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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058244
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】核酸検出箱及び核酸検出デバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220404BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158301
(22)【出願日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】63/140466
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/085368
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】202110693498.4
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520480382
【氏名又は名称】富佳生技股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520352481
【氏名又は名称】深超光電(深セン)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】特許業務法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲イ▼熾
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB20
4B029DG06
4B029FA15
4B029GB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リアルタイムの蛍光検出を可能とし、核酸の量をリアルタイムで定量的に測定することができ、デバイスの全体構成が簡単であり、検出操作が簡便であり、検出効率が高く、検出コストが極めて低減された、核酸検出箱及び核酸検出デバイスを提供する。
【解決手段】核酸検出箱及び核酸検出デバイスであって、該核酸検出箱は、第1蓋板、スペーサー層及び第2蓋板を含む検出チップと、レーザー発射装置3とを含み、第1蓋板、スペーサー層及び第2蓋板が取り囲むように形成する通路5は、該通路内で核酸拡張反応できるように検出液を担持して生成物として液玉8を取得し、該第1蓋板には観察窓29が設けられており、該レーザー発射装置は通路の外側から通路内の該液玉に向けて照射されるレーザー7による蛍光信号9を該観察窓を介して観察する、核酸検出箱及び核酸検出デバイス。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1蓋板、スペーサー層及び第2蓋板を含む検出チップと、レーザー発射装置と、を備え、
前記スペーサー層の対向する両面は、それぞれ前記第1蓋板及び前記第2蓋板に隣接し、前記第1蓋板、前記スペーサー層及び前記第2蓋板は、取り囲むように通路を形成し、前記通路は、検出液が前記通路内で核酸拡張反応できるように前記検出液を担持して、生成物である液玉を取得するため通路に用いられ、前記第1蓋板には、観察窓が設けられており、
前記レーザー発射装置は、前記通路の外側に設けられて、前記通路内に向けてレーザーを出射するために用いられ、
前記レーザーは、前記液玉を照射して前記液玉に蛍光信号を出射させ、前記観察窓は、前記蛍光信号を観察するために用いられることを特徴とする核酸検出箱。
【請求項2】
前記検出チップは、前記第2蓋板の前記第1蓋板に近接する側に配置される駆動回路と、前記第1蓋板の前記第2蓋板に近接する側に設けられる導電層と、前記駆動回路の前記第1蓋板に近接する側に設けられる第1誘電体層と、前記導電層の前記第2蓋板に近接する側に設けられる第2誘電体層と、をさらに備え、前記駆動回路と前記導電層とは、いずれも電源に電気的に接続され、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層との間には、前記通路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の核酸検出箱。
【請求項3】
前記駆動回路は、サンプル入れ領域と、核酸拡張領域と、観察領域とを含み、前記観察窓は、前記観察領域に対応して設けられることを特徴とする請求項2に記載の核酸検出箱。
【請求項4】
前記核酸拡張領域の数は2つであり、前記観察領域は、2つの前記核酸拡張領域の間に位置することを特徴とする請求項3に記載の核酸検出箱。
【請求項5】
前記駆動回路は、プローブ又は蛍光試薬が設けられた試薬貯留領域をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の核酸検出箱。
【請求項6】
前記観察領域は、前記核酸拡張領域の前記サンプル入れ領域から遠く離れる側に位置することを特徴とする請求項3に記載の核酸検出箱。
【請求項7】
前記観察領域は、それぞれ異なるプローブ又は蛍光試薬を設けた3つの観察部位を含むことを特徴とする請求項6に記載の核酸検出箱。
【請求項8】
前記検知チップは、前記第1蓋板および/または前記第2蓋板の前記通路から遠い側に配置された加熱部品をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸検出箱。
【請求項9】
箱体をさらに含み、前記検出チップおよび前記レーザー発射装置は、それぞれ前記箱体内に配置され、前記箱体には、前記観察窓に対応して開口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の核酸検出箱。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸検出箱と、
前記観察窓の前記通路から遠い側に設けられて、前記観察窓を介して前記蛍光信号を採取するための画像採取装置と、を備えることを特徴とする核酸検出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸検出技術分野に関し、特に、核酸検出箱及び核酸検出デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
分子診断、形態学、免疫学等に対する現在の検出は、ほとんど専門実験室で行われる。従来の検出過程は、以下のステップを含むことが一般的である。まず、マルチエンド型検出デバイスで核酸の拡張を行う。その後、電気泳動検出デバイスに、拡張された核酸を人工的に移行させて電気泳動検出を行い、最後に電気泳動の検出結果を人為的に専用の蛍光分析器に移して結果分析を行う。検出過程全体に必要な設備は複雑で体積が大きく、検出効率が低く、柔軟性が悪く、コストが高く、操作が煩雑であり、オペレータの専門レベルへの要求が高く、熟練した技術者による操作が必要であり、リアルタイム定量検出が不可能であり、家庭用携帯検査ができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、上記欠陥の少なくとも1つを克服するために、核酸検出箱及びこれを備える核酸検出デバイスを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る核酸検出箱は、第1蓋板、スペーサー層及び第2蓋板を含む検出チップと、レーザー発射装置と、を備え、
前記スペーサー層の対向する両面は、それぞれ前記第1蓋板及び前記第2蓋板に隣接し、前記第1蓋板、前記スペーサー層及び前記第2蓋板は、取り囲むように通路を形成し、前記通路は、検出液が前記通路内で核酸拡張反応できるように前記検出液を担持して、生成物である液玉を取得するため通路に用いられ、前記第1蓋板には、観察窓が設けられており、
前記レーザー発射装置は、前記通路の外側に設けられて、前記通路内に向けてレーザーを出射するために用いられ、
前記レーザーは、前記液玉を照射して前記液玉に蛍光信号を出射させ、前記観察窓は、前記蛍光信号を観察するために用いられる。
【0005】
本発明の一態様において、前記検出チップは、前記第2蓋板の前記第1蓋板に近接する側に配置される駆動回路と、前記第1蓋板の前記第2蓋板に近接する側に設けられる導電層と、前記駆動回路の前記第1蓋板に近接する側に設けられる第1誘電体層と、前記導電層の前記第2蓋板に近接する側に設けられる第2誘電体層と、をさらに備え、前記駆動回路と前記導電層とは、いずれも電源に電気的に接続され、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層との間には、前記通路が形成されている。
【0006】
本発明の一態様において、前記駆動回路は、サンプル入れ領域と、核酸拡張領域と、観察領域とを含み、前記観察窓は、前記観察領域に対応して設けられる。
【0007】
本発明の一態様において、前記核酸拡張領域の数は2つであり、前記観察領域は、2つの前記核酸拡張領域の間に位置する。
【0008】
本発明の一態様において、前記駆動回路は、プローブ又は蛍光試薬が設けられた試薬貯留領域をさらに有する。
【0009】
本発明の一態様において、前記観察領域は、前記核酸拡張領域の前記サンプル入れ領域から遠く離れる側に位置する。
【0010】
本発明の一態様において、前記観察領域は、それぞれ異なるプローブ又は蛍光試薬を設けた3つの観察部位を含む。
【0011】
本発明の一態様において、前記検知チップは、前記第1蓋板および/または前記第2蓋板の前記通路から遠い側に配置された加熱部品をさらに含む。
【0012】
本発明の一態様において、箱体をさらに含み、前記検出チップおよび前記レーザー発射装置は、それぞれ前記箱体内に配置され、前記箱体には、前記観察窓に対応して開口が設けられている。
【0013】
本発明は、さらに、核酸検出デバイスを提供する。前記核酸検出デバイスは、上述したような核酸検出箱と、前記観察窓の前記通路から遠い側に設けられて、前記観察窓を介して前記蛍光信号を採取するための画像採取装置と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明により提供される核酸検出デバイスは、従来技術と比較して、PCR過程におけるリアルタイムの蛍光検出を可能とし、PCR拡張後のDNAを蛍光強度の大きさに応じて定量でき、核酸の量をリアルタイムで定量的に測定することができる。核酸検出デバイスは全体構成が簡単であり、検出操作が簡便であり、作業手順は専門的な要求に対して低く、検出効率が高く、検出コストが極めて低減されている。そして、検出手順は柔軟性が高く、固定の実験室で行う必要がなく、検出デバイスが携帯し易く、コミュニティ検知やホーム検知を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る核酸検出箱の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る核酸検出箱の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る検出チップの平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る検出チップ内の生成物である液玉が蛍光信号を発する場合の模式図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る検出チップの平面図である。
図6】本発明のさらに別の実施形態による検出チップの平面図である。
図7】本発明が提供する核酸検出箱を用いて3つのサンプルの蛍光検出を行う場合の検出液を示す図である。
図8】本発明が提供する核酸検出箱を用いて3つのサンプルの蛍光検出を行う場合の蛍光画像である。
図9】本発明の一実施形態に係る核酸検出デバイスの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態における図面を参照しながら、本発明の実施形態における技術的な態様を明確にし、完全に説明するが、説明した実施形態は、全ての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態にすぎないことは明らかである。
【0017】
あるコンポーネントが他のコンポーネントに「固定される」と称される場合、それは他のコンポーネントに直接存在してもよく、中間媒体が存在してもよい。あるコンポーネントが他のコンポーネントに「接続」とみなされる場合、それは直接他のコンポーネントに接続されてもよく、同時に中間媒体が存在してもよい。あるコンポーネントが他のコンポーネントに「設けられる」とみなされる場合、それは直接他のコンポーネントに設けられてもよく、同時に中間媒体が存在してもよい。本明細書で使用される用語「垂直」、「水平」、「左」、「右」及びそれに類似する表現は、説明の目的のためだけに使用される。
【0018】
以下に説明するシステムの実施形態は、単に概略的であり、前記モジュールまたは回路の区分は、単なる論理的な機能の区分であり、実際に実現する場合は別の区分があってもよい。また、「含む」という語は他のユニットやステップを排除せず、単数は複数を排除しない。システム請求項に記載の複数のユニットまたは装置は、ソフトウェアまたはハードウェアを介して同じユニットまたはデバイスによっても実現されうる。第1、第2などの言葉は名前を表しているが、特定の順序を表していない。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明の技術分野に属する技術者が一般的に理解する意味と同じである。本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明する目的でのみ使用され、本発明を限定することを意味するものではない。本明細書で使用される用語「及び/または」は、1つまたは複数の関連する列項目の任意及びすべての組み合わせを含む。
【0020】
図1図4に示すように、本発明の実施形態に係る核酸検出箱100は、箱体1と、検出チップ2と、レーザー発射装置3と、を備える。検出チップ2は、箱体1内に設けられ、且つ第1蓋板21、スペーサー層22、及び第2蓋板23を含む。スペーサー層22の対向する両面は、それぞれ第1蓋板21及び第2蓋板23と接触している。第1蓋板21、スペーサー層22及び第2蓋板23は、検出液6が通路5内で核酸拡張反応を行うことで、生成物である液玉8を得ることができるように、検出液6を担持するための前記通路5を囲んで形成されている。第1蓋板21には、観察窓29が設けられている。レーザー発射装置3は、通路5の外側に設けられて、通路5内に向けてレーザー7を出射する。このレーザー7は、液玉8を照射して、液玉8に蛍光信号9を発生させる。最終的には、観察窓29を介して蛍光信号9を取得することができる。
【0021】
図1図4に示すように、当該箱体1は、第1ケース11と、第2ケース12と、当該第2ケース12に設けられたサンプル入れ口13と、当該第1ケース11に設けられた開口14とを備える。第1ケース11と第2ケース12とは、共同で収容キャビティ(図示せず)をなしている。検出チップ2及びレーザー発射装置3は、いずれも前記収容キャビティ内に収容されている。サンプル入れ口13は、検出チップ2に対応して設けられ、当該検出チップ2内に核酸サンプルを含む検出液6を入れる。開口14は、観察窓29に対応して設けられている。これにより、画像採取装置は、開口14および観察窓29を介して、検査チップ2における液玉8から発送された蛍光信号9を採取することができる。
【0022】
図3に示すように、本実施形態では、第1ケース11と第2ケース12とが係合するように接続されている。また、第1ケース11と第2ケース12とが係合した後に、周囲をネジで締結することで、第1ケース11と第2ケース12との接続堅牢性を増やしてもよい。
【0023】
なお、図1に示すように、本実施形態において、箱体1の側壁には、検出チップ2とレーザー発射装置3とに電気的に接続されるコネクタ4を取り付けるための取り付け口15が設けられている。このコネクタ4によって、検出チップ2、レーザー発射装置3と外部電源との電気的な接続を実現している。コネクタ4の全体は、前記収容キャビティ内に位置し、且つ取り付け口15を介して箱体1から露出して、コネクタ4と外部電源との電気的な接続を容易にする。本実施形態では、箱体1は、プラスチック製である。図2及び図3に示すように、検出チップ2は、さらに、第2蓋板23における第1蓋板21に近接する側に設けられた駆動回路24と、駆動回路24における第1蓋板21に近接する側に設けられた第1誘電体層26と、第1蓋板21における第2蓋板23に近接する側に設けられた導電層25と、導電層25における第2蓋板23に近接する側に設けられた第2誘電体層27とを含む。駆動回路24と導電層25とは、いずれもコネクタ4と電気的に接続されている。駆動回路24と導電層25とに通電または遮断することにより、検出液6が通路5内を所定の経路で移動することを実現できる。
【0024】
本実施形態では、図2及び図3を併せて参照すると、駆動回路24は、アレイ状に配列された複数の駆動電極241と、この駆動電極241に電気的に接続された制御電極242とを備える。この制御電極242は、コネクタ4と電気的に接続されている。具体的には、駆動回路24は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)駆動回路であり、検出液6が導電性を有するため、誘電湿潤原理(Electrowetting-On-Dielectric,EWOD)を根拠として、通路5内で検出液6が所定の経路で移動することを実現できる。TFTの原理に基づいて、ある駆動電極241と導電層25との間の回路を選択的にオン/オフすることにより、当該駆動電極241と導電層25との間の電圧を変化させて当該検出液6と第1誘電体層26および第2誘電体層27との間のぬれ特性を変化させ、さらに当該検出液6が通路5内を所定の経路で移動するように制御する。図6に示すように、検出液6は、電極I、電極H及び電極Gにおいて移動する。検出液6が電極H上を移動するときに、電極Gと導電層25との間に電圧が印加され、電極Gに電圧Vdが与えられるとともに、電極Hと導電層25との間の電圧が遮断され、この時、電極Hと検出液6との間の液-固接触角が大きくなるように、検出液6と第1誘電体層26及び第2誘電体層27との間のぬれ特性が変化する。電極Gと検出液6との間の液-固接触角が小さくなることで、検出液6は電極Hから電極Gへ移動する。
【0025】
本実施形態では、第1誘電体層26及び第2誘電体層27は、いずれも絶縁撥水層であり、具体的にはポリテトラフルオロエチレンコートでもよい。一方では、絶縁撥水として機能する。他方では、所定経路内で検出液6をよりスムーズに移動させ、移動中に液玉が割れないようにすることができる。
【0026】
本実施形態では、図3から分かるように、駆動回路24は、第2蓋板23の表面に金属エッチング又は電気メッキの方法により形成されている。
【0027】
本実施形態では、制御電極242は、第2蓋板23の同一縁に集積されている。第2蓋板23の制御電極242が設けられた一辺を、コネクタ4内に挿入することにより、検出チップ2とコネクタ4との電気的接続を実現することができる。
【0028】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、駆動回路24は、異なる用途に応じて、サンプル入れ領域A、複数の核酸拡張領域C及び観察領域Dとの複数の領域に分けられる。この観察窓29は、観察領域Dに対応して設けられている。検出チップ2におけるサンプル入れ領域Aは、箱体1におけるサンプル入れ口13と連通する。このサンプル入れ口13からサンプル入れ領域Aに核酸サンプルを含む検出液6を入れる。核酸拡張領域Cは、核酸サンプルの拡張反応を実現して、核酸拡張生成物を取得する。この核酸拡張生成物は、蛍光試薬と結合して液玉8を取得する。観察領域Dは、液玉8のレーザー7の照射下での蛍光信号9を観察するために用いられる。
【0029】
検出液6は、核酸拡張領域Cにおいて核酸拡張反応を行う。この核酸拡張領域Cは、複数の領域を含んでもよい。具体的な領域の数は、実際の検出ニーズに応じて定められうる。観察領域D内の液玉8から放射された蛍光信号9は、観察窓29を介して撮像装置で採取されることが可能である。リアルタイム蛍光定量PCR技術の原理は、蛍光試薬(蛍光色素またはDNAプローブ)が特定のDNAと結合して初めて、蛍光特性が存在するように設計されるため、DNAがPCRにより拡張された後に数が多くなり、活性化された蛍光物質が多くなる。蛍光試薬と結合するDNAの数が増えると、蛍光の強度が強くなる。従って、蛍光の強度を検出するだけで、拡張された特定のDNAを定量することができる。
【0030】
なお、図5に示すように、他の実施形態では、駆動回路24は、蛍光試薬(例えば、蛍光色素や蛍光プローブ)を格納するための試薬貯留領域Bをさらに含んでもよい。検出液6は、少なくとも核酸サンプルとプライマーを含み、且つ蛍光試薬を含まない。蛍光色素やDNAプローブなどの蛍光試薬は、試薬貯留領域Bに予め塗布されて、検出液6が加えられた後に、検出液6と結合する。この態様は、核酸拡張前に蛍光試薬と混合されてもよいし、核酸拡張後に蛍光試薬と混合されてもよく、具体的には、実際の状況に応じて選択される。
【0031】
図6に示すように、さらに他の実施形態では、蛍光試薬は観察領域D内に設けられる。観察領域Dは、核酸拡張領域Cのサンプル入れ領域Aから遠い側に設けられる。本実施形態では、核酸拡張が終了した後に、核酸拡張生成物は、観察領域D内の蛍光試薬と結合することになる。
【0032】
図3図5図6に示すように、検出チップ2は、さらに、第1蓋板21及び/又は第2蓋板23の通路5から離れた側に設けられる加熱部品28を備える。加熱部品28は、核酸拡張領域Cに対応して設けられて、検出液6を加熱するために用いられる。
【0033】
本実施形態では、加熱部品28は、核酸拡張領域Cに対応して2つの加熱領域が設けられている。具体的な加熱温度の範囲は、それぞれ90℃~105℃及び40℃~75℃である。
【0034】
本実施形態では、検出チップ2を組み立てた後に通路5内にシリコーンオイルを注入する。検出液6は、前記シリコーンオイル内で所定の経路に従って移動する。
【0035】
図2に示すように、本実施形態では、第1蓋板21及び第2蓋板23は、いずれもガラス板である。スペーサー層22は、両面接着枠であり、第1蓋板21及び第2蓋板23の縁に貼り付けられることで、共同で密封の通路5を構成している。なお、通路5の容量は、実際のニーズに応じて、異なる厚みのスペーサー層22を設計することで調整されることができる。
【0036】
本実施形態では、核酸検出箱100は、略立方体構造である。本実施形態では、この核酸検出箱100は使い捨ての使用品であり、検出サンプル毎に1つの核酸検出箱100を使用するので、核酸検出箱100は洗浄フローを要しない。
【0037】
本発明は、核酸拡張領域C、試薬貯留領域B及び観察領域Dの数及び具体的な位置を、異なる需要に応じて設計することができる。実際の検出過程では、具体的に以下の3種類の異なる実施形態が含まれてもよい。
【0038】
一実施形態では、図2図4に示すように、核酸拡張領域Cの数は2つであり、観察領域Dの数は1つである。当該観察領域Dは、2つの核酸拡張領域Cの間に位置している。本実施形態では、試薬貯留領域Bを設ける必要はない。
【0039】
リアルタイム蛍光定量PCRを具体的に実現する過程は、次の通りである。サンプル入れ領域Aに検出液6を入れる。このとき、核酸サンプル、プライマー及び蛍光試薬(例えば、蛍光色素またはDNAプローブ)を同時に含む検出液6をサンプル入れ口13からサンプル入れ領域A内に注入することができる。核酸サンプルと蛍光試薬とを含む検出液6は、駆動電極241により駆動されて、所定の経路に従って2つの核酸拡張領域Cの間で往復移動して、拡張反応を行って直接生成物である液玉8を取得する。拡張過程では、生成物である液玉8は観察領域Dを通過することになる。このとき、液玉8は、レーザー光7により照射されて蛍光信号9を発することになる。そこで、画像採取装置によって観察窓29を介して、観察領域Dに蛍光試薬を結合した生成物である液玉8が発した蛍光信号9を採取して、リアルタイム蛍光定量PCRの過程を完了することができる。本実施形態では、PCR拡張反応が進むにつれて、蛍光強度が絶えずに増大する。蛍光強度が最大値となってから増大しなくなり、安定する傾向にあり、この場合、PCR拡張反応が終了するので、蛍光強度の変化に基づいて拡張反応の終了時間を正確に判断することができる。
【0040】
本実施形態では、レーザー発射装置3は、通路5の側面からレーザー7を出射し、レーザー7が通路5内を伝搬される。具体的には、レーザー7のスペクトルは200nm~480nmであり、蛍光試薬が発する蛍光のスペクトルは500nm~700nmである。レーザー7が液玉8と交会すると、液玉8内の蛍光試薬は蛍光信号9を発する。画像採取装置は、開口14及び観察窓29を通じて蛍光信号9を検知して採取して蛍光画像を形成し、さらにホストのディスプレイによりそれを表示させる。
【0041】
他の実施形態では、図2図4及び図5を参照すると、当該核酸拡張領域Cの数は2つであり、当該観察領域Dの数は1つであり、当該観察領域Dは2つの核酸拡張領域Cの間に位置している。また、駆動回路24は、さらに1つの試薬貯留領域Bを含む。
【0042】
リアルタイム蛍光定量PCRを具体的に実現する過程は、次の通りである。サンプル入れ領域Aに蛍光試薬を含まない検出液6を入れる。この検出液6は、少なくとも核酸サンプル及びプライマーを含む。蛍光試薬(例えば、蛍光色素またはDNAプローブ)は、試薬貯留領域B内に予めコーティングされている。検出液6は、駆動電極241により駆動されて、サンプリング入れ領域Aから試薬貯留領域Bに移動して蛍光試薬と混合される。この蛍光試薬を混合した検出液6は、さらに所定の経路に従って2つの核酸拡張領域Cの間で往復移動して、拡張反応を行なって、生成物である液玉8を取得する。拡張過程において、液玉8は観察領域Dを通過することになる。この際、液玉8は、レーザー7の照射下で蛍光信号9を発することになる。これにより、画像取得装置によって観察窓29を介して観察領域Dでの液玉8が発した蛍光信号9を採取し、リアルタイム蛍光定量PCRを完成させることができる。本実施形態では、PCR拡張反応が進むにつれて蛍光強度が絶えずに増大する。蛍光強度が最大値となってから増大しなくなり、安定する傾向にあり、この場合、PCR拡張反応が終了するので、蛍光強度の変化に基づいて拡張反応の終了時間を正確に判断することができる。さらに別の実施形態では、図2及び図6に示すように、核酸拡張領域Cの数は2つであり、観察領域Dの数は1つであり、試薬貯留領域Bは設けられていない。ここで、観察領域Dは、2つの核酸拡張領域Cのサンプル入れ領域Aから遠い側に位置し、且つ3つの観察部位(D1、D2、D3)を含む。3つの観察部位(D1、D2、D3)にそれぞれ異なる蛍光試薬が配置され、遺伝子検出に必要な異なるDNAプローブが具体的に設けられている。
【0043】
本実施形態では、観察部位D1及び観察部位D3のそれぞれには2種類のウイルス遺伝子プローブ(具体的にRdRp遺伝子プローブ、N遺伝子プローブ)が設けられ、観察部位D2にはヒト組織内参照遺伝子プローブ(Beta-actin遺伝子プローブ)が設けられている。
【0044】
リアルタイム蛍光定量PCRを具体的に実現する過程は、次の通りである。サンプル入れ領域Aに蛍光試薬を含まない検出液6を入れる。この検出液6は、少なくとも核酸サンプル及びプライマーを含む。蛍光試薬(具体的に遺伝子プローブ)は、観察領域Dの異なる観察部位に予め設けられている。本実施形態では、検出液6は、先ず2つの核酸拡張領域Cの間で往復して移動し、核酸拡張反応を行なって核酸拡張生成物を取得する。核酸拡張生成物は、観察領域Dまで移動して、3つの異なる観察部位(D1、D2、D3)での異なるプローブと結合して、生成物である液玉8を形成して、発色を行ない、さらにレーザー発射装置3によりレーザー7を出射する。レーザー7が液玉8と交会すると、液玉8内で、対応するDNAと結合したDNAプローブは蛍光信号9を発する。画像採取装置は、開口14と観察窓29とを介して、観察領域Dでの3つの観察部位(D1、D2、D3)が発した蛍光信号9を検出して、蛍光画像を生成し、最後にホストで表示させる。
【0045】
蛍光試薬が核酸拡張前後に添加されることによる蛍光検出の影響を検証するために、図7は3種類の異なる検出液を用いてそれぞれ蛍光検出を行う。図7において、第1サンプルは、DNAにG108-G色素を先に添加した後、PCR拡張を行なう。第2サンプルは、DNAを先にPCR拡張し、その後、G108-G色素を添加する。第3サンプルは、DNAがPCR拡張を行わないが、G108-G色素の添加がある。
【0046】
以上の3つのサンプルのそれぞれに対して蛍光検出を行ない、図8のような検出結果を得る。図8から分かるように、第1サンプルと第2サンプルの蛍光強度は類似し、第3サンプルには蛍光反応がほとんどない。第1サンプルと第2サンプルの対比は、PCR拡張の前又は後に何れも蛍光試薬を添加することができ、これは検出結果に影響を与えないことを表している。第1サンプル及び第2サンプルと、第3サンプルとの対比から分かるように、蛍光試薬が特定のDNAと結合して初めて蛍光特性を有するようになり、即ち、PCR拡張を経ないDNAには、蛍光試薬を添加されても、蛍光反応がない。以上の3つのサンプルの蛍光検出結果の対比から分かるように、本願の核酸検出箱100を用いてリアルタイム蛍光定量PCRを行うことで、リアルタイム検出と正確な定量とを実現でき、検出結果が正確であり、検出速度が速く、且つ取り扱いが便利である。
【0047】
従来の技術に比べて、本発明の核酸検出箱100は、リアルタイム蛍光定量的な核酸拡張検出を、検出チップとレーザー発射装置とを組み合わせて実現できる。検出液は、検出チップ内で核酸拡張反応が完了した後に直接蛍光検出に入ることができ、核酸拡張生成物を電気泳動検出する必要がなく、リアルタイムで核酸拡張生成物の蛍光画像を得ることができる。オペレータに対する要求が低減され、検出コストが低減され、検出効率が極めて向上する。また、核酸検出箱のサイズが小さく、携帯型の核酸検出デバイスに適用することができる。
【0048】
また、図2及び図9を併せて参照すると、本発明は、ホスト201、上記のような核酸検出箱100及び画像採取装置202を備える核酸検出デバイス200をさらに提供する。ホスト201には、検出箱装着溝(図示せず)が設けられている。核酸検出箱100は、前記検出箱装着溝核酸検出デバイス内に装着される。画像採取装置202は、観察窓29の通路5から離れる側に設けられ、当該観察窓29により蛍光信号9を収集して、蛍光信号9を蛍光画像に変換し、且つ蛍光画像をホスト201に伝送して処理する。ホスト201は、処理後の蛍光画像をディスプレイ(図示せず)で表示する。この蛍光画像に基づいて、核酸検出結果を取得することができる。また、検出結果をクライアントにアップロードし、関係者が参照するようにしてもよい。
【0049】
従来の技術に比べて、本発明によって提供される核酸検出デバイスは、ホストと核酸検出箱と画像採取装置との協力により、PCR過程では蛍光検出を行い、リアルタイムの蛍光画像を得ることができる。蛍光強度の大きさに応じてPCR拡張された後のDNAを定量でき、核酸の量をリアルタイムで且つ定量的に検出することを実現できる。核酸検出デバイスは全体構成が簡単であり、検出操作が簡便であり、操作過程は専門に対する要求が低く、検出効率が高く、検出コストが極めて低減されている。また、検出過程は柔軟性が高く、固定の実験室で行う必要がなく、検出デバイスが携帯し易く、コミュニティ検出やホーム検出を実現することができる。
【符号の説明】
【0050】
100 核酸検出箱
1 箱体
11 第1ケース
12 第2ケース
13 サンプル入れ口
14 開口
15 取り付け口
2 検出チップ
21 第1蓋板
22 スペーサー層
23 第2蓋板
24 駆動回路
241 駆動電極
242 制御電極
25 導電層
26 第1誘電層
27 第2誘電層
28 加熱部品
29 観察窓
3 レーザー発射装置
4 コネクタ
5 通路
6 検出液
7 レーザー
8 液玉
9 蛍光信号
A サンプル入れ領域
B 試薬貯留領域
C 核酸拡張領域
D 観察領域
D1、D2、D3 観察部位
200 核酸検出デバイス
201 ホスト
202 画像採取装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9