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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058186
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】誘電湿潤装置及びその回路検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20220404BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220404BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20220404BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20220404BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20220404BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20220404BHJP
   C12M 1/42 20060101ALN20220404BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N37/00 101
B01J19/00 321
G01N35/08 A
G01R31/52
C12M1/00 A
C12M1/42
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134396
(22)【出願日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】63/137597
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/085385
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/085368
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520480382
【氏名又は名称】富佳生技股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520352481
【氏名又は名称】深超光電(深セン)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】特許業務法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 鴻運
(72)【発明者】
【氏名】陳 鏗元
(72)【発明者】
【氏名】徐 唯洋
(72)【発明者】
【氏名】陳 仲耀
(72)【発明者】
【氏名】翁 裕復
【テーマコード(参考)】
2G014
2G058
4B029
4G075
【Fターム(参考)】
2G014AA03
2G014AB25
2G058EA14
2G058GE08
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4G075AA13
4G075AA39
4G075AA65
4G075BB10
4G075CA14
4G075DA02
4G075DA03
4G075EB50
4G075EC21
4G075EC25
4G075FA12
4G075FB12
4G075FC15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誘電湿潤装置の回路が正常であるか否かを判断する回路検知方法を提供する。
【解決手段】誘電湿潤装置は、検出チップ10と、電源入力モジュール20と、スイッチモジュール30と、検出モジュール40と、判断モジュール50と、を備える。検出チップ10は、複数の駆動電極と検出電極とを有する駆動回路を備え、駆動電極の各々は、検出電極と結合して駆動回路を形成する。スイッチモジュール30は、指定された駆動電極を電源入力モジュール20に接続する。検出モジュール40は、検出電圧を取得し且つ前記検出電圧を累積して累積電圧値を得る。判断モジュール50は、累積電圧値を取得し、且つ累積電圧値とプリセット電圧値とを比較することにより、駆動回路に短絡または開路が発生したか否かを判断する。提供される誘電湿潤装置は、回路の自己検査を実現することができ、検出原理は簡単であり、動作が容易であり、検出精度が高く、効率が高い。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出チップと、電源入力モジュールと、スイッチモジュールと、検出モジュールと、判断モジュールと、を備え、
前記検出チップは、チャンネルと前記チャンネルの対向する両側に設けられる駆動回路とを含み、
前記駆動回路は、前記チャンネルの一方側に設けられた複数の駆動電極と、前記チャンネルの前記駆動電極と反対する側に配置された検出電極とを含み、前記駆動電極の各々は、前記検出電極と結合して前記駆動回路を形成し、
前記電源入力モジュールは、複数の前記駆動電極に電気的に接続されて、前記駆動電極に電源電圧を出力し、
前記スイッチモジュールは、前記駆動電極と前記電源入力モジュールとの間に設けられて、複数の前記駆動電極のうちの1つを選択して前記電源入力モジュールに接続し、
前記検出モジュールは、前記検出電極と電気的に接続されて、前記検出電極が出力する検出電圧を取得し、且つ前記検出電圧を累積して累積電圧値を取得し、
前記判断モジュールは、前記検出モジュールに電気的に接続されて、前記累積電圧値を取得し、且つ前記累積電圧値とプリセット電圧値とを比較することにより、前記駆動回路に短絡または開路が発生したか否かを判断することを特徴とする誘電湿潤装置。
【請求項2】
前記判断モジュールは、前記駆動回路が短絡または開路したと判断した場合に、さらに前記短絡または開路が発生した位置を決定するために使用されることを特徴とする請求項1に記載の誘電湿潤装置。
【請求項3】
前記検出モジュールは、オペアンプと第1容量とを有する電圧累積回路を備え、前記検出電極の出力端子は、前記オペアンプの負入力端子と前記第1容量の一端にそれぞれ接続され、
前記第1容量の他端は、前記オペアンプの出力端子に接続され、前記オペアンプの正入力端子は、接地されており、
前記オペアンプの出力端子は、前記検出モジュールの出力端子として、前記検出電圧の前記累積電圧値VPを出力することに用いられることを特徴とする請求項1に記載の誘電湿潤装置。
【請求項4】
前記電圧累積回路は、積分器を構成することを特徴とする請求項3に記載の誘電湿潤装置。
【請求項5】
前記駆動回路は、前記駆動電極の前記検出電極に近接する側に設けられる第1誘電層と、前記検出電極の前記駆動電極に近接する側に設けられる第2誘電層と、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の誘電湿潤装置。
【請求項6】
前記チャンネル内には、空気及び/又はシリコーンオイルが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の誘電湿潤装置。
【請求項7】
前記電源電圧は、連続四角波パルス電圧であることを特徴とする請求項1に記載の誘電湿潤装置。
【請求項8】
前記検出チップは、第1蓋板と、間隔層と、第2蓋板とを含むチップケースをさらに備え、
前記間隔層の対向する両面は、前記第1蓋板と前記第2蓋板とにそれぞれ隣接しており、
前記第1蓋板、前記間隔層及び前記第2蓋板は、取り囲んで前記チャンネルを形成し、
複数の前記駆動電極は、前記第1蓋板における前記チャンネルに近い側の表面にアレイ状に配置され、
前記検出電極は、前記第2蓋板における前記チャンネルに近い側の表面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の誘電湿潤装置。
【請求項9】
前記スイッチモジュールを指定された1つの前記駆動電極に接続し、前記電源入力モジュールに指定された前記駆動電極に前記電源電圧を供給させるステップと、
前記検出電極と前記駆動電極とが結合して、前記駆動回路を形成し、且つ前記検出電圧を出力するステップと、
前記検出モジュールで前記検出電圧を取得し、且つ前記検出電圧を累積して前記累積電圧値を取得するステップと、
前記判断モジュールで前記累積電圧値を取得し、且つ前記累積電圧値とプリセット電圧値とを比較することにより、前記駆動回路が短絡または開路しているかどうかを判断するステップと、
を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の誘電湿潤装置の回路検出方法。
【請求項10】
前記駆動回路が短絡または開路したと判断した場合、さらに前記短絡または開路が発生した位置を決定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の誘電湿潤装置の回路検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸検出の技術分野に関し、特に、誘電湿潤装置及びその回路検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の核酸拡張反応は、通常、誘電湿潤(Electrowetting-On-Dielectric,EWOD)原理を用いて検体液滴の移動を実現している。EWOD装置において、検体を含む液滴は、電極により駆動されて所定の経路で移動し、核酸拡張等の関連ステップを完成する。
【0003】
上記EWOD装置の使用過程において、装置の回路が正常であるか否かを判断する必要があるため、専門的な回路検出方法が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記欠陥の少なくともいずれかを克服するために、誘電湿潤装置を提供する必要がある。
【0005】
また、本発明は、上記の誘電湿潤装置の回路検知方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る誘電湿潤装置は、検出チップと、電源入力モジュールと、スイッチモジュールと、検出モジュールと、判断モジュールと、を備える。前記検出チップは、チャンネルと前記チャンネルの対向する両側に設けられる駆動回路とを含み、前記駆動回路は、前記チャンネルの一方側に設けられた複数の駆動電極と、前記チャンネルの前記駆動電極と反対する側に配置された検出電極とを含み、前記駆動電極の各々は、前記検出電極と結合して前記駆動回路を形成し、前記電源入力モジュールは、複数の前記駆動電極に電気的に接続されて、前記駆動電極に電源電圧を出力し、前記スイッチモジュールは、前記駆動電極と前記電源入力モジュールとの間に設けられて、複数の前記駆動電極のうちの1つを選択して前記電源入力モジュールに接続し、前記検出モジュールは、前記検出電極と電気的に接続されて、前記検出電極が出力する検出電圧を取得し、且つ前記検出電圧を累積して累積電圧値を取得し、前記判断モジュールは、前記検出モジュールに電気的に接続されて、前記累積電圧値を取得し、且つ前記累積電圧値とプリセット電圧値とを比較することにより、前記駆動回路に短絡または開路が発生したか否かを判断する。
【0007】
本願の実施形態では、前記判断モジュールは、前記駆動回路が短絡または開路したと判断した場合に、さらに前記短絡または開路が発生した位置を決定するために使用される。
【0008】
本願の実施形態では、前記検出モジュールは、オペアンプと第1容量とを有する電圧累積回路を備え、前記検出電極の出力端子は、前記オペアンプの負入力端子と前記第1容量の一端にそれぞれ接続され、
前記第1容量の他端は、前記オペアンプの出力端子に接続され、前記オペアンプの正入力端子は、接地されており、
前記オペアンプの出力端子は、前記検出モジュールの出力端子として、前記検出電圧の前記累積電圧値VPを出力することに用いられる。
【0009】
本願の実施形態では、前記電圧累積回路は、積分器を構成する。
【0010】
本願の実施形態では、前記駆動回路は、前記駆動電極の前記検出電極に近接する側に設けられる第1誘電層と、前記検出電極の前記駆動電極に近接する側に設けられる第2誘電層と、さらに含む。
【0011】
本願の実施形態では、前記チャンネル内には、空気及び/又はシリコーンオイルが設けられている。
【0012】
本願の実施形態では、前記電源電圧は、連続四角波パルス電圧である。
【0013】
本願の実施形態では、前記検出チップは、第1蓋板と、間隔層と、第2蓋板とを含むチップケースをさらに備え、前記間隔層の対向する両面は、前記第1蓋板と前記第2蓋板とにそれぞれ隣接しており、前記第1蓋板、前記間隔層及び前記第2蓋板は、取り囲んで前記チャンネルを形成し、複数の前記駆動電極は、前記第1蓋板における前記チャンネルに近い側の表面にアレイ状に配置され、前記検出電極は、前記第2蓋板における前記チャンネルに近い側の表面に配置されている。
【0014】
また、本発明は、上述したような誘電湿潤装置の開路検出方法をさらに提供する。前記誘電湿潤装置の開路検出方法は、前記スイッチモジュールを指定された1つの前記駆動電極に接続し、前記電源入力モジュールに指定された前記駆動電極に前記電源電圧を供給させるステップと、前記検出電極と前記駆動電極とが結合して、前記駆動回路を形成し、且つ前記検出電圧を出力するステップと、前記検出モジュールで前記検出電圧を取得し、且つ前記検出電圧を累積して前記累積電圧値を取得するステップと、前記判断モジュールで前記累積電圧値を取得し、且つ前記累積電圧値とプリセット電圧値とを比較することにより、前記駆動回路が短絡または開路しているかどうかを判断するステップと、を備える。
【0015】
また、本願の実施形態では、前記誘電湿潤装置の開路検出方法は、前記駆動回路が短絡または開路したと判断した場合、さらに前記短絡または開路が発生した位置を決定するステップをさらに備える。
【0016】
従来技術と比較して、本発明によって提供される誘電湿潤装置は、回路セルフチェックを実施して、その内部回路が正常であるかを検出することができる。具体的には、累積電圧値と予め設定された電圧値とを比較することで、誘電湿潤装置の回路に異常が発生したか否かを判断し、かつ、回路に短絡かそれとも開路が発生したか、及び短絡や開路が発生した具体的な位置を正確に判断することができる。この誘電湿潤装置は、回路検出原理が簡単であり、操作が簡単であり、検査が正確であり、効率も高く、故障点の判断も正確である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る検出チップの概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る誘電湿潤装置の回路モジュールを示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る誘電湿潤装置の電気回路の概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係る誘電湿潤装置の等価回路模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る誘電湿潤装置の電圧曲線図電圧曲線図である。
図6】本発明の一実施形態に係る誘電湿潤装置の電気回路が開路した時の等価回路を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る誘電湿潤装置の電気回路が開路したときの電圧曲線図電圧曲線図である。
図8】本発明の一実施形態に係る誘電湿潤装置の電気回路が短絡した場合の等価回路模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る誘電湿潤装置の電気回路が短絡したときの電圧曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態における図面を参照しながら、本発明の実施形態における技術的な態様を明確にし、完全に説明するが、説明した実施形態は、全ての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態にすぎないことは明らかである。
【0019】
あるコンポーネントが他のコンポーネントに「固定される」と称される場合、それは他のコンポーネントに直接に存在してもよく、中間媒体が存在してもよい。あるコンポーネントが他のコンポーネントに「接続」と見なされる場合、それは直接に他のコンポーネントに接続されてもよく、同時に中間媒体が存在してもよい。あるコンポーネントが他のコンポーネントに「設けられる」と見なされる場合、それは直接に他のコンポーネントに設けられてもよく、同時に中間媒体が存在してもよい。本明細書で使用される用語「垂直」、「水平」、「左」、「右」及びそれに類似する表現は、説明の目的のためだけに使用される。
【0020】
以下に説明するシステムの実施形態は、単に概略的であり、前記モジュールまたは回路の区分は、単なる論理的な機能の区分であり、実際に実現する場合は別の区分があってもよい。また、「含む」という語は他のユニットやステップを排除せず、単数は複数を排除しない。システム請求項に記載の複数のユニットまたは装置は、ソフトウェアまたはハードウェアを介して同じユニットまたはデバイスによっても実現されうる。第1、第2などの言葉は名前を表していますが、特定の順序を表していない。
【0021】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明の技術分野に属する技術者が一般的に理解する意味と同じである。本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明する目的だけであり、本発明を限定することを意味するものではない。本明細書で使用される用語「及び/または」は、1つまたは複数の関連する列項目の任意及びすべての組み合わせを含む。
【0022】
図1に示すように、本発明は、チップケース1とチャンネル2と駆動回路3とを備えた検出チップ10を提供する。前記チャンネル2は、前記チップケース1内に設けられて、検体(例えば、核酸サンプル)を含む液滴aを載置するためのものである。前記液滴aは、チャンネル2内で核酸拡張反応を行なうことができる。
【0023】
前記チップケース1は、第1蓋板11と、間隔層12と、第2蓋板13と、を備えている。当該間隔層12の対向する両面は、第1蓋板11と第2蓋板13とにそれぞれ隣接しており、第1蓋板11、間隔層12及び第2蓋板13は、取り囲んで前記チャンネル2を形成する。
【0024】
駆動回路3は、液滴aを所定の経路に沿って移動させて、チャンネル2内で核酸拡張反応を完成する。駆動回路3は、第1蓋板11におけるチャンネル2に近い側の表面に設けられた複数の駆動電極31と、駆動電極31の第2蓋板13に近い側に設けられる第1誘電層33と、第2蓋板13におけるチャンネル2に近い側の表面に設けられた検出電極32と、検出電極32の第1蓋板11に近い側に設けられる第2誘電層34と、を含む。明らかなように、駆動電極31と検出電極32とは、チャンネル2の両側に対向するように設けられている。駆動電極31と検出電極32とをオン/オフさせることにより、液滴aが当該チャンネル2内を所定の経路で移動するように制御することができる。
【0025】
本実施形態では、図1に示すように、駆動回路3は、アレイ状に配列された複数の駆動電極31と、第2蓋板13のチャンネル2に近接する側の表面に設けられ、且つ上記の検出電極32としての導電層と、を備えている。
【0026】
本実施形態では、駆動電極31は、第1蓋板11におけるチャンネル2に近い側に設けられている。具体的には、金属エッチング方法または電気メッキの方法で前記駆動電極31を形成することができる。
【0027】
具体的には、駆動回路3は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,TFT)駆動回路を構成している。また、液滴aが導電性を有するため、誘電湿潤の原理によって、液滴aがチャンネル2内を所定の経路で移動することを実現できる。TFTの原理により、ある駆動電極31と検出電極32との間の回路を選択的にオンまたはオフすることにより、当該駆動電極31と当該検出電極32との間の電圧を変化させ、さらに液滴aと、第1誘電層33及び第2誘電層34との間のぬれ特性を変化させ、当該液滴aがチャンネル2内を所定の経路で移動するように制御する。以下の実施形態において、説明の便宜上、例えば、駆動電極31が電極A、電極B及び電極Cという3つの電極を含むことを例にして、液滴aがチャンネル2内を所定の経路で移動する原理を説明する。
【0028】
図1に示すように、液滴aは、電極A、電極B及び電極Cを移動することができる。液滴aが電極Aにある場合、電極Bと検出電極32との間に電圧が印加されることにより、電極Aと検出電極32との間の電圧が遮断されながら電極Bに電圧が印加される。このとき、液滴aと、第1誘電層33及び第2誘電層34との濡れ特性は変化し、電極Aと液滴aとの間の液-固接触角が大きくなり、電極Bと液滴aとの間の液-固接触角が小さくなり、電極Aから電極Bへの液滴aの移動を促す。
【0029】
明らかに、検出チップ10における液滴駆動の原理は、電圧によって誘電層の親疎水性を変化させ、さらに誘電層での液滴aが誘電層を吸着する能力を変化させることにより、液滴aの移動を促す。そのため、検出チップ10の組み立てが完了した及び使用する前には、駆動回路3に対して回路検出を行なって、駆動回路3に短絡や開路の問題がないようにし、核酸拡張反応が順調に進むことを確保する。
【0030】
なお、図2及び図3に示すように、本発明の実施形態に係る誘電湿潤装置100は、検出チップ10と、電源入力モジュール20と、スイッチモジュール30と、検出モジュール40と、判断モジュール50とを備える。電源入力モジュール20は、スイッチモジュール30を介して検出チップ10に電気的に接続されている。具体的には、電源入力モジュール20は、スイッチモジュール30を介して検出チップ10の駆動電極31に電気的に接続され、駆動電極31に電源電圧Vinを出力する。
【0031】
スイッチモジュール30は、駆動電極31を電源入力モジュール20に接続する。具体的には、本実施形態では、スイッチモジュール30は、複数のスイッチユニット4を備えている。各々のスイッチユニット4は、対応する1つの前記駆動電極31と電気的に接続されている。駆動電極31と検出電極32との間に結合が生じる時に、検出電極32は、検出電圧Vout(即ち、結合電圧)を受信し、且つそれを出力する。
【0032】
検出モジュール40は、検出電極32と電気的に接続されて、検出電極32が出力する検出電圧Voutを取得し、且つ前記検出電圧Voutを累積して、検出電圧Voutの累積電圧値VPを得る。検出電圧Voutを累積して微小な偏差信号を蓄積することができ、設定された累積電圧値VPに到達したら出力する。これにより、誤差を効果的に除去し、検出の精度を向上させることができる。
【0033】
具体的には、本実施形態では、検出モジュール40は、少なくとも電圧累積回路41を含む。電圧累積回路41は、オペアンプUと、第1容量C1とを備えている。ここで、検出電極32の出力端子は、前記オペアンプUの負入力端子と前記第1容量C1の一端にそれぞれ接続され、前記第1容量C1の他端は前記オペアンプUの出力端子に接続され、前記オペアンプUの正入力端子は接地されている。前記オペアンプUの出力端子は、検出モジュール40の出力端子として、前記検出電圧Voutの累積電圧値VPを出力することに用いられる。
【0034】
本実施形態では、前記電圧累積回路41は、積分器を構成している。
【0035】
判断モジュール50は、検出モジュール40と電気的に接続されて、累積電圧値VPを取得し、且つ前記累積電圧値VPとプリセット電圧値Vrとを比較して、検出チップ10が短絡または開路しているか否かを判断する。勿論、判断モジュール50は、検出チップ10が短絡または開路したと判断する場合には、短絡または開路が発生した位置をさらに判定することも可能である。
【0036】
なお、本実施形態において、検出モジュール40は、電圧累積回路41(即ち、積分器)を含むが、これに限定されない。勿論、前記検出モジュール40は、フィルタ回路等の他の回路を含んでもよい。
【0037】
本実施形態において、第1誘電層33及び第2誘電層34は、いずれも絶縁撥水層であり、具体的にはポリテトラフルオロエチレンコートであってもよい。このように、絶縁撥水として機能する一方で、液滴aを所定の経路内で移動させることをより円滑にし、移動中に液玉が割れないようにすることができる。
【0038】
図4は、図3に示した回路の等価回路図である。勿論、本願では、上記の電源入力モジュール20、スイッチモジュール30、電圧累積回路41を含む他に、検出チップ10内の第1誘電層33、第2誘電層34及びチャンネル2内の空気が何れも駆動回路3において等価容量を形成する。具体的には、第1誘電層33は、駆動回路3において等価的な第1誘電層容量Cdi-Bを形成する。第2誘電層34は、駆動回路3において等価的な第2誘電層容量Cdi-Tを形成する。第1誘電層33と第2誘電層34との間のチャンネル2内にシリコーンオイルが充填されないと、等価な空気容量Cairが形成される。チャンネル2内にシリコーンオイルが充填されると、形成された等価な空気容量Cairの値はシリコーンオイルの添加量に応じて変わる。ここで、各駆動電極31が位置する駆動回路3において、第1誘電層容量Cdi-B、空容量Cair及び第2誘電層容量Cdi-Tがこの順に直列に接続され、前記第1誘電層容量Cdi-Bの空気容量Cairから遠い方の一端が駆動電極31に接続され、前記第2誘電層容量Cdi-Tの空気容量Cairから遠い方の一端が検出電極32に接続されている。
【0039】
また、本実施形態では、スイッチユニット4と対応する駆動電極31とが引き回し線により接続されていると、スイッチユニット4と対応する駆動電極31との間には引き回し線の存在によって第1抵抗(即ち、等価抵抗)(RBA、RBB、RBC)及び第2容量(即ち、等価容量)(CBA、CBB、CBC)が発生する。そのうち、各駆動電極31が位置する駆動回路3において、前記第1抵抗(RBA、RBB、RBC)は、前記第2容量(CBA、CBB、CBC)に直列接続され、前記第1抵抗(RBA、RBB、RBC)の一端がスイッチモジュール30に接続され、前記第1抵抗(RBA、RBB、RBC)の他端が前記第2容量(CBA、CBB、CBC)と前記駆動電極31とにそれぞれ接続され、前記第2容量(CBA、CBB、CBC)の他端が接地されている。
【0040】
本実施形態では、検出電極32と検出モジュール40とが引き回し線により接続される時に、検出電極32と検出モジュール40との間に引き回し線の存在によって第2抵抗(即ち、等価抵抗)RTが発生する。
【0041】
本実施形態では、電源入力モジュール20が出力する前記電源電圧Vinは、連続四角波パルス電圧である。そのため、検出電極32が出力する検出電圧Voutも連続四角波パルス電圧である。
【0042】
なお、本願実施例では、スイッチモジュール30は、コントローラ(図示せず)の制御下で、いずれかの駆動電極31をオンにすることで、単一の駆動電極31に対して逐次に検出し、正確な検出を行い、駆動電極31と検出電極32との間に構成される回路に短絡または開路が発生したか否か、及び短絡の発生位置を精確に判断することができる。
【0043】
なお、検出電極32が検出電圧Voutを電圧累積回路41に出力すると、電圧累積回路41は検出電圧Voutを累積することで、累積電圧値VPを得る。続いて、検出モジュール40は、累積電圧値VPを判断モジュール50に出力する。判断モジュール50は、さらに、累積電圧値VPとプリセット電圧値Vrとを比較して判断し、両者の間の差異により駆動回路3に開路または短絡が生じているか否かを判定し、短絡または開路が発生した具体的な位置をさらに特定することができる。
【0044】
なお、検出する前に、予め駆動回路3の回路が正常である場合の累積電圧値を、プリセット電圧値Vrとして検出しておく必要がある。即ち、プリセット電圧値Vrは、駆動回路3の回路が正常である場合の累積電圧値である。以下に、本発明が提供する誘電湿潤装置100の回路検出原理について詳述する。
【0045】
図4図5に示すように、まず、誘電湿潤装置100の回路が正常であるか否かをテストする。
【0046】
ここで、検出チップ10のチャンネル2内にシリコーンオイルが注入されない場合には、図4に示すように、電源入力モジュール20で電源電圧Vin(図5の如く、入力された電源電圧Vinが一連続四角波パルス電圧である)を入力し、スイッチモジュール30を介して所定の駆動電極31が位置する回路に切り替え、その後、検出電極32を介して検出電圧Voutを出力し、検出電圧Voutを検出モジュール40における電圧累積回路41(積分器)で累積処理して累積電圧値VP(図5に示すように)を取得し、最後に検出モジュール40は累積電圧値VPを判断モジュール50に出力して比較判定を行う。
【0047】
例えば、スイッチモジュール30におけるスイッチユニット4が電極Aに切り替えられると、電極Aと検出電極32とが1つの駆動回路を構成し、電源入力モジュール20が出力する連続四角波パルス電圧が等価抵抗RBA(電極Aとスイッチモジュール30との間の引き回し抵抗)を経て電極Aに到達し、電極Aと検出電極32とが結合反応を発生した後、検出電極32が検出電圧Vout(即ち、結合電圧)を出力し、さらに、検出電極32と検出モジュール40との間の引き回し抵抗を経て電圧累積回路41(即ち、積分器)に到達する。次に、電圧累積回路41は、検出電圧Voutを累積処理して累積電圧値VPを得て、且つこれを判断モジュール50に出力する。この累積電圧値VPを判断モジュール50が取得すると、累積電圧値VPと正常回路のプリセット電圧値Vrとの差異を利用して誘電湿潤装置100の回路が正常であるか否かを判断することができる。
【0048】
図5に示すように、1つの四角波電圧周期内において、誘電湿潤装置100の回路の正常な累積電圧値VPは、図5における出力電圧Voutのピーク点で示される。本実施形態では、累積電圧値VPに対応する電圧曲線が、プリセット電圧値Vrに対応する電圧曲線と重なり、累積電圧値VPがプリセット電圧値Vrと等しくなるため、誘電湿潤装置100の回路が正常であることを証明することができる。
【0049】
検出チップ10のチャンネル2内にシリコーンオイルが注入された後の回路検出原理は、上記チャンネル2内が空気である場合の検出原理と同様であるが、シリコーンオイルを注入した後の累積電圧値VPの大きさがシリコーンオイルを注入していない場合の累積電圧値VPと異なる点だけ相違している。
【0050】
次に、図6図7を参照しながら、誘電湿潤装置100の回路が開路したことを試験する際の検出原理を紹介する。
【0051】
図6に示すように、電源入力モジュール20で電源電圧Vin(図7に示すように、入力電源電圧Vinが一連続四角波パルス電圧である)が印加され、スイッチモジュール30を介して所定の駆動電極31が位置する回路に切り替えられる。回路が開路すると、電源電圧Vinがスイッチモジュール30を介して駆動電極31の回路に切り替えられず、検出電極32にも到達しない。このため、検出モジュール40の電圧累積回路41(即ち、積分器)は出力電圧Voutを受けることができず、出力電圧Voutを累積して累積電圧値VPを得ることもできないので、判断モジュール50は、指定された駆動電極31が位置する回路が開路したと容易に判断する。
【0052】
電極Aが位置する回路の引き回し線が開路したことを例にとると、引き回し線の開路により、検出モジュール40は、出力電圧Voutを受けて累積電圧値VPを得ることができない。従って、このとき、開路電圧値の大きさとプリセット電圧値Vrの値との間の電圧差ΔV1に基づいて電気回路が開路しているか否かを判断することができる。図7に示すように、出力電圧Voutのピーク点が通常のプリセット電圧値Vrに対応する電圧曲線であり、出力電圧Voutのピーク点が開路してから累積電圧値VPに対応する電圧曲線であり、検出モジュール40が検出電圧Voutを受信することができず、さらに累積電圧値VPが得られないため、累積電圧値VPに対応する電圧曲線は一直線であり、累積電圧値VPとプリセット電圧値Vrとの間の高さ差が電圧差ΔV1となるが、このとき、電圧差ΔV1が大きく、ΔV1及び曲線cの形状により電極Aが所在する電気回路が開路していると判断できる。
【0053】
なお、他の駆動電極31の引き回し線や検出電極32の引き回し線が開路されていれば、上記原理からも判断できる。
【0054】
図8及び図9に示すように、最後に、誘電湿潤装置100の回路が短絡したことをテストする際の検出原理を紹介する。
【0055】
図8に示すように、電源入力モジュール20から電源電圧Vin(図9、入力された電源電圧Vinは一連続四角波パルス電圧である)を入力し、スイッチモジュール30を介して所定の駆動電極31が位置する回路に切り替えた後、検出電極32を介して検出電圧Voutを出力する。検出電圧Voutは、検出モジュール40における電圧累積回路41(即ち積分器)を介して累積処理されて累積電圧値VPを取得し、最後に、ピーク検波器は、累積電圧値VPを判断モジュール50に出力して比較判定を行う。電源入力モジュール20で電源電圧Vinが入力されると、指定された駆動電極31が位置する回路が短絡した場合、異なる駆動電極31の間の引き回し線が互いに接続されているため、ある駆動電極31を駆動するインピーダンスRCが増加し、積分器による累積電圧値VPの変化が減少するため、この際、短絡後に得られる累積電圧値VPの大きさと通常のプリセット電圧値Vr値との電圧差ΔV2から、回路が短絡しているか否かを判断することができる。
【0056】
図9は、出力電圧Voutのピーク点が通常のプリセット電圧値Vrに対応する電圧曲線であること及び出力電圧Voutのピーク点が累積電圧値VPに対応する電圧曲線であることを示している。短絡が発生したとき、積分器による累積電圧値VPの変化が小さいため、累積電圧値VPに対応する電圧曲線の斜度が通常のプリセット電圧値Vrに対応する電圧曲線の斜度よりも小さい。2つの電圧曲線に対応するピーク点の間の高さ差が電圧差ΔV2となる。このとき、電圧差ΔV2は、開路時の電圧差ΔV1よりも小さく、電圧差ΔV2と累積電圧値VPに対応する電圧曲線形状とによって、指定された駆動電極31が位置する回路に短絡があるか否かを判断することができる。
【0057】
電極Aが位置する回路の引き回し線が短絡したことを例にとると、引き回し線の短絡により、電極Aが位置する回路の引き回し線と電極Bが位置する回路の引き回し線とが互いに接続されるので、電極Aや電極Bを駆動する際のインピーダンスRCが増え、ピーク検波器による累積電圧値VPが位置する電圧曲線の斜度が通常のプリセット電圧値Vrの電圧曲線の斜度に比べて小さくなるため、この時、累積電圧値VPの大きさと通常のプリセット電圧値Vrとの電圧差ΔV2に基づいて回路が短絡したと判定することができる。
【0058】
なお、他の駆動電極31が位置する回路の引き回し線や他の検出電極32が位置する回路の引き回し線に短絡が発生したか否かを検出する必要があれば、上記の原理に基づいて判断することもできます。
【0059】
誘電湿潤装置100の回路を検出する際には、まず、図5に示すような正常回路の電圧曲線図を得るために、誘電湿潤装置100が正常的に動作する時の回路を検出する必要がある。このように、誘電湿潤装置100が使用中に異常が発生した場合に、ピーク検波器による累積電圧値VPの変化によって、回路に短絡や開路が発生しているかどうか、及び短絡や開路が発生した具体的な位置を直接に判断することができる。本願の誘電湿潤装置100は、別途検出装置を設ける必要がなく、自己の回路でその検出チップ10を自己検出できる。その検出方法が簡単であり、操作が簡単であり、検査も正確であり、効率も高く、故障点の判断も正確である。なお、他の実施形態では、上記回路検出プロセスを単独で実現できる検出装置を用いて、検出チップ10に対して回路検出を行っても良い。
【0060】
また、本発明は、誘電湿潤装置100の回路を検出するための回路検出方法をさらに提供する。前記方法は、少なくとも以下のステップを含む。
【0061】
第1ステップでは、前記電源入力モジュール20が指定された駆動電極31に前記電源電圧Vinを供給するように、スイッチモジュール30を指定された駆動電極31に切り替える。
【0062】
第2ステップでは、駆動電極31と検出電極32とは結合反応を発生して、結合電圧(即ち検出電圧Vout)を発生し、検出電極32は、当該検出電圧Voutを検出モジュール40に出力する。
【0063】
第3ステップでは、検出モジュール40は、検出電圧Voutを累積した後、累積電圧値VPを得る。
【0064】
第4ステップでは、判断モジュール50は、前記累積電圧値VPを取得し、且つ前記累積電圧値VPとプリセット電圧値Vrとを比較して、駆動回路3において指定されたいずれかの回路が短絡または開路しているか否かを判断するとともに、短絡または開路が発生した具体的な位置も決定することができる。
【0065】
なお、前記方法の具体的な判断過程は、前述した検出原理についての記載を参照する。ここで、詳しい説明が省略する。
【0066】
従来技術と比較して、本発明によって提供される誘電湿潤装置100は、回路セルフチェックを実施して、その内部回路が正常であるかを検出することができる。具体的には、累積電圧値と予め設定された電圧値とを比較することで、誘電湿潤装置100の回路に異常が発生したか否かを判断し、かつ、回路に短絡かそれとも開路が発生したか、及び短絡や開路が発生した具体的な位置を正確に判断することができる。この誘電湿潤装置100は、回路検出原理が簡単であり、操作が簡単であり、検査が正確であり、効率も高く、故障点の判断も正確である。
【符号の説明】
【0067】
100 誘電湿潤装置
10 検出チップ
1 チップケース
11 第1蓋板
12 間隔層
13 第2蓋板
2 チャンネル
3 駆動回路
31 駆動電極
32 検出電極
33 第1誘電層
34 第2誘電層
20 電源入力モジュール
30 スイッチモジュール
4 スイッチユニット
40 検出モジュール
41 電圧累積回路
50 判断モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9