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特開2022-58179検出チップ、核酸検出箱及び核酸検出デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058179
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】検出チップ、核酸検出箱及び核酸検出デバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127838
(22)【出願日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】63/085385
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/085368
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520480382
【氏名又は名称】富佳生技股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520352481
【氏名又は名称】深超光電(深セン)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】特許業務法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 鴻運
(72)【発明者】
【氏名】黄 志倫
(72)【発明者】
【氏名】謝 仁欽
(72)【発明者】
【氏名】李 俊畿
(72)【発明者】
【氏名】翁 裕復
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029FA12
(57)【要約】
【課題】検出液が不用意に検出経路から離れて導電部の側壁に吸着することを回避でき、拡張反応が正常に行われることを保証する検出チップを提供する。また、核酸検出箱体及び核酸検出デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の検出チップは、第1蓋板と、第2蓋板と、対向する第1表面及び第2表面を有する導電部と、前記導電部に電気的に接続される2つの第1駆動電極と、を備え、前記第1表面と前記第2表面とは、それぞれ前記第1蓋板及び前記第2蓋板に隣接し、且つ電荷を帯びた検出液を担持するためのチャンネルを取り囲むように形成し、前記チャンネルは、検出経路を含み、2つの第1駆動電極は、それぞれ導電部と電気的に接続され、前記導電部が通電された後に、前記導電部と前記検知液との間には、前記検知液を前記導電部から離れる方向に移動させるための駆動力を発生させる。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1蓋板と、
第2蓋板と、
対向する第1表面及び第2表面を有する導電部と、
前記導電部に電気的に接続されて、前記導電部を通電させるか又は前記導電部の電源を遮断するための2つの第1駆動電極と、を備え、
前記第1表面と前記第2表面とは、それぞれ前記第1蓋板及び前記第2蓋板に隣接し、前記第1蓋板、前記導電部及び前記第2蓋板は、電荷を帯びた検出液を担持するためのチャンネルを取り囲むように形成し、前記チャンネルは、検出経路を含み、
前記導電部が通電された後に、前記導電部と前記検知液との間には、前記導電部から離れる方向に向かって、前記検知液を前記検出経路まで移動させるための駆動力を発生させることを特徴とする、検出チップ。
【請求項2】
前記第1駆動電極は、前記第1表面と前記第1蓋板または前記第2蓋板との間に設けられ、且つ前記第1表面と電気的に接続されている、請求項1に記載の検出チップ。
【請求項3】
前記第1蓋板は、前記第1表面に対応して2つの第1凹溝が設けられ、2つの前記第1凹溝の各々には、1つの前記第1駆動電極が設けられ、2つの前記第1凹溝に対応する前記第1表面には、前記第2表面から離れる方向に向かって2つの第1バンプが設けられ、2つの前記第1バンプの各々は、対応する1つの前記第1凹溝内に収容され、且つ前記第1駆動電極と電気的に接続されている、請求項1に記載の検出チップ。
【請求項4】
前記第1蓋板は、前記第1表面に対応して1つの第1凹溝が設けられ、前記第2蓋板は、前記第2表面に対応して1つの第2凹溝が設けられ、前記第1凹溝及び前記第2凹溝のそれぞれには、1つの前記第1駆動電極が設けられ、
前記第1表面には、前記第2表面から離れる方向に向かって1つの前記第1バンプが形成され、前記第1バンプは、前記第1凹溝に収容され、且つ1つの前記第1駆動電極と電気的に接続され、
前記第2表面には、前記第1表面から離れる方向に向かって1つの第2バンプが形成され、前記第2バンプは、前記第2凹溝に収容され、且つもう1つの前記第1駆動電極と電気的に接続される、請求項1に記載の検出チップ。
【請求項5】
前記導電部には、2つの第3凹溝が設けられており、2つの前記第1駆動電極は、それぞれ2つの前記第3凹溝内に設けられ、かつ、前記導電部と電気的に接続されている、請求項1に記載の検出チップ。
【請求項6】
前記導電部は、導電部本体と、前記導電部本体の前記チャンネルに近接する側の表面に設けられた第1導電層とを含み、前記第1導電層は、2つの前記第1駆動電極と電気的に接続されている、請求項1に記載の検出チップ。
【請求項7】
駆動アセンブリをさらに備え、前記駆動アセンブリは、前記第1蓋板における前記第2蓋板に近接する側に配置される駆動回路と、前記駆動回路における前記第2蓋板に近接する側に配置される第1誘電層と、前記第2蓋板における前記第1蓋板に近接する側に設けられる第2導電層と、前記第2導電層における前記第1蓋板に近接する側に設けられる第2誘電層と、を含み、
前記第1誘電層と前記第2誘電層との間には、前記チャンネルが形成され、前記駆動回路は、前記検出経路を形成する、請求項1に記載の検出チップ。
【請求項8】
前記駆動回路は、アレイ状に配置された複数の第2駆動電極と、全ての前記第2駆動電極に電気的に接続された制御電極とを含み、
前記検出液を駆動して隣接する2つの前記第2駆動電極の間を移動させるように、前記第2駆動電極と前記第2導電層との間の電源はオン又はオフされる、請求項7に記載の検出チップ。
【請求項9】
箱体と、
前記箱体の内部に設けられる請求項1~8のいずれか一項に記載の検出チップと、
前記駆動アセンブリ及び前記第1駆動電極のそれぞれに電気的に接続されたコネクタと、を備え、
前記検出チップは、前記検出液に対して核酸拡張反応を行って核酸拡張生成物を得るためのものである、核酸検出箱。
【請求項10】
本体と、
前記本体に設けられる検出箱取付溝と、を備え、
前記検出箱取付溝は、核酸検出箱を着脱可能に装着するためのものであり、前記核酸検出箱は、請求項9に記載の核酸検出箱である、核酸検出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出チップ、核酸検出箱及び核酸検出デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
分子診断、形態学、免疫学等の検出には、マイクロフローコントロールの検出チップを用いて行うことが多い。
【0003】
従来の検出チップの構成は、上蓋板と、下蓋板と、上下蓋板の間に配置されたセパレータとを備え、上蓋板、スペーサー層及び下蓋板は、共に検出液を担持する流路を形成している。検出過程において、流路内で異なる領域で検出液の液滴が移動して核酸拡張プロセスを終えるが、操作の問題やその他の要因により、静電作用により液玉をスペーサーの側壁に吸着させてしまうと、液滴が所定経路を移動できないため、実験の失敗を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記欠陥の少なくとも1つを克服するために、検出チップを提供する必要がある。
また、本発明は、上記の検出チップを含む核酸検出箱体及び核酸検出デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る検出チップは、第1蓋板と、
第2蓋板と、
対向する第1表面及び第2表面を有する導電部と、
前記導電部に電気的に接続されて、前記導電部を通電させるか又は前記導電部の電源を遮断するための2つの第1駆動電極と、を備え、
前記第1表面と前記第2表面とは、それぞれ前記第1蓋板及び前記第2蓋板に隣接し、前記第1蓋板、前記導電部及び前記第2蓋板は、電荷を帯びた検出液を担持するためのチャンネルを取り囲むように形成し、前記チャンネルは、検出経路を含み、
前記導電部が通電された後に、前記導電部と前記検知液との間には、前記検知液を前記導電部から離れる方向に向かって前記検出経路まで移動させるための駆動力を発生させる。
【0006】
本発明の実施形態によれば、前記第1駆動電極は、前記第1表面と前記第1蓋板または前記第2蓋板との間に設けられ、且つ前記第1表面と電気的に接続されている。
【0007】
本発明の実施形態によれば、前記第1蓋板は、前記第1表面に対応して2つの第1凹溝が設けられ、前記第1凹溝の各々には、1つの前記第1駆動電極が設けられ、2つの前記第1凹溝に対応する前記第1表面には、前記第2表面から離れる方向に向かって2つの第1バンプが形成され、各前記第1バンプは、対応する1つの前記第1凹溝内に収容され、且つ前記第1駆動電極と電気的に接続されている。
【0008】
本発明の実施形態によれば、前記第1蓋板は、前記第1表面に対応して1つの第1凹溝が設けられ、前記第2蓋板は、前記第2表面に対応して1つの第2凹溝が設けられ、前記第1凹溝及び前記第2凹溝のそれぞれには、1つの前記第1駆動電極が設けられ、
前記第1表面には、前記第2表面から離れる方向に向かって1つの前記第1バンプが形成され、前記第1バンプは、前記第1凹溝に収容され、且つ1つの前記第1駆動電極と電気的に接続され、
前記第2表面には、前記第1表面から離れる方向に向かって1つの第2バンプが形成され、前記第2バンプは、前記第2凹溝に収容され、且つもう1つの前記第1駆動電極と電気的に接続される。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記導電部には、2つの第3凹溝が設けられており、2つの前記第1駆動電極は、それぞれ2つの前記第3凹溝内に設けられ、かつ、前記導電部と電気的に接続されている。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記導電部は、導電部本体と、前記導電部本体の前記チャンネルに近接する側の表面に設けられた第1導電層とを含み、前記第1導電層は、2つの前記第1駆動電極と電気的に接続されている。
【0011】
本発明の実施形態によれば、駆動アセンブリをさらに備え、前記駆動アセンブリは、前記第1蓋板における前記第2蓋板に近接する側に配置される駆動回路と、前記駆動回路における前記第2蓋板に近接する側に配置される第1誘電層と、前記第2蓋板における前記第1蓋板に近接する側に設けられる第2導電層と、前記第2導電層における前記第1蓋板に近接する側に設けられる第2誘電層と、を含み、
前記第1誘電層と前記第2誘電層との間には、前記チャンネルが形成され、前記駆動回路は、前記検出経路を形成する。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記駆動回路は、アレイ状に配置された複数の第2駆動電極と、全ての前記第2駆動電極に電気的に接続された制御電極とを含み、
前記検出液を駆動して隣接する2つの前記第2駆動電極の間を移動させるように、前記第2駆動電極と前記第2導電層との間の電源はオン又はオフされる。
【0013】
また、本発明に係る核酸検出箱は、箱体と、前記箱体の内部に設けられる上述したような検出チップと、前記駆動アセンブリ及び前記第1駆動電極のそれぞれに電気的に接続されたコネクタと、を備え、
前記検出チップは、前記検出液に対して核酸拡張反応を行って核酸拡張生成物を得るためのものである。
【0014】
また、本発明に係る核酸検出デバイスは、本体と、前記本体に設けられる検出箱取付溝と、を備え、前記検出箱取付溝は、核酸検出箱を着脱可能に装着するためのものであり、前記核酸検出箱は、上述したような核酸検出箱である。
【0015】
従来の技術に比べて、本発明が提供する検出チップの構造が簡単であり、組み立てが容易であり、導電部と第1駆動電極の設計により、導電部の側壁に吸着された検出液を検出経路に戻らせて、核酸拡張反応の正常な進行を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る検出チップの概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る検出チップの断面構造を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る検出チップにおける駆動回路の概略構成図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る検出チップの断面構造を示す図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る検出チップの断面構造を示す図である。
図6】本発明の第4実施形態に係る検出チップの断面構造を示す図である。
図7】本発明の第5実施形態に係る検出チップの断面構造を示す図である。
図8】本発明の第6実施形態に係る検出チップの断面構造を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る検出チップにおいて、検出液が導電部に吸着された状態での模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係る検出チップにおいて、導電部から検出液が脱離される状態を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る核酸検出箱の概略構成図である。
図12】本発明の一実施形態に係る核酸検出デバイスの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態における図面を参照しながら、本発明の実施形態における技術的な態様を明確にし、完全に説明するが、説明した実施形態は、全ての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態にすぎないことは明らかである。
【0018】
あるコンポーネントが他のコンポーネントに「固定される」と称される場合、それは他のコンポーネントに直接に存在してもよく、中間媒体が存在してもよい。あるコンポーネントが他のコンポーネントに「接続」と見なされる場合、それは直接に他のコンポーネントに接続されてもよく、同時に中間媒体が存在してもよい。あるコンポーネントが他のコンポーネントに「設けられる」と見なされる場合、それは直接に他のコンポーネントに設けられてもよく、同時に中間媒体が存在してもよい。本明細書で使用される用語「垂直」、「水平」、「左」、「右」及びそれに類似する表現は、説明の目的のためだけに使用される。
【0019】
以下に説明するシステムの実施形態は、単に概略的であり、モジュールまたは回路の区分は、単なる論理的な機能の区分であり、実際に実現する場合は別の区分があってもよい。また、「含む」という語は他のユニットやステップを排除せず、単数は複数を排除しない。システム請求項に記載の複数のユニットまたは装置は、ソフトウェアまたはハードウェアを介して同じユニットまたはデバイスによっても実現されうる。第1、第2などの言葉は名前を表しているが、特定の順序を表していない。
【0020】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明の技術分野に属する技術者が一般的に理解する意味と同じである。本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明する目的だけであり、本発明を限定することを意味するものではない。本明細書で使用される用語「及び/または」は、1つまたは複数の関連する列項目の任意及びすべての組み合わせを含む。
【0021】
図1図3に示すように、本発明の実施形態に係る検出チップ100は、第1蓋板1、第2蓋板2、導電部3及び2つの第1駆動電極4を備える。導電部3は、対向配置された第1表面31及び第2表面32を備え、第1表面31と第2表面32とは、それぞれ第1蓋板1及び第2蓋板2に隣接して設けられる。第1蓋板1、導電部3及び第2蓋板2は、取り囲んで検出液7を担持するためのチャンネル5を形成する。チャンネル5は、検出経路6を含む。検出液7には、電荷がついている。2つの第1駆動電極4は、いずれも導電部3と電気的に接続されており、導電部3を通電させるかまたは導電部3の電源を遮断する。導電部3が通電された後、導電部3と検知液7との間には、検知液7を導電部3から離れる方向に移動させて、検知液7を検出経路6まで移動させるための駆動力を発生させる。検出チップ100は、核酸拡張反応を行うためのものであり、核酸サンプルを含む検出液7をチャンネル5内に入れる。なお、検出液7は、チャンネル5内に液玉として存在する。
【0022】
図2及び図3に示すように、検出チップ100は、駆動アセンブリ9をさらに備える。当該駆動アセンブリ9は、第1蓋板1における第2蓋板2に近接する側に配置される駆動回路91と、駆動回路91における第2蓋板2に近接する側に配置される第1誘電層92と、第2蓋板2における第1蓋板1に近接する側に設けられる第2導電層93と、第2導電層93における第1蓋板1に近接する側に設けられる第2誘電層94と、を含む。なお、第1誘電層92と第2誘電層94との間には、チャンネル5が形成される。駆動回路91は、検出経路6を形成する。駆動回路91と第2導電層93とを通電させるかまたは遮断させることによって、検出液7がチャンネル5内を所定の検出経路6に従って移動することを実現できる。
【0023】
本実施形態では、図2及び図3に示すように、駆動回路91は、アレイ状に配置された複数の第2駆動電極911と、全ての第2駆動電極911に電気的に接続された制御電極912と、を備えている。具体的には、この駆動回路91は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,TFT)駆動回路である。また、検出液7が導電性を有しているため、誘電濡れの原理(Electrowetting-On-Dielectric,EWOD)と結合して、チャンネル5内で検出液7が所定の検出経路6に沿う移動を実現することができる。TFTの原理により、ある第2駆動電極911と第2導電層93との間の回路を選択的にオン/オフすることで、当該第2駆動電極911と第2導電層93との間の電圧を変化させて、検出液7と第1誘電層92及び第2誘電層92との間のぬれ特性を変化させ、さらにこの検出液7をチャンネル5内で所定の検出経路6に沿って移動させるように制御する。図2に示すように、検出液7は、電極I、電極H、及び電極Gを移動し、検出液7が電極Hにおいて移動する時に、電極Gと第2導電層93との間に電圧を印加し、電極Gに電圧Vdを与えるとともに、電極Hと第2導電層93との間の電圧を遮断すると、検出液7と第1誘電層92と第2誘電層94との間の濡れ特性が変化して、電極Hと検出液7との間の液-固接触角が大きくなり、電極Gと検出液7との間の液-固接触角が小さくなり、検出液7が電極Hから電極Gへ移動するようになる。本実施形態では、当該第1誘電層92と当該第2誘電層94は、いずれも絶縁撥水層であり、具体的にはポリテトラフルオロエチレンコートであってもよい。一方では、絶縁撥水の役割を果たす。他方では、検出液7を所定の経路内でよりスムーズに移動させて、移動中に液玉が割れないようにすることができる。
【0024】
本実施形態では、図2に示すように、駆動回路91は、第1蓋板1におけるチャンネル5に近接する表面に設けられている。具体的には、金属エッチングの方法または電気メッキの方法により駆動回路91を形成することができる。
【0025】
本実施形態では、図3に示すように、制御電極912は、第1蓋板1の同一縁に集積されており、制御電極912とコネクタとの接続を容易に行うことができる。
【0026】
図3に示すように、駆動回路91は、異なる用途に応じて複数の領域に分けることができ、それぞれサンプル領域A、試薬貯留領域B、複数の核酸拡張領域C及び出液領域Dである。この第2蓋板2は、サンプル領域Aに対応して、さらにサンプル入れ溝22が設けられている。サンプル入れ溝22は、サンプル領域Aと連通し、サンプル入れ溝22からサンプル領域Aに検出液7を入れる。試薬貯留領域Bは、蛍光試薬(例えば、蛍光染料または蛍光プローブ)を格納するために用いられる。検出液7は、核酸拡張領域Cにおいて、核酸拡張反応を行う。核酸拡張領域Cは、複数のエリアを含んでもよく、具体的な数は、実際の検出ニーズに応じて定められる。
【0027】
図2及び図3に示すように、検出チップ100内における検出液7の具体的な移動経路は、次の通りである。検出液7がサンプル入れ領域Aに入った後、第2駆動電極911により駆動されて所定の経路で核酸拡張領域Cに移動して拡張反応を行う。拡張反応が完了した後に拡張後の生成物が試薬貯留領域Bに移動して蛍光試薬と混合されることにより、蛍光試薬が結合した核酸拡張生成物が得られる。均一に混合された核酸拡張生成物は、第2駆動電極911の駆動によって出液領域Dに移動して次の検出ステップに進む。検出液7が検出経路6を移動する過程において、操作問題や静電吸引作用により検出液7が導電部3の側壁に吸着されると、導電部3の負の電荷は検出液7に帯電した正電荷を中和して、検出液7を完全に負の電荷を帯電させる。このように、検出液7と導電部3との間には、互いに排斥する駆動力(斥力)が形成される。この斥力によって、検出液7は導電部3の側壁から追い出され、再び検出経路6に戻り、核酸拡散反応の正常な進行を保証する。本発明は、導電部3と第1駆動電極4の設計において、同種の電荷が反発する原理をうまく利用して、検出液が不用意に検出経路から外れてしまい、拡張反応が正常に行われないという問題を解決した。
【0028】
第1駆動電極4と導電部3との間は、複数の形態で電気的に接続されていてもよい。図2に示すように、本実施形態では、当該第1駆動電極4は、第1蓋板1と導電部3の第1表面31との間に設けられ、かつ導電部3に接触して電気的に接続されている。チャンネル5の封止性を確保するために、第1表面31と、第1蓋板1の第2蓋板2に近い表面との間に封止材を充填していてもよい。本実施形態では、第1駆動電極4の取り付け及び第1駆動電極4と外界電源との接続が比較的容易である。
【0029】
本実施形態では、第1誘電層92に開口95が開口しており、第1駆動電極4が開口95内に埋め込まれる。そして、第1駆動電極4の対向する2つの表面は、それぞれ第1表面31と第1蓋板1の第2蓋板2に近い表面とに接触しており、第1誘電層92は、第1表面31と第1蓋板1との間の隙間に充填され、チャンネル5の封止性が図られている。
【0030】
本実施形態では、第1駆動電極4を第1表面31と十分に接触させて、電気的な接続の安定性を保証するために、第1表面31に突起部33を設けてもよい。突起部33は、開口95内に嵌め込まれて、第1駆動電極4との接触及び電気的な接続を実現する。
【0031】
本実施形態では、第1駆動電極4は、電極シートであってもよい。
【0032】
なお、図4に示すように、第2実施形態において、第1蓋板1の第1表面31と接触する領域には、2つの第1凹溝11が設けられている。各々の第1凹溝11内には、1つの第1駆動電極4が設けられている。2つの第1凹溝11に対応する第1表面31には、第2表面32から離れる方向に向かって2つの第1バンプ34が設けられている。各第1バンプ34は、対応する1つの第1凹溝11内に収容され、且つ第1凹溝11内に位置する第1駆動電極4と接触し且つ電気的に接続される。つまり、第1蓋板1には、第1駆動電極4を収容するための第1凹溝11が2つ設けられ、さらに、導電部3での第1バンプ34を介して導電部3と第1駆動電極4との接触及び電気的な接続を実現する。本実施形態では、第1駆動電極4を第1蓋板1の第1凹溝11内に収容し、チャンネル5の封止性に影響を及ぼさず、また、第1駆動電極4と導電部3との接続の安定性がより良好である。
【0033】
本実施形態では、第1駆動電極4は、電極シートである。なお、図5に示すように、第3実施形態では、第1蓋板1の第1表面31と接触する領域に1つの第1凹溝11が設けられ、第2蓋板2の第2表面32と接触する領域に1つの第2凹溝21が設けられる。ここで、第1凹溝11と第2凹溝21の内部には、それぞれ1つの第1駆動電極4が設けられている。また、第1表面31には、第2表面32から離れる方向に向かって1つの第1バンプ34が設けられている。第1バンプ34は、第1凹溝11内に収容され、且つ1つの第1駆動電極4と接触し且つ電気的に接続される。第2表面32には、第1表面31から離れる方向に向かって1つの第2バンプ35が設けられている。第2バンプ35は、第2凹溝21内に収容され、且つもう1つの第1駆動電極4と接触し且つ電気的に接続される。本実施形態では、第1蓋板1及び第2蓋板2にそれぞれ第1凹溝11と第2凹溝21とを設けるとともに、2つの第1駆動電極4をそれぞれ凹溝内に収容することで、導電部3の上下表面に電源を接続する目的を実現して、導電部3に電圧を印加することができる。本実施形態では、第1駆動電極4を第1凹溝11及び第二凹溝21内に収容し、チャンネル5の封止性に影響を及ぼさず、また、第1駆動電極4と導電部3との接続の安定性がより良好である。
【0034】
本実施形態では、第1駆動電極4は、電極シートである。図6に示すように、第4実施形態では、導電部3には、2つの第3凹溝36が設けられている。2つの第1駆動電極4は、それぞれ2つの第3凹溝36内に設けられ、且つ導電部3に接触して電気的に接続されている。本実施形態では、導電部3に2つの第3凹溝36を形成することで、第1駆動電極4を収容し、第1蓋板1及び第2蓋板2に溝を開けることを避けて、第3凹溝36の成形を容易にするとともに、検出チップ100の組み立てを容易にする。なお、この導電部3に設けられた第3凹溝36の位置は、実際のニーズに応じて具体的に設計すればよく、具体的には、第3凹溝36の開口は、第1表面31及び/又は第2表面32に設けられていてもよいし、導電部3のチャンネル5から離れた側壁に設けられていてもよい。
【0035】
本実施形態では、第3凹溝36の開口を導電部3のチャンネル5から離れた側壁に設ける。このようなデザインは、第1駆動電極4が引き出されて電源と電気的に接続することを容易にし、かつ、チャンネル5の封止性に影響しない。
【0036】
本実施形態では、第1駆動電極4は、電極シートである。図7に示すように、第5実施形態では、導電部3は、導電部本体37と、導電部本体37のチャンネル5に近い側の表面に設けられた第1導電層38と、を含む。第1導電層38は、2つの第1駆動電極4と電気的に接続される。本実施形態では、導電部3は全体的な導電を必要とせず、導電部本体37のチャンネル5に近接する側壁に第1導電層38を塗布又は貼り合わせるだけでよい。なお、このとき、第1駆動電極4は、第1導電層38と任意の形態で電気的に接続することができ、第1導電層38と電源との電気的な接続を実現して、チャンネル5の封止性を保証できればよい。
【0037】
図8に示すように、第6実施形態では、第1駆動電極8は、一定のアスペクト比を有する長尺型電極、例えば針状又は棒状電極であってもよい。第1駆動電極8の一端を導電部3に固定し、他端を電源に接続してもよい。本実施形態の第1駆動電極8によれば、凹溝を開ける必要がなく、成形の難易度を下げ、コストを下げ、また、組み立てが簡便であり、導電部3の回路の引き出しがより便利である。
【0038】
本発明の2つの第1駆動電極4、8は、それぞれ、電源の正極及び負極に接続され、2つの第1駆動電極4、8により導電部3を通電又はその電源を遮断させる。具体的には、図2に示すように、2つの第1駆動電極4、8は、導電部3に負の電圧を印加し、通電後に導電部3を負の電荷に帯電させる。負の電荷を帯びた導電部3は、静電力により、検出液7を導電部3のチャンネル5に近接する側壁に吸着する。
【0039】
図9に示すように、導電部3での負の電荷と検出液7の正電荷とが中和し、検出液7に負の電荷のみを帯電させる。図3及び図10に示されるように、このとき、同種の電荷が反発し、検出液7は、導電部3と検出液7との間の反発力によって導電部3の側壁から突き落とされ、検出経路6に入り、核酸拡散反応を行う。本発明は、導電部3及び第1駆動電極4の配置により、検出液7が導電部3の側壁に吸着して検出経路に入ることができず、その後の核酸拡散反応が実現できないという問題を回避することができる。
【0040】
また、図11に示すように、本発明は、上記の検出チップ100を含む核酸検出箱200をさらに提供し、この核酸検出箱200は、箱体201及びコネクタ202を含む。検出チップ100は、箱体201内に設けられている。コネクタ202は、検出チップ100内の第1駆動電極4及び駆動アセンブリ9とそれぞれ電気的に接続されている。
【0041】
図12に示すように、本発明は、さらに、核酸検出デバイス300を提供する。核酸検出デバイス300は、本体301及び上述したような核酸検出箱200を含む。本体301には、1つの検出箱取付溝302が設けられている。核酸検出箱200は、検出箱取付溝302内に取り付けられる。
【0042】
従来に比べて、本発明が提供する検出チップは、構造が簡単であり、組み立てが容易であり、導電部と第1駆動電極の設計により、導電部の側壁に吸着された検出液を検出経路に戻らせて、核酸拡張反応の正常な進行を保証することができる。
【符号の説明】
【0043】
100 核酸検出チップ
1 第1蓋板
11 第1凹溝
2 第2蓋板
21 第2凹溝
22 サンプル入れ溝
3 導電部
31 第1表面
32 第2表面
33 突起部
34 第1バンプ
35 第2バンプ
36 第3凹溝
37 導電部本体
38 第1導電層
4,8 第1駆動電極
5 チャンネル
6 検出経路
7 検出液
9 駆動アセンブリ
91 駆動回路
911 第2駆動電極
912 制御電極
92 第1誘電層
93 第2導電層
94 第2誘電層
95 開口
A サンプル入れ領域
B 試薬貯留領域
C 核酸拡張領域
D 出液領域
200 核酸検出箱
201 箱体
202 コネクタ
300 核酸検出デバイス
301 本体
302 検出箱取付溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12