(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058200
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/21 20060101AFI20220404BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220404BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20220404BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20220404BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61K8/21
A61Q11/00
A61K8/64
A61K8/365
A61K8/19
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146719
(22)【出願日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】17/038,607
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521398231
【氏名又は名称】ジーシー ラボラトリー アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】GC Laboratory America Inc.
【住所又は居所原語表記】3737 W 127th Street Alsip IL 60803 United states of America
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】本多 弘輔
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB172
4C083AB242
4C083AB282
4C083AB342
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC662
4C083AC862
4C083AD272
4C083AD421
4C083CC41
4C083EE32
4C083EE33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】歯牙にバイオフィルムが形成されることによる口腔内疾患を治療するための口腔ケア組成物であって、長期保存後においてもスズイオンの濃度が高く保たれるような高い保存安定性を有する口腔ケア組成物を提供する。
【解決手段】水と、スズイオン源と、フッ化物イオン源と、カゼインホスホペプチド-非晶質リン酸カルシウムと、クエン酸又はクエン酸塩の少なくとも一方とを含む組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、スズイオン源と、フッ化物イオン源と、カゼインホスホペプチド-非晶質リン酸カルシウムと、クエン酸又はクエン酸塩の少なくとも一方と、を含む、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記スズイオン源がフッ化第一スズである、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記スズイオン源及び前記フッ化物イオン源がフッ化第一スズである、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記カゼインホスホペプチド-非晶質リン酸カルシウムの含有量が、前記口腔ケア組成物に対して1~10質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記クエン酸又は前記クエン酸塩の少なくとも一方の含有量が、前記口腔ケア組成物に対して1~8質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記フッ化第一スズの含有量が、前記口腔ケア組成物に対して0.4~0.6質量%である、請求項2に記載の口腔ケア用組成物。
【請求項7】
前記水の含有量が、前記口腔ケア組成物に対して30質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記フッ化物イオン源の含有量が、前記口腔ケア組成物に対して0.4~0.5質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙上のバイオフィルム生成によって引き起こされる、口腔内の疾患を治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオフィルムは、口腔内の歯牙などの表面に付着する細菌の薄いスライム状の層である。バイオフィルムの例はプラークであり、これは、歯肉の病気(例えば、歯肉炎および歯周炎)又は虫歯などの口腔上の健康問題をもたらすことがある。このような疾患を治療するための口腔ケア組成物は、例えば、洗口剤、練り歯磨き、または歯科用クリーム等の形で提供される。口腔ケア組成物は飲み込まれないが、口腔内に含まれたり、塗られたりして治療するために使用され、次いで、吐き出される。
【0003】
バイオフィルムによって引き起こされる疾患を治療するための口腔ケア組成物は一般に知られており、スズイオン源を含有する。スズイオンは水溶液中で抗細菌活性を有する。しかしながら、スズイオンは、イオンが沈殿する場合(例えば、pHが中性である溶液中または水の存在下)、抗細菌活性を失う。したがって、スズイオンには安定性の問題があり、スズイオンの十分な安定性を有する口腔ケア組成物が必要とされている。
【0004】
スズに関する安定性の問題に対処するために、水の量を制限する組成物またはキレート効果を使用する組成物が提案されている。例えば、クエン酸およびクエン酸ナトリウム塩を、組成物の1.0重量%~3.0重量%の量で含有し、水溶液中のスズイオンを安定化する緩衝系を含む組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。スズイオンを安定化するためのCPP-ACP(カゼインホスホペプチド-非結晶性リン酸カルシウム)を含む組成物も提案されている(例えば特許文献2)。しかしながら、これらの組成物は、時間が経過するにつれてスズイオンの濃度が徐々に減少するという欠点を有する。したがって、長期保存後のスズイオンの十分な安定性を有する口腔ケア組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10,278,906号
【特許文献2】米国特許第2016/0317404号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、長期保存後においてもスズイオンの濃度が高く保たれるような高い保存安定性を有する口腔ケア組成物を提供することにある。
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、長期保存してもスズイオンの濃度が高く保たれるような高い保存性を有する口腔ケア組成物を見いだした。さらに、本発明者は、他のイオンの濃度が口腔ケア組成物中で高く保たれていることも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0008】
本発明の1つの態様は、水、スズイオン源、カゼインホスホペプチド-非晶質リン酸カルシウム(CPP-ACP)、および少なくともクエン酸またはクエン酸塩を含有する口腔ケア組成物である。
【0009】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態または実施例に限定されない。好ましい実施形態および実施例は、例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、長期保存後においてもスズイオンの濃度が高く保たれるような高い保存安定性を有する口腔ケア組成物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について、その好適な形態を参照して以下に説明する。
【0012】
本形態による口腔ケア組成物は、水、スズイオン源、CPP-ACP、及び、少なくともクエン酸またはクエン酸塩を含有する。本形態の口腔ケア組成物は、CPP-ACP及び少なくともクエン酸またはクエン酸塩を含み、スズイオンが沈殿するのを防ぎ、長期保存後でもスズイオンの濃度を高く保つ。スズイオンの濃度に加え、本形態の口腔ケア組成物中のフッ化物イオン濃度は長期保存後においても高く保たれる。フッ化物イオンの濃度が高いほど、虫歯予防効果が向上する。さらに、本形態の口腔ケア成物中のスズおよびフッ化物イオンの濃度に加えて、カルシウムイオンおよび無機リン酸塩イオンの濃度は、長期保存後でも高く保たれる。カルシウムイオンと無機リン酸塩イオンの濃度が高いほど、再石灰化能力が向上する。
【0013】
本形態において、口腔ケア組成物は、歯磨き粉または口腔ゲル組成物である。
【0014】
本形態では、口腔ケア組成物は、水を含有する。好ましくは、精製された水である。本形態の口腔ケア組成物において、水の量は、組成物に対して30質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、水の量は組成物に対して40質量%以上である。水の量が30質量%未満であると、原材料を溶解させることが困難となる。
【0015】
本形態において、口腔ケア組成物はスズイオン源を含む。スズイオン源は、フッ化物及び塩化物などの対イオンを有するスズの化合物であり得る。好ましくは、スズイオン源はフッ化第一スズである。本形態の口腔ケア組成物は、スズイオン源を組成物に対して0.2~0.7質量%の量で含む。スズイオン源の量は、組成物に対して0.4~0.5質量%であることが好ましい。スズイオンの量は、組成物に対して0.15~0.53質量%であり、組成物に対して0.3~0.38質量%であることが好ましい。
【0016】
本形態では、口腔ケア組成物は、フッ化物イオン源を含む。フッ化物イオン源としては、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、及び、モノフルオロリン酸ナトリウムが挙げられる。好ましくは、フッ化物イオン源はフッ化第一スズである。本形態の口腔ケア組成物は、フッ化物イオン源を組成物に対して0.2~0.7質量%含む。フッ化物イオン源の量は、組成物に対して0.4~0.5質量%であることが好ましい。フッ化物イオンの量は、組成物に対して0.05~0.17質量%であり、組成物に対して0.1~0.12質量%であることが好ましい。
【0017】
本形態の口腔ケア組成物の好ましい態様において、口腔ケア組成物は、スズイオン源及びフッ素イオン源としてフッ化第一スズを含む。
【0018】
本形態において、口腔ケア組成物はCPP-ACPを含む。CPP-ACPは、カルシウムイオン源および無機リン酸塩イオン源である。本形態の口腔ケア組成物には、CPP-ACPが組成物に対して1~20質量%含まれる。CPP-ACPの量が組成物に対して20質量%を超えるとCPP-ACPが溶解しにくくなる。CPP-ACPの量は、2~10質量%であることが好ましい。より好ましいCPP-ACPの量は、組成物に対して2.5~10質量%である。
【0019】
本形態において、口腔ケア組成物は、少なくともクエン酸又はクエン酸塩を含む。クエン酸又はクエン酸塩は、キレート効果によって水溶液中のスズイオンを安定化する。クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸亜鉛、クエン酸カリウム等が挙げられる。本形態の口腔ケア組成物の好ましい態様において、クエン酸塩はクエン酸ナトリウムである。本形態の口腔ケア組成物は、少なくともクエン酸またはクエン酸塩を、組成物に対して1~8質量%の量で含む。クエン酸またはクエン酸塩の量が組成物に対して8質量%を超えると、材料を溶解させることが困難になる。クエン酸またはクエン酸塩の量は、組成物に対して4~8質量%であることが好ましい。
【0020】
また、本形態の口腔ケア組成物には、増粘剤、研磨剤、界面活性剤、発泡剤、湿潤剤、着色剤、防腐剤、甘味料、又は香料等を、口腔ケア組成物の特性及び特性に実質的に悪影響を及ぼさない量で、必要に応じて適宜配合することができる。
【0021】
口腔ケア組成物は組成物の粘度を改善するために増粘剤を含有してもよい。増粘剤としては、従来から口腔ケア組成物に使用されてきた任意の増粘剤を使用することができる。適切な増粘剤の例には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシポリメチレン、カルボキシメチルセルロース、カルシウムカルボキシメチルセルロース、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルポリマー、キサンタンガム及びカラジーナンなどの多糖増粘剤が含まれる。2種以上を併用してもよい。好ましくは、本形態の口腔ケア組成物はカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。市販のカルボキシメチルセルロースナトリウムの例は、Cellogen F-AGである。増粘剤の使用量は、使用する材料に応じて適宜調整されるが、本形態の口腔ケア組成物は、組成物に対して1~10質量%の量で増粘剤を含むことができる。増粘剤の配合量は、組成物に対して2~5質量%であることが好ましい。
【0022】
口腔ケア組成物は、無機増粘剤を含有してもよい。無機増粘剤としては、従来から口腔ケア組成物に使用されている任意の増粘剤を使用することができる。適切な無機増粘剤の例には、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸粉末、種々のガラス、非晶質含水ケイ酸、ヒュームドシリカ、および二酸化チタンが含まれる。2種以上を併用してもよい。好ましくは、本形態の口腔ケア組成物はヒュームドシリカを含む。市販のヒュームドシリカの例は、AEROSIL 200である。無機増粘剤の使用量は、使用する材料に応じて適宜調整されるが、本形態の口腔ケア組成物は、無機増粘剤を組成物に対して1~10質量%含むことができる。無機増粘剤の配合量は、組成物に対して2~5質量%であることが好ましい。
【0023】
本形態の口腔ケア組成物は、研磨剤を含有してもよい。研磨剤としては、従来から口腔ケア組成物に使用されている研磨剤であればどのようなものを使用してもよい。好適な研磨剤の例としては、シリカ、アルミナ、及びこれらの混合物が挙げられる。本形態の口腔ケア組成物は、シリカを含むことが好ましい。市販のシリカの例は、Zenodent 113である。研磨剤の配合量は、使用する材料に応じて適宜調整されるが、本形態の口腔ケア組成物では、研磨剤を組成物に対して0.1~30質量%含むことができる。好ましくは、組成物に対して1~15質量%である。
【0024】
本形態の口腔ケア組成物は湿潤剤を含むことができる。湿潤剤としては、従来から口腔ケア組成物に使用されている任意の湿潤剤を使用することができる。適切な湿潤剤の例には、グリセリンおよびジグリセリンなどのポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及び、モノメチルエーテルが含まれる。これらの2種以上を併用してもよい。好ましくは、本形態の口腔ケア組成物は、グリセロール、プロピレングリコールまたはソルビトールの少なくとも1つを含む。プロピレングリコールが使用される場合、パラベン(例えば、0.1%パラベンに対して2%プロピレングリコール)と混合することができる。湿潤剤の量は、使用する材料に応じて適宜調整されるが、本形態の口腔ケア組成物は、組成物に対して0~40質量%の量で湿潤剤を含むことができる。湿潤剤の量は、組成物に対して15~30質量%であることが好ましい。
【0025】
本形態の口腔ケア組成物は界面活性剤を含むことができる。界面活性剤としては、従来から口腔ケア組成物に使用されてきた任意の界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物であり得る。適切なアニオン性界面活性剤の例は、水素化ヤシ油脂肪酸のモノ硫酸化モノグリセリドのナトリウム塩のような高級脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムのような高級アルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルアリールスルホネート、高級アルキルスルホ-アセテート、1,2-ジヒドロキシプロパンスルホネートの高級脂肪酸エステル、及び、脂肪酸中に12~16個の炭素を有するもの、アルキル又はアシルラジカルなどの低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和した高級脂肪族アシルアミドの水溶性塩である。好ましくは、本形態の口腔ケア組成物は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを含む。市販のラウロイルサルコシン酸ナトリウムの例はサルコシン酸塩LN-30である。好適なカチオン性界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド;セチルピリジニウムクロリド;セチルトリメチルアンモニウムブロミド;ジイソブチルフェノキシエチル-ジメチルベンジルアンモニウムクロリド;セチルピリジニウムフルオリドなどの、8~18個の炭素原子を含有する1つの長鎖アルキル鎖を有する脂肪族第四級アンモニウム化合物の誘導体が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤のいくつかは、抗菌剤としても有用である。適切な両性界面活性剤の例には、カカオアミドエチルベタイン、カカオアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン等が含まれる。適切な非イオン性界面活性剤の例としては、ポロキサマー、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、長鎖第三級アミンオキシド、長鎖第三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシドおよびそのような物質の混合物が挙げられる。これらの2種以上を併用してもよい。界面活性剤の量は、使用する材料に応じて適宜調整されるが、本形態の口腔ケア組成物は、組成物に対して0~40質量%の量で界面活性剤を含むことができる。界面活性剤の配合量は、組成物に対して0~10質量%であることが好ましく、組成物に対して0~3質量%であることがより好ましい。
【0026】
本形態の口腔ケア組成物は、着色剤を含むことができる。着色剤としては、従来から口腔ケア組成物に使用されてきた任意の着色剤を使用することができる。着色剤は水溶性着色剤とすることができる。好ましい着色剤の例は、二酸化チタン、及び、酸化亜鉛である。二酸化チタンは、本形態の口腔ケア組成物に不透明性を付加する白色粉末である。本形態の口腔ケア組成物は二酸化チタンを含むことが好ましい。着色剤の使用量は、使用する材料に応じて適宜調整されるが、本形態の口腔ケア組成物は、組成物に対して0~5質量%の量で着色剤を含むことができる。より好ましい着色剤の量は、組成物に対して0.5~2質量%である。
【0027】
本形態の口腔ケア組成物は甘味料またはフレーバーを含むことができる。甘味料又はフレーバーとして、従来から口腔ケア組成物のために使用されてきた任意の甘味料又はフレーバーを用いることができる。適切な甘味料の例には、スクロース、スクラロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、ペリラルチン、AMP(アスパルチルフェニルアラニン、メチルエステル)、サッカリンナトリウム等が含まれる。好ましくは、本形態の口腔ケア組成物は、サッカリン、ソルビトール又はキシリトールを含む。好ましい態様において、本形態の口腔ケア組成物は、サッカリンナトリウムを含む。適切なフレーバーの例はフレーバー油、例えば、スペアミント、ペパーミント、ウインターグリーン、サッサフラス、クローブ、セージ、ユーカリ、マヨラム、シナモン、レモン、及びオレンジの油、及び、サリチル酸メチルである。好ましくは、本形態の口腔ケア組成物はサリチル酸メチルを含む。甘味料又は香味料の使用量は、使用する材料に応じて適宜調整されるが、本形態の口腔ケア組成物は、組成物に対して0~10質量%の量で甘味料または香味料を含むことができる。甘味料又はフレーバーの量は、組成物に対して0.5~5質量%であることが好ましい。1つの形態では、ソルビトールを湿潤剤として使用することができ、キシリトールを甘味料又はフレーバーとして使用することができる。
【0028】
他の態様は、上記形態の口腔ケア組成物を口腔に投与することを含む、歯牙上のバイオフィルムによって引き起こされる疾患の治療方法である。1つの形態では、口腔ケア組成物はそれを必要とする哺乳動物の口に投与される。好ましくは、口腔ケア組成物は、例えば、ブラッシングによって歯に適用される。ここで口腔ケア組成物は、溶液、ペースト、ゲル又はクリームである。
【0029】
他の態様は、上記形態の口腔ケア組成物の製造方法である。1つの形態では、スズイオン源、CPP-ACP、及び、少なくともクエン酸又はクエン酸塩を水に溶解して、口腔ケア組成物を得る。他の形態では、第1の溶液を得るために、第1のイオン源、CPP-ACP、及び、少なくともクエン酸又はクエン酸塩を水に溶解する。使用される場合、甘味料又はフレーバーも第1の溶液を得るために水に溶解され得る。さらに、使用される場合、湿潤剤を水に溶解して、第1の溶液を得ることもできる。使用される場合、無機増粘剤を第1の溶液中に分散させることができる。その他、湿潤剤、増粘剤、及び、研磨剤を別個の容器に分散させ、混合物を第1の溶液に添加して分散体を得て分散液を混練し、使用する場合には混練した分散液に界面活性剤や香料を添加し、混練して口腔ケア組成物を得ることができる。
【実施例0030】
次に、以下の非限定的な実施例を参照して、本開示についてさらに説明する。
【0031】
<組成の詳細>
実施例1~7では、口腔ケア組成物を表1に記載のように調製した。実施例は、サッカリンナトリウム、キシリトール、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、フッ化第一スズ、ソルビタール、及び、CPP-ACPを精製水に溶解して第1の溶液を得て、フュームドシリカを第1の溶液に分散させた。別途、グリセロール、プロピレングリコール、パラベン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酸化チタン、研磨剤シリカを別容器に分散させ、ヒュームドシリカを分散させた第1の溶液に添加して分散液を得た。分散液を混練し、この混練分散液にサリチル酸メチル、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、フレーバーを加えて混練し、口腔ケア組成物を得た。
【0032】
実施例1~3におけるCPP-ACPの濃度を変化させ、従って、その中のSnF2の濃度もわずかに変化させた。実施例4~7におけるクエン酸ナトリウムの濃度は、CPP-ACPの濃度に加えて変化させた。
比較例1~4の組成物は、クエン酸又はクエン酸ナトリウムを含まなかった。また、比較例5の組成物では、CPP-ACPを塩化カルシウム及びリン酸カリウムで置き換えた。
【0033】
【0034】
<試験方法>
各例の口腔ケア組成物を60℃で1週間保存し(加速試験を想定)、その後、遠心分離して得た10倍水で希釈した組成物の溶液の上澄み溶液に含まれるF、Sn、Ca及びPi(無機リン酸塩イオン;PO4
3-)の可溶性イオン濃度を測定し、その理論値に対する百分率を算出した。Fの可溶性イオン濃度を電極法で測定し、Sn、Ca、Piの可溶性イオン濃度を比色法で測定した。
【0035】
口腔ケア組成物中の可溶性イオン濃度の測定について、実施例1を用いてより具体的に説明する。
【0036】
[作製]
ペースト1.5gに超純水13.5gを加え、スターラーを用いて30分間攪拌した。得られたものを「ペーストの10倍希釈溶液」とする。
【0037】
[Fの測定]
電極電位をフッ素電極法で測定するために、ペーストの10倍希釈溶液を1.5g、全イオン強度調整緩衝液を7.5g、超純水を6g混合した。同様に、既知濃度のフッ化物イオン標準溶液の場合の電極電位を測定し、標準曲線を作成した。試料中のフッ化物イオンの濃度を標準曲線から計算した。
【0038】
計算結果である12.10ppmから、ペースト中に含まれる可溶性Fイオンの濃度は1210ppmと計算され、計算結果の100倍であった。実施例1におけるSnF2の配合量は0.5重量%(5000ppm)であった。SnF2の分子量が156.71、Fの原子量が19.00であることから、可溶性Fイオンの濃度の理論値を1212ppmと算出した。したがって、実施例1における可溶性Fイオンの濃度は、理論値に対して1210/1212×100=99.8(100%)と計算された。
【0039】
[Snの測定]
ペーストの10倍希釈溶液を1MのHClで20倍希釈した。HClによる希釈溶液300μLに、NaOH、乳酸及びチオ硫酸ナトリウム溶液の混合液390μLを加え、更にサリチリデンアミノ-2-チオフェノール(SATP)溶液150μLを加えて攪拌し、その後20分間静置した。SATPはスズイオンと反応して黄色に変わる。得られたものにキシレン400μLを加えて強く攪拌した後、キシレン層を抽出して415nmの吸光度を測定した。既知濃度のスズイオンを添加するように同じ操作を行い、標準添加法によりペースト希釈溶液中の可溶性スズイオン濃度を計算した。
【0040】
実施例1では、ペースト中に含まれる可溶性スズイオンの濃度を3613ppmと算出した。上記のように、実施例1に配合したSnF2は0.5重量%(5000ppm)であった。SnF2の分子量が156.71、スズの原子量が118.71であることから、スズ濃度の理論値を3788ppmと算出した。このように、仮実施例1における可溶性スズイオンの濃度は、理論値に対して3613/3788×100=95.41(95%)と算出された。
【0041】
[Caの測定]
ペーストの10倍希釈溶液を超純水で20倍希釈し、その後さらに1MのHClで2倍希釈した。Ca濃度を測定するキットである「QuantiChromTMカルシウムアッセイキット」を用いて、得られた希釈溶液中の可溶性Caイオンの濃度を算出した。この測定キットにより、遊離カルシウムに特異的なフェノールスルホンフタレインの青色着色(612nm)を測定し、標準曲線から試料中の濃度を算出し、希釈溶液中の可溶性Caイオン濃度を算出した。
【0042】
実施例1では、ペースト中に含まれる可溶性Caイオンの濃度を14,862ppmと算出した。実施例1におけるCPP-ACPの配合量は10重量%(Ca換算で15,000ppmに相当)であった。従って、実施例1における可溶性Caイオンの濃度は、理論値に対して14,862/15,000×100=99.1(99%)と計算された。
【0043】
[Piの測定]
ペーストの10倍希釈溶液を超純水で10,000倍希釈した。Pi濃度測定用キット「QuantiChromTM Phosphate Assay Kit」を用いて、得られた希釈溶液中の可溶性Piイオンの濃度を算出した。本測定キットにより、無機リン酸塩(Pi)、マラカイトグリーン、モリブデン酸の錯体形成による色転移(620nm)を測定し、標準曲線から試料中濃度を算出した。
【0044】
実施例1では、ペースト中に含まれる可溶性Piイオンの濃度を17,942ppmと算出した。実施例1に組み込まれたCPP-ACPの量は10重量%(Pi換算で18,000ppmに相当)であった。このように、仮実施例1における可溶性Piイオンの濃度は、理論値に対して17,942/18,000×100=99.7(100%)と算出された。
【0045】
実施例2~7及び比較例1~5の口腔ケア組成物中の可溶性イオン濃度を、実施例1と同様にして測定した。
【0046】
<結果>
実施例1~7および比較例1~5の可溶性イオン濃度の測定値を理論値に対する百分率で表2に示す。
【0047】
【0048】
<評価>
少なくともスズイオン及びフッ素イオンのイオン濃度が、組成物を60℃で1週間貯蔵した後、理論値の少なくとも70%である口腔ケア組成物は、良好な安定性を有するとした。さらに、組成物を60℃で1週間貯蔵した後のスズイオン、フッ素イオン、及び少なくともPiイオン又はCaイオンのイオン濃度が理論値の少なくとも70%である口腔ケア組成物は、さらに良好な安定性を有するとした。さらに、組成物を60℃で1週間貯蔵した後のスズイオン、フッ素イオン、PiイオンおよびCaイオンのイオン濃度が理論値の少なくとも70%である口腔ケア組成物は、優れた安定性を有するとした。
【0049】
実施例については、実施例1~7で示されるように、長期保存後においても、水、フッ化第一スズ、カゼインホスホペプチド-非晶質リン酸カルシウム、及び少なくともクエン酸又はクエン酸塩を含有する口腔ケア組成物において、スズイオン濃度を高く保つことができた。対照的に、比較例1~4の組成物は、クエン酸又はクエン酸ナトリウムを含まず、スズイオンの濃度が理論値に対して70%より低いものであった。比較例の組成物の中には、スズイオンの濃度が理論値に対して70%を大幅に下回るものがあった。また、比較例5からわかるように、CPP-ACPを塩化カルシウム及びリン酸カリウムで置き換えた場合、スズイオンの濃度は理論値に対して70%未満であった。
【0050】
ここに開示された主題は、現時点で実用的な例示的な形態であると考えられるものに関連して説明されてきたが、本開示は、開示された形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨及び範囲内に含まれる様々な修正および同等の変更を包含することを理解されたい。