(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058237
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】光デバイスのリフト方法及びその装置、光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法、並びにディスプレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20220404BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220404BHJP
H01S 5/02375 20210101ALI20220404BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H01L33/48
G09F9/00 338
H01S5/02375
H01L31/04 460
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156889
(22)【出願日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020165877
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】山岡 裕
(72)【発明者】
【氏名】植森 信隆
(72)【発明者】
【氏名】仲田 悟基
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】小沢 周作
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】倉田 昌実
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 司
(72)【発明者】
【氏名】野口 毅
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 健人
【テーマコード(参考)】
5F142
5F151
5F173
5G435
【Fターム(参考)】
5F142AA51
5F142CB14
5F142FA32
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5F151CB30
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5F173MD73
5G435AA17
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5G435CC09
5G435EE50
5G435HH18
5G435HH20
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】ディスプレイの画素ピッチがサファイア基板上に配列された光デバイスのピッチの整数倍でない場合におけるキャリア基板への移載方法を提供する。
【解決手段】サファイア基板上に形成された光デバイス(2)の配列ピッチ(3、4)と、キャリア基板(6)上への移載予定の光デバイスの配列ピッチ(5、7)から、ドナー基板とレセプター基板の移動速度の比を決定し、当該ドナー基板の移動に同期してリフト(レーザ転写)することで、サファイア基板上の光デバイスをディスプレイの画素ピッチと同じ配列ピッチにてキャリア基板へ移載する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー基板であるサファイア基板上の光デバイスを、レセプター基板であるキャリア基板にリフトする方法であって、
サファイア基板上に形成された光デバイスの配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する工程と、
キャリア基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する工程と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板を対向させ、光デバイスの表面からキャリア基板までの距離が所定の値になるように、サファイア基板及びキャリア基板のいずれか又は両方の位置を調整する工程と、
配列ピッチDと配列ピッチRからサファイア基板とキャリア基板のスキャン速度比VRを算出する工程と、
サファイア基板と光デバイスの境界面にサファイア基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する工程と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板の水平面内の相対位置を合わせ、前記速度比VRで、サファイア基板とキャリア基板をスキャン動作させる工程と、
スキャン動作に連動してレーザ光を照射しリフトする工程と、
を含むリフト方法。
【請求項2】
前記配列ピッチDは、X方向の配列ピッチDXと、Y方向の配列ピッチDYで構成され
前記配列ピッチRは、X方向の配列ピッチRXと、Y方向の配列ピッチRYで構成され、
前記速度比VRは、配列ピッチDXとRXから算出されるX方向の速度比VRXと配列ピッチDYとRYから算出されるY方向の速度比VRYで構成され、
速度比VRYでリフトした後に、キャリア基板をサファイア基板の代わりにドナー基板としてスキャン方向に対し水平面で90度回転させて装着して、速度比VRXで第2キャリア基板にリフトする工程と、
を更に含む、請求項1に記載のリフト方法。
【請求項3】
前記レーザ光の照射はフォトマスクを用いた縮小投影であり、当該フォトマスクは、Y方向に光デバイス略1個分、X方向に配列ピッチDXで光デバイス2個以上に対応する開口である第1開口部と、X方向に光デバイス略1個分、Y方向に配列ピッチRYで光デバイス2個以上に対応する開口である第2開口部と、
を有し、
速度比VRYでリフトする場合は第1開口部を、速度比VRXでリフトする場合は第2開口部を用いるようマスクを切り替える工程と、
を更に含む、請求項2に記載のリフト方法
【請求項4】
前記フォトマスクの開口部は、個々の光デバイスに略光デバイスの形状で照射される開口群である、請求項3に記載のリフト方法。
【請求項5】
ドナー基板であるサファイア基板上の光デバイスを、レセプター基板であるキャリア基板にリフトするリフト装置であって、
サファイア基板上に形成された光デバイスの配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する第1処理部と、
キャリア基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する第2処理部と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板を対向させ、光デバイスの表面からキャリア基板までの距離が所定の値になるように、サファイア基板及びキャリア基板のいずれか又は両方の位置を調整するステージ及びステージコントローラと、
配列ピッチDと配列ピッチRからサファイア基板とキャリア基板のスキャン速度比VRを算出する第3処理部と、
サファイア基板と光デバイスの境界面にサファイア基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する縮小投影光学系と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板の水平面内の相対位置を合わせ、前記速度比VRで、サファイア基板とキャリア基板をスキャン動作させるステージ及びステージコントローラと、
当該スキャン動作に連動してレーザ光を照射するレーザ装置と、
を有するリフト装置
【請求項6】
ドナー基板であるサファイア基板上の微小素子を、接着層を有するレセプター基板にリフトする方法であって、
ドナー基板上に配列された微小素子の三次元サイズ、当該配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する工程と、レセプター基板上へリフトにより実装予定の当該微小素子の配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する工程と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、ドナー基板とレセプター基板を対向させ、その基板間隔を測定し、微小素子の下面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する工程と、
ドナー基板とレセプター基板の水平面内の相対位置を合わせ、ドナー基板と微小素子の境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を縮小投影する工程と、
を含み、
前記縮小投影されるレーザ光は、KrFエキシマレーザ光であり、その照射エネルギー密度は、0.5~2J/cm2、
前記基板間隔を満たす雰囲気の密度は、1~2kg/m3、
前記接着層は、硬度20~50、厚さは5μm以上、
前記所定の値は、10~200μm、
であるリフト方法。
【請求項7】
ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトするリフト方法であって、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの間に間隙を設け、
所定の間隔で配置されているドナー基板上の隣接する光デバイスを、前記所定の間隔と異なる間隔に変換しながらキャリア基板にリフトするリフト方法。
【請求項8】
前記変換する間隔は、X方向(光デバイスの短軸方向)である請求項7に記載のリフト方法。
【請求項9】
前記変換する間隔は、Y方向(光デバイスの長軸方向)である請求項7に記載のリフト方法。
【請求項10】
前記間隙は、10~200μmである請求項7~9いずれか一項に記載のリフト方法。
【請求項11】
前記ドナー基板又は前記レセプター基板をスキャン動作させながらリフトする請求項7~10いずれか一項に記載のリフト方法。
【請求項12】
前記光デバイスは、レーザダイオード又はフォトダイオードである請求項7~11いずれか一項に記載のリフト方法。
【請求項13】
前記光デバイスは、LED又はマイクロLEDである請求項7~11いずれか一項に記載のリフト方法。
【請求項14】
ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトする光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法であって、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの間に間隙を設け、
所定の間隔で配置されているドナー基板上の隣接する光デバイスを、前記所定の間隔と異なる間隔に変換しながらキャリア基板にリフトする光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
【請求項15】
前記変換する間隔は、X方向(光デバイスの短軸方向)である請求項14に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
【請求項16】
前記変換する間隔は、Y方向(光デバイスの長軸方向)である請求項14に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
【請求項17】
前記間隙は、10~200μmである請求項14~16いずれか一項に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
【請求項18】
前記ドナー基板又は前記レセプター基板をスキャン動作させながらリフトする請求項14~17いずれか一項に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
【請求項19】
前記光デバイスは、レーザダイオード又はフォトダイオードである請求項14~18いずれか一項に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
【請求項20】
前記光デバイスは、LED又はマイクロLEDである請求項14~18いずれか一項に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
【請求項21】
請求項14~19いずれか一項に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法により得られたレセプター基板上の光デバイスを他の基板に実装するディスプレイの製造方法。
【請求項22】
前記実装はスタンプ方式による実装である請求項21に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項23】
ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトする方法であって、
ドナー基板上に形成された光デバイスの配列の配列ピッチDを取得する工程と、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する工程と、
配列ピッチDと、レセプター基板上へリフトにより移載予定の前記光デバイスの配列ピッチRからドナー基板とレセプター基板のスキャン速度比VRを算出する工程と、
ドナー基板と光デバイスの境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する工程と、
前記速度比VRで、ドナー基板とレセプター基板をスキャン動作させる工程と、
スキャン動作に連動してレーザ光を照射しリフトする工程と、
を含むリフト方法。
【請求項24】
ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトするリフト装置であって、
ドナー基板上に形成された光デバイスの配列の配列ピッチDを取得する機構と、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する機構と、
配列ピッチDとレセプター基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の配列ピッチRからドナー基板とレセプター基板のスキャン速度比VRを算出する機構と、
ドナー基板と光デバイスの境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する縮小投影光学系と、
前記速度比VRで、ドナー基板とレセプター基板をスキャン動作させる機構と、
当該スキャン動作に連動してレーザ光を照射するレーザ装置と、
を有するリフト装置。
【請求項25】
ドナー基板上の微小素子を、接着層を有するレセプター基板にリフトする方法であって、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、微小素子の下面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する工程と、
ドナー基板と微小素子の境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を縮小投影する工程と、
を含み、
前記縮小投影されるレーザ光は、KrFエキシマレーザ光であり、その照射エネルギー密度は、0.5~2J/cm2、
前記基板間隔を満たす雰囲気の密度は、1~2kg/m3、
前記接着層は、硬度20~50、厚さは5μm以上、
前記所定の値は、10~200μm、
であるリフト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マイクロLEDの実装工程に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化物半導体の光デバイスが液晶ディスプレイのバックライトや、サイネージ用ディスプレイとして使われるようになっている。これらの用途では、一度に大量の光デバイスを使用するため、高速な移載技術が求められている。高速な移載技術としては、一般にスタンプ方式による一括移載が行われており、一度に1000~数万個程度の移載ができるようになってきている。
【0003】
光デバイスは、サファイア基板上に半導体プロセスにより大量に作製され、マイクロLEDと呼ばれる100μm角以下のLEDは4インチ基板で数百万個になる。数十μmの微小なデバイスであるマイクロLEDはエピ基板であるサファイア基板から分離して利用される。サファイア基板上に配列されている光デバイスにサポート基板を張り合わせ、レーザーリフトオフによりサファイア基板から分離することが一般的である。
【0004】
サポート基板またはサポート基板から光デバイスを移載した基板をキャリア基板とし、特殊なスタンプにより、光デバイスを、キャリア基板から、ディスプレイの画素ピッチに応じた間隔でピックアップし、バックプレーン基板へ実装する。よってサファイア基板上の光デバイスのピッチはディスプレイの画素ピッチの1/N 倍である必要がある。ここでNは正の整数である。
【0005】
特許文献1には、窒化物半導体のサファイア基板からのレーザーリフトオフについて記載されている。特許文献2及び特許文献3は、異なる方式のスタンプによる高速実装を提案している。特許文献4には、ドナー基板からレセプター基板にリフトするリフト装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007-506445号公報
【特許文献2】特開2020-129638号公報
【特許文献3】特開2018-163900号公報
【特許文献4】特開2020-004478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらディスプレイの画素ピッチは、ディスプレイサイズや、4K、8Kなどの解像度により多様であり、画素ピッチに対応したサファイア基板上の光デバイスのピッチを用意することは光デバイスの大量生産を妨げコスト高となってしまう。このことは、レーザダイオードやフォトダイオード素子を用いたパネル型デバイスにも共通する課題である。
【0008】
本発明は、上記の問題点である、ディスプレイ等の画素ピッチが光デバイスのピッチの正の整数倍を満たさない場合における課題を解決する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の発明は、ドナー基板であるサファイア基板上の光デバイスを、レセプター基板であるキャリア基板にリフト(LIFT:Laser Induced Forward Transfer)する方法であって、サファイア基板上に形成された光デバイスの配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する工程と、キャリア基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する工程と、基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板を対向させ、光デバイスの表面からキャリア基板までの距離が所定の値になるように、サファイア基板及びキャリア基板のいずれか又は両方の位置を調整する工程と、配列ピッチDと配列ピッチRからサファイア基板とキャリア基板のスキャン速度比VRを算出する工程と、サファイア基板と光デバイスの境界面にサファイア基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する工程と、基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板の水平面内の相対位置を合わせ、前記速度比VRで、サファイア基板とキャリア基板をスキャン動作させる工程と、スキャン動作に連動してレーザ光を照射しリフトする工程と、を含むリフト方法である。ここで、「光デバイス」には、上記各工程を利用できる限りにおいて、レーザダイオードやフォトダイオードが含まれる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記配列ピッチDが、X方向の配列ピッチDXと、Y方向の配列ピッチDYで構成され、前記配列ピッチRが、X方向の配列ピッチRXと、Y方向の配列ピッチRYで構成され、前記速度比VRが、配列ピッチDXとRXから算出されるX方向の速度比VRXと、配列ピッチDYとRYから算出されるY方向の速度比VRYで構成され、速度比VRYでサファイア基板上の光デバイスをキャリア基板にリフトした後に、そのキャリア基板をサファイア基板の代わりにドナー基板としてスキャン方向に対し水平面で90度回転させて装着して、速度比VRXで第2キャリア基板にリフトする工程とを更に含むリフト方法である。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記レーザ光の照射がフォトマスクを用いた縮小投影であり、当該フォトマスクは、Y方向に光デバイス略1個分、X方向に配列ピッチDXで光デバイス2個以上に対応する開口である第1開口部と、X方向に光デバイス略1個分、Y方向に配列ピッチRYで光デバイス2個以上に対応する開口である第2開口部とを有し、速度比VRYでリフトする場合は第1開口部を、速度比VRXでリフトする場合は第2開口部を用いるようマスクを切り替える工程とを更に含むリフト方法である。
【0012】
第4の発明は、前記フォトマスクの開口部が、個々の光デバイスに略光デバイスの形状で照射される開口群である、第3の発明におけるリフト方法である。
【0013】
第5の発明は、ドナー基板であるサファイア基板上の光デバイスを、レセプター基板であるキャリア基板にリフトするリフト装置であって、サファイア基板上に形成された光デバイスの配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する第1処理部と、キャリア基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する第2処理部と、基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板を対向させ、光デバイスの表面からキャリア基板までの距離が所定の値になるように、サファイア基板及びキャリア基板のいずれか又は両方の位置を調整するステージ及びステージコントローラと、配列ピッチDと配列ピッチRからサファイア基板とキャリア基板のスキャン速度比VRを算出する第3処理部と、サファイア基板と光デバイスの境界面にサファイア基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する縮小投影光学系と、基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板の水平面内の相対位置を合わせ、前記速度比VRで、サファイア基板とキャリア基板をスキャン動作させるステージ及びステージコントローラと、当該スキャン動作に連動してレーザ光を照射するレーザ装置とを有するリフト装置である。
【0014】
第6の発明は、ドナー基板であるサファイア基板上の微小素子を、接着層を有するレセプター基板にリフトする方法であって、ドナー基板上に配列された微小素子の三次元サイズ、当該配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する工程と、レセプター基板上へリフトにより実装予定の当該微小素子の配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する工程と、基準位置Dと基準位置Rに基づき、ドナー基板とレセプター基板を対向させ、その基板間隔を測定し、微小素子の下面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する工程と、ドナー基板とレセプター基板の水平面内の相対位置を合わせ、ドナー基板と微小素子の境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を縮小投影する工程とを含み、前記縮小投影されるレーザ光は、KrFエキシマレーザ光であり、その照射エネルギー密度は、0.5~2J/cm2、前記基板間隔を満たす雰囲気の密度は、1~2kg/m3、前記接着層は、硬度20~50(JIS タイプA)、厚さは5μm以上、前記所定の値は、10~200μmの各範囲にあるリフト方法である。
【発明の効果】
【0015】
これにより、ディスプレイの画素ピッチが光デバイスのピッチの整数倍を満たさない場合でもスタンプ方式を用いた高速実装を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ドナー基板であるサファイア基板上のマイクロLEDの配列の図である。
【
図3】4インチΦサファイア基板へのレーザ照射例である。
【
図4】Y方向のリフト後のマイクロLEDの配列の図である。
【
図5】X方向のリフト前後のマイクロLEDの配列の図である。
【
図6】RGBが実装された第2キャリア基板の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されない。尚、以下の全ての図面においては、各構成要素を図面上で認識し易くするため、各構成要素の寸法及び比率を実際のものとは適宜に異ならせている。
【0018】
本実施の形態では光デバイスは、GaN(窒化ガリウム)系半導体のLED(発光ダイオード)であるとして説明する。LEDの製造会社は、サファイア基板上に多数のLEDを形成し、100μm以下のマイクロLEDの場合は、サファイア基板のまま、またはレーザーリフトオフで移載したキャリア基板を、LEDを使ったディスプレイを製作している会社(以下、LEDディスプレイメーカ)に供給している。
【0019】
ここではサファイア基板からの処理について説明する。
4インチのサファイア基板の場合、基板上に数百万個のマイクロLEDが形成されている。
図1は、サファイア基板上(1)に形成されたマイクロLED(2)の配列の図である。LEDサイズは、20×40μm(X×Y)、X方向の配列ピッチ(3)は、30μm、Y方向の配列ピッチ(4)は60μmとなっている。
【0020】
本サファイア基板は、本実施の形態にかかるリフト方法で対象とする光デバイスを形成した基板の一例である。サファイア基板の背面はレーザが透過するように研磨されており、LEDが形成されている表面は高輝度化のために凹凸加工がされている。
【0021】
次表1にディスプレイの種類と画素ピッチの関係を記す。21インチディスプレイの場合は、画素ピッチが前記サファイア基板の配列ピッチの正の整数倍となるため、通常のレーザーリフトオフを行うだけでスタンプに好適なキャリア基板が作製でき、スタンプを用いた高速実装が可能である。
【0022】
【0023】
ここでは100インチディプレイ(4K、8K)用のキャリア基板を作製する方法を説明する。
【0024】
表1のように100インチディスプレイの画素ピッチは、4K(3840×2160画素)で0.577mm、8K(7680×4320画素)で0.288mmとなっており、前記配列ピッチ30μm、配列ピッチ60μmの整数倍ではない。整数になるターゲット配列ピッチとして72.1μmを選択する。前記画素ピッチは4Kでターゲット配列ピッチの8倍、8Kでターゲット配列ピッチの4倍となる。
【0025】
次にリフト装置を用いたターゲット配列ピッチのキャリア基板作製について説明する。リフト装置は特許文献4に記載のリフト装置を用いる。サファイア基板は、リフト装置のドナー基板としてドナーステージにマイクロLEDが形成された面を下向きにて吸着され、接着層を有するキャリア基板は、リフト装置のレセプター基板としてレセプターステージに、サファイア基板に対向するように吸着される。
【0026】
各基板をステージに搬送するロボットの位置決め精度が十分であれば、予め入力されている2つ以上のアライメントマークの座標を高倍率カメラ位置に移動させ、画像処理にてアライメントマークを認識、カメラ中心からのズレ量を算出し、ステージにフィードバックすることで高精度アライメントを行う。搬送系の精度が不十分の場合は低倍率カメラを使ってアライメントを行うか位置決めセンサにて粗調整を行う必要がある。
【0027】
アライメント後、基板間の間隙をレセプターステージのZ軸で調整する。マイクロLEDから接着層までの間隙である所定の値は、ハイトセンサで測った各基板位置と、サファイア基板の厚さ、マイクロLEDの厚さ、キャリア基板の厚さ、接着層の厚さ等に基づき設定される。前記所定の値は、10~200μmが好適であり、50~150μmがより好適である。間隙が10μmより狭いと基板の撓みで接触する恐れがあり、200μmより広いと移載した際のマイクロLEDの着座位置精度が低下するためである。
【0028】
素子損傷及び着座位置精度においては、マイクロLED飛しょう時の空気抵抗に関連し、ドナー基板とレセプター基板の間の気体の密度も重要である。次表2に代表的な気体の密度の一覧を示す。
【0029】
【0030】
ヘリウムのように密度の低い気体では飛しょう速度の適切な低下が得られず欠け割れなど素子損傷を起こす。気体密度が高すぎると気体による抵抗が大きく僅かな非対称性で着座位置精度が悪くなる。飛しょう距離である前記所定の値10~200μmにおいては、気体密度は1~2kg/m3が好適である。
【0031】
サファイア基板とキャリア基板のステージスキャンの速度比は、前記サファイア基板の配列ピッチと100インチディスプレイ用のキャリア基板のターゲット配列ピッチの比となる。サファイア基板のステージ速度を基準として200mm/sに設定すると、キャリア基板のステージ速度は、X方向で2.403333333倍の480.666667mm/s、Y方向で1.201666667倍の240.333333mm/sとなる。
【0032】
フォトマスクは、5インチ角の石英ガラス基板にクロムが100~200nm蒸着されたクロムマスクを用い、
図1のX方向に500個のマイクロLEDの配列及びサイズに対応する開口を有するパターンと、
図4のY方向に200個のマイクロLEDの配列及びサイズに対応する開口を有するパターンが作製されている。
【0033】
マスクパターンについて
図2で説明する。
図2の黒部は遮光するクロム面、白部はレーザが透過する開口である。1/5の投影光学系のためマスク面では投影面フィールドサイズの5倍となる。よって1LEDあたりの開口は100μm×200μm、ピッチは150μmで、500個の開口群の長さは74.95mmとなる。キャリア基板の接着層がレーザ照射によるダメージがない場合は、75000μm×250μm等の長方形の開口でも良い。
【0034】
フォトマスク座標系とステージ座標系を合わせるアライメントはマスク交換時に行う。高精度な加工が必要な場合は同一マスク内のパターン切替時にもマスクアライメントを行う。マスクアライメントの方法は装置構成により異なり、マスクに形成されているアライメントマークを高倍率カメラにて観察しアライメントを行う方法と、ステージに設置したプロファイラにてマスク投影イメージを観察しアライメントを行う方法がある。
【0035】
マスクの光軸に対するΘズレ、すなわち基板ステージのスキャン軸に対するマスクのΘズレがあった場合はマスクステージで合わせる必要があるが、光軸に対して垂直な面内、XY方向のズレに関してはマスクステージでアライメントしても良いし、基板ステージ側で補正値を持つことでマスクアライメントとしてもよい。
【0036】
実際のリフト動作について説明する。ドナー基板は、前記4インチΦサファイア基板を用いる。レセプター基板は、6インチΦ石英基板であり、表面には接着性のある硬度30、厚さ20μm接着層を設けている。接着層は、硬すぎるとマイクロLEDが割れる等の損傷が生じ、柔らかすぎると跳ねてしまい着座しない、または接着層に埋まってしまうなど問題があるため、硬度は20~50(JIS タイプA)で、レセプター基板の種類に影響され難く、接着層の材料の特性が主になる厚さ5μm以上が望ましい。この硬度は25~40であることがより好適である。また、接着層の厚さは100μm以下であることが好ましく、10~50μmであることがより好ましい。
【0037】
最初に
図1においてY方向でリフトを行う。フォトマスクは
図1のX方向に500個のマイクロLEDの配列及びサイズに対応する開口を有するパターンを設定する。ドナーステージとレセプターステージの等速領域の速度として、200mm/sと240.333333mm/sを設定する。
【0038】
図3を用い4インチΦ基板に照射方法を説明する。約15mmのマスクパターンを投影によるスキャン照射を7回行うことで全面を照射する。ハッチングしているエリアが照射エリアであり、マイクロLEDの実装位置のみに照射を行う。
【0039】
仮にドナー基板である4インチΦ基板の照射開始位置(X,Y)が(0,-10.0)の場合、レセプター基板である6インチΦ基板の照射開始位置は(0,―12.0166667)となる。この開始位置で前記設定された等速度になっているように加速距離を設けており、照射エリアは全て等速であり、ステージ座標基準でパルスレーザにトリガを入れてマイクロLEDの実装されている座標のみに照射を行っている。
【0040】
GaN系マイクロLEDのサファイア基板からのリフトは、エピ基板のため高いエネルギー密度が必要で0.5~2J/cm2である。
【0041】
リフトの結果の配列の一部を
図4に示す。マイクロLEDは、6インチΦ基板上にY方向に配列ピッチ(5)が広がった縦長の楕円状に配列している。
【0042】
次に
図4のX方向のリフトを行う。レセプターステージから外された6インチΦ石英基板(第1キャリア基板(6))を
図4XY面内で90度回転させてドナー基板として吸着する。レセプター基板には、ブランクの6インチΦ石英基板を第2キャリア基板(8)として吸着する。
【0043】
フォトマスクは、
図4のY方向に200個のマイクロLEDの配列及びサイズに対応する開口を有するパターンに切り替える。ドナー基板、レセプター基板とフォトマスクのアライメントは前記と同様である。
【0044】
ドナーステージとレセプターステージの等速領域の速度として、200mm/sと480.666667mm/sを設定する。照射方法については前記と同様である。スキャン照射を9回行い、全面を照射する。仮にドナー基板の照射開始位置(X,Y)が(0,-10.0)の場合、レセプター基板の照射開始位置は(0,―24.0333333)となる。1回目のY方向のリフト結果の座標に基づき、前記と同様のスキャン照射を行うことで
図5に示すようにXY方向に配列ピッチを調整したリフトの結果を得ることができる。
【0045】
ここまで
図1のY方向の配列ピッチを調整してからX方向の配列を調整する順番で説明したがX方向を調整してからY方向を調整しても良い。
【0046】
単色のマイクロLEDのキャリア基板作製方法を説明したが、RGB夫々のマイクロLEDを続けてリフトし、RGBが並んだ第2キャリア基板を作製してもよい。RGB3色全てGaN系であれば前記工程でRGB夫々に第1キャリア基板を作製し、第2キャリア基板に対し、RGBをずらしながらリフトすることで作製することができる。
図6にRGBを実装した第2キャリア基板の例を示す。R(赤)がGaAs系の場合は、予めサファイア基板または石英ガラス基板に、電極が表面になる向きで移載をしておく必要があるが、同様の手順でRGBが並んだ第2キャリア基板を作製することができる。この場合、サファイア基板または石英ガラス基板は、化合物半導体のエピ基板ではないためリフトする際のエネルギー密度は低くても良く、0.2~1.5J/cm
2である。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、一方で本発明について異なる視点から表現すると下記(1)~(25)のようになる。
(1) ドナー基板であるサファイア基板上の光デバイスを、レセプター基板であるキャリア基板にリフトする方法であって、
サファイア基板上に形成された光デバイスの配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する工程と、
キャリア基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する工程と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板を対向させ、光デバイスの表面からキャリア基板までの距離が所定の値になるように、サファイア基板及びキャリア基板のいずれか又は両方の位置を調整する工程と、
配列ピッチDと配列ピッチRからサファイア基板とキャリア基板のスキャン速度比VRを算出する工程と、
サファイア基板と光デバイスの境界面にサファイア基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する工程と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板の水平面内の相対位置を合わせ、前記速度比VRで、サファイア基板とキャリア基板をスキャン動作させる工程と、
スキャン動作に連動してレーザ光を照射しリフトする工程と、
を含むリフト方法。
(2) 前記配列ピッチDは、X方向の配列ピッチDXと、Y方向の配列ピッチDYで構成され
前記配列ピッチRは、X方向の配列ピッチRXと、Y方向の配列ピッチRYで構成され、
前記速度比VRは、配列ピッチDXとRXから算出されるX方向の速度比VRXと配列ピッチDYとRYから算出されるY方向の速度比VRYで構成され、
速度比VRYでリフトした後に、キャリア基板をサファイア基板の代わりにドナー基板としてスキャン方向に対し水平面で90度回転させて装着して、速度比VRXで第2キャリア基板にリフトする工程と、
を更に含む、(1)に記載のリフト方法。
(3) 前記レーザ光の照射はフォトマスクを用いた縮小投影であり、当該フォトマスクは、Y方向に光デバイス略1個分、X方向に配列ピッチDXで光デバイス2個以上に対応する開口である第1開口部と、X方向に光デバイス略1個分、Y方向に配列ピッチRYで光デバイス2個以上に対応する開口である第2開口部と、
を有し、
速度比VRYでリフトする場合は第1開口部を、速度比VRXでリフトする場合は第2開口部を用いるようマスクを切り替える工程と、
を更に含む、(2)に記載のリフト方法
(4) 前記フォトマスクの開口部は、個々の光デバイスに略光デバイスの形状で照射される開口群である、(3)に記載のリフト方法。
(5) ドナー基板であるサファイア基板上の光デバイスを、レセプター基板であるキャリア基板にリフトするリフト装置であって、
サファイア基板上に形成された光デバイスの配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する第1処理部と、
キャリア基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する第2処理部と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板を対向させ、光デバイスの表面からキャリア基板までの距離が所定の値になるように、サファイア基板及びキャリア基板のいずれか又は両方の位置を調整するステージ及びステージコントローラと、
配列ピッチDと配列ピッチRからサファイア基板とキャリア基板のスキャン速度比VRを算出する第3処理部と、
サファイア基板と光デバイスの境界面にサファイア基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する縮小投影光学系と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板の水平面内の相対位置を合わせ、前記速度比VRで、サファイア基板とキャリア基板をスキャン動作させるステージ及びステージコントローラと、
当該スキャン動作に連動してレーザ光を照射するレーザ装置と、
を有するリフト装置
(6) ドナー基板であるサファイア基板上の微小素子を、接着層を有するレセプター基板にリフトする方法であって、
ドナー基板上に配列された微小素子の三次元サイズ、当該配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する工程と、レセプター基板上へリフトにより実装予定の当該微小素子の配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する工程と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、ドナー基板とレセプター基板を対向させ、その基板間隔を測定し、微小素子の下面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する工程と、
ドナー基板とレセプター基板の水平面内の相対位置を合わせ、ドナー基板と微小素子の境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を縮小投影する工程と、
を含み、
前記縮小投影されるレーザ光は、KrFエキシマレーザ光であり、その照射エネルギー密度は、0.5~2J/cm2、
前記基板間隔を満たす雰囲気の密度は、1~2kg/m3、
前記接着層は、硬度20~50、厚さは5μm以上、
前記所定の値は、10~200μm、
であるリフト方法。
(7) ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトするリフト方法であって、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの間に間隙を設け、
所定の間隔で配置されているドナー基板上の隣接する光デバイスを、前記所定の間隔と異なる間隔に変換しながらキャリア基板にリフトするリフト方法。
(8) 前記変換する間隔は、X方向(光デバイスの短軸方向)である(7)に記載のリフト方法。
(9) 前記変換する間隔は、Y方向(光デバイスの長軸方向)である(7)に記載のリフト方法。
(10) 前記間隙は、10~200μmである(7)~(9)いずれか一つに記載のリフト方法。
(11) 前記ドナー基板又は前記レセプター基板をスキャン動作させながらリフトする(7)~(10)いずれか一つに記載のリフト方法。
(12) 前記光デバイスは、レーザダイオード又はフォトダイオードである(7)~(11)いずれか一つに記載のリフト方法。
(13) 前記光デバイスは、LED又はマイクロLEDである(7)~(11)いずれか一つに記載のリフト方法。
(14) ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトする光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法であって、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの間に間隙を設け、
所定の間隔で配置されているドナー基板上の隣接する光デバイスを、前記所定の間隔と異なる間隔に変換しながらキャリア基板にリフトする光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
(15) 前記変換する間隔は、X方向(光デバイスの短軸方向)である(14)に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
(16) 前記変換する間隔は、Y方向(光デバイスの長軸方向)である(14)に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
(17) 前記間隙は、10~200μmである(14)~(16)いずれか一つに記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
(18) 前記ドナー基板又は前記レセプター基板をスキャン動作させながらリフトする(14)~(17)いずれか一つに記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
(19) 前記光デバイスは、レーザダイオード又はフォトダイオードである(14)~(18)いずれか一つに記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
(20) 前記光デバイスは、LED又はマイクロLEDである(14)~(18)いずれか一つに記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法。
(21) (14)~(19)いずれか一つに記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造方法により得られたレセプター基板上の光デバイスを他の基板に実装するディスプレイの製造方法。
(22) 前記実装はスタンプ方式による実装である(21)に記載のディスプレイの製造方法。
(23) ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトする方法であって、
ドナー基板上に形成された光デバイスの配列の配列ピッチDを取得する工程と、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する工程と、
配列ピッチDと、レセプター基板上へリフトにより移載予定の前記光デバイスの配列ピッチRからドナー基板とレセプター基板のスキャン速度比VRを算出する工程と、
ドナー基板と光デバイスの境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する工程と、
前記速度比VRで、ドナー基板とレセプター基板をスキャン動作させる工程と、
スキャン動作に連動してレーザ光を照射しリフトする工程と、
を含むリフト方法。
(24) ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトするリフト装置であって、
ドナー基板上に形成された光デバイスの配列の配列ピッチDを取得する機構と、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する機構と、
配列ピッチDとレセプター基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の配列ピッチRからドナー基板とレセプター基板のスキャン速度比VRを算出する機構と、
ドナー基板と光デバイスの境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する縮小投影光学系と、
前記速度比VRで、ドナー基板とレセプター基板をスキャン動作させる機構と、
当該スキャン動作に連動してレーザ光を照射するレーザ装置と、
を有するリフト装置
(25) ドナー基板上の微小素子を、接着層を有するレセプター基板にリフトする方法であって、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、微小素子の下面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する工程と、
ドナー基板と微小素子の境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を縮小投影する工程と、
を含み、
前記縮小投影されるレーザ光は、KrFエキシマレーザ光であり、その照射エネルギー密度は、0.5~2J/cm2、
前記基板間隔を満たす雰囲気の密度は、1~2kg/m3、
前記接着層は、硬度20~50、厚さは5μm以上、
前記所定の値は、10~200μm、
であるリフト方法。
【0048】
また、本発明について更に別の視点から表現すると下記(U1)~(U15)のようになる。
(U1) ドナー基板であるサファイア基板上の光デバイスを、レセプター基板であるキャリア基板にリフトするシステムであって、
サファイア基板上に形成された光デバイスの配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する機構と、
キャリア基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する機構と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板を対向させ、光デバイスの表面からキャリア基板までの距離が所定の値になるように、サファイア基板及びキャリア基板のいずれか又は両方の位置を調整する機構と、
配列ピッチDと配列ピッチRからサファイア基板とキャリア基板のスキャン速度比VRを算出する機構と、
サファイア基板と光デバイスの境界面にサファイア基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する機構と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板の水平面内の相対位置を合わせ、前記速度比VRで、サファイア基板とキャリア基板をスキャン動作させる機構と、
スキャン動作に連動してレーザ光を照射しリフトする機構と、
を含むリフトシステム。
(U2) 前記配列ピッチDは、X方向の配列ピッチDXと、Y方向の配列ピッチDYで構成され
前記配列ピッチRは、X方向の配列ピッチRXと、Y方向の配列ピッチRYで構成され、
前記速度比VRは、配列ピッチDXとRXから算出されるX方向の速度比VRXと配列ピッチDYとRYから算出されるY方向の速度比VRYで構成され、
速度比VRYでリフトした後に、キャリア基板をサファイア基板の代わりにドナー基板としてスキャン方向に対し水平面で90度回転させて装着して、速度比VRXで第2キャリア基板にリフトする機構と、
を更に含む、(U1)に記載のリフトシステム。
(U3) 前記レーザ光の照射はフォトマスクを用いた縮小投影であり、当該フォトマスクは、Y方向に光デバイス略1個分、X方向に配列ピッチDXで光デバイス2個以上に対応する開口である第1開口部と、X方向に光デバイス略1個分、Y方向に配列ピッチRYで光デバイス2個以上に対応する開口である第2開口部と、
を有し、
速度比VRYでリフトする場合は第1開口部を、速度比VRXでリフトする場合は第2開口部を用いるようマスクを切り替える機構と、
を更に含む、(U2)に記載のリフトシステム
(U4) 前記フォトマスクの開口部は、個々の光デバイスに略光デバイスの形状で照射される開口群である、(U3)に記載のリフトシステム。
(U5) ドナー基板であるサファイア基板上の光デバイスを、レセプター基板であるキャリア基板にリフトするリフト装置にドナー基板を設置したリフト装置であって、
サファイア基板上に形成された光デバイスの配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する第1処理部と、
キャリア基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する第2処理部と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板を対向させ、光デバイスの表面からキャリア基板までの距離が所定の値になるように、サファイア基板及びキャリア基板のいずれか又は両方の位置を調整するステージ及びステージコントローラと、
配列ピッチDと配列ピッチRからサファイア基板とキャリア基板のスキャン速度比VRを算出する第3処理部と、
サファイア基板と光デバイスの境界面にサファイア基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する縮小投影光学系と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、サファイア基板とキャリア基板の水平面内の相対位置を合わせ、前記速度比VRで、サファイア基板とキャリア基板をスキャン動作させるステージ及びステージコントローラと、
当該スキャン動作に連動してレーザ光を照射するレーザ装置と、
を有するリフト装置
(U6) ドナー基板であるサファイア基板上の微小素子を、接着層を有するレセプター基板にリフトするシステムであって、
ドナー基板上に配列された微小素子の三次元サイズ、当該配列の基準位置D、及び配列ピッチDを取得する工程と、レセプター基板上へリフトにより実装予定の当該微小素子の配列の基準位置R及び配列ピッチRを取得する機構と、
基準位置Dと基準位置Rに基づき、ドナー基板とレセプター基板を対向させ、その基板間隔を測定し、微小素子の下面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する機構と、
ドナー基板とレセプター基板の水平面内の相対位置を合わせ、ドナー基板と微小素子の境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を縮小投影する機構と、
を含み、
前記縮小投影されるレーザ光は、KrFエキシマレーザ光であり、その照射エネルギー密度は、0.5~2J/cm2、
前記基板間隔を満たす雰囲気の密度は、1~2kg/m3、
前記接着層は、硬度20~50、厚さは5μm以上、
前記所定の値は、10~200μm、
であるリフトシステム。
(U7) ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトするリフトシステムであって、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの間に間隙を設け、
所定の間隔で配置されているドナー基板上の隣接する光デバイスを、前記所定の間隔と異なる間隔に変換しながらキャリア基板にリフトする機構を有するリフトシステム。
(U8) 前記変換する間隔は、X方向(光デバイスの短軸方向)である(U7)に記載のリフトシステム。
(U9) 前記変換する間隔は、Y方向(光デバイスの長軸方向)である(U7)に記載のリフトシステム。
(U10) 前記間隙は、10~200μmである(U7)~(U9)いずれか一つに記載のリフトシステム。
(U11) 前記ドナー基板又は前記レセプター基板をスキャン動作させながらリフトする(U7)~(U10)いずれか一つに記載のリフトシステム。
(U12) 前記光デバイスは、レーザダイオード又はフォトダイオードである(U7)~(U11)いずれか一つに記載のリフトシステム。
(U13) 前記光デバイスは、LED又はマイクロLEDである(U7)~(U11)いずれか一つに記載のリフトシステム。
(U14) ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトする光デバイスが移設されたレセプター基板の製造システムであって、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの間に間隙を設け、
所定の間隔で配置されているドナー基板上の隣接する光デバイスを、前記所定の間隔と異なる間隔に変換しながらキャリア基板にリフトする機構を有する光デバイスが移設されたレセプター基板の製造システム。
(U15) 前記変換する間隔は、X方向(光デバイスの短軸方向)である(U14)に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造システム。
(U16) 前記変換する間隔は、Y方向(光デバイスの長軸方向)である(U14)に記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造システム。
(U17) 前記間隙は、10~200μmである(U14)~(U16)いずれか一つに記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造システム。
(U18) 前記ドナー基板又は前記レセプター基板をスキャン動作させながらリフトする(U14)~(U17)いずれか一つに記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造システム。
(U19) 前記光デバイスは、レーザダイオード又はフォトダイオードである(U14)~(U18)いずれか一つに記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造システム。
(U20) 前記光デバイスは、LED又はマイクロLEDである(U14)~(U18)いずれか一つに記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造システム。
(U21) (U14)~(U19)いずれか一つに記載の光デバイスが移設されたレセプター基板の製造システムにより得られたレセプター基板上の光デバイスを他の基板に実装する機構を有するディスプレイの製造システム。
(U22) 前記実装はスタンプ方式による実装である(U21)に記載のディスプレイの製造システム。
(U23) ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトするシステムであって、
ドナー基板上に形成された光デバイスの配列の配列ピッチDを取得する機構と、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する機構と、
配列ピッチDと、レセプター基板上へリフトにより移載予定の前記光デバイスの配列ピッチRからドナー基板とレセプター基板のスキャン速度比VRを算出する機構と、
ドナー基板と光デバイスの境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する機構と、
前記速度比VRで、ドナー基板とレセプター基板をスキャン動作させる機構と、
スキャン動作に連動してレーザ光を照射しリフトする機構と、
を含むリフトシステム。
(U24) ドナー基板上の光デバイスを、レセプター基板にリフトするリフト装置にドナー基板を設置したリフト装置であって、
ドナー基板上に形成された光デバイスの配列の配列ピッチDを取得する機構と、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、光デバイスの表面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する機構と、
配列ピッチDとレセプター基板上へリフトにより移載予定の当該光デバイスの配列の配列ピッチRからドナー基板とレセプター基板のスキャン速度比VRを算出する機構と、
ドナー基板と光デバイスの境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を1列に並んだ複数個の光デバイスに向けて照射する縮小投影光学系と、
前記速度比VRで、ドナー基板とレセプター基板をスキャン動作させる機構と、
当該スキャン動作に連動してレーザ光を照射するレーザ装置と、
を有するリフト装置
(U25) ドナー基板上の微小素子を、接着層を有するレセプター基板にリフトするシステムであって、
ドナー基板とレセプター基板を対向させ、微小素子の下面からレセプター基板までの距離が所定の値になるように、ドナー基板及びレセプター基板のいずれか又は両方の位置を調整する機構と、
ドナー基板と微小素子の境界面にドナー基板の裏面側からレーザ光を縮小投影する機構と、
を含み、
前記縮小投影されるレーザ光は、KrFエキシマレーザ光であり、その照射エネルギー密度は、0.5~2J/cm2、
前記基板間隔を満たす雰囲気の密度は、1~2kg/m3、
前記接着層は、硬度20~50、厚さは5μm以上、
前記所定の値は、10~200μm、
であるリフトシステム。
【0049】
また、各種機構は別々の機構が別々の機能を有していてもよいし、一つの機構が複数の機能を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
マイクロLEDディスプレイの製造工程の一部に利用可能である。また、VCSEL(垂直共振器面発光レーザ)、ディスプレイプロジェクター、レーザプロジェクターの製造工程においてGaN系レーザダイオードの配置の自由度を上げるために利用可能である。さらに、フラットパネルセンサの製造工程においてGaN系フォトダイオードの配置の自由度を上げるために利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 サファイア基板
2 マイクロLED
3 X軸方向の配列ピッチ
4 Y軸方向の配列ピッチ
5 Y軸方向に調節された配列ピッチ
6 第1キャリア基板
7 X軸方向に調節された配列ピッチ
8 第2キャリア基板