0Pa以上80MPa以下の範囲とすることが好ましい。スパッタリングターゲットの酸素含有量を抑制することができる。
【0068】
ホットプレート方式で、スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を製造した後、さらに、放電プラズマ焼結法(SPS)などで再度加熱と押圧を行ってもよい。
【0069】
図4に示したスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体200は、図15に示すようにバッキングプレート1を熱膨脹させて、スパッタリングターゲット2を嵌め込んだ後で冷却することによって製造できる。また、図5に示したスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体300は、図16に示すようにバッキングプレート1を熱膨脹させて、スパッタリングターゲット2を嵌め込んだ後で冷却することによって製造できる。また、図6に示したスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体400は、図17に示すようにバッキングプレート1を熱膨脹させて、スパッタリングターゲット2を嵌め込んだ後で冷却することによって製造できる。また、図7に示したスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体500は、図18に示すようにバッキングプレート1を熱膨脹させて、スパッタリングターゲット2を嵌め込んだ後で冷却することによって製造できる。また、図8に示したスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体600は、図19に示すようにバッキングプレート1を熱膨脹させて、スパッタリングターゲット2を嵌め込んだ後で冷却することによって製造できる。
【0070】
また、本実施形態では、工程5の後に、押圧又は加熱と押圧の工程及び冷却の工程を1組として1回行う又は2回以上繰り返し行うことが好ましい。押圧又は加熱と押圧の工程及び冷却の工程を1組として1回行う又は2回以上繰り返し行うことで、スパッタリングターゲットの底面とバッキングプレートの凹部底面との接合強度をより向上させることや、密着性をより向上させて熱伝導をより効率よく行うことができる。
【0071】
本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体がスパッタリング装置に装着され、使用された場合であって、スパッタリングターゲットが消耗した場合について説明する。本実施形態に係るスパッタリングターゲットの回収方法は、本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を加熱して、バッキングプレート1の凹部開口面21がスパッタリングターゲット2の底面9よりも大きくなるまで熱膨脹させる工程Aと、スパッタリングターゲット2をバッキングプレート1から取り外して、スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体からスパッタリングターゲットを回収する工程Bと、を有する。スパッタリングターゲット2を取り外す形態には、スパッタリングターゲット2をそのまま取り外す形態と、スパッタリングターゲット2に衝撃を加えて取り外す形態が含まれる。
【実施例0072】
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0073】
(実施例1)
図9に相当する接合体を作製する。まず、曲げ強度が138MPaであるΦ50×7t(単位:mm)のAl-30原子%Scスパッタリングターゲット2と、Φ70×8t(単位:mm)のAl合金であるA6061のバッキングプレート1を準備した。線膨張係数は、Al-30原子%Scが13.5×10-6/℃、A6061が23.6×10-6/℃である。次に、バッキングプレート1のスパッタリングターゲット2の設置箇所に、スパッタリングターゲット2の直径より0.1mm小さく、深さ2mmの凹部4を旋盤にて加工した。次に、バッキングプレート1の凹部底面7に、0.1mm厚のNi板材を中間層24の材料として充填した。次に、バッキングプレート1の凹部4の上にAl-30原子%Scスパッタリングターゲット2を設置した。このときスパッタリングターゲット2は凹部4にははまらず、Ni板材の上方(凹部底面7から2mmの隙間を開けて)にある。次に、放電プラズマ焼結機を用いて10Pa以下の減圧雰囲気下で250℃に昇温後、スパッタリングターゲット2を、凹部開口面21が熱膨脹によって広がったバッキングプレート1の凹部4に充填した。その後、10MPaでスパッタリングターゲット2を押圧しながら、400℃まで昇温し、1時間保持して拡散接合を行った。その後、冷却してカシメ構造を形成した。その結果を図20に示す。図20に示すように、スパッタリングターゲット2の外周側面5とバッキングプレート1の凹部内周側面6はカシメにより固着し、ターゲット底面9も隙間無くNiが充填されて、熱伝導が良く拡散接合が行われ、そのとき、ターゲットの割れは発生しなかった。
【0074】
(実施例2)
図5に相当する接合体において、さらに中間層を設けた接合体を作製する。まず、熔解法にて作製したΦ156×9t(単位:mm)のルテニウムスパッタリングターゲット2と、Φ240×20t(単位:mm)の黄銅のバッキングプレート1を準備した。線膨張係数は、ルテニウムが6.75×10-6/℃、黄銅が21.2×10-6/℃である。次に、スパッタリングターゲット2の外周側面5に、側面の周方向に沿って環状の0.5mmの環状凹部を旋盤で形成した。これによって、スパッタリングターゲット2の外周側面5に、環状凹部の底面を基準として凸となる環状凸部が形成される。次に、バッキングプレート1のスパッタリングターゲット2の設置箇所に、スパッタリングターゲット2の直径より0.4mm小さく、深さ4mmの凹部4を旋盤にて加工する。さらにスパッタリングターゲット2の環状凸部と符合する位置のバッキングプレート1の凹部内周側面6に0.5mmの環状凹部を形成した。次に、バッキングプレート1の凹部底面7に0.1mm厚のNiの板材及び微量のIn粉末を充填した。この微量のIn粉末は、Niの板材周りの隙間に充填される。次に、バッキングプレート1の凹部4の上にスパッタリングターゲット2を設置した。次に、放電プラズマ焼結機を用いて10Pa以下の減圧雰囲気で250℃に昇温後、スパッタリングターゲット2をバッキングプレート1の凹部に充填する。充填後、10MPaでスパッタリングターゲット2を押圧しながら、さらに400℃まで昇温し、1時間保持にて拡散接合を行った後、冷却してカシメを行った。その結果を図21に示す。接合体は、スパッタリングターゲット2の外周側面5の凹凸部分とバッキングプレート1の凹部内周側面6の凹凸部分とが互いに嵌め込みあう構造を有している。図21に示すようにスパッタリングターゲット2の外周側面5とバッキングプレート1の凹部内周側面6とはカシメにより固着し、ターゲット底面9も隙間無くNi、Inが充填されて、熱伝導が良く拡散接合が行われながら、ターゲットの割れは発生しなかった。
【0075】
(比較例1)
曲げ強度が138MPaであるΦ70×7t(単位:mm)のAl-30原子%Scスパッタリングターゲットと、Φ80×8t(単位:mm)のAl合金であるA6061のバッキングプレートを準備した。線膨張係数は、Al-30原子%Scが13.5×10-6/℃、A6061が23.6×10-6/℃である。次に、バッキングプレート上にAl-30原子%Scスパッタリングターゲットを設置した。次に、放電プラズマ焼結機を用いて、真空雰囲気で500℃に昇温後、10MPaでスパッタリングターゲットを押圧しながら1時間保持にて拡散接合を行った。その結果を図22に示す。接合体は、バッキングプレートに凹部4が形成されておらず、カシメ構造を有していない。図22に示すように、スパッタリングターゲットとバッキングプレートは接合されているが、線膨張係数の差が大きいため、バッキングプレートの冷却時にスパッタリングターゲットが圧縮の応力を受けて割れてしまった。
【0076】
(比較例2)
曲げ強度が138MPaであるΦ70×7t(単位:mm)のAl-30原子%Scスパッタリングターゲットと、Φ80×8t(単位:mm)のAl合金であるアルミ青銅のバッキングプレートを準備した。線膨張係数は、Al-30原子%Scが13.5×10-6/℃、アルミ青銅が16.5×10-6/℃である。次に、バッキングプレート上にAl-30原子%Scスパッタリングターゲットを設置した。次に、放電プラズマ焼結機を用いて、真空雰囲気で500℃に昇温後、10MPaでスパッタリングターゲットを押圧しながら1時間保持にて拡散接合を行った。その結果を図23に示す。接合体は、バッキングプレートに凹部4が形成されておらず、カシメ構造を有していない。図23に示すように、比較例1よりもスパッタリングターゲットの線膨張係数とバッキングプレートの線膨張係数を近づけてみたが、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの線膨張係数の差があるため、スパッタリングターゲットが圧縮の応力を受けて割れるとともに、バッキングプレートへの接合が不十分であるためバッキングプレートからスパッタリングターゲットが剥離した。
【0077】
(比較例3)
焼結法にてΦ194×10t(単位:mm)のルテニウムスパッタリングターゲットと、Φ240×20t(単位:mm)の無酸素銅のバッキングプレートを準備した。線膨張係数は、ルテニウムが6.75×10-6/℃、無酸素銅が16.2×10-6/℃である。次に、バッキングプレート上にルテニウムスパッタリングターゲットを設置した。次に、放電プラズマ焼結機を用いて、真空雰囲気で700℃に昇温後、10MPaでスパッタリングターゲットを押圧しながら1時間保持にて拡散接合を行った。その結果を図24に示す。接合体は、バッキングプレートに凹部4が形成されておらず、カシメ構造を有していない。図24に示すように、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの線膨張係数の差があるため、スパッタリングターゲットが圧縮の応力を受けて割れてしまった。
【0078】
(比較例4)
焼結法にてΦ180×5t(単位:mm)のルテニウムスパッタリングターゲットと、バッキングプレートとして用いる無酸素銅で作製したCANと呼ばれる15mm厚の容器にΦ180.1mm、深さ10mmの凹部を形成したものを準備した。線膨張係数は、ルテニウムが6.75×10-6/℃、無酸素銅が16.2×10-6/℃である。次に、CANにスパッタリングターゲットを内包した後、その上から無酸素銅で作製したΦ180×5tの蓋をスパッタリングターゲットの上に乗せ、CAN内を真空にして封止した。次に、HIP装置を用いて、500℃に昇温後、100MPaでCANを加圧して拡散接合を行った。このとき容器が全面から加圧され、容器とターゲットが拡散接合された。拡散接合後に、旋盤を用いてスパッタリングターゲットとバッキングプレートを削り出した。その結果を図25に示す。図25に示すように、拡散接合は出来ていたが、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの線膨張係数の差があるため、スパッタリングターゲットが圧縮の応力を受けて中央部から細かな割れが外周に向けて放射状に発生して割れてしまった。
【符号の説明】
【0079】
50,100,200,300,400,500,600,700,800 スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体
1 バッキングプレート
2 スパッタリングターゲット
3 バッキングプレートのプレート面
4 バッキングプレートの凹部
5 スパッタリングターゲットの外周側面
6 バッキングプレートの凹部内周側面
7 バッキングプレートの凹部底面
8a,8b 凹凸部分
9 スパッタリングターゲットの底面
21 凹部開口面
22 凹部
23 凸部
24 中間層
24a バッキングプレートとの界面に設置された中間層
24b スパッタリングターゲットとの界面に設置された中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2021-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッキングプレートに厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲットが接合されたスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体において、
前記スパッタリングターゲットの材質がAl-Sc合金、Ru、Ru合金、Ir、Ir合金、Li系酸化物、Co系酸化物、Ti系酸化物又はMg系酸化物であり、
前記バッキングプレートの材質がAl、Al合金、Cu、Cu合金、Fe又はFe合金であり、
前記バッキングプレートの線膨張係数が30.0×10 -6 /℃以下であり、
前記バッキングプレートは、プレート面に深さ0.5~5.0mmの凹部を有し、
該凹部に前記スパッタリングターゲットが嵌め込まれており、
嵌め込まれる該スパッタリングターゲットは板状をなしており、かつ、
前記スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、前記スパッタリングターゲットの外周側面が、前記バッキングプレートの凹部内周側面で絞められたカシメ構造を有することを特徴とするスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項2】
前記スパッタリングターゲットの外周側面は凹凸部分を有し、
前記バッキングプレートの凹部内周側面は凹凸部分を有し、かつ、
前記外周側面の凹凸部分と前記凹部内周側面の凹凸部分とは、互いに嵌め込みあう構造となっていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項3】
前記バッキングプレートの凹部は、凹部開口面が凹部底面よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項4】
前記スパッタリングターゲットの底面が、前記バッキングプレートの前記凹部の凹部開口面よりも大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項5】
200~500℃において、前記バッキングプレートの線膨張係数が前記スパッタリングターゲットの線膨張係数より大きいことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項6】
前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に2.5mm以下の中間層を有し、該中間層は、Ni、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項7】
前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に10μm以下の中間層を有し、該中間層は、Ni、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる薄膜であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項8】
前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に1.0mm以下の中間層を有し、該中間層は、In、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項9】
前記スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートの界面に2層以上の中間層を有し、該中間層は、
2.5mm以下のNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせ、
10μm以下のNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種の金属又はNi、Cr、Al、Cuの少なくともいずれか一種を含む合金からなる薄膜、または、
1.0mm以下のIn、Znの少なくともいずれか一種の金属又はIn、Znの少なくともいずれか一種を含む合金からなる板材、粉末、又は該板材と該粉末の組み合わせからなることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項10】
前記スパッタリングターゲットの曲げ強度が500MPa以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項11】
前記バッキングプレートの凹部の平面の形状が円形又は正方形を含む長方形であり、前記バッキングプレートの凹部の直径又は辺の長さとスパッタリングターゲットの直径又は辺の長さとの関係が(数1)~(数5)を満たすことを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
(数1)DTG>DBP
(数2)DBP=DTG‐ΔD×C
(数3)ΔD=DBP×ΔT×CTEBP-DTG×ΔT×CTETG
(数4)DTG-ΔD×4.0≦DBP≦DTG-ΔD×0.5
(数5)CTEBP>CTETG
ただし、DBP、DTG、ΔD、C、T、ΔT、CTEBP及びCTETGはそれぞれ次のことを意味する。
BP:室温におけるバッキングプレートの凹部の直径又は辺(mm)
TG:室温におけるスパッタリングターゲットの直径又は辺(mm)
T:バッキングプレートを熱膨張させてスパッタリングターゲットを嵌合させる温度(℃)(ただし、T>室温)
ΔT:T‐室温(℃)
CTEBP:温度Tにおけるバッキングプレートの線膨張係数(1/℃)
CTETG:温度Tにおけるスパッタリングターゲットの線膨張係数(1/℃)
C:係数(ただし、C=0.5~4.0)
ΔD:室温から温度Tまで昇温させたときのバッキングプレートとスパッタリングターゲットの熱膨張量の差(mm)
【請求項12】
前記スパッタリングターゲットは、前記スパッタリングターゲットの前記ターゲット面の全周囲に前記バッキングプレートの前記プレート面が露出するように該バッキングプレートに嵌め込まれていることを特徴とする請求項1~11のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項13】
前記ターゲット面が前記プレート面よりも突出していることを特徴とする請求項1~12のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体。
【請求項14】
板状をなしており、厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲットとバッキングプレートを準備する工程1と、
前記バッキングプレートのプレート面に深さ0.5~5.0mmの凹部を形成する工程2と、
前記バッキングプレートを加熱して前記凹部を熱膨張させる工程3と、
熱膨張させた前記凹部に前記スパッタリングターゲットを嵌め込む工程4と、
前記バッキングプレートを冷却して、前記スパッタリングターゲットの外周側面が、前記バッキングプレートの凹部内周側面で絞められたカシメ構造を形成する工程5と、
を有し、
前記スパッタリングターゲットの材質がAl-Sc合金、Ru、Ru合金、Ir、Ir合金、Li系酸化物、Co系酸化物、Ti系酸化物又はMg系酸化物であり、
前記バッキングプレートの材質がAl、Al合金、Cu、Cu合金、Fe又はFe合金であり、かつ、
前記バッキングプレートの線膨張係数が30.0×10 -6 /℃以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項15】
前記工程2と前記工程3の間又は前記工程3と前記工程4の間に、中間層となる材料を前記凹部に充填又はコーティングする工程6をさらに有することを特徴とする請求項14記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項16】
前記工程4と前記工程5の間に、前記スパッタリングターゲットの底面と前記バッキングプレートの前記凹部の底面とを拡散させるために、前記スパッタリングターゲットを押圧する工程7をさらに有することを特徴とする請求項14又は15に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項17】
少なくとも前記工程3、前記工程4及び前記工程5において、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方加圧焼結法(HIP)、放電プラズマ焼結法(SPS)及びホットプレートによる加熱法のうち少なくとも1つの方法を用いて行うことを特徴とする請求項1416のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項18】
さらに前記工程7において、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方加圧焼結法(HIP)及び放電プラズマ焼結法(SPS)の少なくとも1つの方法を用いて行うことを特徴とする請求項16に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項19】
前記工程7において、10Pa以下の減圧雰囲気又は酸素濃度1000ppm以下の雰囲気とし、加熱温度を100~1000℃とし、かつ、押圧を0Pa以上80MPa以下の範囲とすることを特徴とする請求項16又は18に記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項20】
前記工程5の後に、押圧又は加熱と押圧の工程及び冷却の工程を1組として1回行う又は2回以上繰り返し行うことを特徴とする請求項1419のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を加熱して、前記バッキングプレートの前記凹部開口面が前記スパッタリングターゲットの底面よりも大きくなるまで熱膨脹させる工程Aと、
前記スパッタリングターゲットを前記バッキングプレートから取り外して、前記スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体から前記スパッタリングターゲットを回収する工程Bと、を有することを特徴とするスパッタリングターゲットの回収方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明者らは、鋭意検討した結果、カシメと拡散接合を行うことにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、バッキングプレートに厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲットが接合されたスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体において、前記スパッタリングターゲットの材質がAl-Sc合金、Ru、Ru合金、Ir、Ir合金、Li系酸化物、Co系酸化物、Ti系酸化物又はMg系酸化物であり、前記バッキングプレートの材質がAl、Al合金、Cu、Cu合金、Fe又はFe合金であり、前記バッキングプレートの線膨張係数が30.0×10 -6 /℃以下であり、前記バッキングプレートは、プレート面に深さ0.5~5.0mmの凹部を有し、該凹部に前記スパッタリングターゲットが嵌め込まれており、嵌め込まれる該スパッタリングターゲットは板状をなしており、かつ、前記スパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、前記スパッタリングターゲットの外周側面が、前記バッキングプレートの凹部内周側面で絞められたカシメ構造を有することを特徴とする。1000℃以上の高融点材料でもスパッタリングターゲットの反りや割れを抑制しつつ、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合強度を向上させることができる。また、バッキングプレートの熱伝導性が良いものを用いることで、加熱時においてバッキングプレートが膨張し、バッキングプレートの凹部にスパッタリングターゲットを挿入することができるとともに、冷却時においてバッキングプレートが収縮し、バッキングプレートの凹部内周側面によってスパッタリングターゲットの外周側面をカシメすることにより接合体を形成することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記スパッタリングターゲットの曲げ強度が500MPa以下である形態を包含する。スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合体は、曲げ強さが弱いスパッタリングターゲットにも適用できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記バッキングプレートの凹部の平面の形状が円形又は正方形を含む長方形であり、前記バッキングプレートの凹部の直径又は辺の長さとスパッタリングターゲットの直径又は辺の長さとの関係が(数1)~(数5)を満たすことが好ましい。
(数1)DTG>DBP
(数2)DBP=DTG‐ΔD×C
(数3)ΔD=DBP×ΔT×CTEBP-DTG×ΔT×CTETG
(数4)DTG-ΔD×4.0≦DBP≦DTG-ΔD×0.5
(数5)CTEBP>CTETG
ただし、DBP、DTG、ΔD、C、T、ΔT、CTEBP及びCTETGはそれぞれ次のことを意味する。
BP:室温におけるバッキングプレートの凹部の直径又は辺(mm)
TG:室温におけるスパッタリングターゲットの直径又は辺(mm)
T:バッキングプレートを熱膨張させてスパッタリングターゲットを嵌合させる温度(℃)(ただし、T>室温)
ΔT:T‐室温(℃)
CTEBP:温度Tにおけるバッキングプレートの線膨張係数(1/℃)
CTETG:温度Tにおけるスパッタリングターゲットの線膨張係数(1/℃)
C:係数(ただし、C=0.5~4.0)
ΔD:室温から温度Tまで昇温させたときのバッキングプレートとスパッタリングターゲットの熱膨張量の差(mm)
スパッタリングターゲットの外周側面とバッキングプレートの凹部内周側面とのカシメによってスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを接合するときに、スパッタリングターゲットの割れや反りを抑制することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記スパッタリングターゲットは、前記スパッタリングターゲットの前記ターゲット面の全周囲に前記バッキングプレートの前記プレート面が露出するように該バッキングプレートに嵌め込まれていることが好ましい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、前記ターゲット面が前記プレート面よりも突出していることが好ましい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
本発明に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体の製造方法は、板状をなしており、厚さ2.0~15.0mmのスパッタリングターゲットとバッキングプレートを準備する工程1と、前記バッキングプレートのプレート面に深さ0.5~5.0mmの凹部を形成する工程2と、前記バッキングプレートを加熱して前記凹部を熱膨張させる工程3と、熱膨張させた前記凹部に前記スパッタリングターゲットを嵌め込む工程4と、前記バッキングプレートを冷却して、前記スパッタリングターゲットの外周側面が、前記バッキングプレートの凹部内周側面で絞められたカシメ構造を形成する工程5と、を有し、前記スパッタリングターゲットの材質がAl-Sc合金、Ru、Ru合金、Ir、Ir合金、Li系酸化物、Co系酸化物、Ti系酸化物又はMg系酸化物であり、前記バッキングプレートの材質がAl、Al合金、Cu、Cu合金、Fe又はFe合金であり、かつ、前記バッキングプレートの線膨張係数が30.0×10 -6 /℃以下であることを特徴とする。バッキングプレートの凹部内周側面によってスパッタリングターゲットの外周側面をカシメすることによりスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体を製造することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、スパッタリングターゲット2の材質がAl-Sc合金、RuRu合金、Ir又はIr合金を用いることができる。また、Li系酸化物、Co系酸化物、Ti系酸化物又はMg系酸化物なども用いることもできる。1000℃以上の高融点材料でもスパッタリングターゲットの反りや割れを抑制しつつ、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合強度を向上させることができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体は、バッキングプレート1の材質がAlAl合金、CuCu合金、Fe又はFe合金であり、線膨張係数が30.0×10-6/℃以下であることが好ましい。線膨脹係数は、好ましくは28.5×10-6/℃以下であり、さらに好ましくは27.3×10-6/℃以下である。線膨張係数が30.0×10-6/℃より大きいと、バッキングプレート1の加熱による膨張や冷却による収縮が繰り返し発生することによってスパッタリングターゲットの割れや反りが発生してしまうため、線膨張係数が30.0×10-6/℃以下であることが好ましい。また、バッキングプレートの熱伝導性が良いものを用いることで、加熱時においてバッキングプレートが膨張し、バッキングプレートの凹部にスパッタリングターゲットを挿入することができるとともに、冷却時においてバッキングプレートが収縮し、バッキングプレートの凹部内周側面によってスパッタリングターゲットの外周側面をカシメすることにより接合体を形成することができる。線膨張係数の下限は、6.0×10-6/℃以上であることが好ましい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
本実施形態に係るスパッタリングターゲット‐バッキングプレート接合体では、バッキングプレート1の凹部4の平面の形状が円形又は正方形を含む長方形であり、バッキングプレート1の凹部4の直径又は辺の長さとスパッタリングターゲットの直径又は辺の長さとの関係が(数1)~(数5)を満たすことが好ましい。
(数1)DTG>DBP
(数2)DBP=DTG‐ΔD×C
(数3)ΔD=DBP×ΔT×CTEBP-DTG×ΔT×CTETG
(数4)DTG-ΔD×4.0≦DBP≦DTG-ΔD×0.5
(数5)CTEBP>CTETG
ただし、DBP、DTG、ΔD、C、T、ΔT、CTEBP及びCTETGはそれぞれ次のことを意味する。
BP:室温におけるバッキングプレートの凹部の直径又は辺(mm)
TG:室温におけるスパッタリングターゲットの直径又は辺(mm)
T:バッキングプレートを熱膨張させてスパッタリングターゲットを嵌合させる温度(℃)(ただし、T>室温)
ΔT:T‐室温(℃)
CTEBP:温度Tにおけるバッキングプレートの線膨張係数(1/℃)
CTETG:温度Tにおけるスパッタリングターゲットの線膨張係数(1/℃)
C:係数(ただし、C=0.5~4.0)
ΔD:室温から温度Tまで昇温させたときのバッキングプレートとスパッタリングターゲットの熱膨張量の差(mm)
ここで、バッキングプレート1の凹部4の平面の形状が長方形であるとき、スパッタリングターゲット2の長辺とバッキングプレート1の凹部4の長辺を対応させ、スパッタリングターゲット2の短辺とバッキングプレート1の凹部4の短辺とを対応させる。(数1)に示されるごとく、室温では、スパッタリングターゲット2の方がバッキングプレート1の凹部4よりも大きく、スパッタリングターゲット2をバッキングプレート1の凹部4に入れることはできない。ここで、室温は25℃とする。バッキングプレート1の凹部4を室温からバッキングプレートを熱膨張させる温度Tまで昇温させると、凹部4の直径又は辺は、(DBP×ΔT×CTEBP)で求められる長さの熱膨張をする。また、スパッタリングターゲット2を室温から温度Tまで昇温させると、スパッタリングターゲット2の直径又は辺は、(DTG×ΔT×CTETG)で求められる長さの熱膨張をする。したがって、線膨脹係数について(数5)の関係が成立するとき、バッキングプレート1の凹部4とスパッタリングターゲット2の両方を温度Tまで昇温させると、ΔDの長さ分だけ、凹部4の直径又は辺がスパッタリングターゲット2の直径又は辺よりも熱膨張する。この熱膨張によって、凹部4の直径又は辺がスパッタリングターゲット2の直径又は辺と同じ又は大きくなれば、凹部4にスパッタリングターゲット2を嵌め込むことが可能となる。そして、室温まで降温させると、(数1)に示される関係によって、カシメ構造が形成される。本実施形態では、上記で説明した(1)バッキングプレート1の凹部4とスパッタリングターゲット2の両方を温度Tまで昇温させる形態のみならず、(2)バッキングプレート1の凹部4を温度Tまで昇温させ、スパッタリングターゲット2を温度Tよりも低い温度までしか昇温させない形態、及び(3)バッキングプレート1の凹部4を温度Tまで昇温させ、スパッタリングターゲット2を昇温させない形態を包含する。(3)の形態について、同様に検討すると、バッキングプレート1の凹部4を室温からバッキングプレートを熱膨張させる温度Tまで昇温させると、凹部4の直径又は辺は、(DBP×ΔT×CTEBP)で求められる長さの熱膨張をする。また、スパッタリングターゲット2は室温のままであるから、スパッタリングターゲット2の直径又は辺は、熱膨張しない。そうすると、バッキングプレート1の凹部4だけを温度Tまで昇温することによって熱膨脹させると、(DBP×ΔT×CTEBP)で求められる長さ分だけ、凹部4の直径又は辺がスパッタリングターゲット2の直径又は辺よりも熱膨張する。(DBP×ΔT×CTEBP)で求められる長さは、(1)の形態のΔDよりも大きい。したがって、この形態においても、凹部4にスパッタリングターゲット2を嵌め込むことが可能となる。そして、室温まで降温させると、(数1)に示される関係によって、カシメ構造が形成される。(2)の形態は、(1)の形態と(3)の形態の中間の形態であるから、同様にカシメ構造が形成される。前記の(1)の形態、(2)の形態及び(3)の形態において、カシメ構造を形成可能とするには、凹部4の熱膨脹によって、凹部4の直径又は辺の長さがスパッタリングターゲット2の直径又は辺の長さを逆転しなければならない。そこで、室温における凹部4の直径又は辺の長さを、室温におけるスパッタリングターゲット2の直径又は辺の長さと比較して、どれだけ小さく設定することができるかの関係を示したのが(数2)及び(数4)である。(数2)及び(数4)においてCは係数であるが、Cが0.5~4.0の範囲内であるとき、スパッタリングターゲットの外周側面とバッキングプレートの凹部内周側面とのカシメによってスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを接合するときに、スパッタリングターゲットの割れや反りを抑制することができ、良好な強さのカシメ構造を形成することができる。